海上自衛隊の艦艇における防衛生産 技術基盤に必要な要件 資料 2 平成 23 年 3 月 29 日防衛省海上幕僚監部 1
目 次 1 我が国周辺の海洋に関する情勢 2 海上自衛隊における部隊運用 3 艦船の開発と維持整備等の現状 4 防衛生産 技術基盤に必要な要件 2
我が国の海上交通路我が国の海上貿易量 ( 輸出入合計 ) は99.7% 1 我が国周辺の海洋に関する情勢我が国周辺の海洋 に関する情勢 (1/2) 凡例 80% 65% 対外依存度 原油 :99.6% 大豆 :95.0% 小麦 :86.0% 鉄鉱石 :100% LNG:96.4% ( 日本海運の現状 : 日本船主協会 (2010 年 )) 3
東シナ海の安全保障環境 中国海軍の近代化 世界の軍事技術発展の趨勢に対応し 軍事力のハイテク化 情報化を推進 我が国周辺の海洋に関する情勢 (2/2) 水上艦艇の近代化 潜水艦の近代化 空母保有の動向 中国海軍の活動活発化 潜水艦 ミサイル駆逐艦 補給艦等 合計 10 隻 平成 22 年 4 月中国海軍 HS 近接飛行 ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦 中国海軍艦載ヘリ 沖縄 ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦 フーチン級補給艦 平成 23 年 3 月にも中国 HS 近接飛行 4
新たな防衛力の考え方 基盤的防衛力構想 : 防衛力の存在自体による抑止効果を重視 2 海上自衛隊における部隊運用海上自衛隊における 部隊運用 (1/4) 事態発生の時間短縮 即応性等の部隊運用能力の重要性増大 平素から情報収集 警戒監視等を適時適切に行い 我が国の意思と高い防衛能力を明示 抑止力の信頼性向上 防衛力を国際的な協力において発揮 二国間 多国間の協力関係強化 国際平和協力活動の積極的実施 動的な抑止力 安全保障環境改善のための活動 防衛力の役割 1 実効的な抑止及び対処 2 アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化 3 グローバルな安全保障環境の改善 動的防衛力 即応性 機動性 柔軟性 持続性 多目的性 高度な技術力と情報能力 補給艦から給油を受ける護衛艦と輸送艦 5
防衛力の役割 ( 部隊運用面 ) 実効的な抑止及び対処 周辺海空域の安全確保 島嶼部に対する攻撃への対応 弾道ミサイル攻撃への対応 複合事態への対応 グローバルな安全保障環境の改善 国際テロ対策 海上交通の安全確保や海洋秩序の維持のための取組等を推進 等 海上自衛隊における部隊運用 (2/4) 対潜戦 対空戦等各種戦への対応能力 アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化 日米同盟関係の深化 防衛協力 交流 共同訓練 演習 RIMPAC 等の 2 国間 多国間共同訓練 海賊対処活動 PSI 等 周辺海空域の安全確保 ( イメーシ ) RIMPAC( 環太平洋合同演習 ) ソマリア アデン湾における海賊対処活動 護衛艦による護衛 6
存在から運用の時代へ 海上自衛隊における 部隊運用 (3/4) 基盤的防衛力 転換 動的防衛力 より一層の 多種多様な艦艇の総合運用力が重要 国際緊急援助活動に従事するおおすみ型輸送艦 各艦種の役割増大多種多様な開発 生産態勢の確保 装備品等の高可動率がクローズアップ イージス艦の整備 即応修理態勢の確保 7
各艦種の特徴海上自衛隊における部隊運用 (4/4) 活動内容艦種特徴 対潜戦 対空戦 対水上戦 警戒監視海賊対処 テロ対策災害派遣等対潜戦 対空戦 BMD 対応 対水上戦 警戒監視 テロ対策 災害派遣等 対潜戦 対水上戦警戒監視等 汎用護衛艦 イージス艦 潜水艦 国産船体と複数の武器システムの有機的統合 運用海域の特性を考慮した対潜システム 諸海軍とのインターオペラビリティ 我が国独自運用の双方を考慮したC4Iシステム 国産船体と複数の武器システムの有機的統合 複雑かつ大規模な米国製武器システムと国産武器システムのインテグレーション BMD 任務等 高可動率の要求 国内技術による高い静粛性 水中持続力 運用及び装備に関する秘匿性 高張力鋼の溶接技術 機雷戦 警戒監視 災害派遣 海中爆発性危険物処分等 艦隊支援 海洋観測テロ対策 災害派遣国際緊急援助活動等 掃海艦艇 補助艦艇 極めて厳しい磁気 消磁対策 運用海域に適応した掃海システム 水圧環境下の海水中に長期間敷設するための成形 接合技術 戦闘部隊に随伴し支援できる能力 国内外の災害援助等への対応を考慮 多様な任務に対応できる艦内配置 ぎ装 8
