図 1 ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化に関わる因子ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化に関わる DNA RNA タンパク質 翻訳後修飾などを示した ヘテロクロマチンとして分裂酵母セントロメアヘテロクロマチンと哺乳類不活性 X 染色体を 遺伝子発現不活性化として E2F-Rb で制御

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第 2 章エピジェネティクスと遺伝子発現制御機構 6. ヘテロクロマチン化の分子機構 定家真人, 中山潤一 ヘテロクロマチンは DNA RNA タンパク質からなる高度に凝縮した構造であり 真核生物染色体の維持に必須の領域であるセントロメア テロメアの機能に重要な役割を果たしている 分子レベルの詳細な研究により ヘテロクロマチン化に関わる分子群およびその機構は 発生 分化や細胞周期などに依存した遺伝子特異的な発現の不活性化と共通点が多いことが明らかにされてきた 本稿ではその共通点に着目しながらヘテロクロマチン化の分子機構について概説する はじめに遺伝情報を失うことなく細胞が増殖するには その情報を担う染色体が安定に維持されることが不可欠である また 細胞が分化し生物個体が発生するためには 染色体 DNA に書き込まれた遺伝情報の発現が適宜活性化 不活性化される必要がある 染色体は DNA RNA およびタンパク質により構成される巨大な複合体であるが 染色体の中でも特に高度に凝縮した機能構造はヘテロクロマチンと呼ばれ 染色体維持に深く関わっている 分子レベルでの解析が行われた結果 ヘテロクロマチンを規定する因子としてヒストンの翻訳後修飾や 非翻訳 RNA 分子などが含まれること さらにヒストンの修飾はヘテロクロマチン化のみならず 遺伝情報発現の不 [ キーワード & 略語 ] ヘテロクロマチン ヒストンメチル基転移酵素 メチル化ヒストン結合タンパク質 RNA shrna: small heterochromatic RNA HMTase: histone methyltransferase ( ヒストンメチル基転移酵素 ) HDAC: histone deacetylase ( ヒストン脱アセチル化酵素 ) RNAi: RNA interference 活性化にも関わることが近年明らかにされてきた 本稿 では主にヘテロクロマチン化の分子機構について 遺伝 子発現不活性化の分子機構との共通点に着目しながら 1. 関連因子群と 2. 生体内での各因子の動態につい て最近の知見を紹介する 1. ヘテロクロマチン化 遺伝子発現不活性化に関わる因子 1) ヘテロクロマチン化と遺伝子特異的な 発現不活性化 へテロクロマチンは初め顕微鏡を用いた解析により 細胞分裂期だけでなく間期においても凝縮したクロマチ ン構造として定義された その後の解析によりへテロクロ マチン領域では 転写が分裂期 間期を問わず抑制さ れている 減数分裂 DNA 組み換えが抑制されている 複製期後期に複製されるなどの特徴が見いだされた へテロクロマチン領域は繰り返し DNA 配列やトランスポ ゾン配列を含むことが多く ヒストンや非ヒストンへテロク ロマチンタンパク質と共に高度に凝縮した構造を形成し ている 遺伝子の転写が抑制されているという観点から は ヘテロクロマチン化 と 何らかのシグナルを受けて 特定の遺伝子領域を転写許容状態から抑制状態へ変 化させる 遺伝子発現不活性化 は共通したクロマチン 構造変化とみなすことができるが 後者は単一遺伝子レ ベルでの転写抑制であるのに対し前者は遺伝子領域に

