研究成果報告書

Similar documents
2

syoku10_10.indd

2

学位論文の要約

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

Microsoft Word - 学位論文内容の要旨 .doc

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

PowerPoint プレゼンテーション

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

平成24年7月x日

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

(別添)安全性未審査の組換えDNA技術応用食品の検査方法_NIHS 最終版_YF

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

<4D F736F F D208A7788CA90528DB895F18D908F912097E996D893DE8C8E2E646F63>

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

Untitled

Microsoft Word -

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

コラーゲンを用いる細胞培養マニュアル

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

Tox

2

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

STAP現象の検証の実施について

九州大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性重症虚血肢(閉塞

Untitled

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

骨形成における LIPUS と HSP の関係性が明らかとなった さらに BMP シグナリングが阻害されたような症例にも効果的な LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された < 方法 > 10%FBS と 抗生剤を添加した α-mem 培地を作製し 新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

研究成果報告書

2

長期/島本1

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

Untitled

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

肝クッパ 細胞を簡便 大量に 回収できる新規培養方法 農研機構動物衛生研究所病態研究領域上席研究員山中典子 2016 National Agriculture and Food Research Organization. 農研機構 は国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構のコミュニケーショ

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

研究成果報告書

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

平成14年度研究報告

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

Chromatin Immunoprecipitation (ChIP)

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

表紙/151708H

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

研究成果報告書

-119-

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

論文の内容の要旨

第6号-2/8)最前線(大矢)

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

博第265号

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

STAP現象の検証結果

スライド 1

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

東京都健康安全研究センター研究年報

研究成果報告書

-85-

Perl + α. : DNA, mrna,,

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

問 1. 次の文章を読み 以下の設問 (1)~(3) に答えよ タンパク質 X の N 末端にヒスチジンタグを付加し これを大腸菌で大量発現して精製する実験を計画している (1) その準備として 遺伝子 x を PCR で増幅し T7 プロモーターを持つベクター (pet28a) の NdeI と

高齢者の口蓋垂に生じた扁平上皮乳頭腫の1例

生物時計の安定性の秘密を解明

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

研究成果報告書

cover

Untitled

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

[PDF] 蛍光タンパク質FRETプローブを用いたアポトーシスのタイムラプス解析

4. 発表内容 : 1 研究の背景超高齢社会を迎えた日本では 骨粗しょう症の患者数は年々増加しつつあり 1300 万人と 推測されています 骨粗しょう症では脊椎や大腿骨を骨折しやすくなり その結果 寝たきり に至ることも多く 患者の生活の質 (QOL) を著しく低下させるため その対策が重要な課題

Untitled


のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

Untitled

180126_TOO_ウイルス感染症研究者向け資料【最終】.indd

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

研究成果の概要 今回発表した研究では 独自に開発した B 細胞初代培養法 ( 誘導性胚中心様 B (igb) 細胞培養法 ; 野嶋ら, Nat. Commun. 2011) を用いて 膜型 IgE と他のクラスの抗原受容体を培養した B 細胞に発現させ それらの機能を比較しました その結果 他のクラ

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

研究成果報告書

Microsoft PowerPoint

Transcription:

