平成 26 年 9 月 2 級 FP 技能検定 / 実技試験 < 個人資産相談業務 > 模範解答 第 1 問 問 1 記号イニチ 問 2 1,894,000 円 問 3 判定 第 2 問 問 4 記号ロニチ 問 5 判定 問 6 3.18% 第 3 問 問 7 記号ロリホ 問 8 判定 問 9 15,280,000 円 2380,000 円 3255,500 円 4193,200 円第 4 問 問 10 判定 問 11 記号ロホチ 問 12 3,552,500 円 第 5 問 問 13 記号ロハチ 問 14 判定 5 18,000 万円 25,500 万円 3400 万円 46,300 万円 ( 注 ) 各問題の配点は 公表されていない 1
第 1 問 問 1 難易度 B 記号 イ ニ チ 1 老齢厚生年金は 65 歳からの受給が原則であるが 男性の場合 昭和 36 年 4 月 1 日以前生まれの人は 65 歳前から特別支給の老齢厚生年金を受給することができる 特別支給の老齢厚生年金の支給内容や支給開始年齢は 生年月日に応じて異なるが 昭和 24 年 4 月 2 日 ~ 昭和 28 年 4 月 1 日生まれは 60 歳から報酬比例部分のみの支給 昭和 28 年 4 月 2 日以後生まれは 2 年ごとに 1 歳ずつ支給開始年齢が引き上げられる などのポイントを覚えておきたい Aさんは 昭和 31 年 3 月 24 日生まれなので 62 歳 から 報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができる 2 特別支給の老齢厚生年金を受給できる人が厚生年金保険の被保険者として勤務する場合, 特別支給の老齢厚生年金は, 総報酬月額相当額 ( 標準報酬月額とその月以前 1 年間に受けた標準賞与額を 12 等分した額との合計額 ) との間で調整が行われる いわゆる在職老齢年金と言われるもので 年金額の一部または全部が支給停止となる場合がある 3 在職老齢年金は 65 歳未満と 65 歳以上とでは受給額の計算方法が異なるが 前者は総報酬月額相当額 (A) と基本月額 (B) に応じて 支給停止額 ( 月額 ) が次のように計算される 総報酬月額相当額 (A) 46 万円以下 46 万円超基本月額 (B) 28 万円以下 (A+B-28 万円 ) 1/2 (46 万円 +B-28 万円 ) 1/2+(A-46 万円 ) 28 万円超 A 1/2 46 万円 1/2+(A-46 万円 ) 仮に, 総報酬月額相当額が 30 万円, 基本月額が 10 万円である場合,1ヵ月当たりの支給停止額は (30 万円 +10 万円 -28 万円 ) 1/2= 6 万円 となる なお 基本月額は 加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金の額 12 で算出される また 上の計算式を見ても分かるとおり 総報酬月額相当額と基本月額との合計額が 28 万円以下の場合, 支給停止は行われず, 特別支給の老齢厚生年金は全額支給される 問 2 1,894,000 円難易度 B 年金額の計算は複雑であるが この実技試験 ( 個人資産相談業務 ) ではよく出題されているので しっかりと覚えておきたい 設例のAさんは 昭和 31 年 3 月 24 日生まれで 高校卒業 (18 歳 ) から 65 歳になるまで厚生年金保険に加入する見込みである この場合 Aさんは 62 歳から 特別支給の老齢厚生年金 ( 報酬比例部分 ) を受給し 65 歳から 老齢厚生年金 と 老齢基礎年金 を受給することができるが このうち 老齢厚生年金 の年金額を問う問題である 老齢厚生年金は 基本的に報酬比例部分の年金額であるが 経過的加算が加算されるケ 2
