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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

第6号-2/8)最前線(大矢)

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ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 奥橋佑基 論文審査担当者 主査三浦修副査水谷修紀 清水重臣 論文題目 NOTCH knockdown affects the proliferation and mtor signaling of leukemia cells ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 目的 : sirna を用いた NOTCH1 と NOTCH2 の遺伝子発現の抑制の 白血病細胞の細胞増殖と下流のシグナル伝達系に対する効果を解析した 材料と方法 : 急性 T リンパ芽球性白血病 (T-ALL) 細胞株 2 種と急性骨髄性白血病 (AML) 細胞株 2 種の細胞株に対し NOTCH1 NOTCH2 を標的とした sirna を導入した ノックダウンの細胞増殖とタンパク質発現に対する効果は 比色法 WST-8 アッセイとイムノブロット法を用いて解析した 結果 :T-ALL 細胞株において NOTCH1 のノックダウンは NOTCH2 のノックダウンと同様に細胞増殖抑制効果を示し アポトーシスを誘導した MYC タンパク発現量は NOTCH1 をノックダウンした細胞では減少したが NOTCH2 をノックダウンした細胞では変化がみられなかった AML 細胞株では NOTCH 1 と NOTCH 2 のノックダウンは 細胞増殖に有意な変化は起こさなかった また NOTCH2 のノックダウンは Notch1 蛋白の発現を増加させることなく活性型 Notch1 断片を増加させた さらに ヒト単球性白血病細胞株である THP-1 では NOTCH のノックダウンが mtor タンパクの発現を減少させた 対照的に Notch リガンド刺激によって Notch を活性化させると THP-1 で mtor の発現増加がみられた 結論 :Notch シグナリングにおけるこれらの新しい知見は 白血病に対して有効な Notch を標的とした分子標的治療薬の一因となる < 緒言 > Notch シグナルの活性化は白血病細胞 特に T-ALL 細胞の増殖に関与していることが報告されている このことは Notch シグナルの活性化に関与するガンマセクレターゼを阻害する働きをもつガンマセクレターゼ阻害剤 (GSI) が 白血病の分子標的治療薬候補となることを示唆する 我々のグループらは GSI が種々の白血病細胞の増殖を抑制することを報告してきた (Okuhashi et al. Anticancer Res, 2010) しかし ガンマセクレターゼは Notch 以外にも多くのタンパクを基質としており GSI の作用が Notch 以外のシグナル伝達系に対する作用である可能性がある 従って より特異的な Notch の阻害効果を解析すべきである 我々は以前に Notch リガンド刺激による AML 細胞の増殖効果は多様であることを報告してい - 1 -

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導し HES1 がその下流にある PTEN の発現を抑制する PTEN は AKT タンパクのリン酸化を間接的に阻害し その結果 mtor シグナルを抑制している mtor から Notch への逆方向のクロストークに関しては いくつかの白血病細胞において mtor 阻害剤が Notch1 の発現と活性化に影響を及ぼすことを既に報告している しかしながら Notch と mtor 間の関係は完全には証明されていない 本研究では これらの問題を解決するために sirna によって NOTCH1 と NOTCH2 をノックダウンさせることにより T-ALL および AML 細胞株における細胞増殖と mtor シグナルへの作用を解析した その結果 NOTCH 遺伝子のノックダウンによる興味深い効果と Notch と mtor との新たな関係を発見したことを報告する < 方法 > 細胞 :AML 細胞株 2 種 (THP-1 TMD7) および NOTCH1 に変異がある T-ALL 細胞株 2 種 (DND-41, KOPT-K1) を用いた THP-1 と TMD7 において Notch リガンド刺激が細胞増殖に影響を及ぼすことを我々は以前に報告している なお これらの細胞は 10 % 牛胎児血清含有 RPMI-1640 培養液 5 % CO 2 環境下で培養した sirna:notch1 を標的とした sirna (sin1) と NOTCH2 を標的とした sirna (sin2) でそれぞれ塩基配列の異なる 3 種ずつを用いた また The stealth RNAi negative control Duplex を sirna のコントロールとして用いた これらの sirna をエレクトロポレーション法によって 40 nm ずつ細胞内に導入させた後 培養液中で培養した Notch リガンド : ヒト組み換え型の Notch リガンドである Jagged1 または Delta1 をそれぞれ 1 μg / well ずつコートしたプレートで 細胞培養を行った 細胞増殖測定 :sirna による細胞の短期増殖への効果を評価する方法として WST-8 assay を行った 5 10 4 個 /well の細胞を 0.1ml ずつ 96 穴プレートに添加して 3 日間培養後 WST-8 試薬を添加し ELISA プレートリーダーで細胞数を計測した 形態学 : 2 日から 7 日間培養した細胞のサイトスピン標本を作製後 ライト染色を行い 分化やアポトーシスの有無を評価した イムノブロット法 : イムノブロット法により sirna と Notch リガンドによる細胞内タンパクの発現およびリン酸化に対する効果を評価した sirna または Notch リガンド刺激後 8 時間 24 時間 48 時間でタンパクを回収後 SDS-PAGE およびイムノブロット法を行った 評価に用いた抗体は Notch1 cleaved Notch1 Notch2 MYC AKT p-akt mtor p-mtor 4E-BP1 p-4e-bp1 S6K - 2 -

