第12回 地盤と基礎(その2:地盤調査と基礎)

Similar documents
<4D F736F F D2081A E682568FCD926E94D592B28DB E94D589FC97C78C7689E62E646F63>

地盤調査報告書 スウェーデン式サウンディング試験に基づく地盤調査 調査名称 清水東町 I 号地事前調査 調査場所 熊本県熊本市北区清水東町 株式会社奥羽興産 金城重機株式会社 千葉県松戸市高塚新田 512 番 19 号 TEL FAX

<8B5A8F708E77906A89FC92F988C E FCD2E786477>

<4D F736F F D2095CA93598E9197BF312D315F8C9A927A8AEE8F C982A882AF82E9926E94D582C98AD682B782E98B4B92E85F E646F63>

各主体における基準 考え方まとめ 第 1 回検討会 (8/1) 資料に一部加筆 高規格堤防建築 ( 戸建て住宅 ) 土地区画整理 主体 河川管理者 施主 住宅メーカーなど 共同事業者 ( 地方公共団体など ) 目的 高規格堤防としての安全性の確保高規格堤防特別区域における通常の土地利用 地盤強度に応

保 証 最 低 基 準

はじめに 宅地造成等規制法が昭和 36 年に制定されてからおよそ半世紀を経過しました この間 平成 18 年には同法制定以来初めての抜本改正が行われています この改正は 阪神 淡路大震災 ( 平成 7 年 ) 新潟県中越地震 ( 平成 16 年 ) などで被災例が多かった大規模盛土造成地に対応するの

data_a

第 3 章 間知ブロック積み擁壁の標準図 133

<4D F736F F D2091E D291E682508FCD91E DF F808D5C91A2907D816A D E646F63>

<4D F736F F D2095BD90AC E8D918CF08D9091E D862E646F63>

来る条件とした また本工法は がけに近接して施工する場合 掘削及び混合 攪拌から 転圧 締固め施工時 施工に伴うがけへの影響を避けることが難しいので がけに影響を与えず施工出来る場合を条件とした 具体的にはバックホー等の施工機械を がけに近接配置して施工することを避けるとともに 特にがけ近接部分の転

説明書 ( 耐震性 ) 在来木造一戸建て用 ( 第二面 ) 基礎根入れ深さ深さ ( mm ) 住宅工事仕様書 適 基礎の 立上り部分 高さ ( mm ) 厚さ ( mm ) 基礎伏図 不適 各部寸法底盤の寸法厚さ ( mm ) 幅 ( mm ) 基礎詳細図 基礎の配筋主筋 ( 径 mm ) 矩計図

<94AA94F68E73938C8E52967B92AC352D36302D31302E786C73>

Microsoft Word - 01_はじめに

<874B91E631308FCD976995C78D5C91A2907D8F572E707562>

Microsoft PowerPoint kiban_web.pptx

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

<4D F736F F D208E9197BF A082C68E7B8D A815B82CC8D5C91A28AEE8F C4816A2E646F63>

L型擁壁 宅造認定 H=3 5m ハイ タッチウォール KN0202-石乱積み 透水層 止水コンクリート 敷モルタル 基礎コンクリート 土粒子止めフィルター 直高H3.0m超 最大5.0mの プレキャストL型擁壁 宅造法に基づく国土交通大臣認定取得商品です 社団法人全国宅地擁壁技術協会による工場認

Ⅲ 診断判定モデル住宅事例 建物概要 2 階建て木造住宅延べ床面積 53 m2 1 昭和 56 年 6 月以降 2 地盤は普通か良い 3 鉄筋コンクリート基礎 4 屋根は軽い 5 健全である 6 壁量多い 7 筋かいあり 8 壁のバランスが良い 9 建物形状はほぼ整形 10 金物あり 老朽度 診断結

Microsoft Word - 02_第1章.docx

Microsoft PowerPoint - Kiso_Lec_5.ppt

Microsoft PowerPoint - Kiso_Lec_5.ppt

補強コンクリートブロック造の臥梁の有効な幅について Q1 壁式構造関係設計規準集同解説 ( メーソンリー編 ) にある補強コンクリートブロック造設計規準 10 条 臥梁の構造 において, 臥梁の幅は水平支点間距離の 1/20 以上かつ 200mm 以上とするとありますが, 通常ブロックの幅は 150

