358 理学療法科学第 23 巻 3 号 I. はじめに今回は, 特にスポーツ外傷 障害の多い肩関節と膝関節について, 各疾患の診断を行ううえで重要な整形外科徒手検査法と徴候を中心に述べるので, 疾患については特に説明を加えないので, 成書を参照すること 1. 非外傷性肩関節不安定症 1 sulcu

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6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

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対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

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原著論文 肩関節屈曲による交互滑車運動器使用時における肩甲骨の動きからみた肩甲上腕リズムの検討 寒川貴雄 (RPT) 1) 成末友祐 (RPT) 2) 新枝誠人 (RPT) 1) 原田貴志 (RPT) 1) 澤近知代 (RPT) 3) Key Word 交互滑車運動器 肩関節屈曲 肩甲骨の動き 肩甲

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

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肩関節第35巻第3号

3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展

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であった まず 全ての膝を肉眼解剖による解析を行った さらに 全ての膝の中から 6 膝を選定し 組織学的研究を行った 肉眼解剖学的研究 膝の標本は 8% のホルマリンで固定し 30% のエタノールにて保存した まず 軟部組織を残し 大腿骨遠位 1/3 脛骨近位 1/3 で切り落とした 皮膚と皮下の軟

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Ⅰはじめに が膝関節を強く内旋したときに 近位脛骨の前外側部に剥離骨折が常在すること 年 P S またこの部位に真珠のような光沢を持つ線維束が付着していることを報告したそれ以来 この線維束は m m m m と様々な名称でよばれてきた しかしながら この線維束が恒常的な構造であるかどうかについて長い

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0. はじめに 当院でこれまで行ってきたメディカルチェックでは 野球選手のケガに対するアンケート調査も行 ってきました (P.4 表 1 参照 ) アンケート調査で 肘 ( ひじ ) の痛みを訴えていた選手は 高校生で 86.7% 小学生で 41.1% でした また 小学生に対しては 超音波 ( エ

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ピッチング ( 投球 ) のバイオメカニクス ピッチングに関連する傷害は オーバーユースに起因していると考えられています 1 オーバーユースに伴う筋肉疲労により 運動で発生したエネルギー ( 負荷 ) を吸収する能力が低下します 2 つまり本来吸収されるべきエネルギーは 関節や他の軟部組織 ( 筋肉

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施術料金表 (1 割負担額 ) 相談支援料算定あり 初検日 + 冷罨法料 初検日 ( 冷罨法料加算なし ) 冷罨法料 初検料 1,460 円 初検料 1,460 円 相談支援料 50 円 相談支援料 50 円 1 部位 760 円 85 円 2,355 円 240 円 1 部位 760 円 2,27

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の内外幅は考慮されず 側面像での高さのみで分類されているため正確な評価ができない O Driscoll は CT 画像を用いて骨片の解剖学的な位置に基づいた新しい鉤状突起骨折の分類を提案した この中で鉤状突起骨折は 先端骨折 前内側関節骨折 基部骨折 の 3 型に分類され 先端骨折はさらに 2mm

ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性肩関節水平内転筋力測定の再現性 平野 正広 加藤 宗規 荒巻 英文 荒木 智子 勝木 員子 遠藤 元宏 兎澤 良輔 了德寺大学 健康科学部理学療法学科 要旨 ハンドヘルドダイナモメーターによる肩関節水平内転の等尺性筋力測定の再現性を検討することを目的 とした

十字靭帯は回旋運動時の関節面の接触保持に役立つ 前十字靭帯 1は脛骨の顆間区から大腿骨外側顆の内側面へ後十字靭 2は前十字靭帯よりも強力で大腿骨内側顆の外側面から後顆間区へ行く 関節半月は 多くの膠原線維質と軟骨様細胞を持つ結合組織から成る 膠原線維には2つの走行がありより強力な線維は 半月の形に従

146 理学療法科学第 23 巻 1 号 I. はじめに 膝前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament;ACL) 損傷は, スポーツ外傷の中で発生頻度が高く, スポーツ活動を続行するためには靭帯再建を余儀なくされることが多い 近年,ACL 損傷を予防することの重要性が認識され

