せた栄養剤をまとめて 半固形化 と称するよう用語の統一が行われた 6) しかし 栄養剤の流体特性や胃内溶液モデル研究をもとに 寒天による固形化は増粘剤による半固形化とは同等の効果が得られないとする報告もある 7) 胃腸の各部位はそれぞれ異なる機能を持ち 食塊の粘度 胃の運動機能 栄養素の消化吸収等を

Similar documents
経管栄養食 アイソカル RTU アイソカルプラス EX ネスレヘルスサイエンス ネスレヘルスサイエンス 1.0kcal/ml の流動食さらにやさしく より確かな安全を 1.5kcal/ml の高濃度流動食 アルギニン配合 アイソカルプラス アイソカル 1K ネスレヘルスサイエンス ネスレヘルスサイエ

2698 ネオハイトロミールNEXT 分包 2699 ネオハイトロミールNEXT 1 包 あたり エネルギー (kcal) 9 カリウム (mg) 8 水分 (g).2 カルシウム (mg) 1 たんぱく質 (g).2 リン (mg) 1 脂質 (g).1 鉄 (mg).1 炭水化物 (g) 2.6

監修の言葉 医療法人財団緑秀会田無病院院長 丸山道生 本邦における臨床栄養領域の発展にはめざましいものがあります 中でも 液体流動食の半固形化注入法 ( 以下 半固形化法 ) は経腸栄養管理における患者さんのQOL 改善に効果のある発明といっても過言ではありません 稲田晴生先生提唱による胃内でゲル化

foodcare_ indd

経腸栄養マニュアル 総合栄養管理委員会 経腸栄養マニュアル 社会医療法人生長会 府中病院 総合栄養管理委員会 平成 24 年 4 月 1 日作成平成 25 年 2 月 1 日改訂平成 27 年 9 月 1 日改訂 - 1 -

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 庄司仁孝 論文審査担当者 主査深山治久副査倉林亨, 鈴木哲也 論文題目 The prognosis of dysphagia patients over 100 years old ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 日本人の平均寿命は世界で最も高い水準であり

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

<4D F736F F D2093E08E8B8BBE934988DDE19191A290DD8F702E646F63>

経管栄養法

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

スライド 1

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word 栄マネ加算.doc

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

減量・コース投与期間短縮の基準

シェイクイット! ダイエットプロテインシェイク ( シリアルフレーバー ) [ID 201-JP] 15,000 ( 税込 ) 植物性タンパク質を主原料に グルコマンナン 穀物 ビタミン ミネラル 乳酸菌などを含む 栄養の偏りがちな現代人におすすめの栄養補助食品です ダイエットのために 1 食分の置

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

<4D F736F F D CF68A4A977082C992B290AE817A B838A83938CA48B8695F18D DB D88D81816A>

テイカ製薬株式会社 社内資料

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

特別支援学校における介護職員等によるたんの吸引等(特定の者対象)研修テキスト

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

加工デンプン(栄養学的観点からの検討)

Drug Infomation

はじめに 章 流動食を投与するルート 経管栄養 とは チューブを通して直接胃や腸に栄養 ( 流動食など ) を送 りこむ方法のことです 病気や高齢で かむことができない うまく飲み 込めない など口から食事を十分にとれない時に必要な栄養を摂ってい ただく方法です その際 チューブは鼻の穴や胃 腸にあ

2010 年 6 月 25 表 身体所見 134 cm 31 kg /60 mmhg 83/ ,

<4D F736F F F696E74202D D95698EBF B C8B4B8A698E8E8CB181698D828BB4816A44325F D9770>

untitled

4. 栄養剤はごはんの替わり 患者さんの状態に合わせた栄養剤の選び方と半固形化栄養剤 経腸栄養器材は食器と同じ 家庭では 洗浄 乾燥病院では 消毒が必要 : 熱湯 次亜塩素酸 1. 衛生的に扱う 2. 栄養剤をつぎ足さない 3. 8 時間以上バッグに入れておかない 4. 室温での投与 Single

高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全

スライド 1

さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

Microsoft PowerPoint - 胃瘻PEG

Ⅰ-5.輸液と経腸栄養剤

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

05-Food-JAS&Label001

1. 腸内は腸内でも 大腸の奥の健康 まで意識したことがない人が約 6 割! 一方で約 8 割が自分の腸内環境を気にしており 約 7 割が 自分の腸内は劣化していると思う と回答 Q. あなたは 大腸の奥の健康について意識したことがありますか?( 単数回答 n=600) 日常生活において 大腸の奥の

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果


テイクワンアドバンス表

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として


14栄養・食事アセスメント(2)

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

Transcription:

総説 半固形化栄養法における 理論 論文のレビュー * keywords: 半固形化栄養法 粘度 胃瘻 一政晶子 1) Akiko ICHIMASA 一丸智美 2) Satomi ICHIMARU 1) 米国マリコパメディカルセンター臨床栄養部 2) 神戸市立医療センター西市民病院栄養管理室 Maricopa Medical Center, Clinical Nutrition 1) Kobe City Hospital Organization Medical Center West Hospital, Nutrition Management 2) 近年日本では半固形化栄養法が急速に普及し 胃食道逆流症 誤嚥性肺炎 下痢等の改善が報告されている 現在のところ 欧米では半固形化法は認知されていないが 今後エビデンスや投与法のコンセンサスが確立すれば 日本以外の胃瘻患者にも推奨できる技術であると考えられる そこで 今後のさらなる研究 実践に発展させるために 半固形化法における 1) 理論 2 ) 論文による有用性のレビューを行った 更に半固形化法の実践例を紹介する 結果 : 今回の論文レビューで 粘度 900 mpa s 以上で胃食道逆流症 3000 mpa s 以上で下痢を改善する可能性が示唆された また 3000 mpa s 以上では短時間投与 (15 分以内 ) が可能であり 褥瘡の改善や QOL の向上に有効な可能性も示唆された しかし 半固形化法に関する論文総数は少なく小規模研究 症例報告が大半を占めるため 効果を結論付けるエビデンスは不十分である 今後 粘度以外の要因にも考慮した大規模な比較研究が望まれる はじめに 日本では胃瘻からの経腸栄養法として半固形化栄養法 ( 以下 半固形化法 ) が急速に普及している 一般的に 半固形化法により胃食道逆流症 誤嚥性肺炎 下痢 褥瘡の予防と改善 介護者の負担軽減などの効果が得られると考えられている 半固形栄養剤は 液体栄養剤に半固形化剤を添加して粘度調整されていたが 2005 年以降は既成の半固形栄養剤も市販されている 1 )2 ) 今回 筆者 (A.I.) が勤務する米国において 日常業務として経腸栄養に関わる登録栄養士 ( R D )1 5 名に半固形化法のプレゼンテーションを行ったところ 大きな反響があった 彼らは 日本で実践されている半固形化法の効果に大いに期待を示すと共に 残念ながらそのエビデ ンスが不十分であり 注入方法等にもコンセンサスが見られないと指摘した そこで 半固形化法のエビデンス 及び注入方法のコンセンサス確立への一歩として 1) 半固形化法の理論 2) 半固形化法の有効性に関するこれまでの研究をレビューした 更に 半固形化法の実践例を紹介する 半固形化法の理論 半固形栄養剤 とは トマトペーストやマヨネーズのような物性を持ち 液体栄養剤と比較して生理的な形態だと述べられている 3) 寒天などを使用し 重力に対してその形を維持できる栄養剤は 固形化栄養剤 であるとされてきたが 4 )5 ) 栄養材形状機能研究会で 形状を変化さ *Review of Mechanism, Current Evidence and Practice of Enteral Semi-Solid Formula use to Prevent Gastroesophageal reflux, Diarrhea, and to Improve Patient Care. 受付日 :2009 年 9 月 28 日採用決定日 :2010 年 6 月 22 日静脈経腸栄養 Vol.25 No.6 2010 43(1207)

せた栄養剤をまとめて 半固形化 と称するよう用語の統一が行われた 6) しかし 栄養剤の流体特性や胃内溶液モデル研究をもとに 寒天による固形化は増粘剤による半固形化とは同等の効果が得られないとする報告もある 7) 胃腸の各部位はそれぞれ異なる機能を持ち 食塊の粘度 胃の運動機能 栄養素の消化吸収等を操っている 胃腸粘膜の受容体は 食塊の性質や管内伸展に敏感であるなど 消化器は多くの要因によって制御されている 8) 食物摂取時には 嚥下による受容性弛緩と胃壁伸展による適応性弛緩によって胃近位部が弛緩するが これらは迷走神経によって媒介される 9)1 0) 胃内容物による胃壁伸展は 胃内圧を上昇させることなく 胃近位部の弛緩 胃遠位部の収縮を促し 9 )1 1 ) 迷走神経を介して胃酸 ペプシノゲン ガストリン等の消化液分泌を促す 9) 固形食品摂取直後 胃内容物は近位胃に保持され 徐々に移動しながら 遠位胃により排出される 12) 液体食品の場合は 摂取後速やかに胃全体に分配され 主に胃底部圧によって排出される 12) 半固形 固形食品の摂取は 直ちに胃壁伸展と胃近位部の弛緩を促すが 1 3 ) 1 5) 液体食品では迅速な伸展や弛緩がみられないという報告がある 1 3 )15 ) 液体は 最初の 1 5-2 0 分程度はスムーズに胃排出されるが 半固形食品と比較して その後の排出が抑制され逆流したという報告もあり 1 3)1 6) 十二指腸におけるグルコース 脂肪酸によるコレシストキニン上昇が及ぼす遠位胃の収縮抑制を示唆する文献もある 16) 様々な研究報告やオピニオンが出ているが 現時点では 半固形化法を裏付けるメカニズムは明らかにされていない 半固形化法の有効性に関するこれまでの研究 症例報告 Ⅰ. 研究報告 1. 頭蓋内病変における研究 ( 1 9 9 8 年 ) 症例は異なる 8 施設に入院し 経管栄養時に胃食道逆流がみられ 呼吸器感染を反復していた 15 名 ( 脳血管障害 1 3 名 頭部外傷 2 例 平均年齢 7 2. 5 歳 平均試験期間 3 0. 7 日 ) を対象とした 17) 胃瘻が半数以上で 残りは経鼻 経口にて REF-P1 (4. 5% ペクチン液 9 0 g) を胃に投与 逆流が改善されなかった場合は 更に REF-P2 (1% 塩化カルシウム液 3 5 g ) を追加投与した 投与速度は 8 名で 6 0 分以内 3 名で30 分以内 投与時の体位は 90 度座位と上体 30 度挙上が同数であった 試験開始前に 15 名全員にみられていた胃食道逆流は 9 名で認められなくなった 半数以上にみられた呼吸器感染も試験開始後 1 週間以降では 4 例 ( 誤嚥性肺炎以外の原因が示唆される症例 1 名 ) となった 800 ~ 900 mpa sの粘度があれば 胃食道逆流を十分予防できることが示唆された 2. 頭蓋内病変における研究 ( 2 0 0 3 年 ) 症例は 呼吸器感染を繰り返していた 9 施設の患者 合計 16 名 ( 脳血管障害 14 名 頭部外傷 2 名 平均年齢 7 2. 5 歳 ) を対象とした 18) 胃瘻または経鼻胃管より粘度調整剤 (REF-P1 ) を一気に注入した後 液体栄養剤 ( K - 3 S ) を 3 0 ~ 6 0 分かけて投与 さらに水約 2 0m Lでチューブ洗浄を行った 粘度調整剤を加えると 栄養剤の粘度は 900 mpa sまで上昇し安定すると報告している 栄養剤投与後は約 1 時間座位が保たれた 追加水分は 栄養剤投与後 1-2 時間を避けて投与した その結果 液体栄養剤のみ ( 種類不明 ) の 9 名に呼吸器感染による熱発がみられたが 粘度調整剤使用後には 4 名に減少した 胃食道逆流症が全くみられない患者は 4 名から 10 名に増えた さらに平均年齢 2 1 歳の通常生活を営む健常人 4 名 ( うち男性 3 名 ) のボランティアに対し 液体栄養剤 ( K - 3 S ) の急速単独投与 および粘度調整剤 (REF-P1 ) との併用投与を行ったところ 3 時間の検査中に 液状栄養剤単独投与では 逆流時間率の平均が 2. 1% だったのに対し 粘度調整剤併用投与では 0. 3% だった 3. 認知症 脳卒中症例での研究 (2004 年 ) 症例は 平均年齢 80 歳の患者 17 名 ( うち認知症 8 名 脳卒中 9 名 ) 2 0 m L のガストログラフィンを含む 400mLの液体栄養剤 ( 種類不明 ) を15 分で投与したところ 10 名に胃食道逆流症が見られた 19) そこで同量の栄養剤を寒天で固形化しボーラス投与したところ 胃食道逆流がみられたのは 4 名に減り 液体栄養剤との有意差 44(1208) 総説