Microsoft Word - 平成 12 年 1399 号.doc

別添 別添 地下貯蔵タンクの砕石基礎による施工方法に関する指針 地下貯蔵タンクの砕石基礎による施工方法に関する指針 本指針は 危険物の規制に関する政令 ( 以下 政令 という ) 第 13 条に掲げる地下タンク貯蔵所の位置 構造及び設備の技術上の基準のうち 当該二重殻タンクが堅固な基礎の上に固定され

Microsoft PowerPoint - Kiso_Lec_13

L 型擁壁 (CP-WALL) 構造図 S=1/30 CP-WALL(C タイプ ) H=600~700 断面図 正面 背面図 H T1 T2 T4 T3 T4 H2 H1 100 B1 B2 T5 H 連結穴 M16 背面 水抜孔 φ75 正面 水抜孔 φ90 h1 h2 製品寸法表


L 型擁壁 (CP-WALL) 構造図 S=1/30 CP-WALL(B タイプ ) H=1900~2500 断面図 正面 背面図 製品寸法表 適用 製品名 H H1 H2 B 各部寸法 (mm) B1 B2 T1 T2 T3 T4 T5 水抜孔位置 h1 h2 参考質量 (kg) (

集水桝の構造計算(固定版編)V1-正規版.xls

資料 1 SAMPLE

土層強度検査棒 計測データ例 kn/ m2 45 滑り面の可能性ありとした箇所の条件 : 地下水に飽和していること 及び SS 試験で 100kg 以下で自沈する箇所であること 土層強度検査棒による地盤強度計測結果グラフ 粘着力 計測値 30 T2 O5 25 M4 M3 20 滑り面

二重床下地 という 参考図参照) として施工する方法がある 二重床下地は 支持脚の高さを一定程度容易に調整することができること また コンクリートスラブと床パネルとの間には給排水管等を配置できる空間があることから 施工が比較的容易なものとなっている 2 本院の検査結果 ( 検査の観点 着眼点 対象及

<4D F736F F D CF906B C98AD682B782E982B182C A2E646F63>

<8D5C91A28C768E5A8F91836C C768E5A8F A2E786C73>

<312E955C8E86>


スライド 1

様式-1

目次 1. 適用範囲 1 2. 引用規格 1 3. 種類 1 4. 性能 2 5. 構造 2 6. 形状 寸法 3 7. 材料 3 8. 特性 4 9. 試験方法 検査 6 ( 最終ページ :11)

<4D F736F F D20834A C C7997CA89BB298B5A8F708E9197BF28914F94BC AAE90AC816A2E646F63>

<95F18D908F912E4F5554>

< 被害認定フロー ( 地震による被害木造 プレハブ > 第 次調査 ( 外観による判定 一見して住家全部が倒壊 一見して住家の一部の階が全部倒壊 地盤の液状化等により基礎のいずれかの辺が全部破壊 いずれかに いずれにも ( 傾斜による判定 全壊 外壁又は柱の傾斜が/ 以上 ( % 以上 ( 部位

4. 粘土の圧密 4.1 圧密試験 沈下量 問 1 以下の問いに答えよ 1) 図中の括弧内に入る適切な語句を答えよ 2) C v( 圧密係数 ) を 圧密試験の結果から求める方法には 圧密度 U=90% の時間 t 90 から求める ( 5 ) 法と 一次圧密理論曲線を描いて作成される ( 6 )

強化プラスチック裏込め材の 耐荷実験 実験報告書 平成 26 年 6 月 5 日 ( 株 ) アスモ建築事務所石橋一彦建築構造研究室千葉工業大学名誉教授石橋一彦


第2章 事務処理に関する審査指針


土量変化率の一般的性質 ❶ 地山を切土してほぐした土量は 必ず地山の土量 1.0 よりも多くなる ( 例 ) 砂質土 :L=1.1~2.0 粘性土 :L=1.2~1.45 中硬岩 :L=1.50~1.70 ❷ 地山を切土してほぐして ( 運搬して ) 盛土をした場合 一般に盛土量は地山土量 1.0

道路橋の耐震設計における鉄筋コンクリート橋脚の水平力 - 水平変位関係の計算例 (H24 版対応 ) ( 社 ) 日本道路協会 橋梁委員会 耐震設計小委員会 平成 24 年 5 月