ースがあり また一定の要件を満たせば配偶者加給年金が加算される 1. 報酬比例部分の額 老齢厚生年金の報酬比例部分の額は 平成 15 年 4 月より総報酬制が導入されたことによ り 次のようにして計算する 報酬比例部分の額 =(1+2) 1.031 物価スライド率 ( 注 1) 1 平成 15 年 3 月以前の期間分 平均標準報酬月額 ( 注 2) 7.5/1,000 平成 15 年 3 月までの被保険者期間の月数 ( 注 3) 2 平成 15 年 4 月以後の期間分 平均標準報酬額 ( 注 4) 5.769/1,000 平成 15 年 4 月以後の被保険者期間の月数 ( 注 5) ( 注 1) 平成 26 年度の物価スライド率は 0.961 である ( 注 2)A さんの場合 設例より 350,000 円 ( 注 3)A さんの場合 設例より 348 月 ( 注 4) 平均標準報酬額とは 平成 15 年 4 月以後の再評価された後の標準報酬月額と 標準賞与額の総額を平成 15 年 4 月以後の被保険者期間の月数で割って算出し たもの A さんの場合 設例より 490,000 円 ( 注 5)A さんの場合 設例より 215 月 A さんの報酬比例部分の額は 次のようになる 7.5 5.769 (350,000 円 348 月 +490,000 円 215 月 ) 1.031 0.961 1,000 1,000 =1,507,254.827 円 1,507,255 円 ( 円未満四捨五入 ) 2. 経過的加算 65 歳前に受給する特別支給の老齢厚生年金は 以前は定額部分と報酬比例部分を合算し た年金であった 65 歳以降は それまでの定額部分が老齢基礎年金に 報酬比例部分が老 齢厚生年金に相当する しかし 当分の間は老齢基礎年金の額より定額部分の額のほうが 大きくなるため 65 歳以降の老齢厚生年金には定額部分から老齢基礎年金を引いた額が加 算される これを経過的加算といい 65 歳以降も 60 歳からの年金額の水準を保障するしく みとなっていた 現在は 定額部分の支給はなくなったが 経過的加算が支給される場合 がある 経過的加算の計算は複雑だが 設問の < 資料 > に計算式が掲載されている ( なお この 計算式の中の 被保険者期間の月数 は 480 月が上限 ) A さんの場合 昭和 36 年 4 月以 後で 20 歳以上 60 歳未満の厚生年金保険の被保険者期間は 480 月 可能加入年数は 40 年 であるので 480 月 1,676 円 480 月 0.961-772,800 円 =305.28 円 305 円 40 年 12 ( 円未満四捨五入 ) 3. 基本年金額 1,507,255 円円 +305 円 =1,507,560 円 1,507,600 円 (50 円未満切り捨て 50 円以上 100 円未満切り上げ ) 3
4. 加給年金額厚生年金保険の被保険者期間が 20 年以上ある人などが 定額部分や老齢基礎年金の支給 開始年齢に達した時点 ( 昭和 24 年 4 月 2 日以降生まれの人は 65 歳 ) で その人に生計を 維持されている 65 歳未満の老齢年金等の受給権のない配偶者がいる場合 老齢厚生年金に 加給年金額が加算される A さんの場合 この要件を満たすので 加給年金額 (386,400 円 ) が加算される 5. 老齢厚生年金の年金額 ( 平成 26 年度の価額 ) 1,507,600 円 +386,400 円 =1,894,000 円 問 3 難易度 B 判定 1 不適切 雇用保険の被保険者期間が 5 年以上ある人が 60 歳以後も雇用保険の一般被保険者として勤務し, 賃金が 60 歳到達時点に比べて 75% 未満に低下した場合, 原則として雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金が支給される なお この給付が年金と同時に受けられる場合は, 年金と雇用保険との調整が行われ, 年金額の一部が支給停止となる 支給停止される年金額 ( 月額 ) は, 最高で標準報酬月額の 6% 相当額である 2 不適切 老齢厚生年金や老齢基礎年金は 65 歳支給が原則であるが 66 歳以降に繰り下げて支給を受けることができる 老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々の希望月で繰り下げることができる 繰り下げた場合 年金額が繰り下げた月数に応じて 1 ヵ月当たり 0.7% 