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福岡県保健環境研究所年報第 35 号 65-70 2008 原著 福岡県で分離されたインフルエンザウイルス株の 抗原及び薬剤耐性に関する遺伝子レベルでの解析 世良暢之 江藤良樹 中山志幸 石橋哲也 千々和勝己 福岡県における過去 3 年間のインフルエンザ流行状況 分離されたインフルエンザウイルス株の抗原変異や薬剤耐性を把握することを目的として遺伝子レベルでの解析を行った インフルエンザ患者の流行は例年 12 月中旬に始まり2 月初旬に患者報告のピークを迎え 分離されたインフルエンザウイルス株の亜型は平成 17 年度 18 年度はA/H3 型が最も多く分離され 平成 19 年度はA/H1 型が優位であった 抗原解析の結果 A/H1 型の分離株はワクチン株であるA/Solomon Islands/3/2006(H1N1) 株類似株であり A/H3 型の分離株はワクチン株であるA/Hiroshima/52/2005(H3N2) 株から変異してきていた 赤血球凝集素 (Hemagglutinin, HA) 遺伝子の解析では平成 17 18 及び19 年度に分離されたインフルエンザウイルスA/H1N1 型の分離株はワクチン株であるA/Solomon Islands/3/2006(H1N1) 株及びA/New Ca ledonia/20/99(h1n1) 株から分岐していること A/H3N2 型の分離株ではワクチン株であるA/Hiroshima /52/2005(H3N2) 株と近縁であること B 型の分離株でも同様にワクチン株であるビクトリア系統株のB /Malaysia/2506/2004 株と近縁であることが分かった 平成 18 及び19 年度の分離株のノイラミニダーゼ遺伝子の解析を行ったところ 塩基配列決定を行った55 株の全てにおいて インフルエンザ治療薬であるリン酸オセルタミビルに対する耐性獲得に必要なアミノ酸変異は見られなかった しかしヨーロッパ アメリカおいては リン酸オセルタミビル耐性株が高頻度に検出されていることから 日本においても耐性株が出現する危険性が考えられるため 今後も継続的な監視の必要があると考えられる [ キーワード : インフルエンザウイルス 抗原変異 薬剤耐性株 ] 1 はじめにインフルエンザウイルスは大きくA B 及びC 型に分けられ さらにA 型インフルエンザウイルスには赤血球凝集素 (Hemaglutinin, HA, 16 亜型 ) とノイラミニダーゼ (N euraminidase, NA, 9 亜型 ) の組み合せにより様々な亜型が存在し ヒト トリ及びブタ等多くの宿主に広く分布する HAとNAは同一の亜型内で抗原性を毎年変異させて巧みにヒトの免疫機構から逃れ ( 連続抗原変異 antige nic drift) さらにA 型は10 年以上の間隔で 突然別の亜型に取って代わり ( 不連続抗原変異 antigenic shif t) 大流行を引き起こす 1918 年にはスペインかぜA/H1N1 型 1957 年にはアジアかぜA/H2N2 型 1968 年には香港かぜA/H3N2 型 1977 年にはソ連かぜ A/H1N1 型が出現 流行している 1) 1997 年には香港でトリインフルエンザウイルスA/H5N1が初めて人へ感染したことが確認され 東南アジアなどでヒトへの感染例の報告があり 新型インフルエンザウイルスの出現が危惧されている 2) さらに欧州ではここ数年インフルエンザ治療薬であるノイラミ ニダーゼ阻害薬に対する薬剤耐性ウイルスが高頻度で出現し インフルエンザ治療を困難にする可能性が指摘されている 3,4,5) 当県はアジアの玄関口として 新型インフルエンザの発生が危惧されている地域に近い地理的条件を抱えており 毎年流行するインフルエンザの患者情報 インフルエンザウイルスの抗原性や薬剤耐性を解析してその動向を監視すると同時に 流行時にはマスクの着用や手洗いの励行を促すなどの感染予防対策に有用な情報を迅速に提供することが要求される そのため 当所において平成 17 18 及び19 年度の過去 3シーズンのインフルエンザ患者の発生状況及びインフルエンザウイルス株の分離状況 分離されたインフルエンザウイルス株の抗原解析 HA 遺伝子及び薬剤耐性に関するNA 遺伝子について検討した 2 方法 2 1 インフルエンザ患者情報及び分離株情報 福岡県保健環境研究所 ( 818-0135 福岡県太宰府市大字向佐野 39)

インフルエンザの流行状況を把握するためのインフルエンザ患者発生情報は福岡県内にある198インフルエンザ定点 ( 感染症発生動向調査事業において患者数等を一定基準に従って報告する指定医療機関 ) より毎週報告される患者数を集計した福岡県感染症情報 ( 福岡県保健環境研究所ホームページ内 ) のデータを用いた 6) インフルエンザウイルスの分離用の検体としては 平成 17 18 及び19 年度の感染症発生動向調査事業に係わる検査で採取されたインフルエンザ患者の咽頭拭い液 ( 平成 17 年度 123 検体 平成 18 年度 77 検体及び平成 19 年度 79 検体の合計 279 検体 ) 及びインフルエンザ集団発生事例に係わる検査で採取されたインフルエンザ患者の咽頭ぬぐい液 ( 平成 17 年度は21 検体 平成 18 年度は20 検体及び平成 19 