近重史朗 年代,Sr 同位体比初生値によりこれらの地質体の帰属が明らかにされ ( 小野,1983; 柴田 高木,1989; 高木 藤森,1989; 高木他,1989; 端山他,1990; 竹内 牧本, 1991; 竹内 牧本,1995など), ナップの基底断層の断層岩の構造解析 ( ウォーリス他,1

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1 日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要 No.47 (2012)pp 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 近重史朗 Cretaceous and Paleogene Structural Development of the Yorii nappe, Kanto Mountains Shirou CHIKASHIGE (Received October 31, 2011) The Yorii nappe in the northeastern Kanto Mountains is composed of a couple of subnappes; the Ryoke-Abukuma and Kinshozan-Tochiya-Kurosegawa subnappes. The former moved southwards and the latter northwards successively, and the both settled on the Sambagawa belt at around 50Ma. The Ryoke nappe first formed on the Ryoke belt, while the Abukuma nappe formed at the front of theyorii formation during the emplacement of the Rhoke-Abukuma subnappe onto the Sambagawa belt. The Kinshozan-Tochiya-Kurosegawa subnappe formed through the coupling of the Kinshozan Quartz-diorite and the Tochiya formation when the latter moved northwards on the Sambagawa belt. The green rock mélange formed along the left-lateral fault at the southern margin of the sedimentary basin of the Tochiya formation. The Tochiya formation formed at a pull-apart basin which formed through the left-lateral faulting of the Median Tectonic Line during the Late Cretaceous. The Sanchu group, deposited on a pull-apart basin of the Early Cretaceous, possibly originated from the Early Cretaceous activity of the Kurosegawa fault system, thus two major wrench faults were active successively on the northern Kanto Mountains. The Yorii nappe formed under the circumstance of the activities of the two major wrench faults, uplifting of the Sambagawa metamorphic rocks from the deeper metamorphic environment, and the uplift of the Rhoke granitic rocks. Thus the Yorii nappe is one of the most prominent geologic body, which represents the Cretaceous and Paleogene structural development of the backbone area of the present Japan Arc. Keywords: Kanto Mountains, Yorii nappe, Atokura nappe, MTL 1 関東山地北縁 ~ 北東縁部の群馬県下仁田地域, 埼玉県 金沢地域, および埼玉県寄居 - 小川地域には, 起源と年 代を異にするぺルム紀から古第三紀の異地性の地質体が三波川帯御荷鉾緑色岩類の構造的上位に定置し, それらは 跡倉ナップ と総称されている ( 第 1 図 a)( 牧本 竹内,1992; 埼玉総会中 古生界シンポジウム世話人会,1995). これらの異地性地質体の形成過程は, 日本列島中軸部の構造発達史を考える上で重要であり, 多くの研究が行われてきた ( 藤本他,1953; 新井他,1963, 1966; 小勝他,1970; 内田,1978; 小坂,1979; 高木 藤森,1989など).1990 年前後から, 岩相 化学組成, 放射 日本大学文理学部自然科学研究所 : 東京都世田谷区桜上水 ( 現在 : サンライズ地質調査事務所 埼玉県比企郡小川町木部 ) 1 a 関東山地北部地質概略図地質調査所 1:200,000 地質図幅 長野 ( 中野他,1998) および 宇都宮 ( 須藤他,1990) をもとに作成. Institute of Natural Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo , Japan (Present address: Sanraizu Geo-Researcfh Office Kibe, Ogawamachi, Hiki, Saitama , Japan) 199 ( 45 )

2 近重史朗 年代,Sr 同位体比初生値によりこれらの地質体の帰属が明らかにされ ( 小野,1983; 柴田 高木,1989; 高木 藤森,1989; 高木他,1989; 端山他,1990; 竹内 牧本, 1991; 竹内 牧本,1995など), ナップの基底断層の断層岩の構造解析 ( ウォーリス他,1990; 小林 高木, 1991; 小林,1995;Kobayashi,1996; 近重,2000b など ) や 跡倉ナップ の主要な構成メンバーである上部白亜系の褶曲構造解析 ( 新井 高木,1998; 近重,2000b) からナップの移動方向などを検討した構造地質学的見地からの研究がなされた. このような, ナップの構成地質体個々の帰属, 地帯区分, 移動方向は議論されているものの, 主要な構成体である上部白亜系とぺルム紀花崗岩類を除いて 跡倉ナップ の内部構造, ナップ内部の各地質体の相互関係については, これらすべての地質体を単一の異地性構造岩塊と考える見解 ( 小野,2000) 以外報告されていない. さらに, ナップ全体の形成過程について構造発達のモデルを構築する試みはなされていない. 本研究は, 寄居町 小川町に分布する上部白亜系, 古第三系, 古第三紀溶結凝灰岩類の調査に基づく新たな知見とこれまでに多くの研究者によって得られた知見とを総合して, 寄居町 小川町に分布する白亜紀 古第三紀のナップ群の構造発達史を明らかにすることを主な目的とする. 本研究の意義は, 日本列島中軸部の複雑な構造発達は岩相 起源 年代の異なる地質体が混在する寄居 - 小川地域のナップの形成過程に端的に反映されていることから, 寄居 - 小川地域のナップの構造発達を明らかにすることによって日本列島中軸部の構造発達の解明に大きく寄与することにある. なお, 関東山地北縁に分布するナップ群については, 跡倉ナップ の名称が用いられているが, 構成する地質体の種類が多く地質年代が広範囲にわたることもあって, 研究者によって 跡倉ナップ の範囲が異なる. そこで, 本研究では, 関東山地北縁の三波川帯の構造的上位に定置する異地性の地質体を 関東山地北縁ナップ と総称し, そのうち寄居町 小川町に分布するナップを 寄居ナップ と名付ける. 2 寄居ナップに関する研究史を, 構成地質体ごとに年代順に略述する. 2.1 渡部他 (1950) は本岩体を浅所貫入岩とみなし寄居石英斑岩と命名した. 小勝他 (1970) は, 石英斑岩のほか に溶結凝灰岩の疑いのある岩石も存在することを示し, その形成時期を白亜紀後期とした. また, 本岩体を原地性としている. 小坂 (1978,1979) は, 寄居石英斑岩に顕微鏡スケールで破砕組織の発達と熱水変質の跡を認め, 地下のある程度の深さで破砕 変形と変質を受けた後に本地域に移動しクリッペとして三波川変成岩類の上に乗っているとし, 白亜紀末期から古第三紀にかけてのある時期に, 現在の三波川帯と領家帯の間にあった金勝山石英閃緑岩, 跡倉層とともに南方への押しかぶせ断層運動によって西南日本内帯側から移動してきたとした. 山田他 (1982) は, 本岩体は溶結凝灰岩と花崗斑岩からなり, 寄居 石英斑岩 と表記し, 北からのクリッペであるとすれば, このような珪長質火山岩類を産出した珪長質火山作用の場は領家帯であった可能性が大きいとした. 小坂 (1987) は, 寄居 石英斑岩 分布域のほぼ全域から採取した岩石薄片から, いずれも溶結凝灰岩であることを認め, 寄居 石英斑岩 のうち溶結凝灰岩と認められるものを寄居溶結凝灰岩類と呼んだ. 本岩は, 砂岩, チャート, 火山岩の岩片を含み, 領家帯で噴出した後に跡倉層 ( 栃谷層 ) の移動期あるいはその前後に本地域に移動したとしている. 竹内 牧本 (1991) は, ジルコンのFT 年代 59.6 ±2.8Ma から, 酸性火成岩類が西南日本内帯の白亜紀後期 - 古第三紀酸性火成活動の産物であるという従来の見解を裏づけた. さらに, 本岩は, 岩相 放射年代が一致することから西南日本内帯の白亜紀後期 - 古第三紀酸性火成活動の一員として, 濃飛流紋岩類や奥日光流紋岩類に対比されるとした ( 山田他, 1982; 牧本 竹内,1992). 近重 小坂 (2000) は, 熱水変質年代 58.0 ±2.9Ma を得ており, 本岩体は少なくともこの年代までは領家帯に存在したことを裏付けた. 2.2 藤本 渡部 (1947) は寄居層を命名し, 渡部他 (1950) はこれを寄居礫岩層と呼んだ. 三波川結晶片岩を不整合に覆い, 原地性としている. また, 荒川両岸に中新統松山層群小園層に覆われる不整合を記載している. 福田 石和田 (1964) は, 寄居礫岩層の一部を白亜系として木持層と呼んだ. 小勝他 (1970) も岩層 層相, 擾乱が顕著なことから寄居礫岩層の一部を木持層として扱い, 原地性の地層とした. 小坂 (1979) は, 寄居層中に発達する低角断層群から上盤が西北西方向へ向う変位を認めたが, その露頭での変位量は10 m を越えないことを述べている. 牧本 竹内 (1992) は, 木持層と寄居礫岩層を一括して寄居層と再定義し, 寄居溶結凝灰岩類と高角断層で接する部分を鉢形礫岩部層とし, それ以外を寄居層 ( 46 ) 200

3 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 主部とした. また, 寄居層主部の下部に挟在する凝灰岩のジルコンの FT 年代は65.4 Maを示し, 本層に寄居溶結凝灰岩類の礫を含むという層序関係を考慮して, 寄居層の地質年代は白亜紀末 - 暁新世であろうとした. 牧本 竹内 (1992) は, 寄居層が跡倉ナップの一員であることをはじめて唱え, 寄居溶結凝灰岩類の噴出に引き続いて堆積したとしている. 小林 (1995) は, 寄居層の砂岩が御荷鉾緑色岩類と接する低角断層に伴う断層ガウジの小構造解析から下盤の御荷鉾緑色岩類に対して上盤の寄居層は北 ~ 北北西への移動を示すとしている. 近重 (2000a) は本岩体の堆積残留磁化を測定し, 三波川帯御荷鉾緑色岩類の上で堆積した地層ではないことを古地磁気から検証し, 包有する礫種から領家帯で形成されたとした. 2.3 渡部他 (1950) は栃谷層周辺に分布する石英閃緑岩を金勝 ( 照 ) 山石英閃緑岩と命名し, 寄居層の礫岩層に初期中新世末に貫入したとした. 小勝他 (1970) は貫入時期は栃谷層堆積以前 白亜紀後期とし現地性と考えた. 小坂 (1978,1979) は三波川変成岩類に熱変成が認められないこと, 基盤の三波川変成岩類と破砕様式が異なることなどから本岩体を三波川帯の上にのる西南日本内帯からのクリッペであるとした. 平島 (1984) は, 本岩体がぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を受けているのに対して三波川帯は受けていないことから, 小坂 (1978,1979) の提唱したクリッペ説を支持した. ナップの基底断層は発見されていないが, 小坂 (1978) は寄居町車山付近の三波川変成岩類と金勝山石英閃緑岩の分布境界が滑らかな曲線となり, さらに金勝山石英閃緑岩の方が地形的に高いところにあることからほぼ水平の断層を推定した. 平島 (1984) も同様の見解を述べている. 小野 (1983) は普通角閃石 K-Ar 年代 251±8Ma, 端山他 (1990) はぺグマタイトから白雲母 K-Ar 年代 252± 8Maを得ている. また, 柴田 高木 (1989) は本岩体の SrI 値 ~0.7042を得て, 年代 SrI 値とも下仁田 金沢地域とほぼ同じ値 ( 角閃石 K-Ar 年代 250~277 Ma, SrI 値 ~0.7042) を示し, 南部北上帯の薄衣花崗岩礫 ( 年代 226~276 Ma( 柴田,1973),SrI 値 ~ (Shibata,1974)) の値と一致するとした ( 柴田 高木,1989; 高木 藤森,1989). 2.4 当地域では, 端山 比企団体研究グループ (1985), 高 木 藤森 (1989), 小野 (1990) が小規模に分布する角閃岩 片麻岩 トーナル岩を見出した. これらの変成年代は角閃岩のK-Ar 年代 110 ±4Ma ( 端山他,1990),109± 7 Ma ( 小野,1990) が報告され, 柴田 高木 (1989) は下仁田地域の白亜紀前期の放射年代を示す花崗岩類 変成岩類のSrI 値が であることから, 本岩類を阿武隈帯に対比した. 2.5 渡部他 (1950) は, 先第三系として跡倉層が分布することを示した. 藤本他 (1953) は, 寄居地域に跡倉層と類似の地層が分布し, 下仁田 金山地域の跡倉層の推し ( 押し ) 被せ構造が延長する可能性を指摘した. 前田 (1954) は, 寄居町栃谷地区の三波川帯と秩父帯の間に分布する礫岩 砂岩 泥岩からなる地層を栃谷層と命名し, 礫岩の岩相が下仁田地域の跡倉層に類似することを指摘し, 古期岩層中に断層で挟み込まれているとした. 小勝他 (1970) は, 前田 (1954) の示した栃谷層南縁の秩父帯の一部を層相と擾乱の程度から栃谷層に含め分布範囲を拡大し栃谷層を再定義した. また, 下仁田地域の跡倉層 ( 上部白亜系 ( 新井他,1963)) に対比し, 本層を原地性とした. 本層の南限 北限は高角の断層で境され, 南限の断層に沿って蛇紋岩が貫入し, 地層は走向 N60 ~80 W の急傾斜の向斜構造をなし, 礫岩 砂岩 泥岩およびそれらの互層からなり, 礫岩は北縁に沿って発達するとした. 長沼 加藤 (1978) は, 本層の砂岩泥岩互層のソールマークからESE WNWの軸流を示す古流向を報告した. 小坂 (1979) は, 栃谷層の北側約 1/3は礫岩層と泥岩をはさむ砂岩層からなり南上位の級化層理を示し, 南側約 2 /3 は砂岩泥岩互層からなり級化層理は北上位を示すが, 北側と南側の砂岩の岩質の相違から両者が層準を異にする可能性を指摘し, 本層の北側約 1 /3 と南側約 2 /3 とは地層の上下の向きが逆の 2 つのクリッペが西北西方向の高角断層を境として接している可能性を指摘した. また, 本層は弱変成を受けていること, さらに連続的に分布する本層周辺の基盤岩 ( 秩父帯, 三波川帯 ) の南北性と東西性の半波長 5 km 程度のゆるい褶曲波面が本層地下に存在するとし, 本層をクリッペと推定した. 平島 (1984) は, 本層の礫岩と砂岩にぶどう石 - パンペリー石相の変成作用を認め, 周囲の三波川変成岩や秩父帯の岩石にはこれらが認められないことから, 小坂 (1979) のクリッペ説を支持した. 門田 徳永 (1982) は, 栃谷層の東半分は花粉分析によって中新統であるとしたが, 渡辺他 (1990) は分布域西部の泥岩からアンモナイト, 数種の二枚貝化石, 放散虫化石を見出し上部白 201 ( 47 )