図 1 ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化に関わる因子ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化に関わる DNA RNA タンパク質 翻訳後修飾などを示した ヘテロクロマチンとして分裂酵母セントロメアヘテロクロマチンと哺乳類不活性 X 染色体を 遺伝子発現不活性化として E2F-Rb で制御される哺乳類遺伝子を例に挙げた ヘテロクロマチンの中でも常に凝縮した状態が保たれているものを構成的ヘテロクロマチンとよぶ X 染色体不活性化は不活性化される X 染色体の高度凝縮を伴い 不活性 X 染色体上の遺伝子のほとんどが不活性化されることから条件的な現象ではあるがヘテロクロマチン化に含まれる いずれの例においてもヒストンメチル基転移酵素 メチル化ヒストン結合タンパク質が関与する 限らずより広い DNA 領域を含む現象である ヘテロクロマチン化あるいは遺伝子発現が不活性化される場は 特定の染色体 DNA 領域や遺伝子 あるいは特定の染色体 (X 染色体不活性化の場合 ) に限られる 領域 遺伝子 染色体の特定には第一次因子として DNA 配列が重要であると考えられる ( 図 1) ヘテロクロマチンにおいては 非翻訳 RNA 分子もヘテロクロマチン化領域を特定する因子であると考えられている 例えば ヘテロクロマチン化の中でも一つの染色体 ( 雌の X 染色体 ) のほぼ全ての領域をヘテロクロマチン化する X 染色体不活性化の確立には X 不活性化中心 (X inactivation center) から転写される Xist RNA が必要であることが示されている 1) さらに最近の研究から 染色体の一領域のヘテロクロマチン化 ( セントロメアなど ) においても繰り返し DNA 配列から転写される非翻訳 RNA が必要であることが示唆されている 2)3)4)5) ヘテロクロマチン化された領域 遺伝子発現不活性化された領域では互いにヌクレオソーム内ヒストンの翻訳後修飾の状態がよく似ている 特にヒストン H3 H4 のアミノ末端近傍リシンのメチル化 アセチル化状態には多くの共通点が見いだされている すなわち ヒストン H3 H4 のアセチル化レベルは概して低く メチル化レベルは

図 2 ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化に関わるヒストンメチル基転移酵素とメチル化ヒストン結合タンパク質 ヒストン H3 H4 アミノ末端近傍のリシン残基のうちヘテロクロマチン化 遺伝子発現不活性化に関わるものを示した ヒス トンリシンは最大で 3 つのメチル基が付加される ヒストンリシンメチル化を担うヒストンメチル基転移酵素 そしてメチル化 ヒストン結合タンパク質にはそれぞれ基質特異性 特異的なターゲットが存在する 表 1 2 も合わせて参照されたい 特定の残基で高くなっている 6) ここで注目したいのはヘテロクロマチン化領域 あるいは遺伝子発現不活性化領域では H3 の特定のリシン残基にメチル基を導入するヒストンメチル基転移酵素 (histone methyltransferase; 以下 HMTase と略す ) と 特定のリシン残基にメチル基修飾が施された H3 を認識して結合するメチル化ヒストン結合タンパク質のペアが機能するということである ( 図 1) 哺乳類 植物 カビ細胞などでは以上に取り上げた因子に加えて DNA のメチル化による制御機構が複雑に絡み 遺伝子転写が抑制的なクロマチン構造が形成されると考えられている 2) HMTase とメチル化ヒストン結合タンパク質ヌクレオソーム内ヒストン 4 種類のうち 専ら H3 H4 ヒストンにメチル化修飾を受けるアミノ酸残基 ( リシン アルギニン ) が存在する 7)8) ヒストンのアルギニンのメチル化修飾は主に転写の活性化に関わると報告されている またリシンのメチル化についても メチル化を受ける残基によっては転写活性化 あるいは転写許容状態を維持する機能を持つものがある (H3 リシン 4 H4 リシン 79) 9)10) これに対し H3 リシン 9 27 36 および H4 リシン 20 は ヘテロクロマチン化 あるいは遺伝子発現不活性化 された領域でメチル化レベルが高いことが示されている ( 図 2) 8) ヘテロクロマチン化 遺伝子発現不活性化が完了するには それぞれ実際に高度に凝縮したクロマチン構造 あるいは転写活性化因子群の接近を阻むクロマチン構造を形成する必要があるが このクロマチン構造を形作るために必要な因子の一つにメチル化ヒストン結合タンパク質がある これまでにリシン 9 がメチル化されたヒストン