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(4) 最小侵襲の手術手技である関節鏡視下手術の技術を活かし 加齢に伴う変性疾患に も対応 前述したようにスポーツ整形外科のスタッフは 日頃より関節鏡手技のトレーニングを積み重ねおります その為 スポーツ外傷 障害以外でも鏡視下手術の適応になる疾患 ( 加齢変性に伴う膝の半月板損傷や肩の腱板断裂など

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椎間板の一部が突出した状態が椎間板ヘルニアです 腰痛やあしに痛みがあります あしのしびれやまひがある場合 要注意です 対応 : 激しい運動を控えましょう 痛みが持続するようであれば 整形外科専門医を受診して 検査を受けましょう * 終板障害 成長期では ヘルニアとともに骨の一部も突出し ヘルニア同様

図 1-2 上腕骨の骨形態 a: 右上腕骨を上方からみたところ. b: 右上腕骨を外側よりみたところ. 上腕骨近位外側には大結節ならびに小結節という骨隆起が存在し, 結節間溝によって分けられる. 大結節は, その向きによって上面, 中面, 下面とよばれる 3 面に分けられる. く, 不安定である.

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三角巾は 救急処置における包帯処置として 止血に必要な 圧迫 創傷部を空気に触れないようにする 被覆 打撲や骨折箇所を安静に保つための 固定 に使われます Ⅰ. 三角巾の名称 Ⅱ. 三角巾の形態三角巾の使用時の形態により主に3 種に区分されます 1. 全巾体表面を被覆 ( ガーゼ等の支持も含む )

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OSCE 導入の目的 本学 柔道整復専攻では 治せる柔道整復師の育成 を目標に 3 年間の臨床技能教育の総まとめとして 3 年次学生を対象とした実技審査を行っている OSCE 導入の第 1の目的は 鑑別診断能力の習得である 実際の臨床現場では 鎖骨が折れました 肩が外れました と患者様が来院すること

どであり, 着衣や体型による影響も否定できない. 本研究の目的は,ACL 損傷患者を後ろ向きに調査し,ACL 損傷に至る特徴をまとめ, 下肢 X 線画像から骨解剖学的危険因子を特定することである なお, 本研究は長崎大学病院臨床研究倫理委員会の承認を得て行った ( 承認番号 : ).

138 理学療法科学第 24 巻 2 号 I. はじめに膝前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament;ACL) 損傷では, 多くの場合再建術が必要となり, その後スポーツ復帰までに半年から1 年近くを要することがある そのため, 近年その予防の重要性が唱えられるようになってき

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1 画像検査診断のために行う画像による検査 画像検査には 超音波 ( エコー ) 検査 X 線検査 ( レントゲン検査 ) C T( コンピューター断層撮影 ) MRI( 磁気共鳴画像 ) PET( 陽電子放出断層撮影 ) などがある 2 保存療法手術をしないで治療すること 薬の内服 外用 固定 理

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理学療法科学 23(3):357 362,2008 特集 スポーツ理学療法で必要となる整形外科徒手検査と徴候 Orthopedic Manual Tests and Signs in Sports Physical Therapy 高橋邦泰 1) KUNIYASU TAKAHASHI, MD, PhD 1) 1) School of Physical Therapy, Faculty of Health and Medical Care, Saitama Medical University: 981 Kawakado, Moroyama, Iruma-Gun, Saitama 350-0496, Japan. TEL +81 49-295-1763 FAX +81 49-295-5104 Rigakuryoho Kagaku 23(3): 357 362, 2008. Submitted Apr. 21, 2008. ABSTRACT: In this paper, orthopedic manual tests and signs of each major disease in sports physical therapy is explained. Key words: sports, physical therapy, manual test 要旨 : スポーツ理学療法で必要となる整形外科徒手検査と徴候について, 主な疾患別に解説した キーワード : スポーツ, 理学療法, 徒手検査 1 ) 埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科 : 埼玉県入間郡毛呂山町川角 981( 350-0496) TEL 049-295-1763 FAX 049-295-5104 受付日 2008 年 4 月 21 日