が認められた (p = 0.014) 胃食道逆流は食道のコンピューター断層撮影装置 (CT) で栄養剤投与 30 分後に診断した 4. 人工胃液内溶解試験の研究 ( 2 0 0 6 年 ) 人工胃液内溶解試験では ペクチンで固形化した栄養剤は注入 6 0 分後も形状が保持され 残存率 9 0 % 以上だった 20) ゼラチンによる固形化では 注入後速やかに溶解した 寒天による固形化では 60 分間で 60% 以上の残存率だったが 注入時の形状は確認されなかった 人工腸液内溶解試験では ペクチン及びゼラチンにて固形化した栄養剤は 速やかに溶解した 寒天による固形化では 60 分後で 40% 程度が残存した ラットへの投与試験では ペクチンにて固形化した液体栄養剤 ( E N 大塚製薬 製品名明記無し ) は 胃内滞留時間が延び 液体栄養剤と比較して 3 0 分で胃内容物の残存量に有意差がみられた 小腸内移行後は有意差は認められなかった ラット (n=15) による研究では 液体栄養剤を投与したところ 8 匹に口腔内逆流 6 匹に嘔吐 2 匹に誤嚥 1 4 匹に食道内逆流が確認された 一方 ペクチンを主成分としたゲル化剤 ( イージーゲル ) を使用した固形化栄養剤では 口腔内逆流 嘔吐 及び誤嚥はみられず 胃食道逆流は 5 匹であり 液体栄養剤に比し有意に減少した (p<0.01) この結果は胃内での栄養剤の保形性によるものと述べている また 液体栄養剤では投与 2 日以降に軟便及び下痢が発生したが 固形化栄養剤ではそれらは発生せず 特に投与 5 日 6 日目では有意差がみられた ( それ以降の報告はなし ) 固形化して胃排泄を遅延させる物理的な作用と 水溶性食物繊維であるペクチンの作用で下痢を予防する可能性があると述べている 5. 誤嚥の既往がある胃瘻症例での研究 (2006 年 ) 症例は誤嚥の既往がある胃瘻患者 7 名 ( 平均年齢 76.9 歳 男性 4 名 女性 3 名 ) 13) 粘度の異なるバリウム製剤 200mLを仰臥位で5 分間で投与し X 線透視下で観察した 低粘度 (5 mpa s) では 3 名に胃食道逆流を認め そのうち 2 名は 中粘度 ( 1 0 0 0 m P a s) で 残り 1 名は高粘度 (50,000 mpa s) で胃食道逆流は見られなくなった また 胃瘻で誤嚥性肺炎の既往がある 1 5 名の症例も 報告している 粘度の異なるバリウム製剤 4 0 0 m L を 3 0 度の半座位で5 ~ 15 分かけて投与した 胃食道逆流の有無は 注入後 30 分で咳反射を誘発することで判断した 胃食道逆流が見られなかった症例は 20,000 mpa s で14 名 10,000 mpa sで 11 名 2000 mpa sで 9 名 従来法 ( 詳細明記無し ) では 9 名であった 高粘度では 胃内貯留時間が延びるが胃食道逆流は起こりにくかったと報告している 6.87 歳以上の女性患者での研究 (2009 年 ) 症例は 基礎疾患のため入院中の 87 ~ 91 歳の女性患者 4 名 21) それまで使用していた液体栄養剤 (CZ-Hi ) に粘度調整食品 ( つるりんこ Q u i c k l y ) を添加し 粘度を約 4100 mpa s に調整 1 回 4 ~ 8 分で投与した 2 名にみられた褥瘡は2 ヵ月後に改善した (P<0.05) 半固形化法は短時間で投与可能であり 同一姿勢を保つ時間が短縮されることにより 褥瘡の予防や改善に有用であることを示唆している Ⅱ. 症例報告 1. 脳梗塞後遺症による嚥下困難の症例 (2002 年 ) 症例は 8 5 歳女性 脳梗塞後遺症のため嚥下困難となり 液体栄養剤 ( 種類不明 ) を投与していたが 胃瘻造設後慢性期に栄養剤の流涎 胃瘻挿入部からの栄養剤リーク 嘔吐 発熱 栄養剤注入時の呼吸困難様症状 肺炎などがみられていた 22) 固形化法に変更し 水分 2 0 0 m L に対し粉末状寒天 1g の割合で調整した固形化栄養剤 500mLを1 日 3 回投与したところ 発熱以外の症状は直ちに消失し発熱も 2 週間で消失した 2. 脳梗塞後遺症による嚥下困難の症例 (2005 年 ) 症例は 脳梗塞後遺症のため嚥下困難となり 誤嚥性肺炎を繰り返していた 8 7 歳と 91 歳の女性 23) 経鼻胃管より粘度調整剤 ( R E F - P 1 5 0 m L ) を投与後 直ちに液体栄養剤 (CZ-Hi とMA-8 1.5 の組み合わせ 4 0 0 m L ) を 1 時間以内で注入 その後 白湯 2 0 m L でチューブ洗浄という方法で 朝夕 1 日 2 回投与した 胃食道逆流や流涎が減少したと報告している 静脈経腸栄養 Vol.25 No.6 2010 45(1209)

