腸内細菌科細菌 Enterobacteriaceae Escherichia coli (大腸菌) Klebsiella sp. (K. pneumoniae 肺炎桿菌など) Enterobacter sp. (E. cloacaeなど) Serratia marcescens Citrobacte

Similar documents
浜松地区における耐性菌調査の報告

地方衛生研究所におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌検査の現状 薬剤耐性研究センター 第 1 室 鈴木里和

2015 年 9 月 30 日放送 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE) はなぜ問題なのか 長崎大学大学院感染免疫学臨床感染症学分野教授泉川公一 CRE とはカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 以下 CRE 感染症は 広域抗菌薬であるカルバペネム系薬に耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌などの いわゆる

公開情報 2016 年 1 月 ~12 月年報 院内感染対策サーベイランス集中治療室部門 3. 感染症発生率感染症発生件数の合計は 981 件であった 人工呼吸器関連肺炎の発生率が 1.5 件 / 1,000 患者 日 (499 件 ) と最も多く 次いでカテーテル関連血流感染症が 0.8 件 /


R01


院内感染対策サーベイランス実施マニュアル

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

「薬剤耐性菌判定基準」 改定内容

公開情報 2016 年 1 月 ~12 月年報 ( 全集計対象医療機関 ) 院内感染対策サーベイランス検査部門 Citrobacter koseri Proteus mirabilis Proteus vulgaris Serratia marcescens Pseudomonas aerugino

スライド 1

スライド タイトルなし

(案の2)

公開情報 7 年 月 ~ 月年報 ( 集計対象医療機関 床未満 ) 院内感染対策サーベイランス全入院患者部門 解説. データ提出医療機関数病床規模が 床未満の 7 年年報 (7 年 月 ~ 月 ) 集計対象医療機関数は 7 医療機関であり 前年より 7 医療機関増加した これは国内 5,79 医療機

公開情報 年 月 ~ 月年報 ( 集計対象医療機関 床以上 ) 院内感染対策サーベイランス全入院患者部門 解説. データ提出医療機関数病床規模が 床以上の 年年報 ( 年 月 ~ 月 ) 集計対象医療機関数は 646 医療機関であった これは国内,649 医療機関の 4.4% を占めていた. 新規感

公開情報 27 年 月 ~2 月年報 ( 全集計対象医療機関 ) 院内感染対策サーベイランス全入院患者部門 解説. データ提出医療機関数 27 年年報 (27 年 月 ~2 月 ) の集計対象医療機関数は 863 医療機関であり 前年より 医療機関増加した これは国内 8,2 医療機関の.2% を占

<4D F736F F F696E74202D F78BA65F838C C A E815B89EF8B6396F28DDC91CF90AB8BDB5F >

名称未設定

85 表 2 外来 入院における主な耐性菌の検出率 (2014 年度 ) 菌名 外 来 入 院 MRSA/S. aureus 19.8%(100/506) 33.6%(300/893) VRE/E. faecium 0%(0/8) 0.5%(1/187) ESBL 産生菌 /E. coli 10.9

webページ掲載原稿CRE コピー.pdf

耐性菌届出基準

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

R06_01

Microsoft PowerPoint - 茬囤æ—�告敧検æ�»çµ’果ㆮèª�ㆿ挹ㆨ活çfl¨æŒ¹æ³Łï¼‹JANISã…⁄ㅼㇿ説柔ä¼ıï¼› æ‘’å⁄ºçfl¨

日本化学療法学会雑誌第61巻第6号

新しい敗血症診断用検査薬を用いた遺伝子関連検査Verigene®の実施指針

でも2016 年 4 月に閣僚会議において 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン が取りまとめられ, 薬剤耐性サーベイランスが目標の1つとなり, それを担う主要機関としての地 1) 方衛生研究所の役割についても言及されている. また, わが国における薬剤耐性菌の状況,1980 年代 グラム陽性

 

Microsoft Word - 医療機関における院内感染対策について

サーベイランス

プライマリーケアのためのワンポイントレクチャー「抗菌薬①」(2016年4月27日)

モダンメディア 63 巻 10 号 2017[ 感染対策と微生物検査 ]255 感染対策と微生物検査 7 感染防止対策加算と微生物検査 Infection prevention medical fees and microbiology laboratory いい飯 ぬまよし沼由 Yoshitsug

プライマリーケアのためのワンポイントレクチャー「総論」(2017年4月12日開催)

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

抗MRSA薬の新規使用患者のまとめ

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

<4D F736F F D E08AB490F591CE8DF B CC8A E646F63>

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

感染制御ベーシックレクチャーQ&A 薬剤耐性菌

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word 資料 各調査の概要

日本化学療法学会雑誌第64巻第4号

MIC MIC...