358 理学療法科学第 23 巻 3 号 I. はじめに今回は, 特にスポーツ外傷 障害の多い肩関節と膝関節について, 各疾患の診断を行ううえで重要な整形外科徒手検査法と徴候を中心に述べるので, 疾患については特に説明を加えないので, 成書を参照すること 1. 非外傷性肩関節不安定症 1 sulcus sign 上肢を下垂位で下方へ引くと上腕骨頭が下がることにより, 肩峰外側端の下に陥凹できるものを陽性とする 2 前方不安感テスト (anterior apprehension test) 患者の肩を90 外転位で外旋と水平伸展を強制しながら, 上腕骨頭の後方に検者の母指をあて骨頭を前方に押し出す その際に脱臼不安感があれば陽性とする 3 後方不安定感テスト (posterior apprehension test) 患者の肩を90 前方挙上位で内旋位の状態を保ち上腕を後方に押す その際に脱臼不安感があれば陽性とする 4 general joint laxity test 全身の関節の弛緩性がある場合に非外傷性肩関節不安定症を引き起こす要因になる ( 図 1) 2. 肩峰下インピンジメント症候群 1 有痛弧徴候 (painful arc sign) 患者が上肢を自動的に挙上する際, または挙上した位置から下ろしてくる際に約 60 ~ 120 の位置で肩の痛みが生じる現象である 痛みがある場合に陽性とする 2 インピンジメント徴候 (impingement sign) Neer 手技 : 検者が患者の肩甲骨を押さえながら, 内旋位にした上肢を他動的に前方挙上すると肩の痛みが誘発される 痛みの誘発があれば陽性とする Hawkins-Kennedy 手技 : 検者が肩甲骨を押さえながら上肢を約 90 前方挙上し, さらに他動的に内旋させた際に肩の痛みが誘発される 痛みが誘発されれば陽性とする 3. 肩腱板断裂 1 有痛弧徴候 (painful arc sign) 疼痛誘発時に肩峰下で雑音を聴取できることが多い ( 疼痛誘発法は肩峰下インピンジメント症候群の項目 1 参照 ) 2 腕落下徴候 (drop arm sign) 検者が他動的に患者の肩を90 外転位にしたときに, 検者が手を離すか, もしくは指一本程度の力で下に押し下げた際に元の肢位を維持できなくて上肢が落下する現象を陽性とする 図 1 general joint laxity test ( スポーツ外傷学 Ⅲ,P41, 医歯薬出版社, 東京,2000. 一部改変 )

スポーツ理学療法で必要となる整形外科徒手検査と徴候 359 4. 外傷性肩関節前方脱臼 1 ばね様固定患者は肩関節の自動運動は不可能で, 他動運動時に疼痛と抵抗感があるものを陽性とする 5. 外傷性肩鎖関節脱臼 1 piano key sign 肩鎖関節部の圧痛と鎖骨外側端の上方への突出が見られ, 鎖骨外側端を下方に圧迫すると整復される しかし, 圧迫を解除すると元に戻る場合を陽性とする 脱臼 II 度以上で見られる 6. 投球障害 1 外転 外旋テスト野球肩ではコックアップの肢位に近い肩関節の外転 外旋を検者が強制すると肩関節に痛みがみられる 痛みがみられるものを陽性とする 2 棘上筋抵抗テスト患者が上腕を肩甲骨面におき, 肩関節内旋位で外転させる際に検者が前腕遠位抵抗を加える際に棘上筋腱に運動痛を誘発できる場合を陽性とする 3 インピンジメントテスト棘上筋抵抗テストに引き続き, 検者が肩甲骨を固定して, 患者に力を抜かせ状態で受動的に肩関節を勢いよく外転させると肩峰の下面に上腕骨大結節が衝突する この際に投球時同様の痛みを再現できる 痛みがみられるものを陽性とする 4 外旋テスト患者が上肢を下垂位とし, 肘関節 90 屈曲位とする 肩の外旋筋力を検者が調べる 通常は肩の外旋筋力は小さく, 左右差が少ないため利き腕の投球側が低下しているのがわかる 重症の場合は, 投球時同様の疼痛を認める 外旋筋力が低下している場合を陽性とする 5 有痛弧徴候 (painful arc sign) 肩峰下インピンジメント症候群の項目 1 参照 6 sulcus sign 非外傷性肩関節不安定症の項目 1 参照 7 apprehension test 非外傷性肩関節不安定症の項目 2,3 参照 7. 動揺肩 1 apprehension test 非外傷性肩関節不安定症の項目 2,3 参照 8. 習慣性 ( 反復性 ) 肩関節前方脱臼 1 dead arm syndrome 1) 脱臼感を伴わない亜脱臼では, 上肢の脱力感のみの症例がある 2 前方不安感テスト (anterior apprehension test) 患者の肩を外転 外旋位を強制し上腕骨頭を後方から圧迫すると, 肩が前方に外れるような不安感を訴える 不安感が強い場合には, この投球のような肢位を自分でとることができない 非外傷性肩関節不安定症の項目 2 参照 3 general joint laxity test 非外傷性肩関節不安定症の項目 4 参照 9. 習慣性 ( 反復性 ) 肩関節後方脱臼 1 general joint laxity test 外傷性肩関節不安定症の項目 4 参照 2 後方不安定性テスト (posterior apprehension test) 検者が患者の後方に立ち, 肩峰棘を親指で固定して他の四指で上腕骨頭を前方から圧迫して不安定性を見る 左右差を見ることが重要である 非外傷性肩関節不安定症の項目 3 参照 10. 上腕二頭筋長頭腱損傷 1 結節間溝の圧痛患側の上腕骨頭結節間溝の上腕二頭筋長頭腱走行に沿って損傷部位に圧痛を生じる 圧痛のある場 図 2 上腕二頭筋長頭腱損傷の診断 A:Yergason test: 患者が患肢の肘関節 90 屈曲位で検者の力に抵抗をして前腕を回外しようとすると結節間溝部に疼痛が生じる. 疼痛がある場合に陽性とする. B:Speed test: 患者が患肢の肘関節を伸展位, 前腕回外位で, 検者の力に抵抗して患肢を挙上しようとすると, 結節間溝部に疼痛が生じる. 疼痛がある場合に陽性とする. 上腕二頭筋腱炎によく見られる. ( スポーツ外傷学 Ⅲ,P101, 医歯薬出版社, 東京,2000. 一部改変 )

