アラブ首長国連邦における銀行法とイスラーム金融の位置づけ

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4 アラブ 首 長 国 連 邦 における 銀 行 の 制 度 的 枠 組 みと イスラーム 金 融 の 位 置 づけ 川 村 藍 Framework for Banking Systems and the Position of Islamic Banking in the UAE Ai Kawamura** The aim of this paper is to describe the formation of Islamic banks and analyze the banking system in the United Arab Emirates (UAE). The paper will mainly focus on the provisions and the governing system in the UAE. The UAE is now one of the major financial centers in the Gulf countries, which are located in the southern part of the Arabian Gulf and are members of the Gulf Cooperation Council of the Arab States (GCC). The Members include the following six countries, Bahrain, Kuwait, Saudi Arabia, Oman, Qatar, and the UAE. In the UAE, Islamic finance has been in place since 1975, and recently this industry has begun growing rapidly. Two aspects constitute the nature of Islamic Banks; they are based on the model of modern finance as well as represent Islamic, Sharī a-based institutions. At the same time, the formation of Islamic banking is complex, as the general financial system in the UAE had been dominated by the conventional, non-islamic system. Therefore, the second chapter will discuss the legislation for the general financial system of the UAE. Here, we will analyze how the Central Bank of UAE deals with the financial institutions and governs banks. In addition, we will discuss the other legislations that legalize banking transactions. In the third chapter, this paper will deal how Islamic banks are governed in the UAE law by analyzing the special law legislating Islamic finance. In the last chapter, the paper will analyze the position of Islamic banking in the UAE banking system. 1. はじめに 本 稿 の 目 的 は アラブ 首 長 国 連 邦 (UAE)の 金 融 制 度 の 中 でも 銀 行 制 度 に 着 目 し イ 京 都 大 学 大 学 院 アジア アフリカ 地 域 研 究 研 究 科 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 DC 1

5 スラーム 銀 行 が 既 存 の 法 体 系 の 中 でどのように 位 置 づけられているのか 検 証 することであ る 特 に 条 文 や 規 制 監 督 制 度 などといった 法 的 側 面 に 焦 点 をあてる UAE はアブダビ ドバイ シャルジャ アジュマーン ウンム アル=カイワイン ラアス アル=ハイマ フジャイラの 7 つの 首 長 国 によって 構 成 される 各 首 長 国 は 独 立 した 管 轄 権 を 有 しており 7 つの 首 長 国 全 体 に 適 用 される 連 邦 法 と 各 首 長 国 が 個 別 に 制 定 し 首 長 国 内 にだけ 限 定 して 適 用 される 首 長 法 がある 本 稿 はその 中 でも UAE 国 内 の 金 融 市 場 を 包 括 的 に 捉 えるため に 連 邦 法 が 適 用 される 分 野 に 着 目 する UAEにおける 金 融 市 場 は 2000 年 代 以 降 急 速 に 発 展 し 他 の 湾 岸 諸 国 と 同 様 に 銀 行 業 が 金 融 市 場 の 中 心 的 産 業 として 位 置 づけられている 1 UAEの 銀 行 業 における 資 産 規 模 は 湾 岸 諸 国 の 中 で 最 も 大 きい 2 また イスラーム 法 との 整 合 性 が 求 められるイスラーム 金 融 の 商 業 実 践 が 1975 年 からドバイで 展 開 され 新 たな 金 融 市 場 として 台 頭 してきた しかし イス ラーム 金 融 はイスラーム 法 との 整 合 性 から 従 来 型 金 融 とはスキームが 異 なる そのため イスラーム 金 融 を 既 存 の 法 制 度 の 中 で 扱 うことは 場 合 によっては 違 法 行 為 にあたるこ とがある 具 体 的 には 従 来 型 金 融 の 規 制 監 督 を 前 提 とした 商 法 や 銀 行 法 などの 法 制 度 で は 銀 行 が 顧 客 のために 物 品 の 購 入 といった 売 買 行 為 をすることは 禁 じられている その ため イスラーム 金 融 の 資 金 調 達 手 段 であるムラーバハ 取 引 のスキームは 銀 行 の 禁 止 行 為 にあたる 売 買 取 引 に 類 似 しているため 既 存 の 法 制 度 だけでは 活 用 することが 困 難 であ る 3 以 上 のことを 受 けて 本 稿 は イスラーム 銀 行 が UAE の 金 融 制 度 においてどのように 位 置 づけられているのか 明 らかにするため UAE の 金 融 制 度 を 概 観 し その 中 におけるイス ラーム 銀 行 に 関 わる 制 度 的 枠 組 みを 示 す まず 第 2 節 では UAE の 金 融 機 関 が 法 的 にど のように 位 置 づけられているのかを 示 し UAE の 中 央 銀 行 による 金 融 監 督 制 度 を 考 察 する 続 く 第 3 節 では イスラーム 銀 行 を 含 めたイスラーム 金 融 の 市 場 規 模 を 示 し イスラーム 銀 行 の 法 的 な 位 置 づけといった 制 度 的 枠 組 みを 分 析 する 2. UAE における 銀 行 制 度 1) UAE の 中 央 銀 行 1973 年 にUAE 通 貨 庁 が 通 貨 の 統 一 を 目 的 に 設 立 されていたものの 中 央 銀 行 が 1980 年 に 1 UAE カタル クウェート サウディアラビア バハレーンやオマーンを 含 む 湾 岸 諸 国 の 経 済 産 業 において 金 融 市 場 は 石 油 市 場 と 比 較 して 小 さいものの 金 融 部 門 の 中 でも 銀 行 部 門 が 最 も 発 達 していることが 指 摘 されている[ 齋 藤 2009: 31-32] 2 Augustine, B.D. 2011(Oct 24). Growing in good and bad times, Gulf News より 3 ムラーバハは 車 や 不 動 産 購 入 の 際 に 商 品 の 売 買 契 約 で 利 用 されるイスラーム 金 融 取 引 である イスラーム 銀 行 が 売 り 手 と 買 い 手 の 仲 介 をすることから 従 来 型 金 融 のローン 契 約 における 銀 行 と 異 なる 役 割 を 担 う 従 来 型 金 融 では 銀 行 は 資 金 提 供 をするものの 顧 客 が 購 入 する 商 品 の 売 買 には 関 わらない しかし イスラーム 銀 行 では 顧 客 から 商 品 の 購 入 の 依 頼 を 受 け イスラーム 銀 行 が 売 り 手 から 商 品 を 購 入 し それを 買 い 手 に 事 前 に 決 定 したマ ークアップや 上 乗 せの 利 潤 を 附 した 金 額 で 顧 客 に 販 売 する 2

6 設 立 されるまで 実 質 的 な 金 融 政 策 は 各 首 長 国 が 個 別 に 対 応 していた 4 それまでは 中 央 銀 行 による 認 可 制 度 ではなく 首 長 国 の 首 長 による 承 認 によって 銀 行 業 をはじめとする 金 融 事 業 を 行 うことができた この 方 法 で 銀 行 業 を 開 始 した 顕 著 な 例 が ドバイ 国 民 銀 行 (National Bank of Dubai)である 年 連 邦 法 第 10 号 ( 以 下 中 央 銀 行 法 )が 制 定 され たことで 7 つの 首 長 国 全 体 の 金 融 政 策 や 通 貨 政 策 を 行 うUAE 中 央 銀 行 が 設 置 された これ により それまで 各 首 長 国 が 個 別 に 行 っていた 金 融 政 策 を 中 央 銀 行 が 統 一 して 行 うよう になった 以 下 では UAE 国 内 の 銀 行 制 度 を 把 握 するために 中 央 銀 行 の 組 織 構 造 をみる UAE 中 央 銀 行 は 金 融 機 関 として 認 可 している 8 つ 業 態 を 規 制 監 督 の 対 象 としている これらの 金 融 機 関 はイスラームの 金 融 機 関 も 含 まれている 中 央 銀 行 の 組 織 構 造 は 本 店 の 部 局 課 がそれぞれ 7 つの 局 7 つの 課 7 つのユニットとリスク 部 局 によって 構 成 されている 本 店 組 織 の 位 置 づけは 金 融 政 策 や 通 貨 政 策 など 全 体 的 な 政 策 に 携 わる 局 中 央 銀 行 内 部 及 び 渉 外 関 係 を 課 が 担 当 し 個 別 の 政 策 や 戦 略 を 扱 う ユニット に 分 かれている それぞれの 役 割 については 以 下 の 表 1~3 にまとめたとおりである 4 UAE 通 貨 局 は 1973 年 連 邦 法 第 2 号 を 法 的 根 拠 として 設 立 された 1971 年 に UAE が 建 国 されてから 当 時 統 一 された 通 貨 がなく バハレーンのディルハム カタルとドバイのリヤルが 混 在 して 使 用 されていた そのため UAE 通 貨 局 は 通 貨 の 統 一 を 使 命 とし 1 ディルハムにつき 1リヤル(カタルとドバイ 両 方 )または 10 ディルハムで 交 換 す ることを 主 な 役 割 であった その 後 IMF の 協 力 で 銀 行 業 の 統 計 などを 扱 うようになり 次 第 に 金 融 政 策 に 通 貨 局 が 関 わるようになるものの UAE 通 貨 局 はUAE 全 体 の 金 融 政 策 に 関 わる 権 限 がなかったため 通 貨 交 換 以 外 の 事 業 についてあまりすすめていなかったといわれている[CBUAEa] 5 ドバイ 国 民 銀 行 は 1960 年 までドバイで 英 国 人 などの 外 国 人 居 住 者 に 対 するサービスを 提 供 してきたグリンドレ ーズ 銀 行 とクウェート 国 民 銀 行 の 働 きかけで 設 立 された[Wilson 1983: 121] 3