3. 右不全麻痺の症例 ( 2 0 0 6 年 ) 症例は 左視床出血により意識レベル低下及び右不全麻痺になった 87 歳男性 7) 経鼻経管栄養により 下痢 湿性咳嗽 栄養剤の口腔内逆流 咳 痰の増加がみられていた 繰り返す誤嚥性肺炎のため胃瘻を施行したが 液体栄養剤使用時 ( 種類明記無し ) は 胃食道逆流が発生し誤嚥性肺炎は改善しなかった 半固形化法 ( ジェビティー 300mL + 白湯 5 0 m L +トロメイク 4 包 ( 6 g ) を 1 5 分間 ) で投与したところ 口腔内逆流は消失し 下痢は改善され リハビリ効果が向上し Q O L も改善した また phの異なる胃内溶液モデル (ph2.0 ph7.0) に 固形栄養剤 ( ジェビティー 3 5 0 m L 蒸留水 5 0 m L 寒天クック 1 g ) 半固形栄養剤 ( ジェビティー 3 5 0 m L 蒸留水 5 0 m L トロメイク 1 0 g ) を投与し いずれの p H においても半固形栄養剤は固形栄養剤と比較して投与時の形状を保持し 胃食道逆流予防に有用と述べている 4. 小脳出血後遺症による嚥下機能障害の症例 (2006 年 ) 症例は 高血圧 糖尿病のある 5 7 歳男性 小脳出血後遺症による嚥下機能障害により胃瘻を使用していた 24) 液体栄養剤 ( 1 日 1 5 0 0 k c a l メディエフボトル ) の投与で下痢が続いたため 半固形栄養剤 ( メディエフボトル +2% 増粘剤 ) の使用を開始し 1 日 3 回のボーラス投与を行ったところ 3 日で下痢が解消した 筆者らは 胃内滞留時間の延長に伴う吸収速度の緩徐化 増粘剤に含まれる食物繊維が下痢の解消に寄与した可能性があるとしている 上記の研究 症例報告の結果を表 1にまとめた 考察 経鼻胃管や胃瘻を介した液体栄養剤投与では 胃近位部の嚥下による受容性弛緩が起こらず 胃壁伸展の遅延や欠如により十分な適応性弛緩も誘発されない可能性がある 8)~ 1 3)15)1 6) 半固形化法では 迅速な胃壁の伸展が胃近位部の弛緩を促し さらには消化液の分泌を促すと考 表 1 : 各研究 症例報告のまとめ研究報告 1 ~ 6 症例報告 1 ~ 4 をまとめた 本文中の報告番号 研究者 効果 研究開始前の栄養剤 / コントロール 栄養剤 /1 回 半固形化剤 /1 回 研究 1 稲田ら ( 1 7 ) n=15 胃食道逆流 - K-3S(400kcal/400ml) + 白湯 20ml. 食物繊維量不明. REF-P1(4.5% ペクチン液 90g) で逆流がみられる場合は REF-P2(1% 塩化カルシウム液 35g) を追加投与. 食物繊維 2.25g. 研究 2 田部井ら ( 1 8 ) 胃食道逆流 n=16 - K- 3 S(4 0 0 m l, 遊離型カルシウム 60mg/ml). 食物繊維 4g. 粘度調整剤 (REF-P1(2.8% ペクチン液 90g). 食物繊維 1.4g. 研究 3 蟹江ら ( 1 9 ) n=17 胃食道逆流誤嚥性肺炎 液状栄養剤 400ml( 種類不明 ). ガストログラフィン 20ml を含む. コントロールと同じ 400ml 寒天 研究 4 田代 ( 2 0 ) 胃食道逆流 n =15( ラット ) 下痢 嘔吐など 液体栄養剤 ( 種類不明 ). 食物繊維 0g. 液体栄養剤 ( 種類不明 ). 食物繊維 0g. 栄養剤 200ml イージーゲル 5 4 g 食物繊維 2. 6 g. 研究 5 合田 ( 1 3 ) バリウム製剤 200ml n=7 胃食道逆流 n=15 バリウム製剤 400ml 研究 6 宮元 ( 2 1 ) n=2 褥瘡 CZ-Hi (800ml 又は 1,000ml/ 日 食物繊 つるりんこ Quickly( 量不明 ). 維 20g/L)+ 水 (1 回当たりの投与量は不明 ). 食物繊維 21.9g/100g. 症例 1 蟹江ら ( 2 2 ) n=1 胃食道逆流栄養剤リークなど 半消化体栄養剤 + 必要水分 ( 計 500ml 粉末状寒天. 食物繊維 0.8g/g. 各量不明 ). 食物繊維 0g. 症例 2 金岡ら ( 2 3 ) n=2 胃食道逆流誤嚥性肺炎 CZ-Hi と MA-8 1.5 の組合せ 400ml. 粘度調整剤 ( R E F - P1 5 0 m l ペクチ CZ-Hi 食物繊維 20g/L.MA-81.5 食物繊維 ( 難消化性デキストリン )1g/100kcal. ンが主成分 ). 食物繊維 1. 4 g. 症例 3 伊藤ら ( 7 ) n=1 口腔内逆流下痢など ジェビティー (300ml)+ 白湯 (50ml) トロメイク 4 包 (6g). 食物繊維 3.2g. ボーラス投与. 食物繊維 3g. 症例 4 村林ら ( 2 4 ) n=1 下痢 メテ ィエフホ トル 1500kcal/ 日. 食物繊維 15g. メテ ィエフホ トル 1500kcal/ 日. 食物繊維 15g. 2% 増粘剤 ( ソフティア ENS). 食物繊維 8.4g/ 日. 46(1210) 総説