360 理学療法科学第 23 巻 3 号 合に陽性とする 2 Yergason test 患者が患肢の肘関節 90 屈曲位で検者の力に抵抗をして前腕を回外しようとすると結節間溝部に疼痛が生じる 疼痛がある場合に陽性とする ( 図 2-A) 3 Speed test 患者が患肢の肘関節を伸展位, 前腕回外位で, 検者の力に抵抗して患肢を挙上しようとすると, 結節間溝部に疼痛が生じる 疼痛がある場合に陽性とする 上腕二頭筋腱炎によく見られる ( 図 2-B) 11. 膝関節の骨折 脱臼 1) 関節内骨折 1 関節血症 (hemarthrosis) 膝関節内の骨折では, 多くの症例で関節血症を認める 特徴的所見として脂肪滴の混入を認める これを認めた場合は, 関節内骨折を疑う 2 膝蓋跳動 (ballottement of patella) 膝関節に貯留した関節液を診断する 膝蓋上 _ に貯留した関節液を近位より遠位に用手的に圧迫移動させ, 同時に内外側方からも圧迫を加えると関節液で膝蓋骨が浮き上がる その際に膝蓋骨を大腿骨に押しけ浮き沈みを指で感じ取る ( コツコツ感 ) ことによって関節液の貯留度合いを判定する 膝蓋骨が浮き上がり, 押すと大腿骨に接触する感じ ( コツコツ感 ) が感じ取れれば陽性とする つまり, 異常に関節液貯留があることになる 3 関節穿刺 (joint puncture) 膝蓋跳動が陽性であった場合は, 関節内に液体がたまっていることの傍証である この貯留物が何であるかの判定するために, 関節へ直接に注射針を刺して内容物を吸引して内容物の性状を判定する手技である 関節内骨折の場合は,1の関節血症で脂肪滴を交える 2) 大腿脛骨関節脱臼 1 脱臼整復後, 靭帯, 半月板等の損傷組織の徒手検査になる 各項目参照 3) 膝蓋骨脱臼 1 圧痛通常膝蓋骨脱臼は外側脱臼であるため, 受傷早期には膝蓋骨内側部に圧痛を認める 2 関節血症 (hemarthrosis) 受傷早期では関節内骨折と違い, 軟部組織損傷のため関節血症を認めるが脂肪滴が含まれない 3[ 膝蓋骨外側不安徴候 ](Fairbank s apprehension 徴候 ) 検者が膝蓋骨を徒手的に外則に脱臼させるような力を加えると, 患者はその操作を怖がる徴候である ほぼ100% に見られる 4 位置異常受診時は整復されていることは多いが, 全身の関節弛緩性がある 脱臼側は一般に健側より膝蓋骨が外側にある 大腿四頭筋の収縮で強調される 5 捻髪音軟骨損傷が高度になると, 膝の屈伸で捻髪音が触知される 6 全身関節弛緩性テスト (general joint laxity test) 全身の関節の弛緩性を伴うことが多い 検査は手関節, 肘関節, 体幹, 膝関節, 足関節等の関節弛緩性を検査する 非外傷性肩関節不安定症の4の項目参照 2, 3) 7 APSテスト (active patellar subluxation test) 患者の高い椅子や机に座らせ下腿を自然に下垂させ, 検者は母指と示指で患者の膝蓋骨の内外側縁を摘むように把持し, その状態から患者に命じて膝を能動的に完全伸展支えるものである 検者は患者の膝が能動的に伸展する間の膝蓋骨の運動を指で触知し, 膝蓋骨の偏移と傾きの変化を評価する 健常者では能動的膝屈曲から伸展時にわずかに膝蓋骨が外側に偏移するが, 膝蓋骨亜脱臼患者では, 能動的膝屈曲から伸展に伴い膝蓋骨は著明に外側偏移し傾斜するのが触知される これを. 陽性とする 12. 半月板損傷 1 マクマレーテスト (McMurray test) 患者を仰臥位として検者が下腿を屈曲外旋, または屈曲内旋位から他動的に伸展させ関節裂隙にクリックの有無と疼痛をみる検査である この際にクリックまたは関節裂隙の疼痛があれば陽性とする 2 アプレイテスト (Apley test) 患者を腹臥位で膝関節 90 屈曲位とし, 大腿部を検者の膝で固定して患者の下腿を上方に引っ張り上げて膝の関節包を緊張させると, 患側の関節裂隙に疼痛が誘発される (distraction test) 疼痛が誘発されれば陽性とする 次に, 足部を押さえて膝を圧迫しながら下腿を回旋させると患側の関節裂隙に疼痛が誘発される (grinding test) 疼痛が誘発されれば陽性とする