7 表 1 中 央 銀 行 本 店 の 部 局 とその 役 割 部 局 の 名 称 役 割 銀 行 監 督 審 理 局 (Banking 地 方 銀 行 外 資 系 銀 行 の 支 店 と 代 理 店 両 替 商 金 融 Supervision and Examination 会 社 証 券 会 社 や 金 融 機 関 向 けのコンサルタント 会 社 Department, BSED) などを 含 んだ 金 融 機 関 の 健 全 性 について 監 督 する 役 割 を 持 つ BSED の 業 務 は 主 に 規 制 監 督 の 基 準 を 設 定 金 融 機 関 が 基 準 を 遵 守 しているか 監 督 している くわ えて BSED は 国 際 決 済 銀 行 (Bank for International Settlements, BIS)や 国 際 通 貨 基 金 (International Monetary Fund, IMF)などといった 国 際 的 な 規 制 監 督 機 関 との 連 携 を 取 っている 銀 行 業 務 局 (Banking Operations 銀 行 券 の 発 行 はこの 局 の 監 督 下 にある この 局 の 特 徴 Department) は 貨 幣 や 証 券 などの 発 行 に 伴 う 偽 造 防 止 技 術 の 向 上 とセキュリティ 確 保 に 努 めていることである また 様 々な 国 家 の 記 念 日 に 対 して 金 貨 や 銀 貨 の 記 念 貨 幣 も 発 行 し UAE における 財 務 の 調 達 状 況 と UAESWITCH ( 表 2にて 説 明 )の 監 督 を 行 う 調 査 統 計 局 (Research and Statistics Department, RSD) 通 貨 や 銀 行 に 関 わる 統 計 を 扱 う 部 局 で 中 央 銀 行 の 年 次 報 告 書 経 済 や 統 計 の 公 報 を 発 行 している 文 書 局 (Administrative Affairs 物 品 調 達 資 料 図 書 の 保 管 警 備 などを 行 う Department, AFD) 金 融 統 制 局 (Financial Control 中 央 銀 行 の 金 融 政 策 に 関 して 監 視 統 制 及 び 報 告 を 行 Department s) う 部 局 であり 監 査 部 門 財 務 オペレーション 部 門 と 経 営 情 報 部 門 の 3 つの 部 門 によって 構 成 されている 財 務 局 (Treasury Department, TD) 中 央 銀 行 準 備 金 の 調 整 を 行 う 部 局 であり 商 業 銀 行 へ の 支 払 準 備 金 貨 幣 の 流 通 インフレーション 対 策 連 邦 政 府 への 資 金 調 達 などを 担 っている 検 査 局 (Internal Audit Department, IAD) 中 央 銀 行 及 び 商 業 銀 行 の 会 計 監 査 情 報 システムのセ キュリティ 確 保 中 央 銀 行 が 各 機 関 が 法 令 や 規 則 に 違 反 していないか 監 督 などを 実 施 している また 各 月 ごとに 総 裁 に 会 計 監 査 の 結 果 を 報 告 することが 求 めら れている [ 出 典 ][CBUAEc]をもとに 筆 者 作 成 4

8 表 2 中 央 銀 行 本 店 の 課 とその 役 割 課 の 名 称 役 割 情 報 技 術 課 ( Information Technology Divisions) 人 事 課 (Personnel Division) 国 際 銀 行 課 (Correspondence Banking Division) 情 報 課 (Public Relations Division) 総 合 書 記 及 び 法 務 課 (General Secretariat and Legal Affairs Division) UAE SWITCH Division 総 裁 担 当 課 (Governor s Office Division) 中 央 銀 行 のマニュアル システムとこれらのオートメ ーションについての 研 究 オートメーションを 目 的 と したソフトウェアの 開 発 及 び 発 展 といった 情 報 システ ム 関 係 を 担 当 する 職 員 給 与 や 福 利 厚 生 人 事 制 度 の 整 備 新 人 研 修 など といった 人 材 開 発 に 携 わる コレスポンデントをはじめ 国 内 外 に 関 わる 金 融 分 析 を 行 い 国 際 的 な 信 用 リスクに 関 する 情 報 収 集 中 央 銀 行 が 扱 ってきた 国 際 的 に 展 開 する 銀 行 や 機 関 に 関 す る 資 料 収 集 を 行 っている 年 以 降 独 立 機 関 として 設 置 された 課 で 主 に 公 報 中 央 銀 行 に 関 わる 情 報 社 会 活 動 やスポーツ 大 会 の 指 揮 をとる 取 締 役 会 や 執 行 委 員 会 の 書 記 事 務 役 員 総 裁 や 中 央 銀 行 の 他 局 への 法 律 分 野 に 関 わる 助 言 を 行 う 中 央 銀 行 が 電 子 SWITCH 計 画 を 実 行 する 時 に 設 置 され た 総 裁 の 職 務 を 円 滑 に 行 うために 国 内 外 から 受 けた 投 書 への 返 信 の 英 訳 及 びアラビア 語 訳 アラブと 海 外 の 中 央 銀 行 が 関 わった 事 例 の 保 持 及 びこれらの 銀 行 に 関 わる 最 新 情 報 の 収 集 総 裁 のインタビューや 出 席 され る 会 合 などの 管 理 取 締 役 会 湾 岸 協 力 会 議 (GCC) 総 裁 会 議 アラブ 諸 国 の 総 裁 との 会 議 や IMF との 会 合 について 情 報 管 理 を 行 う [ 出 典 ][CBUAEc]をもとに 筆 者 作 成 6 コレスポンデントは 一 般 的 に 銀 行 が 海 外 で 事 業 を 拡 大 するにあたって 外 国 の 銀 行 と 提 携 し 業 務 上 の 便 宜 をは かる 仕 組 み 5

