特 集 縦隔 胸膜疾患における画像診断の役割 3. 胸膜 胸壁疾患 3-1. 原発性胸膜腫瘍 加藤勝也 岡山大学病院放射線部 Primary Pleural Tumors Katsuya Kato Department of Radiology, Okayama University Hospital NICHIDOKU-IHO Vol.59 No.1 92-101 (2014) Summary In this article I illustrated the imaging findings of solitary fibrous tumors (SFTs) and malignant pleural mesotheliomas (MPMs) among the primary pleural tumors. I have also refered to social compensation systems regarding asbestos-related pulmonary carcinomas and malignant pleural mesotheliomas. SFTs predominantly originate from the visceral pleura. SFTs have no association with asbestos exposure and may sometimes be malignant. Characteristic imaging findings are as follows: 1. Well-demarcated 2. Having a stalk 3. Heterogeneity on T2 weighted images because of cystic degeneration and hemorrhage 4 delayed and prolonged enhancement in dynamic studies. MPMs are closely associated exposure with asbestos exposure. Imaging findings of MPMs are as follows: 1 Surrounded pleural thickening called Pleural rind ; 2. Nodular and irregular pleural thickening; 3. Thick (over 1 cm) pleural thickening; 4. Interlobar pleural thickening; and 5. Mediastinal pleural thickening. Among these findings, the mediastinal pleural thickening is a characteristic and important finding to enable a correct diagnosis of MPMs at the early stage. We should keep in mind that it is sometimes very difficult to diagnose malignant mesotheliomas at an early stage with radiological findings only. When a patient with a history of asbestos exposure has a non-regressive pleural effusion, a thoracoscopic biopsy should be considered to make a correct diagnosis in the early stage of mesothelioma. Asbestos-related diseases are a social problem. Imaging findings play a major role in the diagnosis of asbestos-related disease. Radiologists should be familiar with the imaging findings and social compensation systems to make a correct diagnosis and properly manage patients with of asbestos related malignant tumors. As for pulmonary carcinomas, pleural plaque and interstitial changes are important findings to confirm asbestos related carcinomas. As for mesotheliomas, only the correctness of the diagnosis is required for official confirmation. Immunological staining is required for precise diagnosis of mesotheliomas, because of the limitations of radiological differential diagnosis between mesotheliomatous adenocarcinomas and mesotheliomas. 