増額 ( 最大 42%) される 3 適切 特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げは 女性の場合 男性よりも 5 年遅れて実施されているので 昭和 29 年 4 月 2 日 ~ 昭和 33 年 4 月 1 日生まれの女性 ( 妻 Bさんの生年月日は昭和 32 年 12 月 10 日 ) は 60 歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができる また 60 歳以後もパート勤務を続けながら配偶者の健康保険の被扶養者となるためには, 年収 180 万円未満 (60 歳未満の場合は 130 万円未満 ) であることなどが必要である 第 2 問 問 4 難易度 B 記号 ロ ニ チ * 資料より X 投資信託の A さん購入後 2 年間の決算実績 (1 万口当たり ) は 次のよう になっている 4
購入時 1 回目の決算 2 回目の決算基準価額 10,100 円 10,400 円 ( 分配後 ) 10,000 円 ( 分配後 ) Aさんの個別元本の額 10,100 円 10,100 円 ( 分配後 ) 10,000 円 ( 分配後 ) 分配金の額 300 円 300 円 基準価額 とは 投資信託が組み入れているすべての資産を時価評価したものから諸経費を引いた金額 ( 純資産総額 ) を 1 単位口数当たりに換算したもので いわば投資信託の値段である 個別元本 とは 受益者(Aさん) が投資信託を購入した時の基準価額で 収益分配金の税金計算を行うときの税法上の元本をいう 受益者が同一の投資信託を複数回購入した場合や特別分配金を受け取った場合などには その都度 個別元本が修正される 分配金 は 運用して得た収益を 保有口数に応じて投資家に分配するもので 投資信託の決算が行われる際に支払われる 分配金には課税される 普通分配金 と課税されない 特別分配金 ( 元本払戻金 ) がある 課税されるかどうかは 決算日の基準価額が個別元本を上回るか下回るかで判断される 個別元本は個人ごとに異なるため 課税されるかどうかも個人ごとに異なる 1 決算日の基準価額 > 個別元本 の場合 分配金全額が普通分配金になる したがって X 投資信託の 1 回目の決算における分配金 300 円は, 全額が普通分配金に該当し Aさんの個別元本は購入時の 10,100 円のままである 決算日の基準価額 < 個別元本 の場合 その差額が特別分配金 ( ただし 分配金額が限度 ) となり 分配金から特別分配金を引いた部分が普通分配金になる 2 回目の決算における分配金 300 円のうち 10,100 円 -10,000=100 円 が特別分配金で 300 円 -100 円 =200 円 が普通分配金である < 第 2 回目の決算 > < 課税 > 所得税 15% 分配前の基準価額復興特別所得税 0.315% (10,300 円 ) 普通分配金 200 円住民税 5% 分配前の個別元本の額 (10,100 円 ) 分配後の基準価額 (10,000 円 ) 特別分配金 100 円 10,000 円 分配金 300 円 < 非課税 > 分配後の個別元本の額 (10,000 円 ) 5
23 株式投資信託の普通分配金による所得は 配当所得 ( 公社債投資信託の普通分配金 は 利子所得 ) とされ, 分配時には 税率 20.315%( 所得税 15% 復興特別所得税 0.315% 住民税 5%) で源泉徴収が行われる 問 5 難易度 B 判定 1 適切 金利が上昇すると 債券の価格は下落するので Mさんの説明は適切である 2 適切 為替ヘッジを行った場合, 為替ヘッジを行わない場合と比較して, 円高による為替差損を抑えることができるので Mさんの説明は適切である 3 不適切 託財産留保額とは 投資信託の途中解約に伴う手数料で その解約によって保有を続ける投資家が不公平にならないために設けられている 償還する時には 信託財産留保額は控除されない 問 6 3.18% 難易度 B * 証券投資においては 将来の収益を予測することは不可能であるが 