<4D F736F F F696E74202D F8AF991B B8A EA8EAE816A816990E096BE89EF8E5189C18ED C5816A>

IT1815.xls

さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 第 4 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 155 第 4 渡り廊下で接続されている場合の 取り扱い

<4D F736F F D2096D88E4F BE095A88D C982E682E989A189CB8DDE8B7982D197C090DA8D878BE095A882CC8C9F92E8>

<4D F736F F D D FC897DF8F8091CF89CE8D5C91A294BB95CA8E9197BF81698AC888D594C5816A2E646F63>

大阪市再開発地区計画にかかる

参考資料 -1 補強リングの強度計算 1) 強度計算式 (2 点支持 ) * 参考文献土木学会昭和 56 年構造力学公式集 (p410) Mo = wr1 2 (1/2+cosψ+ψsinψ-πsinψ+sin 2 ψ) No = wr1 (sin 2 ψ-1/2) Ra = πr1w Rb = π

材料の力学解答集

<4D F736F F D208D7E959A82A882E682D18F498BC78BC882B B BE98C60816A2E646F63>


強化 LVL 接合板および接合ピンを用いた木質構造フレームの開発 奈良県森林技術センター中田欣作 1. はじめに集成材を用いた木質構造で一般的に用いられている金物の代わりに スギ材単板を積層熱圧した強化 LVL を接合部材として用いる接合方法を開発した この接合方法では 集成材と接合板である強化 L

新旧品番対比表

<4D F736F F F696E74202D F30335F32395F94AD8D735F8B8B939290DD94F582CC935D937C96688E7E915B927582C98AD682B782E98D908EA682CC89FC90B382C982C282A282C481698B8B939290DD94F5935D937C96688E7E837D836A B816A5F88E

ウィンドブリック施工要領書 2018 年 7 月

国土技術政策総合研究所資料

横浜市のマンション 耐震化補助制度について

JCW® 規格集

15_layout_07.indd

<8E7B8D E838A8358C495CA8E86352E786C73>

建築支保工一部1a計算書

<4D F736F F D E90AE816A8C9A927A8A6D94468EE891B182AB82CC897E8A8A89BB E7B8D7392CA926D816A>

Microsoft PowerPoint 発表資料(PC) ppt [互換モード]

- 14 -

TSK 国土交通省 新技術情報提供システム NETIS登録番号 HK A PAT.P 環境適応型落石防止工 プラスネット プラスネット プラスネットハニー

第 2 章 構造解析 8

立川市雨水浸透施設設置基準 1. 目的この設置基準は 立川市雨水浸透施設設置補助金交付要綱 ( 以下 要綱 という ) の雨水浸透施設の設置にあたり 必要な事項を定めることを目的とする 2. 用語の定義補助対象の雨水浸透施設とは 雨水浸透ます 及び 雨水浸透管 とし 雨水浸透施設の設置に伴い発生する

A-2

- 2 - 改正する 次の表により 改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定は 改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し 改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは これを加える

<4D F736F F D208D5C91A297CD8A7793FC96E591E6328FCD2E646F63>

これだけは知っておきたい地震保険

Microsoft Word - CPTカタログ.doc

< F2D A A B8C817A9364>

GEH-1011ARS-K GEH-1011BRS-K 1. 地震入力 参考 1-1. 設計基準 使用ワッシャー 準拠基準は以下による M10 Φ 30 内径 11 t2 建築設備耐震設計 施工指針 (2005 年版 ): 日本建築センター FH = KH M G KH: 設計用水平震度 KH =

7 鋼材試験

TSK 国土交通省 新技術情報提供システム NETIS登録番号 HK A PAT.P 環境適応型落石防止工 プラスネット プラスネット プラスネットハニー

ここで, 力の向きに動いた距離 とあることに注意しよう 仮にみかんを支えながら, 手を水平に 1 m 移動させる場合, 手がした仕事は 0 である 手がみかんに加える力の向きは鉛直上向き ( つまり真上 ) で, みかんが移動した向きはこれに垂直 みかんは力の向きに動いていないからである 解説 1

耐雪型歩道柵 (P 種 )H=1.1m ランク 3 ( 基礎ブロック ) 平成年月日

FC 正面 1. 地震入力 1-1. 設計基準 準拠基準は以下による 建築設備耐震設計 施工指針 (2005 年版 ): 日本建築センター FH = KH M G KH: 設計用水平震度 KH = Z KS W : 機械重量 FV = KV M G = 機械質量 (M) 重力加速度 (G) KV =