4 近重史朗 亜系とした. 石井他 (1990) は, 分布域中部の砂岩泥岩互層の泥岩から放散虫化石, 有孔虫化石を見出し白亜紀前期末 白亜紀後期としている. 石井他 (1990) は, 礫岩は基底礫岩であり本層は秩父系 三波川系 金勝山石英閃緑岩体の上に不整合で堆積した原地性の地層であり, 跡倉層 跡倉層相当層がWNW 方向の狭長な堆積盆に堆積したと考えた. 牧本 竹内 (1992) は, 本層の向斜の南翼の一部に逆転層を記載した. 近重 (2000b) は, 本層分布域西部において北フェルゲンツの低 ~ 中角の褶曲軸面を持つ転倒褶曲, および上盤の栃谷層礫岩が下盤の御荷鉾緑色岩に対して北へ向かう (top-to-the-north) 移動を示す基底断層を認定し, 栃谷層は南から北へ移動したとした. 2.6 平島 (1984) は, 当地域の栃谷層と秩父帯 三波川帯の境界部に狭長に分布する著しく剪断されたアクチノ閃石岩を基質とし変成岩, 火成岩を構造岩塊として包有する地質体を 緑色岩メランジュ と命名し, 本岩体および栃谷層, 金勝山石英閃緑岩は黒瀬川帯の東方延長部に当たる可能性を指摘した. 竹内 牧本 (1995) は角閃岩塊の普通角閃石 K-Ar 年代 402±20Maを得て, 角閃岩塊は黒瀬川帯に属するとした. 佐藤他 (2000) は, 砂岩岩塊および基質の蛇紋岩のクロムスピネルの化学組成が四国黒瀬川帯の最上部ぺルム系砂岩に含まれる砕屑性クロムスピネル, ならびに蛇紋岩基質中のクロムスピネルの化学組成に類似することを明らかにし, 緑色岩メランジュは黒瀬川帯に帰属する可能性が大きいとし, 黒瀬川帯の東方延長部の一つであるとした. 3 寄居 - 小川地域の地質概略図を第 1 図 b に示す. 北から三波川帯御荷鉾緑色岩類, 寄居溶結凝灰岩類, 寄居層, 御荷鉾緑色岩類と金勝山石英閃緑岩, 栃谷層, 秩父帯の岩石 地層が分布している. これらの岩石 地層のうち寄居溶結凝灰岩類, 寄居層, 金勝山石英閃緑岩, 栃谷層は御荷鉾緑色岩類の上にナップとして移動してきた異地性岩体 ( 寄居ナップ ) であり, 下仁田地域, 金沢地域とともに関東山地北縁ナップを構成している. 寄居ナップの各岩体はWNW 方向とN-S 方向の高角断層でブロック化しているため岩石 地層相互の層序 構造関係は明らかではない ( 牧本 竹内,1992). 金勝山石英閃緑岩の放射年代は,251Ma( 小野,1983) あるいは 252 Ma ( 端山他,1990) でぺルム紀を示し, 岩体の分布状態から御荷鉾緑色岩類の上に低角断層でのる 1 b 寄居 - 小川地域地質概略図地質調査所 1:50,000 地質図幅 寄居 ( 牧本 竹内,1992) をもとに作成. と推定される ( 小坂,1979; 平島,1984; 牧本 竹内, 1992). 栃谷層は, 礫岩, 砂岩および砂岩泥岩互層から なるタービダイトで ( 牧本 竹内,1992), 泥岩から白亜 紀後期のアンモナイト化石, 放散虫化石を産し ( 石井 他,1990; 渡辺他,1990), 堆積した地質年代は Turonian ~Campanian ( およそ 90~74Ma) と考えられている ( 埼 玉総会中 古生界シンポジウム世話人会,1995). 栃谷 層はぶどう石 - パンペリー石相の弱変成作用を受けてい る ( 小坂,1979; 平島 1984). 寄居溶結凝灰岩類は, 流紋 岩質溶結凝灰岩であり, ジルコンの FT 年代は 59.6 Ma を 示す ( 竹内 牧本,1991). 寄居層は, 基底部の鉢形礫岩 部層と主部 ( 礫岩 砂岩 ) からなる海成層で, 堆積した 時代は白亜紀末 - 暁新世とされている ( 牧本 竹内, 1992). 緑色岩メランジュが栃谷層の北側に分布し ( 牧 本 竹内,1992), 南側の秩父帯と接する部分にも分布す る ( 平島,1984; 牧本 竹内,1992). 緑色岩メランジュ の角閃岩から 402Ma の K-Ar 年代が得られている ( 竹 内 牧本,1995). 関東山地北縁ナップの形成時期は, ナップを構成する 最も新しい地層が寄居層であり, また同ナップが中新統 松山層群により不整合に覆われることから, 暁新世 ( 約 60Ma) から中期中新世 (16Ma) の間である ( 牧本 竹 内,1992). また, 同ナップを構成する岩石 地層のうち 寄居溶結凝灰岩類と寄居層は, 岩相, 放射年代から西南 ( 48 ) 202

5 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 日本内帯に属する地質体と判断されているが ( 牧本 竹内,1992), 金勝山石英閃緑岩, 栃谷層は黒瀬川帯の一員とする見解 ( 平島,1984), 跡倉層の起源を黒瀬川帯に求める見解 ( ウォーリス他,1990; 小林,1993), 跡倉層は秩父帯から移動したとする見解 (Kobayashi,1996), 緑色岩メランジュは黒瀬川帯に属するとする見解 ( 平島, 1984; 竹内 牧本,1995), 金勝山石英閃緑岩 異地性花崗岩類は南部北上帯 阿武隈帯に属するという見解 ( 柴田 高木,1989) があって, その帰属についての意見は地質体毎に異なる. 4 従来の 跡倉ナップ の範囲は, 次のようにまとめることができる. (1) 三波川帯御荷鉾緑色岩類の構造的上位にのる跡倉層からなるものを跡倉ナップ, さらにその上にのる金勝山石英閃緑岩 ( 異地性の花崗岩類を含む ) を金勝山ナップとして別のナップとし, 両者をまとめて 跡倉ナップ とする見解( 小林 高木,1991) (2) 跡倉ナップを金勝山石英閃緑岩および角閃岩類 トーナル岩類, 栃谷層 ( 跡倉層 ), 緑色岩メランジュのグループと寄居溶結凝灰岩類, 寄居層のグループとに分け, 全体を 跡倉ナップ とする見解 ( 牧本 竹内,1992; 埼玉総会中 古生界シンポジウム世話人会,1995). (1) は三波川帯御荷鉾緑色岩類の構造的上位にのる異地性岩体群の一部分に限定している.(2) は比企丘陵の花崗岩類を異地性岩体とせず, 跡倉ナップ に含めていない. このように研究者によって 跡倉ナップ の範囲が異なることから, 混乱を避けるため記述の都度, 範囲を明確にする必要があるという不便さがある. そこで, 三波川帯御荷鉾緑色岩類の構造的上位にのるすべての異地性岩体を 関東山地北縁ナップ と再定義する. この再定義に伴い, 関東山地北縁ナップのうち, 寄居 - 小川地域に分布するナップを 寄居ナップ と名付ける. 金沢地域の異地性岩体はほかの地域に比べて種類が少なく分布面積は1 / 5 以下である. 中央構造線から離れた位置にあるという観点からは, 寄居ナップに含めるべきかも知れない. 寄居ナップの構成は, これまでの多くの研究者の成果をもとに, 岩相, 地質年代, 帰属, 推定される起源などを勘案して次の五つのグループに分けられる. 寄居ナップの構成地質体 1 領家花崗岩類 ( 越畑花崗岩 ) 変成岩類 ( 菫青石 片麻岩, 黒雲母片麻岩 ), 寄居溶結凝灰岩類, 寄居層 西南日本内帯起源 領家ナップ 2 金勝山石英閃緑岩 南部北上帯に帰属 金勝山ナップ 3 角閃岩類 トーナル岩類 片麻岩類 阿武隈帯に帰属 阿武隈ナップ 4 栃谷層 秩父帯起源 栃谷ナップ 5 緑色岩メランジュ 黒瀬川帯起源 黒瀬川ナップ 埼玉県嵐山町越畑南方から川島にかけて粕川沿いに長 さ4km, 幅 750m の狭長な範囲に花崗岩類が分布する. 周囲は花崗岩体の伸長方向に平行なNW 方向の断層とこれを高角に切るNE 方向の断層により中新統 ( 松山層群小園層 ) と接する ( 高木 長濱,1987). 花崗岩類は大部分が片麻状トーナル岩から構成され, 鉱物組成および岩石組織の特徴,62~64Ma の K-Ar 年代, 87 Sr/ 86 Sr 初生値 といった年代 同位体化学の観点から中部地方領家帯の非持型トーナル岩に対比されている ( 比企団体研究グループ,1982; 柴田 高木, 1989; 高木他,1989). そのほかに, 片麻状花崗岩が点在し岩石学的特徴から中部地方の天竜峡型花崗岩に対比されている ( 端山 比企団体研究グループ,1984). 変成岩類は, 鉱物組成から菫青石黒雲母片麻岩 / 紅柱石 - 菫青石片麻岩 ( 泥質片麻岩 )( 武井 小池,1977; 高木 長濱,1987), 珪線石 - 菫青石片麻岩 ( 泥質片麻岩 ) ( 高木 長濱,1987), ザクロ石 - 黒雲母片麻岩 ( 砂質片麻岩 )( 高木 長濱,1987) が点在する. 花崗岩類はその多くが破砕を被り分布域の南西縁部で特に破砕が著しくカタクラサイト化しており, 帯状に分布する花崗岩体を直交する横断するルートにおける石英の平均粒径, 最大粒径の変化から, 横断ルートの中央部分に細粒化の進んだマイロナイト帯があることは明瞭であり南西側の断層沿いは細粒化がそれほど顕著ではないものの, 少なくとも岩体の南西側により強い剪断帯があった ( 高木 長濱,1987) とされている. しかし, 片麻状トーナル岩, マイロナイトおよび変成岩の面構造が NW 走向で北東に30 ~50 傾斜にそろう分布域において XZ 薄片で観察されるマイロナイトの非対称微小構造か 203 ( 49 )

6 近重史朗 ら推定された剪断のセンスは左ずれであるが, 線構造の方位はまちまちである ( 高木 長濱,1987). 剪断歪の著しいマイロナイトの線構造は剪断方向と一致するので, このような線構造の剪断方向との不一致はマイロナイト形成後に生じたと考えられる. そのような変動をもたらした構造運動は, 北方からのナップ形成に伴うものである可能性がある. マイロナイト化およびカタクラサイト化の強い部分が中部地方と同様に南側 ( 外帯側 ) に集中していることから, マイロナイト形成時から現在までにこの岩体に対してより南西側では変形作用が著しく, その変形をもたらした剪断帯の中心 ( 中央構造線 ) の位置がこの岩体の南西側にあったことは明らかであるが, マイロナイト形成後, 新第三系が堆積するまでの間に比企丘陵に分布する花崗岩体が北方から移動してきた可能性は否定できないとしている ( 高木 長濱,1987). このように, 比企丘陵の花崗岩類は原地性か異地性かについては明確にされていない. 原地性とする見解は, 比企丘陵の南西側に想定されている奈良梨断層が中央構造線に相当するとする見解から導かれている. 関東山地北東縁部における中央構造線の位置については, 武井他 (1976) は比企丘陵の花崗岩体と三波川帯の間を走る NW 方向の奈良梨断層が中央構造線に相当すると考え, 小坂 (1978,1979) は比企丘陵の花崗岩体は北方から移動してきたクリッペであり, 中央構造線の位置はそれより北方を通るとした. 矢島 (1981) は, 三波川帯の北縁部を中央構造線とみなし, 比企丘陵 吉見丘陵より北方に中央構造線を想定している. 比企丘陵東方約 5 km にある吉見丘陵の北西端部ではほぼ水平な断層を介して三波川変成岩類の上に片麻岩がのり, 三波川変成岩類のガウジを伴う幅約 3mの破砕帯が存在することから ( 小坂,1979), 三波川帯は比企丘陵よりさらに北東まで存在し比企丘陵の花崗岩体の基盤は三波川帯に属する岩石である可能性がある. 比企丘陵の花崗岩体の基盤については, 先第三系基盤に達した深層ボーリングの位置の地質データを示した重力基盤図に描かれた推定地質構造図 ( 長谷川,1988) によると, 三波川帯は岩槻, 松伏, 流山以南であり, 中央構造線の推定位置は高重力域 (70ミリガルの等重力線域 ) を示す吉見丘陵の北東約 5 km 以上離れた位置を通ることから, 比企丘陵の地下基盤も三波川帯であることは確実である. 埼玉県嵐山町から比企丘陵を横断して北上し荒川を越え熊谷市に至る区間で反射法地震探査による地下構造が調べられ ( 井川他,1998), 基盤 ( 三波川帯 ) は比企丘陵 中央部から北に急激に沈み込み荒川付近で3,000mに達する深度まで明瞭に観察されていることから, 少なくとも比企丘陵, 吉見丘陵を含む荒川までは三波川帯である. さらに, 萩原他 (1999) により山中地溝帯の東方延長部の推定に際して作成された関東山地東部の短波長重力異常図においても, 中央構造線は比企丘陵, 吉見丘陵より北側に位置し, 比企丘陵の基盤は三波川帯である. 以上から, 比企丘陵の花崗岩類 変成岩類は北方から移動してきたナップであるとする見解 ( 小坂,1978, 1979) が妥当である. 2 本岩体は, 幅 1 km 弱, 長さ約 6 km で先第三系の帯状構造 WNW 方向に狭長な分布を成す ( 第 1 図 b). 北東側は, 御荷鉾緑色岩類とN70 W 66 S, 西南側は寄居層礫岩と高角断層で接する ( 牧本 竹内,1992). 小勝他 (1970) によって北東側の荒川左岸に御荷鉾緑色岩類との境界にN25 W 33 Wの低角断層が報告されている. 著しい破砕, および中性からアルカリ性の210~220 の熱水変質を受けて初生鉱物は石英および黒雲母のごく一部以外は緑れん石, 緑泥石, イライトにほぼ完全に置換された流紋岩質の溶結凝灰岩である ( 近重 小坂, 2000). 本岩体の形成年代についてはジルコンのFT 年代 59.6 ±2.8Ma が得られており ( 竹内 牧本,1991), 岩相から西南日本内帯の白亜紀後期 古第三紀の火成活動を起源とする流紋岩質溶結凝灰岩類であるという従来の見解 ( 山田他,1982) を裏づけている. 寄居溶結凝灰岩類は, 関東山地北縁ナップ構成岩体のなかで最も若い地質体の可能性があり, その地質年代は跡倉衝上断層の活動時期の下限を制約する意義をもつとされている ( 竹内 牧本,1991). 従って, 熱水変質の年代が分かれば, 三波川帯に移動した時期はそれ以降と考えることによりナップ形成時期の下限をさらに下げる ( 若くする ) ことができる. そこで, 熱水変質の履歴を明確にするために寄居溶結凝灰岩類の産状, 熱水により生成した変質鉱物の同定および熱水温度の推定を行い, さらに熱水変質年代を推定するため寄居溶結凝灰岩類の K-Ar 年代を測定した ( 近重 小坂,2000). 全岩の K-Ar 年代 58.0±2.9 Ma はほぼ変質年代を示すと考えられる. 岩体形成の最終段階で熱水変質を受け, それ以降は K-Ar 年代が若返るほどの熱水作用は受けていないことが明らかになった ( 近重 小坂,2000). 以上から, 寄居溶結凝灰岩類は西南日本内帯の後期白亜紀 古第三紀酸性火成活動により形成され, その直後 ( 50 ) 204

