そして ふるさと納税には 地域活性化や地方格差是正の役割が期待されていた しかし 実際にはその役割が十分には果たされていないのではないかという指摘がある 返礼品の多くは地域の特産品であるが 寄附者が自治体を選ぶ基準は返礼品などをめぐる費用対効果などである場合が多い またふるさと納税の返礼品で満足して

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1 ふるさと納税と自治体の取り組み (1) ふるさと納税は良い制度なのか近年 ふるさと納税の納税総額は年々増加傾向にある 2018 年で 10 年目を迎えるふるさと納税制度であるが 常々多くの問題点が指摘されている そこで ふるさと納税制度の実情を調べ 改善する必要があるかまた改善するならばどのような対策があるかを考える ふるさと納税 という制度は 2006 年に当時の福井県知事であった西川一誠氏が 故郷寄附金控除 の導入を提言したことに端を発する 教育分野は地方行政が多くの財源を投入している分野の1つである しかし 地方で成長した人々が都市部に人口が流出してしまっている つまり地方で育てた人材が都市部に流れ込んでしまっている そこで都市部に集中した人などが生まれ育った町や応援したい地域などといった地方自治体に寄附することができる制度をつくるに至った この寄附制度により 寄附者は税金が還付 控除される 返礼品などが貰える等のメリットがある また地方自治体は税収が増え 返礼品等により地域の特産品などのアピールにもつながるとされている 総務省の発表によると ふるさと納税 は 2017 年に寄付総額が 2540 億円に上った それに伴い 税金の控除総額は 1767 億円にも上った 1 また 都市部ではふるさと納税による減収が著しく 東京都では約 460 億円にも上るという発表もあった 2 (2) 自治体は減収になっているのかこの制度の問題点として まず税収の減少という問題が挙げられる ふるさと納税がなければ全額得られたはずの税収が一部還付または控除となる 従って 寄附者の住む自治体では 基本的に寄附額の 75% が地方交付税で補填されるが 残りの 25% は得られなくなる また 地方交付税の不交付団体は 75% の補填も受けられない さらに ふるさと納税で得られた寄附ではあるが 返礼品等の費用はかかることから 寄附された自治体の実際の収益は寄附額から返礼品等の金額を引いた分となる このことから 本来は自治体が全額使うことができるはずの寄附金が実際には活用できるのが一部のみとなってしまう 次に 返礼品競争 による返礼品の高額化が問題に挙げられる 先述のようにふるさと納税で寄附された自治体の実際の利益は寄附額から返礼品にかかる費用を差し引いた金額になるため 返礼品が高額化することはふるさと納税の利益を減らす行為である しかし 実際には返礼品等にかかる費用は自治体の一般財源から支払われるため 寄附された自治体というよりは自治体の一般財源を地方交付税等で分配している国家が割を食うことになる そのような仕組みであるため 返礼品等が高額化すると自治体はふるさと納税の税収が増えると同時に返礼品等の費用も増加することになり 国はさらに損を被ることになる可能性がある 1

