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能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

学位論文の要約

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

論文の内容の要旨

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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平成14年度研究報告

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

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博士の学位論文審査結果の要旨

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大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

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平成18年3月17日

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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第6号-2/8)最前線(大矢)

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博第265号

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の


難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 横田正子 論文審査担当者 主査原田清副査井関祥子 船戸紀子 論文題目 Therapeutic Effect of Nanogel-Based Delivery of Soluble FGFR2 with S252W Mutation on Craniosynostosis ( 論文内容の要旨 ) < 緒言 > Apert 症候群 (OMIM: 101200) は 頭蓋骨縫合早期癒合症を主徴とする先天性疾患で 発症原因として線維芽細胞増殖因子受容体 2(fibroblast growth factor receptor 2; FGFR2) の点突然変異によるアミノ酸置換 (S252W P253W) が同定されている これらの変異は リガンド結合能の上昇およびリガンド特異性の喪失により FGFR2 のリガンド依存的な活性化を引き起こすことが知られている 我々は過去に FGFR2 S252W の細胞外領域のみから構成される可溶性 FGFR2(sFGFR2IIIc S252W -FLAG; 以下 sfgfr2iiic S252W と表記する ) が全長 FGFR2 S252W を過剰発現する MG63 細胞の石灰化亢進を抑制すること また sfgfr2iiic S252W を過剰発現するトランスジェニックマウス頭蓋冠より単離した骨芽細胞は MAP キナーゼ経路のシグナル伝達分子のチロシンリン酸化 骨芽細胞のマーカー遺伝子発現および石灰化を抑制することを報告した さらに S252W 変異を持つ Apert 症候群モデルマウスの生体内で sfgfr2iiic S252W を発現させると 同マウスにおいては冠状縫合の早期癒合を全く認めなかったことから sfgfr2iiic S252W が Apert 症候群様の表現型を部分的に抑制することを報告した 疎水化多糖ナノ微粒子 ( ナノゲル ) は その内部にタンパク質や核酸などの生体分子を安定な状態で封入でき 活性を維持したままで内包物の徐放も可能であるという特徴を有している 本研究は Apert 症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症の発症機序を解明し タンパク質キャリアとしてナノゲルを利用した sfgfr2iiic S252W の治療への応用の可能性について検討することを目的とした < 方法 > Apert 症候群モデルマウス ( 以下 AS マウスと表記する ) は 雄性 Fgfr2 +/Neo S252W マウスおよび雌性 +/EIIa-Cre マウスの交配により得た また 同腹仔の +/EIIa-Cre マウスをコントロールマウスとして用いた 胎生 15.5 日齢 AS マウス頭蓋冠より冠状縫合部を摘出し 全 RNA およびタンパク質を抽出し Reverse Transcription (RT) - PCR およびリアルタイム PCR ウエスタンブロット解析を行った リアルタイム PCR では Runx2 Osteopontin Fgfr2IIIb Fgfr2IIIc Fgf10 epithelial splicing regulatory protein 1(Esrp1) プライマーを使用した ウエスタンブロット解 - 1 -

