YAKUGAKU ZASSHI 121(9) 701 705 (2001) 701 Notes ダイ ターミネイター法によるコロニーダイレクトシークエンス及びファージプラークのダイレクトシークエンス 佐生知嘉子, a 小畑博子, a 田中達哉, a 奥戸清美, b 山口幸洋,,b 鈴木敬一郎 b 大阪大学大学院医学系研究科共同研究実習センター, a 兵庫医科大学生化学講座 b Colony and Phage-Plaque Direct Sequencings by Dye-Terminator Methods Chikako SASHO, a Hiroko OBATA, a Tatsuya TANAKA, a Kiyomi OKUTO, b Yukihiro YAMAGUCHI,,b and Keiichiro SUZUKI b Center for Research and Education, Room C10, Osaka University Medical School, a 2 2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565 0871, Japan and Department of Biochemistry, Hyogo College of Medicine, b 1 1 Mukogawa-cho, Nishinomiya 663 8501, Japan (Received May 23, 2001; Accepted June 28, 2001) Direct sequencing using lphage DNA and E.coli colonies with plasmid DNA is a very powerful technique. Almost all of the reported direct sequencing methods involve either radioactive sequencing or uorescent dye-primer sequencing. We present a direct colony sequencing strategy that uses a dye terminator (BigDye terminator kit) together with dye primer sequencing. We found that single-colony sequencing with the terminator yielded about 500 base pairs of sequence information. Signal strength was not improved when the number of cycles increased to 40. The colony used for the sequencing was estimated to contain about 5.6 10 7 cells. In addition, although a single plaque consisted of 2 10 6 cells, the pfu was not high enough to read with single-cycle sequencing, and only about 300 base pairs of sequence information were obtained from a single plaque using two cycle-sequencing reactions (re-cycle sequencing). The optimal amounts of the template were 500 ng of puriˆed ldna and 1 10 7 pfu of the lphage suspension, but with BigDye TM terminator it was possible to detect as little as 50 ng of puriˆed ldna and 2 10 6 pfu for lphage suspensions. Thus, colony direct sequencing and plaque direct sequencing are estimated to be very useful for rapid and high-throughput screening of genomic and cdna libraries. Key words dye terminator; colony direct sequencing; re-cycle sequencing; single plaque 緒言ゲノムや cdna のライブラリーから目的とする遺伝子のスクリーニングを行った際, クローニングした遺伝子のシークエンシングはルーチンな作業である. クローニングしたファージを精製し, サブクローニングし, そのプラスミドを形質転換したコロニーが多数ある場合, すべてのコロニーからプラスミドを調製, シークエンスを行うことは非常に多くの労力を要する. このような場合, サブクローニングしたプラスミドをコロニーの状態で直接シークエンスしたり, スクリーニングによりクローン化したファージを鋳型にそれもプラークやライセート液の状態で直接シークエンスする方法は非常に有効な方法である. 現在まで報告されているプラスミドのコロニーダ イレクトシーケンシング法やファージ DNA のダイレクトシークエンシング法はほとんどがラジオアイソトープを用いた方法か若しくは蛍光のダイ プライマー法である. 1 4) 一方で, ダイ ターミネイターのシークエンシング ケミストリーは d- Rhodamine terminator や energy transfer ( エネルギー転移 ) を利用した BigDye TM terminator (Aplied Biosystems 社 ),DYEnamic TM ETterminator (Amersham Pharmacia Biotech 社 ) の開発により感度が著しく向上した. 5,6) そこで, 我々は迅速かつ簡便なシークエンシング法の探索の過程で BigDye TM terminator を用いたダイ ターミネイター法によるプラスミド DNA のコロニーダイレクトシークエンシングとファージ DNA のプラークダイレクトシークエンシングを試みた.