7 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 に熱水変質を受け,58.0±2.9 Maまでは形成地に存在したと考えられる. 本岩体は破砕と熱水変質を受けた後に北方から三波川帯の上に移動してきたクリッペであるという見解 ( 小坂,1979,1987) が支持される. 次項で述べるように, 寄居溶結凝灰岩類を礫として取り込んでいる寄居層の年代が寄居溶結凝灰岩類とほぼ同じ年代である. 従って, 両者はそれらの形成地から同一の時期に移動し三波川帯に到達した可能性が考えられる. その時期は58.0±2.9 Ma 以降, かつ, 寄居層が堆積 固化した以降ということになる. 両者は現在三波川帯に隣接して存在するに至るまでの間, 同一の構造運動を受けてきたものと推定される ( 近重 小坂,2000). 3 寄居層の地質時代は白亜紀末 - 暁新世であることと (cf. 3), 寄居層に含まれる礫種 ( 溶結凝灰岩, 石英斑岩, 花崗斑岩, チャート, 砂岩, 花崗岩, アプライト ; 渡部他,1950; 小勝他,1970; 牧本 竹内,1992) のほとんどは西南日本内帯の白亜紀 古第三紀火成活動の産物であり, チャート, 砂岩は領家帯変成岩の構成岩であって, いずれも三波川帯には含まれていない岩石であることから, 寄居層が西南日本内帯で堆積し, 異地性岩体として三波川帯上に移動してきた可能性が考えられる. 小林 (1995) は, 寄居層の砂岩が御荷鉾緑色岩類と接する低角断層 ( 小勝他,1970; 小坂,1979; 牧本 竹内, 1992) について, 断層ガウジの小構造解析から剪断方向を調べ, 下盤に対して上盤の寄居層は北 ~ 北北西へ移動したとしている. この方向は, 西南日本内帯へ向かう方向であり, 上記の見解とは矛盾する. 断層岩の構造解析による移動方向の推定は, 古い時代の断層運動の証拠はより新しい時代の断層運動によって消去されるため, 断層運動のステージが識別できる場合以外は最終段階の移動方向と考えざるを得ない. 従って, ナップの初生の移動方向は断層岩の構造解析のほかに岩相, 基盤に対する地質年代, 変成度, 熱水変質の相違などを考慮して総合的に推定する必要がある. 上記の低角断層はナップ移動時の基底断層ではないと判断される. 従って, 寄居層の場合, 初生の移動方向の問題以前にナップであったかどうか自体が明確ではないことになる. 当地域の三波川帯は御荷鉾緑色岩類を含めて低変成度の緑泥石帯に属し ( 牧本 竹内,1992), 関東山地北縁の緑泥石帯の白雲母のK-Ar 年代は84~72 Ma であることから ( 平島他,1992), 寄居層の堆積した65~60 Ma 頃には三波川帯は地表に露出していたとすれば, 寄居層は三波川帯上で堆積した可能性はあると言えるが, 寄居層は三波川帯の岩石を礫として含んでいない. 寄居層が三波 川帯上で堆積した明らかな証拠はない. 以上のことから, 寄居層は西南日本内帯で堆積し異地性岩体として三波川帯上に移動してきた可能性は大きいといえるが, 領家帯から三波川帯上に礫および砕屑物が供給されて堆積し, その後に三波川帯上で移動した痕跡が上記の低角断層である可能性も否定できない. また, 上盤の寄居層の北 ~ 北北西への移動 ( 小林,1995) は, 西南日本内帯起源と一見矛盾する. 従って, 寄居層の場合は, 三波川帯上, あるいは帯状に分布する先第三系上では堆積しなかったという, すなわち異地性岩体であることを新たな視点で検証する必要がある. 従来, 地塊の回転の検出に古地磁気方位はよく用いられてきた (Otofuji and Matsuda, 1983;Hyodo and Niitsuma, 1986;Takahashi and Watanabe, 1993 など ). しかし, 異地性が想定される岩体に適用して古地磁気的見地から異地性を検証した研究例はない. 本研究では, 寄居層が異地性岩体であることを古地磁気から検証することを試みた ( 近重,2000a). a. 寄居層は堆積時の水平面が地層の層理面で認定が容易であるため, 初生残留磁化の復元に不可欠な傾動補正を正確に行なうことができる. 試料は6 サイトの寄居層細粒砂岩から採取した ( 近重,2000a, 第 4 図 ). 採取した57 試料について, 任意に選んだ 2 サイトについては 1 個のコア試料から 2 個の試料を作成し, 寄居層の堆積後に付加した二次磁化を除去し初生磁化を検出する消磁法を選択するため, それぞれ段階熱消磁, 交番磁場消磁を行なった. その結果, 高レベルの消磁磁化強度まで段階的に直線状に消磁できる熱消磁を用いることにした ( 近重,2000a, 第 5 図 ). 次に, 各サイト 2 個の試料について, 段階熱消磁によって磁化ベクトルのX,Y,Z 成分が原点に向かう直線上にベクトル端がのる最小の消磁温度を求め, それより 1 段高温の温度を最適消磁温度とした. 最後に,6 サイト,12 個の各最適消磁温度の中で最も高い温度を全試料の消磁温度 400 とした ( 近重,2000a, 第 1 表 ). 全試料 57 個をこの温度で消磁し, 磁化方位を求めた. その結果, 寄居層の平均磁化方位として偏角 20.8, 伏角 (α 95 =5.6,κ = 143.4) が得られた. 地層の堆積時の初生磁化を求めるため, 地層の姿勢を堆積時の姿勢に戻す傾動補正により 6 サイトの平均磁化方位の集中度が顕著に向上し, McElhinny (1964) の褶曲テストも合格であることから, 寄居層は褶曲前の堆積時の残留磁化を保持していると判定される. b. : 関東山地北部で 205 ( 51 )

8 近重史朗 は秩父盆地の下部中新統の上部 (15~16Ma), 主に小鹿野町層群と秩父町層群について古地磁気磁化方位が測定され, 偏角 93.7, 伏角 52.7 (α 95 = 8.3 ) が得られており, 関東山地の中期中新世以降約 94 時計回り回転運動の根拠となっている ( 兵頭,1986;Hyodo and Niitsuma, 1986). 寄居層を不整合に覆う松山層群の最下部小園層を整合に覆う荒川層が秩父盆地の小鹿野町層群と秩父町層群に対比されている ( 牧本 竹内,1992) ことから, 関東山地が約 94 時計回り回転した際に秩父盆地の小鹿野町層群 秩父町層群とともに松山層群の小園層 荒川層, さらには先第三系の帯状構造をなす三波川帯も同じように回転し, 寄居層も約 94 時計回りに回転したと考えられる. 従って, 関東山地の回転以前に寄居層が先第三系の基盤 ( 三波川帯御荷鉾緑色岩類 ) 上に堆積した現地性の岩体であるとすれば約 94 に近い時計回りの偏角を示すことになるが, 実測された残留磁化の偏角 20.8 とは約 73 の差がある. この結果は寄居層が反時計回りに約 73 回転していたことを示しているが,15 Ma 以前に先第三系の基盤とともに寄居層が約 73 反時計回りに回転する造構運動は先第三系の帯状構造からみて考えられず, 寄居層が異地性の地質体として, 回転したと考えざるを得ない ( 第 2 図 ). : 寄居層のハイマートについては, 先に述べた寄居層のFT 年代と堆積時代, 寄居層に含まれる礫種から, 西南日本内帯で堆積し, 異地性岩体として三波川帯上に移動してきたと考えられる. すなわち, 寄居層は三波川帯の北限をなしている中央構造線の北方で白亜紀後期 - 古第三紀暁新世に堆積した以降, 日本海の開裂 拡大 (Otofuji and Matsuda, 1983 ; Niitsuma, 1988 ; Jolivet et al., 1994) する以前, 中新統松山層群小園層 荒川層 ( 牧本 竹内,1992), 小鹿野町層群 秩父町層群 ( 兵頭,1986 ; Hyodo and Niitsuma, 1986) が堆積する以前に三波川帯の上に移動して定置し, 移動の過程で約 73 反時計回りに回転したと考えられる. : 寄居層の古地磁気は正磁極に換算すると偏角 20.8, 伏角 46.0 I =46.0,D =20.8,α 95 = 5.6 に対応する古地磁気北極の位置は70.5 N,260.0 E, A 95 (dm=5.5,dp =3.6 ) である. この平均伏角から計算で得られる古緯度は 28.5 ±6.6 N であり現在の寄居層の位置する緯度 N と有意な差がある. 寄居層の堆積した緯度は現在より南であったことになる. この解釈として, 寄居層の堆積した領家帯は現在より 2 古第三系 寄居層と秩父盆地 中新統の古地磁気緯度で約 7.5, 距離にして約 850 km 南方に位置していたということである. 笹嶋 島田 (1966) によると, 西南日本内帯における現在の基準点の緯度 34.5 Nに対して, 古第三紀の古地理学的位置を30.0~30.4 N, 白亜紀を 26.6~29.1 N と見積もっている. また, 白亜紀後期の和泉層群について古地磁気伏角から計算される古緯度を 31 ±5 N ( 現在の緯度 34 N) としていること ( 小玉, 1990) を考慮しても, 矛盾した古緯度ではない. このことは, 寄居層が堆積した65~60Ma 頃には, 領家帯は現在より約 850 km 南方に位置していたことを意味する. 寄居層がナップを形成して中央構造線の海洋側に移動した時期を後述するように50Ma 前後以降とし, 高木 柴田 (2000) による100~30Ma における800 kmを超えないとする総変位量のうち53~30ma に約 370 kmが見積もられていることから, 寄居層の50Ma 前後以降の変位量はおおよそ約 370km とすると, 寄居層が堆積した領家帯は約 65Ma から50Ma 前後にかけて約 480 km (=850km -370km) 北上したことになる. また,65Ma 以前の中央構造線の変位量を山北 大藤 (2000) による白亜紀後期の90~65Ma の変位量約 500 km と,74~53Ma ( 52 ) 206

9 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 における変位量を微量として ( 高木 柴田,2000), 上記の 53~30Maの約 370 km を加えると約 870 km となる. この値は, 高木 柴田 (2000) による100~30 Ma における 800 km を超えないとする総変位量と大きく矛盾した値ではない 領家帯で形成された岩体である領家花崗岩類 変成岩類, 寄居溶結凝灰岩類, 寄居層が, ナップを形成して三波川帯に衝上するに至る過程を考察する. 1 中部地方の領家帯南縁部では非 弱変成堆積岩, 白亜紀火山岩, 領家新期花崗岩からなるパイルナップが三波川帯の上にのり ( 大友,1990), 紀伊半島でも上部白亜系和泉層群が三波川変成岩上にのり ( 吉川他,1987), 四国東部で和泉層群が三波川変成岩上にのり ( 伊藤他, 1993), 四国西部で和泉層群が三波川変成岩に衝上し ( 竹下,1993), 九州では上部白亜系大野川層群が三波川帯にナップでのる ( 山北他,1995). 関東山地北東縁部の比企丘陵に領家花崗岩類が存在し, さらに中部地方領家帯の左ずれの剪断帯の東方延長の存在が明らかになっている (cf (1)). また, これらの領家帯構成岩類は北方からのナップ ( 小坂,1978,1979; 矢島,1981) であるとする考えがある. このように関東山地から九州にかけて領家帯の花崗岩類 変成岩類が三波川帯の構造的上位にナップとして存在することから, 日本海形成以前の白亜紀後期以降のある時期に西南日本内帯と外帯の間にナップを形成する造構作用が働いたと考えられる. 中部地方の領家帯では, 変成岩類 古期花崗岩類 新期花崗岩類からのK-Ar 年代およびRb-Sr 鉱物年代 ( 主に黒雲母 ) が一様に 60 Ma 前後を示すことから, これらは冷却年代であり, 領家南縁剪断帯の構造的上位に定置した古期花崗岩が新期花崗岩の貫入後に大きく上昇し, より表層の非変成堆積岩や流紋岩質火砕岩など地下浅所にあった岩石とともにパイルナップを形成して最後に三波川帯に衝上した (Ohtomo,1993; 大友,1996) とされる. 2 領家帯のナップの三波川帯への衝上運動に関連する領家帯 三波川帯の冷却史 上昇史について,Shinjoe and Tagami (1994) が四国中部三波川帯の構造的上部にある別子ユニットは約 80 Ma 以降 10 /Maの冷却速度を信頼できる値としているのに対して, 中部地方, 紀伊半島 西部の領家帯において Tagami et al. (1988) はジルコン とアパタイトの FT 年代と閉鎖温度から 58~54 Ma に 30 /Ma の急速な冷却速度を得ている ( 第 3 図 ). ま た, この古第三紀初期における領家帯の急速な冷却 上 昇は太平洋プレートがユーラシアプレートの東縁に位置 した西南日本に対して直交する方向の沈み込みによる圧 縮応力場の形成にあるとし,53 Ma には太平洋プレート が北方に沈み込みの方向を変え領家帯の上昇は緩やかに なったとしている. さらに, 柴田 高木 (1988) による と中部地方の領家帯において角閃石, 黒雲母, カリ長石 の K-Ar 年代と各鉱物の K-Ar 系における閉鎖温度から花 崗岩類の平均冷却速度 27~28 /Ma が得られており ( 第 3 図 ), この冷却速度がそのまま削剥レベル (20 ) まで適用できるとすると, 領家帯の花崗岩類が削剥レベ ルに達したのは 55 Ma 前後となるが, 柴田他 (1988) で 議論されているようにカリ長石の閉鎖温度 (150 ) に達 した以降は冷却速度が緩やかになり地表に達したのはそ れより若い年代である可能性は残されている. 四国中部三波川帯の別子ユニット上に久万ユニットお よび別子ユニット由来の礫を含む久万層群が約 45~50 3 領家帯 三波川帯の冷却速度と海洋プレートの沈み込みの方向 MTL: 中央構造線.*1 Tagami et al. (1988) *2 柴田 高木 (1988) *3 Takasu and Dallmeyer (1990). 海洋プレートの沈み込みの方向は Maruyama and Seno (1986) による. 207 ( 53 )

