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1. 測 定 原 理 アルカリ 溶 液 中 で 亜 鉛 イオンは ピリジルアゾレゾルシノール(PAR)と 反 応 して 赤 色 の 錯 体 を 形 成 し これを 光 学 的 に 測 定 し 2. アプリケーション 本 法 は 亜 鉛 イオンを 測 定 し 不 溶 性 や 錯 体 と 結 合 した

研究要旨 研究背景研究目的 意義研究手法結果 考察結論 展望 研究のタイトル 研究要旨 ( 概要 ) あなたの研究の全体像を文章で表現してみよう 乳酸菌を用いてハンドソープの殺菌力を上げる条件を調べる手を洗う時に どのくらいの時間をかければよいのかということと よく薄めて使うことがあるので薄めても効

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4. キレート滴定 4.1 0.01MEDTA 標準溶液の調製 キレート滴定において標準溶液として用いられる EDTA は 普通 EDTA の2ナトリウム塩 H 2 Na 2 Y 2H 2 O で ETA と表示されている この試薬は結晶水以外に多少の水分を含んでいるので 通常は約 80 で数時間乾燥して使用するが 本実験では精密な分析を行うために 調製した EDTA 溶液をZnの一次標準溶液で標定して 正確な濃度を求める この標定は直接滴定法で行う Zn 2+ +H 2 Na 2 Y ZnNa 2 Y +2H + 1. 亜鉛 ( 砂状 ) 約 0.3gをとり 6M 塩酸で手早く表面の酸化物を除き 水 エタノール エーテルで順次洗浄した後 約 110 で 5 分間乾燥させる 2. 乾燥した亜鉛の約 0.2gを精秤し 必要最小限の6M 塩酸で溶かし 完全に溶解したらメスフラスコで 250ml とする 3. EDTA 約 3.8g 上皿天秤でとり 水に溶解して 1000ml とし ポリエチレンビンに保存する 4. 亜鉛標準溶液 1) 20ml をホールピペットでコニカルビーカーにとる 5. これに3Mアンモニア水を少量ずつ加え 一度生じた Zn(OH) 2 の沈殿がかろうじて溶けたならば ph10 の NH 4 Cl-NH 3 緩衝溶液 2) 2~3ml と BT 指示薬数滴加える 6. この溶液に EDTA 溶液を滴下し 最後の1 滴で赤色が青色となる点を終点とする 7. 滴定結果より EDTA 標準溶液の濃度を決定する 1) 亜鉛標準溶液は 逆滴定で使用するので必ず保存しておくこと 2)pH10 NH 4 Cl-NH 3 緩衝溶液の調製 NH 4 Cl および NH 3 の1M 溶液を1:4の体積比で混合する 4.2 直接滴定法単一金属イオンの試料溶液であれば 適当な緩衝溶液を加えて ph を調整し EDTA 標準溶液を用いて金属を定量することができる この方法を直接滴定とよび 多くの場合この方法で定量することができる しかし Pb2+ Hg2+ などはアルカリ性で滴定すると 水酸化物を生じてうまく滴定できない このような場合には沈殿の生成を防ぐために 適当な弱いキレート剤を加える このキレート剤を補助キレート剤といい 酒石酸やクエン酸が用いられる この直接滴定法は最も簡単であるが 次のような場合には都合が悪い

