アジェンダ 1. イントロダクション 2. アナログ回路での単位 db などの見方 考え方 3. SPICEツールNI Multisim の基本機能 4. 周波数特性の検討 5. 異常発振してしまう原理 6. まとめ 2 Analog Devices Proprietary Information

Similar documents
オペアンプの容量負荷による発振について

スライド 1

フィードバック ~ 様々な電子回路の性質 ~ 実験 (1) 目的実験 (1) では 非反転増幅器の増幅率や位相差が 回路を構成する抵抗値や入力信号の周波数によってどのように変わるのかを調べる 実験方法 図 1 のような自由振動回路を組み オペアンプの + 入力端子を接地したときの出力電圧 が 0 と

RLC 共振回路 概要 RLC 回路は, ラジオや通信工学, 発信器などに広く使われる. この回路の目的は, 特定の周波数のときに大きな電流を得ることである. 使い方には, 周波数を設定し外へ発する, 外部からの周波数に合わせて同調する, がある. このように, 周波数を扱うことから, 交流を考える

3.5 トランジスタ基本増幅回路 ベース接地基本増幅回路 C 1 C n n 2 R E p v V 2 v R E p 1 v EE 0 VCC 結合コンデンサ ベース接地基本増幅回路 V EE =0, V CC =0として交流分の回路 (C 1, C 2 により短絡 ) トランジスタ

Microsoft Word - NJM2718_DataJ_v1.doc

(Microsoft Word - PLL\203f\203\202\216\221\227\277-2-\203T\203\223\203v\203\213.doc)

PowerPoint プレゼンテーション

OPアンプ応用ヘッドホーン用アンプの設計ノウハウ

p.3 p 各種パラメータとデータシート N Package Power Dissipation 670mW ( N Package)

Microsoft PowerPoint - 9.Analog.ppt

アナログ回路 I 参考資料 版 LTspice を用いたアナログ回路 I の再現 第 2 回目の内容 電通大 先進理工 坂本克好 [ 目的と内容について ] この文章の目的は 電気通信大学 先進理工学科におけるアナログ回路 I の第二回目の実験内容について LTspice を用

RMS(Root Mean Square value 実効値 ) 実効値は AC の電圧と電流両方の値を規定する 最も一般的で便利な値です AC 波形の実効値はその波形から得られる パワーのレベルを示すものであり AC 信号の最も重要な属性となります 実効値の計算は AC の電流波形と それによって

電子回路I_8.ppt

Microsoft PowerPoint - アナログ電子回路12回目.pptx

MUSES01 2 回路入り J-FET 入力高音質オペアンプ ~ 人の感性に響く音を追求 ~ 概要 MUSES01 は オーディオ用として特別の配慮を施し 音質向上を図った 2 回路入り JFET 入力高音質オペアンプです 低雑音 高利得帯域 低歪率を特徴とし オーディオ用プリアンプ アクティブフ

アジェンダ 前編 1. イントロダクション 2. 大きさ を表すデシベル (db) と dbm の考え方 3. dbm をちょっと基本クイズで考える 4. db に関連して出てくる用語 5. 電圧と電流は伝送線路内を波として伝わっていく 後編 6. 伝送線路と特性インピーダンス 7. 電圧と電流が反

Microsoft PowerPoint - ch3

(3) E-I 特性の傾きが出力コンダクタンス である 添え字 は utput( 出力 ) を意味する (4) E-BE 特性の傾きが電圧帰還率 r である 添え字 r は rrs( 逆 ) を表す 定数の値は, トランジスタの種類によって異なるばかりでなく, 同一のトランジスタでも,I, E, 周

<4D F736F F D D834F B835E5F8FDA8DD C E646F63>

周波数特性解析

Microsoft PowerPoint pptx

第 11 回 R, C, L で構成される回路その 3 + SPICE 演習 目標 : SPICE シミュレーションを使ってみる LR 回路の特性 C と L の両方を含む回路 共振回路 今回は講義中に SPICE シミュレーションの演習を併せて行う これまでの RC,CR 回路に加え,L と R