3 艦船の開発と維持整備等の現状艦船の開発と 艦艇のライフサイクル 研究開発建造 維持整備等の現状 (1/6) DD:18kt GPS 層深 M30S BB SD M30S SS:8kt 除籍 就役 装備品取得 維持整備 9
運用要求に基づく研究開発 ( 例 : 水上艦用ソーナー OQQ-21) 艦船の開発と維持整備等の現状 (2/6) ( 官側 ) 運用要求 海幕 ( 要求性能 ) 技本 ( 開発仕様 ) ( 民側 ) ( 民側 ) 研究試作 送波器 基本 詳細設計 整相面 < 補正周期と補正単位 > ビーム種別動揺修正補正周期補正単位 ODT - 本来の素子座標送 RDT 実施送信パルスの 度単位 艦首信先頭で計算 SDT 実施 動揺による - 素子傾斜 アクティフ 実施 毎 度単位傾斜した受 ヒ ーム整相の ハ ッシフ 実施素子座標信溜込み処理 サ SOA 実施イクル分 傾斜した素子の座標を計算した後 整相面までの距離 ビーム傾きによる減衰を 以内とした 従来は固定値 を算出して ヒ ーム整相に使用する <ODT 補正無しの影響 > 傾斜角 : 度では約 減衰 傾斜角 : 度では約 減衰 最大傾斜角周期動揺減衰装置 使用時ロール 秒 度 度 度ピッチ 秒 度 度 度 殿の動揺計算による ; 記載値 送受波器構造設計 契約 関連試験 試作技術 / 実用試験支援 ( 一部 ) 納入 GPS DD:18kt M30S 層深 M30S SD SS:8kt BB 研究開発の多くの部分を民間企業に依存 国内の技術基盤が中心であるため 運用要求の細部について反映可能 運用要求を的確に反映した装備品 ( 細部仕様を含む ) の取得が可能 10
装備品取得の現状 艦船の開発と維持整備等の現状 (3/6) 特徴装備品の代表例 国 産 直接調達 研究開発 国内技術基盤の発展 維持整備等について十分なサポート 装備品の短期間取得が可能 運用所要を満たす装備品の取得が可能 装備品取得まで長期間を要し 運用開始時に陳腐化の恐れ 高コストとなる恐れ OPS シリーズ FCS-3 ライセンス国産 一般輸入 FMS 政治的関係が大きく影響 国内に維持整備基盤は確保できるが 技術基盤の喪失の恐れ 装備品の比較的短期間取得が可能 故障 維持整備のサポート態勢が不十分な恐れ ( 継続的な情報収集が重要 ) 装備品の短期間取得が可能 米国の所要が優先( 部品等を入手できないケースもある ) 米国装備品を 技術支援 維持整備支援を含め導入可能 日米間のインターオペラビリティ確保に寄与 性能 コスト 運用要求等 様々な観点から総合的に勘案し 取得方法を決定 ( 維持整備の観点では 運用要求を満たす国産による供給が理想 ) 11 VLS SAM ( 遠隔操縦式掃海具 ) イージスシステム
維持整備の観点による艦船建造 艦船の開発と維持整備等の現状 (4/6) 建造の流れ 海幕 ( 要求性能 ) 予算成立 武器ぎ装 試験船体建造 進水詳細設計契約技本 ( 基本設計 ) ( 官側 ) ( 民側 ) 海上試験 就役 3000 2000 1000 0 : 契約会社 : 第一次下請企業 : 第二次下請企業 護衛艦 (2,523 社 ) 72 社 1378 1073 568 関連企業数 潜水艦 (1,462 社 ) 掃海艇 (1,084 社 ) 52 社 54 社 842 596 434 企業数には 外国企業及び素材メーカーは含まない 基 盤 関連企業区分 : 大企業 : 中小企業 護衛艦 20% 潜水艦 19% 掃海艇 16% 80% 81% 艦船建造建造の多くの部分を民間企業に依存 これらの企業のほとんどは維持整備基盤でもある 84% 艦船の建造基盤と維持整備基盤は極めて密接な関係にある ( 艦船建造の縮小等は 維持整備にも大きく影響 ) 12