2 経験から科学する老年医療 上記 12 カ月間に検出された病原細菌総計 56 株中 Escherichia coli は 24 株 うち ESBL 産生菌 14 株 それ以外のレボフロキサシン (LVFX) 耐性菌 2 株であった E. coli 以外の合計は 32 株で 内訳は Enteroco

院内感染対策サーベイランス(JANIS)

PowerPoint プレゼンテーション

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

薬剤耐性菌検出のために臨床検査室が実施すべき検査法

<4D F736F F F696E74202D2091BD8DDC91CF90AB8BDB82C982E682E98AB490F58FC FC816A2E >

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

<4D F736F F F696E74202D2088E397C396F28A778FA797E38FDC8EF68FDC8D DC58F4994C5205B8CDD8AB B83685D>

Microsoft PowerPoint - 参考資料4 【1202最終版】サーベイランス概要

番号

平成21年度 厚生科研 総括研究報告書

untitled


0 Chiba Weekly Report 第 35 週 /8/26~2019/9/1 千葉県結核 感染症週報 千葉県感染症天気図 2 今週の注目疾患 3 8 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 全数報告疾患集計表 4 定点報告 ( 五類感

と役割を明確化し 医療機関内のすべての関係者の理解と協力が得られる環 境を整えること ( 感染制御チーム ) 病床規模の大きい医療機関 ( 目安として病床が 床以上 ) においては 医師 看護師 検査技師 薬剤師から成る感染制御チームを設置し 定期的に病棟ラウンド ( 感染制御チームによ

<4D F736F F D204E6F2E342D F28DDC91CF90AB8BDB82C982C282A282C482CC C668DDA94C5816A F315F372E646F63>

- 1 -


四学会連携提案 カルバペネムに耐性化傾向を示す腸内細菌科細菌の問題(2017)―カルバペネマーゼ産生菌を対象とした感染対策の重要性―

プライマリーケアのためのワンポイントレクチャー「抗菌薬②」(2017年5月10日開催)

スライド 1

<4D F736F F D D8ACC8D6495CF8AB38ED282CC88E397C38AD698418AB490F58FC782C982A882A282C48D4C88E E B8


検査実施料新設のお知らせ

主要耐性菌の概要.ppt

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

PowerPoint プレゼンテーション

< C E8E9E939982CC8AB490F591CE8DF482DC82C682DF2E786C7378>

新技術説明会 様式例

平成17年12月20日

CHEMOTHERAPY aureus 0.10, Enterococcus faecalis 3.13, Escherichia coli 0.20, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter spp., Serratia marcescens 0.78, Prote

四学会連携提案 カルバペネムに耐性化傾向を示す腸内細菌科細菌の問題 (2017) カルバペネマーゼ産生菌を対象とした感染対策の重要性 はじめにカルバペネムに耐性を示す腸内細菌科細菌の増加が問題となっています.2014 年 3 月の国内における集団感染事例を受けて, その年の 9 月には本耐性菌感染症

THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 48-8 Enterococcus avium 5Š, Corynebacterium xerosis 10Š, Corynebacterium pseudodiphtheriticum 10Š, Corynebacterium

2012 年 7 月 18 日放送 嫌気性菌感染症 愛知医科大学大学院感染制御学教授 三鴨廣繁 嫌気性菌とは嫌気性菌とは 酸素分子のない環境で生活をしている細菌です 偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌があります 偏性嫌気性菌とは 酸素分子 20% を含む環境 すなわち大気中では全く発育しない細菌のことで 通

平成 28 年度 ( 第 29 回 ) 和歌山県臨床検査技師会臨床検査精度管理調査 微生物検査速報結果

CHEMOTHERAPY APRIL 1992 Acinetobacter calcoaceticus Staphylococcus aureus, Escherichia coli P. aeruginosa E. eoli, Klebsiella pneumoniae Serratia marc