10 近重史朗 Ma に不整合に堆積した (Takasu and Dallmeyer,1992) ことから, 約 50 Maには削剥レベルにあったと考えられる. 西南日本の三波川 領家変成岩類の年代値がいずれも東に向って若くなる傾向がある ( 木下 伊藤,1986) ことを考慮しても,58~54 Ma に中部地方の領家帯は三波川帯に比べて急速に上昇し55 Ma 前後以降に削剥レベルに達したのに対し, 三波川帯は緩やかに上昇して削剥レベルに達したのは 50 Ma 以降であろうと推測される. 3 Maruyama and Seno (1986) によれば, 中新世に日本海が開くまでユーラシア大陸の東縁部に位置していた西南日本では次のように沈み込み方向と速度の変遷を経ている : イザナギプレート 100~85 Ma, N24 W, 23.5cm/y クラプレート 85~74 Ma, S88 W, 20.2 cm/y 太平洋プレート 74~53 Ma, N49 W, 10.4cm/y 53~48 Ma, N 4 W, 8.9cm/y 48~43 Ma, N24 W, 7.1cm/y 43~37 Ma, N60 W, 5.8cm/y 37~ 0 Ma, N77 W, 10.6cm/y 次に, 白亜紀 古第三紀における中央構造線の走向を, 西南日本の時計方向の回転 47 と現在の中央構造線の走向 ( 平均 N77 E) から復元したN30 E ( 木下 伊藤,1986) として中央構造線に対する海洋プレートの沈み込む角度を求めると : イザナギプレート 100~85 Ma 54 左斜めクラプレート 85~74 Ma 58 右斜め太平洋プレート 74~53 Ma 79 左斜め 53~48 Ma 34 左斜め 48~43 Ma 54 左斜め 43~37 Ma 90 左斜め 37~ 0 Ma 73 右斜めとなる. 4 島田他 (1998) はプレートの斜め収束領域における横ずれ圧縮変形 (Harland, 1971 ; Sanderson and Marchini, 1984) に注目し, 紀伊半島東部, 領家帯南縁部における左横ずれ圧縮場による延性剪断帯と褶曲構造形成の関係から地質構造発達を検討し, 左横ずれ圧縮場での変形が, 横ずれ成分としての延性剪断帯の形成と中央構造線と高角な方向の圧縮成分としての褶曲構造の形成とに分配されたとしている. また, マイロナイト化と褶曲構造形成の時期を約 74~67 Maとし, 約 66 Ma には褶曲形成 は完了していたとしている. 従って,74~53 Maに太平洋プレートが中央構造線に対する79 左斜め方向の沈み込みによって形成された横ずれ圧縮場における変形は, 中央構造線にほぼ直交する圧縮成分と中央構造線にほぼ平行な横ずれ成分とに分配されていたと考えられる. また, この中央構造線にほぼ直交する圧縮成分は上盤側の地殻の短縮をもたらし, 領家帯のパイルナップ (Ohtomo,1993; 大友,1996) を三波川帯に衝上させる駆動源であると考えられる. その衝上の方向は中央構造線にほぼ直交ないしわずかに時計回りに斜交する方向であったと考えられる. 領家南縁剪断帯の構造的上位に定置した古期花崗岩が新期花崗岩の貫入後に大きく上昇し, より表層の非変成堆積岩や流紋岩質火砕岩など地下浅所にあった岩石とともにパイルナップを形成した時期として, 領家帯が急速に上昇しアパタイトの閉鎖温度に到達した58~54 Ma (Tagami et al., 1988) とすると, 領家帯のパイルナップが三波川帯に衝上した時期は,54 Ma 以降である可能性が考えられる Ma 太平洋プレートの沈み込み方向は53 Maを境に時計回りに45 変化し中央構造線に対して34 左斜めに変わった. 従って, 左横ずれ圧縮場における変形に対する圧縮成分と横ずれ成分の分配が変わり,53 Ma 以前に比べて横ずれ成分の分配が大きくなったと考えられる.53 Ma 前後には領家帯は削剥レベルに達し, 三波川帯も地表近くまで上昇していたと考えられる (cf (2)) ことから, 地表近くにおいて中角 ~ 低角度北傾斜の初生形態の中央構造線 ( 島田他,1998) を介して上盤の領家帯と下盤の三波川帯は相対的に左横ずれの運動が大きくなったと考えられる. 従って, 領家帯のパイルナップが三波川帯に衝上した時期が54 Ma 以降であるとするならば, 太平洋プレートの沈み込み方向が53 Maに変化し左横ずれ圧縮場における横ずれ成分の分配が漸移的に大きくなったと考えられるので, 領家帯のパイルナップが上記の初生形態の中央構造線を経て三波川帯に衝上する際に下盤の三波川帯の横ずれ方向の移動に引きずられて反時計回りに回転する地塊が発生した可能性が考えられる. しかしながら, 地塊の回転については, 圧縮場での右 ( 左 ) 横ずれ断層運動の場合に反時計 ( 時計 ) 回りの回転が生じるという見解もある (Martel et al., 1988).90~20 Maの中部地方では, 中央構造線は構造線近傍の左横ずれ延性剪断帯の活動から構造線のごく近傍および構造線自体に重なる脆性 ( 54 ) 208

11 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 剪断の活動まで続いた左横ずれ断層であり, ほぼ20 Ma には活動を終息したとされることから ( 柴田 高木, 1988), この地域で20 Maに右横ずれの活動を示す剪断構造を検出したという報告 ( 田中 原,1990) があるものの, 一般的には中央構造線は20 Ma 頃までは左横ずれであつたと考えられる. また,Tagami et al. (1988) はアパタイトの FT 年代から17 Ma が中部地方西部の左横ずれ断層の最後の活動期であったとしていることを考慮すると, 中央構造線は寄居層が西南日本とともに47 時計回りに回転する 16~15 Ma までの間左横ずれの断層運動をしたと考えられ, この間圧縮場にあったとすると時計回りの地塊回転をすると考えられる. 左横ずれ伸長場の場合反時計回りの地塊回転はありうるが, 海洋プレートが沈み込む前弧域にある中央構造線近傍が伸長場になることは考えにくい. しかし, 海洋プレートが右斜めに沈み込む時期はクラプレートの 85~74 Ma, 太平洋プレートの37~30 Maがあり, この時期に中央構造線が右横ずれ運動をした可能性が考えられる. 年代からみて, 寄居層は,37~30 Ma に中央構造線を経て三波川帯に衝上し, その間に約 73 反時計回りに回転した可能性がある. しかし, いずれかを決めるのに有効な知見は得られていない. 寄居層の形成時期 (65~60Ma) から三波川帯に衝上する時期にわたる間における西南日本の造構環境からみて, 寄居層はユーラシア大陸の東縁部の西南日本内帯に堆積し,74~53 Maにおける太平洋プレートの中央構造線に対する 79 というほぼ直交する圧縮場の下で,58~ 54 Maの領家帯の急速な上昇 (cf (2)) に引き続いて, 三波川帯に衝上したと考えられる. 太平洋プレートは 53 Maを境に横ずれ成分が大きくなる方向に沈み込み方向が変化し,53 Ma 前後に領家帯のパイルナップが中央構造線を経て三波川帯に衝上した時期に, 寄居層も反時計回りに回転しながら三波川帯に衝上し定置したと考えられる. 小林 (1995) は寄居層と御荷鉾緑色岩類とが接する低角断層を関東山地北縁の下仁田地域から藤岡地域まで連続する牛伏山断層 ( 鏑川団体研究グループ,1985, 1990) の東方延長とみなし, 断層ガウジの小構造解析から上盤の寄居層は牛伏山断層の運動像と同様の北 ~ 北北西への移動を示すとしている. さらに, 牛伏山断層は低角正断層であること ( 小林,1992) が示されており, 活動時期も中期中新世から後期中新世が考えられている ( 埼玉総会中 古生界シンポジウム世話人会,1995) これらの現在識別される寄居層の低角断層は寄居層が三波川帯に衝上し定置したときの衝上断層に沿って再活動した ものと考えられる. 寄居層の古地磁気の観点から推定すると, 寄居層が堆積した時に獲得した双極子磁場による残留磁化の偏角は ( 正帯磁に変換してほぼ0 ), 三波川帯に衝上し定置した時期に反時計回りに約 73 回転し, それ以降西南日本の約 47 時計回り, 関東山地のみの約 47 時計回りの回転を経て現在地での約 21 (= ) の偏角を示すことになる ( 第 2 図 ). 本研究では, 寄居層の岩相, 堆積年代, さらに太平洋プレートの沈み込み方向の変遷と中央構造線近傍の左横ずれ圧縮場での変形の左横ずれ成分と圧縮成分の分配から推定される造構場における, 寄居層を最上位にのせるナップの挙動から, 測定で得られた寄居層の古地磁気の磁化方位の変動を解釈し, 寄居層の形成から現在に至る移動過程を推定した. 以上のように, 比企丘陵の白亜紀後期 古第三紀花崗岩類, 寄居溶結凝灰岩類, 寄居層は, 領家帯に起源を持ち, 北方 ( 西方 ) から三波川帯へと移動し, 現在は三波川帯上に定置するパイルナップである, と考えられる 寄居町南方の車山 ( 標高 226.8m), 山居地区の 209m ピーク, 車山南東方向約 4 km の小川町金勝山 ( 標高 m), さらに南東約 3.5 km の小川町富士山 ( 標高 m) のように比較的標高の高い場所に分布する. 北東側は寄居層と高角断層で接し, 南西側は緑色岩メランジュあるいは栃谷層と高角断層で接するWNW 方向に約 10 km, 幅約 2 km の岩体である. 小川町木呂子地区では三波川帯御荷鉾緑色岩類が地窓状に露出し, 車山および山居地区の石英閃緑岩は周囲が三波川帯御荷鉾緑色岩類に取り囲まれる分布をしている. 石英閃緑岩に伴うホルンフェルスが小川町木部から勝呂にかけて, 石英閃緑岩および栃谷層と断層で接してわずかに分布する ( 牧本 竹内,1992). 本岩体は中粒 粗粒石英閃緑岩を主とし一部はトーナル岩で金勝山周辺では花崗岩質のぺグマナイトの岩脈に貫かれ岩体全体が破砕されている. 普通角閃石の配列による面構造が発達する. 主に斜長石, 普通角閃石, 石英, 黒雲母, 燐灰石, 磁鉄鉱, 緑泥石, 緑れん石, 白雲母, ぶどう石, パンペリー石を含み, 石英は多結晶化している ( 高木 藤森,1989; 牧本 竹内,1992). 2 金勝山石英閃緑岩体が三波川帯の上にナップをなす証 209 ( 55 )

12 近重史朗 拠となる低角断層の露頭は現時点では認められないが, なだらかな三波川帯の岩石の分布域の地形的に突出した部分に分布し ( 車山, 山居岩体 )( 小坂,1978; 平島, 1984), 石英閃緑岩体中の地形の低い部分に三波川帯の岩石が地窓状に分布し ( 木呂子地区 ), その東側の沢底に沿って石英閃緑岩のガウジ化した部分が存在する ( 高木 藤森,1989) ことから, 石英閃緑岩体は三波川帯の上にナップをなすと考えられる ( 小坂,1978,1979; 高木 藤森,1989). さらに, 石英閃緑岩には下盤の三波川帯の岩石に認められる地表付近での断層角礫 断層ガウジの破砕以外にカクレーサイトや地下のある程度の深所での変形で生じたマイロナイトの存在といった破砕様式の相違 ( 小坂,1978,1979), 石英閃緑岩はぶどう石 - パンペリー石相の変成作用を受けているのに対して下盤の三波川帯の岩石は受けていないといった変成相の相違 ( 平島,1984) からも, 石英閃緑岩体は三波川帯の上にナップをなすと考えられる ( 小坂,1978,1979; 平島, 1984). 石英閃緑岩体のナップ形成時の移動方向は, 寄居 - 小川地域では基底断層の露頭がないため求められていないが, 金沢地域の石英閃緑岩分布域において跡倉層との境界断層が記載されている. 上盤側の石英閃緑岩がホルンフェルスを挟んで下盤側の跡倉層と低角断層 (N56 E~ N74 E,18 ~30 S) で接し断層面の条線の方向はSW~ W, 沈下角 10 以下, 断層破砕帯に認められるP 面,R1 面から上盤が SW 方向へ移動した運動のセンスが想定されている ( 高木 藤森,1989). 新井他 (2000) は, 下仁田地域の石英閃緑岩に貫かれるホルンフェルスが跡倉層砂岩上をほぼ水平な断層を挟んで南南西 ~ 南西の剪断センスを示し, 金沢地域とほとんど一致する移動方向を報告している. 下仁田地域, 金沢地域, 寄居 - 小川地域の石英閃緑岩は鉱物組成や全岩および角閃石の化学組成が一致することから,3 地域の岩体は元来は1 つの大きな岩体であったと考えられている ( 高木 藤森,1989). 従って, 石英閃緑岩体が栃谷層上をSW 方向へ移動したことは確かである 石英閃緑岩の起源については, 南部北上帯の薄衣礫岩中の花崗岩礫に対比されている (cf. 2.3). しかし, 薄衣礫岩中の花崗岩礫の供給源については, 南部北上帯中にぺルム紀の花崗岩体は知られていない. 薄衣花崗岩礫が堆積学的見地から, 南部北上帯の西 ~ 南方に位置する南部北上帯とは異なった地帯の火成弧から供給されたという見解がある ( 吉田他,1994; 吉田,2000). また, 永広 (2000) によれば, 薄衣花崗岩礫のK-Ar 年代 ( 角閃石, 262±9 Ma,276±9 Ma,242±9 Ma; 黒雲母,225±7Ma ( 柴田他,1979)), および薄衣花崗岩礫の層準がCapita- nian に対比され最近の放射年代資料によればCapitanian の上限は264 Maと253 Maの間にあることから, 金勝山石英閃緑岩の年代値 (251~252Ma) は薄衣花崗岩礫の層準 (Capitanian) より若い年代を示し, 金勝山石英閃緑岩は必ずしも薄衣花崗岩礫に対比されるわけではないとしている. さらに, ぺルム系薄衣式花崗岩礫は九州から四国にかけての黒瀬川帯に存在し ( 吉倉,1982), 黒瀬川帯の花崗岩類から供給されたという見解もあるが ( 清水他,1998), これまでのところ250Ma 頃のぺルム紀の花崗岩類は黒瀬川帯には知られていない. 薄衣式花崗岩礫は, 南部北上帯ではSrI:0.7042~0.7047, 角閃石 K-Ar 年代 242~ 276Ma, 黒瀬川帯では四国でジルコンのU-Pb 年代 276,250 Ma ( 土居層 )(Hada et al., 2000), 九州では Rb-Sr 同位体のアイソクロン年代 253 Ma,SrI: ( 清水他,1998) が得られており, 両者は岩石化学的に酷似する. このことから, 薄衣式花崗岩礫の供給源は南部北上帯, 黒瀬川帯に共通したぺルム紀花崗岩類をもたらした火成活動による可能性が大きい. 現在, ぺルム紀花崗岩類が存在するのは関東山地金勝山石英閃緑岩 ( 小野,1983; 高木 藤森,1989), 赤石山地兵越花崗岩 ( 柴田他,1993; 高木 柴田,1996), 九州東部臼杵川石英閃緑岩 ( 高木他,1997) であり, いずれも SrI:0.704 前後,K-Ar 年代 250~270Ma の年代を示し同様の岩石化学的性質を示す. 小林他 (2000) は, ぺルム紀薄衣式花崗岩礫の供給源は未成熟な海洋性島弧もしくはそれを含む大陸縁辺部であった可能性が高いとしている. ぺルム紀花崗岩類についても大陸縁辺部における火成活動にその起源を求めるのが妥当である. 田沢 (2000) によると, 飛騨外縁帯, 南部北上帯, 黒瀬川帯はオルドビス紀初期に大陸縁辺の沈み込み帯で誕生し, 石炭紀 ぺルム紀は浅海域の大陸棚で発達し, この3 帯の層相と化石相の広域的な比較から砕屑岩を主体とし火山岩類に富む中朝地塊で形成された地質体と推定され, オルドビス~デボン系が形成された沈み込み帯も中朝地塊縁辺に推定され, さらにぺルム紀紡錘虫 腕足類フォーナの検討からぺルム紀には中朝地塊が北半球中緯度地域にあったと推定されている. また, 飛騨外縁帯, 南部北上帯, 黒瀬川帯の 3 帯はぺルム紀紡錘虫 腕足類とジュラ紀後期 ~ 白亜紀前期植物の古生物学的検討からぺルム紀 ~ジュラ紀には北から南へ飛騨外縁帯 - 南部北上帯 - 黒瀬川帯の順序で 1 列に配列していたと考え ( 56 ) 210

