Microsoft Word - 【最終】05.PRECISE-IVUSプレスリリース原稿案

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11.【最終版】プレスリリース修正  循環器内科泉家

第 90 回 MSGR トピック : 急性冠症候群 LDL-C Ezetimibe 発表者 : 山田亮太 ( 研修医 ) コメンテーター : 高橋宗一郎 ( 循環器内科 ) 文献 :Ezetimibe Added to Statin Theraphy after Acute Coronary Syn

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06. 【送付】プレスリリース原稿 LCZ696

Microsoft Word - (Web) URA修正プレスリリース案

HOSPEQ 2015 PCI治療の現状と未来

座談会 Round Table Discussion 末梢動脈疾患におけるこれからの脂質低下療法を考える PAD に対しては, 脚の病変部分だけでなく, 冠動脈疾患や脳血管障害の予防を見据えた治療対策を常に考慮しておく必要があります 中村正人 ( 座長 ) 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授

Q2 はどのような構造ですか? A2 LDL の主要構造蛋白はアポ B であり LDL1 粒子につき1 分子存在します 一方 (sd LDL) の構造上の特徴はコレステロール含有量の減少です 粒子径を規定する脂質のコレステロールが少ないため小さく また1 分子のアポ B に対してコレステロールが相対

Microsoft Word - PROSPECT press release FINAL_J2.doc

本書の読み方 使い方 ~ 各項目の基本構成 ~ * 本書は主に外来の日常診療で頻用される治療薬を取り上げています ❶ 特徴 01 HMG-CoA 代表的薬剤ピタバスタチン同種同効薬アトルバスタチン, ロスバスタチン HMG-CoA 還元酵素阻害薬は主に高 LDL コレステロール血症の治療目的で使 用

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

(2-3)脂質異常症 ポスター H

ACS患者の最適な脂質低下療法を考える

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

解禁時間 ( ラジオ テレビ WEB): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 午後 1 時 ( 日本時間 ) ( 新聞 ): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 付夕刊 [PRESS RELEASE] 平成 30 年 4 月 3 日 夏の夜は心筋梗塞の増加に注意 日本 イタリアなど世

談会提供 : サノフィ株式会社 これからの日本人の脂質代謝異常症の治療戦略を考える ~ 家族性高コレステロール血症を見逃さないために ~ ROUND TABLE DISCUSSION 座席者東京女子医科大学医学部循環器内科講師出座長 寺本民生先生帝京大学臨床研究センターセンター長 Alberico

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

提供 : サノフィ株式会社 座談会 心血管二次予防における LDL コレステロール管理 : Treat to Target vs. Fire and Forget 出席者 座長 木村一雄先生 伊苅裕二先生 横浜市立大学付属市民総合医療センター心臓血管センター教授 東海大学医学部内科学系循環器内科教授

心房細動1章[ ].indd

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

冠動脈イメージングと脂質低下療法

狭心症と心筋梗塞 何を調べているの? どのように調べるの? 心臓の検査虚血チェック きょけつ の きょうさく狭窄のチェック 監修 : 明石嘉浩先生聖マリアンナ医科大学循環器内科

EBM と臨床 ( その 2)

study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

Microsoft Word - 44-第4編頭紙.doc

Hormone Replacement Therapy HRT H E P 2 Bioavailable E 2, pmol/l (Rochester, Minnesota) The dashed line indicates

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

研究成果報告書

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

目次 1. はじめに P2 2. 本剤の特徴 作用機序 P3 3. 臨床成績 P4 4. 施設について P9 5. 投与対象となる患者 P11 6. 投与に際して留意すべき事項 P13 1

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複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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03 【資料1】急性期の診療提供体制構築に向けた考え方(案)_final

各位 2016 年 1 月 22 日 会社名アステラス製薬株式会社 代 表 者代表取締役社長畑中好彦 コード番号 4503 (URL 東 証 ( 第 一 部 ) 決 算 期 3 月 問合わせ先広報部長 臼井政明 Tel:(03)