9 表 3 中 央 銀 行 本 店 のユニットとその 役 割 ユニットの 名 称 役 割 反 マネー ロンダリング 及 び 調 査 2001 年 の 国 連 安 全 保 障 理 事 会 決 議 1373 と IMF 執 行 部 機 関 ユニット(Anti-Money 決 議 144 号 を 実 行 するために 設 置 された 機 関 である Laundering and Suspicious Cases テロリストとの 関 係 が 疑 わしい 個 人 や 組 織 の 口 座 を 捜 Unit) 査 し 見 つけ 次 第 凍 結 することを 目 的 とする 金 融 機 関 の 国 際 的 な 連 携 を 掲 げたエグモント グループ (Egmont Group)に 2002 年 に 加 盟 した IT プロジェクト ユニット(IT 中 央 銀 行 戦 略 を 実 施 するときに 関 わってくる IT プロジ Projects Unit) ェクトを 担 当 する IT プロジェクトは 総 裁 が 中 心 とな った 最 高 幹 部 による IT 委 員 会 によって 導 かれ 金 融 取 引 の 利 便 化 を 目 的 とする 戦 略 ユニット(Strategy Unit) 中 央 銀 行 のプレゼンスを 良 くするために 中 央 銀 行 の 関 係 部 局 課 がプロジェクトに 連 携 して 取 組 むために 調 整 関 係 部 局 課 の 実 績 や 計 画 を 検 討 し 定 期 的 に 総 裁 へ 報 告 する また 総 理 大 臣 室 省 庁 連 邦 当 局 や 地 方 当 局 と 中 央 銀 行 の 連 携 を 調 整 する 立 法 開 発 ユニット(Legislative 経 済 金 融 や 銀 行 に 関 わる 法 律 の 再 審 理 及 び 更 新 の 提 Development Unit) 案 を 行 う 機 関 である 銀 行 業 及 び 通 貨 統 計 ユニット 銀 行 業 及 び 通 貨 に 関 わる 統 計 を 収 集 する 機 関 である (Banking and Monetary Statistics Unit) 金 融 安 定 ユニット(Financial 2008 年 に 設 立 された 部 署 で UAE 国 内 全 体 の 金 融 制 度 Stability Unit) に 焦 点 をあてて 金 融 リスクの 理 解 促 進 銀 行 業 や 通 貨 制 度 の 統 計 を 再 調 査 または 分 析 する また システ ミック リスクの 処 理 を 推 進 している 7 ベンチマーキング ユニット リスクの 低 い 債 権 や 理 想 の 利 回 り 曲 線 に 近 づくための (Benchmarking Unit) ベンチマークを 設 定 している [ 出 典 ][CBUAEc]をもとに 筆 者 作 成 7 システミック リスクとは 債 権 債 務 関 係 にある 金 融 機 関 が 支 払 不 能 やコンピューターシステムの 障 害 などによっ て 決 済 上 の 事 故 が 連 鎖 的 にほかの 金 融 機 関 に 波 及 し 決 済 システム 全 体 が 機 能 麻 痺 に 陥 るリスクを 総 称 してい う 6

10 本 店 組 織 には 更 に 近 年 の 金 融 政 策 を 施 行 する 目 的 で 新 たに 設 立 されたUAESWITCH 課 な ど 独 自 の 機 関 が 存 在 する UAESWITCH 課 は IT 技 術 を 取 り 入 れることで 金 融 取 引 をより 身 近 なものとする 電 子 SWITCH 計 画 を 推 進 することを 目 的 としている 8 リスク 部 局 は 1982 年 から 金 融 機 関 が 円 滑 に 事 業 を 行 うために 顧 客 の 情 報 を 金 融 機 関 全 体 が 共 有 できる 情 報 網 である リスク 局 商 業 信 用 システム(Risk Bureau Commercial Credit System) を 構 築 し 顧 客 の 返 済 状 況 をデーターベース 化 した 小 切 手 返 済 確 認 システム(Returned Cheque System) の 運 営 管 理 を 行 っている 2011 年 現 在 の 中 央 銀 行 はアブダビに 本 店 を 置 き ドバイ シャルジャ ラス アル=ハイ マ フジャイラ アルアインの 5 箇 所 で 支 店 を 配 置 している この 5 つの 支 店 は 主 に イ ンターバンクの 監 査 や 行 政 事 務 インターバンクの 調 整 役 を 担 っている 2) UAE の 金 融 機 関 UAE の 金 融 機 関 は 中 央 銀 行 商 業 銀 行 投 資 銀 行 証 券 会 社 金 融 機 関 のためのコン サルタント 会 社 両 替 商 金 融 会 社 金 融 及 び 通 貨 取 引 の 仲 介 企 業 代 理 店 等 からなる 中 央 銀 行 の 構 造 については 次 項 に 述 べるとしてここでは 中 央 銀 行 が 他 の 金 融 機 関 をどの ように 規 定 したのかについて 焦 点 を 絞 る 金 融 機 関 の 法 的 規 定 に 入 る 前 に 金 融 機 関 を 含 めたUAEで 商 取 引 を 認 められている 会 社 組 織 について 触 れる 1984 年 連 邦 法 第 8 号 ( 以 下 会 社 法 ) 第 5 条 において UAE 国 内 で 事 業 を 展 開 できる 会 社 の 定 義 として 7 つ 挙 げている この 7 つとは 合 名 会 社 (General Partnership Company) 株 式 有 限 責 任 会 社 (Partnership Limited by Shares Company) 有 限 責 任 会 社 (Limited Liability Company)と 株 式 会 社 (Public Joint Stock Company P J S C)の 他 に 会 社 設 立 に 当 たっての 構 成 の 違 いによって 区 別 される 単 純 合 資 会 社 (Simple Limited Partnership Company) 共 同 会 社 (Joint Participation Company)や 私 的 株 式 会 社 (Private Joint Stock Company)からなる 9 UAEの 金 融 機 関 のうち 銀 行 は これらの 中 でも 特 に 株 式 会 社 か 有 限 責 任 会 社 の 形 態 をとることが 一 般 的 である それぞれの 会 社 についての 設 立 要 件 は 表 4 のようになっている 8 電 子 SWITCH 計 画 は 現 金 の 引 出 残 高 照 会 や 販 売 時 点 情 報 管 理 システム(POS)のサービスを 提 供 するために ATM の 利 用 などで 金 融 取 引 の 電 子 化 促 進 を 目 的 として 1996 年 から 実 施 されている[CBUAEa] その 後 2005 年 に ATM の 設 置 数 を 第 一 四 半 期 には 1451 台 設 置 し 2010 年 の 第 四 四 半 期 には 3758 台 もの ATM を 設 置 した [CBUAEb] 9 各 会 社 の 設 立 に 必 要 な 資 産 規 模 や 役 員 の 構 成 などについての 詳 細 は[JETRO 2009]を 参 照 7

11 表 4 会 社 法 で 規 定 される 会 社 形 態 会 社 形 態 設 立 要 件 合 名 会 社 合 名 会 社 は 2 名 以 上 の 出 資 者 によって 構 成 される (23 条 ) 出 資 者 ( 及 び 社 員 )は UAE 国 民 でなければならない (25 条 ) 全 ての 出 資 者 ( 及 び 社 員 )は 会 社 の 責 任 を 連 帯 し 資 産 も 全 て 保 有 する いかなる 合 意 も 他 方 の 不 利 益 になってはならない (30 条 ) 単 純 合 資 会 社 単 純 合 資 会 社 は 1 名 以 上 の 会 社 資 産 全 体 に 責 任 を 持 つ 出 資 者 に 加 えて 会 社 の 債 務 に 対 して 出 資 した 分 の 責 任 を 負 う 匿 名 社 員 1 名 以 上 によって 構 成 される (47 条 ) 出 資 者 はすべて UAE 国 民 でなければならない (48 条 ) 共 同 会 社 共 同 会 社 は 2 名 以 上 の 出 資 者 もしくは 一 方 の 名 のもとで 行 う 事 業 において 生 じる 損 益 を 分 配 する 会 社 である (56 条 ) 共 同 会 社 は 社 債 や 流 通 証 券 を 発 行 することはできない (60 条 ) 株 式 会 社 資 産 が 有 価 証 券 によって 構 成 される 会 社 を 全 て 株 式 会 社 と し 出 資 者 は 出 資 した 割 合 に 合 わせて 責 任 を 負 う (64 条 ) 私 的 株 式 会 社 私 的 株 式 会 社 は 3 名 以 上 の 出 資 者 により 設 立 され 株 式 は 公 開 発 行 されず 200 万 ディルハム 以 上 の 資 産 によって 構 成 され る ( 215 条 ) 有 限 責 任 会 社 有 限 責 任 会 社 とは 出 資 者 が 50 名 から 2 名 から 構 成 される 会 社 である 各 出 資 者 は 出 資 配 分 に 応 じて 経 営 に 責 任 を 持 ち 出 資 者 の 配 分 は 流 通 証 券 としての 形 式 をとらない (218 条 ) 10 株 式 有 限 会 社 株 式 有 限 会 社 は 会 社 の 経 営 に 関 わる 資 産 全 てに 対 して 責 任 を 持 つ 連 帯 債 務 者 と 出 資 割 合 に 応 じた 株 式 の 保 有 者 によって 構 成 される (256 条 ) [ 出 典 ] 会 社 法 及 び[JETRO 2009]をもとに 筆 者 作 成 会 社 法 第 22 条 では 会 社 設 立 にあたって 資 産 の 51% 以 上 は UAE 国 民 が 保 有 することを 明 記 しており 出 資 者 全 員 が UAE 国 民 であることを 規 定 された 合 名 会 社 と 単 純 合 資 会 社 以 外 の 会 社 はこの 規 定 に 当 てはまる この 他 UAE 国 内 で 営 業 する 国 内 銀 行 と 外 国 銀 行 を 規 定 する 法 的 枠 組 みとして 中 央 銀 行 法 と 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 がある 中 央 銀 行 法 は 法 的 拘 束 力 があり 中 央 銀 行 が 自 身 を 含 む 金 融 機 関 をどのように 規 制 監 督 すべきか 規 定 されて 10 これらの 会 社 形 態 のうち ドバイ 金 融 センター 以 外 で 外 資 系 企 業 が 事 業 を 展 開 するには 会 社 設 立 に UAE 国 民 が 参 加 することが 条 件 となっていることからも 有 限 責 任 会 社 の 形 態 をとることが 一 般 的 となっている[JETRO 2009] 8

