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よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

2015 年 9 月 30 日放送 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE) はなぜ問題なのか 長崎大学大学院感染免疫学臨床感染症学分野教授泉川公一 CRE とはカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 以下 CRE 感染症は 広域抗菌薬であるカルバペネム系薬に耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌などの いわゆる

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腸内細菌科細菌 Enterobacteriaceae Escherichia coli (大腸菌) Klebsiella sp. (K. pneumoniae 肺炎桿菌など) Enterobacter sp. (E. cloacaeなど) Serratia marcescens Citrobacte

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プライマリーケアのためのワンポイントレクチャー「抗菌薬①」(2016年4月27日)

R01

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抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

公開情報 2016 年 1 月 ~12 月年報 院内感染対策サーベイランス集中治療室部門 3. 感染症発生率感染症発生件数の合計は 981 件であった 人工呼吸器関連肺炎の発生率が 1.5 件 / 1,000 患者 日 (499 件 ) と最も多く 次いでカテーテル関連血流感染症が 0.8 件 /

公開情報 2016 年 1 月 ~12 月年報 ( 全集計対象医療機関 ) 院内感染対策サーベイランス検査部門 Citrobacter koseri Proteus mirabilis Proteus vulgaris Serratia marcescens Pseudomonas aerugino

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

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地方衛生研究所におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌検査の現状 薬剤耐性研究センター 第 1 室 鈴木里和

日本化学療法学会雑誌第61巻第6号

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

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274 コバス TaqMan48 を用いた液体培地からの抗酸菌検出 澤村卓宏 1) 森部龍一 2) 社会医療法人大雄会第二医科学研究所 1) 社会医療法人大雄会総合大雄会病院 2) [ 目的 ] 我々はコバス TaqMan48( ロシュ ダイアグノステックス ) を用いた液体培地からの抗酸菌検出に関


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ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

1 MRSA が増加する原因としては皮膚 科 小児科 耳鼻科などでの抗生剤の乱用 があげられます 特にセフェム系抗生剤の 使用頻度が高くなると MRSA の発生率が 高くなります 最近ではこれらの科では抗 生剤の乱用が減少してきており MRSA の発生率が低下することが期待できます アトピー性皮膚炎

302 Mod-Hodge Test および CarbaNP 法によるカルバペネマーゼ産生腸内細菌検出に関する検討 中村竜也 1) 大沼健一郎 1) 小林沙織 1) 小林泰菜 1) 楠木まり 1) 矢野美由紀 1) 中村正邦 1) 林伸英 1) 国立大学法人神戸大学医学部附属病院 1) 目的 カルバ

2 2 THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 69 1 Feb Neisseria gonorrhoeae ceftriaxone CTRX % 2010 CTRX 20 FQ staphylococci, E. faecium, N.


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シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

細菌または真菌の抗菌薬感受性の検査方法およびそれに用いるシステム

1 2

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ワンヘルスに関するシンポジウム 2017 年 11 月 27 日 医療における耐性菌の現状 長崎大学大学院病態解析 診断学 ( 臨床検査医学 ) 同病院検査部栁原克紀

医療における耐性菌の現状 薬剤耐性菌とは? 重要な薬剤耐性菌

医療における耐性菌の現状 薬剤耐性菌とは? 重要な薬剤耐性菌

薬剤耐性とは? 薬剤耐性 ( やくざいたいせい ) とは 微生物が 自分に対して何らかの作用を持った薬剤に対して抵抗性を持ち これらの薬剤が効かない あるいは効きにくくなった現象のこと 薬剤抵抗性とも呼ばれる

薬剤耐性菌の検出 寒天前面に菌液を塗り 抗菌薬入りディスクを置いて一晩培養 耐性 抗菌薬入りディスク 感性 寒天内を抗菌薬が拡散一定の大きさ以上の発育阻止円が見られる

感受性菌と多剤耐性菌 IPM IPM CPFX AMK CPFX AMK 緑膿菌感受性菌多剤耐性緑膿菌 ( 臨床分離株 )