様式 C-9 F-9 Z-9 CK-9( 共通 ). 研究開始当初の背景 骨粗鬆症は 閉経後の女性の 割以上が罹患し 日本での総患者数は 万人超と推定される疾患である しかし 代表的な治療法である破骨細胞活性化抑制は 長期加療により骨折リスクを増大する可能性が指摘されており (FDA, ) 適切な治療法確立は喫緊の課題である 過去二十数年来の研究から 破骨細胞活性化は 骨芽細胞に発現する Receptor Activator of NF-kappaB (RANK) ligand (RANKL) と破骨前駆細胞に発現する受容体 RANK を介するシグナル伝達により制御されること が提唱されてきた しかし 昨年 破骨細胞活性化を惹起する RANKL は 主に骨細胞により供給されることが複数の研究者により示され パラダイムシフトが起きた (Nakashima T. et al. Nat Med., Xiong J. et al. Nat Med. ) そのため 臨床的 社会的要請を満足させ得る治療法確立には 骨細胞による破骨細胞活性化制御の理解が不可欠である これまでに明らかとなった骨細胞と破骨細胞活性化の関係は 主に次の三点である 一点目は 骨細胞特異的な RANKL 欠失に伴い 破骨細胞がほぼ消失し 骨量が大幅に増大すること (Nakashima T. et al., ) 二点目は 骨細胞死の誘導は 破骨細胞を過剰に活性化し 骨量を劇的に減少させること (Tatsumi S. et al. Cell Met. 7) 三点目は 骨細胞は 外界の力学的負荷を検知し 負荷が微弱でも 過剰でもアポトーシスし 破骨細胞を活性化すること (Atkins GJ et al. Osteoporos Int. ) である これらの知見から 骨細胞死が破骨細胞活性化に重要であると説明されることがあるが 糖質コルチコイド誘導の骨細胞死では破骨細胞が活性化しないこと (Weinstein RS et al. Endocrinol. ) や 力学的負荷に伴ってマイクロクラックが生じた際も クラック周辺の骨細胞がすべて死滅している訳ではなく 逆に クラックから離れた部位でも破骨細胞形成が観察されること (Colopy SA et al. Bone ) さらに 骨細胞死と破骨細胞活性化の関連は in vitro 系で検証された報告もなく 普遍的な説明ではない 加えて RANKL 供給源である骨細胞の死は 破骨細胞活性化を一定期間維持する際に 必ずしも生体として効率的とは考えられず 骨細胞死が関与しない破骨細胞活性化様式の存在を確信するに至った 以上を考慮し 申請者は 破骨細胞活性化は 力学的負荷やマイクロクラックに応答する急性活性化と 負荷非依存的な基底状態での骨リモデリングのための破骨細胞活性化の二通りに分類されると考えた 骨全域のリモデリング状態が変動する疾患である骨粗鬆症などの代謝疾患は 基底状態の破骨細胞活性化の影響が大きいと考えられるが その活性化を惹起する因子 制御する骨細胞内分子機構 および その生理的寄与等は いずれ も未解明であった. 研究の目的本申請研究究代表者らは これまでに骨芽細胞における RANKL 細胞内動態を 世界に先駆けて検討を進めてきた 骨細胞は 骨芽細胞が骨基質に埋没し 終末分化した細胞であるため 骨芽細胞にて得られた知見は 骨細胞における RANKL 動態制御においても一部共通していると想定される しかし in vivo ではアクチン繊維による架足を三次元的に骨中に張り巡らし その架足を介し破骨細胞を活性化させることが想定される点で 破骨細胞分化制御の様式が骨芽細胞と大きく異なる可能性が想定される そこで 骨芽細胞においてこれまで解析されてきた RANKL 細胞内動態の知見を基に 骨細胞における RANKL 細胞内動態の詳細を検討し 骨芽細胞との共通点および相違点を検証することで RANKL 細胞内動態制御が 生理的な破骨細胞形成に主要な役割を果たすのか さらには生存骨細胞による破骨細胞形成支持能に対する生理的寄与の有無の解明を目的とした. 研究の方法 ) 初代培養骨細胞 骨芽細胞 骨髄細胞の単離培養初代培養骨細胞は 日齢 C57BL6 マウス ( 野生型および OPG 欠損型 ) より頭蓋を単離し. % コラゲナーゼおよび. % ディスパーゼにより処理し 骨芽細胞 繊維芽細胞 その他何組織を除去した後 残骨片を EDTA により処理することで単離 採取した 単離した骨細胞は 培養ディッシュ上での平面培養 あるいは I 型コラーゲンゲル中での 次元培養を行った 初代培養骨芽細胞は 日齢 C57BL6 マウスより頭蓋を単離し 細切後に I 型コラーゲンゲル中に包埋し 日間培養した後 骨片より遊走した細胞をコラゲナーゼ処理することでゲル中より回収することで取得した 取得した細胞は 培養ディッシュ上で平面培養した また 6 8 週齢 C57BL6 マウスの長間骨より骨髄液を回収し ng/ml MCSF 存在下で 6 時間培養した後に浮遊している細胞を骨髄細胞として用いた )mrna 定量定量的 PCR により 以下に示すプライマーを用いて骨細胞および骨芽細胞特異的マーカー分子の発現量を評価した Mouse SOST: 5 -CTT CAG GAA TGA TGC CAC AGA GGT- and 5 -ATC TTT GGC GTC ATA GGG ATG GTG-, mouse FGF: 5 -ACT TGT CGC AGA AGC ATC- and 5 -GTG GGC GAA CAG TGT ACA