年度は28 検体の合計 69 検体 ) を用いた 検体は遠心上清 (3000 回転 20 分間 ) した上清をイヌ腎臓由来上皮細胞 (Madin-Darby canine kidney 細胞, MDCK 細胞 ) に接種して観察を行い 細胞変性効果 (cytopathic effect CP E) が確認された培養上清を材料に モルモット血球あるいはニワトリ血球を用いて凝集活性を調べた 凝集活性が認められた培養上清は国立感染症研究所 ( 感染研 ) より分与された2007/08シーズン検査キットの複数のフェレット抗血清を用いた赤血球凝集抑制 (Hemagglutini n Inhibition, HI) 試験によりA 及びB 型の同定を行った 7) 2 2 抗原解析インフルエンザウイルス株の抗原解析は 厚生労働省感染症発生動向調査に基づくインフルエンザサーベイランス 事業として感染研ウイルス第 3 部第 1 室 ( インフルエンザウイルス室 ) と全国 78 地方衛生研究所の共同研究として行われている 実際には感染研が抗原解析用抗体パネル [A/New Caledonia/20/99 (H1N1) A/Hiroshima( 広島 )/52/2005 (H3N2) B/Shanghai( 上海 )/361/2002( 山形系統 ) B/Malaysia/2506/2004( ビクトリア系統 )] を用いた赤血球凝集抑制試験によって 抗原解析を行っている 平成 19 年度に当所で分離され 感染研からの依頼により分与したインフルエンザウイルス株 (AH1 型 2 株及びAH 3 型 1 株 ) は 解析後 感染症サーベイランスシステム (N ational Epidemiological Surveillance of Infectious Disease, NESID) の病原体検出情報システムにより情報還元された 2 3 HA 遺伝子解析分離されたインフルエンザウイルス株のうち 平成 17 年度に分離されたインフルエンザウイルス17 株 (A/H1N1 型 1 株 A/H3N2 型 16 株 ) 平成 18 年度に分離されたインフルエンザウイルス36 株 (A/H1N1 型 4 株 A/H3N2 型 21 株 B 型 11 株 ) 及び平成 19 年度に分離されたインフルエンザウ イルス55 株 (A/H1N1 型 55 株 ) の合計 108 株について HA 遺伝子の解析を行った まずCPEが観察されたMDCK 細胞の培養上清から市販キット (QIAamp Viral RNA Mini Kit QIAGEN 社 ) を用いて抽出したRNAを鋳型に逆転写反応 (Reverse Transcrip tion RT) を行い 相補的 DNA(complimentary DNA cd NA) を生成した 次にcDNAを鋳型にインフルエンザウイルスのHA 遺伝子を標的にした特異的プライマーを用いて増幅反応 (Polymerase Chain Reaction PCR) を行い 増幅できたPCR 産物はアガロースゲル電気泳動でその分子量を測定した 各インフルエンザウイルスのHA 遺伝子に対するプライマーは A/H1((+)5'-AGCAAAAGCAGGGGAAA ATAA-3' (-)5'-GCTATTTTCTGGGGTGAATCT-3') A/H3((+) 5'-AGCAAAAGCAGGGGATAATTC-3' (-)5'-TGCCTGAAACCGTAC CAACC-3') B((+)5'-AGCAGAAGCGTGCATTTTC-3' (-)5'-A CCAGCAATAGCTCCGAAGA-3') で 最初の変性反応 94 で2 分間 PCR 条件として94 で1 分間 45 で1 分間 72 で3 分間を30サイクルとして実施し 最後の伸長反応は72 で5 分間行った 7) 予想されたPCR 産物が得られた場合は (A/H1 型の場合は729 塩基対 A/H3 型の場合は1143 塩基対及びB 型の場合は1142 塩基対 ) ダイレクトシークエンスにより塩基配列の決定を行った 得られた塩基配列は遺伝子配列解析ソフトウェアSeqScape(Applied Biosys tems 社 ) MegAlign(DNASTAR 社 ) 及び日本 DNAデータバンク (DDBJ) を利用したBLAST 検索 (Basic Local Align ment Seaech Tool アメリカの国立研究所の1つであるN ational Center of Biotechnology Informationが開発したDNAの相同性検索を行うソフトウェア ) により解析 分子系統樹の作成を行った 比較対象として用いたワクチン株 (A/Solomon Islands3/2006(H1N1) 株 A/New Cal edonia/20/99(h1n1) 株 A/Hiroshima/52/2005(H3N2) 株 B/Malaysia/2506/2004 株及びB/Shanghai/361/2002 株 ) のHA 遺伝子の塩基配列はDDBJより取得した 2 4 薬剤耐性国内で広く使用されているインフルエンザ治療薬であるリン酸オセルタミビル (Oseltamivir)( 商品名 タミフル (Tamiflu) ) に対する薬剤耐性の解析には 薬剤耐性の獲得に重要であると報告されているNAの耐性変異の有無を調べることで行った 3,4,5) 分離されたインフルエンザウイルス株のうち 平成 18 年度に分離されたインフルエンザウイルスA/H1N1 型 4 株及び平成 19 年度に分離されたインフルエンザウイルスA/H1N1 型 51 株の合計 55 株について NAの薬剤耐性変異を検討した リン酸オセルタミビルの標的蛋白質であるNAのアミノ酸をコードする遺伝子領域をRT-PCR 法により増幅し 予想されたPCR 産物が得られた場合は ダイレクトシークエンスにより耐性変異 (119 198 274 292 及び294 番目のアミノ酸変