実現しそうなケースの確率を予測し その起こりうる確率における予想収益率を加重平均することで その投資対象の収益性を計測することが可能である この加重平均値を 期待収益率 という * 証券 Aの期待収益率は 次の算式で求めることができる 期待収益率 =R 1% r 1 +R 2% r 2 + +R t% r t R%: 収益率 r: 収益率がR% となる確率 * ポートフォリオの期待収益率は 証券 Aの期待収益率 投資割合 + 証券 Bの期待収益率 投資割合 で求めることができる X 投資信託の期待収益率 3.0% 30%+10.0% 50%+(-10.0%) 20%=3.9% Y 投資信託の期待収益率 (-6.0%) 30%+5.0% 50%+7.0% 20%=2.1% ポートフォリオの期待収益率 3.9% 60%+2.1% 40%=3.18% 第 3 問 問 7 難易度 A 記号 ロ リ ホ * の通り 6
< 住宅借入金等特別控除の主な適用要件 > 住宅の取得等の日から 6 ヵ月以内に居住の用に供し, 原則として適用を受ける各年の 12 月 31 日まで引き続き居住の用に供していること 適用を受ける年分の合計所得金額が 3,000 万円以下であること 取得等をした住宅の床面積が 50 m2以上であり, その 2 分の 1 以上がもっぱら自己の居住の用に供するものであること 借入金等は, 住宅の取得等のための一定の借入金等で,10 年以上にわたり分割して返済する方法になっているものであること 問 8 難易度 A 判定 1 適切 給与所得者の場合 住宅借入金等特別控除の適用を最初に受ける場合は確定申告が必要であるが 2 年目以降は年末調整で適用を受けることができる 2 不適切 Aさんの確定申告書の提出先は,A さんの住所地を所轄する税務署長である 3 不適切 Aさんが税理士資格を有していない場合, 他人の確定申告を代理等して行うことは税理士法に抵触するが 自身の所得税の確定申告を自ら行うことは, 税理士法に抵触しない 問 9 15,280,000 円 2380,000 円 3255,500 円 4193,200 円難易度 B (a) 総所得金額 ( 給与所得の金額 ):5,280,000 円給与所得 :7,200,000 円 -1,920,000 円 ( 注 )=5,280,000 円 ( 注 ) 給与所得控除額 : 7,200,000 円 10%+1,200,000=1,920,000 円社会保険料控除 : 源泉徴収票の 社会保険料等の金額 欄に 1,005,000 円 1,005,000 円 とある 社会保険料控除は支払った社会保険料の全額が控除額となる 生命保険料控除 : 源泉徴収票の 生命保険料の控除額 欄に 100,000 円 100,000 円 とある 内訳は 旧生命保険料の金額 12 万円 10 万円 一般の生命保険料控除 :5 万円旧個人年金保険料の金額 12 万円 10 万円 個人年金保険料控除 :5 万円配偶者控除 : 源泉徴収票の 控除対象配偶者の有無等 欄で 380,000 円 (2) 有 に 印が付いている 配偶者控除額は 一律 38 万円である 5,280,000 円 (1) 1,865,000 円 7
基礎控除 : 誰でも 38 万円の基礎控除を受けられる 源泉徴 380,000 円収票には記載がない (b) 所得控除の額の合計額 : 1,005,000 円 +100,000 円 +380,000 円 +380,000 円 =1,865,000 円 ( 注 ) 長女 Cは 15 歳以下の年少扶養親族なので 扶養控除の適用はない (c) 課税総所得金額 :(a-b) 3,415,000 円 5,280,000 円 -1,865,000 円 =3,415,000 円 (d) 算出税額 :(c に対する所得税額 ) 255,500 円 (3) 3,415,000 円 20%-427,500 円 =255,500 円 (e) 税額控除 ( 住宅借入金等特別控除 ): 193,200 円 (4) 19,320,000 円 ( 年末残高 ) 1%( 注 )=193,200 円 ( 