えられるため 胃食道逆流症や下痢を抑制できるのかもしれない 8 )~ 1 5 ) 今回のレビューでは 胃食道逆流に対し 900 mpa s 以上の粘度で効果があることが強く示唆された 7 )1 7 )1 8 )2 0 )2 3 ) しかし 粘度が低い寒天 25) を使用した固形化栄養剤でも 胃食道逆流改善の効果が報告されていることから 1 9 )2 2 ) 粘度のみの問題ではなく 栄養剤の胃内残存率や 40 0mL ~ 50 0mL のボーラス投与による胃の伸展も関与している可能性もある 比較的低粘度 ( 1 9 0 ~ 6 0 0 m P a s) でも胃食道逆流や流涎の減少は報告されているが 23) この粘度範囲では 胃食道逆流の消失は見込みにくいと判断した また 2000 mpa s 程度の粘度では胃食道逆流防止効果がないと報告されたが 13) この研究ではバリウム製剤が使用されているため 消化管に与える影響が栄養剤とは異なる可能性もある 現時点では効果的な粘度は明確ではなく 今後 粘度を重視した比較研究が望まれる 下痢に関しては 粘度が 3000 mpa s 以上の栄養剤に 7)2 0)2 は 改善効果 4) がある可能性が症例報告とラット研究により示唆された しかし 食物繊維との関連性が考えられるため コントロールと食物繊維を同量とした比較研究が望まれる さらに 3000 mpa s 以上では 15 分以内という短時 7)1 3)19)2 1)2 2)2 間投与が可能であったケースが報告 4) されており 同一姿勢を保つ時間短縮の観点から 褥瘡予防に効果がある可能性 21) が考えられる 投与時間の短縮は リハビリ時間の確保 介護の負担軽減に有効なことが報告されており 7)1 8)19)2 2)2 3) 患者ケアや患者の Q O L の改善が示唆される 現時点での理論や研究 症例報告を基にすると 半固形化法は 患者ケアに大変有用である可能性が高い しかしながら 使用する栄養剤の成分等が 比較検討されていないケースもあるため 半固形化による粘度の効果なのか 食物繊維の量など その他の要因によるものか明確ではない よって 投与量 食物繊維量 投与に要した時間 投与回数 粘度などを明らかにした規模の大きい比 調整法効果のみられた粘度投与時間体位 栄養剤投与後に REF-P1 を注入. 白湯 20ml でフラッシュ. 800 ~ 900mPa s 60 分以内 8 名 30 分以内 3 名 90 度座位 上体 30 度挙上が同数 REF-P1 注入後に栄養剤を投与. フラッシュ水 20ml. 液体栄養剤 500ml + 水 500ml に対し 寒天 5 g. 900mPa s 30 ~ 60 分投与後 1 時間ほど座位 15 分 岡田ら (26) の研究より推定 20,000mPa s 程度 1,000mPa s 2 名 50,000mPa s 1 名 2,000mPa s 9 名 10,000mPa s 11 名 20,000mPa s 14 名 ** 5 分仰臥位 5 ~ 15 分 30 度の半座位 スプーンで 15 秒攪拌し 15 分間静止. 約 4,100mPa s 4 ~ 8 分 30 度半座位. 注入後も 15 分体位保持 水分 200ml に対して粉末状寒天 1g. REF-P1 注入後に栄養剤を投与. 白湯 20ml でフラッシュ. 杏仁豆腐程度の硬さ数分程度座位保持施行なし 190 ~ 600mPa s 以内 1 時間 全量をシェイカーにて 2 ~ 3 分混和後 2 時間放置安定. 推定 3,000mPa s 前後 ( 粘度の経時変化報告より ( 7 )) 15 分 増粘剤を加え バーミックスで 2 分攪拌. 7,920mPa s* 短時間 ( 1 5 分程度と推定 ) * ニュートリー株式会社の情報提供 : ソフティア ENS7g を 70ml の熱湯に溶解させたものに 25 のメディエフバッグの内溶液を 250ml を攪拌しながら投入し 均一になるまで攪拌し 50ml のシリンジ 6 本に吸い取り 25 にて 60 分間保管 シリンジから 300ml のトールビーカーへ排出し B 型粘度計にて粘度を測定したもの ** 胃食道逆流が見られなかった人数 静脈経腸栄養 Vol.25 No.6 2010 47(1211)