異 ) の有無を調べ これら5 箇所のアミノ酸変異をリン酸オセルタミビル耐性の指標とした 3,4,5) PCRに用いたプライマーはN1-F671-693(TGAGAACACAAGAGTCTGAATGT) 及び N1-R1079-1057(CCTATCCAAACACCATTACCATA) 反応はRT 反応条件 50 で30 分間 最初の変性反応 94 で2 分間 PCR 条件として94 で2 分間 45 で1 分間 72 で2 分間を3 0サイクルとして実施し 最後の伸長反応は72 で10 分間行った 得られた塩基配列は遺伝子配列解析ソフトウェアSeqScape(Applied Biosystems 社 ) 及びMegAlign(D NASTAR 社 ) により解析 分子系統樹解析を行った 3 結果及び考察 3 1 インフルエンザ流行状況福岡県における平成 18 年 1 月 -20 年 3 月までのインフルエンザ患者の流行状況を図 1(a) に 平成 19 年 1 月 -20 年 3 月までのインフルエンザウイルス株の分離状況を図 1(b) 及び (c) に示した 感染症発生動向調査事業によると インフルエンザ患者の流行時期 規模は年により異なるものの 例年 12 月中旬に始まり 2 月初旬に患者報告のピークを迎え その後 3-4 月まで患者発生が続くパターンを示す 平成 18 年は第 3 週にピークとなり定 インフルエンザウイルス分離数インフルエンザウイルス分離数 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 福岡県保健環境研究所感染症情報より (b) (C) (c) (a) 点あたり患者数 49.90) 第 25 週まで続いた 平成 19 年は流行開始が例年より遅かった分 流行のピークも第 11 週と遅く ( 定点あたり患者数 60.8) 第 19 週まで続いた 平成 20 年は第 6 週にピークとなったもののの ( 定点あたり患者数 19.77) 一旦減少し 第 8 週に再び増加してピークとなり ( 定点あたり患者数 20.54) 第 17 週まで続いた 当所におけるインフルエンザウイルス株の分離も患者報告の多い時期とほぼ一致していた 分離されたインフルエンザウイルス株の亜型は平成 17 年度 18 年度はA/H3 型が最も多く分離され 平成 19 年度年はA/H1 型が優位であった 3 2 抗原解析当所で分離されたインフルエンザウイルス株について感染研より情報還元された結果 ( 表 2) によると A/H1 型のA/FUKUOKA/34/2007 株はA/Solomon Islands/3/2006 血清 ( ホモ価 640) A/Fukushima141/2006 血清 ( ホモ価 2,560) A/Brisbane/59/2007(Egg No. 2) 血清 ( ホモ価 640) 及びA/Brisbane/59/2007(Cell No. 2) 血清 ( ホモ価 1,280) に対して 320の高いHI 価を示し A/ New Caledonia/20/99 血清 A/St. Petersburg/08/2006 血清に対し80 以下の低いHI 価を示した A/FUKUOKA/25/2 008 株はA/Brisbane/59/2007(Cell No. 2) 血清に対して 1,280の最も高いHI 価を示し A/New Caledonia/20/99 血清 A/St. Petersburg/08/2006 血清に対して160の低いH I 価を示した A/H3 型のA/FUKUOKA/19/2008 株はA/Lyon/1 331/2006 血清に対して 640の最も高いHI 価を示し ワクチン株であるA/Hiroshima/52/2005 血清 A/Brisbane/ 10/2007(X-171A) 血清及びA/Brisbane/10/2007(X-171) 血清に対して160の低いHI 価を示した これらの結果から A/H1 型の分離株は2007/2008シーズンのワクチン株であるA/Solomon Islands/3/2006(H1N1) 株類似株であり 20 05/2006 及び2006/2007シーズンのワクチン株であるA/Ne w Caledonia/20/99 株から変異しており A/H3 型の分離株も2006/2007 及び2007/2008シーズンのワクチン株であるA/Hiroshima/52/2005(H3N2) 株から変異していたと考えられた 3 3 HA 遺伝子解析平成 17 18 及び19 年度に分離されたインフルエンザウイルスA/H1N1 型 5 株 A/H3N2 型 37 株及びB 型 11 株のHA 蛋白質の遺伝子領域についてHA 遺伝子の解析を行い 代表株の分子系統樹解析結果を図 2に示した A/H1N1 型では分離株はワクチン株であるA/Solomon Islands3/2006(H1N 1) 株及びA/New Caledonia/20/99(H1N1) 株から分岐して 図 1 福岡県における定点あたりインフルエンザ患者数 (a) 平成 19 年 (b) 及び平成 20 年 (c) のインフルエンザウイルス分離株の週別推移状況

