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Hepes-R1ECMの作製 ( 表 4) 1. 蒸留水に上記の全てを入れて溶かす ポリビニルアルコール (PVA) は溶けにくいので 冷蔵庫内で数日放置して完全に溶かしてから100mLにメスアップする 2. 0.20 μm のフィルターで濾過滅菌し 4 で保管する Hepes-R1ECM/PVPの作製 Hepes-R1ECMにポリビニルピロリドン (PVP) を12% (w/v) になるように加える 濾過滅菌した後に少量ずつ分注し 使用するまで-20 で凍結保存しておく 表 4.Hepes-R1ECM の組成 ストック A 10ml ストック B 10ml NaHCO 3 0.0337g Na-pyruvate 0.0055g MEM AA(x50) 2ml MEM NEAA(x100) 1ml L-Glutamine 0.0146g Hepes buffer (1M) 2.2mL PVA 0.0100g 2) インジェクション ホールディングピペットの作製準備マイクロキャピラリー メカニカルプラー (PN-3;NARISHIGE) マイクロフォージ (MF-900; NARISHIGE) インジェクションピペットの作製 1. ヒーター部の白金フィラメントを整形する ( 付属の整形金具を可動部に取り付けピンセットを用いて形を整える ) 2. プラーのヒーター部にマイクロガラス管の真ん中がくるようにセットする 3. ヒーター マグネット目盛りを任意に設定する プラーの機種やその日の温度 湿度によって引かれ方が異なるので シャンク部分が約 1cm になるよう設定する ( 下図 ) 1cm 4. プラーで引いたマイクロガラス管をマイクロフォージに水平に取り付ける 5. 接眼レンズ内の目盛りで先端外径が 3~4 μm 付近に白金ヒーター先端のガラス玉を接触させる 6. 適度な熱を与え キャピラリーとガラス玉が融合し始めたらヒーター電源を切る これによりその先端部が垂直に切り取られる 3~4 μm 18

ホールディングピペットの作製 1. プラーで引いたキャピラリーの先端外径が 90~120 μm 辺りにアンプルカッター等で傷を付け 断面が垂直になるように切断する 2. キャピラリーをマイクロフォージに水平に取り付け 白金ヒーター先端のガラス玉に適度な熱を与えキャピラリー先端を丸める ( 先端内径が 20~30 μm になる程度まで ) 90~120 μm 20~30 μm 約 150 3. キャピラリーをマイクロフオージに垂直に取り付けた後 ガラス玉を適度に熱し 約 150 の角度を付ける 2. 顕微授精 1) 卵子の準備準備 mr1ecm ミネラルオイル ヒアルロニダーゼ 26G X 1/2 注射針 1 ml シリンジ プラスチックシャーレ (35mm) 卵操作用キャピラリー マウスピース 滅菌ろ紙 滅菌用フィルター (0.20 μm) 有鈎ピンセット 無鈎ピンセット 虹彩ピンセット 外科用ハサミ 眼科用ハサミ 実体顕微鏡 CO 2 インキュベーター 1. ヒアルロニダーゼを mr1ecm に 1mg/mL の濃度で溶解 濾過滅菌する 2. プラスチックシャーレ (35 mm) に100 μl のmR1ECMのドロップ3 個とヒアルロニダーゼのドロップを1 個作り ミネラルオイルで覆い 作製後は残りの培養液と共に5%CO 2 95% 空気の37 インキュベーター内で平衡する 3. hcg 投与 14 時間後に雌ラットを頸椎脱臼により屠殺し 卵管を滅菌ろ紙上に摘出する 4. ヒアルロニダーゼのドロップ近くに摘出した卵管を置き 実体顕微鏡下で 26G 注射針を用いて卵管膨大部を切開し 遊離した卵丘 - 卵子複合体をドロップに引き込む ( 写真 1 2) 5. 採取した卵丘 - 卵子複合体から卵丘細胞が完全に除去されたら mr1ecm のドロップを移動させることで 3 回洗浄し ICSI まで CO 2 インキュベーター内に保管する 1 2 19