スポーツ理学療法で必要となる整形外科徒手検査と徴候 361 3 クリック (click) 関節運動時に関節裂隙に一致して コリッ とした音を感じる これをクリックという この音を感じる場合を陽性とする 4 嵌頓症状 (locking) 辺縁部の半月板の縦断裂では, 断裂した半月板が顆間窩や脛骨大腿関節面に嵌頓して膝関節が屈曲したまま伸展不能に陥る この状況を嵌頓症状という 急性期では激痛を伴う 5 弾発現象 (Snapping) クリックとともに起きる現象で, 関節運動時に脛骨大腿関節面に損傷半月板が入り込み, 弾発現象が起こる 慢性期に起きることが多い 6 関節水症 (hydrarthrosis) 関節に慢性の炎症が存在する場合にみられる 関節包内の容積は100 ml 以上ある 慢性期に起こる症状である 7 関節血症 (hemarthrosis) 関節血症の血液に脂肪滴は含まない 関節内骨折の項目 1を参照 8 関節裂隙圧痛試験内外の関節裂隙に沿って検者の指で圧迫を加えた際に, 患側の関節裂隙に疼痛を生じる これを陽性とする 13. MCL 損傷 1 外反ストレステスト (valgus stress test) 患者を仰臥位として膝伸展位と30 屈曲位で検者が膝関節外側に一方の手を置き, 他方の手で足関節を持ち膝関節に外反強制力を加えて, 膝関節の外反不安定性をみる この際,30 屈曲位で外反不安定性があれば,MCL 損傷を疑う MCL 単独損傷では伸展位での不安定性は認めない LCL 損傷 2 内反ストレステスト (varus stress test) 患者を仰臥位として膝伸展位と30 屈曲位で検者が膝関節内側に一方の手を置き, 他方の手で足関節を持ち膝関節に内反強制力を加えて, 膝関節の内反不安定性をみる この際,30 屈曲位で内反不安定性があれば,LCL 損傷を疑う 14. ACL 損傷 1 ラックマン テスト (Lachman test) 患者を仰臥位とし,20~30 程度の膝関節屈曲位で大腿部遠位部を片手で持ち, 一方の手で脛骨近位 図 3 ラックマン テスト (Lachman test) ACL 損傷の前方不安定性検査 : 患者を仰臥位とし, 20~30 程度の膝関節屈曲位で大腿部遠位部を片手で持ち, 一方の手で脛骨近位端前方に引く. 脛骨が前方に引き出される. この場合を陽性とする. 端前方に引く 脛骨が前方に引き出される この場合を陽性とする ( 図 3) 2 ピボットシフトテスト (pivot-shift test) 患者を半側臥位として, 左膝を検査する場合, 検者の左手で下腿を内旋し右手掌を下腿の近位外後方にあて, 外反および脛骨の前方押し出しを加えつつ, 伸展位から屈曲していく 陽性の場合には膝屈曲 30 付近で突然ガクッと脛骨近位外側部の前方亜脱臼がおこり, さらに曲げていくと屈曲位 40 ~60 のところでもとに復して膝くずれの感じを自覚するものをいう 3 前方引き出しテスト (anterior drawer test) 患者を仰臥位にして膝関節を90 屈曲位として, 患者の足を検者の臀部で軽く固定した状態で, 検者の両手で脛骨近位部を包み込むようにして前方へ引き出す 健側と患側の前方引き出しの程度を比較する 健側と比較して前方引き出し程度の大きいほうを陽性とする 急性期では疼痛で膝の屈曲が困難であり, ラックマン テストのほうが有用である 4 Nテスト (N test) 4) 患者は仰臥位にして, 検者は患者の膝関節を約 90 屈曲位とする 検者の一方の手を患者の膝関節外側に置き, その手の母指で腓骨頭部を前方に押し, 外反と下腿内旋力を他方の手で加えながら除々に伸展してゆく この際,40 ~20 屈曲位で突然, 脛骨外側関節面が前内方に亜脱臼した雑音を触知する この脱臼を陽性とする