16 コンクリートの配合設計と品質管理コンクリートの順に小さくなっていく よって, 強度が大きいからといってセメントペーストやモルタルで大きい構造物を作ろうとしても, 収縮クラックが発生するために健全な構造物を作ることはできない 骨材は, コンクリートの収縮を低減させ, クラックの少ない構造物を造る

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐火性能の評価 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLTによる木造建築物の設計法の開発 ( その 3) ~ 防耐火性能の評価 ~ 建築防火研究グループ上席研究員成瀬友宏 1 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐

Microsoft Word - 建築研究資料143-1章以外

用いるかは 任意に選択することができる 法的積載荷重を下回る場合は 安全サイドの処置を講ずるものであり 上回る概数を用いて 定員等で表示する場合は それに対応した強度を有していれば支障がないためである 定員は法定積載量又は定格積載量を65 kgで乗じた数値の小数点以下の端数を切り捨てた数値とする 例

NETIS 登録 登録番号 KK A PJG 協会

<4D F736F F D208AAE97B98C9F8DB8905C90BF8F912E646F63>

3-3 新旧対照表(条例の審査基準).rtf

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 構造研究グループ荒木康弘 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~

Microsoft Word - 04【修正2版】資料編③ 4章(特別委員会用)

Microsoft PowerPoint - ‚æ2‘Í.ppt

Transcription:

住宅に関する相談事例を考える 第 12 回 木村孝 Kimura Takashi 丸ビル綜合法律事務所弁護士 住宅問題に加え 日弁連コンピュータ研究委員会委員長を歴任するなど 技術をめぐる法律問題に長く取り組んでいる 地盤と基礎 ( その 2: 地盤調査と基礎 ) 今回は 前号で説明したような 個性 の強 い地盤に対応して 適切な建物 特に基礎をどのように設計すべきなのかを説明します 基礎についてのルール ( 平成 12 年の建築基準法改正前 ) 2000 年 ( 平成 12 年 ) の建築基準法 ( 以下 建基法 ) 改正までは 地盤の強さに関して 建物にどのような基礎を設ける必要があるのかについて具体的なルールは定められていませんでした とはいっても まったく定められていなかったというわけではありません 鉄筋コンクリート造や鉄骨造あるいは木造でも3 階建ての場合は 設計に当たっては構造計算を行い 建物などの荷重 地震や風によって建物に加わる力が基礎や地盤に加える力を計算し その力と地盤の強さ ( 支持力 地耐力 ) とを勘案して 基礎建物にとって有害な沈下や変形が生じないことが確かめられた基礎を設ける必要があります そのため 建基法自体で詳細なルールを定めなくても 適切な基礎を設けることのできるしくみになっていたのです *1 これに対し 2 階建て以下の木造の建物では 建築図 1 基礎の下に んだ杭 ( 基礎ぐい ) によって支えられた基礎 式 基礎 基礎 3 種類の基礎の略図 基準法施行令 ( 以下 建基令 )42 条 2 項に 土台は 一体の鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造の布基礎 に緊結しなければならない と定められているだけでした これは 2 階建て以下の木造の建物の基礎はコンクリート造で 基礎のすべての部分がどこかではつながっている布基礎 *1 ( いわば棒状の基礎 ) にすればよいという意味です 図 1 また条文中で 鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造 とあるように 必ずしも鉄筋コンクリートを使わなくてもよいことになっていました もっとも 建基令 38 条 1 項に 建築物の基礎は 建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え かつ 地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない という すべての建物に適用されるルールがあかしるので 不同沈下が生じた場合には瑕疵 ( 欠陥 ) 基礎基礎の 上がり部 だ でなく 底盤一面が鉄筋コンクリートになっている基礎 式 基礎 上がり部 下部が底盤を た基礎 式 断面が になる 盤 盤 22