薬剤感受性検査 1 微量液体希釈法 (= 標準法 ) 2 機械による自動測定

1 微量液体希釈法 (= 標準法 ) - + 100 50 25 12.5 6.25 3.13 1.56 0.78 0.39 0.20 0.10 0.05 0.025 対照 μg/ml

2 機械による自動測定 LED による可視光線 UV 光源からの紫外線によりパネル内の各ウェルの濁度 色調の変化を測定したものをアルゴリズム解析 微量液体希釈法は 菌の発育性を濁度で判定するが 自動機器の場合 濁度と酸化還元電位による色調の変化で判定するため 菌の発育性に関して 微量液体希釈法より 感度が高い

抗菌薬に対する耐性メカニズム 抗菌薬 1 抗菌薬の不活化 3 薬剤の排出 (Efflux 機構 ) 抗菌薬 外膜 内膜 2 作用点の変異 抗菌薬

耐性菌の伝播 定着および増殖のメカニズム 正常細菌フローラ 正常細菌フローラの破綻 感染防御能の低下 外部からの耐性菌の侵入 定着 患者体内での耐性の伝達や突然変異による耐性 これらの耐性菌の増殖 抗菌薬の投与免疫抑制剤投与など 患者周囲の耐性菌 医療従事者や患者 家族の不潔な手指や医療器具などを介した他の患者への耐性菌の伝播 抗菌薬の長期投与 耐性菌の選択的増加や高度耐性菌の出現

医療における耐性菌の現状 薬剤耐性菌とは? 重要な薬剤耐性菌

重要な薬剤耐性菌 メチシリン耐性黄色ブドウ球 (MRSA) 多剤耐性緑膿菌 (MDRP) ESBL 産生菌カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE)

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (methicillin-resistant Staphylococcus aureus:mrsa) 1961 年に初めて英国より報告され 日本国内においては 1980 年代より各医療施設での分離が急増 社会的な問題となった その後も新たな抗 MRSA 薬の開発や院内感染対策などの取り組みが行われるが 今なお 臨床的に重要で 院内感染対策上も苦慮することが多い感染症の原因菌の一つである

黄色ブドウ球菌薬剤耐性化の歴史 ペニシリン メチシリン 広域ペニシリン セフェム系薬 バンコマイシン リネゾリド 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 ダプトマイシン ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) MRSA の蔓延 バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE) バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 (VRSA) 市中感染型 MRSA

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) メチシリンのMICが4μg/ml 以上 ヒトの鼻腔などに常在しやすく 除菌困難なグラム陽性球菌 国内の多くの施設で 黄色ブドウ球菌の40-50% 前後を占める 院内感染症の重要な原因菌 接触感染で伝播 五類感染症ー定点把握疾患

MRSA の定義 meca 遺伝子を保有する Staphylococcus aureus およびオキサシリン (oxacillin) の MIC 4μg/ml meca 遺伝子とは β- ラクタム系抗菌薬に親和性が低いペニシリン結合タンパク 2 (Penicillin Binding Protein 2 prime: PBP2 ) の産生に関与する遺伝子のこと PBP2 が産生されることにより β- ラクタム系抗菌薬存在下でも MRSA の細胞壁合成が阻害されず MRSA は増殖できる

meca 遺伝子の存在領域 MSSA MRSA meca meca SCCmec 挿入に関与する組み換え遺伝子 ccr(chromosomal cassette recombinase) 遺伝子 トランスポゾンTn554 erythromycin 耐性遺伝子などを保有 これらが存在する染色体 DNA の領域 SCCmec(Staphylococcus cassette chromosome mec)

長崎大学病院における黄色ブドウ球菌中のMRSAの割合 100 90 M 80 ( % ) R S A 分離 70 60 50 40 42 55 66 70 68 63 62 64 66 62 63 62 64 61 57 61 60 56 57 48 55 58 53 54 51 47 43 率 30 28 20 10 0 15 17

CDC, ANTIBIOTIC RESISTANCE THREATS in the United States, 2013 を基に作成 耐性菌の推定患者数と死亡者数 ( 米国 2013) 菌名推定患者数推定死亡者数 MRSA 80,000 11,000 耐性肺炎球菌 1,200,000 7,000 ESBL 産生菌 26,000 1,700 VRE 20,000 1,300 CRE 9,300 610 多剤耐性アシネトバクター 7,300 500 MDRP 6,700 440