H3 に特異的に結合する因子として哺乳類の HP1 11)12) 分裂酵母の Swi6 12) Chp1 13) またリシン 27 がメチル化されたヒストン H3 に特異的に結合するものとしてショウジョウバエ PC 14)15) が報告されているが このほかのメチル化ヒストン結合タンパク質は見いだされていない 同定されているメチル化ヒストン結合タンパク質はいずれもクロモドメインと呼ばれる アミノ酸一次配列が進化的に保存された機能領域を有しており このクロモドメインがメチル化ヒストンを認識して直接結合することが明らかにされている ヒストン H3 や H4 にメチル基を導入する HMTase 群からも 共通してアミノ酸一次配列が相同な SET ドメインと呼ばれる領域が見いだされる 図 2 表 1 2 に示すように HMTase にも メチル化ヒストン結合タンパク質にもそれぞれ基質特異性 ターゲット特異性がある メチル化されるあるリシン残基に注目した場合 そのリシン残基に特異的に作用する HMTase

メチル化ヒストン結合タンパク質のペアがあると考えられる 様々な局面すなわち ヘテロクロマチン化 またはある特定の遺伝子の発現不活性化において ヒストンメチル化に関わるペアが使い分けられている可能性を考慮すると 今までに同定されていないメチル化ヒストン結合タンパク質 ( 例えばリシン 20 がメチル化されたヒストン H4 に結合するもの ) HMTase を見いだすことがヘテロクロマチン化 遺伝子発現不活性化の分子機構を理解する上で重要である 2. へテロクロマチンの確立と維持 ヘテロクロマチン化は 大きく 2 つの段階 すなわちヘテロクロマチン構造を新たに確立する段階 (establishment) と 一度確立された構造を細胞周期 細胞分裂などの過程を経ても維持する段階 (maintenance) に分けて考えることができる ( さらに細かく細胞周期を通じた維持を maintenance 細胞分裂後の維持を inheritance と定義している報告もある 16)17) ) 主に酵母やハエのヘテロクロマチン マウスの X 染色体不活性化を対象とした分子遺伝学的研究から ヘテロクロマチンの確立と維持の分子機構が明らかにされてきた ( 図 3) 先述したように ヘテロクロマチン化される場は特定の染色体 DNA 領域や特定の染色体 (X 染色体不活性化の場合 ) に限られる セントロメア テロメアなどの構成的ヘテロクロマチンではそれぞれに特徴的な繰り返し DNA 配列がヘテロクロマチン化領域の特定 ( ヘテロクロマチン確立の初期 ) に関わることが示されている 例えば分裂酵母セントロメア繰り返し配列の一部を本来ヘテロ クロマチン化されていない染色体領域に挿入した場合 その繰り返し配列および周辺領域がヘテロクロマチン化される 4)13) ( 出芽酵母テロメアの繰り返し配列でも同様のことが示されている 18) ) セントロメアの一次配列を認識して結合する DNA 結合タンパク質 ( ヒト CENP-B の分裂酵母ホモログ ) がヘテロクロマチン化に必要であることから 19) 繰り返し DNA 配列とその配列に結合する因子はヘテロクロマチン確立の起点になると考えられる また分裂酵母セントロメアでは 繰り返し DNA から転写された非翻訳二本鎖 RNA が RNAi (RNA interference) と呼ばれる機構により断片化 増幅され その産物である shrna (short heterochromatic RNA) がヘテロクロマチン領域に特徴的なヒストン H3 リシン 9 のメチル化を触媒する HMTase (Clr4) を呼び込むことにより セントロメアのヘテロクロマチン化を誘導しているというモデルが提唱されており 2) 非翻訳 RNA 分子もヘテロクロマチン確立に関わると考えられる ( 図 3) このモデルは 1) 分裂酵母セントロメア繰り返し DNA から非翻訳二本鎖 RNA が転写されていること 3) 2) RNAi 機構に関わるタンパク質遺伝子の変異によりセントロメアヘテロクロマチン領域の H3 リシン 9 メチル化レベルが顕著に減少するという事実に基づいている 2) 本来ヘテロクロマチン化されていない領域に挿入された分裂酵母セントロメア DNA を足場に ヘテロクロマチン化が引き起こされる過程で HMTase メチル化ヒストン結合タンパク質が必要なので 13) 少なくともメチル化ヒストンに関連するこの 2 因子もヘテロクロマチン確立に必須だが さらにヒストン脱アセチル化酵素 (histone