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

冠疾患誌 2011; 17: 廣 高史 Hiro T: Mechanism of plaque regression by statins: a review of studies with intracoronary imaging. J Jpn Coron Assoc 2011;

Round Table Discussion記事 「冠動脈疾患患者の脂質管理」

機能不全 HDL の機能って何? 2015/2/2 機能不全 HDL(dysfunctional HDL) という言葉を見聞きした方は多いこと だろう だが HDL の機能について明快に答えられる人は どれほどいるのだろう か 血中 HDLコレステロール値と心血管疾患のリスクが反比例することは多くの

大見出し ここから8行

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again


重要な説明事項_H1-4_A

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

死亡率(人口10 万対1950 '55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 ' 心血管系疾患 ( 動脈硬化による ) とがんが死亡の大 部分を占める 脳血管疾患 悪性新生物 結核 心疾患 )肺炎 50 不慮の事故自殺 0 肝疾患昭和

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日本内科学会雑誌第106巻第2号

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02 - コピー.docx

Microsoft Word _脂質異常症リリースドラフトv11_SHv2 final.docx

Microsoft Word - all_ jp.docx

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

「長寿のためのコレステロール ガイドライン2010 年版」に対する声明

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

心疾患患による死亡亡数等 平成 28 年において 全国国で約 20 万人が心疾疾患を原因として死亡しており 死死亡数全体の 15.2% を占占め 死亡順順位の第 2 位であります このうち本県の死亡死亡数は 1,324 人となっています 本県県の死亡率 ( 人口 10 万対 ) は 概概ね全国より高

PowerPoint プレゼンテーション

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

心房細動の機序と疫学を知が, そもそもなぜ心房細動が出るようになるかの機序はさらに知見が不足している. 心房細動の発症頻度は明らかに年齢依存性を呈している上, 多くの研究で心房線維化との関連が示唆されている 2,3). 高率に心房細動を自然発症する実験モデル, 特に人間の lone AF に相当する

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

目 次 1. はじめに 2. 臨床研究とは 3. 研究の目的 意義 4. 研究の対象と方法 5. 研究への自由意志参加 同意取消しの自由 6. 研究責任者 組織 7. 研究の場所 期間 8. 研究試料と情報の取り扱い 9. 研究結果の扱い 10. 研究資金源 11. 利益相反 12. 研究参加者の負

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

本件リリース先 文部科学記者会 科学記者会広島大学関係報道機関 広島大学学術 社会産学連携室広報グループ 東広島市鏡山 TEL: FAX: 平成 2

平成 24 年度内閣府食品安全委員会 食品健康影響評価技術研究 トランス脂肪酸による動脈硬化性疾患の 発生機序の解明と健康影響評価手法の確立 平田健一神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野

図. 各要因による 9.4 年間での日英 ( イングランド ) の生存期間の差 ~ 日英高齢者の生存期間の比較研究から ~ 注 ) 調査開始時点の日英の年齢や健康状態の差を調整した上でも 9.4 年間の間に日本人が女性で319 日 男性で132 日 英国人よりも長生きをしていました グラフの数字は

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

ARCTIC-Interruption

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データの取り扱いについて (原則)

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

NIRS は安価かつ低侵襲に脳活動を測定することが可能な検査で 統合失調症の精神病症状との関連が示唆されてきました そこで NIRS で測定される脳活動が tdcs による統合失調症の症状変化を予測し得るという仮説を立てました そして治療介入の予測における NIRS の活用にもつながると考えられまし

表 対象患者の背景因子. A B p p , n.s , n.s ACS n.

