明日出席できない人へ インターネット心理学のフロンティア p.150~163 まで熟読し 500 字程度の感想文をトムソンへメールで送ってください (6 月 22 日夜 12 時まで ) メールアドレス :rob.thomson@lynx.let.hokudai.ac.jp 注意 メールの件名に学生番号とお名前を入れること 参考書 : 杉谷陽子 (2009) 第 3 章 第 10 週 北海道科学大学 情報社会論 講義スライド インターネットにおける 自己呈示 自己開示 インターネットにおける自己呈示 自己開示 三浦麻子 森尾博昭 川浦康至編著 インターネット心理学のフロンティア 誠信書房 メールで済ませたら楽なのに メールなら素直に表現できる 比較的に最近の出来事である 1990 年代前半まで 文字によるコミュニケーションは困難であった 手紙を書く FAX を送る 浮上する疑問 対面でのコミュニケーションと対面でないコミュニケーションとでは何か違うのか 匿名状況はコミュニケーションスタイルをどう影響するか
初期の CMC 理論 メール チャット SNS などにおけるコミュニケーションは CMC と呼ばれる Computer-Mediated Communication コンピューターを介したコミュニケーション 対面でのコミュニケーションと CMC との違いに関する研究は 1970 年代から北米でスタート 当然インターネットはなかったが コンピューターは存在していた 初期の CMC 理論 1990 年代までの諸理論 社会的存在感理論 (Short, Williams, & Christie, 1976) CMC では対面での会話に比べて相手の存在感が希薄になり コミュニケーションが冷たい印象になる キューレスネスモデル (Rutter, 1984) CMC は非言語的なコミュニケーション手がかりを欠くため 対話が課題試行的になり自発性が下がる 手がかり減少モデル (Kiesler, Siegel, & McGuire, 1984) CMC は非言語的手がかりが少ないことによって 脱個人化 ( 自分を意識することができなくなっている状態 ) をお越し インターネット上の言い争いが起こることを説明する概念 従来の理論の 2 つの共通点 1. CMC を従来の対面や電話などよりも劣るメディア コミュニケーションであるという考え 例 : 社会的存在感理論 では CMC は相手が見えなく コミュニケーションが非人間的で冷たい印象を与える 例 : 手がかり減少モデル では CMC で人は自己知覚が低下し社会的制御がきかなくなり 提示版での言い争いが起こりやすいという考え
従来の理論の 2 つの共通点 2. CMCの特徴を 非言語的手がかりの少なさ ということに求めている点非言語的 対面の会話の場合 : コミュニケーション 相手の表情を見る 声 ( イントネーション 音量など ) を聴く CMC の場合 : 非言語手がかりが欠如している 今は絵文字はあるけど 近年の CMC 理論 CMC を従来の対面や電話などよりも劣るメディア コミュニケーションであるという考え インターネットの多機能化により この考えが大幅になくなった しかし 以前として CMC は非言語的手がかりが少ないメディアである という考えを中心にたくさんの研究が行われてきた 特に自己開示や自己呈示に関する研究 CMC の特徴の定義 CMC をこれから CMC が対人コミュニケーションを如何に影響するか に関する研究を紹介する その際 従来のコミュニケーション と CMC とではどこが異なるかをきちんと理解するべき それは CMC の 非言語的手がかりの少なさ がポイント 自己開示とは (1) 他者に対して 言語を介して伝達される自分自身に関する情報 およびその伝達行為 つまり 自分自身に関する情報を他者に話すこと 非常に内面性の高い情報を自己開示することは 告白 とも呼ばれる
自己開示とは (2) 臨床心理学などの分野では多くの研究がある 有名なのは 自己開示 をすること ( すなわち内面的な情報を明かすこと ) によって精神的健康がよくなるという知見 親密性も上昇させる 対人関係においてお互いが積極的に自分の話をするようになることで関係の発展が促進される の促進 CMC では人は自己開示をより深くする ( 詳しく話している ) ことが示唆されている 私はいつも相手に感じるままのことを話している 対面よりもメールやチャットなどでは 私に当てはまる と答える人が多い 実際に対面とメールでの会話を内容分析した研究者では 確かにメールでの会話内容がより詳しかった 皆さんはどうですか? 手がかり減少モデル にあるように 非言語的手がかりが乏しい 脱個人化による 制御の少ない コミュニケーションが生じやすい 良い影響 : 自己開示が起こりやすい 悪影響 : フレーミング ( 言い争い ) が起こりやすい