図 1: 半固形栄養剤 PG ソフト EJ について神戸市立医療センター西市民病院 NST における半固形栄養剤導入プロトコール 48(1212) 総説

図 2: 半固形化剤 つるりんこ流動食用 について神戸市立医療センター西市民病院 NST における半固形化栄養法 ( ボーラス法 ) のプロトコール 表 4 : 液体栄養剤の半固形化液体栄養剤を半固形化した場合の粘度 コスト 水分などの例を示した 液体栄養剤の半固形化の例 粘度 (mpa S) 200kcal 相当の価格 ( 円 ) 1200kcal 相当の価格 ( 円 ) 100kcal 当りの水分 ( m l ) 1200kcal 当りの水分 ( m l ) CZ-Hi200ml に対し つるりんこ流動食用 6g 約 5,200 230 1,375 84 1,008 ラコール 200ml に対し つるりんこ流動食用 6g 約 4,200 91 545 85 1,020 CZ-Hi200ml+ 水 50ml に対し つるりんこ流動食用 8g 約 5,000 230 1,375 109 1,308 ラコール 200ml + 水 50ml に対し つるりんこ流動食用 8g 約 4,500 91 545 110 1,320 資料提供 : クリニコ イーエヌ大塚製薬 ラコールの患者負担額を 3 割として計算 2009 年 7 月現在 静脈経腸栄養 Vol.25 No.6 2010 49(1213)

表 2: 半固形栄養剤比較市販の半固形栄養剤の粘度 水分量 コスト 食物繊維の種類や量 栄養組成等をまとめた 価格は購入店により異なることがある 2009 年 7 月現在 C: 炭水化物 P: 蛋白質 F: 脂質 半固形栄養剤 テルミール PG ソフト EJ メーカー テルモ 1 本当たりの容量 エネルギー 粘度 (mpa S) 1200kcal 相当の価格 ( 円 ) 200g,300kcal 1,260 20,000 267g,400kcal 1,260 カームソリッド 300 400ml,300kcal オープン価格 1,396 ニュートリー 10,000 カームソリッド 400 400ml,400kcal オープン価格 999 1200kcal 当 1200kcal 当たりの水分 ( m l ) りの食物繊維 (g) 528 4.5 ハイネゼリー大塚製薬工場 300g,300kcal 6,000 1,260 912 12 リカバリー ニュートリート マステル 5000 三和化学研究所 クリニコ 200g,300kcal 1,260 5,000 267g,400kcal 1,197 150g,300kcal 1,260 5,000 200g,400kcal 1,200 15 504 18 312 24 アキュア VF-5 旭化成ファーマ 200g,300kcal 5,000 オープン価格 494.6 27.6 F2 ショット EJ メディエフ プッシュケア テルモ 味の素ファルマ 200g,200kcal 1,512 4,000 300g,300kcal 1,260 150g,300kcal 200g,400kcal 2,000 オープン価格 オープン価格 924 18 アキュア VF-1 旭化成ファーマ 200g,300kcal 1,000 オープン価格 494.6 27.6 食物繊維 寒天ペクチン ( 安定剤 ) ゲル化剤 ( 増粘多糖類 ) グァーガム分解物安定剤 ( 加工でん粉 ) グァーガム分解物ゲル化剤 ( 寒天 ) 難消化性デキストリン寒天 難消化性デキストリンセルロース 結晶セルロース難消化性デキストリン寒天 食物繊維 ( 大豆ふすま ) タピオカデキストリン 325 14.4 ガラクトマンナン 結晶セルロース難消化性デキストリン 栄養組成 %( k c a l 比 ) C: 64 P: 16 F: 20 C: 65 P: 15 F: 20 C: 60 P: 20 F: 20 C: 58.3 P: 20 F: 21.6 C: 約 55 P: 20 F: 25.2 C: 57 P: 20 F: 23 C: 約 64 P: 16 F: 19.8 C: 56 P: 18.8 F: 25.2 C: 57 P: 20 F: 23 表 3: 半固形化剤比較市販の半固形化剤の粘度 コスト 表現 調整方法 食物繊維量等をまとめた 価格は購入店により異なることがある 2009 年 7 月現在 商品名 ソフティア ENS イージーゲル リフラノン メーカー 市販価格 ( 税込 ) ニュートリー 63 円粉末 大塚製薬 ヘルシーフード 79 円 形態 液体 1 液 + (1 液 2 液 = 2 液 ) 54g 49 円液体 栄養剤 200ml に対する使用量 1200kcal 分の 半固形化剤のコスト (200ml に対する 粘度 ( m P a s ) 表現 調整方法 所要時間 使用量 市販価格 ) 1 包 = 7g 0.8 包 302.4 円 8,000± 2,000 プリン状 1.3 包 1 包 = (CZ-Hi 25g の場合 ) 1 包 474 円 382.2 円 588 円 約 5,000 約 26,000 ヨーグルト状プリン状 ソフティア ENS を 75ml の湯に溶かした後 室温の栄養剤 250ml と混合 室温の栄養剤に 1 液 2 液の順に混合 平均 3,570 室温の栄養 ( 1, 7 5 0 ~ 5, 8 0 0 ) ヨーグルト状平均 15,600 剤に混合するプリン状 (8,900 ~ 35,000) のみ 常温 20 分 ( 冷蔵すると早く固形化 ) 常温 20 分 (1 時間冷蔵でさらに固形化 ) 常温 5 分 食物繊維 100g 27g 1 個 ( 5 4 g ) 2.6g 100g 1g 原材料 デキストリン寒天増粘多糖類 デキストリンペクチンクエン酸 Na メタリン酸 Na p H 調整剤乳酸 Ca デキストリン増粘多糖類 つるりんこ流動用 ( 分包 ) つるりんこ流動用 ( 袋 ) クリニコ 24.15 円 3,318 円 粉末 1 包 = 3g 1 袋 = 800 g 4g 5 ~ 6g 7g (CZ-Hi の場合 ) 99.54 円 124.4 149.3 円 174.1 円 ( 袋使用の場合 ) 2,000 ~ 2,500 3,000 ~ 5,000 6,000 ~ 6,500 ポタージュスープ状ヨーグルト状マヨネーズ状 室温の栄養剤に混合するのみ 常温 5 分 100g 12.9g デキストリンキサンタンガムカラギーナンクエン酸三 Na ファセットパウダー ( 分包 ) ファセットパウダー ( 袋 ) フードケア オープン価格 粉末 1 包 = 3g 1 袋 = 500 g 2 ~ 3 g 3 ~ 4g オープン価格 約 500 約 5,000 ポタージュ状ヨーグルト状 室温の栄養剤に混合するのみ 常温 5 ~ 10 分 100g 10.8g デキストリン増粘多糖類 ph 調整剤 トロメイク SP ( 分包 ) トロメイク SP ( 袋 ) 明治乳業 29.5 円 3,780 円 粉末 1 包 = 2.5g 1 袋 = 800 g 2g 3 ~ 4g 5g ( お茶 200ml の場合 ) 56.7 円 85 ~113.4 円 141.75 円 ( お茶 1200ml 袋使用の場合 ) 粘度非公開 ポタージュ状シロップ状ジャム状 冷温に関係なく 2 ~ 3 分混合するのみ 100g 32g デキストリン増粘多糖類塩化カリウム REF-P1 ジャネフ 199.5 円 液体 1 袋 = 90g 400ml 300ml 200ml ( R E F - P1 1 袋の栄養剤の量 ) 598.5 円 798 円 1,197 円 約 1,000( 栄養剤 400ml) 約 1,500 強 ( 栄養剤 300ml) 約 2,500 強 ( 栄養剤 200ml) (K-4S 使用の場合 ) 1 袋摂取後 カルシウム含有量の多い液状食品を摂取 1 袋 (90g) ゲル化剤 1.4g ( ペクチン ) ph 調整剤 50(1214) 総説

