結果

Similar documents
~「よい夫婦の日」、夫婦間コミュニケーションとセックスに関する実態・意識調査~

腰痛多発業種における 作業姿勢特性調査 独立行政法人労働者健康福祉機構所長酒井國男 大阪産業保健推進センター 相談員久保田昌詞 特別相談員浅田史成 大阪労災病院勤労者予防医療センター所 長大橋誠 関東労災病院リハビリテーション科 技師長田上光男 日本産業衛生学会産業医部会 部会長岡田章

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

2) 各質問項目における留意点 導入質問 留意点 A B もの忘れが多いと感じますか 1 年前と比べてもの忘れが増えたと感じますか 導入の質問家族や介護者から見て, 対象者の もの忘れ が現在多いと感じるかどうか ( 目立つかどうか ), その程度を確認する. 対象者本人の回答で評価する. 導入の質

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

Microsoft Word - FW08報告座位

介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

満足感が得られないお風呂掃除は、「もうやりたくない家事」No.1 負担を減らすために有効なモノは?

ストレッチング指導理論_本文.indb

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

ども これを用いて 患者さんが来たとき 例えば頭が痛いと言ったときに ではその頭痛の程度はどうかとか あるいは呼吸困難はどの程度かということから 5 段階で緊急度を判定するシステムになっています ポスター 3 ポスター -4 研究方法ですけれども 研究デザインは至ってシンプルです 導入した前後で比較

演習:キャップハンディ ~言葉のわからない人の疑似体験~

睡眠調査(概要)

卒業研究発表会  メタバースアバタの属性が パーソナルスペースの形状に及ぼす効果分析

(2) 記録用サポートブックの作り方 記録用サポートブックは 一般様式 を使って書きます 一般様式 は 項目 本人の状況 支援方法 の 3 つの枠からできています 様式一般様式支援者 : 場所 : 日付 : < 項目 > 例 ) 話を聞く( 授業中 ) 使い ポイント 方 気になるな 困ったな と思

計算例 それでは 実際に計算をしてみましょう ここでは 以下の回答例の場合に どのように点数を算出し 高ストレス者の選定を行うかについて紹介します まず 回答例のの枠内の質問について 回答のあった点数を という置き換えのルールに基づいて 置き換えていきます ( 枠外の

Microsoft Word - 4㕕H30 �践蕖㕕管璃蕖㕕㇫ㅪ�ㅥㅩㅀ.docx

研究計画書

‘¬“û”qFinal

Microsoft Word - シラバス.doc

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

04_06.indd


刈払機安全ベルトの一考察 青森森林管理署業務第二課森林育成係長 中島彩夏 業務第二課長 葛西譲 1. はじめに造林事業における刈払機関係の労働災害が後を絶たない中 ( 株 )JPハイテックが股バンドを発表し 反響を呼んだ この股バンドとは 平バンド カラビナ イタオクリ バックルを材料に安価で容易に

!"# $%&'(

[ ユーザー ( 利用者 ) 評価 ] 問 1 契約書や重要事項説明書などの説明は分かりやすかっ 問 2 たですか?(4.1 点 ) 苦情受付窓口 ( 事業所の相談窓口 区役所 国民健康保険団体連合会など ) についての説明は分かりやすかったですか?(3.8 点 ) 問 1 問 2 無回答, 111

コンセントレーションカール 腕を鍛える筋トレメニュー 鍛えられる筋肉 : 上腕二頭筋 前腕屈筋 1. ベンチに座り 片手でダンベルを持ち 上腕を太ももの内側に固定します 2. ゆっくりとひじを曲げてダンベルを上げ ゆっくりと戻します フレンチプレス 鍛えられる筋肉 : 上腕三頭筋 1. 片手にダンベ

Microsoft Word - FW2018報告書-二次障害.docx

表紙案8

実験題吊  「加速度センサーを作ってみよう《

わたしたちのやりたいケア 介護の知識50

Microsoft Word -



姿勢分析 姿勢分析 お名前 北原有希様 体重 45.0 kg 運動レベル 中 生年月日 1977 年 9 月 18 日 身長 cm オレンジ色の項目は 優先度の高い項目です 最適な状態にするための姿勢矯正プログラムが提供されます 頭が前に 18.3 出ています / 前に 2.9 cm 傾