析は抗 ERK p-erk MEK p-mek SAPK/JNK p-sapk/jnk p38 p-p38 Akt p-akt Bax Esrp1/2 -actin 抗体を使用した 野生型可溶性 FGFR2 および sfgfr2iiic S252W の精製を以下のように行った COS-7 細胞に FLAG 発現ベクター sfgfr2iiic-flag あるいは sfgfr2iiic S252W -FLAG を強制発現させ 培養上清を濃縮 FLAG アフィニティカラムにより FLAG 融合タンパク質として精製した sfgfr2iiic-flag ( 以下 sfgfr2iiic と表記する ) および sfgfr2iiic S252W -FLAG ( 以下 sfgfr2iiic S252W と表記する ) と His 融合 Fgf2 リガンド ( 以下 Fgf2-His と表記する ) との結合能をプルダウンアッセイにて評価した また sfgfr2iiic S252W と 全長 FGFR2IIIc 全長 FGFR2IIIc S252W または全長 FGFR2IIIb S252W との二量体形成をそれぞれ免疫沈降法にて評価した sfgfr2iiic S252W の in vitro における効果検証のため 全長 FGFR2IIIc S252W -FLAG 恒常発現 MC3T3-E1 細胞株 ( 以下 MC3T3-Ap と表記する ) を樹立した 細胞増殖に対する作用を MTT アッセイにて 細胞内シグナル分子リン酸化に対する作用をウエスタンブロット解析にて 石灰化に対する作用をアリザリンレッド染色にて評価した sfgfr2iiic S252W の AS マウス冠状縫合癒合に対する作用を頭蓋冠組織培養にて検討した タンパク質の輸送担体としてナノゲルを用い sfgfr2iiic S252W との複合体を作製した 胎生 15.5 日齢 AS マウス (n = 4) およびコントロールマウス (n = 2) より頭蓋冠を摘出し 4 日間の組織培養を行った 冠状縫合部の片側にはナノゲル単体 反対側には sfgfr2iiic S252W -ナノゲル複合体を適用した 組織固定 3 時間前に 5-Bromo-2-deoxyuridine (BrdU) を添加した 4% パラホルムアルデヒドにより組織固定を行い エタノールにより脱水後 パラフィン切片を 7 μm 厚にて作製した ヘマトキシリン-エオジン (H-E) 染色 抗 FLAG 抗体による免疫組織化学染色を行った BrdU 取り込み細胞の検出には抗 BrdU 抗体を用い DAPI による核染色を行った In situ ハイブリダイゼーション法はジゴキシゲニン標識 Bsp プローブを用いて行った < 結果 > 胎生 15.5 日齢 AS マウス冠状縫合部において Runx2 および Osteopontin Fgfr2IIIb Fgf10 Esrp1 の高発現が認められた ERK や MEK SAPK/JNK の細胞内シグナル伝達分子のリン酸化および Bax の発現が AS マウスにおいて亢進していた sfgfr2iiic および sfgfr2iiic S252W を精製した結果 それぞれ約 50 kda と同定された sfgfr2iiic および sfgfr2iiic S252W は Fgf2-His と結合することが確認された さらに sfgfr2iiic S252W は FGFR2IIIc および FGFR2IIIc S252W FGFR2IIIb S252W とヘテロ二量体を形成することが示された FGF2 添加により MC3T3-E1 細胞は有意に増殖したが MC3T3-Ap 細胞の増殖は促進しなかった sfgfr2iiic S252W 添加により有意に細胞増殖が抑制された MC3T3-E1 細胞において FGF2 添加により ERK および MEK SAPK/JNK p38 Akt のリン酸化亢進が認められた 一方 MC3T3-Ap 細胞では これら分子のリン酸化は FGF2 非添加でも亢進されており FGF2 添加によっても変化しなかった sfgfr2iiic または sfgfr2iiic S252W 添加により これら分子のリン酸化亢進は抑制された とくに ERK SAPK/JNK p38 において sfgfr2iiic S252W の方が - 2 -