(a) 滴定しようとする金属イオンに対し 鋭敏に変色する金属指示薬のない場合 (b) 補助キレート剤を用いても 滴定可能な ph 限域内で 目的の金属イオンが水酸化物として沈殿し 金属イオンを溶液として保つことが不可能な場合 (c) EDTA 試薬と目的の金属イオンとのキレート生成反応速度が遅い場合 4.2.1 MX 指示薬による銅の定量 硫酸銅の弱酸性溶液に塩化アンモニウム溶液を加えておいて アンモニア水で中和し MX 指示薬を加えて滴定を行う ここで Cu 2+ を溶液中に保つため いくらかの NH 3 を存在させることは必要であるが MX 指示薬 ( ムレキシド ) を使用して銅の滴定を行う場合の ph 限域は8であるので NH 3 水を過剰に用いることはさけなければならない この滴定における反応は次のとおりである Cu 2+ +H 2 Na 2 Y CuNa 2 Y +2H + 1. 硫酸銅約 0.3gをとり 0.5M 硫酸 0.5ml と水を加えて溶解し メスフラスコで 250ml とする 2. この溶液 20ml をホールピペットでとる 3. これに1M 塩化アンモニウム 10ml を加え 1Mアンモニア水を過剰とならないように注意して滴下して中和する このとき途中で銅の水酸化物が生成し それが過剰のアンモニア水に溶けて濃青色を呈する 4. つぎに この溶液にMX 指示薬の希釈粉末をミクロスパーテルで 0.5~1 杯加える 5.0.01MEDTA 標準溶液で滴定し 黄色が赤色をへて紫色に変わる点を終点とする 6. 滴定結果より 硫酸銅溶液 250ml 中の銅の重量を求める 4.3 逆滴定法目的の金属に対して一定過剰の EDTA 標準溶液を加えてから 緩衝溶液を加えて適当な ph とし 過剰分の EDTA を 他の適当な金属イオンの標準溶液で滴定する方法である この場合金属指示薬に鋭敏な Mg 2+ Zn 2+ などがよく用いられるが この際注意すべきことは 逆滴定に用いる金属イオンの選択である 目的の金属イオンを M 2+ 1 逆滴定に用いる金属イオンを M 2+ 2 とすると M 2+ 2 による当量点をすぎると M 1 Y 2- + M 2+ 2 M 2 Y 2-2+ + M 1 のような置換反応が起こることが考えられる < M 1 Y 2- の安定度が M 2 Y 2- のそれよりも十分大きい場合には 置換反応は起こらないが 逆の場合には置換反応が起こって終点が不明瞭になる したがって逆滴定においては 目的金属イオンより安定度の低い金属イオン標準溶液を用いて滴定しなければならない

4.3.1 Zn 標準溶液による Ni の定量 BT 指示薬は Ni イオンと非常に強く結合して EDTA 溶液によって置換されないので変色が不可逆である このために Ni イオンの直接滴定には BT 指示薬を使用することができない しかしこれに過剰の EDTA 標準溶液を加えて Ni-EDTA の錯塩を生成させたのち BT 指示薬を加え 過剰分の EDTA を亜鉛標準溶液で逆滴定すると Ni の量を求めることができる 1. 硝酸ニッケル約 0.15gをとり メスフラスコで 250ml とする 2. この溶液 20ml をホールピペットでとり 0.01M EDTA 標準溶液 10ml を加える 3. それに ph10 の NH 4 Cl-NH 3 緩衝溶液 2~3 ml と BT 指示薬数滴とを加える 4. 0.01M 亜鉛標準溶液で滴定し 青色が紫色に変わる点を終点とする 5. 滴定結果より 試料溶液 250ml 中に存在する Ni の重量を計算する 4.4 置換滴定法定量しようとする金属イオン M 2+ 1 の溶液に M 2 Y 2- 溶液を加えると 次の平衡が成り立つ M 2+ 1 + M 2 Y 2- M 1 Y 2-2+ + M 2 M 1 Y 2- が M 2 Y 2-2+ より十分安定であるなら この平衡は完全に右に進み M 2 を遊離するか 2+ 2+ ら この M 2 を EDTA で滴定することによって M 1 を定量することができる 4.4.1 BT 指示薬による Ca の定量 Ca の滴定において Mg 2+ がまったく存在しないばあいに BT 指示薬を用いて滴定を行うと その当量点における変色はにぶく 終点が不明瞭となるが BT 指示薬と鋭敏に反応する Mg 2+ が共存すると終点が明瞭になるので このような場合に Mg-EDTA を加えると次のような置換反応が起こる Ca 2+ + MgY 2- CaY 2- + Mg 2+ ここで Ca 2+ は MgY 2- よりも安定度定数が大きいから この反応は右方向に進むが その差は小さいので完全には置換されない この地下された Ca 2+ と Mg 2+ を滴定することによって Ca の量を求めることができる Mg 2+ を添加した場合の終点の変色はpH10 において 3~ 10% の添加量で十分効果が現れる Mg-EDTA のかわりに Zn-EDTA を用いても アンモニアアルカリ性溶液では Ca と置換反応が起こるので Mg-EDTA の場合と同様な操作で 滴定することができる 1. 硝酸カルシウム約 0.6gをとり メスフラスコで 250ml とする 2. この溶液 20ml をホールピペットでとる

