リーディングスキルテストで測る読解力とは

Similar documents
東京新聞 : 中 3 の 15% 短文も理解困難教科書や新聞で読解力 / /09/23 21:45 東京新聞の購読はこちら 1 週間ためしよみ

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する また 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の

2 生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査 児童生徒に対する調査 学校意欲 学習方法 学習環境 生活の諸側面等に関する調査 学校に対する調査 指導方法に関する取組や人的 物的な教育条件の整備の状況等に関する調査 2

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

H30全国HP

gggggggggggggggggggggggggggggggggggggkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkk

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

平成 22 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 22 年 4 月 20 日 ( 火 )AM8:50~11:50 平成 22 年 9 月 14 日 ( 火 ) 研究主任山口嘉子 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (105 名 )

Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

平成21年7月21日

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント

調査の概要 1 目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し その改善を図るとともに 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる さらに そのような取組を通じて 教育に関する継続的な検証改善サイ


<4D F736F F D2092CA96F388C493E08E6D834B >

1 高等学校学習指導要領との整合性 高等学校学習指導要領との整合性 ( 試験名 : 実用英語技能検定 ( 英検 )2 級 ) ⅰ) 試験の目的 出題方針について < 目的 > 英検 2 級は 4 技能における英語運用能力 (CEFR の B1 レベル ) を測定するテストである テスト課題においては

2017 年 9 月 8 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2017 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

H

Microsoft Word - 全国調査分析(H30算数)

(Microsoft Word - \207U\202P.doc)

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

社会系(地理歴史)カリキュラム デザイン論発表

<4D F736F F D AA90CD E7792E88D5A82CC8FF38BB5816A819A819B2E646F63>

<4D F736F F D208AC888D B836A F C91808DEC837D836A B81698AC7979D8ED A E646F6

ニュースレター 報道関係各位 2018 年 10 月 26 日 株式会社ベネッセホールディングス広報 IR 部 小学生の読書に関する実態調査 研究 読書は学力が低い子どもたちに大きなプラス効果 自分で調べる 話題が増える 幅広いメリットが明らかに 株式会社ベネッセホールディングスの子会社 株式会社ベ

<4D F736F F D2092CA96F388C493E08E6D834B A6D92E8816A2E646F63>

平成 28 年度埼玉県学力 学習状況調査各学年の結果概要について 1 小学校 4 年生の結果概要 ( 平均正答率 ) 1 教科区分による結果 (%) 調査科目 羽生市 埼玉県 国語 算数 分類 区分別による結果 < 国語 > (%) 分類 区分 羽生市 埼

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

今年度は 創立 125 周年 です 平成 29 年度 12 月号杉並区立杉並第三小学校 杉並区高円寺南 TEL FAX 杉三小の子

(6) 調査結果の取扱いに関する配慮事項調査結果については 調査の目的を達成するため 自らの教育及び教育施策の改善 各児童生徒の全般的な学習状況の改善等につなげることが重要であることに留意し 適切に取り扱うものとする 調査結果の公表に関しては 教育委員会や学校が 保護者や地域住民に対して説明責任を果

PowerPoint プレゼンテーション

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

H27 国語

(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

Taro-H29結果概要(5月25日最終)

平成 24 年度岡山県学力 学習状況調査 数学解答類型分類表 解答類型分類にかかる留意事項 数学における学習到達度をみることが目的であるので, 誤字脱字などの文字表現の不備については, 広く許容する 基本的に意図が伝われば許容する 文章表現についても広く許容する てにをはの誤りや

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県海草地方 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

2018 年 9 月 3 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2018 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

2 生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査 児童生徒に対する調査 学校意欲 学習方法 学習環境 生活の諸側面等に関する調査 学校に対する調査 指導方法に関する取組や人的 物的な教育条件の整備の状況等に関する調査 2

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

平成21年度

Water Sunshine

今年度の校内研究について.HP

①H28公表資料p.1~2

ビジネス統計 統計基礎とエクセル分析 正誤表

教科 : 外国語科目 : コミュニケーション英語 Ⅰ 別紙 1 話すこと 学習指導要領ウ聞いたり読んだりしたこと 学んだことや経験したことに基づき 情報や考えなどについて 話し合ったり意見の交換をしたりする 都立工芸高校学力スタンダード 300~600 語程度の教科書の文章の内容を理解した後に 英語