艦船維持整備の工事状況 艦船の開発と維持整備等の現状 (5/6) 受注 造船所 小部品の作製 艦船維持整備における全所要工事 外注修理工事 整備部隊 乗員整備 専門メーカー 中小下請企業 部品 メーカー 造補所等 ほとんどの入渠工事 一部の機器計測 作動点検 定常的な修理工事 臨時修理 事故復旧工事等 軽微な点検整備 保存整備作業 主要武器陸揚工事 一部の入渠工事 写真はイメージ 整備部隊は定員削減の傾向 全所要工事量及び民間への依存量は 艦船の大型化 高性能化により増加傾向 整備実動部隊を保有しないこと 乗員整備 整備部隊工事は 施設 能力面で制約が多いことから 修理に係るほとんどの部分を民間へ依存 13
艦船維持整備の国内基盤の現状 艦船の開発と維持整備等の現状 (6/6) な復旧 : 地方総監部 三菱重工業 ( 株 ) 下関造船所 佐世保重工 ( 株 ) ユニバーサル造船 ( 株 ) 舞鶴事業所 ユニバーサル造船 ( 株 ) 京浜事業所 函館どつく ( 株 ) ( 株 ) アイ エイチ アイマリンユナイテッド 三菱重工 ( 株 ) 横浜製作所 ( 株 ) 川崎重工神戸工場 三菱重工業 ( 株 ) 神戸造船所 国内修理基盤 ( 造船所 ) 三菱重工業 ( 株 ) 長崎造船所 三井造船 ( 株 ) 玉野事業所 水上艦艇建造 修理造船所 アイ エイチ アイマリンユナイテッド ( 株 ) 呉工場 ユニバーサル造船 ( 株 ) 因島事業所 水上艦艇修理造船所 潜水艦建造 修理造船所 掃海艇建造造船所 故障等緊急事態発生時の迅速な復旧 練度維持所要 乗組員の戦力回復 定係港近傍における修理基盤の維持 14
海上自衛隊における防衛生産 技術基盤 4 防衛生産 技術基盤に必要な要件防衛生産 技術基盤 ( 天井 ) 部隊運用 ( 動的防衛力 ) ( 柱 ) 研究開発 新装備品取得 に必要な要件 (1/4) DD:18kt 層深 M30S BB SD GPS M30S SS:8kt 写真 : 海上自衛隊第 1 術科学校教育参考館 ( 基礎 ) 防衛生産 技術基盤 = 動的防衛力の根幹 建 造 維持整備 情報力 技術力 即応力 持続力 15
情報力 防衛生産 技術基盤に必要な要件 防衛生産 技術基盤に必要な要件 (2/4) 最新装備品に関する情報収集 諸外国の最新装備品情報の収集 国内外民生品動向に関する情報収集 技術力 外国最新武器情報 外国最新武器情報 民生品情報 高度な装備品のシステム統合能力 外国製武器システムと国産武器システムのインテグレーション ( 例 : イージスシステムと国産武器システム ) 国産船体と武器システムの有機的統合能力 先進装備品に対する適応力 外国製装備品のライセンス製造能力 先進装備品の開発 維持 我が国独自の技術力 自国建造能力 ( 高度な設計能力 特殊鋼の加工技術 高度な溶接技術等 ) 各種装備品 ( 射撃指揮装置 ソーナー等 ) の自国開発能力 イージス監こんごう BMD 開発潜水艦の完全自国開発 19 16
即応力 防衛生産 技術基盤に必要な要件 防衛生産 技術基盤に必要な要件 (3/4) 国内外で発生する故障 修理 各種事案に迅速に対応できる技術的 人的対応能力 故障発生時の迅速な復旧 ( 災害派遣先における迅速な故障対応 ) ( 海賊対処活動派遣中の事故への再発防止対策対応等 ) 災害派遣 国際緊急援助活動への派遣準備等に向けた迅速な対応 ( 大規模地震災害対応のための定期修理の早期終了 ) ( 海賊対処活動派遣等に向けた装備対策 ) 東チモール派遣時の LCAC エンシ ン故障対応 海賊対処部隊艦橋の防弾設備 事故に際しての迅速な復旧 ( 衝突事故等の早期復旧 ) 大規模災害派遣 ( 訓練 ) くらま 衝突事故修理 17
持続力 防衛生産 技術基盤に必要な要件 防衛生産 技術基盤に必要な要件 (4/4) 継続した技術支援能力 外国製装備品の定期整備 (O/H 含む ) 能力 長期間 同一形態の装備品を製造可能 高性能な艦船 武器システム等を搭載した艦船を継続的に設計 建造 ( 製造 ) する能力 ( 例 :5インチ砲 CIWS VLS 等 ) 就役期間を通じた修理対応能力 装備品の継続的不具合改善 就役期間を通じ安定した部品供給能力 安定かつ速やかな交換部品の供給 製造中止部品対応 外国製装備品の整備能力 建造技術の維持能力 交換部品等 製造中止のモジュール 18