13 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 られている ( 第 4 図 ). このようなぺルム紀 ~ジュラ紀において北から南へ飛騨外縁帯 - 南部北上帯 - 黒瀬川帯の順序で 1 列に並ぶ配列が, 現在みられるような内帯に飛騨外縁帯, 外帯の北側に南部北上帯, その南側に黒瀬川帯が並ぶ配置に改変される過程として白亜紀以降の左横ずれ運動が想定されている ( 田沢,2000). 以上から, 南部北上帯薄衣礫岩花崗岩礫に対比されている金勝山ナップの石英閃緑岩は, ぺルム紀の大陸縁辺部における火成活動に伴って付加体コンプレックスに貫入した火成岩であった可能性が高い. 5.3 寄居 - 小川地域には, 阿武隈帯に帰属するとされる白亜紀前期の花崗岩類 変成岩類の小岩体が点在する (cf. 2.4)( 第 5 図 ):1 2 ざくろ石角閃岩 ( 折原岩体 ( 小野, 1990),4 寄居層と金勝山石英閃緑岩の高角境界断層の金勝山石英閃緑岩側に砂質片麻岩 ざくろ石片麻岩 ( 金勝山岩体 ; 高木 藤森,1989),6 寄居溶結凝灰岩類の北側三波川変成岩類内部にざくろ石片麻岩 角閃岩 片麻状石英閃緑岩 石灰岩の複合岩体 ( 牟礼岩体 ; 端山 比企団体研究グループ,1985),3 金勝山石英閃緑岩分布域の東方三波川変成岩類内部に片麻状石英閃緑岩 泥質片麻状岩 角閃岩 石灰岩の複合岩体 ( 中高谷岩体 ; 小野,1990) の小分布が点在する. 高木 (1991) は, 三波川変成岩類の上位に点在するこれらの変成岩類と下仁田地域 金沢地域の変成岩類を一括して寄居変成岩と命名 した ( 以下, 寄居変成岩と呼ぶ ). なお, 寄居層に近接する三波川変成岩類内部に角閃岩, 寄居層と三波川変成岩類に挟まれて角閃岩 片麻岩が狭長に分布するので ( 小野,1990), ここではそれらを折原岩体と名づける. 寄居変成岩の花崗岩類の角閃石 K-Ar 年代は 92~ 113Ma の値が得られている ( 高木他,1989; 小野,1990). また,SrI 値として が得られている ( 柴田 高木, 1989). 折原岩体の角閃石 K-Ar 年代は109Ma が得られている ( 小野,1990). 寄居変成岩の花崗岩類は変成岩に密接に伴われるので, 寄居変成岩の角閃石 K-Ar 年代範囲は92~112Ma となり, 関東山地北縁部の領家花崗岩類 ( 平滑花崗岩, 非持型花崗岩 ) で求められた黒雲母 K-Ar 年代 62~64Ma( 高木他,1989),SrI 値 ~ ( 柴田 高木,1989) とは明瞭に異なり, 領家帯に帰属を求めることは無理である. 一方, 寄居変成岩 折原岩体は阿武隈帯の竹貫変成岩に対比されている ( 柴田 高木,1989; 小野,1990). 阿武隈帯の変成岩に伴われる花崗岩類も角閃石 K-Ar 年代は96~119Ma( 柴田 内海, 1983) とSrI 値 ~ (Shibata and Ishihara, 1979) に一致することから, 寄居変成岩は阿武隈帯と共通の起源を持つ可能性が大きい. 寄居変成岩 折原岩体に属する小岩体は, 周囲の地質体とは高角の断層で境され構造岩塊 ( テクトニック ブロック ) と考えられている ( 小野,2000). 寄居変成岩の放射年代 92~113Ma からみて, 異地性の岩体であることは明らかである. 4 日本列島前期白亜紀における飛騨外縁帯 (HG), 南部北上帯 (SK), 黒瀬川帯 (KU) 矢印は左横ずれ運動の方向を示す ( 田沢 (2000) から引用.c 日本地質学会 ). 211 ( 57 )

14 近重史朗 5 関東山地寄居 - 小川地域異地性小岩体の位置 ( 小野 (2000) により記載されたテクトニック ブロック. 1 と 2 は変成岩体,3 はペルム紀変成岩体,4 は砂質片麻岩体,5 はチャート岩体,6 は片麻岩体である. 谷津から金勝山にかけての地質断面を最下部に示す. 高度は任意スケールである )( 小野 (2000) から試料採取地点 ( 印 ) を消して引用.c 日本地質学会 ) 寄居町山居地区採石場, 寄居町五ノ坪地区の五の坪川において栃谷層を調査し, 層序 岩相および地質構造 ( 褶曲 断層 ) を記載し, 栃谷層の堆積環境, 押し被せ褶曲, 衝上断層に関する考察に基づいて, 次の結論を得た ( 詳しくは, 近重 (2000b) 参照 ). (1) 栃谷層は, 下位から礫岩層, 砂岩層, 砂岩泥岩互層へと漸移する. 礫岩層はプロトマイロナイト化した花崗岩の礫を含む. 延性剪断帯を含む後背地から供給された砕屑物が NE SW 方向の古流向により運搬され, 大陸斜面から深海底面にかけてタービダイトとして堆積した. (2) 栃谷層は, 軸面が低 ~ 中角度の南傾斜の北フェルゲンツを示す転倒褶曲と正立褶曲 ( 正立背斜 正立向斜 ) が共存する構造をなし, 転倒褶曲, 正立褶曲の軸はほぼ E-W 方向を示す. (3) 栃谷層分布域の北限に, 下盤の御荷鉾緑色岩類に 対して上盤の栃谷層礫岩が北への剪断センスを示す基底断層が存在する. この衝上断層は脆性領域の変形特性を示す. (4) 従来から跡倉相当層とされナップである栃谷層が, 岩相, 後背地の地質, 押し被せ褶曲のフェルゲンツのいずれにおいても模式地の跡倉層と異なることが明らかになった. 上部白亜系から成るナップについては, 従来から考えられてきた跡倉層からなるナップとは別の性格を有する栃谷層からなるナップ ( 栃谷ナップ ) の存在を考える必要がある. 以上の結果に基づいて, 栃谷層の構造発達の一つのモデルを第 6 図に示す 前述の結果から, 栃谷層は北方からのタービダイトを主とする砕屑岩により堆積層を形成した後に北方への押し被せ褶曲によりナップを形成し, さらに基底断層により北に移動した異地性岩体であることが明らかになっ ( 58 ) 212

15 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 6 栃谷層の構造発達模式図 (a)~(e) は栃谷層の構造発達の順序を示すモデルの一例. た. 栃谷層は現在では三波川帯の上に定置しているが, 栃谷層が形成された白亜紀後期のTuronian~Campanian ( およそ 90~74Ma) には三波川変成岩類は地表に露出しておらず (cf (2)), ジュラ紀 白亜紀前期の付加体 ( 秩父帯 ) が露出していた ( 秩父帯北帯は緑泥石帯の三波川変成作用を受け K-Ar 年代 117 Ma; 平島他,1992) ことから秩父帯で堆積した可能性が高い. 関東山地北部には, 下部白亜系山中層群と上部白亜系跡倉層 栃谷層が先第三系の帯状配列にほぼ平行に分布している ( 第 1 図 ). 秩父帯北帯と南帯の間に山中層群が堆積し, 蛇紋岩の分布状態から南縁境界に左横ずれ断層が認定されており ( 久田他,1987), さらに南縁の蛇紋岩の貫入, 緑色岩 ( 玄武岩 ) の噴出の時期として全岩の K-Ar 年代約 120 Maが知られている ( 石田他,1992). こ の玄武岩 蛇紋岩の噴出 貫入は堆積盆南縁で左横ずれ断層の活動により生じ, 左横ずれ断層の活動に伴うプルアパート堆積盆と考えられている ( 久田,1994) ことから, 関東山地に白亜期前期に左横ずれ断層が活動したことは明らかである. この断層は, 山北 大藤 (2000) の提起した白亜期前期および白亜期後期のアジア大陸東縁にそれぞれ数百 km 以上の変位量をもつ左横すべり断層系 - 黒瀬川断層系と中央構造線断層系 -のうち黒瀬川断層系に相当すると考えられる. なお, 黒瀬川断層系と中央構造線断層系は一部では重複しており, 二つの時期に分かれて活動した一連の断層系ととらえ中央構造線 - 黒瀬川断層系と呼ばれている ( 山北 大藤,2000). また, 関東山地北縁の跡倉層および栃谷層は三波川帯 213 ( 59 )

16 近重史朗 の上にその地帯構造の配列に平行なWNW 方向にクリッペとして点在しているが, それらの初生堆積構造は, いずれの地域も ESE WNW ないしE W の軸流があり ( 長沼 加藤,1978; 新井 高木,1998),N S ないしNNE SSW の側流によって砕屑物が供給されたことから ( 新井 高木,1998; 近重,2000b),WNW 方向の狭長な堆積盆を形成していたと考えられる. 従って, 栃谷層および跡倉層はナップであるが関東山地北縁の上部白亜系に共通な古流向を示すことから, 初生堆積構造は比較的保存されていると考えられる. さらに, 下仁田地域跡倉層において 2-3 NW に傾く ( ただし傾きの大きさと方向はさまざまである ) 基底断層の上盤の跡倉層がW ~WNW,N~NW,N への移動の三つのステージがある (Kobayashi,1996) ことから, この最初のステージの移動方向は三波川帯の地帯構造の配列に平行であり, 白亜紀後期の中央構造線の低角左横ずれ断層によると考えられる. しかし, 栃谷層および跡倉層はナップであることから, 大局的に初生堆積構造は比較的保存されているとはいえ, 初生堆積構造はその後の褶曲, 断層の活動により改変されているので, プルアパート堆積盆の特徴を見出すことは困難である. 白亜紀後期の中央構造線の低角左横ずれ断層との関連から, 四国西部から紀伊半島西部まで帯状に分布する上部白亜系和泉層群は, 中央構造線の左横ずれ断層運動に伴う非対称プルアパート堆積盆とされている (Miyata,1990; 宮田 岩本,1994) ことを勘案して, 関東山地北縁の上部白亜系の堆積盆も中央構造線の左横ずれ断層運動に伴うプルアパート堆積盆であった可能性が考えられる. 武井 (1992) は, 砂岩組成からG-D 法によるQm-F-Lt ダイヤグラムのprovenance type 区分は,basement uplift~dissected arc, 一部は transitional continental 領域に属し, リフトや横ずれ断層に沿う地帯の堆積物としていることから, 栃谷層 跡倉層が横ずれ断層に伴う堆積盆である可能性を示唆している. 従って, 白亜紀前期および後期のアジア大陸東縁に活動した左横すべり断層系 - 黒瀬川断層系と中央構造線断層系 ( 山北 大藤,2000)- のうち黒瀬川断層系によって形成された山中 ( 層群 ) 堆積盆と中央構造線断層系の活動によって形成された可能性のある栃谷 - 跡倉堆積盆は異なる堆積盆であると考えられる. このことは, 堆積年代が重複しないことからも明らかである ( 山中層群はおおよそHauterivian~Cenomanian (123~92Ma), 栃谷層 跡倉層はTuronian~Campanian (92~72 Ma)( 埼玉総会中 古生界シンポジウム世話人会,1995)). さらに, 山中層群最上部の三山層基底礫岩 から黒雲母 K-Ar 年代 182~226Ma を示す三畳紀の花崗岩礫および黒雲母 K-Ar 年代 88~110 Maを示す白亜紀花崗岩礫が報告されているが ( 高木他,1995), これらの礫は山中層群に認められている古流向 ( 坂 小泉,1977) のうちNE SWの側流によって供給されたと考えられる. 従って, その供給源として, 金勝山石英閃緑岩と一連の火成活動によって形成されたぺルム紀 三畳紀の花崗岩類と白亜紀花崗岩類が, 山中 ( 層群 ) 堆積盆の北方に存在したことが示唆される ( 高木他,1995). しかし, 跡倉層の花崗岩礫から角閃石 K-Ar 年代 248~276 Ma が得られているが, 白亜紀前期の年代値は得られていない ( 高木他,1992). 跡倉層中の砕屑性ざくろ石の組成範囲の一部が白亜紀前期寄居変成岩のざくろ石の組成範囲と一致することから, 後背地に白亜紀前期の花崗岩類 変成岩類も存在していた可能性も残されているとしても ( 高木他,1992), 山中層群最上位の三山層の堆積時と栃谷層, 跡倉層の堆積時には, 堆積盆の後背地に変化があったことが考えられる. これらのことを考慮して, 山中 ( 層群 ) 堆積盆と栃谷 - 跡倉堆積盆は別の堆積盆であると考えられる. 栃谷層に供給された礫種には花崗岩, 石英閃緑岩が多く, そのほか溶結凝灰岩, チャート, 凝灰岩, アプライト, 斑れい岩, 石灰岩, 砂岩, 泥岩がみられ, 牧本 竹内 (1992) の指摘するように三波川帯の岩石は礫として含まれていない ( 近重,2000b). 跡倉層に含まれる花崗岩礫の角閃石 K-Ar 年代 248~276Ma が得られており, 跡倉層堆積時の後背地にぺルム紀の花崗岩類が分布していたことは間違いないものと考えられている ( 高木他, 1992). これらの礫は花崗岩類を含めてNE SWの側流によって供給されたことから ( 近重,2000b), 跡倉 - 栃谷堆積盆のNE 方向に供給源としてぺルム紀の花崗岩類, 白亜紀前期の花崗岩類 変成岩類が存在し, 礫種に陸源性粗粒砕屑岩と遠洋 半遠洋性堆積物を含むことから秩父帯からも供給されたことが考えられる. 砂岩中の砕屑性クロムスピネルの化学組成から跡倉層の供給源の一部は秩父帯に存在したという指摘 (Hisada et al., 1997) からも, 明らかである. また, 栃谷層分布域の南方の秩父帯に栃谷層の小分布 ( 石井他,1990), および金沢地域の跡倉層分布域の南方の秩父帯にも跡倉層の小分布 ( 牧本 竹内,1992) が記載されている. これらがクリッペかどうかは明らかではないが, 少なくとも栃谷層および跡倉層が秩父帯に存在した痕跡であることを示唆する. 日本列島における白亜紀のタービダイトの発達する堆積盆には次のものがある.1 白亜紀前期の左横すべり断 ( 60 ) 214