p-s6k PTEN 内部標準としてα-Tubulin を用いた なお 用いたすべての抗体で少なくとも 3 回以上の実験を行い その再現性を確認した 定量 RT-PCR:siRNA による遺伝子発現量の変化を解析するため定量 RT-PCR 法を用いた sirna を細胞に導入して 24 時間後に RNA を抽出した 各遺伝子の mrna 発現量を測定し β-actin mrna 発現量で標準化して評価した < 結果 > NOTCH sirna によるノックダウン効率 : 各 3 種の sin1 と sin2 による NOTCH1 と NOTCH2 mrna およびタンパクの発現へのノックダウン効率を比較し 細胞ごとに最も導入効率のよかった sirna をその後の解析に用いた NOTCH sirna による細胞増殖への効果 :sin1 sin2 をそれぞれ 4 種の白血病細胞株に導入し 3 日間培養した結果 DND-41 と KOPT-K1 で細胞増殖の抑制が認められた 一方 THP-1 と TMD7 では sirna 導入による細胞増殖の顕著な差はみられなかった また sin1 と sin2 を混合して細胞に導入し 相加または相乗効果を検討したが 大きな変化はみられなかった さらに sin1 sin2 を導入した DND-41 と KOPT-K1 では アポトーシス像を示唆する形態変化を認めた この形態変化は sin1 と sin2 での違いはみられず また形態学的な分化誘導は認められなかった NOTCH sirna によるタンパク発現への効果 :NOTCH のノックダウンが Notch シグナルおよび mtor シグナルへ及ぼす効果を解析した 用いたすべての細胞で sin1 と sin2 導入によってそれぞれ標的とする Notch1 Notch2のタンパク発現の減少が認められた また sin1 により Notch1 の活性型断片である cleaved Notch1 の減少も認められた 興味深いことに THP-1 と TMD7 で sin2 導入によって Notch1 のタンパク量は変化せずに cleaved Notch1 のみの増加が認められた 一方 T-ALL の DND-41 と KOPT-K1 では sin2 によるこのような変化はみられなかったが sin1 導入によって MYC の減少が認められた 次に mtor シグナルへの効果を解析したところ DND-41 で sin1 によって p-4e-bp1 と S6K の減少がみられた THP-1 では sin1 と sin2 によって mtor または p-mtor の減少が認められた Notch リガンドによる mtor シグナルへの効果 :THP-1 で NOTCH のノックダウンが mtor と p-mtor を減少させたことを確認するため Notch リガンド刺激によって Notch を活性化させ mtor タンパクの変化を解析した Notch リガンドである Jgagged1 と Delta1 による刺激後 24 時間から 48 時間で mtor と p-mtor の増加が認められた また リガンド刺激後 8 時間から 24 時間で p-akt p-4e-bp1 p-s6k が増加した < 考察 > 本研究は NOTCH のノックダウンが NOTCH1 変異をもつ 2 種の T-ALL 細胞株の増殖を抑制させることを示した Notch1 の恒常的な活性化が NOTCH1 変異をもつ T-ALL の細胞増殖に重要であることはすでに知られているが NOTCH sirna が T-ALL 細胞株の DND-41 と KOPT-K1 の増殖を抑制することを示した研究は本研究が初である 我々が知る限り T-ALL における Notch2 の役割はまだ報告されていない 本研究から NOTCH2 変異をもたない T-ALL 細胞が NOTCH1 のノックダウンだけでなく NOTCH2 のノックダウンによっ - 3 -