A-, mouse DMP: 5 -GGC TGT CCT GTG CTC TCC CAG- and 5 -GGT CAC TAT TTG CCT GTC CCT C-, mouse E/gp8: 5 -CAG TGT TGT TCT GGG TTT TGG- and 5 -TGG GGT CAC AAT ATC ATC TTC A-, mouse osteocalcin: 5 -CCA AGC AGG AGG GCA ATA- and 5 -AGG GCA GCA CAG GTC CTA A-, mouse ALP: 5 -GGG CGT CTC CAC AGT AAG CG- and 5 -ACT CCC ACT GTG CCC TCG TT-, mouse RANKL: 5 -GTC TGT AGG TAC GCT TCC CG- and 5 -CAT TTG CAC ACC TCA CCA TCA AT-, mouse GAPDH: 5 -GTC TGT AGG TAC GCT TCC CG- and 5 -CAT TTG CAC ACC TCA CCA TCA AT-. ) 生細胞での RANKL 局在観察まず リソソームマーカー LAMP- ゴルジ体マーカー FTCD ER マーカー Calnexin に関して 各遺伝子にクサビラオレンジ蛍光蛋白質 (KuOr) を融合した蛋白質をエンコードするレンチウィルスを構築した 同様に GFP を融合させた RANKL をエンコードするレンチウィルスを構築した これらのレンチウィルスを観察対象とする細胞に一過性に感染させ その後発現する各種蛍光蛋白質融合遺伝子の局在を 共焦点顕微鏡を用いた通常の局在観察及び Z 軸方向の断面像を連続取得し 次元に再構築することで観察した ) 細胞表面上の蛋白質定量細胞を NHS-SS- ビオチン溶液に暴露することで 細胞表面上に発現する蛋白質のリジン残基をビオチン化した その後 細胞を可溶化し ストレプトアビジンビーズを用いてビオチン化蛋白質を回収し 還元剤により処理することでビオチン化蛋白質を溶出 回収した 回収したビオチン化蛋白質は 免疫ブロッティングにより 定量評価した 5) 共培養実験および RANK ビース刺激実験 次元培養した骨細胞と骨髄細胞 ( 破骨前駆細胞 ) との共培養実験系として 骨細胞を µm の多孔子膜上に一過性に培養した 細胞定着直後に 細胞播種面が下面来るようにコラーゲンゲル上に多孔子膜を静置し 培養した 多孔子膜上面には 骨髄細胞を播種し 5 ng/ml MCSF 含有培地で培養した これにより 破骨前駆細胞は多孔子膜を通過した骨細胞の架足部のみと直接接触できる系とした その後 日毎に培地を交換し 7 日目に破骨細胞分化の指標として TRAP 酵素活性を測定した また RANK ビーズによる骨細胞刺激実験においては 成就痛の共培養系における骨髄細胞に変わり Protein G コートされたビーズの表面に RANK 細胞外領域および抗体 Fc 領域の融合タンパク質 (RANK-Fc) を固相化したビーズ (RANK ビーズ ) を用い 刺激後の RANKL 細胞内動態解析などに用いた. 研究成果 ) コラーゲン包埋培養による骨細胞の形質維持骨細胞は 平面培養した場合に脱分化し 骨細胞様の形質を失い 骨芽細胞様細胞に脱分化することが過去に示唆されている そこで 骨細胞内での RANKL 細胞内動態を適切に評価するために まず骨細胞の形質を維持する培養系の構築を試みた 骨細胞は 生理的環境において骨基質中に埋没しているため 何らの三次元構造に支持された環境下でない場合に脱分化する可能性を想定し コラーゲンゲル中に単離した骨細胞を包埋した状態および平面培養した状態での 培養開始時からの 8 日間の経時的な骨細胞または骨芽細胞マーカー分子の発現量変動を定量的 PCR 法にて評価した その結果 後期骨細胞マーカーである SOST FGF の発現量は コラーゲンゲル包埋した場合に有意に高く 逆に 骨芽細胞マーカーでる ALP Osteocalcin の発現量上昇は 平面培養では認められたのもの コラーゲンゲル包埋した場合には その上昇幅は微弱であった 加えて コラーゲンゲル包埋下における単離骨細胞の形質を観察した結果 骨細胞の特徴であるアクチン繊維に裏打ちされた架足を複数有していることが確認された 以上の結果から コラーゲンゲル包埋した培養 ( 以下 三次元培養 ) は 少なくとも培養開始後 週間程度は骨細胞の形質を維持しうる系であることが明らかとなった D culture D culture Collagen gel Relative mrna level Relative mrna level D culture D culture Sost.5.5.5.5 6 8 Ob 8 6 Fgf 6 8 Ob Bglap Alpl 5 5 6 8 Ob 6 8 Ob ) 三次元培養下の骨細胞による破骨細胞分化誘導系の確立生理的条件下における骨細胞による破骨細胞活性化は 骨細胞が骨基質中に埋没していることを考慮すると 骨細胞の架足を介して膜結合型 RANKL が破骨前駆細胞上の RANK に直接接触するか あるいは 骨細胞が可溶型 RANKL(sRANKL) を放出することが想定される そこで いずれの場合でも評価可能な系として 上述の多孔子膜を用いた分離共培養系を構築した その結果 構築した培養系における多核化破骨細胞形成が認められた また 共培養過程のどの時間が効率的な破骨細胞分化に重要であるかを検証することとした RANKL-RANK 結合を阻害する OPG 組み換えタンパク質を培養開始から 5 7 日間までそれぞれ添加した条件における破骨細胞活性化能を評価した結果 日のみ添加した場合でも 破骨細胞形成が 7 日目での破骨細胞形成生は 半分程度まで減弱していた.5.5.5.5.5 Gp8 6 8 Ob Rankl 6 8 Ob.5.5 5 Dmp 6 8 Ob Opg 6 8 Ob