較研究が望まれる 半固形化剤と液体栄養剤の組み合わせにより 粘度と硬さに相関関係が見られない場合も報告されている点は認識する必要がある 26) 追加水分に関して言及している報告も少なく 半固形栄養剤投与直後の少量投与や空腹時の低速投与が行われていると推測される 追加水分の性質やタイミング等を明記することで 半固形化法の実践に役立つと考えられる 半固形化法は比較的歴史が浅く 論文総数が少ない 現在発表されている論文の大半は 症例報告やエキスパートオピニオンであり 効果について結論付けるには不十分である 今後は 半固形化法に関するエビデンスやコンセンサスのミーティング等が積極的に行われていくと思われるが その基盤になる臨床家による研究発表は不可欠である 医師 管理栄養士 看護師などによる臨床研究が増え エビデンスが明らかになりコンセンサスが確立すれば 日本国外でも半固形化法が普及し より多くの患者ケアの改善につながる可能性があると考えられる 実践例の紹介 筆者 (S.I.) は 日常業務で半固形化法を実践する上で より効果的な栄養療法を行うには 症状に対する粘度レベルのガイドラインが必要だと感じている 適切な粘度のコンセンサスが存在しなければ 担当スタッフの変更や転院の都度 各症例に適した投与方法を試行錯誤することになりかねず 誤嚥性肺炎等のリスクを高める可能性がある S. I. の勤務する施設では 在庫管理上 粘度の異なる半固形栄養剤を複数採用することが難しいため 最も粘度の高い製品を採用している また 導入例 ( 図 1) を作成し 手技の統一を図っている 半固形栄養剤は水分含有量が少ないため 栄養剤投与の 30 分前に追加水分を投与することにしている 現時点では 水分投与と逆流予防を重視した報告は見受けられず 水分投与方法のコンセンサスはないが S. I. は コスト 作業効率 投薬とのタイミング 胃排出の機能などを総合的に検討し 栄養剤投与前の水分投与を実施している 食前の水分投与は リハビリや検査等に左右されることなく確実な投与が行いやすく 外出 入浴後など 状況に合わせた更なる水分投与も行いやすいと考える 今後 水分投与と併せて投薬を行った後 栄養剤を注入するという一連の作業がスムーズに行 えるよう 食前投与禁忌薬一覧表の作成を検討中である 在宅療養に移行する際には コストや介護能力等の問題で栄養剤を変更する場合がある 適切な栄養剤や半固形化剤を選択するためには 粘度や食物繊維の原料等に関する詳細な情報が必要になる 一般的な半固形栄養剤 及び半固形化剤を表 2 表 3 で比較した 表 2の半固形栄養剤では 同カロリー当たりの価格には大きな差がなく 粘度 水分量 食物繊維の種類や量 栄養組成などに差がみられる 各症例に適する半固形栄養剤を選択できる幅が出てきたようである 表 3の半固形化剤では 粘度や食物繊維 同カロリー当たりのコスト 調整方法などに大きな差が見られる 製品の選択は 液体栄養剤との相性も考慮し 総合的に検討する必要がある 粘度と 粘度の表現 ( ヨーグルト状 プリン状など ) は メーカーにより異なっているようだ ( 表 3) 栄養剤の形状の表現の仕方 捉え方には個人差があると考えられ 適切な粘度調整には 液体栄養剤と半固形化剤の正確な分量を指示する必要がある 液体栄養剤の半固形化による粘度やコストの例は表 4に示した S.I. の勤務する施設では 半固形化剤使用方法のマニュアルを作成し 粘度の再現性を保っている ( 図 2) まとめ 日本で普及している半固形化栄養法は 現時点ではエビデンスが不十分であるが 胃食道逆流症 誤嚥性肺炎 下痢を改善する可能性があり リハビリ時間の確保 介護負担軽減 褥瘡予防など 患者ケアに有用である可能性が大変高い 今後 半固形化栄養法のエビデンスや投与法のコンセンサス確立には 粘度以外の要因や 水分量と投与タイミングなどを含めた検討が必要であり 臨床家による活発な研究発表が強く望まれる 謝辞 本論文作成に当たりご指導を頂きました 武庫川女子大学教授雨海照祥先生 ピッツバーグ大学メディカルセンター外科准教授 及び 同胃腸リハビリ 移植センター栄養部ディレクター Laura E. Matarese 先生に深謝致します 静脈経腸栄養 Vol.25 No.6 2010 51(1215)