胸膜腫瘍性病変としては 転移性癌性胸膜炎の頻度が高く 原発性腫瘍はそれほど多くない 原発性としては solitary fibrous tumor(sft) 胸膜中皮腫やその他間葉系悪性腫瘍 ( 肉腫 ) などが鑑別に挙がる この中から SFTについて少し触れてから 胸膜中皮腫を中心に述べる 最後に 中皮腫と石綿肺癌の労災と救済法認定基準 について示す Solitary fibrous tumor(sft)( 図 1) SFTは1931 年 Klempererらにより胸膜病変として報告された紡錘形細胞腫瘍で 限局性中皮腫 localized 92(92) 日獨医報第 59 巻第 1 号 92-101(2014)
A B D C E 図 1 Solitary fibrous tumor A 胸部単純 X 線写真 : 心陰影右側に境界明瞭な肺外徴候を伴う腫瘤影を認める. B 単純 CT : 境界明瞭な腫瘤を認め, 内部に嚢胞変性による低吸収域を伴っている ( ). C MRI T2 強調像 : 腫瘍の大部分は筋肉と同程度の低信号を呈するが, 腹側領域では嚢胞変性による比較的境界明瞭な著明な高信号域 ( ) を認め, その周囲には境界不明瞭な高信号領域が不均一に存在している. D, E ダイナミックCT 造影早期相 (D) 遅延相(E): 造影早期相 ( D) では腹側のT2 強調像高信号部には比較的強い造影効果を認め, 遅延相 (E) では全体に遷延性に造影されている. 93(93)
fibrous mesothelioma, subpleural fibromaなど様々に呼ばれてきた経緯を持つ 近年 電子顕微鏡や免疫学的な検討によりCD34 陽性であることから 中皮下の間葉系細胞由来であるとされ 名称もsolitary fibrous tumor (SFT) に統一された 1) 3 分の2 程度が臓側胸膜由来 3 分の1 程度は壁側胸膜由来と 臓側胸膜発生の頻度が高く 有茎性腫瘤であることが多い 人口 10 万人あたり 2.8 人程度と比較的まれで 中高年に好発し 性差は特にないとされる 2) 中皮腫と異なり石綿との関連はない 組織学的には紡錘形細胞が不規則に増生するpatternless- patternと 豊富な血管の周囲に腫瘍細胞が増生する hemangiopericytomatous patternを特徴とする 診断は主にCD34やbcl-2が陽性の細胞を認めることでなされる SFTの多くは良性腫瘍であるが 一部で悪性化の報告があり 胸腔内発生 SFTの悪性率は12~37% と報告されている 3 4) 画像所見では 比較的境界明瞭な腫瘤で 有茎性の頻度が高いことから体位による腫瘤影の移動を認めることもある CTでは境界明瞭な分葉状腫瘤の形態を呈し 内部には嚢胞変性や出血 壊死を伴い不均一となることが多い 5) 石灰化は10% 前後の症例で認められる MRI ではT1 強調像にて等信号 T2 強調像では様々な信号を呈する 線維性腫瘍とされているが 特にサイズが大きい腫瘍では全体がT2 強調像で低信号を呈することはほぼない 6) ダイナミックスタディでは 線維成分を反映して 後期相で強い造影効果を示すことが多いとされるが 早期相から強く濃染することもある 7) 血管造影では多血性腫瘤として描出される 治療は手術であるが 悪性 SFTにおいては再発し 周囲に播種を来す症例もある 胸膜中皮腫胸膜中皮腫をはじめとしたアスベスト関連疾患は 社会問題化して一般に知られるようにはなった だが 依然としてまれな疾患であり 実際に多くの症例経験を持つ臨床家は限られている そのため 画像所見も正しく認識されているとはいえないのが現状である そこで 画像における典型像 初期像 早期に診断するための注意点を主体に述べる 胸膜中皮腫は80~90% 程度以上の症例でアスベストばく露と因果関係があるとされている 肺癌もアスベストばく露により生じるが アスベスト関連肺癌は職業性ば く露のような比較的高濃度のばく露により生じるのに対し 胸膜中皮腫はかなりの低濃度ばく露でも生じる したがって 社会問題化したようにアスベスト工場周囲の住民など環境ばく露でも生じうる