に当たることは間違いありません しかし 先に述べた構造計算やこれから説明する地盤調査が必要とされていないという不同沈下によるトラブルが生じがちなしくみのルールになっていたのです *2 基礎についての現在のルール このような事態 *3 を受けて 2000 年に先の建基令 38 条が改正され 構造計算を行わずに基礎を決める場合は 同条 3 項の 建築物の基礎の構造は 建築物の構造 形態及び地盤の状況を考慮して建設大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない という規定に基づいて同時に平成 12 年建設省告示 1347 号 ( 以下 告示 1347) 第一 が制定されました *4 2 階建て以下の木造建物を含めて 基礎に関するルールが具体化されたことになります その主な内容は以下のとおりです 基礎を支える地盤の長期の許容応力度 つまり強さに応じて それぞれ 20キロニュートン ( 約 2t)/ 平方メートル ( 以下 kn/ m2 ) 未くい満の場合は杭基礎 20kN/ m2以上 30kN( 約 3t)/ m2未満の場合が杭基礎かベタ基礎にする必要があり 30kN/ m2以上の場合は これらのほか布基礎とすることもできる ( 同 1 項 ) 表 22ページ図 1 地盤の長期に生ずる力に対する認容応力度 ( 基礎を支える地盤の強さ ) 20kN/ m2未満 表 20kN/ m2以上 30kN/ m2未満 30kN/ m2未満 認容応力度と基礎の構造 基礎の構造 杭基礎 杭基礎ベタ基礎 杭基礎ベタ基礎布基礎 ベタ基礎あるいは布基礎とする場合は 同 2 項あるいは同 3 項に規定する寸法の原則として鉄筋コンクリート造とするほか 基礎各部 のサイズや位置 その内部の鉄筋の寸法 本数 位置 間隔なども各項に従う必要がある 地盤調査の必要性 このようにルールが具体化された結果 地盤の長期許容応力度 ( 以下 支持力 ) を確かめなければ そもそも どのような基礎を選択できるのかが決まらないことになります さらに 布基礎の場合は 支持力と建物の重さに応じて 基礎から地盤に力を伝える底盤と呼ばれる基礎の一番下の水平部分の幅が変わりますので ( 同 4 項 2 号 ) 告示 1347によるルールの具体化は 基礎の設計に当たっては 原則として 支持力を調べるために以下のような地盤調査を行うことが不可欠になったことを意味しています *5 スウェーデン式サウンディング調査 スウェーデン式サウンディング調査 ( 以下きり SSW) は 簡単にいえば 先端に錐を付けた鋼おもり鉄のシャフトを 錘で荷重をかけながら回転させ て地盤にねじ入れ 錐が 25 cm沈むまでの回転数 *6 を基に地盤の支持力を求める方法です 24ページ図 2 先に述べた理由で地盤調査の需要が激増したことから 従来は人力でシャフトを回転させていた作業を機械化し その結果を自動的に記録する装置も開発されています 24ページ写真 1 この調査方法は 短時間で済み かつローコストで行える反面 以下のような限界があります 粘性土か砂質土かといった 土の性質 ( 土質 ) は正確には分からない *7 れき 土の中に 大きな礫やコンクリートの破片などがあると そこから下の調査ができない 自沈といって シャフトを回転させなくても沈んでしまう場合には 正確な支持力を判断 23

1 ( 単位 : mm ) 2 110 25.5 kg (10.2 kg ) 3 6 6 4 200 800 1000 φ220 175( 径 30) 150( 最大径 33) 45 最大径の位置 200 全長で先端に向って 1 回の右ねじれ 30 M14 有効長 20 φ19 mm 1 ハンドル 2 おもり 3 載荷用クランプ 4 継足しロッド 5 スクリューポイント連結ロッド 6 スクリューポイント 図 2 スウェーデン式サウンディング (SSW)(JIS A1221:2000) 写真 1 自動式スウェーデン式サウンディング (SSW) 写真 2 ボーリング調査 するのが難しい *8 そのため この方法だけに頼ることができないこともあります しかし後述するボーリング調査に比べれば 装置も簡易なもので済み 作業者の労力も軽いため コストも低廉です そのため一般的な木造住宅の場合 まずはこの調査を行い 何らかの不安材料が見つかったときに 他の調査方法を考えるのが合理的です その際には 低コスト性を生かす意味でも 少なくとも建物の中央と4 隅近くの合計 5 箇所といったように 敷地の複数の箇所で調べることが不可欠といえます 前号で説明したとおり いわゆる造成地では盛土部分と切土部分があっ て 両者の支持力がまったく違うのはよくあることですし 逆に 宅地化されて長期間経過している場合は その間に掘削と盛土が繰り返されていることも多いうえ 昔の水路を埋め立てている場合もあるので できるだけ細かく地中の状態を探る必要があるからです ボーリング調査 最も一般的で本格的な地盤調査の方法といえます サンプラーと呼ばれる鋼鉄製のパイプ状の先端部を 機械で回転させなから地中にねじ込み ( ボーリング ) 写真 2 1m 沈むごとに 24