回路シミュレーションに必要な電子部品の SPICE モデル 回路シミュレータでシミュレーションを行うためには 使用する部品に対応した SPICE モデル が必要です SPICE モデルは 回路のシミュレーションを行うために必要な電子部品の振る舞い が記述されており いわば 回路シミュレーション用の部

Microsoft PowerPoint - 第06章振幅変調.pptx

絶対最大定格 (T a =25 ) 項目記号定格単位 入力電圧 V IN 消費電力 P D (7805~7810) 35 (7812~7815) 35 (7818~7824) 40 TO-220F 16(T C 70 ) TO (T C 25 ) 1(Ta=25 ) V W 接合部温度

回路設計 WEBラボ:帰還回路の位相余裕が同じならオーバーシュートはいつも同じか?

HA17458シリーズ データシート

. 回路定数の決め方. トランス インピーダンス ゲインを決める p R 00k 5 IG 0p R 00M - F U OPA656 5 フォト ダイオードの等価回路 や,R の値は, フォトダイオードのデータシートから判断します. 図 一般的なトランス インピーダンス アンプ 図 に一般的なトラ

NJM78L00S 3 端子正定電圧電源 概要 NJM78L00S は Io=100mA の 3 端子正定電圧電源です 既存の NJM78L00 と比較し 出力電圧精度の向上 動作温度範囲の拡大 セラミックコンデンサ対応および 3.3V の出力電圧もラインアップしました 外形図 特長 出力電流 10

スライド 1

第 5 章復調回路 古橋武 5.1 組み立て 5.2 理論 ダイオードの特性と復調波形 バイアス回路と復調波形 復調回路 (II) 5.3 倍電圧検波回路 倍電圧検波回路 (I) バイアス回路付き倍電圧検波回路 本稿の Web ページ ht

形式 :WYPD 絶縁 2 出力計装用変換器 W UNIT シリーズ パルスアイソレータ ( センサ用電源付 2 出力形 ) 主な機能と特長 パルス入力信号を絶縁して各種のパルス出力信号に変換 オープンコレクタ 電圧パルス リレー接点パルス出力を用意 センサ用電源内蔵 耐電圧 2000V AC 密着

アクティブフィルタ テスト容易化設計

NJM78M00 3 端子正定電圧電源 概要 NJM78M00 シリーズは,NJM78L00 シリーズを更に高性能化した安定化電源用 ICです 出力電流が 500mA と大きいので, 余裕ある回路設計が可能になります 用途はテレビ, ステレオ, 等の民生用機器から通信機, 測定器等の工業用電子機器迄

NJM78L00 3 端子正定電圧電源 概要高利得誤差増幅器, 温度補償回路, 定電圧ダイオードなどにより構成され, さらに内部に電流制限回路, 熱暴走に対する保護回路を有する, 高性能安定化電源用素子で, ツェナーダイオード / 抵抗の組合せ回路に比べ出力インピーダンスが改良され, 無効電流が小さ

2STB240PP(AM-2S-G-005)_02

降圧コンバータIC のスナバ回路 : パワーマネジメント

モータ HILS の概要 1 はじめに モータ HILS の需要 自動車の電子化及び 電気自動車やハイブリッド車の実用化に伴い モータの使用数が増大しています 従来行われていた駆動用モータ単体のシミュレーション レシプロエンジンとモータの駆動力分配制御シミュレーションの利用に加え パワーウインドやサ

レベルシフト回路の作成

2STB240AA(AM-2S-H-006)_01

形式 :PDU 計装用プラグイン形変換器 M UNIT シリーズ パルス分周変換器 ( レンジ可変形 ) 主な機能と特長 パルス入力信号を分周 絶縁して単位パルス出力信号に変換 センサ用電源内蔵 パルス分周比は前面のスイッチで可変 出力は均等パルス オープンコレクタ 電圧パルス リレー接点パルス出力

NJM2591 音声通信用ミキサ付き 100MHz 入力 450kHzFM IF 検波 IC 概要 外形 NJM259 1は 1.8 V~9.0 Vで動作する低消費電流タイプの音声通信機器用 FM IF 検波 IC で IF 周波数を 450kHz ( 標準 ) としています 発振器 ミキサ IF