ばく露後 40 年程度を経て発症することが多いが 10 年程度で発症する例もある 8) 予後は非常に悪く 上皮型胸膜中皮腫は12ヶ月 肉腫型は6ヶ月程度の平均生存期間しかなく 2 年生存率が30% 程度とされる 9) 画像診断としては胸部単純 X 線写真 CTが主に用いられる 最近ではMRI 18-fluorodeoxyglucose(FDG) PETも用いられているが ここでは 実際の臨床上最も大きな役割を果たしている 胸部単純 X 線写真 CTを中心に述べる 胸膜中皮腫の胸部単純 X 線写真上の典型像は 片側性のびまん性胸膜肥厚像で結節状変化 腫瘤状変化 凹凸不整などを伴う ( 図 2) 80% の症例で胸水を伴い 発見の契機となることも多いが 胸水を認めない症例もある 10) アスベストばく露の医学的所見として 胸膜プラークを伴うことがあるが 胸膜中皮腫はかなりの低濃度ばく露でも生じうるためCTでも半数以下程度の症例でしか胸膜プラークは認められず 胸部単純 X 線写真のみで診断できるほどの胸膜プラークを伴うことはさらに少ない また 職業性の高濃度ばく露で生じる石綿肺を伴う症例は20% 程度と少ない 11) 初期像として胸水のみを認める症例も多く 進行とともに胸膜肥厚は増強し 患側胸郭が縮小し容量低下を認めることが多い 胸膜中皮腫の典型的 CT 像は片側性胸水 広範なびまん性の不整結節状胸膜肥厚像である 典型例では患側胸郭の容量は低下し 胸膜はびまん性に厚く不整に肥厚を来し 肺を環状全周性に取り巻き 葉間胸膜にも進展する ( 図 2) びまん性不整胸膜肥厚を呈する頻度が多いが 時には胸膜肥厚が目立たず 多発腫瘤を形成するような症例もある ( 図 3) 本邦における胸膜中皮腫の画像所見の現状として 我々が行った中皮腫 211 例の画像所見の検討結果を示す 12) 胸膜プラークは 胸部 CTにて36% 胸部単純 X 線写真で12% にしか認めなかった 胸水は93% と高頻度に認められたが 石綿肺は4% 円形無気肺とびまん性胸膜肥厚はそれぞれ1 例ずつにしか認めなかった また CTにおける胸膜所見を 不整なし 軽度不整 高度不整 腫瘤形成 の4 段階に分けたところ ( 図 4~7) その結果は表 1に示すごとくで 78% の症例はCT 画像上 94(94)
A B C 図 2 胸膜中皮腫典型例 A 胸部単純 X 線写真 B, C 造影 CT 胸部単純 X 線写真 (A) では, 右胸郭の容量低下と胸水, びまん性の不整胸膜肥厚像を認める. 胸部造影 CT(B, C) でも胸部単純 X 線写真 (A) と同様に胸水とびまん性環状の不整胸膜肥厚像を認め, 葉間胸膜にも病変が及んでいる ( ). 典型的胸膜中皮腫の所見である. も高度不整または腫瘤形成という悪性を疑う所見を呈していたが 4 分の1 弱にあたる22% では 良性病変も十分考えられる軽度不整までの胸膜所見しか呈さなかった したがって 早期胸膜中皮腫を診断するためには 胸膜の軽度不整に留意し 不整の全くない症例も存在することを認識しておく必要がある このことは胸膜中皮腫に特徴的というわけではなく 日常診療において比較的高頻度で経験する癌性胸膜炎の画像診断とほぼ共通である 癌性胸膜炎の画像診断においても胸膜播種を疑う不整像があるかどうかに注目する必要があるが 肺癌を はじめとした担癌患者に胸水を認め CTを含めた画像的に胸膜不整が指摘できないにもかかわらず 胸水穿刺や胸腔鏡で悪性細胞や播種病変を認めるという経験はそれほどまれなことではない 胸膜中皮腫の初期例で胸膜不整を伴わない症例は これと同様に考えればよい 胸膜中皮腫はまれな疾患であるが その画像診断に特殊な知識が必要というわけではなく 癌性胸膜炎に対する画像診断を適用すればよい ただし 胸膜中皮腫ならではの留意点がいくつかあるので 以下それらについて述べる 95(95)
A B C 図 3 胸水を伴わず, 限局的に胸壁に深く浸潤する多発腫瘤を形成した胸膜中皮腫症例 A 胸部単純 X 線写真 B, C 胸部単純 CT 胸部単純 X 線写真 (A) では右上下肺に腫瘤状陰影を認める. 胸部 CT(B) では, 右前胸壁に限局的に腫瘤形成を認め, 胸壁に深く浸潤している. この他にも散発性に胸膜腫瘤を形成しており, 右肺底部の腫瘤も胸壁に軽度浸潤している. まずは 胸膜プラークの有無である 胸膜プラークはアスベストばく露の医学的指標とされている 担癌患者の胸水貯留時に癌性胸膜炎を念頭におくのと同様に 胸膜プラークを伴う胸水貯留例では アスベストばく露と強い因果関係を持つ胸膜中皮腫を念頭におく必要がある 次に 縦隔側胸膜肥厚である ( 図 2 8) Metintasらは環状胸膜肥厚 縦隔胸膜肥厚 1 cm 以上の壁側胸膜肥厚は悪性腫瘍の胸膜転移よりも胸膜中皮腫でより認められると報告している 13) 特に縦隔側胸膜肥厚は 中皮腫初 期例の診断において重要と考える 縦隔側の胸膜不整については 胸膜中皮腫の多くは壁側胸膜由来のびまん性病変であるが 縦隔側以外では 壁側胸膜は胸壁の筋肉と接しており軽微な変化が顕在化しにくいのに対し 縦隔側では壁側胸膜は直接縦隔脂肪に接しているため その不整像をとらえやすいと考えられる ( 図 8) 実際 上述の胸膜中皮腫 211 例の検討でも 78% と高頻度で縦隔側胸膜に軽度な肥厚を含めた不整所見を認めた ( 図 9) 12) このことから CTによる画像診断時に 中皮腫病変の頻度が高い縦隔胸膜不整所見に注意することで 特異度 96(96)