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

情報コーナー用

Microsoft PowerPoint - syogaku [互換モード]

第 2 章 知 徳 体 のバランスのとれた基礎 基本の徹底 基礎 基本 の定着 教育基本法 学校教育法の改正により, 教育の目標 義務教育の目標が定められるとともに, 学力の重要な三つの要素が規定された 本県では, 基礎 基本 定着状況調査や高等学校学力調査を実施することにより, 児童生徒の学力や学

PowerPoint Presentation

指導方法等の改善計画について

平成 29 年度全国学力 学習状況調査 北見市の結果等の概要 Ⅰ 調査の概要 1 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析するとともに教育施策の成果と課題を検証し その改善を図り 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等

3 次のにあてはまる数を書きましょう レベル 5 6 (H23 埼玉県小 中学校学習状況調査 3(3)) 下の数直線で アのめもりが表す分数は, ア です イまた イのめもりが表す分数は, です ア イ 4 次の問題を読み 問いになさい レベル 5 6 だいきさんは, の計算をするのに

「標準的な研修プログラム《

<4D F736F F D E7793B188C D915F88E48FE38BB E646F63>

17 石川県 事業計画書

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会(第42回(第3期第28回))議事録・配付資料 [資料1] 特定の課題に関する調査(算数・数学)結果のポイント

24 京都教育大学教育実践研究紀要 第17号 内容 発達段階に応じてどのように充実を図るかが重要であるとされ CAN-DOの形で指標形式が示されてい る そこでは ヨーロッパ言語共通参照枠 CEFR の日本版であるCEFR-Jを参考に 系統だった指導と学習 評価 筆記テストのみならず スピーチ イン

file:///D:/Dreamweaber/学状Web/H24_WebReport/sho_san/index.htm

平成24年度全国学力・学習状況調査の結果について(概要)

国語 A では, 領域別, 観点別, 問題形式別に見て, どの区分においても全国平均を上回り, 高い正答率でした しかし, 設問別でみると全国および新潟県平均正答率を下回った設問が, 15 問中 1 問, 新潟県の平均正答率を下回った設問は,15 問中 1 問ありました 設問の概要関屋小新潟県全国

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx

パラダイムシフトブック.indb

フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

45 宮崎県

国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを 話したり, 書いたりしている

10SS

平成 30 年度全国学力 学習状況調査 北見市の結果等の概要 Ⅰ 調査の概要 1 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析するとともに教育施策の成果と課題を検証し その改善を図り 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等

スライド 0

2、協同的探究学習について

平成 25 年度の全国学力 学習状況調査の下野市の全体の結果 ( 国語, 算数 数学 ) は, 小学校, 中学校ともに, すべての領域で, 全国平均正答率を上回る結果となった 小学校の全国学力調査全体結果について 小学校は国語 AB, 算数 AB ともに, 数ポイント全国平均正答率を上回っていた 小

入研協2019電子調査書

問 題

回答結果については 回答校 36 校の過去 3 年間の卒業生に占める大学 短大進学者率 現役 浪人含む 及び就職希望者率の平均値をもとに 進学校 中堅校 就職多数校 それぞれ 12 校ずつに分類し 全体の結果とともにまとめた ここでは 生徒対象質問紙のうち 授業外の学習時間 に関連する回答結果のみ掲

平成 29 年度 埼玉県学力 学習状況調査の結果について 1 埼玉県学力 学習状況調査について (1) 調査の概要 実施日平成 29 年 4 月 13 日 ( 木 ) 調査対象調査概要特徴 県内の公立小 中学校 ( さいたま市を除く ) に在籍する小学校第 4 学年から中学校第 3 学年の全児童生徒

3. 分析と結果 公表に対する配慮事項 公表に際しては 文部科学省が定めた平成 29 年度全国学力 学習状況調査実施要領に基づき 次の点に配慮して実施します 1) 本調査は 太子町の子どもたちの学力や学習状況を把握し分析することにより 全国 大阪府の状況との関係において教育及び教育施策の成果と課題を

4 研究内容 (1) 国際的な学力調査について近年 我が国の義務教育における 学力低下 について 新聞やテレビ等に様々な評論家が意見を述べている その根拠としている数値的な裏付けとなっているのが 次にあげる2つの国際的な学力調査における我が国の結果が前回の数値より下回っていたり 他の諸外国より数値的