1 体幹が安定すると早くなる? お腹まわりを安定させ 体幹が安定していると 泳いでいる時に 抵抗の少ない良い姿勢をキープできるようになり 速く泳げるようになる可能性があります体幹が安定せず 抵抗が大きい姿勢となれば 早く泳ぐことができない可能性があります また 脚が左右にぶれてしまうため 抵抗が大き

25~34歳の結婚についての意識と実態

dvd_manual_part3.indd

問診票-1ol

<4D F736F F F696E74202D208ED089EF959F8E F958B5A8F70985F315F91E630338D E328C8E313393FA8D E >

資料 1( 調査票 ) 在宅介護実態調査調査票 被保険者番号 A 票の聞き取りを行った相手の方は どなたですか ( 複数選択可 ) 1. 調査対象者本人 2. 主な介護者となっている家族 親族 3. 主な介護者以外の家族 親族 4. 調査対象者のケアマネジャー 5. その他 A 票 認定調査員が 概

news a

(Microsoft Word - 201\214\366\212J\216\366\213\3061\224N\211\271.docx)

untitled

<93648EA A837E B816989AA8E A B83678F578C762E786C7378>

演習:キャップハンディ ~言葉のわからない人の疑似体験~


別添資料3(2次健診問診票)

具体的な場面を設定し 実際に整理 整頓の計画を立てることで 実生活に繋げていくことができる よう指導していきたい また 第 3 次には環境とのかかわりについても押さえ 広い視野で考えられ るようにしていきたい 3 題材の目標 身の回りの整理 整頓に関心をもち 気持ちよく過ごそうとする 家庭生活への関

Press Release 2017 年 11 月 20 日日本イーライリリー株式会社 神戸市中央区磯上通 EL 関節リウマチの主観的症状と医師と患者さんのコミュニケーションに関する調査結果 - 日常生活で主観的症状を抱える患者の実態 普段の日常で 9 割

1. 期待収益率 ( 期待リターン ) 収益率 ( リターン ) には次の二つがあります 実際の価格データから計算した 事後的な収益率 将来発生しうると予想する 事前的な収益率 これまでみてきた債券の利回りを求める計算などは 事後的な収益率 の計算でした 事後的な収益率は一つですが 事前に予想できる

2016 年 03 月 01 日 サンプル株式会社本社事業場エイギョウブ ジョウホウタロウ様 _SPL ltpaper ストレスチェックキット個人用レポート 裏面のストレスレーダーもお読み下さい ストレスチェック総合 あなたのストレスの状況は

退院 在宅医療支援室主催小児医療ケア実技研修会 看護師のための 緊張が強いこどものポジショニング 神奈川県立こども医療センター 発達支援部理学療法科 脇口恭生 1

平成 26 年度生徒アンケート 浦和北高校へ入学してよかったと感じている 1: 当てはまる 2: だいたい当てはまる 3: あまり当てはまらない 4: 当てはまらない 5: 分からない 私の進路や興味に応じた科目を選択でき

家族の介護負担感や死別後の抑うつ症状 介護について全般的に負担感が大きかった 割合が4 割 患者の死亡後に抑うつ等の高い精神的な負担を抱えるものの割合が2 割弱と 家族の介護負担やその後の精神的な負担が高いことなどが示されました 予備調査の結果から 人生の最終段階における患者や家族の苦痛の緩和が難し

SNPs( スニップス ) について 個人差に関係があると考えられている SNPs 遺伝子に保存されている情報は A( アデニン ) T( チミン ) C( シトシン ) G( グアニン ) という 4 つの物質の並びによってつくられています この並びは人類でほとんど同じですが 個人で異なる部分もあ

3Dプリンタ用CADソフト Autodesk Meshmixer入門編[日本語版]

2016 年顧客満足度調査集計結果 全体 全体の集計 目次 年顧客満足度調査集計結果 全体 1 ページ 株式会社ニチイ学館 年顧客満足度評価集計表 全体 2ページ 年利用者回答結果一覧 全体 3ページ サービス名 年利用者回答詳細結果 全体 4

