SW 論 Ⅴ12 担当 :Yoshimi FUJINO ソーシャルワーク論 Ⅴ12 事例研究 事例分析について 1. 前回のふりかえり 専門職からの見方について 実習中の支援計画作成のことを思い出しました 日常生活に楽しみを作る ということを目標とし 支援計画を立てました 利用者

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1 ソーシャルワーク論 Ⅴ12 事例研究 事例分析について 1. 前回のふりかえり 専門職からの見方について 実習中の支援計画作成のことを思い出しました 日常生活に楽しみを作る ということを目標とし 支援計画を立てました 利用者とのコミュニケーションから 昔やっていたことや好きなことを引き出し 支援計画に取り入れましたが 内容について利用者に確認をとることが不十分でした これは わたしの主観的な判断による計画だったし 利用者にとっては支援を押し付けられたように感じた可能性があります 利用者とともに考え 話し合っていくことが支援には欠かせないものだと気づかされました 専門職として という考え方や見方は 人の生活を支援していく上での基盤として大切になるものであると考えている しかし それだけでは十分ではないとも実習中に実感した もし専門的な知識や思考だけで支援を進めるのであれば 利用者本人と直接関わる機会が減ってしまっても 形式的な支援方法やサービスの提供だけ完了させてしまう危険性が 極端に考えると出てきてしまうのだと感じた 当事者の声を聞き 本当の思いを理解しようとする姿勢が大事になり 希望と実現可能性のギャップを埋めていくための働きかけをしていくことが求められるのだと考えた 実習中に職員の方が他の施設の職員の対応をしていて それを終えた後に 専門用語を ばんばん使ったり 短縮した専門用語を話したり ああいう施設は利用者の気持ちを考えていないんだろうな と怒って話しているのを思い出しました たとえ 専門職同士の話し合いであっても適切に伝えることが大切だと思いましたし 1 人の職員の態度や対応が 施設の見られ方に反映してしまうのだと感じ 専門職としての見方 利用者の見方を共に持つことが重要だと思いました 異性からの支援 介助について考えさせられました 専門職者は何度も現場を経験しているため 慣れ とういものが身についてしまっているのかもしれません しかし 利用者と支援者という関係性の他に 人と人との係わり合いであることも基盤として忘れてはならないなと思いました 自分達はもっと知っておくべきこともあるし でも知ることがすべて正しいわけでもないことを講義を通して考えさせられます p1

2 2. 事例研究 ( ケーススタディ ) とは? 事例研究 何らかの課題を抱える事例を素材として その状況の詳細を明らかにしたり 課題の原因や影響 そ れらへの対応を分析し 説明したりするための ( ) である 事例検討 事例分析 * 事例研究と事例検討 事例分析の違い 3. 事例研究の目的 事例について記述すること 事例について説明 ( 解釈 ) すること * 理論 概念主導型 * 仮説構築型 ( 理論生成型 ) 評価すること * プロセス評価 1 支援が計画通りに進められているか 2 支援によって目標に近づいているか 3 望ましい変化 あるいはほかにどのような変化が起こっているか 4 利用者や家族は支援についてどのように思っているか 5アセスメントや支援計画は適切か またどのような修正が必要か等 * 結果評価 1 支援により どの程度目標が達成されたか 2 支援により 利用者と家族の QOL は向上したか 3 支援に 利用者と家族は満足しているか 4 実施した支援のなかで 良かった点と改善すべき点は何か等 p2

3 4. 事例研究の意義 ソーシャルワーク教育 研修 援助効果の向上 (EBP) アカウンタビリティ ( 説明責任 ) 社会制度 政策や環境の改善 5. 事例研究の方法と留意点 * 研究の目的とデザイン 固有事例研究: 事例そのものが興味深く その事例について詳しく調べたいときに行う その事例の固有性がポイント 手段的事例研究: 社会問題や現象に関心があり 事例を通して問題や現象がどのようなものかを研究する 虐待 家族介護 就労支援等 研究のテーマを先に定めて行う事例研究 典型的な事例を選択する場合もあれば 逸脱した事例を選択することもある * 単一事例と複数事例 単一事例だけで事例研究をする場合は その事例に固有性があるとき 複数の事例で事例研究する場合は 比較検討 共通点の見出し 現象や問題の分類を行う そのうえで 現象や問題の特徴の把握や 現象や問題の広がりやバリエーションの把握を行う * 現在と過去 * 量的研究と質的研究 事例研究は 一般的には ( ) として行う ( ) を場合は 評価目的の研究を行う場合で 例えば ( 支援の目標を数量化できるよう設定し 支援前と支援開始後の比較を両手金行うことによって支援 の効果を測定する ) を用いる p3