3. それに ph10 の H 4 Cl-NH 3 緩衝溶液 2ml と Mg-EDTA 溶液 1) 1ml BT 指示薬数滴を 加える 4.0.01M EDTA 標準溶液で滴定し 赤色が完全に青色に変わる点を終点とする 5. 滴定結果より 試料溶液 250ml 中に存在する Ca の重量を計算する 1)Mg-EDTA 溶液の調整 Mg(NO 3 ) 2 6H 2 O のごく少量をビーカーにとり 水に溶解して約 20ml とし ph 10 の緩衝溶液 2ml と BT 指示薬数滴とを加え EDTA 溶液を滴下し終点とする 4. 9 選択滴定法溶液内に2 種あるいは2 種以上の金属イオンが存在する場合 各々を分離せずに適当な方法で 各成分を選択的に滴定する方法が必要となってくる この方法を選択滴定法といい つぎの二つの方法による (A)pHの調整による選択滴定法 phを適当に調節することによって 2 種以上の金属イオンの混合溶液中の目的金属イオンのみを 選択的に定量することができる しかし一般的にいうと phの差のみによって滴定しわけるには 両金属イオンの安定度定数の差が少なくとも 10 8 ~10 10 以上あることが必要であるから 適用範囲にはおのずから制限がある (B) マスク剤 ( いんぺい剤 ) 使用による選択滴定法試料中の目的金属イオンを滴定する際 妨害作用を呈する共存イオンを分離することなく 無色可溶性の安定度の高い錯塩とし EDTA と反応しないようにするために加える試薬をマスク剤という またマスク剤は 妨害となる共存イオンのいんぺいに用いるばかりでなく 金属指示薬の内で微量の金属イオンによってへいそく現象を起こし その変色が妨害される場合に これらの微量の妨害イオンをいんぺいするにもかくことのできない試薬である 主なマスク剤としては シアン化カリウム トリエタノールアミン ヨウ化カリウム フッ化カリウム チオ硫酸ナトリウムや 多くの重金属を沈殿させる Na 2 S-Na 2 S 2 が用いられる 4. 9. 1 ph 調節による選択滴定 ( 水の硬度測定 ) 水の硬度測定法は phの調節による選択滴定法の代表的な例である 天然水中には通常 Ca 2+ と Mg 2+ とが存在するから これに緩衝溶液を加えてpH10 とし BT 指示薬を用い 滴定すると Ca と Mg の合量が求められる これが全硬度である つぎに天然水に水酸化カリウムを加えて phを 12~13 にすると Mg は Mg(OH) 2 となって完全に沈殿して反応しなくなるから NN 指示薬を用いて Ca 2+ を滴定し Ca 量を求める これが Ca 硬度である

(A)Ca と Mg との合量の滴定 ( 水の全硬度 ) 1. 試料水 20ml をホールピペットでとる 2. この溶液に ph10 の緩衝溶液 2ml と BT 指示薬数滴を加える 3. 0.01M EDTA 標準溶液で滴定し 最後の1 滴で赤色から青色に変わる点を終点とする (B) Ca の定量 ( 水の Ca 硬度 ) 1. 試料水 20ml をホールピペットでとる 2. この溶液に駒込ピペットで6M 水酸化カリウム 10ml を加えてよくかきまぜ 数分間静置する この操作により Mg は Mg(OH) 2 となって完全に沈殿し 溶液のpHは約 12 ~ 13 となる 3.NN 指示薬の希釈粉末をミクロスパーテルで 0.5 杯加え 0.01M EDTA 標準溶液で滴定し 最後の1 滴で赤色から青色に変わる点を終点とする