sfgfr2iiic よりも強い抑制作用を認めた MC3T3-E1 細胞は分化誘導培地にて 3 週間後に石灰化が認められたが MC3T3-Ap 細胞では 1 週間後に石灰化が認められ sfgfr2iiic S252W 添加により U0126(MEK 阻害剤 ) および SB203580(p38 阻害剤 ) 添加と同程度まで石灰化の抑制が認められた 頭蓋冠組織培養の結果より AS マウス冠状縫合部においてナノゲル単体添加群 ( 対照群 ) では縫合の癒合が全例 (n = 4) で認められた 一方 ナノゲル-sFGFR2IIIc S252W 添加群 ( 実験群 ) では縫合の早期癒合は全く認められなかった (n = 4) また縫合部の細胞増殖に関しては 各群間の有意差は認められなかったが AS マウスにおいては対照群より実験群の方が さらにコントロールマウスより AS マウスの方が 増殖期の細胞数が少ない傾向にあった < 考察 > 本研究において我々は AS マウス冠状縫合部における骨芽細胞の表現型を特徴付けることができた さらに sfgfr2iiic S252W は FGFR2IIIc S252W 恒常発現骨芽細胞の異常な表現型を抑制し 頭蓋冠組織培養において AS マウス冠状縫合の早期癒合を抑制することが示された AS マウス冠状縫合部間葉組織において Runx2 および Osteopontin Fgfr2IIIb Fgf10 Esrp1 の高発現を認め ERK MEK SAPK/JNK のリン酸化の亢進が認められた また アポトーシス促進因子 Bax の発現亢進も認められた よって頭蓋骨縫合早期癒合症の発症に 受容体のスプライシング異常および異所性のリガンド発現 FGF/FGFR シグナルの活性化 骨芽細胞の分化亢進やアポトーシスが関与する可能性が示唆された sfgfr2iiic および sfgfr2iiic S252W は Fgf2-His に対する結合親和性をもち FGFR2 に対しては S252W 変異の有無に関わらず ヘテロ二量体を形成することが示された さらに sfgfr2iiic S252W は MC3T3-Ap 細胞の増殖 石灰化および細胞内情報伝達機構に対し抑制効果を示した そして sfgfr2iiic S252W -ナノゲル複合体は AS マウス冠状縫合の早期癒合を抑制した よって sfgfr2iiic S252W がデコイ受容体として働くことで S252W 変異による FGF/FGFR シグナルの活性化を抑制し 結果として AS マウス冠状縫合の早期癒合を抑制したと推定される 頭蓋骨縫合早期癒合症は胎生期に生じる疾患のため sfgfr2iiic S252W の臨床応用へ向けては その安全性や効率性を in vivo において詳細に検討する必要がある 当該患者の出生後に施行される頭蓋骨離断術においては 術後に骨癒合の再発の可能性があるため 将来 sfgfr2iiic S252W - ナノゲル複合体をその予防薬として利用できる可能性が期待される < 結論 > Apert 症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症発症に異所性のリガンド発現および受容体のスプライシング異常が関与する可能性が示された sfgfr2iiic S252W の適切な適用が Apert 症候群のみならず他の FGF/FGFR 関連頭蓋骨縫合早期癒合症に対する新規治療法開発の一助となる可能性が示唆された - 3 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4773 号横田正子 論文審査担当者 主査原田清副査井関祥子 船戸紀子 ( 論文審査の要旨 ) Apert 症候群は頭蓋骨縫合の早期癒合 中顔面部の劣成長 合指症を主徴候とする常染色体優性遺伝性疾患である 原因遺伝子として 線維芽細胞増殖因子受容体 2(fibroblast growth factor receptor 2; FGFR2) の 2 種類の変異 (S252W P253R) が同定されており これらの変異は FGFR2 のリガンドに対する結合親和性の亢進および結合特異性喪失を惹起し リガンド依存性の機能亢進を誘導する 過去に 可溶型変異体 soluble FGFR2IIIcS252W-FLAG ( 以下 sfgfr2iiic S252W と表記する ) が Apert 型変異体 FGFR2IIIc S252W を過剰発現する骨肉腫細胞株 MG63 の分化亢進や FGFR2IIIc S252W トランスジェニックマウスから単離した頭蓋冠由来骨芽細胞の MEK ERK p38 の経路を介した増殖と分化の亢進を抑制することが報告されている さらに sfgfr2iiic S252W を強制発現させた EIIa-Cre;Fgfr2 +/Neo-S252W マウス (Apert 症候群モデルマウス 以下 AS マウスと表記する ) では 冠状縫合の早期癒合を全く認めず sfgfr2iiic S252W が Apert 症候群様の表現型を部分的に救済することが報告されている 一方 近年ナノテクノロジーを使用した新規ドラッグデリバリーシステムが開発されていることから 横田は sfgfr2iiic S252W の治療への応用を検討する上で sfgfr2iiic S252W を継続的に一定期間供給するシステムの構築を目指した そこで Apert 症候群モデルマウスの表現型解析を行なうとともに モデルマウスの頭蓋冠縫合部に対する治療効果を 分子シャペロン機能を有したナノゲルを sfgfr2iiic S252W のキャリアとして検証を行った AS マウスは 雄性 Fgfr2 +/Neo S252W マウスおよび雌性 +/EIIa-Cre マウスの交配により作出し 同腹仔の +/EIIa-Cre マウスをコントロールとして用いた 胎生 15.5 日齢 AS マウス頭蓋冠より冠状縫合部を摘出し 全 RNA およびタンパク質を抽出し Reverse Transcription (RT) - PCR およびリアルタイム PCR ウエスタンブロット解析を行った 野生型可溶性 FGFR2(sFGFR2IIIc-FLAG; 以下 sfgfr2iiic と表記する ) および sfgfr2iiic S252W の精製を行い His 融合 Fgf2 リガンド ( 以下 Fgf2-His と表記する ) との結合能をプルダウンアッセイにて評価した sfgfr2iiic S252W と 全長 FGFR2 との二量体形成を免疫沈降法にて評価した FGFR2IIIc S252W -FLAG 恒常発現 MC3T3-E1 細胞株 ( 以下 MC3T3-Ap と表記する ) を樹立し 細胞増殖に対する作用を MTT アッセイにて 細胞内シグナル分子リン酸化に対する作用をウエスタンブロット解析にて 石灰化に対する作用をアリザリンレッド染色にて評価した 胎生 15.5 日齢 AS マウス (n = 4) およびコントロールマウス (n = 2) より頭蓋冠を摘出し 4 日間の組織培養を行った タンパク質の輸送担体としてナノゲルを用い sfgfr2iiic S252W との複合体を作製したのち 冠状縫合部の片側にはナノゲル単体 反対側には sfgfr2iiic S252W -ナノゲル複合体を適用した 冠 ( 1 )