図 4 不整なし 症例胸部単純 CT 胸水貯留を認めるが, 胸膜の不整像は認めない. 図 5 軽度不整 症例胸部造影 CT 胸膜に軽度の不整 ( ) を認めるが, 積極的に悪性を疑うような高度不整ではない. 図 7 腫瘤形成 症例胸部造影 CT 胸膜には高度の不整肥厚を認め, 多発腫瘤を形成しており ( 病変の所見である. ), 悪性 図 6 高度不整 症例胸部単純 CT 胸膜にはびまん性全周性に高度の不整肥厚を認め, 悪性病変を疑う所見である. 97(97)
表 1 胸膜中皮腫診断時 CT 画像 ( 全 211 例 ) における胸膜所見不整なし 10 例 5% 軽度不整 36 例 17% 高度不整 75 例 35% 腫瘤形成 90 例 43% 計 211 例 100% 図 8 縦隔側胸膜不整縦隔側胸膜の広い範囲に軽度不整を伴う胸膜肥厚を認める ( ). 厚さはそれほどないが, この部位に広範囲の胸膜肥厚像を認めた場合, 中皮腫をかなり疑う所見となる. は別として 感度はかなり向上する可能性があると考えられ 原因不明の胸水病変の読影時には念頭においておく必要があると考える この他に画像診断を行う際に留意しておかなければならない病態に 肺に原発巣がはっきりせず 画像上は一見 中皮腫様の所見を呈する偽中皮腫様癌 (pseudomesotheliomatous carcinoma) がある 14) ( 図 10) このような病態があることから 肺病変がなく 環状胸膜肥厚や縦隔側胸膜肥厚など胸膜中皮腫をより疑う所見が認められたとしても 画像のみで中皮腫と診断することは不可能である したがって 外科的切除の適応の有無や化学療法のレジメンなど 最も有効な治療法選択のための確定診断には 免疫染色を含めた病理診断が必須である 加えて 労災や石綿救済法による公的な救済認定を受ける場合にも 画像診断のみでは不十分であり 病理診断の裏付けが必要となる 中皮腫と石綿関連肺癌の労災と救済法認定基準石綿関連疾患に関しては 公的保障が整備されており 従来から中皮腫や石綿肺癌は労災補償の対象であった これに加えて 職業性ばく露ではあるが 労災時効例や労災保険未加入例など労災対象とならない場合や 環境ばく露など職業性以外のばく露による石綿関連疾病に関しても一定の基準を満たせば 環境省主管の石綿による健康被害の救済に関する法律 ( 石綿救済法 ) にて救済給付を受けられるようになった これら保障の認定要件において 画像診断は大きな役割を果たしており 画像診断に携わる際に その認定要件を知っておく必要がある まず中皮腫に関しては 中皮腫という診断が担保されれば 労災または救済法いずれかの認定要件を満たす ただし 中皮腫の診断には組織所見が必要であり 必ず免疫染色を施行して前述の偽中皮腫様癌やその他胸膜原発肉腫などを除外する必要がある また 一部の線維性胸膜炎が線維形成型中皮腫と似通った組織像を示し 病理のみでは診断に難渋する場合がある 15) そのような場合には CTをはじめとした画像所見において腫瘍性病変を示唆する胸膜不整所見や 経過での増悪所見を確認することが必要とされる場合があり 中皮腫を含めた悪性胸膜病変の画像診断に習熟しておく必要がある これに対し肺癌は 石綿ばく露によって発癌リスクが上がることは証明されている 16) が 遺伝子や喫煙など石綿以外の要因も肺癌発生に強く影響を与えているため 石綿肺癌とするには さらに認定要件を満たす必要がある ( 表 2) まず 労災では1 石綿肺所見がある 2 胸膜プラークと10 年以上の石綿ばく露作業従事期間 3 広範囲胸膜プラークと1 年以上の石綿ばく露作業従事期間 4 石綿小体または石綿繊維の所見と1 年以上の石綿ばく露作業従事期間 5びまん性胸膜肥厚に併発 6 石綿紡績 石綿セメント 石綿吹きつけの3 作業のいずれかに従事し 5 年以上の従事期間がある の6 項目のいずれかを満たす場合に石綿肺癌と認定される この中で画像診断が重要な役割を果たすのが 石綿肺と胸膜プラークである 石綿肺はじん肺法に定めるPR1 型以上の石綿肺所見を有する場合であり 胸膜プラークは胸部単純 X 線写真やCT などの画像所見に加えて 術中所見や剖検時所見などの肉眼所見のいずれも有効である このうち胸部単純 X 線写真のみで明らかにプラークといえる場合か 胸部 CT 98(98)