17 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 層帯 黒瀬川断層系 ( 黒瀬川断層帯 - 紀伊半島西部以北の中央構造線 - 棚倉構造線 ( 山北 大藤,2000)) の活動に関連した堆積盆.. 物部川層群, 外和泉層群, 山中層群, 大船渡 気仙沼 日詰層など.2 白亜紀後期の左横すべり断層帯 中央構造線系 ( 臼杵八代構造線 - 中央構造線 - 畑川 双葉断層系 ) の活動に関連した堆積盆. 大野川層群 (Cenomanian~Santonian,96~83Ma; 寺岡他, 1992), 和泉層群 (Campanian~Maastrichtian,83~65Ma ; 小玉,1990), 跡倉層 栃谷層 (Turonian~Campanian, 92~72 Ma), 双葉層群 (Coniacian,88~87 Ma; 大槻 永広,1992). 前者 1 の棚倉破砕帯内のマイロナイト化は 99Ma 前後には終了していたという見解 ( 越谷 永広,1998), 後者 2 による活動時期を大野川 - 和泉層群の堆積時期から90~65Maとする見解 ( 山北 大藤, 2000) から, 黒瀬川断層系 - 中央構造線は白亜紀前期の黒瀬川断層から白亜紀後期の中央構造線断層へ左横ずれ断層運動を移動したものと考えられる ( 第 7 図 ). 以上の考察から白亜紀前期から後期にかけて関東山地の北部では, 黒瀬川断層から中央構造線断層へ左横ずれ断層運動を移動し, それに伴って堆積盆の形成場が山中堆積盆から跡倉 栃谷堆積盆へと変化したと考えられる. また, 白亜紀にはぺルム紀花崗岩類, 白亜前期の花崗岩類 変成岩類が山中 ( 層群 ) 堆積盆, 引き続いて跡倉 - 栃谷堆積盆に礫を供給できる位置まで黒瀬川断層系の左横ずれ運動によって移動してきていたと推定される. この時期 (123~92,92~72 Ma) には, 関東山地の三波川変成岩は変成場 ( 白雲母 K-Ar 年代,84~60Ma( 緑泥石帯は84~72 Ma))( 平島他,1992)) にあり地表に露出していなかったと考えられる. このことは, 跡倉層, 栃谷層に三波川変成岩の礫が含まれていないこと ( 牧本 竹内,1992), 栃谷層砂岩の砕屑性ザクロ石に高圧型のザクロ石をほとんど含まないこと ( 新井 村上他,2000) でも明らかである. 7 白亜紀 古第三紀 ( 日本海拡大前 ) の横ずれ断層系と横ずれ堆積盆の分布白亜紀横ずれ断層系は山北 大藤 (2000) を参考に作成. 5.5 寄居 - 小川地域では, 緑色岩メランジュが栃谷層の南限で秩父帯との境界部に狭長に分布する ( 第 5 図 ). 著しく剪断されたアクチノ閃石岩および蛇紋岩を基質としてこれに包有される変成岩塊, および蛇紋岩化した超苦鉄質岩からなる. この変成岩塊ははんれい岩, アルカリ輝石 -アルカリ角閃石岩, 緑れん石角閃岩や角閃岩の長径数 m~100 m の大きさのレンズ状の岩塊として産する. 緑色岩メランジュは全体としてぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を受けている ( 平島,1984). 栃谷層の北限でも分布域西部に分布する ( 竹内 牧本,1995) とされたが, 平島 (1984) は超苦鉄質岩とこれに伴うヒスイ輝石 + 石英岩とし緑色岩メランジュに含めていない. 弱変成堆積物 ( 栃谷層 ), 古生代の年代を示す花崗岩類 ( 金勝山石英閃緑岩 ) および変成岩塊を構造岩塊として取り込む緑色岩メランジュの組み合わせは黒瀬川帯に類似することから, 黒瀬川帯の東方延長部にあたる可能性が指摘されている ( 平島,1984). 角閃岩塊の402 ±20Ma の角閃石 K-Ar 年代 ( 竹内 牧本,1995) は四国の黒瀬川帯の角閃岩と一致し ( ざくろ石 - 単斜輝石角閃岩の角閃岩 K-Ar 年代 402±21Ma (Yoshikura, 1981); ざくろ石 - 角閃岩の黒雲母 K-Ar 年代 394 ±12Ma (Iwasaki and Shibata,1984)), 角閃岩塊は黒瀬川帯に属するが, 他の変成岩塊や基質のアクチノ閃石岩など緑色岩メランジュ全体が黒瀬川帯に属するか否かは今後の検討を待たなければならない ( 竹内 牧 215 ( 61 )

18 近重史朗 本,1995) とされていた. さらに, 佐藤他 (2000) によると,402±20Maの角閃岩 K-Ar 年代 ( 竹内 牧本,1995) が得られている緑色岩メランジュ分布域西部の勝呂 - 木呂子林道沿いの砂岩岩塊中の砕屑性クロムスピネルおよび基質の蛇紋岩のクロムスピネルの化学組成を測定し, 前者は四国黒瀬川帯の最上部ぺルム系砂岩に含まれる砕屑性クロムスピネルの化学組成範囲とほぼ一致し, 後者は四国黒瀬川帯, 山中地溝帯南縁部, さらに名栗断層沿いの蛇紋岩基質中のものと類似することを明らかにした. これらの砂岩 蛇紋岩は黒瀬川帯と考えられている地域の砂岩 蛇紋岩と類似したクロムスピネルの化学組成を示すことから, 緑色岩メランジュは黒瀬川帯に帰属する可能性が大きいとし, 包有する角閃岩岩塊 402±20Maの角閃岩 K-Ar 年代 ( 竹内 牧本,1995) を含めて地質学的産状, 年代は黒瀬川帯の特徴とほぼ一致しており黒瀬川帯の東方延長部の一つであるとしている. 一方, 緑色岩メランジュの定義を拡大し, 基質についてもアクチノ閃石岩以外に剪断された砂岩を認め, 包有される岩塊も従来の変成岩塊以外に花崗岩, 砂岩, 石灰岩, チヤート, 酸性凝灰岩を含める見解があり, 木呂子メランジ と新称されている ( 小川町史編纂委員会, 1999). 岩石記載によると木呂子メランジを構成する岩石は, 普遍的にぶどう石, パンペリー石, 緑れん石を含み, ぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を受けていることから, 変成を受けた後にぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を受けていない三波川帯, あるいは秩父帯の構造的上位に定置したこと ( 平島,1984) は確かである. しかし, 従来の緑色岩メランジュとされてきた分布域西部には変成岩塊を含み, 分布域東部に認められる花崗岩, 砂岩, 石灰岩, チャート, 酸性凝灰岩の岩塊を含まず基質にも砂岩は認められない. このような岩相の大きな差は, 分布域東部の小川町笠原以東でみられる花崗岩, 石灰岩, 酸性凝灰岩岩塊は, 小川町史編纂委員会 (1999) も考えるように, 栃谷層の基底礫岩である可能性が大きいと考えられる. これに対して, 花崗岩, 砂岩, 石灰岩, チャート, 酸性凝灰岩の岩塊を含み基質にも砂岩を認める小川町笠原以東でみられる 木呂子メランジ は, 花崗岩の全岩 K-Ar 年代 143±28Ma, および120±28Ma, 酸性凝灰岩の全岩 K-Ar 年代 111 ±4Maがあり ( 小川町史編纂委員会,1999), このような年代の若い花崗岩類, 酸性凝灰岩は知られていない黒瀬川帯に帰属させることは無理と考えられる. 小川町史編纂委員会 (1999) の記述にもあるように, 秩父帯起源と見られる砂岩, 石灰岩, チャート ( や花崗岩, 酸性凝灰岩 ) を含むことから 木呂子メランジ を栃谷層の基底礫岩である可能性が大きいとするほうが妥当である. 以上を纏めると, 木呂子メランジ が起源を異にする小川町木呂子以西の 緑色岩メランジュ を含むことには矛盾があると思われる. クロムスピネルの化学組成, 包有する角閃岩岩塊の年代から黒瀬川帯に帰属する可能性の大きい緑色岩メランジュもまた異地性岩体であることは明らかである. 6 寄居ナップは, 起源, 年代, 介在する断層, 礫の供給関係, 層序関係などによって, これを構成する五つのナップの形成過程における類縁関係を想定することができる. ここでは, ナップを形成して移動する過程, あるいは三波川帯上で同じような挙動 態様を示したと考えられる複数のナップ間の構造関係を寄居ナップの内部構造といい, そのような構造関係を共有する複数のナップを ( 寄居ナップの ) サブナップとする. それらは,1 領家 - 阿武隈ナップ ( 阿武隈ナップを領家ナップと境する地質体に挟み込まれた構造岩塊とみなす ),2 金勝山 - 栃谷 - 黒瀬川ナップ ( 金勝山ナップは栃谷ナップの上にのり, 黒瀬川ナップは栃谷層と秩父帯の間に挟み込まれた構造岩塊とみなす ) の二つのサブナップである. それぞれのサブップ内部の構造関係が内部構造である. 従来, 関東山地北縁ナップの内部構造に言及した研究は, 次の通りである.1 下仁田地域, 金沢地域の跡倉ナップ ( 高木 藤森,1989; 高木 柴田,1996) において, 金勝山石英閃緑岩が跡倉層の上にのる複合ナップ ( 跡倉ナップ / 金勝山ナップ ) からなるとする見解,2 北方のルート ゾーンで別々の地質帯に分布していた種々の岩石が積層ナップを形成した後に短縮テクトニクスによって異質な岩体が接合したできたテクトニック ブロックの集合体が三波川帯上で定置したとする見解 ( 小野,2000),3 ぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を受けている跡倉層と金勝山石英閃緑岩, および緑色岩メランジュと受けていない寄居溶結凝灰岩類, 寄居層の二つのグループに分け, 現在の配列はナップ形成時あるいはそれ以前の配列を反映しているとし, 前者は, 三波川帯の北方 ( 古領家帯 ) から移動し, 後者も三波川帯の北方 ( 領家南縁帯 ) からと推測される見解 ( 明確に述べてはいないが, そのように推測される )( 竹内 牧本, 1991; 牧本 竹内,1992; 埼玉総会中 古生界シンポジウム世話人会,1995). ( 62 ) 216

19 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 寄居溶結凝灰岩類と寄居層の境界断層は, 当地域の WNW 方向の地層の帯状配列を規制する高角断層である ( 小勝他,1970). これは中新世に活動した断層と考えられる ( 小坂,1979). この断層に近い荒川左岸の露頭において, 寄居溶結凝灰岩類と寄居層とが接する約 5 m 幅で約 9 m 続く断層破砕帯がある ( 小坂 近重,2002). 断層破砕帯内の葉片状ガウジと粘土状ガウジの境界面はN51 E 47 N の姿勢を示し, 葉片状ガウジ帯のS-C 状構造, 覆瓦状構造非対称配列は上盤寄居層が右横ずれの変位を示す. この断層の走向は当地域で一般的なWNW 方向,N-S 方向と大きく異なる. この断層は, 寄居溶結凝灰岩類および寄居層とともに起源地から移動したナップの一部 ( 断層のナップ あるいは 異地性の断層 ) と考えられる. この断層は, 寄居溶結凝灰岩類と寄居層が起源地で接合した領家ナップの内部構造を示すと考えられる ( 小坂 近重,2002). 2 寄居層はハイマートから現在の位置までナップとして移動する過程で反時計回りに73 回転した (cf (3) b). 従って, この断層も寄居層と同じ回転をしたはずであり, 関東山地時計回り94, 寄居層移動時の反時計回り回転 73 を元に戻して復元すると, =30 ( E) となり ( 小坂 近重,2002,Fig. 9), 日本海開裂以前の西南日本, および中央構造線の走向として見積もられている値とほぼ一致する (N 21 E (Hyodo and Niitsuma, 1986);N 30 E ( 木下 伊藤,1986);N31 E ( 島田他, 1998);N40 E ( 木村,1999), など ). このことは, 寄居層移動時の反時計回り回転 73 を裏付けるとともに, 寄居溶結凝灰岩類と寄居層の境界断層の異地性の検証が妥当である傍証になっている. この断層はおよそ24Maまでは西南日本内帯にあって当時の中央構造線の右横ずれ運動 (cf (5)) に伴って形成されたものである ( 小坂 近重,2002). 3 本サブナップにおける領家花崗岩類 変成岩類と寄居溶結凝灰岩類 寄居層との接触する露頭は見出せないが, 中部地方の領家帯では, 領家南縁剪断帯の構造的上位に定置した古期花崗岩が新期花崗岩の貫入後領家帯が 大きく上昇し, より表層の非変成堆積岩や流紋岩質火砕岩など地下浅所にあった岩石とともにパイルナップを形成して最後に三波川帯に衝上したことから (cf (1)), 比企丘陵の領家花崗岩類 (62~64Ma, 高木他,1989) についても同様に下位から領家花崗岩類, 流紋岩質火砕岩 ( 寄居溶結凝灰岩類 ) 非変成堆積岩 ( 寄居層 ) で構成されるパイルナップが一体となって三波川帯に衝上したと類推され, 寄居溶結凝灰岩類と寄居層は破砕帯 (cf. 6.1 (1)) で接していたと考えられる. 4 阿武隈ナップを構成する白亜紀前期の角閃岩 片麻岩 ( 寄居変成岩 ) の分布には, 以下の特徴がある.( の番号は第 5 図参照 ) (a) 金勝山岩体 4 ( 高木 藤森,1989) は金勝山石英閃緑岩と寄居層との境界断層に沿って分布する. (b) 折原岩体 1 2 ( 小野,1990) も寄居層に近接した三波川変成岩類に囲まれて分布するが, もともと寄居層に取り囲まれていたと推定される ( 小野,2000). (c) 牟礼岩体 6 ( 端山 比企団体研究グループ,1985) は, 三波川変成岩類の分布域に角閃岩や片麻状石英閃緑岩が新第三系の礫岩と断層と接して分布しているが, 礫岩の産状からこの岩体の近くに寄居層が分布していたと推定される ( 小野,2000). (d) 中高谷岩体 3 ( 小野,1990) は片麻状石英閃緑岩 泥質片麻状岩 角閃岩 石灰岩の複合岩体がしばしば強く剪断 破砕されておりその南西部は N50 W 74 Sの断層で寄居層と接している ( 高木,1991). 以上の特徴から, 寄居変成岩 折原岩体は寄居層に深く関係していることが考えられる. また, これらの阿武隈帯に帰属するとされる寄居変成岩 ( 高木,1991) には金勝山石英閃緑岩と接する岩体 ( 金勝山岩体 ) があるが, この岩体は前述したように金勝山石英閃緑岩との境界の高角断層により寄居層に取り込まれた構造岩塊と考えられる. この断層は中期中新世以降に活動したWNW 方向の高角断層 ( 小坂,1979) であるとすると, 新期の断層が古期の断層あるいは古期の地層分布境界で再活動したと考えられる. 以上から, 寄居層に寄居変成岩体が構造岩塊として取り込まれた時期は, 寄居層形成時期以降に寄居層を最上位とするパイルナップを形成した領家ナップサブと阿武隈サブナップが接合した時期と考えられる. この時期は後述する. 6.2 金勝山石英閃緑岩は, 北縁で寄居層にWNW 方向の高 217 ( 63 )

