社団法人 日本下水道協会 調査部調査課 係長 大村 真人 1 受益者負担金とは (1) (1) 下水道使用料 受益者負 ( 分 ) 担金の性格 ア下水道使用料 下水道使用の対価としての性格 地方税の滞納処分の例により 滞納処分可能な債権 根拠 地方自治法第 231 条の3 第 3 項 時効は 5 年
1 受益者負担金とは (2) イ受益者負担金 その土地に下水道が入ることによる受益に 着目し 賦課 当該土地に対し 原則 1 回限りの賦課 ( 戸割の場合等 例外有り ) 国税滞納処分の例により 滞納処分可能な 債権 根拠 都市計画法第 75 条第 5 項 時効は 5 年 1 受益者負担金とは (3) ウ受益者分担金 都市計画事業ではない下水道事業等に関する受益に賦課 根拠 地方自治法第 224 条 当該土地に対し 1 回限りの賦課 地方税の例により 滞納処分可能な債権 根拠 地方自治法第 231 条の3 第 3 項 時効は 5 年
1 受益者負担金とは (4) (2) 水道料金との性格の違い ア 水道料金は 私法上の債権 平成 15 年 10 月の最高裁判決において 水道料金債権は公法上の債権ではなく 私法上の債権であるとの判断がなされた イ 時効は2 年 ( 上記決定による ) ウ 供給の契約であるため 料金不払いの場合 供給停止が可能 下水道は下水道法で接続強制を課しており 使用の停止は原則できない 2 受益者負担金に関する判例 (1) 都市計画税との二重課税ではないか 著しい受益がない 等の訴訟が発生 昭和 44 年 ~57 年にかけて提訴 昭和 63 年までに結審 ( 別紙資料 ) 著しい利益はあるとの判断 (2) 地積割に対する判決であり 戸割や人頭割には対応していない点に注意が必要
3 滞納整理 滞納処分の手続き (1) (1) 滞納整理 1 納期限経過 督促 催告 この 法定納期限 が 受益者負担金の 場合 明確でない Ex. 4 年間 4 回分割納付のばあい 法定納期限はいつからか? 国税通則や地方税法等で 年をまたがる賦課の想定はされていない 3 滞納整理 滞納処分の手続き (2) (1) 滞納整理 2 各自治体において これが正しい であろう という基準を作成 運用 瑕疵ある行政行為は 取消訴訟など一定の争訟手続で正式に取り消されない限り 適法性 が推定され 有効と扱うこととされている 今後 裁判になり判例が出てくれば それが判断基準となる
3 滞納整理 滞納処分の手続き (3) (2) 滞納処分 差押 ( 交付要求 参加差押 ) 換価 配当 3 滞納整理 滞納処分の手続き (4) (3) 督促 ア納期限後 1 回限り イ督促状という書面により行う ウ徴収権の消滅時効の 中断 効果 エ 差押 その他の滞納処分の前提としての効果 オ 納期限後 20 日以内に送付の規定 訓示規定であり 経過後も有効と 解される
3 滞納整理 滞納処分の手続き (5) (4) 催告 ア 督促してもなお納付されない場合に さらに納付を促すための請求 イ 催告書により行う ウ 民法第 153 条の催告に該当 催告後 6ヶ月以内に差押等を行えば 時効中断の効果 3 滞納整理 滞納処分の手続き (6) (5) 差押 滞納者の財産処分を制限し 換価できる状態におく強制処分 差押できない債権とはア差押の際に滞納者に帰属していない債権イ金銭的価値のない債権ウ換価性のない債権
3 滞納整理 滞納処分の手続き (7) (6) 差押の制限 ア超過差押の禁止 滞納額 100 万円 :1 億円の土地と 120 万円の車 イ無益な差押の禁止 差押可能財産 100 万円 : 滞納処分費 120 万円 ウ差押ができない場合 徴収猶予 中止命令 破産宣告等 エ督促後長期間経過した場合の差押 事前に再度の催告 オ休日又は夜間の差押 3 滞納整理 滞納処分の手続き (8) (7) 差押禁止財産 1 ア一般の差押禁止財産 1 滞納者及び生計を一にする親族の生活に欠くことのできない財産 3ヶ月分の食料 燃料 2 自己の労力により農漁業 製造業等を営む者の業に欠くことのできない器具 原料等 上記の他 実印 位牌 勲章 防災上必要な機器類等が禁止財産に規定国税徴収法第 75 条第 1 項に列記
3 滞納整理 滞納処分の手続き (9) (7) 差押禁止財産 2 イ給与 1 一定金額に達するまでの部分において禁止 2 滞納者の承諾があれば 限度額を超えて差押可能 振り込まれた預貯金については制限がない 国税徴収法第 76 条等 3 滞納整理 滞納処分の手続き (10) (7) 差押禁止財産 3 ウ社会保険制度に基づく給付 1 退職年金 老齢年金等 給与と見なされるもの 2 退職一時金 一時恩給等 退職手当等とみなされるもの 国税徴収法第 77 条
3 滞納整理 滞納処分の手続き (11) (7) 差押禁止財産 4 エ条件付差押禁止財産 1 滞納者が ア全額を徴収することのできる イ換価が困難でない ウ第三者の権利の目的となっていない財産を提供したとき 選択により差押をしない 2 提供 = 徴税吏員が直ちに差押できる状態 3 選択 = 滞納者の選択による 国税徴収法第 78 条 3 滞納整理 滞納処分の手続き (12) (7) 差押禁止財産 5 オ特別法による差押禁止財産 1 公的な保護 援護として支給された金品又はその金品を受ける権利 ( 生活保護等 ) 2 職務上の災害補償等を受ける権利 3 特定の補償を受ける権利 4 一定の共済金を受ける権利 老齢基礎年金 付加年金 老齢厚生年金等を受ける権利は差押可能