12 いる 以 下 では 中 央 銀 行 の 管 理 下 でどのような 金 融 機 関 が 営 業 されているのか 会 社 法 中 央 銀 行 法 及 び 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 の 規 定 をもとに 検 証 する 中 央 銀 行 法 第 5 条 において 中 央 銀 行 の 設 立 目 的 が 通 貨 制 度 や 金 融 制 度 に 関 わる 政 策 を 指 導 し 国 家 の 経 済 を 支 え 通 貨 の 安 定 を 維 持 するために 国 家 政 策 に 従 いながら これ らの 政 策 の 実 行 を 監 督 する と 規 定 され 中 央 銀 行 が UAE 国 内 の 金 融 を 規 制 監 督 すること が 明 記 されている 中 央 銀 行 法 において 商 業 銀 行 に 関 する 規 定 は 第 78 条 から 112 条 に かけて 明 記 されている 条 項 の 内 容 は 以 下 の 表 4 のようになっている 表 5 商 業 銀 行 に 関 する 規 定 条 項 内 容 第 78 条 ~ 第 82 条 商 業 銀 行 の 設 立 要 件 第 83 条 ~ 第 89 条 営 業 の 登 記 と 営 業 資 格 剥 奪 について 第 90 条 ~ 第 93 条 商 業 銀 行 業 務 上 の 禁 止 行 為 第 94 条 ~ 第 100 条 中 央 銀 行 による 商 業 銀 行 の 監 督 制 度 第 101 条 ~ 第 107 条 中 央 銀 行 への 業 務 報 告 第 108 条 ~ 第 111 条 銀 行 の 流 動 性 確 保 第 112 条 中 央 銀 行 への 業 務 報 告 がなされなかった 際 の 罰 則 [ 出 典 ]Union Law No (10) of 1980 Concerning the Central Bank, the Monetary System and Organization of Banking をもとに 筆 者 作 成 中 央 銀 行 法 第 78 条 第 1 項 で 商 業 銀 行 は 顧 客 から 通 知 預 金 定 期 預 金 もしくは 債 券 や 預 金 証 書 といった 形 式 で 要 求 される 資 金 を 一 部 ないし 全 てを 扱 う 機 関 であり 小 切 手 の 発 行 公 社 債 や 民 間 債 への 投 資 外 国 為 替 や 貴 金 属 の 取 引 その 他 の 法 令 や 銀 行 業 の 慣 習 として 行 われる 取 引 を 運 営 する 機 関 と 定 義 されている エミレーツ 銀 行 協 会 (Emirates Banks Association)の 統 計 によると UAEで 事 業 を 展 開 している 51 行 の 商 業 銀 行 のうち およそ 23 行 がUAEの 現 地 資 本 で 設 立 されたものであり 28 行 は 外 資 系 の 商 業 銀 行 となっている [EBAa 2010: 25] 表 5 において UAEの 民 間 資 本 及 び 政 府 資 本 を 含 む 現 地 資 本 によって 設 立 された 銀 行 と 外 資 系 銀 行 を 分 類 した 銀 行 設 立 にあたって 現 地 資 本 の 銀 行 部 門 が 政 府 資 本 と 民 間 資 本 のいずれによって 担 われてきたか[ 長 岡 2010]にて 論 じられているが ここでは UAE の 銀 行 として 政 府 資 本 と 民 間 資 本 のいずれも 含 めた 現 地 資 本 で 設 立 さ れた 銀 行 として 位 置 づけ 外 国 で 登 記 され 外 資 で 設 立 された 銀 行 を 外 資 系 銀 行 に 分 類 した 9

13 表 6 UAE の 商 業 銀 行 現 地 資 本 によって 設 立 された 銀 行 外 資 系 銀 行 Abu Dhabi Commercial Bank Al-Ahli Bank of Kuwait Abu Dhabi Islamic Bank Al Khalaiji-France Ajman Bank Arab Bank Al Hilal Bank Arab African International Bank Arab Bank for Investment & Foreign Trade (Al Banque Misr Masraf) Barclays Bank Bank of Sharjah Bank Saderat Iran Commercial Bank of Dubai Bank of Baroda Crédit Agricole-Corporate and Investment Bank Bank Melli Iran Dubai Islamic Bank Blom Bank France S.A Dubai Bank BNP Paribas Emirates Islamic Bank Commercial Bank International Emirates NBD Bank Citibank N.A. First Gulf Bank Doha Bank Invest Bank El Nilein Bank Mashreq Bank Habib Bank Limited National Bank of Umm-Al Qaiwain Habib Bank AG Zurich National Bank of Abu Dhabi HSBC Bank Middle East Limited National Bank of Fujairah Janata Bank Limited Noor Islamic Bank Lloyds TSB Bank Sharjah Islamic Bank National Bank of Oman RAKBANK(The National Bank of Ras National Bank of Kuwait Al-Khaimah) National Bank of Bahrain United Arab Bank Rafidain Bank Union National Bank Samba Financial Group Standard Chartered Bank The Royal Bank of Scotland N.V. United Bank Limited (アルファベット 順 ) [ 出 典 ] 中 央 銀 行 及 び[EBAa 2010]をもとに 筆 者 作 成 投 資 銀 行 に 関 する 規 定 は 1988 年 に 出 された 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.21/2/88 によ って 設 けられている この 決 議 の 第 1 条 において 中 央 銀 行 が 定 義 する 投 資 銀 行 は 一 般 的 にホールセールと 呼 ばれ 証 券 業 務 投 資 事 業 や 中 長 期 のローンを 扱 う 機 関 やのこと である 同 様 に 中 央 銀 行 法 第 3 章 第 113 条 第 1 項 において 投 資 銀 行 とは 一 般 的 にイン ベストメント バンカー 開 発 銀 行 中 長 期 の 資 金 を 扱 う 銀 行 と 呼 ばれるもので 中 央 銀 行 法 第 78 条 の 商 業 銀 行 に 関 する 規 定 と 区 別 され 2 年 以 内 に 取 引 される 預 金 を 除 くもの と 規 定 されている 同 条 項 の 第 2 項 と 中 央 銀 行 理 事 会 決 議 の 第 2 条 では 投 資 銀 行 の 役 割 は 新 たな 事 業 を 促 進 し 会 社 の 資 産 や 中 長 期 のローンを 提 供 することで 既 存 の 事 業 へ の 金 融 取 引 の 発 展 に 寄 与 することであると 規 定 されている 投 資 銀 行 は 2009 年 12 月 末 時 点 で アラブ エミレーツ 投 資 銀 行 と HSBC ファイナンシャル サービスの 2 行 が UAE で 営 業 していた 証 券 会 社 は 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.168/8/94 によって 証 券 会 社 に 関 連 した 基 準 や 投 資 家 保 護 を 国 際 的 なスタンダードに 適 合 させるための 規 定 を 設 けた 証 券 会 社 の 業 務 10