図 3 ヘテロクロマチン化および遺伝子発現不活性化の分子機構 (A) セントロメア等の構成的ヘテロクロマチンでは ヘテロクロマチン化される領域の特定に繰り返し DNA 配列とこれを認識する DNA 結合タンパク質 さらにセントロメア繰り返し DNA より転写された非翻訳 RNA が関わると考えられる 分裂酵母セントロメアではヘテロクロマチン構造の確立に RNAi 機構が関与する RNAi により断片化 増幅された shrna がヒストンメチル基転移酵素 ヒストン脱アセチル化酵素をヘテロクロマチン領域に呼び込むと考えられているがその分子機構は明らかではない DNA RNA ヒストン 非ヒストンタンパク質 ( メチル化ヒストン結合タンパク質など ) により高度に凝縮したヘテロクロマチン構造が形成される (B) X 染色体不活性化は X 不活性化中心より転写された Xist RNA が H3 脱アセチル化酵素 H3 メチル基転移酵素を呼び込むと考えられている 続いて H4 脱アセチル化酵素が作用し X 染色体遺伝子の不活性化が起こる (C) E2F-Rb により不活性化される遺伝子では プロモータ領域の E2F 結合部位に結合した E2F-Rb 複合体の Rb がメチル化ヒストン結合タンパク質 (HP1) を介してヒストンメチル基転移酵素 (SUV39H) と相互作用し 遺伝子単位の発現不活性化が起こると考えられている deacetylase; HDAC) も確立に関わると考えられている 20) HMTase メチル化ヒストン結合タンパク質遺伝子を欠損した細胞ではヘテロクロマチン構造が失われることから 21) これらはヘテロクロマチンの維持にも必須の因子である メチル化ヒストン結合タンパク質は HMTase と物 理的に相互作用するので 22) DNA 複製に伴いメチル化ヒストンを含むヌクレオソーム ( メチル化ヒストン結合タンパク質を伴う ) が 2 つの娘鎖に均等に分配された場合 その分配されたメチル化ヒストンにメチル化ヒストン結合タンパク質が結合して HMTase を呼び込むことが考えられ 呼び込まれた HMTase が周辺の娘鎖に新規にとり

込まれたヒストン H3 リシン 9 をメチル化することで結果的にヘテロクロマチン領域の複製も完了し 親細胞から娘細胞に維持されると考えられる 12) この考え方は ヘテロクロマチンの維持は少なくとも部分的には特別な DNA 配列や DNA 結合タンパク質 RNA 因子といった確立に必須な因子非依存的におこなわれることも意味する 実際これに関連して分裂酵母ヘテロクロマチン維持には RNAi 機構は必要ないことが示されている 4) これは X 染色体不活性化状態の確立に Xist RNA が必要だが維持には必要ないという事実と似ている 1) Clr4 や SUV39H HMTase による H3 リシン 9 へのメチル基転移活性 ( 試験管内 ) は リシン 9 やリシン 14 にアセチル化修飾がある場合に阻害されることから 23) DNA 複製時新規に娘鎖に取り込まれたヒストンは まず HDAC により脱アセチル化された後 HMTase によりメチル化されるという流れが想定されているが 20) 新規に取り込まれたヒストンに生体内で時間的にどのように脱アセチル化 メチル化が施されるかは未だ調べられていない その点 X 染色体不活性化を対象にした研究では X 染色体不活性化誘導後不活性化が完了するまでに Xist RNA の X 染色体への局在 H3 メチル化レベルの上昇 ( および H3 アセチル化レベルの低下 ) H4 アセチル化レベルの低下 ( および X 遺伝子の転写抑制 ) がこの順番で認められることが明らかにされている 24) ( 図 3) 図 3 に示したように HMTase-ヒストン結合タンパク質のシステムおよびヒストン脱アセチル化酵素は