3 滞納整理 滞納処分の手続き (13) (8) 交付要求 参加差押 いずれも ア滞納者の財産について イ 既に滞納処分や強制執行等の強制換価手続が開始されている場合に ウ その手続に参加して配当を受け 債権の実現を図る制度 3 滞納整理 滞納処分の手続き (14) (9) 時効の中断 ア既に経過した時効期間の効力が イ一定の事由により ウ法的に失われること 中断事由が終了すると その日の翌日から新たに時効期間が進行する リセット
3 滞納整理 滞納処分の手続き (15) (10) 時効を中断できる事由 1 ア 地方税法に規定する事由 ( 第 18 条の2 第 1 項第 1 号 ~ 第 3 号 ) 納付又は納入に関する告知 その告知に記載された納期限まで 督促 その督促状が発せられた日から10 日を経過した日まで 交付要求 その交付期間がなされている間 3 滞納整理 滞納処分の手続き (16) (10) 時効を中断できる事由 2 イ民法の規定が準用される事由 催告 ( 第 153 条 ) 発した日の翌日から起算して6 月以内の差押又は交付要求の実施が要件 差押( 第 147 条第 2 号 ) その効力が生じたときに中断 差押のための捜索に着手したときも 中断の効力が生じる
3 滞納整理 滞納処分の手続き (17) (10) 時効を中断できる事由 3 承認 ( 第 147 条第 3 号 ) 債権の存在を認識したと認められる 行為があったときに中断 Ex. 期限後申告 修正申告 徴収猶予の申請 納付委託の申出 納付誓約書の提出 一部納付等 3 滞納整理 滞納処分の手続き (18) (11) 時効の停止 ア時効期間中に イ 請求権の行使が困難もしくは不可能となる一定の事由により ウ 時効の進行を一時停止すること 時効の停止期間が経過すると 引き続き時効期間が進行する ポーズ
3 滞納整理 滞納処分の手続き (19) (12) 時効の停止事由 1 ア地方税法に規定する事由 徴収猶予又は差押財産の換価猶予の期間内 ( 第 18 条の 2 第 4 項 ) 偽りその他不正行為により徴収を免れた 債権 当該債権の法廷納期限の翌日から2 年間 ( 第 18 条の2 第 3 項 ) 3 滞納整理 滞納処分の手続き (20) (12) 時効の停止事由 2 イ民法の規定が準用される事由 相続財産に関する相続人の選定 管理人の 選定 破産の宣告があったとき その日の翌日から起算して6ヶ月間 ( 第 160 条 ) 時効の期間満了にあたり 天災等の発生 その天災等が止んだ日から2 週間 ( 第 161 条 )
4 破産等に伴う所有権移転の場合 (1) (1) 受益者負担金 使用料は免責債権に該当 するか? 破産者は 破産債権について免責される 租税等の徴収権 は破産債権であっても免責債権には該当しない ( 破産法第 253 条 ) 4 破産等に伴う所有権移転の場合 (2) (2) 受益者負担金 使用料は 租税等の徴収 権 に該当するか? 国税徴収の例により滞納処分することができる請求権 = 租税等の徴収権 の規定 ( 破産法第 97 条 ) 受益者負担金はこれに該当するのか? 地方税の例により滞納処分することが できる債権である使用料や分担金は?
4 破産等に伴う所有権移転の場合 (3) (3) 租税等の徴収権 は財団債権と破産債権 のどちらに該当するのか 破産手続開始当時 まだ納期限の到来していないもの 又は納期限から一年を経過していないものは財団債権に該当 ( 破産法第 181 条第 3 項 ) 4 破産等に伴う所有権移転の場合 (4) (4) 現時点では 受益者負担金や分担金 使用料が免責債権に該当するかどうかは不確定 今後 裁判があれば 判決により判断が 確定していく
5 行政手続を可能な限り適正に進めるために (1) (1) 法律 条例 規則の熟読 ア 下水道法 施行令 イ 地方公務員法 地方公営企業法 ウ 下水道条例 施行規則 エ 受益者負担金条例 施行規則 5 行政手続を可能な限り適正に進めるために (2) (2) 職務上必要な資料の購入 ア各法の逐条解説 イ 滞納整理に関する手引き書 資料末尾の参考資料を参照
5 行政手続を可能な限り適正に進めるために (3) (3) インターネットの情報提供サイトの活用 ア 法令データ提供システム ( 総務省 ) http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi イ告示 通達検索システム ( 国交省 ) http://wwwkt.mlit.go.jp/notice/koj_search.html ウ判例検索システム ( 裁判所 ) http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?action_ id=first&hanreisrchkbn=01 5 行政手続を可能な限り適正に進めるために (4) (4) 手続の例規化による行政行為の担保 ア 職場のルールを明確にすることで 行動 基準を確立する イ相手方への説明の際の根拠