2 そして ふるさと納税には 地域活性化や地方格差是正の役割が期待されていた しかし 実際にはその役割が十分には果たされていないのではないかという指摘がある 返礼品の多くは地域の特産品であるが 寄附者が自治体を選ぶ基準は返礼品などをめぐる費用対効果などである場合が多い またふるさと納税の返礼品で満足してしまい 実際にはその特産品の購入に至っていないことが見受けられる 他にも ふるさと納税による減収分が増収分を上回る場合 その自治体の公共サービスの質の低下が起こりうるという問題もある 以上のような問題点がある反面 2011 年の東日本大震災や 2016 年の熊本地震の時には義援金のような用途でこのふるさと納税制度が多く利用されるなど良い点もあった () ふるさと納税の現場 それでは実際 自治体の現場ではふるさと納税はどのように展開しているのであろう か T 県 S 市の担当者にインタビューをした Q1.T 県 S 市で行っているふるさと納税について A1.T 県 S 市では ふるさと納税に関する寄附条例を制定し 寄附者に6 個 ( 自然保護 子育て事業 観光事業 歴史 文化の保護 PR 活動 その他 ) の使い道を提示し 寄附者自身に寄附金をどう使うか選んでもらう形を取っている ただ T 県 S 市では返礼品事業にまだ参加していないが 姉妹都市など他の自治体とふるさと納税に関しての協定を結んでいる 具体的には 姉妹都市の返礼品に T 県 S 市の特産品をリストに入れるなど ふるさと納税に関する連携を図っている しかし 実際には年を追うごとに 市民の税金控除額が増加し続けている状況である それに対し 寄附額はそれほど増加してはおらず ふるさと納税の赤字が増大している現状である Q2. 赤字を縮小するための取り組みについて A2. 行政としては 控除額を減らすという取り組みをすることはできないため できることは ふるさと納税の寄附額を増加させる取り組みを行うしかない そこで今後返礼品事業に参加しようと考えている また 今後 T 県 S 市の政策が移住 定住をコンセプトとしていくことから その移住 定住政策などに結びつける方法がないか模索しているところである Q. 今後赤字が続くとどのような影響が出るかについて A. このまま赤字が膨らみ続ければ 行政として経費削減をしなければならない そこで市民の皆様に比較的影響が出にくいと考えられる事業 例えば市の PR 事業 2

3 などから経費を削減することになると考えられる さらに増加すれば 市民の皆 様にも影響が出てきたしまう可能性があるが 行政としてはその前に食い止めた い Q4. なぜ今まで返礼品事業に参加しなかったのか A4. 返礼品事業は 市の一般財源から送料などを含む返礼品の費用を行政で負担しなければならないため 寄附金は全額頂くことになるが実際には 返礼品にかかる費用を差し引いた額が残るという仕組みになっている よって税外収入は増加することになるが かかる費用を一般財源から割かなければならない しかし 自治体の一般財源はなるべく地域住民に還元すべきであるというように考えていたために 今まで返礼品事業に参加していなかった Q5. 今後 返礼品はどのように選定するのか A5.T 県 S 市ではすでに地域の特産品や自然 歴史文化などをブランド化し発信している その中から返礼品を選ぶことになると考えている また 返礼品は基本的には企業からの立候補制で決定していきたいと考えている 加えて 選定した返礼品などは寄附額に応じたリストを作成し 寄附者に選んでもらう形となる さらに 総務省からは返礼品等の金額ついては寄附額の 割以内に抑えるようにと書簡で通達されているため それに則って決定していく Q6. ふるさと納税が地域活性化や地方間格差の是正につながっているか A6. ふるさと納税という制度は各自治体に任されている部分が大きく 非常に自由度が高い制度である 赤字の自治体が増加していることも事実ではあるが 自治体次第で変えることができる可能性は十分にある 自治体によって 寄附金の集め方について定めた寄付条例を制定するのか 寄付金の使い道について定めた基金条例を制定するのか はたまた要綱だけで進めていくのかというところから違いが生まれている 現在はどの自治体も試行錯誤しているところが多く ふるさと納税が地域活性化に繋がっているとも繋がっていないとも一概には言えないが 地方が注目 知って貰えるきっかけにはなっているかもしれない (4) 今後のふるさと納税インタビューなどを行うことによって ふるさと納税 という制度の新たな一面を知ることができた まず ふるさと納税が始まったことにより 自治体間での競争が生まれ 各行政がそれぞれの地域を見直し 地域の強みを再確認 または作り出すことに繋がるという良い面があった ただ地域の特産品を並べるだけでは あまり寄附額の増加は見込めなく