AD8515: 1.8 V 低電力 CMOS レール to レール入力/出力オペアンプ

Power.indb

の考え方 入力容量の低い OP アンプを 同相モード容量 2pF 未満 として 別表 1 にリストしてみましたので (72 種類ありました ) 是非ご参照ください なお 実際は同相モードでの容量と 差動モードでの容量がそれぞれ異なってきますので 注意が必要です 図 4 のように 同相モードは二つの入

スライド 1

目次 1. ダイナミックレンジとは 不思議な体験 三つの信号の関係 測定 ダイナミックレンジまとめ

ACモーター入門編 サンプルテキスト

PLL アン ドゥ トロア 3 部作の構成 1. PLL( 位相ロック ループ ) 回路の基本と各部動作 2. 設計ツール ADIsimPLL(ADIsimCLK) を用いた PLL 回路構成方法 3. PLL( 位相ロック ループ ) 回路でのトラブルとその解決技法 2

Microsoft PowerPoint pptx

7-1 Digital IC のライブラリの準備について [ 目的 ] 実験では 74HC00 を使用するので SPICE モデルを入手する [ 方法 ] LTspice User site からライブラリとシンボルを Download します

(Microsoft Word - \202S\211\211\216Z\221\235\225\235\212\355.docx)

Microsoft Word - プロービングの鉄則.doc

<8AEE B43979D985F F196DA C8E323893FA>

<4D F736F F F696E74202D2088DA918A8AED B838B B835E816A2E707074>

エラー動作 スピンドル動作 スピンドルエラーの計測は 通常 複数の軸にあるセンサーによって行われる これらの計測の仕組みを理解するために これらのセンサーの 1つを検討する シングル非接触式センサーは 回転する対象物がセンサー方向またはセンサー反対方向に移動する1 軸上の対象物の変位を測定する 計測

Microsoft Word - SPARQアプリケーションノートGating_3.docx

形式 :KAPU プラグイン形 FA 用変換器 K UNIT シリーズ アナログパルス変換器 ( レンジ可変形 ) 主な機能と特長 直流入力信号を単位パルス信号に変換 オープンコレクタ 5V 電圧パルス リレー接点出力を用意 出力周波数レンジは前面から可変 ドロップアウトは前面から可変 耐電圧 20

スライド 1

回路設計 WEBラボ:高速差動アンプの構築とそこで生じた負性抵抗の解析

CMOS リニアイメージセンサ用駆動回路 C CMOS リニアイメージセンサ S 等用 C は当社製 CMOSリニアイメージセンサ S 等用に開発された駆動回路です USB 2.0インターフェースを用いて C と PCを接続

光変調型フォト IC S , S6809, S6846, S6986, S7136/-10, S10053 外乱光下でも誤動作の少ない検出が可能なフォト IC 外乱光下の光同期検出用に開発されたフォトICです フォトICチップ内にフォトダイオード プリアンプ コンパレータ 発振回路 LE

VLSI工学

半分冗談 ( 常識 先入観 ) ここからの話は半分冗談と思って聞いてください まじめに聞かないでください ほんまでっか という暖かい目でみてください 質問 鎌倉幕府の成立年度は?(1192 年ではありません ) 確信犯 の意味は?( 正解率 15% 文部省 ) 知らないフリして わざと行うことではあ

モジュール式アナログアンプ 形式 VT-MSPA1-1 VT-MSPA1-10 VT-MSPA1-11 RJ 形式 : 改訂 : シリーズ 1X H6833_d 特長 内容 電磁比例圧力弁の制御に適しています : DBET-6X DBEM...-7X (Z)D

CMOS リニアイメージセンサ用駆動回路 C10808 シリーズ 蓄積時間の可変機能付き 高精度駆動回路 C10808 シリーズは 電流出力タイプ CMOS リニアイメージセンサ S10111~S10114 シリーズ S10121~S10124 シリーズ (-01) 用に設計された駆動回路です セン

(Microsoft Word - \216\374\224g\220\224\212g\222\243\203A\203_\203v\203^QEX.doc)

NJM255 (Ta=25 C) V. V P D 3 mw T o p r -485 C T s t g -425 C C V V (Ta=25 C, V =3.V,fif=.7MHz, fmod=khz, fdev=khz, ) COMP REF=.6V Ic c q - 4.