ヘテロクロマチン化と遺伝子発現不活性化に共通して関わるなど 両者の分子機構には似た部分が多い 分子機構を調べることでさらに互いの共通点を見いだせることが期待される また 共通点を明らかにすることでヘテロクロマチン化と遺伝子発現不活性化の分子機構の違いを規定する因子を同定できるかもしれない 例えば RNA 因子はヘテロクロマチン化に必須だが 遺伝子単位の発現不活性化に関わる報告はまだない RNA 因子は特定の一遺伝子に限らずより広い領域をヘテロクロマチン化するために必要なのかもしれない 遺伝子発現不活性化では遺伝子のプロモータ内に結合配列をもつ DNA 結合タンパク質が HMTase を呼び込むが 25) ヘテロクロマチン化ではどのように HMTase が呼び込まれているかは明らかにされていない Clr4 や SUV39H は SET ドメインのほかクロモドメインを持ち クロモドメインは RNA と直接相互作用する領域として同定されていることから 26) Clr4 や SUV39H は非翻訳 RNA を認識して結合しヘテ ロクロマチン化に寄与する可能性があるが詳細は未だ不明である おわりに HMTase-メチル化ヒストン結合タンパク質のシステムがヘテロクロマチン化に関わることが明らかにされたのは最近 (2000 年 ) のことである 23) 未知のヘテロクロマチン因子の探索に加え 今後はヒストンメチル化がほかのヒストン修飾であるアセチル化 リン酸化 ユビキチン化 ADP リボシル化などとどのように共存し その組み合わせがどのようにヘテロクロマチン化 遺伝子発現不活性化の調節に寄与するか解明する必要があるだろう 本稿では詳細に触れなかったが ヒストンリシンには最大 3 つのメチル基が付加される リシンのメチル化レベルと生理機能の相関を調べることも重要である X 染色体の不活性化の分子機構に関しては免疫染色とクロマチン免疫沈降法を用いた動的な解析が行われ Xist RNA の X 染色体への局在 ヒストンメチル化 アセチル化 そして X 遺伝子発現状態といったパラメータが時間的にどのように制御されているか明らかにされてきた 24) また H4 リシン 20 のメチル化および PR-SET7 (H4 リシン 20 特異的 HMTase) 発現量は分裂期に上昇し ヘテロクロマチン化に寄与することが示唆されている 27) 同様に 例えば DNA 複製に伴ってメチル化を含むヒストン修飾やヘテロクロマチンタンパク質の局在がどのように時間的に制御されているかなど ヘテロクロマチン化の分子機構の詳細を動的な面から解析することも興味深い研究課題である 文献 1) Avner, P. & Heard, E.: Nat. Rev. Genet, 2: 59-67, 2001 2) Volpe, T. A. et al.:science, 297: 1833-1837, 2002 3) Reinhart, B. J. & Bartel, D. P.:Science, 297: 1831, 2002 4) Hall, I. M. et al.:science, 297: 2232-2237, 2002 5) Maison, C. et al.: Nat. Genet., 30: 329-334, 2002 6) Grewal, S. I. S. & Elgin, S. C. R.: Curr. Opin. Genet. Dev., 12: 178-187, 2002 7) Turner, B. M.: Chromatin And Gene Regulation, Blackwell Science, 2002 8) Lachner, M. & Jenuwein, T.: Curr. Opin. Cell Biol., 14: 286-298, 2002 9) Turner, B. M.: Cell, 111: 285-291, 2002 10) Fischle, W. et al.: Curr. Opin. Cell Biol., 15: 172-183, 2003 11) Lachner, M. et al.: Nature, 410: 116-120, 2001

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