三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス ( 呼吸器感染症 ) Total 2006 (n=205) 2007 (n=226) 2008 (n=189) 2009 (n=130) 2010 (n=206) Staphylococcus aureus (2006~2012) CAP (community-acquired pneumonia) 2006 (n=51) 2007 (n=61) 2008 (n=45) 2009 (n=27) 2010 (n=47) 2012 (n=62) 47.1 53.3 51.6 62.3 66.7 66.0 52.9 46.7 48.4 37.7 33.3 34.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2012 (n=232) MSSA: Oxacillin susceptible Staphylococcus aureus, MIC of Oxacillin 2 μg/ml MRSA: Oxacillin resistant Staphylococcus aureus, MIC of Oxacillin 4 μg/ml HAP (hospital-acquired pneumonia) 2006 (n=116) 2007 (n=119) 2008 (n=102) 2009 (n=67) 2010 (n=106) 2012 (n=90) 27.6 24.4 24.5 26.9 32.1 31.1 72.4 75.6 75.5 73.1 68.7 68.9 0% 20% 40% 60% 80% 100% AECRD (acute exacerbations of chronic respiratory diseases) 2006 (n=28) 2007 (n=28) 2008 (n=26) 2009 (n=12) 2010 (n=18) 2012 (n=27) 57.1 53.6 58.3 80.8 74.1 83.3 42.9 46.4 41.7 19.2 25.9 16.7 0% 20% 40% 60% 80% 100% Yanagihara K et al, J Infect Chemother. 2017 Sep;23(9):587-597

三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス ( 呼吸器感染症 ) Staphylococcus aureus (2006~2014) Total CAP: Community-acquired pneumonia HAP: Hospital-acquired pneumonia AECRD: Acute exacerbation of chronic respiratory diseases Yanagihara K et al, J Infect Chemother. 2017 Sep;23(9):587-597 MSSA: methicillin-susceptible Staphylococcus aureus MRSA: methicillin-resistant Staphylococcus aureus

厚生労働科学研究費補助金新興 再興感染症および予防接種政策推進研究事業 医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究 (28140301) 研究代表者 : 栁原 克紀 ( 長崎大学 ) 研究分担者 : 大石 和徳 ( 国立感染症研究所 ) 賀来 満夫 ( 東北大学 ) 三鴨 廣繁 ( 愛知医科大学 ) 山本 善裕 ( 富山大学 ) 泉川 公一 ( 長崎大学 ) 大曲 貴夫 ( 国立国際医療研究センター )

S. aureus における MRSA の割 (%) 60 合 50 40 30 20 10 40.5 34.7 35.1 34.2 33.1 A 病院 B 病院 C 病院 D 病院 E 病院全体 0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 厚労科研 医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究 (28140301)

MRSA は院内感染だけではない! 病院 市中 麻薬の使用 地域原住民 刑務所 男性同性愛者 接触の多いスポーツ競技 小児 HIV 感染者 学校 託児所 医療介護関連 血液透析 外来点滴治療 外来小手術 体内植え込み型カテーテル ナーシングホーム リハビリテーションセンター 長期療養施設 入院の既往 MRSA 感染症の病態は複雑化 1. Otter JA, French GL. Lancet Infect Dis. 2010;10:227-239. 2. Popovich KJ, Weinstein RA. Infect Control Hosp Epidemiol. 2009;30:9-12.

HA-MRSA と CA-MRSA の違いは? 院内感染型 従来より医療施設にて分離されていた (Hospital-associated MRSA : HA-MRSA) 市中感染型 入院歴のない健常人の間で広まった (Community-acquired MRSA : CA-MRSA) HA-MRSA と CA-MRSA では 白血球破壊毒素(Panton-Valentine leukocidin:pvl) の産生 ブドウ球菌カセット染色体 mec (Staphylococcus cassette chromosome mec:sccmec) タイプに違いがある!