例 e 指数関数的に減衰する信号を h( a < + a a すると, それらのラプラス変換は, H ( ) { e } e インパルス応答が h( a < ( ただし a >, U( ) { } となるシステムにステップ信号 ( y( のラプラス変換 Y () は, Y ( ) H ( ) X (

LTspice/SwitcherCADⅢマニュアル

形式 :RPPD 計装用プラグイン形変換器 M UNIT シリーズ パルスアイソレータ ( センサ用電源付 ロータリエンコーダ用 ) 主な機能と特長 ロータリエンコーダの 2 相パルス入力信号を絶縁して各種の 2 相パルス出力信号に変換 オープンコレクタ 電圧パルス パワーフォト MOS リレー R

TA78L05,06,07,08,09,10,12,15,18,20,24F

Microsoft PowerPoint - 集積回路工学(5)_ pptm

Microsoft PowerPoint - H22パワエレ第3回.ppt

電子回路I_6.ppt

フロントエンド IC 付光センサ S CR S CR 各種光量の検出に適した小型 APD Si APD とプリアンプを一体化した小型光デバイスです 外乱光の影響を低減するための DC フィードバック回路を内蔵していま す また 優れたノイズ特性 周波数特性を実現しています

電流プローブと計測の基礎 (Tektronix 編 ) 電圧波形は違うのが当たり前 オームの法則 ( 図 1) により 電流は抵抗器によって電圧に変換することができます 電流波形を観測 するとき 電流経路に抵抗器を挿入し電圧に変換後 電圧波形として電圧プローブで観測する手法が あります この手法にお

Microsoft Word - LTSpice入門_V104.doc

S-89130/89140シリーズ オペアンプ

名称 型名 SiC ゲートドライバー SDM1810 仕様書 適用 本仕様書は SiC-MOSFET 一体取付形 2 回路ゲートドライバー SDM1810 について適用いたします 2. 概要本ドライバーは ROHM 社製 2ch 入り 180A/1200V クラス SiC-MOSFET

CMOS RF 回路(アーキテクチャ)とサンプリング回路の研究

Microsoft Word - N-TM307取扱説明書.doc

Microsoft Word - 02__⁄T_ŒÚ”�.doc

新しくシンボルを作成することもできるが ここでは シンボル :opamp2.asy ファイル を回路と同じフォルダにコピーする コピーしたシンボルファイルをダブルクリックで 開く Fig.4 opamp2 のシンボル 変更する前に 内容を確認する メニュー中の Edit の Attributes の

図 2.Cat2 ケーブルの減衰特性 通常伝送線路の減衰特性は 1-1) 式のように 3つのパラメータで近似されます DC 抵抗表皮効果誘電損失 A + f*b + f*c 1-1) ところが仕様書の特性を見ると0~825MHz までは-5dB でフラット 5.1GHz までは直線的な減衰になってい

形式 :AEDY 直流出力付リミッタラーム AE UNIT シリーズ ディストリビュータリミッタラーム主な機能と特長 直流出力付プラグイン形の上下限警報器 入力短絡保護回路付 サムロータリスイッチ設定方式 ( 最小桁 1%) 警報時のリレー励磁 非励磁が選択可能 出力接点はトランスファ形 (c 接点

Microsoft Word - TA79L05_06_08_09_10_12_15_18_20_24F_J_P11_070219_.doc

__________________

デジタルワイヤレスマイクロホン総合

-2 外からみたプロセッサ GND VCC CLK A0 A1 A2 A3 A4 A A6 A7 A8 A9 A10 A11 A12 A13 A14 A1 A16 A17 A18 A19 D0 D1 D2 D3 D4 D D6 D7 D8 D9 D10 D11 D12 D13 D14 D1 MEMR

インターリーブADCでのタイミングスキュー影響のデジタル補正技術

ラジオで学ぶ電子回路 - 第4章 発振回路

Microsoft PowerPoint _DT_Power calculation method_Rev_0_0_J.pptx

Microsoft Word - AM変調.doc

S1F77330 シリーズテクニカルマニュアル Rev.2.1

Microsoft PowerPoint - 受信機.ppt[読み取り専用]

49Z qxd (Page 1)

NJU779 絶対最大定格 ( 指定無き場合には Ta= C) 項目 記号 定格 単位 電源電圧 V D D. V 消費電力 P D ( 注 ), 7( 注 ), 9( 注 ), ( 注 ) mw 出力尖頭電流 I O P m A 同相入力電圧範囲 V I C M V S S-. ~ V D D+.