中医協総会の資料にも上記の 抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス から一部が抜粋されていることからも ガイダンスの発表は時機を得たものであり 関連した8 学会が共同でまとめたという点も行政から高評価されたものと考えられます 抗菌薬の適正使用は 院内 と 外来 のいずれの抗菌薬処方におい

宮城県保健環境センター 課題評価結果対応方針 平成 29 年 3 月 31 日 宮城県

Microsoft PowerPoint .片山(HP用修正).pptx

医療関連感染サーベイランス

57巻S‐A(総会号)/NKRP‐02(会長あいさつ)

ヒビスコール液A カタログ

家畜とヒトとの間における薬剤耐性菌の循環に関する分子疫学および時空間比較ゲノム解析 荒川宜親 ( あらかわよしちか ) 国立大学法人名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻微生物 免疫学講座分子病原細菌学 / 耐性菌制御学分野教授 1983 年 9 月 1989 年 3 月 1989 年 4 月 1


HPM_442_F_TgCHG_1128

101_【資料1】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2018たたき台180903改定資料

Microsoft PowerPoint - 治療.pptx

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

CHEMO THE RAPY OCT. 1994

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

2006 年 3 月 3 日放送 抗菌薬の適正使用 市立堺病院薬剤科科長 阿南節子 薬剤師は 抗菌薬投与計画の作成のためにパラメータを熟知すべき 最初の抗菌薬であるペニシリンが 実質的に広く使用されるようになったのは第二次世界大戦後のことです それまで致死的な状況であった黄色ブドウ球菌による感染症に

本文-5.indd

薬剤耐性菌の基礎知識 「ESBLおよびカルバペネマーゼ産生菌」

<4D F736F F F696E74202D208DD78BDB82CC95AA97A C977B814593AF92E85B93C782DD8EE682E890EA97705D>

26 福保医安第 642 号 平成 2 6 年 9 月 2 6 日 各医療機関管理者 殿 東京都福祉保健局医療政策部長 ( 公印省略 ) 平成 26 年度院内感染対策講習会受講者の推薦について ( 依頼 ) 平素から 東京都の福祉保健行政に御協力を賜り 厚くお礼申し上げます 標記の件について 厚生労

Transcription:

CREとJANIS検査部門 について 国立感染症研究所 細菌第2部 JANIS事務局 筒井敦子 感染症法の報告対象となる薬剤耐性菌感染症 5類全数 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 CRE 感染症 薬剤耐性アシネトバクター MDRA 感染症 バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 VRSA 感染症 バンコマイシン耐性腸球菌 VRE 感染症 5類基幹定点 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MRSA 感染症 薬剤耐性緑膿菌 MDRP 感染症 ペニシリン耐性肺炎球菌 PRSP 感染症 2 1

腸内細菌科細菌 Enterobacteriaceae Escherichia coli (大腸菌) Klebsiella sp. (K. pneumoniae 肺炎桿菌など) Enterobacter sp. (E. cloacaeなど) Serratia marcescens Citrobacter sp. (C. freundiiなど) Proteus sp. (P. mirabliis など Providencia sp. Morganella sp. Edwardsiella sp. Photorhabdus sp. Shigella sp. Salmonella sp. (サルモネラ) Yersinia sp. (エルシニア) カルバペネム耐性腸内細菌科 carbapenem-resistant Enterobacteriaceae CRE 感染症法の届け出基準 5類全数 メロペネム 最小発育阻止濃度 (MIC) 感受性ディスク(KB) の 阻止円の直径 2mg/ml 22mm以下 あるいは下記の両方を満たす株 イミペネム 2mg/ml 22mm以下 セフメタゾール 64mg/ml 12mm以下 2

カルバペネム耐性 β-ラクタム薬 ペニシリン セファロスポリン 第一世代 第二世代 第三世代 第四世代 セファマイシン カルバペネム 抗菌スペクトラム β-ラクタマーゼ β-ラクタム薬を不活化する酵素 カルバペネマーゼ ESBL AmpC カルバペネマーゼはほとんどの β-ラクタム薬を不活化する ペニシリナーゼ その他のカルバペネム耐性機序 カルバペネマーゼ非産生 膜の透過性低下+β-ラクタマーゼなど CPEとCRE カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌 carbapenemase-producing Enterobacteriaceae CPE カルバペネム系抗菌薬に対する 耐性機序 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 carbapenem-resistant Enterobacteriaceae カルバペネム系抗菌薬への 耐性の有無 CRE IMP型 NDM型 KPC型 カルバペネム感性菌 カルバペネマーゼ非産生菌 OXA-48型 3