図 9 胸膜中皮腫 A 胸部単純 CT : 原因不明の右胸水で受診時 (3 月 ) の CTである. 前縦隔付近の右胸膜にわずかに不整肥厚を認める ( ). 右胸水を認め, 背側胸膜にも軽度不整を伴っている. 背側の胸水貯留部の胸膜肥厚は非特異的で評価しにくいが, 前縦隔部の胸膜付近には胸水が貯留することが少なく, 通常の炎症性変化では肥厚を起こしにくい場所である. また, 縦隔側胸膜外には脂肪織しかなく, 胸膜不整の評価がしやすい部位でもあり, 中皮腫の診断において注意しておくべき部位である. B 造影 CT :10 月では時間の経過とともに病変の進行は明らかである ( ). A B にて胸膜プラークの広がりが胸壁内側の4 分の1 以上ある場合を広範囲胸膜プラークとするが この診断は画像所見のみで行われる ( 図 11) 救済法では 石綿作業従事期間の有無は問われず 1 胸部単純 X 線写真やCTにて胸膜プラークを認め 同時に 肺線維化所見を認めるか 広範囲プラークを認める場合 2 石綿小体または石綿繊維の所見がある場合 石綿肺癌と認定し救済の対象となる ( 図 5) この救済法では術中所見などの肉眼所見のみでの胸膜プラークを認める場合は認定対象とならず あくまでも画像所見で胸膜プラークを認める必要があることに留意しておかねばならない 1 例を挙げれば 職歴を有さない現在専業主婦のリウ 図 10 偽中皮腫様癌 ( 腺癌 ) 左胸膜のびまん性不整肥厚を認め, 胸膜中皮腫疑いで胸腔鏡下胸膜生検を施行したが, 腺癌との診断であった. 再度胸部 CTを見直したが, 肺野には原発巣を疑う所見は認めなかった. マチ患者が リウマチ肺で肺線維化の所見を有し 原因不明の低濃度ばく露があったため CT 上軽度のプラークを認めたとする その患者に原発性肺癌が発生した場合に 職歴がないため労災とは認定されないが 救済法の認定要件は満たしているため 石綿肺癌として医療費などの救済給付を受けることが可能となる また 胸部単純 X 線写真ではっきりと胸膜プラークを確認出来る肺 99(99)
表 2 石綿肺癌に関する労災と救済法の認定要件 ( 一部省略 ) 現時点 ( 平成 25 年度末 ) でのアスベスト肺癌認定要件を簡単に示す. CT を含む画像所見または術中など肉眼所見で胸膜プラークを認め,10 年以上の石綿ばく露作業歴があれば労災と認定される. これに加えて, さら にプラークに関しては胸部単純 X 線写真にて明らかに確認出来るか, 半胸郭の 4 分の 1 以上に及ぶものを広範囲プラークとし, これを認めた場合は石 綿ばく露作業の認定要件が 1 年以上となる. 石綿小体は乾燥重量 1g あたり 5,000 本以上, 石綿繊維は 5μ 超が 300 万本以上が確認出来れば, 広範囲プ ラークと同様に石綿ばく露作業 1 年以上で石綿肺癌と認定される. 石綿救済法では, 職歴は問わず, 従来は画像所見で胸膜プラークと肺線維化を認めるか, 労災と同基準の石綿小体または石綿繊維を認めれば, 石綿肺癌と認定されていたが, 現在は労災と同様の画像所見の条件を満たす広範囲プラークのみでも石綿肺癌の要件を満たす. 図 11 広範囲胸膜プラーク広範囲プラークとは, 胸部単純 X 線写真 (A) のみでプラークと診断可能なもの, またはBのように半胸郭を縦隔部を除いて4 分割し, この4 分の1 以上の範囲に胸膜プラークが及ぶものを指す. A B 100(100)
癌症例も 広範囲プラークありということで 1 年以上の石綿ばく露職歴があれば労災 職歴がない場合でも救済法のいずれかでの補償が必ず得られることとなる このように 肺癌の画像診断を行う際には 放射線科医の社会的な役割として これら各種保障制度とその認定要件を念頭におき 胸膜プラークと肺線維化に注意して読影する必要がある なお 各種制度はここ数年でもその認定要件に変更がいくつか加えられており 最新のものを厚生労働省や環境再生保全機構の下記ホームページで確認しておく必要がある 厚生労働省労災補償 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/ koyou_roudou/roudoukijun/rousai/index.html 環境再生保全機構 http://www.erca.go.jp/asbestos/ おわりに原発性胸膜腫瘍について SFTにも少しふれ 胸膜中皮腫を中心に概説した 胸膜中皮腫の早期診断 鑑別診断ともに 画像診断のみでは限界があるが それを認識した上で 胸膜プラークの有無や縦隔側胸膜の不整所見に留意し 肺癌症例も含め 各種保障制度の知識も持った上で診療にあたる必要がある 参考文献 1) Hernandez FJ, Fernandez BB: Localized fibrous tumors of pleura: a light and electron microscopic study. Cancer 34: 1667-1674, 1974 2) 井上修平, 藤野昇三, 紺谷桂一, 他 : 胸腔鏡下に摘出した胸膜由来, 孤立性孤立性線維性腫瘍 (solitary fibrous tumor) の3 例 本邦報告例の検討. 