表 2 福岡県で分離されたインフルエンザウイルス株と参照抗原の各抗血清に対する赤血球凝集抑制価 NIID-ID ウイルス抗原 NewCal Lot.05 各抗原の抗血清に対する赤血球凝集抑制価 (HI) St. Petersburg 0806 No.2 Solomon Islands 0306 No.2 Fukushima97 Fukushima141 Brisbane5907 Egg No.2 Brisbane5907 Cell No.2 参照抗原 (A/H1 株 ) 98/99-1118 A/New Caledonia/20/99 640 320 160 40 320 80 80 06/07-154 A/St. Petersburg/08/2006 320 160 80 40 320 80 40 06/07-57 A/Solomon Islands/3/2006 160 640 640 640 1280 1280 640 05/06-287 A/FUKUSHIMA/97/2006 80 640 640 320 2560 640 160 05/06-727 A/FUKUSHIMA/141/2006 320 640 640 320 2560 1280 320 07/08-130 A/Brisbane/59/2007 80 320 320 160 1280 640 320 07/08-129 A/Brisbane/59/2007 40 80 80 160 160 320 1280 分離抗原 07/08-196 A/FUKUOKA/34/2007 80 40 320 160 320 320 320 07/08-330 A/FUKUOKA/25/2008 160 160 320 320 320 320 1280 各抗原の抗血清に対する赤血球凝集抑制価 (HI) NIID-ID ウイルス抗原 Hiroshima520 5 No.2 Nepal92106 Canada121206 No.2 Brisbane1007 No.2 Brisbane1007 X- 171A CDC Brisbane1007 X-171 CDC Uruguay71607 Hawaii0806 Lyon13310 6 参照抗原 (A/H3 株 ) 05/06-10 A/HIROSHIMA/52/2005 1280 320 320 640 640 640 640 640 1280 06/07-153 A/Nepal/921/2006 320 640 640 320 640 320 320 640 640 06/07-680 A/Canada/1212/2006 40 160 320 80 40 40 80 80 160 06/07-628 A/Brisbane/10/2007 640 160 320 640 640 640 640 640 640 07/08-2 A/Brisbane/10/2007 (X- 171A) 640 640 640 320 1280 640 640 1280 1280 07/08-1 A/Brisbane/10/2007 (X-171) 1280 640 1280 640 2560 1280 1280 1280 2560 07/08-181 A/Uruguay/716/2007 640 640 640 320 1280 640 1280 640 1280 06/07-681 A/Hawaii/08/2006 80 80 160 160 80 80 160 320 320 06/07-679 A/Lyon/1331/2006 40 80 80 160 40 40 80 160 320 分離抗原 07/08-331 A/FUKUOKA/19/2008 160 320 320 320 160 160 320 320 640 いることが示された 特に A/New Caledonia/20/99(H1N1) 株から抗原性が変異していることは抗原解析の結果からも明らかであった A/H3N2 型ではワクチン株であるA/Hi roshima/52/2005(h3n2) 株と近縁であった しかし 抗原解析の結果はA/Hiroshima/52/2005(H3N2) 株に対して変異していることが示唆され 遺伝子解析の結果とは異なった このことは抗原性に強い影響を与える抗原決定基のアミノ酸に変異があった結果かもしれない 10) B 型ではワクチン株であるビクトリア系統株のB/Malaysia/2 506/2004 株と近縁であった 国立感染症研究所による平成 18 年度のインフルエンザウイルスの抗原及び遺伝子解析において A/H1N1 型においては国内分離株の多くはワクチン株類似株であったが 抗原変異株も多く見られていること A/H3N2 型ではワクチン株から抗原性が変異してきていること B 型ではワクチン株であるビクトリア系統株と類似株であると報告している 8 9) 遺伝子解析による抗原性解析はワクチン候補株を選択する上でも貴重な情報還元となることから 今後とも継続していく必要があると考えられる 3 4 