ても細胞増殖が抑制されたことを見出した また NOTCH1 のノックダウンで認められた MYC の発現抑制は NOTCH2 のノックダウンでは認められなかった 我々はこれまでに Notch リガンド刺激による Notch 活性化が AML 細胞の増殖に多様な効果を及ぼすことを報告した 近年 AML 細胞では Notch の標的遺伝子である HES1 の発現量が低いことが報告されている sirna を用いた本研究でも AML 細胞における Notch は細胞増殖にほとんど影響を及ぼさない可能性が示唆された しかし THP-1 と TMD7 で活性型 Notch1 断片が認められるので 弱い発現ではあるが Notch は活性しており THP-1 ではいくつかのタンパクのリン酸化に関与している 我々が以前報告したように Notch リガンドを自ら発現する AML 細胞では Notch シグナルが自律的に活性化していると考える 今回 我々は AML 細胞において NOTCH2 のノックダウンが Notch1 タンパクの発現に影響を与えることなく活性型 cleaved Notch1 の発現量を増加させたことを見出した この発見から Notch2 の減少が Notch1 の断片化を促進させたか あるいは cleaved Notch1 の半減期を促進させた可能性が示唆される T-ALL ではこのような現象が認められなかったが これは T-ALL が NOTCH1 変異をもつため cleaved Notch1 が恒常的に活性化しているためだと考えられる Notch2 から Notch1 への経路について証明する必要がある Notch と mtor との関係については Notch によって発現誘導された HES1 タンパクが PTEN の転写を抑制した結果 AKT のリン酸化が促進されて mtor の活性化が起こることが知られている さらに Notch 活性化による AKT のリン酸化は乳がん細胞や前立腺がん細胞などでも報告されている 我々も THP-1 において Notch の活性化が mtor の発現とリン酸化を促進させ mtor シグナルを活性化させるという Notch から mtor への別の経路を発見した ただし mtor の下流にある 4E-BP1 と S6K のリン酸化が mtor のリン酸化のピーク時間よりも先行することについては不明である TMD7 では Notch リガンド刺激によって これらのタンパク質およびリン酸化に影響を及ぼさなかった この Notch から mtor への経路は PTEN が欠失している THP-1 だけに認められると考える NOTCH sirna を用いた本研究により Notch シグナルの新たな効果を明らかとなった さまざまな白血病に対し Notch を標的とした有効な新規分子標的薬を開発する際には これらの知見を考慮に入れるべきであると考える - 4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4 6 1 7 号奥橋佑基 論文審査担当者 主査三浦修副査水谷修紀 清水重臣 ( 論文審査の要旨 ) Notch1 は造血細胞の増殖と分化を調節する細胞膜受容体で 急性 T リンパ芽球性白血病 (T-ALL) では Notch1 遺伝子変異が高頻度に見いだされ Notch1 シグナルの異常活性化がその発症に関与することが明らかにされている 申請者は修士課程の研究で Notch シグナルの活性化を抑制するγ-セクレターゼ阻害薬が T-ALL を含む様々な白血病細胞株の増殖に種々の影響をもたらすことを示した そこで本研究では Notch1 と Notch2 を sirna を用いてノックダウンすることで より特異的に Notch シグナルの白血病細胞における役割を検討した Notch1 遺伝子異常を有する 2 種類の T-ALL 細胞株では Notch1 や Notch2 のノックダウンにより 細胞増殖は抑制されアポトーシスが誘導された 一方 2 種類の急性骨髄性白血病 (AML) 細胞株では Notch のノックダウンによる増殖抑制効果は認めず THP-1 細胞株では PTEN 非依存性に Notch シグナルが mtor の発現と活性を亢進させる事が見いだされた 本研究は T-ALL における Notch1 異常活性化が細胞増殖に及ぼす役割を明確にすると供に AML においても Notch シグナルが病態に何らかの影響を及ぼしうる可能性を示すもので 分子標的療法開発のための研究などにも有用な示唆を与えうる意義のある研究と評価出来る ( 1 )