これらの結果から 本共培養系は 培養開始初期における骨細胞由来の RANKL が大きく破骨細胞形成に寄与することが示唆された Porous membrane Anti-TRAP Collagen gel TO-PRO Dendritic process Bone marrow cell ) 破骨細胞活性化を制御する RANKL 実態へのアプローチ過去に行われてきた骨芽細胞と破骨前駆細胞の共培養実験では 破骨細胞活性化に支配的な因子は srankl よりも骨芽細胞上の膜結合型 RANKL であることが示唆されてきた 骨細胞での RANKL 供給形態に関する検討を加えた まず srankl による寄与を検討するため 膜結合型 RANKL を切断し srankl を生成する酵素を阻害する TIMP- による処理を行い 破骨細胞活性化への影響を評価した その結果 srankl 生成量が % 程度まで低下する条件下においても 破骨細胞形成へは 有意な影響が認められず srankl の破骨細胞形成への寄与は 骨細胞による破骨細胞分化誘導の場合も微弱であることが示唆された RANKL 供給が 骨細胞表面上に発現する膜結合型 RANKL と破骨前駆細胞上 RANK の直接接触である場合 骨細胞の架足と破骨全区細胞は上述 ) の培養系においても接触していると考えられたため 各細胞に蛍光色素を前負荷した後に共焦点顕微鏡による観察を行った その結果 多孔子膜を通過した骨細胞の架足部と破骨前駆細胞が接触している像が確認された また 多孔子膜を二重に積層し多場合や孔子径を小さくすることで 通過しうる架足本数を少なくした条件において 共培養を行うと破骨細胞形成の有意な減弱が認められた 以上のことから 骨細胞による破骨細胞成熟には膜結合型 RANKL が重要な役割を果たすと考えられた Released srankl (pg/ml) Effect of srankl on osteoclastogenesis 9 5 8 7 6 5 control 6.6 control 6.6 TIMP- (nm) TIMP- (nm) Merge PNP/min/well) 8 6 Normal coculture - - -5-7 day + OPG ng/ml Effect of dendritic process of osteocyte 6 6 5 5 Single Double... Pore size ( ) ズ刺激により 骨細胞内のリソソーム酵素の細胞外へのリーク量が増大し 同時に RANK ビーズには 確かに RANKL が結合していることが確認され RANK 刺激を起点として リソソーム上の RANKL が細胞表面に移行することが示唆された また 生体では RANK ビーズ同様 細胞表面に RANK を発現する破骨前駆細胞が RANKL の骨細胞表面への移行促進に寄与することが想定された Dendritic process RANK bead 8 6 8 6 Control RANK beads beads NAGA activity rotein G only Beads coat: (control beads Beads binding Lysate rotein G +RANK-Fc (RANK beads 5) 骨細胞における RANKL のリソソームソーティング機構骨細胞内の RANKL リソソーム局在の生理的重要性が示唆されたため その機構に関して検討を加えた RANKL は 骨芽細胞内では OPG と結合し細胞内 RANKL のリソソームターゲッティングに関与することを過去に見出しているため OPG 発現が認められる骨細胞でも同様か検討した まず OPG 欠損マウスより単離した骨細胞における RANKL 局在を観察したところ 主としてゴルジ体に集積する像が観察された 一方で OPG 欠損骨細胞に OPG を外来から遺伝子導入し多場合には RANKL はリソソーム局在となったことから RANKL のリソソームターゲティングは 骨再微雨においても OPG の発現に依存することが明らかとなった また OPG 欠損骨細胞での細胞表面上 RANKL 発現量をビオチン化法により評価した結果 野生型骨細胞と比較して 全 RANKL 発現量に占める細胞表面上 RANKL 量の割合は有意に高値出あることが明らかとなった このことから OPG 欠損によりゴルジ体に集積した RANKL は 刺激非依存的に直接細胞表面へ輸送されるため 骨細胞表面 RANKL 量が増加し 過剰な破骨細胞形成が起こると考えられた 一方で OPG を介してリソソームへと輸送された RANKL は RANK 刺激依存的に細胞 Opg -/- ) 骨細胞内における RANKL 細胞内動態上述の検討から膜結合型 RANKL の骨細胞表面上発現量を規定する因子として 骨細胞内での RANKL 細胞内動態の重要性が示唆された そこで まず RANKL の骨細胞内を観察した 各種オルガネラマーカーとの局在比較を共焦点顕微鏡により行った結果 骨細胞内では RANKL は主としてリソソームに局在し 基底状態において細胞表面上に局在する割合は極めて少ないことが明らかとなった また 過去の骨芽細胞の研究から RANK ビーズとの接触刺激が RANKL のリソソームから細胞表面への移行を促進する可能性が想定されたため この点を検証した その結果 RANK ビー GFP-RANKL Opg -/- + OPG Detecting introduced GFP-RANKL level using anti-gfp antibody Lysate Surface WT Opg -/- WT Opg -/- 5kDa 8kDa 5kDa kda 75kDa 6kDa 8kDa 5kDa GFP-RANKL Golgi marker FTCD-KuOr Lysosome marker LAMP-KuOr.98.98.5.99.9..96.98.7.7.5.7 Surface/Lysate (relative expression) WT OPG -/-