注 ) 住宅ローン控除の控除額は 年末借入金残高 ( 最高限度がある ) 控除率 で計算されるが 入居した年月が平成 26 年 4 月 ~ 平成 29 年 12 月の場合 次のようになる 年末借入金残高 ( 最高限度 ) 控除率一般住宅の場合 4,000 万円 1.0% 認定住宅の場合 5,000 万円 認定住宅: 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 都市の低炭素化の促進に関する法律 に規定する住宅 (f) 差引所得税額 ( 基準所得税額 ):(d-e) 62,300 円 255,500 円 -193,200 円 =62,300 円 (g) 復興特別所得税額 :62,300 円 2.1%=1,308 円 (1 円未満切り捨て ) 1,308 円 (h) 所得税および復興特別所得税額 : 63,608 円 62,300 円 +1,308 円 =63,608 円 ( 以下 省略 ) 第 4 問 問 10 難易度 B 判定 1 適切 不動産登記記録は, 法務局で確認することができる 2 不適切 登記には公信力が認められていない 公信力とは 登記事項を信じて 権利者として登記されている者と取引した場合 法的に保護されるという効力である したがって Aさんが不動産登記記録により売主を真の所有者であると信じて取引をした場合 Aさんが当該マンションの所有権を必ず取得することができるとは限らない 3 不適切 登録免許税の税額は 固定資産税評価額 税率 で計算されるが 居住用家屋については 軽減税率の特例がある 8
< 住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減 >( 平成 27 年 3 月 31 日まで ) * 要件 自己居住用の住宅 取得後 1 年以内に登記されたもの 中古住宅の場合 マンション等耐火建築物は 25 年以内 木造等耐火建築物以外は 20 年以内に建築されたもの この年数を超えている場合には その住宅が新耐震基準に適合していることについて証明されたものや 既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のものであること 床面積( 登記簿面積 )50 m2以上 * 軽減税率 本則 2.0% 軽減税率 0.3%( 注 ) ( 注 ) 長期優良住宅 認定低炭素住宅の新築等に係る登録免許税の税率は 平成 28 年 3 月 31 日までの措置として 0.1%( 戸建ての長期優良住宅の移転登記については 0.2%) に軽減 問 11 難易度 B 記号 ロ ホ チ 1 不動産取得税は, 不動産の取得者に課される 地方税 で, 税額は 固定資産税評価額 ( 課税標準 ) 税率 で計算される 2 不動産取得税では 土地については取得した不動産の価格 ( 固定資産税評価額 ) に 2 分の 1 を乗じた額が不動産取得税の課税標準となる また 建物については, 一定の要件を満たせば 独立的に区画された1 戸ごとの価格から最大で 1,200 万円 を控除した額が課税標準となる ( 平成 27 年 3 月 31 日までの措置 ) 3 不動産取得税の標準税率は, 本則は 4% であるが, 平成 27 年 3 月 31 日までの取得については特例により 3% とされている 問 12 3,552,500 円難易度 B * 不動産の譲渡所得の税額は 次のようにして計算される 譲渡価額 -( 取得価額 + 譲渡費用 )- 特別控除額 = 課税譲渡所得金額課税譲渡所得金額 税率 = 税額 * 取得価額が不明のときや実際の取得費が少額のときは 譲渡価額の 5% を概算取得費とすることができる * 居住用財産を譲渡した場合 所有期間の長短にかかわらず 特別控除額は 3,000 万円である * 不動産の譲渡所得の場合 譲渡の年の 1 月 1 日現在において 所有期間が 5 年以下なら短期譲渡 5 年超なら長期譲渡となり 居住用財産で 10 年超なら軽減税率の特例を受けることができる それぞれの税率は次の通り 9