院内感染型および市中感染型の特徴 院内感染型 市中感染型 主な SCCmec の 遺伝子型 薬剤感受性 type Ⅱ (Ⅰ, Ⅲ) 多剤耐性 type Ⅳ オキサシリンには耐性 他の多くの抗菌薬に感性 主なクローン New York/Japan USA300 ( 主に米国 ) 毒素 TSST-1 など 種々の毒素 PVL 表皮剥離毒素 (ET) 感染部位各種臓器主に皮膚軟部組織

PVL(Panton-Valentine-leukocidin) 白血球溶解毒素のことで 2 つのタンパク LukS と LukF が協同して作用する 2 成分性毒素 (6~8 量体 ) これらのタンパクの遺伝子 luks, lukf は溶原化ファージのゲノム上にコードされていると報告されている LukS-PV LukF-PV PVL 白血球の中でも主に好中球に作用し 低濃度ではアポトーシスを 高濃度ではネクローシスを誘導する このようにして PVL は 細菌の除去に重要な好中球を破壊するため PVL 陽性 MRSA 感染患者は重症化し 予後不良なことが多いとされている MRSA 好中球 PVL 低濃度 PVL 高濃度 ミトコンドリア アポトーシスネクローシス (Boyle-Vavra S et al. Lab Invest 87:3-9, 2007.)

国内の 16 施設にて分離された MRSA 期間 :2008 年 ~2009 年対象 :MRSA 857 株 20.0% SCC mec type 100% 80% luks/f-pv 60% 73.6% Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 40% 20% 0% 0.5% 2.3% 全体 SCCmecⅣ 陰性 陽性 (Yanagihara K, et al Diagn Microbiol Infect Dis 72,2012 )

Percentage of SCCmec type MRSA の SCCmec type の変化 100% P<0.001 2003-07 2008-11 2012-15 80% P<0.01 60% 40% P<0.001 P<0.05 P<0.01 20% 0% Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 長崎大学病院で血液培養から検出されたMRSAの解析では 従来の院内感染型 MRSAであるSCCmec IIが減少し 市中感染型であるSCCmec IVが増加していた 2003-07: Yamada, et al. Tohoku J Exp Med. 2011: 61-7. 2008-11: Kaku N, et al. J Infect Chemother. 2014: 350-5.

市中 MRSA の現状は? 2010 年から 2012 年まで 24 都道府県内の 107 施設において SSTI 患者から分離された MRSA 625 株を解析した SCCmec types IV は 266 株 (43%) V は 114 株 (18%) であった Panton-Valentine leukocidin (PVL) 遺伝子保有株 (57 strains, 9%), exfoliative toxin (ET) 保有株 (179 strains, 29%) であった Yamaguchi T, Matsumoto T et al. Molecular Characterization of Community-Associated Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Isolated from Skin and Pus Samples of Outpatients in Japan.2015 Aug;21(4):441-7

海外における SCCmec type の 変化 Total HA-MRSA CA-MRSA 海外でも 菌血症を起こした MRSA において CA-MRSA が占める割合が増加している Kyle J, et al. Clin Infect Dis. 46: 787-794, 2008

家畜からヒトへの MRSA の伝播 Ferber D. Science. 329: 1010-1, 2010 家畜からヒトへの MRSA の伝播については まだ一定の見解は得られていない また 食肉からの感染事例も報告はされていない ただし オランダなどではブタ由来の MRSA(MLST CC398) が養豚業従事者から検出されている事例の報告もあり 注意が必要である Kock R, et al. Euro Surveill. 15: 19688, 2010

緑膿菌 緑膿菌 という和名は 本菌が傷口に感染したときに しばしば緑色の膿が見られることから名付けられた Pseudomonas aeruginosaの aeruginosaも 緑青に満ちた を意味するギリシア語に由来している