20 近重史朗 角断層によって境される ( 小勝他,1970; 小坂,1979; 牧本 竹内,1992). 金勝山北方でN66 W 88 Nの左横ずれ断層で寄居層側に角礫化した片麻岩を幅せまく挟んで寄居層と接している ( 高木 藤森,1989). 南縁は栃谷層と高角断層で接するが ( 小勝他,1970; 牧本 竹内, 1992), 分布域西部の車山南方で御荷鉾緑色岩類と栃谷層が超苦鉄質岩類を挟んで走向 傾斜 EW~N60 W 50 ~90 Sで接し, 北側の金勝山石英閃緑岩が栃谷層の下位にあることが推定できる ( 平島,1984). 一方, 分布域東部の地域では中角度の接触面の姿勢から, 金勝山石英閃緑岩は栃谷層より明らかに地形的に高い位置に分布しており栃谷層と低角の断層で接し構造的に上位を占めると考えられている ( 小川町史編纂委員会,1999). 分布域の西部と東部では両者の構造関係が逆である. 栃谷層は分布域西部で北縁を限る断層の北側の下面が金勝山石英閃緑岩と三波川変成岩類との間の水平な断層に続くと推定されたが ( 小坂,1979), 前述のように分布域西部で御荷鉾緑色岩類の上に低角でのる栃谷層の衝上断層が認定され ( 近重,2000b), 栃谷層の基底断層の存在が明らかになった. 本層は北縁では分布域西部で超苦鉄質岩類を挟んで御荷鉾緑色岩類と接する. 破砕された超苦鉄質岩類と栃谷層礫岩との境界はN80 W 82 S, 超苦鉄質岩類と御荷鉾緑色岩類との境界はN54 W 70 S を示す ( 近重, 2000b)( ほぼ同じ地域 ( 山居地区 ) で御荷鉾緑色岩類と栃谷層との境界が N90~60 W 50~90 S ( 平島,1984), N76 W 50 S の走向 傾斜 ( 高木 藤森,1989) が報告されている ). これらのことから, 北縁では破砕された超苦鉄質岩類が御荷鉾緑色岩類と栃谷層礫岩にくさび状に挟まれていると考えられる. このことは, 平島 (1984) の示した断面図からも推定される. 分布域東部では栃谷層は金勝山石英閃緑岩と直接高角の断層で接する ( 小勝他,1970). しかし, 前述のように金勝山石英閃緑岩は栃谷層と低角の断層で接し構造的に上位を占めると考えられているところもある ( 小川町史編纂委員会,1999). 南縁では分布域西部で本層は破砕された蛇紋岩と緑色岩メランジュに接し, 接触面の姿勢は N90 W 60~70 S ( 平島,1984),N51 W 84 S( 近重,2000b) を示すことから南傾斜の中 ~ 高角の断層で接すると考えられる. 緑色岩メランジュの南縁での秩父帯との境界は, 分布域境界が直線的で谷や鞍部などの地形的凹地を連ねた線に一致することから高角断層が考えられている ( 牧本 竹内,1992). 金勝山石英閃緑岩, 栃谷層, 緑色岩メランジュは三波川変成岩類, 秩父帯に存在しない共通のざくろ石 -パン ペリー石相の変成作用を受けおり, 三波川変成岩類とは離れた位置に存在していた地質体であり, ナップの移動時期はざくろ石 -パンペリー石相の変成作用とほとんど同時, もしくはその直後と考えられていることから ( 平島,1984), 少なくとも金勝山石英閃緑岩, 栃谷層, 緑色岩メランジュは三波川帯に移動する前に ( 年代から見て三波川帯は地表には存在しなかった ) 同一条件の変成場にあったという意味で一つのグループにまとめることができる. しかし, 金勝山石英閃緑岩, 栃谷層, 緑色岩メランジュのうち前二者については, 下仁田, 金沢地域で金勝山石英閃緑岩が跡倉層の上位に低角断層を介してその構造的上位に重なり ( 高木 藤森,1989), 栃谷層分布域東部でも栃谷層と低角の断層で接し構造的に上位を占めているが ( 小川町史編纂委員会,1999), 栃谷層分布域西部では栃谷層が基底断層を介して直接三波川帯御荷鉾緑色岩類にのる ( 近重,2000b). この相違は金勝山石英閃緑岩の下位にある栃谷層の削剥レベルに差があることを反映していると考えられるが, 金勝山石英閃緑岩と栃谷層は複合ナップと考えると一つのグループとすることができる. さらに, 黒瀬川帯に帰属される緑色岩メランジュ ( 平島,1984; 竹内 牧本,1995; 佐藤他,2000) は, 秩父帯と栃谷層の間に挟み込まれた構造岩塊とみなすことによって金勝山石英閃緑岩と栃谷層のグループに加え, 金勝山 - 栃谷 - 黒瀬川ナップを一つのグループとすることができる. 以上から, 寄居ナップは領家 - 阿武隈ナップ, 金勝山 - 栃谷 - 黒瀬川ナップに分けることができる 領家帯と阿武隈帯については, 変成年代は前者がカリ長石 - 珪線石片麻岩のCHIMEモナザイト年代 102~ 98Ma ( 鈴木他,1994;Suzuki et al., 1994,1996), 後者が角閃石 K-Ar 年代 115~103Ma ( 植田他,1969; 柴田 内海,1983) と阿武隈帯がやや古いが, 阿武隈帯とほぼ同時期の高温型変成帯は領家帯以外にはないので阿武隈帯は領家帯の北方延長とする見解がある ( 大槻 永広, 1992). また, 花崗岩類の形成年代は領家帯 CHIMEモナザイト年代 95~80 Ma (Suzuki et al., 1994,1996), 阿武隈帯角閃石 K-Ar 年代 119~96.4 Ma ( 柴田 内海, 1983; 河野 植田,1965) であることから, 阿武隈帯は領家帯より早く火成活動および変成作用があったことを示している. 一方, 対の高圧変成帯である三波川帯の変成ピーク年代は116 ±10Ma, 冷却年代 110~50 Ma であ ( 64 ) 218

21 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 り (Isozaki and Itaya,1990; 磯崎 丸山,1991 など ), 領家帯と阿武隈帯の高温型変成作用の期間, 高圧型三波川変成作用は続いていたことになる. 西南日本の三波川 領家変成岩類の年代は中央構造線に沿う方向に東 ( 北 ) に向かって若くなるという事実 ( 木下 伊藤, 1986)(cf (2)) と, さらに, 海洋プレートの沈み込み帯の付加プリズム内に高圧型変成岩類, 島弧火山帯軸部の深部で高温型変成岩類が形成され (Miyashiro, 1961), 斜め沈み込みにより火山フロントと沈み込み帯の間の ( 高温のため岩石の流動性が高く ) 強度の弱い部分に横ずれ断層が生じ前弧スリバーとなって斜め沈み込み帯前縁に平行に移動するFitchのモデル (Fitch, 1972) から, 共通の横ずれ断層が作用したとすれば領家帯は阿武隈帯の北に位置するはずである. しかし, 現在, 領家帯は阿武隈帯の南にある. 東アジア大陸の東縁で海洋プレートが沈み込み, 対の変成帯を形成しながら横ずれ断層により前弧スリバーが横ずれ断層に平行に移動するという考え方に立って議論を進めると, 阿武隈帯前縁の左横ずれ断層と領家帯前縁の左横ずれ断層とは活動時期を異にする断層であり, 前者は白亜紀前期, 後者は大陸側で白亜紀後期に活動したと考えられる. 白亜紀後期に活動する断層は白亜紀前期の左横ずれ断層より大陸側に位置するような海洋プレートの沈み込みが始まり領家帯の火成活動をもたらしたとすると, 火成活動は阿武隈帯から領家帯に移ったが, 白亜紀後期の左横ずれ断層の海洋側の阿武隈帯は横ずれ断層により北上したため対の高圧変成帯を欠如した部分が生じた. これが現在の阿武隈帯に対の高圧変成帯がない理由と考えられる. 従って, 領家帯前縁には, 阿武隈帯の一部が残存していたと考えられる. また, 一部は活動を停止した白亜紀前期の断層と白亜紀後期に活動した断層に挟まれて, ナップとして秩父帯に衝上し, 残存したと考えられる. 従って, 白亜紀前期の堆積盆としての山中層群および白亜紀後期の堆積盆としての栃谷層, 跡倉層に阿武隈帯起源の花崗岩 変成岩類の礫を供給することができたと考えられる. このように, 領家帯前縁に存在した阿武隈帯に帰属する白亜紀前期の花崗岩類 変成岩類のうち, 白亜紀後期の左横ずれ断層の活動による削剥を免れた残存岩体が, 下位から領家花崗岩類および流紋岩質火砕岩 ( 寄居溶結凝灰岩類 ) 非変成堆積岩 ( 寄居層 ) で構成されるパイルナップとして三波川帯に衝上し領家帯前縁に構造岩塊として取り込まれたと考えられる. これが領家 - 阿武隈ナップである. その時期は太平洋プレートが沈み込みの方向を大きく変えた53 Ma 前後と考えられる. 2 栃谷層は, 山中層群の堆積後に秩父帯で形成され, 礫種から砕屑物は秩父帯からも供給されたと考えられる (cf ). 下仁田 金沢地域の跡倉層堆積時の後背地にぺルム紀の花崗岩類が分布していた (cf ). これらの礫から北方にぺルム紀の花崗岩類, 白亜紀前期の花崗岩類 変成岩類が分布したと考えられる (cf ). また, 下仁田地域の跡倉層および栃谷層の砂岩の砕屑性ザクロ石の化学組成が寄居変成岩によく似ていることから, 跡倉層および栃谷層の後背地に寄居変成岩が存在した可能性が高い ( 新井他,2000). これらのことから, 栃谷層の堆積時には金勝山石英閃緑岩と寄居変成岩 折原岩体が北方に位置していたと考えられる. このことは, 跡倉層および栃谷層の堆積した時期には, 秩父帯上に北方に金勝山石英閃緑岩と秩父帯に衝上した阿武隈帯の岩体があったことを意味する. 栃谷層堆積時には, この二つのナップは秩父帯に存在し, すでに南方に下部白亜系山中層群は形成されていたと考えられる. 松岡他 (1998) により名称がつけられ区分された北部秩父帯は, 四国ではジュラ紀コンプレックスの上に低角断層を介してぺルム紀コンプレックスがのり両者を不整合に下部白亜系 ( 物部川層群 ) が覆い, 下部白亜系堆積時においてぺルム紀コンプレックスとジュラ紀コンプレックスが近接していたとしているが ( 山北,1998), 関東山地では下部白亜系山中層群がジュラ紀コンプレックス ( 蛇木層 ) を直接覆っている ( 久田 岸田,1987; 山北,1998). 山中層群は産出化石, 岩相から物部川層群に対比され ( 田代,1993), また, 中央部 ~ 南縁部が物部川層群相当層, 北縁部は中九州層群 ( 南海層群 ) 相当層 ( 高橋他,2000) としている. これらのことから, 関東山地では削剥レベルが深く, 山中層群が堆積する時期にはぺルム紀コンプレックスは削剥されてしまったと考えられる. 削剥レベルが深いことは, 関東山地東部では山中層群の延長と考えられる高岡層がジュラ紀コンプレックスの上に不整合にのってわずかに分布する ( 石井 田口, 1986) だけで, ジュラ紀コンプレックスについても下位のユニット ( 柏木ユニット ) が広く分布すること ( 松岡他,1998), 北部秩父帯の構造的下位を占める三波川帯の分布が南に張り出すこと ( 山北 大藤,2000) などから明らかである. 山北 (1998) によると, 北部秩父帯ぺルム紀コンプレックスの岩相は, 石炭紀 ぺルム紀の大規模の石灰岩 塩基性火山岩類の岩体およびぺルム紀砕屑岩からなるぺルム紀コンプレックスを主体とするほか, 弱変成岩類 蛇紋岩を伴いしばしば酸性凝灰岩を伴う. 弱変成岩類は180~210Ma のK-Ar 年代 ( 磯崎他, 219 ( 65 )