報道関係各位 2012 年 1 月 25 日 株式会社ベネッセコーポレーション 代表取締役社長福島保 高校受験調査 ~ 高校 1 年生は自らの高校受験をどのように振り返っているのか ~ 高校受験を通じて やればできると自信がついた 71% 一方で もっと勉強しておけばよかった 65% 株式会社ベネッ

Microsoft PowerPoint - (140428NIIELS説明会)J-STAGE Lite(仮称)のご紹介_v2.pptx

平成28年度「英語教育実施状況調査」の結果について

英語 ポイント 1 民間の資格 検定試験を用いて4 技能 ( 読む 聞く 書く 話す ) を評価 2 段階別評価 CEFR ( セファール ) を活用 3 大学入学共通テストでは 筆記 ( リーディング ) とリスニングを実施 ポイント 1 民間の資格 検定試験を用いて 4 技能 ( 読む 聞く 書

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県和歌山市 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

EBNと疫学

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

Microsoft PowerPoint ppt

J-SOX 自己点検評価プロセスの構築

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

センター試験模試6科目で偏差値50以上/人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」

Transcription:

別紙資料 1 リーディングスキルテストで測る読解力とは 大学共同利用機関法人情報 システム研究機構国立情報学研究所 社会共有知研究センターセンター長 新井紀子 リーディングスキルテスト (RST) とは 教科書や新聞 マニュアルや契約書などのドキュメントの意味および意図を どれほど迅速かつ正確に読み取ることができるかの能力を測定するために国立情報学研究所社会共有知研究センターが考案したテストです 文章 ( テキスト ) と図表から成る初見のドキュメントを 人がどのように読解するかについては いまだ解明されていない部分が多く残されていますが 少なくとも次のようなプロセスが含まれると考えられています 1. 文節に正しく区切る ( 例 : 私は学校に行く 私は / 学校に / 行く ) 2. 係り受けの構造を正しく認識する ( 例 : 美しい水車小屋の乙女 美しいのは 乙女 である ) 3. 述語項構造や接続詞を正しく解析する ( 誰が 何を どうした のような構造を正しく認識する ) 4. 照応関係を正しく認識する ( 例 : 私はハンカチを落とした それを彼は拾った それ は ハンカチ である ) 5. 日常生活での経験や伝聞から得られる常識と 小学校における学び等から得た知識と 簡単な論理推論によって 未知の用語の意味を実世界に関する知識の中に位置づける ( 語レベルのマッピング ) 6. 日常生活での経験や伝聞から得られる常識と 小学校における学び等から得た知識と 簡単な論理推論によって 未知の関係や概念の意味を実世界に関する知識の中に位置づける ( 文構造レベルのマッピング ) 7. 既存の知識と新たに得られた知識に対して 論理推論を働かすことにより 実世界に関するさらなる知識を獲得する 8. 得られた多くの情報間の重要度を適切に付与する 特に 与えられた観点において また問題解決の上で必要な情報を適切に取捨選択する 9. 同様のことを 図やグラフ等 ほかの論理的表象手段についても実行できる 10. テキストと図やグラフで表していることの同一性を実世界の意味を介してチェックすることができる 11. 以上の各処理において誤りがないかをメタな視点からモニタリングして修正する