緑膿菌の形態

100.0 90.0 80.0 70.0 緑膿菌の感受性成績 (CLSI:M100-S24,2014) 0.2 0.5 14.2 14.4 15.8 13.5 7.3 0.5 0.5 0.7 15.9 13.7 13.5 8.4 19.2 21.7 21.8 19 17.7 7.0 3.4 26.6 27.9 3.8 9.5 9.1 4.3 6.1 3 5 9.7 4.5 4.1 5.9 4.3 60.0 50.0 40.0 78.9 76.1 75.1 83 84.3 79.8 71 67.5 67.8 82.5 73.9 74.1 99 99.3 98.9 80.3 77.8 77.4 30.0 20.0 10.0 0.0 (%) 13 14 15 13 14 15 13 14 15 13 14 15 13 14 15 13 14 15 PIPC CAZ IPM MEPM AMK CPFX S 16 8 2 2 16 1 I 32-64 16 4 4 32 2 R 128 32 8 8 64 4

MDRP の耐性基準 薬剤 MIC ディスク阻止円 (µg/ml) 直径 (mm) イミペネム アミカシン シプロフロキサシン 16 32 4 13 14 15

多剤耐性緑膿菌 (5 類感染症 / 定点把握疾患 ) (Muti-Drug Resistant Pseudomonas aeruginosa ) カルバペネム系 (IPM: 16µg/ml) フルオロキノロン系 (CPFX: 4µg/ml) アミノ配糖体系 (AMK: 32µg/ml) の 3 系統の薬剤に対し すべて耐性と判定された緑膿菌 とくにメタロ -β- ラクタマーゼ (MBL) 産生株はほぼすべての薬剤に高度耐性を示す 膿菌 (ATCC 株 ) 多剤耐性緑膿菌 ( メタロ型 ) IPM ディスク法 IPM CPFX AMK IPM CPFX AMK CPFX ATCC 株 ( 感受性 ) 多剤耐性株 CAZ+SMA AMK

MDRP 分離状況 2500 2388 P. aeruginosaに占めるmdrpの割合 (%) 10 検出患者数 ( 人 ) 2000 1500 1000 500 2109 1928 1872 2.8 2.7 2.4 2.4 2059 2.0 1822 1.7 5 0 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 0 (Japan Nosocomial Infection Surveillance;JANIS 2013)

本邦の MDRP のアウトブレイク 年度病院事例 2004 年大阪大学 心臓血管外科 小児外科術後, 経食道エコープコープローブ 2004 年京都大学血液内科, 尿道留置カテーテル事例 2004 年埼玉医科大学 2005 年長崎大学採尿カップ, 複数病棟 複数病棟, 尿道留置カテーテル, 気管内吸引引装置 2006 年高知大学簡易トイレの洗浄ブラシ 2006 年東京医科大学汚染処理室シンク 2007 年大阪大学気管支鏡 2008 年札幌医科大学 高度救命救急センター, 熱傷患者, シャワー浴 ( 化学療法の領域,2011 27:1640-1646)

2005 年 9 月 27 日

基質拡張型 β ラクタマーゼ (ESBL) 産生菌 大腸菌 肺炎桿菌

ESBL 産生グラム陰性桿菌 ESBL= 基質特異性拡張型 β ラクタマーゼ (Extended-spectrum β- lactamase) ペニシリン系 第 3 4 世代を含む全てのセファロスポリン系やモノバクタム系抗菌薬を分解可能な β ラクタマーゼ ニューキノロン系にも耐性となっていることがある

ESBL の作用 ペニシリン ペニシリナーゼ ペニシリナーゼから ESBL へ ESBL ESBL 第 3 世代セファロスポリン ペニシリナーゼ ESBL ESBL セファマイシンカルバペネム ESBL ESBL

ESBL とは? 基質特異性拡張型 b- ラクタマーゼ Extended Spectrum Beta-Lactamase Type A β- ラクタマーゼ ESBL ペニシリン系セフェム系カルバペネム系

%ESBL 長崎大学病院における ESBL 産生株の年次推移 40 35 30 25 E.coli Klebsiella spp. 20 15 10 5 0 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 Year

30 25 ESBL 産生菌の割合 (%) E. coli, K. pneumoniae, K. oxytoca, P. mirabilis 20 15 10 5 8.9 9.7 11.5 11.9 12.7 A 病院 B 病院 C 病院 D 病院 E 病院全体 0 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 厚労科研 医療機関等における薬剤耐性菌の感染制御に関する研究 (28140301)