22 近重史朗 1992) を示す. しかし, 山中層群の後背地に三畳紀花崗岩および白亜紀花崗岩が分布していたと考えられていること (cf ) を考慮すると, 山中層群堆積時にはぺルム紀コンプレックスが削剥から免れて残存していたことが考えられる. なお, 山中層群の花崗岩礫の黒雲母 K-Ar 年代 182~226Maは黒雲母による年代であるので, 貫入の年代はぺルム紀までさかのぼる可能性もある ( 新井他,2000) としていることからぺルム紀花崗岩とみなすことができる. ぺルム紀コンプレックスに伴われる弱変成岩類の年代と山中層群三山層花崗岩礫の年代が一致することもぺルム紀コンプレックスの残存を示唆する. 北部秩父帯のぺルム紀コンプレックスは沈み込み帯で形成されたとするならば, 火成活動により形成されぺルム紀コンプレックスに貫入した花崗岩類が, 白亜紀後期左横ずれ断層によって栃谷層堆積盆北方に移動してきたと考えられる. 従って, 北部秩父帯のぺルム紀コンプレックスが削剥から免れて残存していた部分にぺルム紀花崗岩があった可能性はあると考えられる. 北部秩父帯の構造的最上位のぺルム紀付加体は沢谷ユニットからなり, 関東山地では叶山 - 二子山の石灰岩が沢谷ユニットに帰属する可能性がある ( 松岡他,1998) ことから, 体積が大きく削剥に強い花崗岩類が削剥から免れ残存する可能性はあると考えられる. このような状況は, 三波川変成岩類が地下浅所にあって, 北部秩父帯に堆積したと考えられる栃谷層および跡倉層堆積時にも共通していたと考えられる. 栃谷層南側の北部秩父帯はぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を受けていないとされてきたが ( 平島, 1984), 四国西部の三波川帯御荷鉾緑色岩類に接する北部秩父帯ではぶどう石 -パンペリー石相の弱変成作用を被っている ( 梅木 榊原,1998). 関東山地でも秩父帯北帯は緑泥石帯の低温部に相当する三波川変成作用が及んでいることから ( 牧本 竹内,1992), さらに変成度の低いぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を受けている部分が存在する可能性が考えられる. 従って, 三波川変成作用が, 北部秩父帯の上にあって削剥から免れて残存していたぺルム紀コンプレックスに伴われていたぺルム紀花崗岩類と北部秩父帯上に堆積した栃谷層に及び, 地下浅所でぶどう石 -パンペリー石相の変成作用を被ったと考えられる. 四国西部では白亜紀中頃に起こった三波川変成作用 (Takasu and Dallmeyer, 1990) が北部および南部秩父帯のジュラ紀コンプレックスにまで及んでいることが明らかであり ( 榊原他,1998), 現在は栃谷層に接する緑色岩メランジュも三波川変成作用を受ける範囲に位置してい たと考えられる. このことは, 白亜紀中頃には北部秩父帯の地質体および黒瀬川帯に帰属する地質体の一部に属する緑色岩メランジュは三波川変成作用の及ぶ場所に位置していたことを意味する. 栃谷層堆積時には三波川変成岩類が地表に露出していなかったと考えられる (cf ). このことは, 栃谷層が北部秩父帯に直接堆積したことの傍証である. Kobayashi (1996) は, 下仁田地域の跡倉層における基底断層の構造解析から上盤の跡倉層が下盤の御荷鉾緑色岩に対してW~WNW,NW~N,N 方向への移動を示す三つのステージのあることを示し, それぞれカタクラサイト化, ガウジ化, 境界面の鏡肌上の条線構造が認められることから断層運動の活動は地下から次第に浅い場所に移動したとし, カタクラサイトは秩父帯で形成されたとしている. このことは, 跡倉層が秩父帯内部で W~WNW 方向の左ずれ低角断層の海洋側に堆積したことを示唆している. 従って, この基底断層は白亜紀後期の左横ずれ断層そのものではなく白亜紀後期の左横ずれ断層と平行な低角断層であり, プルアパート堆積盆の形成に関連した可能性が考えられる.NW~N 方向へ移動した第二のステージで下盤の御荷鉾緑色岩がガウジ化していることは, すでに三波川帯と接触していることになる. この接合時期は三波川変成岩類が地上近くまで上昇した時期とすると, 関東山地三波川変成岩類の緑泥石帯の白雲母 K-Ar 年代 84~72 Ma ( 平島他,1992) から白雲母の閉鎖温度 350 ±50 (Harland et al., 1990) と四国中部の三波川変成岩類で得られている10 /Maの冷却速度 (Shinjoe and Tagami, 1994) から見積もって25 まで冷却するのは52~40 Maとなる. この数値は, 四国地方において久万層群が三波川変成岩類起源の礫を含むことと久万層群の堆積年代から三波川変成岩類が地表に露出したのは前期始新世以前とされていることと調和的である (Takasu and Dallmeyer, 1992; 成田他,1999)(cf (2)). なお, 栃谷層がNW~N 方向へ移動したステージは三波川変成岩類が変成場から上昇し地表に到達する時期であり三波川変成岩類の南方への押し出しに対する相対的な変位であり栃谷層およびその下位の北部秩父帯は移動したわけではない. このことは, 高圧変成岩の構造的絞り出しの際の相対的変位として指摘されている ( 磯崎 丸山,1991). 栃谷層の北方には, 北部秩父帯とその上位にわずかに削剥を免れた北部秩父帯のぺルム紀コンプレックスと削剥から免れて残存したぺルム紀花崗岩があり, 阿武隈帯に帰属する白亜紀前期の花崗岩類 変成岩類も一部は北部秩父帯に残存していた. その北方は領家帯のジュラ紀 ( 66 ) 220

23 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 コンプレックスの非変成部であり, ここに阿武隈帯に帰属する白亜紀前期の花崗岩類 変成岩類が存在し, さらに北方には下位から領家花崗岩類および流紋岩質火砕岩 ( 寄居溶結凝灰岩類 ) 非変成堆積岩 ( 寄居層 ) で構成される領家帯パイルナップがあった. 田沢 (2000) によると, 中朝地塊の東縁部にぺルム紀 ~ジュラ紀には南から北へ黒瀬川帯 - 南部北上帯 - 飛騨外縁帯の順序で一列に並んでいたと考えられ (cf ), 白亜紀以降の左横ずれ運動によって現在のような内帯と外帯に配置され, 前期白亜紀に東ないし南フェルゲンツの衝上運動によって黒瀬川ナップ, 南部北上ナップ ( 田沢,1993), 飛騨ナップ ( 小松他,1985) が定置したとしている. 従って, 白亜紀前期左横ずれ断層活動期にはこの断層の南東側に黒瀬川帯, 南部北上帯, 飛騨外縁帯の 岩石がのって北上し, またこの断層によってジュラ紀の付加体は北と南に分断され, この両者には構造的上位にそれぞれ黒瀬川帯, 南部北上帯, 飛騨外縁帯の岩石がのっており, 前者が丹波 - 美濃 - 足尾帯, 後者が秩父帯であると考えられる. 後者は白亜紀後期左横ずれ断層によって北部秩父帯, 南部秩父帯に分断され, 間に黒瀬川帯が挟み込まれたと考えることができる ( 第 8 図 ). 以上から, 栃谷層の南縁の緑色岩メランジュは前期白亜紀にジュラ紀の付加体である北部秩父帯の上に衝上した黒瀬川帯の岩石が白亜紀後期左横ずれ断層によって生じたプルアパート堆積盆の南縁断層の活動によりその南縁に取り込まれた構造岩塊と剪断の著しい基質 ( アクチノ閃石岩, 蛇紋岩など ) からなる地質体と考えられる. また, 栃谷層の北縁に僅かに分布する超苦鉄質岩とそれ 8 東アジア東縁におけるジュラ紀から白亜紀中期の構造発達モデル. 221 ( 67 )

24 近重史朗 に伴われるヒスイ輝石 - 石英岩もまた三波川変成岩類と栃谷層礫岩に挟まれた構造岩塊である. これらの黒瀬川帯起源の構造岩塊が形成された時期はプルアパート堆積盆の形成時期と考えられる. Kobayashi (1996) のいう第二のステージは前述のように, 三波川帯が地表近くまで上昇してきた時期であり三波川帯は南方に移動し栃谷層は相対的にNW~N 方向には動いたが, 秩父帯に対してはほとんど移動はしなかったと解釈できる. この年代は, ほぼ50Ma 前後であると考えられる. 第三のステージはN 方向であるが, 栃谷層では北フェルゲンツの押し被せ褶曲と上盤が北への移動を示す基底断層も認定され (cf ), さらに基底断層のガウジおよび下盤 御荷鉾緑色岩類の微小変形組織からこれらの変形が地下浅所の脆性領域で形成されたことが推定されていることから ( 近重,2000b), 栃谷層の北方への移動は Kobayashi (1996) のいう第三のステージに対応する. ウォーリス他 (1990) も跡倉層について, 基底断層の運動方向とセンスを断層面のスリッケンラインと下盤側の微細構造から上盤 跡倉層の北への運動センスを認め, 跡倉層は三波川帯より南に位置していたと考え, この基底断層 ( 跡倉断層と称している ) に沿う伸張テクトニックな運動を推定している.Wallis et al. (1992) でも, 跡倉ナップは伸張テクトニクスの下で形成されたとし,Kobayashi(1996 ) は, 基底断層の活動が地下から次第に浅い場所に移動したことから, 跡倉ナップは秩父帯の三波川帯に対する相対的な隆起に伴う重力滑動によって移動したと考えた. これらのことから, 栃谷層が三波川変成岩類と接合する時期から北方への移動時期にかけては三波川変成岩類が地下深所から浅所へ上昇した伸張テクトニクスが作用した時期であると考えられる. 従って, この時期には栃谷層の北方に位置していた金勝山石英閃緑岩は栃谷層の上位に衝上することはないと考えられる.( むしろ栃谷層が金勝山石英閃緑岩の上位に衝上する可能性がある.) 栃谷層が北方へ移動したさいに金勝山石英閃緑岩と接触したか否かは不明である. 栃谷層が北方へ移動した時期は, 栃谷層が三波川変成岩類と接合する時期からみて50Ma 以降であると考えられる. 金沢地域では, 上盤側の石英閃緑岩が下盤側の跡倉層とSW 方向へ移動し, 下仁田地域では, 石英閃緑岩に貫かれるホルンフェルスが跡倉層砂岩上をほぼ水平な断層を挟んで南南西 ~ 南西の剪断センスを示している. 寄居地域では, 石英閃緑岩は三波川帯の上にナップをなすと 考えられている ( 小坂,1978,1979; 平島,1984). これらのことから, 下仁田地域, 金沢地域では跡倉層の上に金勝山石英閃緑岩がSW 方向へ移動してのる重複構造をなすのに対して, 寄居地域では直接三波川帯にのるという相違はあるが, 金勝山石英閃緑岩の移動方向は同様に SW 方向へ移動したと考えられる (cf (2)). 金勝山ナップと栃谷ナップ ( 黒瀬川起源の緑色岩メランジュを伴う ) はこの時点で接合する. 3 栃谷層が北方へ移動し金勝山石英閃緑岩と接合して形成された金勝山 - 栃谷ナップは, その北側には領家帯前縁に領家 - 阿武隈ナップが存在していた (cf. 前項 (1),(2)). 領家帯の花崗岩類の急速な冷却 上昇は,58 ~54Ma にあった (cf (2)) が, この年代は,Kobayashi (1996) のいう第二のステージ, 第三のステージにおいて三波川帯が地表に現れる時期, 三波川帯が上昇 隆起する年代 (50Ma 前後 ) よりやや古い. しかし, 領家 - 阿武隈ナップの最上位の寄居層は三波川帯御荷鉾緑色岩類に断層を介して直接接していることを考慮すると, 領家 - 阿武隈ナップが三波川帯へ衝上したのは三波川帯が地表に露出した50Ma 以降と考えられる. 金勝山 - 栃谷ナップは北 ( ないし北東 ) から衝上した領家 - 阿武隈ナップと接合した際, 領家 - 阿武隈ナップの前縁に存在したか, あるいは白亜紀前期にナップとして北部秩父帯に定置し削剥から免れた阿武隈帯起源の寄居変成岩類は, 寄居層と金勝山石英閃緑岩に挟まれ, 後の中新世の高角断層運動によって構造岩塊として取り込まれて残存したと考えられる. 以上のように, 大局的には, 北部秩父帯起源の栃谷ナップが北方に移動して, 北部秩父帯の下位にあった三波川帯上に定置し, その結果, 三波川帯の上位の北部秩父帯上にナップとして存在していた金勝山ナップと接合した. その後, 中央構造線の北側に位置していた領家 - 阿武隈ナップは中央構造線の南方に移動し, 金勝山ナップ- 栃谷ナップと接合した. その時に, 金勝山石英閃緑岩は栃谷層に衝上した (cf (2),6.2). 7.2 跡倉ナップ ( 4) が寄居ナップと大きく異なるのは, 跡倉ナップの中央に中央構造線とされている大北野 - 岩山線が走り, その北側に領家帯が接し, 阿武隈帯起源の白亜紀前期のトーナル岩類, 角閃岩類, 未詳付加体が跡倉層の中に存在すること ( 竹内,2000) である. 関東山地北縁ナップの構成地質体の対比表を第 1 表に示す. ( 68 ) 222

25 関東山地寄居ナップの白亜紀 古第三紀の構造発達 1 関東山地北縁ナップの帰属と年代 ( 引用は本文参照 ) 帰属下仁田地域金沢地域寄居 - 小川地域 南部北上帯川井山石英閃緑岩金勝山石英閃緑岩金勝山石英閃緑岩 放射年代 250~277Ma 263Ma 251Ma, 252Ma SrI 値 ~ ~ 阿武隈帯四又山石英閃緑岩角閃岩 トーナル岩角閃岩 トーナル岩 放射年代 105~110Ma 92~112Ma 92~113Ma SrI 値 南部北上帯跡倉層跡倉層栃谷層 黒瀬川帯 秩父帯 領家帯 年代 ( 化石 ) 平滑花崗岩千平花崗閃緑岩 - 白亜紀後期 越畑花崗岩 放射年代 62~66Ma 62~64Ma SrI 値 ~ 骨立山凝灰岩 - 寄居溶結凝灰岩類 放射年代 58Ma 60Ma 放射年代 神農原礫岩 - 寄居層 65Ma 黒瀬川帯緑色岩メランジュ緑色岩メランジュ緑色岩メランジュ 放射年代 - - 角閃岩塊 402Ma 関東山地北縁ナップ構成地質体の移動方向 ( 引用は本文参照 ) 地質体地域移動方向備考 跡倉層 下仁田 西 ~ 西北西 北西 ~ 北 北 ( ステージ Ⅰ Ⅱ Ⅲ に対応 ) 御荷鉾緑色岩類に対して 栃谷層寄居 - 小川北東御荷鉾緑色岩類に対して 金勝山石英閃緑岩 下仁田 金沢 南西 ~ 西南西 ~ 南南西 跡倉層に対して 神農原礫岩下仁田北御荷鉾緑色岩類に対して 寄居層寄居 - 小川北 ~ 北北西御荷鉾緑色岩類に対して 下仁田地域の領家花崗岩類 ( 平滑花崗岩 千平花崗閃緑岩 )( 高木 藤森,1989) は南蛇井層を貫いており K-Ar 年代 62~66Ma が得られている ( 高木他,1989). 平滑花崗岩にはマイロナイトやカタクラサイトの組織が記載されており (Kosaka, 1980), マイロナイト化に伴う片麻状構造の面構造は NW 方向でSW へ緩く傾斜し線構造は西へ低角度で沈下することから下仁田地域における中央構造線の存在とその位置を示唆するとし, 大北野 - 岩山線が中央構造線に相当するとされている ( 高木 藤森, 1989). 千平花崗閃緑岩はマイロナイト化を受けておらず, 部分的にカタクラサイト化し弱い斑状組織を示し浅 所貫入型の特徴を持つ. 南蛇井層は砂岩, 泥岩を主体とし互層をなすが, 全体に変形が激しく砂岩がレンズ状になったメランジュの様相を呈し, レンズ状のチャート, まれにレンズ状の石灰岩ないしブロックが認められ, 平滑花崗岩との接触部の狭い範囲に接触変成作用を受けてホルンフェルス化している ( 高木 藤森,1989). 本層は, ジュラ紀後期の放散虫化石を産し, 美濃 - 丹波帯の地層に対比される ( 酒井他,1989). これらのことから, 平滑花崗岩分布域は, 領家変成岩の中軸部から南に外れた南縁部である可能性が指摘され 223 ( 69 )

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