感染症法に基づくCRE感染症届出状況 2014年第38週 44週までの届出状況 2014年11月5日集計 主な菌種名と件数 n=113 菌種 件数 Enterobacter cloacae 34 Enterobacter aerogenes 22 Escherichia coli 19 Klebsiella pneumoniae 15 Citrobacter spp. 5 その他* 記載なし 18 Enterobacter属が 54%を占めた *その他 Klebsiella oxytoca, Morganella morgannii, Serratia marcescens, Proteus mirabilis, Providencia rettgeri, Enterobacter asburiae 病原微生物検出情報 IASR http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr.htmlより Enterobacter属はカルバペネマーゼ非産生菌が多い しかし IMP型CPEによるアウトブレイクもある 臨床的 疫学的な検討を行っている 突然変異 染色体性 ある一定の割合で出現 同じ患者に対して同じ抗菌 薬を使い続けることで出現 しうる 感性菌 耐性菌 例 カルバペネマーゼ非産生菌の 膜の透過性低下 薬剤耐性遺伝子の獲得 外来性の薬剤耐性遺伝子を 獲得 薬剤耐性遺伝子 例 カルバペネマーゼ産生菌 接合により腸内細菌科内の多菌種に拡散 4

カルバペネマーゼ遺伝子 カルバペネマーゼ遺伝子の多く がプラスミド上に存在する プラスミドにはアミノグリコシ ド耐性遺伝子 テトラサイクリ ン耐性遺伝子など他系統の抗菌 薬の耐性遺伝子が既に存在する ことが多い カルバペネム耐性によって治療の選択が さらに狭くなる Sekizuka et al. Complete sequencing of the bla(ndm-1)-positive IncA/C plasmid from Escherichia coli ST38 isolate suggests a possible origin from plant pathogens. PLoS One. 2011;6(9):e25334. 2010年9月6日 朝日新聞 夕刊より 5

カルバペネマーゼの型を決める理由 国内型のカルバペネマーゼ IMP型 GES型 IMI型 海外型のカルバペネマーゼ NDM型 KPC型 OXA-48型 同じカルバペネマーゼ産生菌であれば菌種が異なっていても共通のプ ラスミドを有している可能性あり 院内感染事例の際のタイピング 海外型カルバペネマーゼ産生菌が海外渡航歴のない患者より分離さ れた場合 より積極的な感染源感染経路の調査 国内にKPC型 NDM型 OXA-48型を定着させない NDM型 P. Nordmann L. Poirel. Clinical Microbiology and Infection(2014), 20, 821-830 より図を引用 一部改変 6

KPC型 OXA-48 型 P. Nordmann L. Poirel. Clinical Microbiology and Infection(2014), 20, 821-830 より図を引用 Increase of carbapenem resistant Enterobacteriaceae in US 7

薬剤耐性菌 院内感染対策 行政通知 平成26年12月19日 医政局地域医療計画課長通知 医療機関等における院内感染対策について 医療機関等における院内感染対策に関する留意事項 3-1. アウトブレイクの定義 (1)院内感染のアウトブレイク 原因微生物が多剤耐性菌によるものを想 定 とは 一定期間内に 同一病棟や同一医療機関といった一定の場所 で発生した院内感染の集積が通常よりも高い状態のことであること 各医 療機関は 疫学的にアウトブレイクを把握できるよう 日常的に菌種ごと および下記に述べるカルバペネム耐性などの特定の薬剤耐性を示す細菌科 ごとのサーベイランスを実施することが望ましいこと また 各医療機関 は 厚生労働省院内感染対策サーベイランス JANIS 等の全国的なサー ベイランスデータと比較し 自施設での多剤耐性菌の分離や多剤耐性菌に よる感染症の発生が特に他施設に比べて頻繁となっていないかを 日常的 に把握するように努めることが望ましいこと 検査部門 全入院患者部門 JANISの5部門 感染管理では患者単位の情報が重要であり どの部門も原則患者数を集計している 部門 目的 検査部門 主要な菌や薬剤耐性菌の分離状況を明らかにする 薬剤耐性菌サーベイランス 全入院患者部門 主要な薬剤耐性菌の感染症の発生率を把握する 手術部位感染(SSI)部門 選定した手術手技におけるSSI発生率を把握する 集中治療室(ICU)部門 ICU内の 人工呼吸器関連肺炎 カテーテル関連血流感染症 尿路感染症 の発生率を把握する 新生児集中治療室(NICU) 部門 NICU内の院内感染症の発生率と原因菌を把握する 8