4 やはり魅力ある特産品でなければいけない そのために自治体は 地域ブランドのブラッシュアップを図ることになるであろう このことによって 自治体は地域の強みを認識することができれば 地域の PR 事業や移住 定住政策などの他の政策にも生かせる可能性がある さらに ふるさと納税に関して自治体間で協定を結ぶなど 自治体同士で新たな関係を築くこともある また ふるさと納税は日本国民特に都市部に集中した人々が地方の自治体を知るきっかけにもなっている これはある意味で 地域の PR 活動になっているとも言える すなわち ふるさと納税の PR に成功すれば 寄附額が増加するとともに地域の PR にもつながり さらに寄附額が増加するという好循環が生まれる その反対に ふるさと納税の PR に失敗すれば ふるさと納税による赤字が増大し 地域の PR 事業が縮小され 財政赤字という悪循環になってしまう このようにふるさと納税によって 自治体は二極化してしまう恐れがある そして ふるさと納税が開始し ふるさと納税の寄付総額が控除額を上回っている自治体が存在しているということは事実である 現段階の赤字額で耐えしのぐことができれば自治体は現在のサービスを保てることができるだろう しかし ふるさと納税は毎年寄附総額が増加しており 今後も増加の一途をたどるだろう そうなれば赤字がさらに増大する自治体は少なからず生まれてしまうだろう 赤字がそのまま膨らみ続ければ やはり自治体は現在のサービスの質を維持することが厳しくなるだろう 事実 日本全国の 1741 の自治体を調査したところ そのうちの 462 の自治体が赤字となっているとみられる 4 そして赤字となっている自治体の多くは都市自治体である そういった点を踏まえると 都市に集中した税金を地方自治体に再分配するというふるさと納税の目的の 1 つは果たせていると考えることができる また ふるさと納税は国民に地方自治体に目を向けさせるための良い制度ではあると考えることができるが 改善の余地はまだあると考える まず 自治体に返礼品などの金額を寄附額の 割以内に抑えるということを徹底させる必要がある 割以上の返礼品などがあるとわかると やはり寄附が集まってしまう可能性があり 返礼品事業等を正当に行っている自治体や国が不利益を被ることになってしまう また 返礼品などに関して必ず選ばれるようなキラーコンテンツが生まれないように注意を払う必要がある キラーコンテンツは ふるさと納税の 地域の特産品の PR という本来の目的から逸脱する利用のされ方となる 以上のようにまず各自治体が正当に制度を推し進めるよう努める必要がある そして 救済措置がないことによって各自治体が必死に取り組んでいるという一面があるふるさと納税ではあるが 自治体が地域ブランドのブラッシュアップなどの努力を最大限行っても 財政を苦しめるほどの赤字が生じてしまった場合は 何らかの救済措置が今後必要になってくる可能性がある 具体的には一定額以上の赤字になってしまった自治体には 控除額を国による全額補填や 補助金を出したりなどすることによって赤字を縮小させなければならないといったことになるかもしれない また ふるさと納 4

5 税がさらに普及すれば 現行の制度上では寄附額の 75% を国が寄附者の住む自治体に補填しているが 国が予算上補填しきれなくなる可能性がある そうなれば 国が補填する割合を 75% から 70% や 60% に引き下げるなどの対策が取られるかもしれない しかし ふるさと納税という制度は 地方自治体に国民の目を向けさせることのできる数少ない取り組みであることは事実であり 都市自治体にとっては税収が減ってしまい反対意見も出るだろうが 国にとっても地方自治体にとってもメリットが大きく 今後も制度を改正しながら継続していくだろうと考える 1 自治税務局市町村税課 ふるさと納税に関する現況調査結果 ( 税額控除の実績等 ) (2018 年 5 月現在 ) pdf 2 livedoor NEWS ふるさと納税で東京都が約 460 億円の減収 保育園できない と悲鳴 (2018 年 5 月 10 日付 ) 年 6 月 5 日における T 県 S 市総合政策課政策調整課職員とのインタビューによる 4 総務省 平成 29 年度ふるさと納税に関する現況調査 をもとに算出 5

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