CMC と自己意識の研究 われわれは 二つの自己意識を持っている と言われる 1. 公的自己意識 他者から評価されたり 人に何かを説明したいりするときに高まる自己意識 2. 私的自己意識 自己の内面に注目が向けられること ( 高まると われわれは自分の動機や欲求に沿った行動に注意が向き 他者からの評価懸念が低下する ) 自己開示が促進される言い争いも起こりやすい 視覚的匿名性と自己開示 公的 私的自己意識を影響する視覚的匿名性を研究した Joinson(2001) を見てみよう 3 つの実験を行い 自己意識における視覚的匿名性の役割を明らかにした研究 視覚的匿名性と自己開示 実験 1 参加者は対面あるいはコンピューターで討論を行った 対面条件では討論が録音され コンピューターの場合はチャットがログ ( 記録 ) された その後 発話が分析され 自己開示度が測定された 結果的に CMC の討論での自己開示度が高かった つまり CMC ではどうも自己開示がしやすい 視覚的匿名性と自己開示 実験 2 参加者は両条件ともコンピューター ( チャット ) を使って討論した 一方は相手が見えない ( 視覚匿名性 ) 状態 もう一方はウェブカメラで相手の姿が見える状態 結果として 視覚匿名性のある参加者のほうは自己開示が多かった つまり CMC で視覚という非言語的な手がかりが利用できないときに自己開示が促進されると指摘する結果
視覚的匿名性と自己開示 実験 3 自己意識を直接に操作する実験 公的自己意識を捜査する条件 参加者は公的自己意識の高低 私的自己意識の高低の条件に分けられた ウェブカメラあり ウェブカメラなし実験室の廊下が暗い パソコン画面の横にマンガのキャラクターの絵が置いている 公的自己意識 : 高私的自己意識 : 低 公的自己意識 : 低私的自己意識 : 低 私的自己意識を操作する条件 パソコン画面の横に自分の顔写真が置いている 公的自己意識 : 高私的自己意識 : 高 公的自己意識 : 低私的自己意識 : 高 視覚的匿名性と自己開示実験 3 自己意識を直接に操作する実験 自己開示の量 0.8 0.6 0.4 0.2 0-0.2-0.4-0.6 自己意識と自己開示の関係 私的自己意識 ( 高 ) 私的自己意識 ( 低 ) 公的自己意識が低くて かつ私的自己認識が高い場合 自己開示がしやすい 公的自己意識 ( 高 ) 公的自己意識 ( 低 ) CMC で活性化する自己概念の研究 本当の自分 が CMC において活性化されるのでは? インターネットで知り合った他者は匿名であり 現実世界の対人ネットワークとのかかわりが一切ない その人に自分に関する秘密などをばらしても 後で問題になる懸念は不要だという主張 また 時間ネットを使って見知らぬ他者とかかわりを持つことによって 本当の自分 を対面のかかわりにおいても活性化しやすくなるという研究も CMC と自己開示のまとめ 1 CMC 上では 自己開示が促進される傾向がある 2 上記の 1 では CMC では利用できる非言語的手がかりが少ないため 私的自己意識が高まり 評価懸念が低下したりすることによって生じる
自己呈示とは 他者からの肯定的なイメージ 社会的承認や物質的報酬などを得るために自己に関する情報を他者に伝達すること 自己開示 = 自己に関する情報をありのままに述べる行為とその言語的内容 自己呈示 = 自己に関する情報を意図的に調整して話す行為全体やその内容 ( 非言語的行動も含む ) の研究 ハイパーパーソナル モデル (1)(Walther et al., 1994) CMC では以下の 4 つの要素が相互に影響与え合い かかわりを持つ者同士の好意が高まっていく 1. 受け手 CMC では非言語的手がかりが相手に伝わりにくいので 受けては 伝えられた情報を過度に重視し相手を捉えがちである 例 : 魅力的な女性と出会いたいと思ってチャットをしている人は たまたま知り合った女性が少し親切な行動をとると その人はとても親切ないい人であると極端に思い込む の研究 ハイパーパーソナル モデル (2)(Walther et al., 1994) CMC では以下の 4 つの要素が相互に影響与え合い かかわりを持つ者同士の好意が高まっていく 2. 送り手そもそも人は自分をよく見せたいという動機を持っているが CMC では理想的な自分を印象付けられるような自己呈示を行うことができる 選択的自己呈示 (selective self-presentation) の研究 ハイパーパーソナル モデル (3)(Walther et al., 1994) CMC では以下の 4 つの要素が相互に影響与え合い かかわりを持つ者同士の好意が高まっていく 3. チャネル ( メッセージの伝達経路 ) CMC では送るメッセージを編集することにメリットがある 時間をかけてメッセージを構成することもできる