モンケンと呼ばれる錘を一定の高さから落としてサンプラーを地中に打ち込み 30cm沈むまでの回数 (N 値 ) を基に地盤の強さを計算で求め ( 標準貫入試験 ) サンプラー内の土から土質を判定します 写真 3 さらに目的の深さに達したときに 穴の壁に横方向の荷重を加えて どの程度の力で土が変形するかを調べます ( 坑内水平載荷試験 ) また 地中からサンプルを採取して試験室に持ち帰り 荷重を1 方向あるいは3 方向から加えて土の強さなどを調べます ( 一軸圧縮試験 三軸圧縮試験 ) また サンプルの土を構成する粒の大きさの比率を調べる ( 粒度試験 ) など さまざまな観点から地盤や土の性質を調べることができるのも特徴です ボーリング作業自体 装置も大がかりで時間がかかりますし その後の試験を加えると かなりのコストを要することになりますので 一般の住宅では 慎重を期するために実施するとしても 建物の中心の場所 1 箇所が限度といえます したがって 前記のSSW 調査による 敷地内の他の位置の調査を併用することが不可欠と思います その他の地盤調査方法 表面波探査地面に加えた振動が地中を伝わる速度を測り 地盤の 固さ を調べる調査方法です ハンドオーガ調査人力で 先端にパイプ状の器具のついたシャフトを地中にねじ込んでゆき 土のサンプルを採集する調査です 例えば 地中の限られた範囲にだけ自沈層があって その部分の土質だけは調べたいといった場合に使われます 平板載荷試験これは 他の調査と違い 地盤にどれくらいの強度があるかというより 地盤に求めている強度があるかを調べるために行われる試験とい 写真 3 サンプラーを開けて内部に残った土のサンプルを取り出しているところ えます 基礎が載る地盤面まで掘削した段階で 土の上に載せた直径 30cmの金属製の円盤に 砂利を入れた箱や重機を重石にして荷重をかけ 円盤の下や周囲の土の変形を調べます 地盤改良 前述のとおり 支持力が 20kN/ m2以下の場合 告示 1347によれば 杭基礎としなければならないのですが 告示 1347 第一 の2 項 3 号に定められている規格は いわば 本格的な杭基礎 であり そのルール通りの杭を使うにはかなりのコストがかかります その上 告示 1347 第 1 の2 項 1 号に 基礎ぐいは 構造耐力上安全に基礎ぐいの上部を支えるよう配置すること との規定があります 当然のことなのですが 杭自体の強度だけでなく 杭の下部の地盤の強さ 杭の上部に加わる建物の荷重を それぞれ調査 計算する必要があることになります そのため 一般的な木造住宅の場合 地盤が軟弱であることが分かったときには 告示 1347 第一 の1 項かっこ書きの 改良された地盤にあっては 改良後の許容応力度とする という規定により 地盤改良工事をしたうえで 強化 25