4 6. 事例研究の方法 1 事例の選定 ( 研究対象の選択 ) と研究協力の依頼 研究計画書の作成 研究協力の依頼 研究協力依頼の文書と同意書の作成研究目的協力していただきたい内容協力することによって得る利益や不利益協力することによって被る可能性のある損害個人情報やプライバシー保護にかんすること研究協力は任意であること同意書への署名研究者の所属氏名質問や不明な点がある場合の連絡先 * 研究協力依頼 同意をとる対象について 2データ収集 観察実験的観察法 自然観察法参与観察 非参与観察 面接構造化された面接構造化されていない面接 ( 生活場面面接 ) 文書やビデオ 記録などアセスメント ケアプラン 経過記録などのサービス担当専門職による記録資源活用のための申請書などの公文書や記録手紙 メール メモ 日記など本人や家族が書いたもの出来事や問題についての専門雑誌や書籍 報告書 メディアで報道されたものなど録画されているもの p4

5 3 事例の分析 考察 事例のテーマや本質的な問題を見つける 類似点や一定のパターン カテゴリーを見つける 異なる視点や立場から状況を見て 多面的に把握する 文脈をとらえることで 人の言動の背後にある意味や思いを探る ある部分に焦点をあて 時間経過による変化や関連要因 相互作用を明らかにする 原因と結果の妥当性を検証する * 仮説構築型 ( 理論生成型 ) の場合の分析方法 KJ 法ラベル作り グループ編成 A 図解化 B 型文章化 グラウンデット セオリー文章化したデータをよく読みこむ適当なまとまりに区切り それぞれの文章の内容をよくあらわす名前 ( ラベル ) をつける オープン コーディング 似たもの同士のラベルをまとめて グループごとにまとめたラベルを集約するような名前 ( カテゴリー ) をつけるデータの収集と分析は交互に継続的に行われる分析の中で常に問いを立て 新しいデータを収集するときに できるだけ多くの概念を見出しやす くなるようデータを戦略的に収集する 理論的サンプリング 理論的サンプリングをしても データからもはや新たな概念が生成されなくなるまで分析を行う 理論的飽和 カテゴリーが見出されたら 今度や自称を説明する際に中心となる中核カテゴリーを見つける 選択的コーディング 中核カテゴリーやそのほかのカテゴリーの関連を説明する この作業から仮説が生まれ 仮説の蓄積と検証から理論が生成される 5 発表 口頭発表 ポスター発表 ラウンドテーブル 論文 報告書 研究目的 背景 方法 結果 考察が含まれる p5

6 7. 事例研究を行う際の留意点 * 結論ありきの事例研究であってはならない * 倫理的配慮 倫理綱領 研究倫理指針 倫理的配慮 * 研究の限界 * トライアンギュレーション 8. 事例分析とは * 事例分析 : 事例研究の一部分 * 事例分析の目的 * 事例分析の意義 9. 事例分析の方法と留意点 (1) 事例の選定と分析の準備 固有事例 : 自分が事例にかかわり 事例そのものに関心や問題意識がある事例 手段的事例 : 何らかのテーマについて学ぶために選ばれた事例 p6

7 (2) 事例分析の着眼点 支援の方向性 理念 原理原則 人と状況のとらえ方 クライエントとソーシャルワーカーとの関係 かかわり方 アセスメント 目標と計画 計画の実施とモニタリング 結果評価 (3) 発表 報告 ~ 発表 報告されるべき内容 ~ 1テーマと検討したい点 2 利用者の概要 3 課題の発生状況と経過 4 課題への対応 5 対応の結果 6 考察 10. 事例分析を行う際の留意点 十分な情報の確保 客観的に見ること 犯人探し 原因探し を目的としない 原因がひとつではないことも多い 自分がかかわった事例について分析する場合は 自らの不十分さや不適切さ 未熟さに直面する謙虚さと勇気が必要 必要であれば 自らの失敗や至らなさを報告する しかし 自らの失敗 だけが 関連する重要な要因とは限らない ひとつの事例分析から一般化はできないことを自覚する 個人情報 プライバシーの保護 p7