課税譲渡所得金額 所得税 住民税 短期譲渡 - 30%(30.63%) 9% 長期譲渡 - 15%(15.315%) 5% 10 年超所有の居住用財産の譲渡 ( 軽減税率 ) 6,000 万円以下の部分 6,000 万円超の部分 10%(10.21%) 15%(15.315%) 4% 5% ( 注 ) カッコ内は 復興特別所得税 ( 基準所得税額 2.1%) を加算した税率 * 設問のケースの場合 所得税, 復興特別所得税および住民税の合計額は 次のように なる 譲渡価額 概算取得費 譲渡費用特別控除額課税譲渡所得金額 6,000 万円 -300 万円 ( 注 )- 200 万円 -3,000 万円 = 2,500 万円 ( 注 ) 概算取得費 :6,000 万円 5%=300 万円 2,500 万円 14.21%( 所得税 復興特別所得税 住民税合算 )=3,552,500 円 第 5 問 問 13 難易度 A 記号 ロ ハ チ 1 公正証書遺言は, 証人 2 人以上の立会いのもと, 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し, 公証人がそれを筆記して作成される遺言であり, 相続開始後に家庭裁判所による検認の手続が 不要 である 検認とは, 相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに, 遺言書の形状, 加除訂正の状態, 日付, 署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造 変造を防止するための手続で 自筆証書遺言 秘密証書遺言の場合には検認が必要である 2 遺留分とは 一定の相続人が相続財産の一定割合を確保できるように民法が定めた権利で 遺言の内容が相続人の遺留分を侵害する場合, 当該相続人は遺留分減殺請求を行うことができる 遺留分権利者は 配偶者 子 ( 代襲相続人を含む ) 直系尊属で 兄弟姉妹には遺留分の権利が認められていない したがって Aさんの相続について遺留分を有する者は 妻 Bさんのみ である 3 相続税の申告書は 相続の開始があったことを知った日の翌日から原則として 10 ヵ月 以内に提出しなければならない 問 14 難易度 B 判定 1 不適切 相続人が相続により取得した宅地については 一定の要件を満たせば 小規 模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 の適用が受けられ 評価額が減 10
額される < 小規模宅地等の特例 > 減額対象面積 減額割合 特定事業用宅地等 400 m2 80% 貸付事業用宅地等 200 m2 50% 特定居住用宅地等 240 m2 ( 注 ) 80% ( 注 ) 平成 27 年 1 月 1 日以後の相続の場合 330 m2 被相続人の居住の用に供されていた宅地等を配偶者が相続した場合には 特定居住用 宅地等 となり 設問のような 申告期限までの保有要件はない なお 配偶者以外 の親族が相続する場合には 当該敷地を相続税の申告期限まで保有しなければならな いという要件がある 2 適切 相続人が受け取った生命保険金のうち その相続人に適用される非課税の金額 は次のようにして計算する その相続人の取得した死亡保険金額 500 万円 法定相続人の数 被相続人の全ての相続人が取得した死亡保険金の合計額設例の場合 Aさんの法定相続人は 妻 Bさん 妹 Dさん 甥 Eさん ( 妹 Cさんの代 襲相続人 ) の 3 人であるので 妹 D さんに適用される非課税金額と相続税の課税価格 に算入される金額は 次のようになる < 妹 D さんに適用される非課税金額 > 2,000 万円 500 万円 3 人 =375 万円 6,000 万円 +2,000 万円 < 相続税の課税価格に算入される金額 > 2,000 万円 -375 万円 =1,625 万円 3 不適切 配偶者に対する相続税額の軽減 とは 配偶者が相続した財産が法定相続分 相当額または 1 億 6,000 万円のどちらか多い金額までは 配偶者には相続税がかから ないという特例である したがって A