2) 精子の準備準備 mr1ecm 5mL 試験管 クライオチューブ 滅菌ろ紙 有鈎ピンセット 無鈎ピンセット 虹彩ピンセット 外科用ハサミ 眼科用ハサミ 剃刀 1. 成熟雄ラット (3~6 か月齢 ) から精巣上体尾部を滅菌ろ紙の上に摘出する 2. 剃刀で精巣上体尾部の精細管を切断し 精子塊を絞りだして 2mL の mr1ecm に懸濁する 3. CO 2 インキュベーター内で 30 分間前培養し スイムアップしてきた精子 ( 培養上清 1.0mL) を 5mL 容量の試験管に移して超音波ホモジナイザー ( 最低出力で 10 秒間 ) にかける これにより精子の尾部が切断される 4. 100 μl ずつクライオチューブに分注し 液体窒素中に浸漬して使用時まで凍結保存する 5. 液体窒素タンクより取り出したクライオチューブを 蓋を開けて逆さまにしチューブ内の液体窒素を取り除く 6. その後 蓋を閉めなおしたクライオチューブを 20~25 の水槽に浸漬し 精子を融解する 3) 顕微授精の手順準備 Hepes-R1ECM Hepes-R1ECM/PVP プラスチックシャーレ (35mm) インジェクションピペット ホールディングピペット 卵操作用キャピラリー マウスピース 実体顕微鏡 1. プラスチックシャーレ (35mm) のフタに右図のように各液 6 μl のドロップ1~4を作製し ミネラルオイルで覆う 2. ドロップ4で水銀の吐き出しと Hepes-R1ECM/PVP の吸い込みを繰り返すことでインジェクションピペットの内部を洗浄する 3. 精子をドロップ3に 卵子をドロップ1にそれぞれ入れる 4. 精子をインジェクションピペットに吸入した状態でドロップ2を経て 精子注入用ドロップ1に移動する 5. 卵子の第 1 極体が 12 時か 6 時の位置になるようにホールディングピペットで保定する 6. 精子をいったんピペットからはき出し 数回のピエゾパルス (intensity 2 speed 1) により透明帯のみを穿通させる ( 写真 4) 1 2 3 4 精子注入用 (Hepes-R1ECM) ピペット外部洗浄用 (Hepes-R1ECM) 精子懸濁用 (Hepes-R1ECM/PVP) ピペット内部洗浄用 (Hepes-R1ECM/PVP) 4 20

7. 再び精子をキャッチし ( 写真 5) ピペットを卵細胞質に深く押し込み 注入用インジェクターに少し陽圧をかける 8. 1 回のピエゾパルス (intensity 1 speed 1) により卵細胞膜を穿通させると同時に精子を卵細胞質内に注入し ( 写真 6) ピペットをすばやく抜き去る 9. 精子を注入した卵子を Hepes-R1ECM に回収し 10 分間室温で静置する 5 6 4) 培養準備 mr1ecm プラスチックシャーレ (35mm) 卵操作用キャピラリー マウスピース 実体顕微鏡 CO 2 インキュベーター 1. mr1ecm のドロップで3 回洗浄後 CO 2 インキュベーター内で培養する 2. 精子注入後 6 時間目に卵子の生存率 受精率を判定する 雌性 雄性両前核及び第 2 極体が認められたものを正常受精卵と見なす 3. 精子注入後 24 時間目に受精卵の分割率を判定し 形態正常卵を卵管移植に供する 21

3. 器具 リスト 器具リスト ( メーカー Cat No) メカニカルプラー Narishige PN-3 マイクロフオージ Narishige MF900 超音波ホモジナイザー BRANSON SONIFIER250 浸透圧計 VOGEL OM802-D クライオチューブ Nunc 363401 ガラスキャピラリー Sutter B100-75-10 リスト ( メーカー Cat No) CaCl 2 2H 2 O Wako 031-00435 MgCl 2 6H 2 O SIGMA M0250 NaCl Wako 191-01665 KCl Wako 163-03545 NaHCO 3 Wako 191-01305 Glucose Wako 041-00595 Na-pyruvate SIGMA P2256 Na-lactate nacalai tesque 31605-72 Penicillin G ( 株 ) 明治製菓 20 万単位 / バイアル Streptomycin ( 株 ) 明治製菓 1g( 力価 )/ バイアル Bovine serum albumin SIGMA A6003 Hyaluronidase SIGMA H3506 Mineral oil SIGMA M8410 MEM Amino Acid Solution GIBCO 11130-051 MEM Non-Essential Amino Acids Solution GIBCO 11140 050 L-Glutamine SIGMA G3126 Hepes Buffer Solution GIBCO 15630-080 Polyvinylalcohol SIGMA P8136 22