なぜ ESBL が増えているのか? 環境クローン性拡散 ESBL 産生菌 ESBLプラスミド 腸内細菌 抗菌薬による選択圧

ESBL 産生菌の問題点 ESBL 産生菌は日本だけでなく世界的に増加傾向にある ESBL 産生菌は従来の院内感染症の原因微生物としてだけでなく 市中感染の原因微生物としても拡散している Ben-Ami R, et al. Clin Infect Dis. 49: 682-90, 2009 健常成人においても腸内細菌の保有率が6.4% と高かったことが報告されている Luvsansharav UO, et al. J Infect Chemother. 17: 722-5, 2011 市中での拡散については 旅行者による渡航先からの持ち込みや 1) 家禽肉の汚染が指摘されているが 2) どのような経路で拡散しているのかは特定されていない 1) Kumarasamy K, et al. Lancet Infect Dis. 10: 597-602, 2 2) Warren RE, et al. J Antimicrob Chemother. 61: 504-8, 2

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE) とは? カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE) は 米国疾病予防センター (CDC) や感染症専門医も危機感を強めており マスコミでは 悪魔の耐性菌 として注目されている 腸内細菌は ヒトの腸管内に生息し 敗血症 腹膜炎 尿路感染症 呼吸器感染症 術後感染の原因菌であり その特効薬であるカルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌が CRE である CRE の耐性機序は カルバペネム系抗菌薬分解酵素である各種かるカルバペネマーゼの産生 AmpC ESBL の過剰産生 膜透過性 ( ポーリン ) の低下などがある

長崎大学病院での CRE のアウトブレイク

耐性菌 4 人感染 うち死亡 2 人に影響か 福岡 東筑病院 北九州市八幡西区の東筑病院は 10 日 入院患者 4 人から ほとんどの抗生物質が効かないとされるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE) を検出したと発表した 3 人が肺炎で死亡し うち 2 人は CRE の影響が否定できないという 院内感染防止のため感染者を個室に移し 入院患者全員の検査を進めている 病院の説明によると 昨年 10 月に 90 代の女性から菌を検出 7 月に肺炎で死亡したが CRE が原因ではないという 今年 6~7 月には 80~90 代の男性患者 3 人から菌を検出 うち 2 人が肺炎で死亡しており 病院は 因果関係は不明だが 感染が影響を与えた可能性がある としている 残る 1 人は入院中だが 命に別条はないという 2017 年 8 月 10 日 ( 木 ) 配信朝日新聞

CRE と CPE カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (Carbapenemresistant Enterobacteriaceae; CRE) カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌 (Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae; CPE) 耐性がカルバペネマーゼの産生によるものである CPE は必ずしもカルバペネムに耐性を示さないものの 院内感染対策上は検出することが望ましい CPE を検出する方法として カルバペネマーゼ遺伝子検出や阻害剤ディスクを利用した方法などが提唱されているが これらをすべての菌株に実施するのは難しい

CRE( カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 ) と CPE( カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌 ) カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 ( 日本のCRE の定義 ) カルバペネム耐性 (+) カルバペネマーゼ産生 (-) カルバペネム耐性 (+) カルバペネマーゼ産生 (+) カルバペネム耐性 (-) カルバペネマーゼ産生 (+) カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌 (CPE) ( 日本化学療法学会雑誌 Vol.63 No.2 2015 より引用 改変 )

CPE の分布 non-cpe CPE 2 CRE BSMT, 16th May 2014 Public Health England より引用一部改変

長崎大学病院での検出状況 菌種 ( 属 ) 別の分離状況 ( 同一患者を含む ) metallo(+) metallo(-) E. coli - CRE Klebsiella spp. - CRE Enterobacter spp. - CRE 13( 件 ) 13( 件 ) 13( 件 ) 12 12 12 11 11 11 10 10 10 9 9 9 8 8 8 7 7 7 6 6 6 5 5 5 4 4 4 3 3 3 2 2 2 1 1 1 0 0 0

医療における耐性菌の現状 薬剤耐性菌とは? 重要な薬剤耐性菌