702 Vol. 121 (2001) 実験の部方法 1. コロニーダイレクトシークエンシング puc 系のプラスミド DNA pbluescript II KS(+) を大腸菌コンピテント細胞 DH5a に形質転換し,LB /Ampicillin プレート上で 37 C で培養する. 直径約 2mm まで大きくなったらコロニーを直接 BigDye TM terminator の反応液 (BigDye TM terminator cycle sequencing premix: 8 ml, M13 プライマー : 2 ml (6.4 pmol), ddh 2 O: 10 ml) に懸濁してサーマルサイクラーでサイクルシークエンシングの反応を行った.96 C/10 sec, 50 C/5 sec, 60 C/2 minを 25, 35, 40 サイクル反応させ, 反応終了後の反応液を Sephadex G50 のスピンカラムにかけて未反応の蛍光物質を除去後エタノール沈澱をし, これを試料とした. 試料をインストラクションマニュアルに記載してあるホルムアミドの溶液 Templete Suppression Reagent (TSR) に溶かして ABI PRISM TM 310 Genetic Analyzer を用いてシークエンシング解析を行った. 2. プラークダイレクトシークエンシング l ファージ (lfix II) のシングルプラークをパスツールピペット等でピックアップし, 直接 BigDye TM terminator の反応液 (BigDye TM terminator cycle sequencing premix: 8 ml, T7 プライマー :2 ml (6.4 pmol), ddh 2 O: 20 ml) に懸濁してサーマルサイクラーでサイクルシークエンシングの反応を行った. アガロース中の不純物はシークエンス反応に影響を及ぼすので極力アガーを含まないように注意した. 今回トップアガーには TAKARA の Agarose L03 を用いている.96 C/10 sec, 50 C/5 sec, 60 C/2 min を 25 サイクル反応させ, 反応終了後, 反応液をエタノール沈澱して再度 BigDye TM terminator の反応液を調製してサイクルシークエンシングの反応を行った. 上記と同様に反応終了後の反応液を Sephadex G50 のスピンカラムにかけて未反応の蛍光物質を除去後エタノール沈澱をし, これを試料とした. 試料を TSR に溶かして ABI PRISM TM 310 Genetic Analyzer を用いてシークエンシング解析を行った. ファージライセートについても高速遠心分離で大腸菌の菌体を除き, 上清を超遠心分離 (30000 g, 30min) してファージ粒子を落とした後 H 2 O に 懸濁した. 一部を取ってそれを SM バッファーで希釈してタイターをはかり, 超遠心分離で得られた元のファージ粒子水溶液のタイターを概算してシングルプラークと同様の検討を行った. 結果と考察 1. コロニーダイレクトシークエンシング pbluescript II KS(+) では約 250 700 塩基くらいまで解析できた (Fig. 1, Table 1). 25,35,40サイクルと反応のサイクル数についても検討を行ったが, 大きな影響は見られなかった (Table 1). これはシークエンス反応は PCR と違ってサイクル数に応じて生成物量が指数関数的に増えていく訳ではないからと思われる. 今回示している結果はプライマーに -20M13 プライマーを用いたものであるが, プライマーを M13Reverse プライマー,KS プライマーに代えても同様の結果が得られている. しかし, プラスミドを pbr322 系のものに代えて同様の実験を試みたが, 解析ができなかった. これは pbluescript II KS(+) が高コピーの puc 系プラスミドであるのに対して pbr322 系のプラスミドは低コピー (puc 系プラスミドの約 1/30 7) ) であることが原因であると考えられる. 一般にはサンプルはある程度の精製度のものが要求されるが, 今回示した結果からはサンプル中に大腸菌由来の大量の RNA や染色体 DNA さらにはタンパク質が混在していてもシークエンス反応にそれ程影響しないようである. しかし, シングルのコロニーを LB/Ampicillin の液体培地で培養したものをフェノール / クロロホルムで抽出した後エタノール沈澱した試料では 200 塩基程度, それを RNase 処理したものでも 250 塩基程度までしか解析できなかった.LB 培地由来のものが影響しているのかも知 Table 1. Results from Colony Sequencing Using DiŠerent Cycle Numbers Sample no. Cycle number Reading length 1 25 580 bp 2 25 400 bp 3 35 440 bp 4 35 700 bp 5 40 520 bp 6 40 390 bp
hon p.3 [100%] No. 9 703 Fig. 1. An Electropherogram of Colony Direct Sequencing Using BigDye Terminator (A ) E.coli DH5a transformed with pbluescript II (Sample No. 4). (B) puriˆed pbluescript II DNA prepared by the alkaline lysis method. Fig. 2. An Electropherogram of Re-cycle Sequencing Using BigDye Terminator (A) the lfix II phage particles (5 108 pfu) prepared by the ultracentrifuge method (Sample No. 14). (B) the single plaque (1 106 pfu) of the lfix II phage (Sample No. 19).