1~4 は 一般には 記号列としてのテキストを処理するプロセスと考えられています ただし 実世界に関する知識が何もないと 1~4 についても 正しく処理できるとは限らないことが近年の自然言語処理等の研究から明らかになりつつあります ( 例 : 私は岡田と広島に行った と 私は岡山と広島に行った では 述語項構造が異なるが それを正しく認識するには 岡山と広島が隣接する県であることや 岡田というのは 岡山より比較的多い 苗字のひとつだという知識が必要 ) リーディングスキルテストは 日常生活での経験や伝聞 小学校における学びから得られると考えられる範囲の知識および常識を前提とした上で 作問されています もちろん 生育環境等によってこのような常識および知識には差があります むしろ 本テストおよび質問紙によって そのような差異とそれが生じる原因についても定量的に分析することができるよう設計されています また 1~4 での記号的な操作の段階で大きな課題を抱えている学習者を早期に発見し 学習障害を見極めるためのより専門的な検査を受けることを促す上でも効果的だと考えられます 5 と 6 は 記号列としてのテキストを 実世界に正しく埋め込み まさに 意味を理解する プロセスと考えられています 意味を理解するには みかん x 軸 などの名詞を実世界の対象に対応付けるだけでなく 投げる 接する など関係を表す言葉や形容をする言葉についても 実世界の関係や形容に対応させる必要があります 記号列としての処理だけでは みかんは甘いがレモンは酸っぱい という文において みかん と レモン は実世界では異なる対象を表しているかどうか ということを直ちに判定することはできません 甘い と 酸っぱい の関係 接続語である が の用い方などを正しく認識することによって みかん と レモン は異なる対象を表していることがわかるのです 対応付けが正しく行われたか否かは 文を表象する図と対応させたり 具体例や利用例を挙げさせたりすることで判定することができると考えられます 得られた情報を単に正しく理解しただけでは そこから豊かな実世界イメージを獲得することはできません 新しく得られた知識と既存の知識から演繹する という7のプロセスを経ることにより ひとつの知識を数十倍 数百倍に拡張することができるのです たとえば ヨーロッパは日本より相対的に緯度が高いので 夏の昼の時間が長い という新知識が教科書から与えられたとき ただそのことだけを暗記しても ヨーロッパの夏の夜の時間は 日本に比べてどうか ということを判断することはできません 新知識と常識 ( 一日は昼と夜で構成される ) に基づき 論理的に推論することで ヨーロッパは日本より相対的に緯度が高いので 夏の夜の時間が短い ことがわかるのです 推論をすることで 人は数少ない知識から豊かな世界観を精緻に構築することができるようになります 実は 学校教育や読書を通じた学びとは 実際には経験したことのない未知の世界に関しても 言葉 ( と少量の図 ) だけで十分に深く理解することができるはずだという信念にそもそも立脚しているのです 言い換えるなら 子どもたちの間に 上記のような論理的推論力が 差はあれども十分に備わっていると期待して学校教育が設計されているのです

単に膨大な知識を獲得しただけでは それを問題解決に役立てることができるとは限りません 具体的な問題解決にあたっては 8 で挙げた 得られた情報を取捨選択するプロセスが必要となります たとえば 斜辺が4 高さが 3 底辺が 5 であるような平行四辺形の面積を求めなさい という問題では 斜辺が4である という情報は不要です 一方 同じ平行四辺形の周の長さを求める問題では 高さが 3 である という情報が不要です このように 求められていることに応じて情報を取捨選択することで 初めて問題解決につながるのです 教科書等のドキュメントが提示するのはテキストだけではありません 加えて 図や表などテキストとは別の論理的表象手段がしばしば使われます 図 表を読解する上においても テキストと同じように 1 ~8 のプロセスが必要になります その上で テキストが表すことと 図 表が表すことが同じかどうかを 実世界の意味を介して認識しなければなりません 教科書のようなタイプのドキュメントを読む 上では 少なくともこのような 10 段階の複雑なプロセスが脳の中で起こっていると考えられます また それを一段高いレイヤーでコントロールし 逐次 誤りを訂正する能力も必要になるのです 以上は 三文程度までの短いテキストの意味および意図を正確に読み取るために必要なプロセスであり 複数の段落から成るテキストを読解するにはこれ以外にも文脈の理解等の力が求められるでしょう ただし 短いテキストの意味および意図理解は どのようなテキストを読む上でも必須となる能力であることに疑いの余地はありません 今年度版のリーディングスキルテストは 1 から 11 までのプロセスが互いに連携しながら学習者の読解行動を支えているという仮説に立脚し それらのプロセスが正しく行われているかをチェックするものとして設計されています また 問題を解く上では 問題が出題文のどの箇所を問うているかを認識するための 記号列の同一性を識別する能力 が備わっていることが さらに必要になります 今後も 読むこと 理解すること に関して 認知科学 自然言語処理 人工知能等の研究分野で新たな知見が得られるごとに その妥当性を検討した上で 読解プロセスのモデルを精緻化し それをテスト内容に反映していく予定です 以上