状縫合に対して垂直に組織切片を作成し 組織学的評価を行った 横田の研究は AS マウス頭蓋冠冠状縫合部の表現型解析および 冠状縫合の癒合に対する sfgfr2iiic S252W の効果を検証するために 実験系 分析方法の構築において適切な研究デザインのもと遂行されており 学術的価値は高く評価できる 研究結果として 以下の知見を得ている リアルタイム PCR およびウエスタンブロット解析より Runx2 および Osteopontin Fgfr2IIIb Fgf10 Esrp1 の高発現が認められた ERK や MEK SAPK/JNK の細胞内シグナル伝達分子のリン酸化および Bax の発現が AS マウスにおいて亢進していた プルダウンアッセイより sfgfr2iiic および sfgfr2iiic S252W は Fgf2-His と結合することが確認された さらに免疫沈降より sfgfr2iiic S252W は FGFR2IIIc および FGFR2IIIc S252W FGFR2IIIb S252W とヘテロ二量体を形成することが示された MTT アッセイより FGF2 添加により MC3T3-E1 細胞は有意に増殖したが MC3T3-Ap 細胞の増殖は促進しなかった sfgfr2iiic S252W 添加により MC3T3-E1 細胞および MC3T3-Ap 細胞において有意に細胞増殖が抑制された ウエスタンブロット解析の結果より MC3T3-E1 細胞において FGF2 添加により ERK および MEK SAPK/JNK p38 Akt のリン酸化亢進が認められた 一方 MC3T3-Ap 細胞では これら分子のリン酸化は FGF2 非添加でも亢進されており FGF2 添加によっても変化しなかった sfgfr2iiic または sfgfr2iiic S252W 添加により これら分子のリン酸化亢進は抑制された また 分化誘導培地にて MC3T3-E1 細胞は 3 週間後に石灰化が認められたが MC3T3-Ap 細胞では 1 週間後に石灰化が認められ sfgfr2iiic S252W 添加により 阻害剤添加と同程度まで石灰化の抑制が認められた 頭蓋冠組織培養の結果より AS マウス冠状縫合部においてナノゲル単体添加群 ( 対照群 ) では縫合の癒合が全例 (n =4) で認められた 一方 ナノゲル-sFGFR2IIIc S252W 添加群 ( 実験群 ) では縫合の早期癒合は全く認められなかった (n = 4) また縫合部の細胞増殖に関しては 各群間の有意差は認められなかったが AS マウスにおいては対照群より実験群の方が さらにコントロールマウスより AS マウスの方が 増殖期の細胞数が少ない傾向にあった これらの結果から横田は 頭蓋骨縫合早期癒合症の病態発症に 受容体のスプライシング異常および異所性のリガンド発現 FGF/FGFR シグナルの活性化 骨芽細胞の分化亢進やアポトーシスが関与する可能性を示唆した また sfgfr2iiic S252W がデコイ受容体として働くことで S252W 変異による FGF/FGFR シグナルの活性化を抑制し 結果として AS マウス冠状縫合の早期癒合を抑制したと考察し sfgfr2iiic S252W を適切に用いると Apert 症候群のみならず他の FGF/FGFR 関連頭蓋骨縫合早期癒合症に対する新規治療法開発の一助となる可能性を示唆した 以上より 本研究の成果は高く評価され 基礎および臨床歯学の発展に大いに寄与することが期待される したがって 本論文は博士 ( 歯学 ) の学位を申請するに十分値するものと認められた ( 2 )