の研究 ハイパーパーソナル モデル (4)(Walther et al., 1994) CMC では以下の 4 つの要素が相互に影響与え合い かかわりを持つ者同士の好意が高まっていく 4. フィードバック送り手と受け手が送信したメッセージが互いに好意に受け止めた場合 やっぱり自分が提示した自己はいいよね と自覚し ますます相互に理想的な自己呈示を行うことになる 相互に相手を好意的に捉えるスパイラルが生じる の研究 ハイパーパーソナル モデル (5)(Walther et al., 1994) 受けて 送り手 チャネル フィードバック この概念を Walther(1994) が実験研究で検討した 参加者はコンピューター ( チャット ) を用いて討論をした 半数の参加者は 討論の相手のハンドルネームをクリックすると顔写真とプロフィールが表示される 他の半数は相手のハンドルネームをクリックしたときにプロフィールのみ ( 写真なし ) が表示される 結果的に顔写真のない相手に対する好意度が高かった 視覚的情報がないほうが 自分勝手に自己イメージを伝えることができる の研究 CMC における戦略的自己呈示の研究 (1) これまでは CMC 利用とコミュニケーション内容やコミュニケーション主体同士の認知に対する影響に関する研究を紹介してきた 次は われわれが自らの自己呈示目標に応じてメディアを使い分ける ことを検討する研究を紹介する 自分の 印象管理 (image management) のためのメディア選択 の研究 CMC における戦略的自己呈示の研究 (2) O sullivan(2000) はこのアイディア ( 自己呈示目標によるメディアの選択 ) を研究で検討してみた まず自己呈示目標を分類した 自己宣伝自分の良いところを積極的にアピールすること 賞賛他者をほめること 告白自分にとって都合の悪いことを他者に打ち明けること 非難相手の非を指摘すること
の研究 CMC における戦略的自己呈示の研究 (3) O sullivan(2000) の自己呈示目標分類 実験参加者に どのような時に CMC が望ましいか と聞いた コミュニケーション内容 告白 はそもそも難しいから CMC を使って言葉を構成し慎重にメッセージを伝える ( コントロールする ) ことができる 自己 焦点 他者 肯定的自己宣伝 (boost) 賞賛 (praise) 否定的告白 (confess) 非難 (accuse) の研究 CMC における戦略的自己呈示の研究 (4) O sullivan(2000) の自己呈示目標分類 なぜ 告白 は CMC でやりやすいか 対面のコミュニケーションでは非言語的な情報をコントローすることが難しいから 相手が自分の表情や身振り手振りを見ることが大きな心理的負担になる 対面では自分が伝える言葉だけではなく 他の非言語的手がかりについても配慮しなくてはならない それは疲れる CMC の 非言語的手がかりが少ない ことがここで役に立つ のまとめ 1 CMC では 相手に伝わる非言語的手がかりが少ないため 対面や電話などよりも自己呈示がコントロールしやすくなる 2 われわれは CMC の特徴を意識せずとも理解しており たとえば 自分に不利益をもたらす可能性のあるコミュニケーション場面などでは 戦略的に CMC をメディアとして選択する傾向がある CMC における 話しやすさ の研究 ここまでわかったこと CMC の短所として捉えられる 非言語的手がかりの少なさ は実は自己呈示をコントロールできるという良いところも存在する その CMC の話しやすさ のアイディアに関する研究を紹介しよう
CMC における 話しやすさ の研究 CMC は 話しやすい 話しやすさ とは コミュニケーション時に人びとが感じる心理的負担感が低いこと 緊張しない 気軽だ 面倒ではない などなど CMC における 話しやすさ の研究 CMC は 話しやすい 原田 (1997) の研究 (1) 話しやすさの得点 キーボードを打つことが面倒なはずの CMC は意外と評価が高かった 1 0.5 0-0.5-1 各メディアの 話しやすさ の得点 対面テレビ電話音声電話 CMC 同期的会話 非同期的会話 CMC における 話しやすさ の研究 CMC は 話しやすい 原田 (1997) の研究 (2) CMC が話しやすい理由 1. コントロール可能性 自らの発話を意図的にコントロールすることができること 対面では : 年配の人に対しての礼儀正しさ 親友に対してくだけた雰囲気 視線の位置 外見の雰囲気 テキストベースの CMC では 表情や視線などは伝わらないため 与えたい印象を上手に気楽に伝えることができる CMC における 話しやすさ の研究 CMC は 話しやすい 原田 (1997) の研究 (3) CMC が話しやすい理由 2. 編集可能性 発話の歳にその内容を満足いくまで編集できること 時間 がポイント チャットの場合は即時に返信しなくてはならないので 編集時間が少なく 編集可能性が低い メールの話しやすさ が高いことは この理由にある 与えようとする印象を 編集 する必要な時間があるから