362 理学療法科学第 23 巻 3 号 15. PCL 損傷 1 後方引き出しテスト (posterior drawer test) 前方引き出しテストと同様の肢位で, 検者の両手で脛骨近位部を包み込むようにして後方へ押す 健側と患側の後方引き出しの程度を比較する また, 検者の両母指を関節裂隙に当てておくと, 後方引き出しを敏感に触知できる 2 脛骨後方落ち込み徴候 (tibial posterior sagging sign) 陳旧例では, 後方へのストレスをかけなくても, 膝関節屈曲位で脛骨近位端が後方に移動していることがある そのため健側に比較して, 脛骨粗面部の後方落ち込みが観察できる 3 後外側不安定性テスト (posterolateral external-rotation test) 5) 患者を仰臥位にして膝関節を90 屈曲位として, 検者が一歩の手で下腿上端を後方に押しながら, 他方の手で外旋力を加えると脛骨外顆が異常に後方移動する, これを陽性とする その際はPCL 損傷の膝関節後外側支持組織損傷の合併が強く疑われる 4 reverse pivot-shift test 6) 患者を仰臥位にして膝関節を伸展位として, 検者は一方の手で患者の下腿上端をつかみ, 他方の手は下腿下部を持ち膝に外反力, 外旋力, 後方引き 出し力を同時にかけつつ, 伸展位から徐々に屈曲を他動的にさせると, 屈曲 30 ~40 で脛骨外顆部の後方の亜脱臼起こるのが手に触知, 観察される これを陽性とする II. まとめ 肩関節 膝関節の主なスポーツ外傷 障害における整形外科徒手検査と徴候について概説した 引用文献 1) Rowe CC, Zarins B: Recurrent transient subluxation of the shoulder. J Bone Joint Surg, 1981, 63: 863-872. 2) 井上雅裕, 田中研, 史野根生 他 : 膝蓋骨亜脱臼の臨床診断 ;Active Patella Subluxation Testの提唱. 膝,17: 99-101, 1991. 3) 井上雅裕 : 児童 生徒の健康障害 今日的課題 (1) 整形外科領域 : 膝蓋骨亜脱臼. 日本医師会雑誌,1992,107: 1785-1788. 4) 中嶋寛之, 近藤稔, 長坂与一 他 :N-test による不安定膝の診断. 膝,1976,2: 106-112. 5) LaPrade RF, Terry GC: Injuries to the posterolateral aspect of the knee. Am J Sports Med, 1997, 25: 433-438. 6) Jakob PR, Staeubli HH: Observation on rotary instability of the lateral compart of the knee. Acta Orthop Scand, 1981, 191(Suppl): 6-27.