14 として 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.168/8/94 の 第 2 条 において 以 下 の 5 つが 列 挙 されている 1. 投 資 用 の 口 座 開 設 及 び 有 価 証 券 の 運 用 を 個 人 又 は 法 人 の 依 頼 で 行 う 2. 投 資 のためのプロジェクト 配 当 額 のマーケティングや 株 式 会 社 の 配 当 についての 分 析 を 行 う 3. 投 資 信 託 基 金 の 立 上 及 び 運 用 を 行 う 4. 投 資 基 金 の 立 上 及 び 運 用 信 託 の 受 託 者 として 委 託 者 から 利 益 の 運 用 を 行 う 5. 会 社 の 資 産 やシンジケートローンの 引 受 証 券 会 社 の 設 立 は 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.168/8/94 の 第 8 条 において 最 低 2500 万 デ ィルハムの 資 産 を 有 した 法 人 格 であることが 求 められている ここでいう 法 人 格 は 会 社 法 に 規 定 してある 共 同 会 社 と 同 等 に 扱 うこととなっている 共 同 会 社 を 含 め 詳 細 は 後 述 す るが 証 券 会 社 の 会 社 形 態 としては 共 同 会 社 の 他 に 会 社 法 に 定 められている 有 限 責 任 会 社 や 株 式 会 社 の 形 態 を 取 る 会 社 などさまざまである 金 融 機 関 向 けコンサルティング 会 社 は 証 券 会 社 と 同 じ 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.164/8/94 おいて 定 義 されている 金 融 機 関 向 けコンサルティング 会 社 は 金 融 に 関 す る 事 業 の 分 析 事 業 戦 略 の 提 示 などといったサービスを 提 供 する 機 関 であり 金 融 取 引 に 関 わる 情 報 提 供 を 主 に 行 うため 直 接 金 融 取 引 を 行 う 機 関 ではない 金 融 機 関 向 けコンサ ルティング 会 社 の 設 立 要 件 は UAE 国 民 が 個 人 で 立 ち 上 げるか 会 社 法 に 規 定 してある 会 社 形 態 の 要 件 を 満 たすもので 有 限 責 任 会 社 の 形 態 を 選 択 した 場 合 は 5 億 ディルハムの 資 本 を 有 すれば 可 能 であると 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.164/8/94 で 示 されている 中 央 銀 行 法 には 個 別 に 金 融 機 関 向 けコンサルティング 会 社 について 明 記 した 条 項 はない しかし そ の 他 の 金 融 機 関 と 同 じく 中 央 銀 行 法 第 114 条 から 第 119 条 の 金 融 機 関 に 分 類 されると 考 え られる 両 替 商 は 交 易 や 様 々な 国 々からの 労 働 者 を 抱 える UAE にとって 欠 かせない 存 在 で ある 外 国 人 労 働 者 が 増 加 し 海 外 への 送 金 などの 需 要 が 高 まり 2010 年 12 月 末 時 点 で 114 もの 両 替 商 が 中 央 銀 行 に 届 け 出 ている 拡 大 する 両 替 商 ビジネスを 規 制 するために 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.123/7/1992 が 発 行 され この 決 議 は 両 替 商 の 新 たな 規 制 監 督 制 度 とし て 位 置 づけられている 中 央 銀 行 法 には 両 替 商 に 関 する 規 定 はないが 証 券 会 社 と 同 様 に 中 央 銀 行 法 における 金 融 機 関 として 扱 われると 考 えられる 中 央 銀 行 の 2010 年 度 の 報 告 書 によると 2010 年 末 で 114 店 もの 両 替 商 が UAE 国 内 で 事 業 を 展 開 し それらのもとに 562 店 の 支 店 が UAE 国 内 で 営 業 している 金 融 会 社 は 顧 客 の 依 頼 により 金 融 取 引 を 代 行 する 機 関 である 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.58/3/96 及 び 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.165/6/2004 によって 従 来 型 金 融 とシャリー アに 適 合 した 金 融 会 社 の 双 方 が 中 央 銀 行 の 管 轄 下 にあることが 明 記 された 金 融 会 社 を 明 記 した 中 央 銀 行 法 の 規 定 はないが 証 券 会 社 両 替 商 と 同 様 の 金 融 機 関 として 扱 われるこ とが 考 えられる 金 融 及 び 通 貨 取 引 の 仲 介 業 者 は 外 国 為 替 債 権 取 引 の 売 買 や 通 貨 市 場 における 取 11

15 引 を 仲 介 する 機 関 である 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.126/5/95 によって 仲 介 業 者 には UAE 国 民 によって 設 立 され 資 金 の 60%をこの 個 人 が 所 有 することが 設 立 要 件 として 決 議 に 規 定 されている 中 央 銀 行 法 第 120 条 においても この 決 議 と 同 様 に 金 融 及 び 通 貨 取 引 の 仲 介 業 者 は 金 融 機 関 とは 異 なる 個 人 もしくは 法 人 であり 以 下 の 要 件 のいずれかを 満 た すものと 規 定 されている 1. 現 金 小 切 手 全 ての 貨 幣 及 びトラベラーズ チェックなどによる 外 国 為 替 のディ ーラーを 専 門 として 行 うもの 2. 株 式 仲 買 人 や 代 理 人 として 国 内 外 の 為 替 や 債 券 の 取 引 を 国 内 の 事 業 者 もしくは 外 国 機 関 の 代 理 として 行 うもの 最 後 に 外 国 銀 行 の 代 理 店 は 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 No.57/3/1996 及 び 中 央 銀 行 法 第 122 条 において UAE 国 外 で 登 記 された 金 融 機 関 を 代 理 する 機 関 で UAE の 国 内 法 によって ライセンスを 獲 得 したものを 指 す 2010 年 12 月 で 外 国 銀 行 の 代 理 店 は 102 店 に 達 した 外 国 銀 行 の 代 理 店 が ドバイ 国 際 金 融 センター(Dubai International Financial Centre)での 運 営 を 行 う 場 合 は ほとんど 制 限 がないが UAE 国 内 での 運 営 を 行 う 場 合 は 会 社 の 形 態 に 制 限 がある したがって 外 国 銀 行 の 支 店 や 代 理 店 は 有 限 責 任 会 社 として 位 置 づけられている 住 宅 金 融 組 合 や 保 険 会 社 などといった 上 記 にある 8 つの 業 態 以 外 の 金 融 機 関 は 中 央 銀 行 の 管 轄 下 には 入 らない 12 一 般 的 に 株 式 会 社 や 有 限 責 任 会 社 などであれば 現 地 資 本 を 51% 以 上 必 要 としていることから 外 国 の 保 険 会 社 がUAE 国 内 で 事 業 を 展 開 するには 現 地 と のパートナーシップ 契 約 を 結 ぶか 委 託 する 必 要 がある このように UAEでは 国 内 企 業 と 外 資 系 企 業 が 営 業 するにあたって 会 社 形 態 が 明 確 に 区 分 されている また UAE 国 内 の 銀 行 業 をめぐる 法 的 枠 組 みは 中 央 銀 行 法 だけではない 中 央 銀 行 法 にくわえて 1993 年 連 邦 法 第 18 号 の 商 取 引 法 においても 第 3 編 の 第 371 条 から 第 477 条 に おいて 銀 行 業 に 関 する 規 定 がなされている 13 この 商 取 引 法 第 3 編 は 6 部 からなり 銀 行 業 に 関 する 規 定 の 構 成 は 以 下 の 表 7 に 示 したようになる 12 中 央 銀 行 の 管 轄 下 に 入 らない 金 融 機 関 として 興 業 銀 行 や 住 宅 金 融 組 合 といった 特 別 な 金 融 機 関 アブダビ 投 資 庁 のような 行 政 の 投 資 機 関 アブダビ 開 発 基 金 などの 開 発 機 関 なども 含 まれる これらの 機 関 は 各 首 長 国 が 個 別 に 管 理 しているため 連 邦 全 体 の 金 融 通 貨 政 策 に 携 わる 中 央 銀 行 の 管 轄 から 外 れることとなる たとえば ア ブダビ 開 発 基 金 は 1971 年 にアブダビ 政 府 によって アブダビと 結 び 付 きのある 国 家 を 経 済 的 に 支 援 する 機 関 とし て 設 立 された このように 特 定 の 首 長 国 の 公 益 に 関 わる 金 融 機 関 は 中 央 銀 行 の 管 轄 から 外 れる 13 商 取 引 法 は 1985 年 連 邦 法 5 号 によって 制 定 され 1993 年 に 改 正 された 12