1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

TDM研究 Vol.26 No.2

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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(別添様式)

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法 の有効性 安全性等について 肝炎治療戦略会議報告書平成 23 年 11 月 28 日

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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Transcription:

国立大学法人熊本大学 報道機関各位 平成 27 年 7 月 28 日 熊本大学 二つの薬の併用で冠動脈プラークを劇的に退縮 - 心筋梗塞発症予防に向けた新たな治療法 - 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学 ( 小川久雄教授 ) の辻田賢一講師らは 標準的な脂質低下治療薬 スタチン と併用してコレステロール吸収阻害薬 エゼチミブ 投与することで 標準的な治療に比べて強力な脂質低下効果と冠動脈プラーク退縮 ( 縮小 ) 効果がみられることを 血管内超音波の解析を用いた臨床試験によって明らかにしました 冠動脈プラーク ( 冠動脈の血管内膜に脂質などが沈着した状態 ) の退縮は 心筋梗塞や狭心症などを抑制する鍵とされており 本成果は エゼチミブを併用する新規治療戦略が従来のスタチン単独治療法よりも強力な効果がある事を解明しただけでなく 心筋梗塞発症予防に向けた新たな治療法の確立につながるものです 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学辻田賢一講師 小川久雄教授らが 国内 17 施設との共同研究で行いました 本研究成果は 文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて 科学雑誌 The Journal of the American College of Cardiology オンライン版に 7 月 28 日 ( 火 ) に掲載されました ( URL:http://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=2411160&r esultclick=1) 論文名 Impact of Dual Lipid Lowering Strategy With Ezetimibe and Atorvastatin on Coronary Plaque Regression in Patients With Percutaneous Coronary Intervention: Insights From Multicenter Randomized Controlled PRECISE-IVUS Trial 著者名 (* 責任著者 ) Kenichi Tsujita*, Seigo Sugiyama, Hitoshi Sumida, Hideki Shimomura, Takuro Yamashita, Kenshi Yamanaga, Naohiro Komura, Kenji Sakamoto, Hideki Oka, Koichi Nakao, Sunao Nakamura, Masaharu Ishihara, Kunihiko Matsui, Naritsugu Sakaino, Natsuki Nakamura, Nobuyasu Yamamoto, Shunichi Koide, Toshiyuki Matsumura, Kazuteru Fujimoto, Ryusuke Tsunoda, Yasuhiro Morikami, Koushi Matsuyama, Shuichi Oshima, Koichi Kaikita, Seiji Hokimoto, Hisao Ogawa.

掲載雑誌 The Journal of the American College of Cardiology お問い合わせ先 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学担当 : 教授小川久雄 ( おがわひさお ) 講師辻田賢一 ( つじたけんいち ) 電話 :096-373-5175 e-mail:tsujita@kumamoto-u.ac.jp