された地盤の支持力に応じたベタ基礎や布基礎とすることが一般的です 調査で20kN/ m2以上の支持力があるという結果が出ても地盤に何らかの不安材料がある場合も同様です このこと自体は間違いではないのですが 問題は 地盤改良工事の方法の選択とそれを前提とした基礎の設計にあります 地盤改良工事としては 軟弱な部分が地面から下 2m 程度の場合には その範囲の土を固化材という薬剤で固める表層改良と呼ばれる方法も採用されます ただ 多くの場合 地盤のうち基礎の下になる部分を薬剤で断続的に杭状に固めたり ( 柱状改良 ) 比較的細い鋼製の杭を打ち込んだりねじ入れたりする方法が使われています どのような方法であっても 改良工事後の地盤やそれにかわる杭状の部分の支持力の検査は不可欠です また 表層改良以外では 最悪の場合 周囲の地盤が下がってしまうと 建物は杭状の部分によって宙吊りの状態で支えられることになりますので 基礎 とりわけ その立ち上がり部分の強度が足りないと 建物の一部が下がってしまうことになりかねませんので そのような事態への配慮も不可欠となります 終わりに 告示 1347の制定による基礎 とりわけ 鉄筋の太さや配置がルール化されたことから 従来は現場で行われていた鉄筋を切ったり曲げたりする加工が鉄筋の納入業者の元で行われるようになり 工事現場に加工済みの鉄筋が過不足ない状態で一式持ち込まれるのが一般的になりました そのため 鉄筋を加工する面倒を避けるために行われることのあった 鉄筋の数を減らすような 手抜き する意味がなくなり 基礎そのものをめぐる欠陥は激減しているように思います その代わり 事前の設計に先立つ段階での 地耐力の 見立て のミス 例えば 地盤調査の調査ポイント不足といった調査の不徹底による盛土層の見落としに起因する不同沈下や柱状改良などをした場合の基礎の立ち上がり部分の強度不足が疑われる基礎の亀裂といった 後からの原因の究明に手数を要する欠陥が目に付くようになってきています くたい特に木造の建物の躯体については 本誌 *9 で説明したように ある意味で規格化しているといってよいのですが その敷地は それぞれに 個性 があるので それに対応しなければならない基礎は 単品設計 単品生産 をする必要があります その点についての認識不足が 2000 年のルールの改正後 10 年以上経っても 基礎と地盤をめぐるトラブルがまだなくならない原因といえるでしょう *1 建基法 20 条 36 条 建基令 82 条 83 条 93 条 *2 実際には 地盤調査のうえ基礎をベタ基礎にしたり 地盤改良 ( 本文参照 ) を施すことも多かったが 基礎の伏図 ( 真上から見た図面 ) や断面図 ( 通常 鉄筋の有無 太さ 位置 間隔が記載される ) がないうえ 基礎屋 と俗称される専門業者にいわば 丸投げ したため 元請の施工業者ですら どのような基礎になっているのかを把握していないことも多かった *3 当時テレビで取り上げられた 欠陥住宅 の大半は 床の上を自然にボールが転がる不同沈下か 不同沈下が原因と見られる雨漏りの事例だった *4 構造計算による場合は 建基令 38 条 4 項と告示 1347 第二 によることになる *5 建基令 93 条によれば 地盤が 岩盤など所定のカテゴリーにあたる場合には 一定の許容支持力を有すると取り扱うことを認めてはいる しかし ある地盤がそのカテゴリーに該当するかどうかについては 客観的な根拠が必要なので それなりの調査や検査が必要となり 後述のスウェーデン式サウンディング調査の方が時間的にもコスト的にも有効で また確実でもある *6 正確には 半回転数 平成 13 年国土交通省告示 1113 号第 2 項の最初の表 ⑶により 基礎の底部より下方 2mの範囲の 1m あたりの半回転数の平均値 (Nsw) をもとに 許容応力度 (qa) =30+0.6Nsw(kN/ m2 ) として算定する *7 人力による場合 ベテランの作業者であれば 感触によってある程度判断可能なようではある *8 第 1 柱書中の括弧書きにより 自沈層がある場合はこの算定式によることはできない 自沈層があるにもかかわらず 註 10の式のNsw=0として qa=30と計算している例もあるが これは 原理かからみて非科学的であるばかりでなく 違法でもあることはいうまでもない *9 ウェブ版 2012 年 9 月号 住宅に関する相談事例を考える 参照 26

*********** ウェブ版 2013 年 7 月号の訂正について *********** 本誌に以下の誤りがありました 訂正とともにお詫び申し上げます 26 ページ右段 *8 誤 : 第 1 柱書中の括弧書きにより 自沈層がある場合はこの算定式によることはできない 自沈層があるにもかかわらず 註 10 の式の Nsw=0として qa=30 と計算している例もあるが これは 原理かからみて非科学的であるばかりでなく 違法でもあることはいうまでもない 正 : 国土交通省告示第 1113 号第 2 の柱書中の但し書き所定の自沈層がある場合はこの算定式によることはできない 自沈層があるにもかかわらず *6の式の Nsw=0として qa=30 と計算している例もあるが これは 原理からみて非科学的であるばかりでなく 違法でもあることはいうまでもない 以上