16 表 7 商 取 引 法 第 3 編 の 構 成 第 3 編 銀 行 業 ( 第 1 部 ) 第 1 章 銀 行 の 預 金 ( 第 371 条 ~ 第 379 条 ) 第 2 章 銀 行 取 引 ( 第 380 条 ~ 第 389 条 ) ( 第 2 部 ) ( 第 390 条 ~ 第 408 条 ) 当 座 預 金 ( 第 3 部 ) 銀 行 信 用 第 1 章 銀 行 ローン ( 第 409 条 ~ 第 410 条 ) 第 2 章 銀 行 保 証 状 ( 第 411 条 ~ 第 419 条 ) 第 3 章 口 座 の 開 設 ( 第 420 条 ~ 第 427 条 ) 第 4 章 荷 為 替 信 用 状 ( 第 428 条 ~439 条 ) ( 第 4 部 ) コマーシャル ペーパー(CP) 第 1 章 割 引 ( 第 440 条 ~ 第 443 条 ) 第 2 章 引 受 手 形 ( 第 444 条 ~ 第 445 条 ) 第 3 章 CP の 委 任 ( 第 446 条 ~ 第 449 条 ) ( 第 5 部 ) 金 融 商 品 取 引 第 1 章 不 動 産 金 融 商 品 を 裏 づけとした 金 融 商 品 ( 第 450 条 ~ 第 457 条 ) 第 2 章 金 融 商 品 の 預 入 ( 第 458 条 ~ 第 466 条 ) ( 第 6 部 ) ( 第 467 条 ~ 第 477 条 ) 保 護 預 り [ 出 典 ]Federal Law No (18) of 1993 Issuing the Commercial Transaction Law をもとに 筆 者 作 成 なお 商 取 引 法 第 3 編 の 第 4 部 で 明 記 されているコマーシャル ペーパー(CP)に 関 す る 規 定 は 商 取 引 法 第 4 編 において 制 定 されている この 第 4 編 では 為 替 手 形 の 振 出 譲 渡 支 払 約 束 引 受 支 払 期 日 などに 関 する 規 定 がなされている 13

17 3. UAE のイスラーム 金 融 1) UAE におけるイスラーム 金 融 の 沿 革 UAE では 2010 年 の 時 点 で 以 下 の 表 7 に 示 してある 8 行 のイスラーム 銀 行 が 営 業 してい る 設 立 当 初 からイスラーム 銀 行 であったものから 従 来 型 銀 行 から 転 向 したものもある 表 8 UAE で 営 業 しているイスラーム 銀 行 設 立 年 銀 行 名 1975 年 ドバイ イスラーム 銀 行 (Dubai Islamic Bank) 1997 年 アブダビ イスラーム 銀 行 (Abu Dhabi Islamic Bank) 2002 年 シャルジャ イスラーム 銀 行 (Sharjah Islamic Bank) 年 エミレーツ イスラーム 銀 行 (Emirates Islamic Bank) 年 ドバイ 銀 行 (Dubai Bank) 年 ヌール イスラーム 銀 行 (Noor Islamic Bank) 2008 年 アル=ヒラール 銀 行 (Al Hilal Bank) 2008 年 アジュマーン 銀 行 (Ajman Bank) [ 出 典 ] 各 銀 行 の HP より 筆 者 作 成 世 界 で 最 初 のイスラーム 銀 行 であるドバイ イスラーム 銀 行 は 1975 年 にドバイ 首 長 令 に よって 設 立 が 許 可 され 先 述 したエミレーツ NBD 銀 行 と 同 様 に 1984 年 の 会 社 法 によって 株 式 会 社 として 位 置 づけられている 2010 年 におけるイスラーム 銀 行 資 産 は 2,620 億 ディ ルハム(ドバイ 銀 行 の 資 産 統 計 は 含 まれない) 近 くあり UAE の 全 ての 銀 行 資 産 のおよそ 15%を 占 める[EBAb 2010] イスラーム 銀 行 以 外 の 金 融 機 関 については 2010 年 時 点 で イ スラーム 投 資 会 社 が 10 社 イスラーム 金 融 の 保 険 であるタカフルを 扱 う 会 社 が 10 社 とな っている[CIBAFI 2010: 5] 2) イスラーム 銀 行 の 制 度 的 枠 組 み イスラーム 金 融 では 利 子 を 禁 止 しており 従 来 型 金 融 では 利 子 の 運 用 が 活 発 になされて いることから UAEの 金 融 制 度 において 利 子 がどのように 扱 われているのか 触 れておく そもそも 1985 年 連 邦 法 第 5 号 ( 旧 商 取 引 法 )の 第 714 条 によって 利 子 が 使 われた 取 引 は 無 効 であることが 示 されていた ところが この 旧 商 取 引 法 の 改 正 法 である 1987 年 連 邦 法 第 1 号 によって 利 子 の 生 じる 商 取 引 は 旧 商 取 引 法 の 適 用 除 外 が 規 定 され 最 終 的 に 1992 年 連 邦 法 第 11 号 ( 民 事 手 続 法 )によって 一 般 的 に 利 子 を 禁 じた 全 ての 法 律 の 効 果 を 消 滅 年 に National Bank of Sharjah として 設 立 し 2002 年 にイスラーム 銀 行 へ 業 態 転 換 した 年 から 従 来 型 銀 行 であるエミレーツ NBD 銀 行 のイスラーム 銀 行 部 門 として 設 立 された 年 に 従 来 型 銀 行 として 設 立 され 2007 年 にイスラーム 銀 行 へ 業 態 転 向 した 2011 年 10 月 11 日 付 けの [GN]にてエミレーツ NBD 銀 行 に 買 収 されることが 報 道 された 14

18 させ 実 質 的 に 利 子 は 合 法 とされている[Hasan 2010: 91] 17 くわえて 1993 年 の 商 取 引 法 において 利 子 を 運 用 することが 明 記 されている ゆえに UAE 金 融 制 度 において 利 子 の 運 用 は 合 法 であることがわかる このことから UAE 金 融 制 度 が 従 来 型 金 融 を 前 提 とし た 法 的 枠 組 みを 有 していることがうかがえる したがって 従 来 型 金 融 を 前 提 とした 法 的 枠 組 みを 持 つ 金 融 制 度 とイスラーム 金 融 の 法 的 枠 組 みを 差 異 化 する 金 融 制 度 を 知 る 必 要 が ある 現 在 イスラーム 金 融 機 関 を 特 別 に 監 督 する 金 融 制 度 は 確 立 されていない 全 てのイス ラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 の 監 督 制 度 は 従 来 型 金 融 と 同 じく 中 央 銀 行 の 監 督 下 にある UAEで 登 記 された 8 行 のイスラーム 銀 行 は 全 て 商 業 銀 行 として 業 務 分 野 規 制 の 対 象 とされており 他 のイスラーム 金 融 機 関 も 従 来 型 金 融 機 関 と 同 列 に 扱 われている シ ャリーアを 遵 守 するイスラーム 銀 行 と 従 来 型 金 融 を 区 別 するためにイスラーム 金 融 法 が 発 行 されたが 施 行 されていないのが 現 状 である する 規 定 を 設 けた 旧 商 取 引 法 (1985 年 連 邦 法 第 5 号 )が 制 定 された 直 後 にイスラーム 金 融 法 (1985 年 連 邦 法 第 6 号 )が 制 定 された このことから イスラーム 金 融 がUAEの 金 融 制 度 においてどのように 差 異 化 されているのか 把 握 することができると 考 えられる したが って UAE 政 府 がイスラーム 銀 行 を 従 来 型 金 融 とどのように 区 別 しているのかをみるため にも イスラーム 金 融 法 の 構 成 を 考 察 する 第 1 条 ではイスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 は イスラーム 法 との 適 合 性 がある 経 営 を 行 うことを 会 社 の 定 款 に 明 記 することが 求 められている 実 際 定 款 だけでなく イスラーム 法 との 適 合 性 をもたせるために 各 銀 行 が 設 置 しているシャリーア 諮 問 委 員 会 の 判 断 によってイスラーム 法 との 適 合 性 を 判 断 している くわえて 第 2 条 において 以 下 の 4 項 が 規 定 されている 1.イスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 は UAE に 設 立 され UAE 国 内 法 の 管 轄 下 で 運 営 すべきである 2.これらの 銀 行 機 関 及 び 会 社 は この 法 律 に 記 載 されていない 規 定 について 1980 年 連 邦 法 第 10 号 ( 中 央 銀 行 法 )の 規 定 及 び 1984 年 連 邦 法 第 8 号 ( 会 社 法 )も 遡 及 的 に 適 用 され その 他 の 設 立 法 規 制 や 普 及 している 行 為 に 関 しても 同 様 に 適 用 すべきである 3.これらの 銀 行 機 関 及 び 会 社 は 株 式 会 社 として 組 織 され 先 にも 述 べているよ うに 1984 年 連 邦 法 第 8 号 ( 会 社 法 )の 規 定 にしたがって 設 立 されるものとする これらの 銀 行 機 関 及 び 会 社 は 1980 年 連 邦 法 第 1 号 ( 産 業 関 係 法 )の 規 定 にした がって 中 央 銀 行 の 認 可 監 督 及 び 検 査 の 対 象 となり これらの 規 定 に 反 しない ことが 求 められる 18 しかし 銀 行 業 の 取 引 を 含 む 商 取 引 に 関 17 ただし 遡 及 的 にこの 法 律 は 適 用 されることはない 実 際 アブダビ 最 高 裁 では 1970 年 に 制 定 された 首 長 法 を 根 拠 として 利 子 を 付 与 する 契 約 は 無 効 であるという 判 決 が 出 された[Tamimi 2000] 18 筆 者 が 2011 年 6 月 ~7 月 に 行 った 臨 地 調 査 によって イスラーム 金 融 法 にあたる 1985 年 連 邦 法 第 6 号 が UAE の 大 統 領 によって 審 理 されたものの 内 閣 によって 承 認 されていない 実 態 が 明 らかとなった 15