( 概要説明 ) 厚生労働省の人口動態統計によると 心疾患は癌などの悪性腫瘍に次いで死因の第 2 位であり 制圧に向けた薬物治療の開発が望まれている 現在はスタチン 1 による悪玉コレステロール 2 の低下が心血管関連疾患における脂質低下療法の標準的な治療法であるが 標準的スタチン治療を行っても半数以上の患者さんが心血管関連疾患を発症してしまう スタチン治療では 肝臓でのコレステロール合成を抑制する反面 代償として小腸でのコレステロール吸収が進んでしまう スタチンの標準治療にコレステロール吸収阻害薬 エゼチミブ を併用すると より安全で効率的に悪玉コレステロールが低下した 血管内超音波を用いた詳細な冠動脈プラーク進展 退縮の解析によると スタチン + エゼチミブの併用療法は 9-12 か月間の治療により 強力な冠動脈プラーク退縮を示した 注 ) 1: スタチン :HMG-CoA 還元酵素阻害薬の総称で 効率的に悪玉コレステロールの値を下げ 心血管関連疾患を抑制することが知られている 2: 悪玉コレステロール : 低比重リポ蛋白コレステロールの俗称で 心血管関連疾患抑制と極めて強い相関があることが知られている ( 説明 ) スタチンを用いて LDL コレステロール (LDL-C) を低下させると それに相関して冠動脈疾患リスクが減少する しかしながら それでもなお多くの患者に心血管関連疾患のリスクが残っており スタチンの単独投与で十分な LDL コレステロールを低下させるのは困難である 当科では 国内 17 の関連施設と共同で PRECISE-IVUS 試験 (Plaque REgression with Cholesterol absorption Inhibitor or Synthesis inhibitor Evaluated by IntraVascular UltraSound) によって 冠動脈疾患患者に対するスタチンとエゼチミブの併用投与による冠動脈プラーク退縮について検討した 対象は経皮的冠動脈インターベンション (PCI) 3 を施行した冠動脈疾患患者であり LDL コレステロール値 100mg/dL( 基準値は一般男女で 60~ 139mg/dl) 以上を被験者の基準とした 対象をスタチン ( アトルバスタチン ) 単独投与群 ( 単独群 ;102 例 ) またはスタチン ( アトルバスタチン )+ エゼチミブ併用投与群 ( 併用群 ;100 例 ) に無作為に割り付け LDL コレステロール値を 70mg/dL 未満まで下げることを目標としてスタチンを増減し 9~12 カ月間投与した ( 図 1) 効果の評価として 血管内に沈着した脂質等の物質であるアテロームの容積率 (PAV) の変化量 (ΔPAV) を計測し 両群間の差を調べた 試験開始時の LDL コレステロールは併用群 108.3mg/dL 単独群 109.8mg/dL と 両群間に有意な差は見られなかった 試験中のスタチン投与量は エゼチミブを併用した方がスタチン投与量は少ない 試験終了時の LDL-C は 併

用群 63.2mg/dL(-40%) に対し単独群では 73.3mg/dL(-29%) と 併用群の方が有意に低下した ( 図 2) また 単独群と併用群ではアテロームの容積率の変化に有意な差が見られた ( 表 ) さらに 血管容積の試験開始時からの変化量は 併用群が -4.1mm 3 と有意に縮小したのに対し 単独群では -0.6mm 3 と有意な変化を認めなかった また 特に急性冠症候群 (ACS) の患者において併用群と単独群の ΔPAV に有意差を認め 併用群でより顕著なプラーク退縮が認められた 本試験の結果から 日本人 PCI 施行患者において スタチンとエゼチミブの併用投与によって LDL-C 低下およびコレステロール吸収亢進の抑制と同時に より強力な冠動脈プラークの退縮が得られることが示された 特に 急性冠症候群 (ACS) の患者において LDL-C 低下およびコレステロール吸収とプラーク退縮に関連が見られた さらにエゼチミブ併用による血管陽性リモデリング 4 の抑制効果が認められており ハイリスクの冠動脈疾患患者に対するエゼチミブとスタチンの併用療法には臨床的有用性が期待される と結論した 3 経皮的冠動脈インターベンション (PCI): 狭くなった血管をバルーン ( 風船 ) やステントなどで内側から広げる手術 4 血管陽性リモデリング : プラークの生成や進展に伴って血管径が拡大すること

血管内超音波で冠動脈プラークの断面をみた断面図黄線 : 血管内腔面赤線 : 血管中膜面この黄線と赤線の間の部分が いわゆる冠動脈プラークである プラークバーデン (PB) は この血管中膜面積 ( 血管面積に相当 ) に占めるプラーク面積の割合であり PB = ( 血管中膜面積 - 血管内腔面積 ) / 血管中膜面積で表現される この図に示されるように スタチンにエゼチミブを併用すると 特に ACS 患者において PB: 50.2% 44.0% と顕著なプラーク退縮が認められた お問い合わせ先 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学担当 : 教授小川久雄 ( おがわひさお ) 講師辻田賢一 ( つじたけんいち ) 電話 :096-373-5175 e-mail:tsujita@kumamoto-u.ac.jp