日置技報-AC/DCカレントセンサ CT6904/CT

Transcription:

The World Leader in High Performance Signal Processing Solutions SPICE ツールで適切な周波数特性と異常発振しない OP アンプ回路を実現する 基礎編 アナログ デバイセズ株式会社石井聡 1

アジェンダ 1. イントロダクション 2. アナログ回路での単位 db などの見方 考え方 3. SPICEツールNI Multisim の基本機能 4. 周波数特性の検討 5. 異常発振してしまう原理 6. まとめ 2 Analog Devices Proprietary Information

3 その 2 実践編 も是非ご覧ください

4 1. イントロダクション

コツがわからないから安定に動かせない 開発仕様書を渡されて まかせたぞ といわれても ( 汗 ) どのように仕様書を回路で実現し どのようなところがポイント ( 押さえどころ ) かが判らない どこが重要かつ基本的なポイントなんだろう? OP アンプで実験回路を組んでみたけど 利得は設計どおりだけど 目的の周波数特性が出ていない OP アンプが発振している!! OP アンプを確実に動作させるための 勘どころ がある 実動作で検証するまえの 道しるべ として SPICE ツールを活用する 5 Analog Devices Proprietary Information

6 2. アナログ回路での単位 db などの見方 考え方

大きさ 大きさの差 を表す単位 db( デシ ベル ) アナログ回路では対数表記が多い A[V] C[W] 電圧増幅率 電力増幅率 AMP B[V] D[W] db 値電圧比電力比 -10 0.3 0.1-3 1/ 2 0.5(1/2) 0 1 1 3 2 2 10 3 10 20 10 100 40 100 10000 100 100000 10^10 160 10^8 10^16 db がマイナスでも比率自体がマイナスになるのではない 7 Analog Devices Proprietary Information

位相差とは同じ信号どうしの時間差 電圧 [V] 電圧 [V] 2 1 0-1 -2 0 100 200 300 2 +55 1 進み位相の電圧波形 0-1 波形の周期 交流電圧 V 波形の周期 200us こちらの波形を基準とすると 遅れ 43us 電圧 [V] 8-2 0 100 200 300 2 1 0-1 -35 遅れ位相の電圧波形 -2 0 100 200 300 時間 [μsec] 位相 = 360 x (43/200) = 77.4 遅れ 波形の 1 周期を 360 とし先に立ち上がった波形 進み後に立ち上がった波形 遅れ

9 3. SPICE ツール NI Multisim の基本機能

使用する SPICE シミュレータについて このセッションでは National Instruments の NI Multisim Ver.11 Analog Devices Edition ( 無償版 ) を用いる 10 Analog Devices Proprietary Information 弊社サイトで検索してみてください

SPICE シミュレーションを意識しない仮想測定器 オシロスコープ ボーデプロッタ 11 Analog Devices Edition ( フリー版 ) の仮想測定器 このセッションで用いるもの Full Edition, Pro Edition ( 正規版 ) の仮想測定器 Analog Devices Proprietary Information 歪み スペアナ ネットアナ

12 4. 周波数特性の検討 ( ボーデ プロッタ )

OP アンプの周波数特性 ( フィードバックなしで開放時 ) DC 利得から -3dB 0.43Hz 非常に低い これで G = 10 とか G = 1 とかは実現できないのでは? DC 利得 G = 130dB = 3 x 10^6 倍 (3000000 倍 ) 非常に大きい 利得 G = 0dB = 1 倍 1Hz 100 Hz 10 khz G = 0dB 1.3MHz ここが GB 積 1MHz 13 OP2177 の例 GB 積 = 1.3MHz の OP アンプ 周波数はログスケール ( 以降同じ )

帰還をかけて目的の利得 G = 10 など実現する 電圧増幅率 非反転増幅回路 帰還回路 ボルテージフォロア回路 電圧増幅率 帰還回路 帰還回路 電圧増幅率 反転増幅回路 14 Analog Devices Proprietary Information