19 4. 設 立 に 関 わる 規 定 を 除 いて 先 の 事 項 で 定 められた 条 項 は 外 資 系 イスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 の 本 店 及 び 全 ての 支 店 や 代 理 店 に 対 して 適 用 される したがって イスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 は イスラーム 金 融 法 に 規 定 され ていない 条 項 に 限 り 中 央 銀 行 法 と 会 社 法 をはじめとする 既 存 の 法 律 が 適 用 されると 明 記 している つまり イスラーム 金 融 法 で 具 体 的 にどの 条 項 が 適 用 除 外 となるか 明 記 され それ 以 外 の 事 項 に 関 しては シャリーアと 抵 触 することがない 限 りにおいて 既 存 の 法 律 を 適 用 する 構 造 となっている 実 際 ドバイ イスラーム 銀 行 をはじめとするイスラーム 銀 行 は 会 社 法 上 の 株 式 会 社 の 形 態 を 採 用 し 1980 年 の 中 央 銀 行 法 の 規 定 に 則 して 中 央 銀 行 への 業 務 報 告 会 計 監 査 を 受 けるなどして 管 轄 下 にある また 外 国 で 登 記 されたイス ラーム 金 融 機 関 は 設 立 に 関 する 規 定 以 外 は UAE の 国 内 法 に 従 うことも 明 記 されている 第 3 条 の 第 1 項 では イスラーム 銀 行 は 銀 行 業 商 業 金 融 業 投 資 といったサービス や 事 業 の 全 て もしくは 一 部 を 行 う 権 利 を 持 っている と 明 記 されている また イス ラーム 銀 行 は 従 来 型 銀 行 が 行 っている 全 てのサービスや 事 業 にくわえて 1980 年 連 邦 法 第 10 号 ( 中 央 銀 行 法 )の 条 項 に 規 定 されているものを 行 う 権 利 を 持 つことも 規 定 されている 同 条 項 の 2 項 では イスラーム 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 は 貸 付 信 用 貸 付 やその 他 の 金 融 取 引 を 実 行 する 権 利 を 持 つ またこれらの 機 関 はイスラームのシャリーア 法 の 規 定 にしたが って 既 存 もしくは 展 開 中 の 事 業 に 参 加 し 移 動 可 能 な 自 己 資 金 による 投 資 や 投 資 を 目 的 として 預 金 を 受 け 取 ることができる と 規 定 している 第 4 条 では 中 央 銀 行 法 の 第 90(a) (b)と 第 96 条 (e)をイスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 に 加 え これと 同 様 の 事 業 を 展 開 する 外 資 系 の 機 関 に 対 して 適 用 除 外 するこ とが 明 記 されている 中 央 銀 行 法 第 90(a) (b)は 金 融 機 関 が 物 品 の 売 買 に 携 わることを 禁 じており 第 96 条 (e)は 銀 行 の 利 子 について 規 定 している しかし イスラーム 金 融 のスキームでは ムラーバハのように 銀 行 が 顧 客 に 代 わって 商 品 を 購 入 し それを 顧 客 に 転 売 するといった 一 種 の 売 買 が 行 われる そのため このような 適 用 除 外 の 措 置 が 明 記 されたことが 考 えられる また イスラーム 法 では 利 子 は 禁 じられているため 中 央 銀 行 法 第 96 条 (e)は 適 用 除 外 となったことがわかる 第 5 条 では シャリーア 高 等 機 関 (High Shari a Authority)を 司 法 省 の 管 轄 下 に 設 置 し イスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 で 金 融 商 品 とシャリーアの 適 合 性 を 判 断 するシ ャリーア 諮 問 委 員 会 を 統 括 することを 規 定 している 第 6 条 では 各 イスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 の 各 条 項 及 び 定 款 は 明 確 に 自 らの 取 引 や 実 践 がイスラームのシャリーア 法 の 原 理 や 規 定 と 適 合 性 を 判 断 するシャリーア 諮 問 委 員 会 は 最 低 3 名 によって 構 成 されることを 規 定 すべきである これらの 機 関 (の 設 立 )に 関 わる 会 社 の 各 条 項 には この 諮 問 委 員 会 が 構 成 される 方 法 この 諮 問 委 員 会 がど の 任 務 を 果 たし その 他 に 委 託 する 方 法 について 決 定 すべきである と 明 記 されている またシャリーア 諮 問 委 員 会 の 構 成 員 の 名 前 を 事 前 に 第 5 条 に 規 定 しているシャリーア 高 等 機 関 に 報 告 することとなっている なお UAE で 営 業 しているイスラーム 銀 行 には 必 ずシ 16