補足解説 PISA が測る読解力との違い経済協力開発機構 (OECD) が平成 24 年 ( 2012 年 ) に実施した 生徒の学習到達度調査 ( Programme for International Student Assessment: PISA) では 日本は読解力が向上し 世界でトップグループに入ったとされました PISA は長い文章を読ませて 情報を抽出する 統合するという高次の複合的プロセスに着目しています しかし PISA のような複合的な力を問うテストでは 学習者が読解のどの段階でつまずいているのか それがどのような読解の偏り ( 癖 ) によるものか などを十分に分析することはできません 一方 RST では 言葉の構成を体系的に追うことができるかどうかを問う方に比重がおかれています 各段階の読解プロセスを詳細にチェックするテストとして設計されているため どの生徒がどのプロセスでつまずいているかを診断し 学習者や教師にフィードバックすることができます また 教える内容や語彙が異なる世界のさまざまな国の学習者が公平にテストを受けることができるよう PISA の問題では使うことができる語彙や問題設定に強い制約を受けます 一方 RST では 日本共通の指導要領があるため その枠内で専門的 抽象的な語彙や複雑な言い回しを含む問題を作ることができ 日本の教育の課題に沿った分析をすることが可能です RST の平均点 RST は学校や都道府県単位の比較をするためではなく 各学習者の読解力を診断し その読解力向上を支援するためのテストです すべての学習者が同じ問題を解くのではなく 受験者のレベルに合った問題をリアルタイムにコンピューターが計算して出題していく 項目応答理論 に基づくテストとして設計されています 受験者ごとに回答する問題が異なるため 平均点にはあまり意味がありません RST の結果の読み方 RST は選択式の問題のみで構成されています そのため 乱択 ( サイコロを振って答えを選ぶ ) でも正解する可能性があります ただし 乱択より正解が多い とはいえない受験者の割合 を計算することにより その問題分野で ほとんど解けない可能性がある生徒 の割合を推定できます たとえば 昨年度に実施した予備調査では 2 の係り受け解析の問題において ほとんど解けない可能性がある生徒 の割合は公立中学校で約 20% 4 の照応解析の問題も約 20% 7 の論理的推論では 50% を超えました 驚くべきことに 学年が上になっても この数値は低下しませんでした ( あくまで予備調査段階の結果ですので 今後 問題の精査などで変動する可能性があります ) リーディングスキルが低い理由 RST と同時に実施したアンケートとの関係では 意外なことに 読書が好きかどうか ( 各科目の ) 教科書を理解できていると感じるか 塾に通っているか とは統計的に有意な関係は見当たりませんで

した また 少数のサンプリング調査ながら 大人でもかなり間違えることから 年代による差もないかもしれません 一方 受験を経て入学した県立の中高一貫校では 2 の係り受け解析の問題において ほとんど解けない可能性がある生徒 の割合は約 5% 4 の照応解析の問題は約 4% 7 の論理的推論では約 30% と 公立中学校の結果との間に明らかな差が見られました このことは 小学校高学年でのリーディングスキルの差が 中学受験への意欲や合格につながる可能性を示唆しています 何が読解力の低さにつながっているかについて またその差がもたらす結果について 今後さらに調査を行います 出題文の出典出題文は主として検定済みの中学 高校の教科書から採っています ( 国語と英語を除く ) 一部 辞書から採ったものや NII 社会共有知研究センターで独自に作成したものも含みます 教科書から出題文を選んだ理由教科書は指導要領に従い 中高校生が初めて読んでわかることを念頭に置いて書かれており 文部科学省による検定を経ています このことから 初見で読んで理解できるべきドキュメント の代表として挙げられるべきものでしょう また 各科目から万遍なく出題文を選ぶことで 分野の得意 不得意に依存しない読解力を測ることができます 一方で 出題文の記述を理解できない生徒の割合が極めて高い例も散見されることは事実です RST の結果を教科書会社や文部科学省にフィードバックすることにより より理解しやすい教科書作りに役立つことを願っています 紙と CBT の違い昨年度の大学生対象の調査では 紙媒体による受験とコンピューター上での受験 (Computer Based Testing:CBT) に有意な差は見られませんでした ただし 年齢によっては差がでることは十分に考えられます 今年度と来年度は 教育委員会等の協力を得て 小中高校の各学年に関して 紙と CBT での違いがあるか否かを引き続き調査する予定です CBT のメリット紙では 予め作成した問題セットの問題以外は出題することができません 一方 CBT では いくつかの問題に対する受験者の応答に応じて 出題する問題のレベルを適宜調節していき 受験者の読解力をより正確に診断することができます また 各問題を解くのにかかった時間など 解答以外のデータを取得することができます