704 Vol. 121 (2001) Table 2. One single-cycle sequencing reaction Results from lphage Sequencing Re-cycle sequencing reactions Sample no. Templates Reading length Sample no. Templates Reading length 7 1 10 8 pfu 0 bp 14 5 10 8 pfu 700 bp 8 4 10 7 pfu 225 bp 15 1 10 8 pfu 600 bp 9 2 10 7 pfu 260 bp 16 5 10 7 pfu 330 bp 10 1 10 7 pfu 380 bp 17 1 10 7 pfu 320 bp 11 5 10 6 pfu 220 bp 18 5 10 6 pfu 290 bp 12 2 10 6 pfu 0 bp 19 single plaque 330 bp 13 single plaque 0 bp れない. 2. プラークダイレクトシークエンシング精製した ldna (0.2 5 mg) やファージの溶菌液 ( ライセート )( 10 7 pfu) を鋳型にするとコロニーダイレクトシークエンシングの時と同様の方法で 200 塩基以上は読むことができる (Table 2). しかし, シングルプラーク (10 5 10 6 pfu) になると更に高い感度が要求される. そこで, 我々はシークエンシング反応を再度行うリ サイクルシークエンシングを考案し, 約 300 塩基まで解析することができた (Fig. 2, Table 2). 通常のシークエンシング反応で単にサイクル数を 25 ないしは 30 サイクルから 50 ないしは 60 サイクルにあげるよりも, シークエンシング反応を 25 ないしは 30 サイクル行った後, 一度エタノール沈澱をしてから再度シークエンシング反応を行った方が効果的である. この理由としては Taq DNA ポリメラーゼ自身の活性の減少, 反応基質 (dntp やプライマー ) の消費具合, 反応生成物のピロリン酸による阻害効果等が考えられる. コロニーダイレクトシークエンシングの時にサイクル数を増やしてもそれほど効果がなかったようにサイクルが進んで熱が加えられればそれだけ Taq DNA ポリメラーゼの酵素活性は減少していく.Taq DNA ポリメラーゼの熱安定性については残存活性が 96 C/5 minで 50% に,75 C/1 hrで 60% (2 hr で 50%) に,96 C/1 min,55 C/1 min,72 C/1 min を 40 サイクル反応させると 50% におよそなることが知られている. このことからサイクル数を 25 ないしは 30 サイクルから 50 ないしは 60 サイクルにあげても反応産物の量は 2 倍にはならないのである. おわりに 今回示したプロトコールのように鋳型 DNA の純化のステップを省ければ大量サンプルの処理がより迅速となる. ダイレクトシークエンシングについては PCR 産物のダイレクトシークエンシングは非常に一般的であり, 既に多くの報告がある. プラスミド DNA を形質転換した大腸菌のコロニーとファージのプラークのダイレクトシークエンシングについては本稿でお示しした. 他には Yeast Two-Hybrid Screening 等の際の酵母のコロニーのダイレクトシークエンシングが考えられる. 酵母のコロニーを鋳型にした PCR は十分可能であり, 我々は既に Yeast Two-Hybrid Screening での迅速かつ簡便なスクリーニングに役立てている. シークエンシングについては我々はまだ検討中であるが, 工夫次第で十分可能だと考えている. 謝辞本研究の実施に当たり有益な御助言を賜りました兵庫医科大学共同研究室の狩野直子技術員に深謝します. REFERENCES 1) Byung S. K., Colleen J., BioTechniques, 8, 156 159 (1990). 2) Krishnan B. R., Blakesley R. W., Berg D. E., Nucleic Acids Res., 19, 1153(1991). 3) Wang S., Krinks M., Moos M. Jr., BioTechniques, 18, 130 135 (1995). 4) Otte S., Barnikol-Watanabe S., Hilschmann N., Anal. Biochem., 270, 332 334 (1999). 5) ReeveM.A.,FullerC.W.,Nature, 376, 796 797 (1995).
No. 9 705 6) JuJ.,RuanC.,FullerC.W.,GlazerA.N., Mathies R. A., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A., 92, 4347 4351 (1995). 7) Sambrook J., Fritsch E. F., Maniatis T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989.