薬剤耐性インフルエンザ治療薬であるリン酸オセルタミビルに対する感受性を調べるため 分離株のNA 遺伝子の解析を行ったところ 塩基配列決定を行った55 株の全てにおいて 薬剤耐性獲得に必要なアミノ酸変異は見られなかっ た 従って リン酸オセルタミビルは平成 13 年にA 及びB 型インフルエンザ治療薬として認可 使用されているが 福岡県ではリン酸オセルタミビル耐性株の流行は現在までのところないと考えられた しかしながら日本よりはるかに使用量の少ないヨーロッパ アメリカにおいては ノルウェー 251 株中 167 株 (67%) フランス401 株中 170 株 (42%) オランダ140 株中 42 株 (30%) ドイツ507 株中 65 株 (13%) イギリス331 株中 35 株 (11%) カナダ454 株中 1 07 株 (24%) アメリカ838 株中 87 株 (10%) と リン酸オセルタミビル耐性株が既に高頻度に検出されている 3,4,5) 最近 リン酸オセルタミビルで治療を受けたインフルエンザ患者の体内で薬剤耐性を獲得したウイルスが 家族内で感染したと推測される事例が関東地区で初めて確認された 11) これまでのところ日本ではリン酸オセルタミビル耐性株の大規模流行はなく 欧州のような深刻な状況にはなっていないと考えられるが リン酸オセルタミビル使用量の非常に多い日本において 薬剤の使用量が多くなれば薬剤耐性株の出現が憂慮されている 12) このことは当県においても薬剤耐性インフルエンザウイルスによる集団感染事例が発生する危険性を示唆しており 今後も薬剤耐性株出現の監視を続けていく必要があると考えられる

128.4 120 100 80 60 40 20 0 Nucleotide Substitutions (x100) 図 2 分離されたA 及びB 型インフルエンザウイルス株の HA 遺伝子領域の分子系統樹塩基配列は FS に続く検体番号 流行シーズン並びに A B 型の区別で表記した 分子系統樹は塩基配列をClustalW 法で整列後 MEGALIGNにより作成 ブートストラップ法により検定した 4 まとめ FS241_0506-AH3 FS242_0506-AH3 FS248_0506-AH3 FS102_0506-AH3 FS105_0506-AH3 FS240_0506-AH3 A Hiroshima 52 2005 FS158_0506-AH3 FS183_0607-AH3 FS202_0607-AH3 FS212_0607-AH3 FS247_0607-AH3 FS224_0708-AH3 FS201_0607-AH3 FS187_0607-AH3 FS221_0708-AH3 FS229_0708-AH3 FS176_0607-AH3 A Solomon Islands 2006 A_New Caledonia_20_99 FS247_0506-AH1 FS207_0607-AH1 FS206_0607-AH1 FS204_0607-AH1 FS2_0708-AH1 FS3_0708-AH1 FS4_0708-AH1 FS5_0708-AH1 FS6_0708-AH1 FS198_0607-AH1 B Shanghai 361 2002 B_Yamanashi_166_98 B_Malaysia_2506_2004 FS188_0607-B FS184_0607-B FS256_0607-B FS224_0607-B FS225_0607-B FS177_0607-B FS203_0607-B FS222_0607-B FS223_0607-B インフルエンザ流行のピークは平成 18 年は 1 月に 平 成 19 年は例年より1ヶ月以上遅く 平成 20 年は流行そのものが小さかった インフルエンザ患者より採取された咽頭拭い液等よりMDCK 細胞を用いてウイルス分離を行った結果 分離されたインフルエンザウイルス株は平成 17 年 18 年はA/H3が最も多く 平成 19 年はA/H1が優位であった 感染研で実施された抗原解析の結果では当所の分離株はワクチン株と比較し抗原性に変異が認められているが 当所で行ったHA 遺伝子解析では大きな変異は見られなかった またノイラミニダーゼ阻害薬に対する耐性をNA 遺伝子の解析により行ったところ 薬剤耐性を獲得するような変異は見られなかった 文献 1) Robert G Websterr et al. Microbiological Reviews, 56(1):152 179, 1992. 2) Beigel JH et al., New England Journal of Medicine, 353(13):1374-1385, 2005. 3) Vasiliy P. Mishin, et at., Journal of Antimicrovial Agents and Chemotherapy, 49(11), 4515-4520, 2005. 4) Arnold S. Monto, et al., Journal of Antimicrovial Agents and Chemotherapy, 50(7), 2395-2402, 2006. 5) Penelope Ward et al., Journal of Antimicrovial Agents and Chemotherapy, 55, Suppl. S1, i5 i21, 2005. 