利得が G = 10, G = 100 の周波数特性 G = 10 = 20dB -3dB 1Hz 155.4kHz 10 MHz G = 100 = 40dB 周波数はログスケール 周波数対利得 & 位相特性を計測ボーデ プロッタを接続 測定信号源 15-3dB 14.8kHz 1Hz 10 MHz Analog Devices Proprietary Information 9kΩ G = 10 = 20dB 99kΩ G = 100 = 40dB 実回路では電源デカップリング用のコンデンサはかならず接続する

利得が G = 1, G = 10, G = 100 の周波数特性 G = 100 = 40dB -3dB 14.8kHz 利得が大きくなれば -3dB 周波数は低くなるこの波形は Multisim の 解析 AC 解析 の機能 かつ重ね合わせて表示 G = 10 = 20dB -3dB 155.4kHz OP アンプ GB 積 1.3MHz G = 1 = 0dB -3dB 2.2MHz 1Hz 100 Hz 10 khz 1MHz 16

5. 周波数特性の検討 ( 実際の OP アンプの特性と比較してみる ) 17 Analog Devices Proprietary Information

実際の OP2177 を G = 10 で特性測定 G = 10 = 20dB -3dB 155.4kHz を活用 100 Hz シミュレーション 10 khz 0dB ライン 1MHz G = 10 = 20dB 実測 -3dB 37.95kHz?? 答えがあわないぞ! 100 Hz 10 khz 1MHz 0dB ライン 18

不一致の理由 AC シミュレーションの限界 波形が三角波になってレベルも低下している! 出力 (5V pk) 入力 (0.5V pk) 10 倍の出力が得られる AC シミュレーション ( ボーデ プロッタ ) はこのようすをシミュレーションできない 周波数 5kHz 大振幅 周波数 50kHz 大振幅 出力 (0.5V pk) 入力 (50mV pk) 19 周波数 5kHz 小振幅 振幅を小さくした 周波数 50kHz 小振幅 振幅が小さければ 10 倍の出力が得られる

不一致の理由 スルーレートとフルパワー帯域幅 FPBW これ以上 波形は高速に変化できない 出力 (5V pk) 約 7V 10us 50kHz 入力 (0.5V pk) OP2177 のスルーレート ( 出力最大変化速度 ) SR = 0.7V/us V PK を出せる BW が決まってしまう 20 Analog Devices Proprietary Information

測定方法改善での結果 G = 10 = 20dB -3dB 37.95kHz 前出の特性 Vin = 0.5Vpk 100 Hz 10 khz 1MHz 0dB ライン G = 10 = 20dB 100 Hz 189.7kHz ( シミュレーション 155.4kHz) 10 khz 1MHz 入力レベルを下げて制限が出ないようにした Vin = 50mVpk 0dB ライン 21 Analog Devices Proprietary Information

仮想オシロによるスルーレート制限のようす (G = 10) 時間軸波形を計測オシロスコープを接続 出力本来なら 5V pk だが三角波 50kHz 入力 0.5V pk 22 信号源パラメータを設定 ボーデ プロッタは AC 解析手法オシロスコープは過渡解析手法 ( シミュレーション方式が異なる ) Analog Devices Proprietary Information

ここまでのまとめと補足 OP アンプの周波数特性は利得 G を大きくすると帯域幅が狭くなる シミュレーションで確認できる なお電流帰還型 OP アンプでは振る舞いが異なるので注意 スルーレートとフルパワー帯域幅 FPBW により 実測で目的の周波数特性が得られないことがあるので注意 シミュレーション ( 時間波形 ) でも確認できる 実回路 ( 時間波形と周波数特性の両方 ) でチェックする 実回路ではバイパス コンデンサを忘れない! 23 Analog Devices Proprietary Information

6. 異常発振してしまう原理 ( 負帰還から正帰還になるようすを理解する ) 24

増幅器 ( アンプ ) を設計したはずが発振器になっている シミュレータ上では 仮想計測器に結果が表示されない とか 収束しない (Convergence Error) 結果になる場合もある 出力波形異常発振 何を指標にすればいいんだ! 位相余裕!? 25 Analog Devices Proprietary Information アンプへの入力波形