日呼外会誌 16: 57-64, 2002 3) England DM, Hochholzer L, McCarthy MJ: Localized benign and malignant fibrous tumors of the pleura: a clinicopathologic review of 223 cases. Am J Surg Pathol 13: 640-658, 1989 4) Briselli M, Mark EJ, Dickersin GR: Solitary fibrous tumors of the pleura: eight new cases and review of 360 cases in the literature. Cancer 47: 2678-2689, 1981 5) Robinson LA: Solitary fibrous tumor of the pleura. Cancer Control 13: 264-269, 2006 6) Zhang WD, Chen JY, Cao Y, et al: Computed tomography and magnetic resonance imaging findings of solitary fibrous tumors in the pelvis: correlation with histopathological findings. Eur J Radiol 78: 65-70, 2011 7) Mendelson DS, Meary E, Buy JN, et al: Localized fibrous pleural mesothelioma: CT findings. Clin Imaging 15: 105-108, 1991 8) 石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会 : 中皮腫と職業性石綿ばく露に関する検討. 石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会報告書. 12-26, 2003 9) Takagi K, Tsuchiya R, Watanabe Y: Surgical approach to pleural diffuse mesothelioma in Japan. Lung Cancer 31: 57-65, 2001 10)Marom EM, Erasmus JJ, Pass HI, et al: The role of imaging in malignant pleural mesothelioma. Semin Oncol 29: 26-35, 2002 11)Alexander E, Clark RA, Colley DP, et al: CT of malignant pleural mesothelioma. AJR Am J Roentgenol 137: 287-291, 1981 12) 加藤勝也 : レントゲン及び CT 画像からの解析. 平成 17 年度厚生労働科学特別研究中皮腫と職業性石綿ばく露に関する研究報告. 27-32, 2006 13)Metintas M, Ucgun I, Elbek O, et al: Computed tomography features in malignant pleural mesothelioma and other commonly seen pleural diseases. Eur J Radiol 41: 1-9, 2002 14)Attanoos RL, Gibbs AR: Pseudomesotheliomatous carcinomas of the pleura: a 10-year analysis of cases from the Environmental Lung Disease Research Group, Cardiff. Histopathology 43: 444-452, 2003 15) 武島幸男, 櫛谷桂, Jeet AV, 他 : 胸膜悪性中皮腫の組織診断 (1) 反応性病変との鑑別. 病理と臨床 28: 288-293, 2010 16)Doll R: Mortality from lung cancer in asbestos workers. Br J Ind Med 12: 81-86, 1955 101(101)