6) 福岡県保健環境研究所ホームページ (http://www. fihes.pref.fukuoka.jp/) 福岡県感染症情報 定点当たり報告数 ( インフルエンザ ) 7) 病原体検出マニュアル インフルエンザ 国立感染症研究所 地方衛生研究所全国協議会 p853-895 平成 15 年 12 月 9 日 8) 病原微生物検出情報 28 313-320 2007. 9) 病原微生物検出情報 28 320-322 2007. 10) Karoline Bragstad et al., Virology Journal, 5 (40) 1-19 2007. 11) 横浜市衛生研究所ホームページ (http://www.city. yokohama.jp/me/kenkou/eiken/news.html) 平成 20 年 2 月 29 日 12) 病原微生物検出情報 29 155-159 2008.

( 英文要旨 ) Current trends of antigenic and genetic characteristics of influenza viruses isolated in Fukuoka Prefecture between 2005 and 2008 Nobuyuki SERA, Yoshiki ETOH, Shiko NAKAYAMA, Tetsuya ISHIBASHI and Katsumi CHIJIWA Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences, Mukaizano 39, Dazaifu, Fukuoka 818-0135, Japan The antigenic and genetic variation, and drug resistance of influenza viruses isolated in Fukuoka Prefecture between 2005 and 2008 were analyzed. Under the Fukuoka Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases, clinically diagnosed influenza cases have first been reported in approximately the middle of December, gradually increase, and continue until April or March during the 3 recent seasons. The total number of reported patients, the peak height and severity of cases depend on the year. Generally, influenza epidemics in Japan have caused by influenza AH3, AH1, and B types. Antigenic analysis showed that the hemagglutinin (HA) antigens of AH1 and AH3 isolated in Fukuoka Prefecture were not very closely related to those of vaccine strains such as A/Solomon Islands/3/2006 or A/New Caledonia/20/99, and A/Hiroshima/52/2005. Phylogenetic analysis of Influenza HA gene showed that the HA genes of AH1 isolates were slightly shifted from those of the vaccine strains, but those of AH3 isolates were genetically similar to that of the vaccine strain. Neuraminidase Inhibitors (NIs) are currently one of the most effective drugs against influenza viruses. Recently, resistant mutants have been reported espcially in Europe, and caused a concern that such viral variants may reduce sensitivity to the treatment with NIs. The result indicated that influenza A isolates in Fukuoka prefecture had no resistant mutation in NA gene. However, it is necessery to perform surveillance for the appearance of the drugresistant viruses. [Key words; Influenza virus, antigenic, genetic, drug resistance]