参考文献 1) 高齢者の栄養補給に使用可能な流動性食品テルモ 高カロリー栄養食品 テルミール PG ソフト を販売開始. Terumo テルモプレスリリース.2005. http://www.terumo.co.jp/press/2005/032.html. 2009 年 2 月 2 日. 2) 濃厚流動食品 ハイネゼリー 6 月 18 日新発売. 大塚製薬ニュースリリース. http://www.otsuka.co.jp/company/ release/2007/0611_01.html. 2009 年 2 月 10 日. 3) 蟹江治郎. PEG の基本と栄養管理. ケアトモ.http://www.caretomo.com/peg02. 2009 年 4 月 2 日. 4) 蟹江治郎. 経管栄養 ( おもに PEG) による下痢. 消化器外科 NURSING11(8):791-798 2006. 5) 蟹江治郎 鈴木裕介. PEG の今とこれから. 消化器内視鏡 20(1):65-70 2008. 6) 合田文則. 胃瘻からの半固形化栄養材をめぐる問題点とその解決法. 静脈経腸栄養 23(2):37-43 2008. 7) 伊藤由紀 今高多佳子 小林一信ほか. とろみ剤を用いた半固形経腸栄養剤と寒天を用いた固形経腸栄養剤の物性比較. 静脈経腸栄養 21(3):77-83 2006. 8) Gottschlich MM. Basic of nutrition and metabolism. American Society of Parenteral and Enteral Nutrition. The ASPEN Nutrition Support Core Curriculum. 5-8, 2007. 9) Shils ME, Shike M, Ross, AC, Caballero B, Cousins RJ. Modern Nutrition in Health and Disease. 10th ed. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins:1180-1181, 1544, 2006. 10)Wang GJ, Tomasi D, Backus W, Wang R, Telang F, Geliebter A, Korner J, Bauman A, Fowler JS, Thanos PK, Volkow ND. Gastric distention activates satiety circuitry in the human brain. Neuroimage 39(4):1824-31, 2008. 11)Marciani L,Gowland AP,Spiller CR,Manoj P,Moore JR,Young P,Fillery-travis3 JA. Effect of meal viscosity and nutrients on satiety,intragastric dilution, and emptying assessed by MRI. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 280:1227-1233, 2001. 12)Kong F, Singh RP. Disintegration of solid foods in human stomach.related Articles J Food Sci 73(5):67-80,2008. 13) 合田文則. 胃瘻からの半固形短時間摂取法ガイドブック. Ⅲ 胃瘻からの半固形短時間注入法の手技とそのエビデンス. 医歯薬出版 東京 2006 p19-26. 14)Tack J, Piessevaux H, Coulie B, Caenepeel P, and Jans-sens J. Role of impaired gastric accommodation to a meal in functional dyspepsia. Gastroenterology 115:1346-1352, 1998. 15)Simonian HP, Maurer AH, Knight LC, Kantor S, Kontos D, Megalooikonomou V, Fisher RS, Parkman HP. Simultaneous assessment of gastric accommodation and emptying: studies with liquid and solid meals. J Nucl Med 45(7):1155-60, 2004. 16)Shimoyama Y, Kusano M, Kawamura O, Zai H, Kuribayashi S, Higuchi T, Nagoshi A, Maeda M, Mori M. High-viscosity liquid meal accelerates gastric emptying. Neurogastroenterol Motil 19(11):879-86, 2007. 17) 稲田晴生 金田一彦 山形徳光. 胃食道逆流による誤嚥性肺炎に対する粘度調整食品 REF-P1 の予防効果. 静脈経腸栄養 20(10):1031-1036 1998. 18) 田部井功 久保宏隆 矢野文章ほか. 粘度調整ゲル化剤を用いた経腸栄養剤投与法の胃食道逆流に対する予防効果と臨床使用経験. 日消外会誌 36(2):71-77 2003. 19)Kanie J et al. Prevention of gastro-esophageal reflux by an application of half-solid nutrients in patients with percutaneous endoscopic gastrostomy feeding. Journal of the American Geriatrics Society 52(3):466-467, 2004. 20) 田代勝文 東口高志 武田悠子ほか. 固形化栄養剤の消化管内形状変化と移行に関する研究ーラットを用いた基礎的検討ー. 静脈経腸栄養 21(2):115-125 2006. 21) 宮本英典. 半固形化栄養法を用いた超高齢経腸栄養患者の栄養状態改善に向けての取り組み. 静脈経腸栄養 24(3):65-67 2009. 22) 蟹江治郎 各務千鶴子 山本孝之ほか. 固形化経腸栄養剤の投与により胃瘻栄養の慢性期合併症を改善し得た 1 例. 日本老年医学会雑誌 39(4):448-451 2002. 23) 金岡俊治 小松健次 溝渕健介ほか. 粘度調整食品を用いた経腸栄養の胃食道逆流に伴う誤嚥性肺炎の予防と患者の QOL に対する長期的影響. 静脈経腸栄養 20(1):65-69 2005. 24) 村林由紀 清水敦哉 佐久間隆幸ほか. 市販の経腸栄養剤への粘度調整の試み. 静脈経腸栄養 21(1):85-89 2006. 25) 寒天の粘度. 伊那食品工業かんてんぱぱ. http://www.kantenpp.co.jp/kanten/science/0210.html. 2009 年 7 月 23 日 26) 岡田晋吾. ゼリー用食品 イージーゲル を用いた各種経腸栄養剤 流動食の固形化特性. 静脈経腸栄養 22(1):41-51 2007. 52(1216) 総説