20 ャリーア 諮 問 委 員 会 が 設 置 され 運 営 されている 第 7 条 では イスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 が 1976 年 連 邦 法 7 号 の 規 定 によ って 会 計 検 査 院 (State Audit Bureau)に 従 う 場 合 会 計 検 査 院 の 任 務 は 事 後 監 査 のみに 限 定 されるべきである 会 計 検 査 院 はこれらの(イスラーム 金 融 ) 機 関 が 行 う 業 務 またはこ れらの(イスラーム 金 融 ) 機 関 が 実 施 する 方 策 について 干 渉 することは 許 されない と 規 定 している したがって 従 来 型 金 融 と 同 じ 枠 組 みで 会 計 監 査 が 行 われていることがうか がえる 第 8 条 では この 法 律 が 施 行 された 時 点 で 存 在 するイスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 外 国 のイスラーム 銀 行 金 融 機 関 及 び 投 資 会 社 の 支 店 や 事 務 所 も 含 めた 機 関 は こ の 法 律 が 施 行 された 日 から 一 年 以 内 に 自 らの 身 分 をこの 規 定 に 一 致 させること と 明 記 し ている 第 9 条 は UAE 国 内 の 大 臣 や 行 政 機 関 は 各 自 の 管 轄 権 においてこの 規 定 を 履 行 するこ と 第 10 条 は この 法 律 は 内 閣 府 によって 発 行 され 発 行 された 日 から 効 力 を 発 するも のとする という 規 定 されており イスラーム 金 融 法 が 施 行 し 効 力 を 持 つには 内 閣 府 によ る 承 認 が 必 要 である イスラーム 金 融 法 の 条 項 は 以 上 の 10 条 によって 構 成 されている このイスラーム 金 融 法 はまだ 法 的 効 力 を 有 していないものの 近 年 中 央 銀 行 によってイ スラーム 銀 行 に 関 する 政 策 を 積 極 的 に 進 めるようになっている たとえば 2010 年 11 月 に 中 央 銀 行 が 主 導 で イスラーム 銀 行 間 の 流 動 性 確 保 のためにイスラーム 預 金 証 明 書 の 扱 い 行 った 19 また イスラーム 金 融 に 関 する 講 習 を 政 府 関 係 者 や 銀 行 員 を 対 象 に 開 くなどして いる まとめ 本 稿 は UAE 国 内 の 銀 行 制 度 に 焦 点 をあて イスラーム 銀 行 が 既 存 の 法 体 系 においてどの ように 位 置 づけられているのかイスラーム 金 融 法 をもとに 考 察 した UAE 中 央 銀 行 による 規 制 監 督 制 度 は 会 社 法 中 央 銀 行 法 や 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 などによって 法 的 枠 組 みが 構 築 されている この 法 的 枠 組 みの 中 で UAE 国 内 のイスラーム 銀 行 は 従 来 型 金 融 と 区 別 されることなく UAE の 商 業 銀 行 として 位 置 づけられている ここで 問 題 となるのは 商 業 銀 行 の 法 的 枠 組 みは 中 央 銀 行 法 商 取 引 法 及 び 会 社 法 であり 中 央 銀 行 法 第 90 条 の 商 業 銀 行 に 禁 止 されている 行 為 にイスラーム 金 融 が 行 う 業 務 が UAE の 国 内 法 と 抵 触 することにな る これに 対 して イスラーム 銀 行 の 商 取 引 を 合 法 化 するために 特 定 の 条 項 を 適 用 除 外 とすることがイスラーム 金 融 法 第 4 条 で 明 記 してあった このことからイスラーム 金 融 法 は イスラーム 金 融 の 位 置 づけや 従 来 型 金 融 制 度 との 差 異 がどこにあるのかを 示 している といえる 年 11 月 14 日 付 け 中 央 銀 行 公 報 より 年 4 月 10 日 付 けの 中 央 銀 行 公 報 より 17

21 くわえて イスラーム 金 融 法 では イスラーム 法 との 適 合 性 を 確 保 するために シャリ ーア 諮 問 委 員 会 の 設 置 やそれらを 監 督 するシャリーア 高 等 機 関 の 設 置 に 言 及 するなどし 従 来 型 金 融 にはない 独 自 の 法 制 度 を 確 立 する 指 針 を 示 している 従 来 型 金 融 では 既 存 の 法 制 度 によって 規 制 監 督 が 行 われるのに 対 して イスラーム 銀 行 は 従 来 型 金 融 が 管 轄 される 部 分 とそれ 以 外 のイスラーム 法 によって 管 轄 される 部 分 に 分 けられ イスラーム 法 に 関 わ る 範 疇 は 従 来 型 金 融 とは 分 離 された 構 図 がみえてくる ただ イスラーム 金 融 法 が 施 行 さ れていないために 明 確 にイスラーム 銀 行 は 行 政 上 区 別 されていない これに 対 して イ スラーム 銀 行 はイスラーム 金 融 機 関 会 計 監 査 機 構 (Accounting and Auditing Organization for Islamic Financial Institutions, AAOIFI)などといった 各 銀 行 のシャリーア 諮 問 委 員 会 やイスラ ーム 金 融 機 関 同 士 の 国 際 的 な 連 携 によって 従 来 型 金 融 制 度 の 中 で イスラーム 法 との 適 合 性 を 保 つための 努 力 をしていることがうかがえる 本 稿 では 連 邦 法 を 中 心 とした UAE 全 体 の 銀 行 制 度 においてイスラーム 銀 行 の 法 的 枠 組 み を 示 した そこで 今 後 の 課 題 として 近 年 外 資 系 イスラーム 銀 行 が 多 く 参 入 し 台 頭 し 始 めているドバイ 国 際 金 融 センターなどといった 特 別 区 について 分 析 し さらに 包 括 的 な 考 察 をしたいと 思 う 謝 辞 本 稿 のワーキングペーパーとしての 印 刷 には 京 都 大 学 GCOE プログラム 生 存 基 盤 持 続 型 の 発 展 を 目 指 す 地 域 研 究 拠 点 から 援 助 をいただいたことに 心 から 感 謝 を 申 し 上 げる 参 考 文 献 長 岡 慎 介 現 代 イスラーム 金 融 論 名 古 屋 大 学 出 版 会 中 東 アラブ 諸 国 における 民 間 部 門 発 展 の 歴 史 的 沿 革 中 東 湾 岸 諸 国 の 銀 行 部 門 の 分 析 から 中 東 アラブ 諸 国 における 民 間 部 門 の 発 展 ( 研 究 双 書 ) 土 屋 一 樹 ( 編 )アジア 経 済 研 究 所 : 齋 藤 純 GCC 諸 国 イスラーム 金 融 機 関 の 資 金 調 達 と 投 資 行 動 イスラーム 金 融 のグロー バル 化 と 各 国 の 対 応 ( 調 査 研 究 報 告 書 ) 福 田 安 志 ( 編 )アジア 経 済 研 究 所 : Hasan, Z Regulatory Framework of Shari ah Governance System in Malaysia, GCC Countries and the UK, Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 3(2), pp Tamimi, H Interest under the UAE Law and as Applied by the Courts of Abu Dhabi, Arab Law Quarterly, 17(1), pp Wilson, R Banking and Finance in the Arab Middle East. Surrey: Macmillan Publishers. Presley, J.R. and R. Wilson Banking in the Arab Gulf. London: Macmillan Academic and Professional. 18

22 法 令 Union Law No (2) of 1973 establishing the United Arab Emirates Currency Board Federal Law No (7) of 1976 on the establishing of the State Audit Bureau Federal Law No (1) of 1980 on Regulations of Industrial Affairs Union Law No (10) of 1980 Concerning the Central Bank, the Monetary System and Organization of Banking Federal Law No (8) of 1984 As Amended by Federal Law No (13) of 1988, Federal Law No (15) of 1988 Commercial Companies Law Federal Law No (5) of 1985 Regarding Commercial Transactions Federal Law No (6) of 1985 Regarding Islamic Banks, Financial Institutions and Investment Companies Federal Law No (1) of 1987 Concerning Civil Transactions Law Federal Law No (11) of 1992 Issuing the Civil Procedures Law Federal Law No (18) of 1993 Issuing the Commercial Transaction Law 中 央 銀 行 取 締 役 会 決 議 The Central Bank Board of Directors Resolution No.21/2/88 The Central Bank Board of Directors Resolution No.123/7/1992 The Central Bank Board of Directors Resolution No.168/8/94 The Central Bank Board of Directors Resolution No.164/8/94 The Central Bank Board of Directors Resolution No.126/5/95 The Central Bank Board of Directors Resolution No.58/3/96 The Central Bank Board of Directors Resolution No.57/3/1996 The Central Bank Board of Directors Resolution No.165/6/2004 インターネット CIBAFI: General Council for Islamic Banks and Financial Institution Islamic Finance in the GCC < 年 11 月 7 日 閲 覧 ) EBAa: Emirate Banking Association Commercial Banks. < 年 11 月 5 日 閲 覧 ) b Islamic National Banks. < 年 11 月 10 日 閲 覧 ) CBUAEa: Central Bank of United Arab Emirates. History of the Central Bank of UAE. < (2011 年 11 月 4 日 閲 覧 ) b. Automated Teller Machines Statistics in the UAE. 19

23 < >(2011 年 11 月 4 日 閲 覧 ) c. Organization & Development. < > (2011 年 10 月 29 日 閲 覧 ) GN: Gulf News. < 年 11 月 14 日 閲 覧 ) JETRO(ジェトロドバイ 事 務 所 ) アラブ 首 長 国 連 邦 (UAE)における 法 人 形 成 < 年 11 月 7 日 閲 覧 ) 20