表面へ輸送され秩序だった骨代謝の維持に寄与すると想定された 6) 低分子量 G 蛋白質関連分子による骨細胞内 RANKL 動態制御骨細胞内での RANKL 細胞内輸送の詳細を更に検討するために リソソームの細胞内動態 特に 細胞表面付近への輸送を担うことが下の報告から示唆された Rab7a あるいは Rb7b 分子に着目した検討を行った アデノウィルを用いて shrna を発現させることで Rab7a あるいは Rab7b を発現抑制した骨細胞を上述の構築した三次元共培養系にて 野生型の骨髄前駆細胞と共培養し 破骨細胞形成を評価したところ 骨細胞内 Rab7a および Rab7b の発現抑制は共に破骨細胞形成を減弱させた 加えて Rab7a/b と共役して機能する Slp-a 分子を発現抑制した際にも同様の傾向が確認された さらに Slp-a ノックアウトマウス ( 全身ノックアウトマウス ) の骨表現型を解析した結果 野生型と比較して有意に大腿骨骨端において骨密度 (BV/TV) が上昇していた 以上のことから 骨細胞における Rab7a/b および Slp-a が関与する輸送形式が 骨細胞依存的な破骨細胞分化誘導能に影響を与える可能性が示唆された RANKL 輸送に与える影響は 詳細を現在検討中である Abstract() PP 図書 ( 計 件 ) 産業財産権 出願状況 ( 計 件 ) 取得状況 ( 計 件 ) その他 なし 6. 研究組織 () 研究代表者苅谷嘉顕 (KARIYA, Yoshiaki) 東京大学 医学部附属病院 助教研究者番号 :668 () 研究分担者なし () 連携研究者なし 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 件 ) Honma M, Ikebuchi Y, Kariya Y, Suzuki H. Regulatory mechanisms of RANKL presentation to osteoclast precursors. Current osteoporosis reports 査読有 Vol. 5- Honma M, Ikebuchi Y, Kariya Y, Suzuki H. Establishment of optimized in vitro methods for evaluating osteocyte functions. Journal of bone and mineral metabolism 査読有 Epub Honma M, Ikebuchi Y, Kariya Y, Hayashi M, Hayashi N, Aoki S, Suzuki H. RANKL subcellular trafficking and regulatory mechanisms in osteocytes. Journal of bone and mineral research 査読有 Vol.8 96-99 学会発表 ( 計 件 ) Honma M, Ikebuchi Y, Kariya Y, Hayashi M, Hayashi N, Aoki S, Suzuki H. RANKL subcellular trafficking in osteocytes. European Calcified Tissue Society Congress Bone