帰還回路の視点を少し変えてみる 電圧増幅率 V in マイナス側に帰還するので 負帰還 と言う V FB A 増幅 V out V FB 26 帰還率 β 帰還回路 入力に戻す 減衰器 とも言える

アンプが発振してしまう原理 V in OP アンプ内部の位相遅れが大きい V in 正常 打ち消すはずが遅れであおる方向に! 正帰還 位相遅れ V in OP アンプ内部の出力抵抗 V FB 負荷容量たとえばシールド ケーブル V FB マイナス側に帰還する 負帰還 打ち消す方向に動く 27 位相遅れ 打ち消すはずが遅れであおる方向に! 正帰還 発振! Analog Devices Proprietary Information V FB

28 7. 異常発振してしまう原理 ( 位相余裕を理解する )

ループゲインを定義する 電圧増幅率 V in V FB A(f) V out 増幅 β V FB 帰還率 β ループゲイン = A(f) β 29 帰還回路

アンプ発振の原理 (1 AD8601 で発振しない条件を例にしてループゲインの計算 ) ボルテージ フォロア構成が発振に一番厳しい条件 Vin = 0V - 入力 AD8601 接続しない状態で考える V FB 帰還無しにして ( 切断して ) ー入力から V FB までの特性 ( ループゲイン ) を計算してみる! 30 AD8601 高精度, 広帯域 CMOS R to R I/O アンプ Analog Devices Proprietary Information

1AD8601 で発振しない条件を例 ( ループゲインの計算 ) 利得 0.1Hz 100Hz これらの特性算出方法は 実践編 で説明 利得 0dB ライン 100kHz 100MHz 180 31 0 マイナス側に帰還する 負帰還 打ち消す方向に動く位相 周波数に応じて位相が遅れてくる 位相 0 のライン 打ち消すはずが遅れであおる方向に! 正帰還 になる位相 位相

1AD8601 で発振しない条件を例 ( 拡大 ) 利得 0dB(1 倍 ) 利得 2MHz 利得 0dB ライン 4MHz 10MHz 20MHz 90 これを 位相余裕 50 という 50 位相 0 位相 0 のライン 32

アンプ発振の原理 (2AD797 G = 2 と負荷容量 1nF で発振する条件を例にしてループゲインの計算 ) Vin = 0V - 入力 1nF の容量をつけてみた 接続しない状態で考える 33 帰還無しにして ( 切断して )- 入力から V FB までの特性を計算してみる! V FB AD797 超ローノイズ 超低歪みアンプ

2AD797 G = 2, 1nF で発振する条件例 ( ループゲイン ) 利得 100Hz 利得 0dB ライン 100kHz これらの特性算出方法は 実践編 で説明 100MHz 180 周波数に応じて位相が遅れてくる 位相 位相 0 のライン 0 34

2AD797 G = 2, 1nF で発振する条件例 ( 拡大 ) 利得 0dB 利得 利得 0dB ライン 5MHz 10MHz 20MHz 50MHz 30 位相 位相 0 のライン -30 この付近 ( 位相ゼロ ) で発振 利得 0dB(1 倍 ) で位相が逆転 35

36 8. まとめ

アンプが発振してしまう原理 ( まとめ ) 打ち消す ( 負帰還 ) べきが 周波数が上昇したところで あおり ( 正帰還 ) に転じてしまう 周波数に応じて OP アンプ内部などの位相が遅れてくるため あおり のところでループゲイン >1 だと発振 位相余裕 を指標にすればよい ループゲインが 0dB になったときの位相量が 位相余裕 位相余裕がプラスであれば OP アンプは発振しない 位相余裕が少ない またはマイナスだと OP アンプは発振する 37 Analog Devices Proprietary Information

アンプが発振してしまう原理 ( まとめ ) 発振しやすい要因とは 帰還量が多い場合 ( ボルテージフォロア G = 1 = 0dB が厳しい ) 位相余裕の少ないアンプ 容量性負荷 ( コンデンサや同軸ケーブルなど ) が接続された場合 これらのようすを 実践編 でみていきます 38 Analog Devices Proprietary Information