JANISの目的 我が国における薬剤耐性菌 院内感染に関する情報の提供 公開情報の発信 参加医療機関の感染対策に有用な情報の提供 還元情報の提供 JANIS運営会議 厚生労働省医政局地域医療計画課 (1)国の統計調査 (2)秘密の保護に万全を期す *データの研究利用に際しては申請が必要 総務省 統計法の管轄 9

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 感染防止対策加算 1 平成 24 年度の診療報酬改定で新設 平成 26 年度の診療報酬改定で 感染防止対策加算 1 の施設基準で JANIS 検査部門に参加していることが要件に含まれた 平成 26 年度診療報酬改定資料 ( 抜粋 ) 参加医療機関の推移 参加医療機関 1859 施設のうち200 床未満が487 施設 (26%) 検査部門参加医療機関数 :1696 施設検査部門参加数が 2 年前の1.8 倍 感染防止対策加算 1 200 床未満の医療機関の参加開始 10

検査部門参加医療機関数 検査部門1696参加医療機関 / 全国8540施設 20% JANIS参加 900床以上 (2016年1月現在) JANIS非参加 48 9 (N=57) 84% 500-899床 301 92 (N=393) 77% 200-499床 949 (N=2206) 200床未満 1257 43% 398 5486 7% (N=5884) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 200床未満医療機関が全体の約1/4を占める 70% 80% 90% 100% 2016年1月現在 21 日本における薬剤耐性菌の分離状況 http://www.nih-janis.jp/report/kensa.html 11

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 検査部門 2014 年年報 検査部門 2014 年年報 12

検査部門2014年年報 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 CRE 検査部門2014年年報 CRE分離率 = 菌種別内訳 CRE分離患者数 8582人 検体提出患者数 1747538人 100 0.49% 1.3% 1.4% 2.1% 0.9% 5.1% 3.8% 4.5% 1 2 3 4 5 7 8 9 10 11 6 36.3% 5.0% 6.5% 33.2% CREの7割がEnterobacter属 13

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 検査部門 2014 年年報耐性率 MRSA/ S. aureus 49.1% PRSP/ S. pneumoniae 37.2% VRE/ E. faecium + E. faecalis 0.26% Carbapenem-resistant P. aeruginosa/ P. aeruginosa 13.6% MDRP/ P. aeruginosa 1.3% MDRA/ Acinetobacter spp. 0.5% 3 rd GC-resistant K. pneumoniae/ K. pneumoniae 5.6% 3 rd GC-resistant E. coli/ E. coli 14.8% Fluoroquinolones-resistant E. coli/ E. coli 27.3% 分離患者数をもとに CLSI 2012 試行版より算出 都道府県別公開情報 公開情報 2015 年 1 月 ~3 月四半期報 ( 東京都 ) 公開情報 2015 年 1 月 ~3 月四半期報 ( 大阪府 ) N=117 施設 N=94 施設 14

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 西に多い? 東に多い? 病床数別公開情報 公開情報 2014 年年報 ( 集計対象医療機関 200 床以上 ) 公開情報 2014 年年報 ( 集計対象医療機関 200 床未満 ) N=805 施設 N=92 施設 15

公開情報 還元情報 病床数別公開情報の年報データが還元情報の箱ひげ図に使用される 箱ひげ図は原則 前年の分離率の分布 前年の分離率と比較できないため 箱ひげ図は作成されない 16

箱ひげ図 JANIS ニュースレター より JANIS箱ひげ図 17

Surveillance for Action 自施設の状況を把 握する 地域国内の状況と 対策の実施 比較 評価する くらべるには 共通のものさしが必要 感染対策の問題点 の洗い出しと対策の 立案 JANISが提供できる 問い合わせ CREなど薬剤耐性菌 に関するお問い合わせ JANISに関するお問い合わせ 国立感染症研究所 細菌第二部一室 taiseikin@niid.go.jp http://www.nih-janis.jp/ 18