さんの相続に係る相続税の課税価格の合計額 が 4 億円で 相続人が妻 B さん 妹 D さん 甥 E さん ( 妹 C さんの代襲相続人 ) であ る場合 妻 B さんが相続する財産が 1 億 6,000 万円を超えても 法定相続分相当額で ある 4 億円 3/4=3 億円 までであれば 妻 B さんには相続税がかからない 問 15 18,000 万円 25,500 万円 3400 万円 46,300 万円難易度 A * 相続税の計算において 相続税の総額 までは 誰がどのように相続するかにかかわらず 法定相続分通りに相続したものとみなして計算する 課税価格の合計額本問では 金額を明らかにしていないが 課税遺産総額 ( 課税価格の合計額 - 基礎控除額 )2 億 4,000 万円が明記されており 基礎控除額から逆算すると 3 億 2,000 万円となる 遺産に係る基礎控除額基礎控除額は 5,000 万円 +1,000 万円 法定相続人の数 ( 注 ) で計算される なお 11
この法定相続人の数は 民法上の取り扱いと異なって ( イ ) 相続放棄した人も放棄しなかったものとして取り扱う ( ロ ) 養子が複数いる場合 実子がいる場合は 1 人 実子がいない場合は 2 人までしかカウントできないという制限がある 設問の場合 法定相続人の数は妻 Bさん 妹 Dさん 甥 Eさん ( 妹 Cさんの代襲相続人 ) の 3 人なので 基礎控除額は次のようになる 5,000 万円 +1,000 万円 3 人 =8,000 万円 (1) 課税遺産総額 3 億 2,000 万円 -8,000 万円 =2 億 4,000 万円 ( この金額が設問上の前提条件として記載されている ) 相続税の総額妻 Bさんの相続税の総額の基となる税額 2 億 4,000 万円 3/4=1 億 8,000 万円 1 億 8,000 万円 40%-1,700 万円 =5,500 万円 (2) 妹 Dさんの相続税の総額の基となる税額 2 億 4,000 万円 1/4 1/2=3,000 万円 3,000 万円 15%-50 万円 =400 万円 (3) 甥 Eさんの相続税の総額の基となる税額妹 Dさんと同じ=400 万円相続税の総額 5,500 万円 +400 万円 2 人 =6,300 万円 (4) ( 注 ) 平成 27 年 1 月 1 日以後の相続から 基礎控除額の計算式は 3,000 万円 +600 万円 法定相続人の数 となる また 相続税の税率も 最高税率が 55%(6 億円超の場合 ) となり 次のようにな る < 相続税の速算表 >( 平成 27 年 1 月 1 日以後の相続 ) 法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 1,000 万円以下 10% 1,000 万円超 3,000 万円以下 15% 50 万円 3,000 万円超 5,000 万円以下 20% 200 万円 5,000 万円超 1 億万円以下 30% 700 万円 1 億円超 2 億円以下 40% 1,700 万円 2 億円超 3 億円以下 45% 2,700 万円 3 億円超 6 億円以下 50% 4,200 万円 6 億円超 55% 7,200 万円 これに基づき 設例のAさんが平成 27 年 1 月 1 日以後に死亡したとした場合 ( 他の条件は同じ ) 相続税の総額は次のようになる 基礎控除額 3,000 万円 +600 万円 3 人 =4,800 万円 課税遺産総額 3 億 2,000 万円 -4,800 万円 =2 億 7,200 万円 12
相続税の総額妻 Bさんの相続税の総額の基となる税額 2 億 7,200 万円 3/4=2 億 400 万円 2 億 400 万円 45%-2,700 万円 =6,480 万円妹 Dさんの相続税の総額の基となる税額 2 億 7,200 万円 1/4 1/2=3,400 万円 3,400 万円 20%-200 万円 =480 万円甥 Eさんの相続税の総額の基となる税額妹 Dさんと同じ=480 万円相続税の総額 6,480 万円 +480 万円 2 人 =7,440 万円 13