Microsoft Word - 【活動報告表紙第3号】

<4D F736F F F696E74202D E815B836C AE89E6947A904D B C98AD682B782E9837D815B F B835E2E707074>

小規模多機能型居宅介護・介護予防小規模多機能型居宅介護サービス

りたたみ式の 一般的な りたたみ式 式 4 1,000円 非課税 NA-4A 軽量 軽量 りたたみ式 ,000円 非課税 式 り調整 NA-A type A 競技用 競技用 NA-0 寸法 り インチ キャスタ PHOTO NA-A

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

【第一稿】論文執筆のためのワード活用術 (1).docx.docx

< F2D838F815B834E B B>

フレイルのみかた

No

平成29年高齢者の健康に関する調査(概要版)

Microsoft Word - N1222_Risk_in_ (和訳案).docx

目次 1. 研究動機 2. 研究を始める前に学校の生徒 先生に聞く 3. 確認実験 4. 研究目的 5. 研究内容追究 1 何も加えていない状態 砂 ( ほこり ) 水のすべりにくさについて調べる実験 1 何も加えていない状態 砂 ( ほこり ) 水のすべりにくさの違いについて調べる 追究 2 追究

≪障がい者雇用について≫

161013_pamph_hp

「いい夫婦の日」アンケート結果2011

87.pdf

Gatlin(8) 図 1 ガトリン選手のランニングフォーム Gatlin(7) 解析の特殊な事情このビデオ画像からフレームごとの静止画像を取り出して保存してあるハードディスクから 今回解析するための小画像を切り出し ランニングフォーム解析ソフト runa.exe に取り込んで 座標を読み込み この

PowerPoint プレゼンテーション

JAF|チャイルドシートの使用実態に関するアンケート調査結果(2013年3月)

居宅介護支援事業者向け説明会

環境 体制整備 4 チェック項目意見 事業所評価 生活空間は 清潔で 心地よく過ごせる環境になっているか また 子ども達の活動に合わせた空間となっているか クーラーの設定温度がもう少し下がればなおよいと思いました 蒸し暑く感じました お迎え時に見学させて頂きますが とても清潔だと思

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

はじめに 骨盤商品ブランド Labonetz( ラボネッツ ) は 2015 年 10 月 8 日 ~11 月 1 日の期間 インターネットによるアンケート調査 ニッポンのコツバン 骨盤実態大調査を実施した 回答総数は 1,952 名 骨盤への意識 知識や 身体の症状 日常の動作ぐせについて 多岐に

事業案内 障害のある方や高齢者の自立生活や社会参加を支援します 自分らしい生活を送るために必要な福祉用具や住宅改修などの相談 支援を行います 具体的な技術支援を必要とされる方には リハビリテーションセンターの専門職が医療 保健 福祉関係機関と連携して相談 支援に対応します 相談内容 身体状況の確認日


Microsoft Word - p docx

「dカーシェア」、“カーシェア時代におけるクルマの使い方”意識調査を実施

ポートフォリオ分析レポート 2018/1/12 調査名 患者満足度調査 ( 病院 - 入院 ) KPI 7. 家族や知人に当院を紹介したいと思いますか 対象集団 施設名大阪みなと中央病院 分析対象 入院環境について (1) 人数 77 名男性 37 名女性 30 名 A B C D E F G H

< F2D915391CC94C5824F C52E6A7464>

調査の背景 埼玉県では平成 29 年度から不妊に関する総合的な支援施策として ウェルカムベイビープロジェクト を開始しました 当プロジェクトの一環として 若い世代からの妊娠 出産 不妊に関する正しい知識の普及啓発のため 願うときに こうのとり は来ますか? を作成し 県内高校 2 年生 3 年生全員

Microsoft PowerPoint - sousa pptx

1

スライド 1

ニッセンケン分室 思いつきラボ No.137 部屋干しで早く乾かす方法を考えてみよう 前号 (No.136) で 5 月の大雨の記録を取り 上げたのですが 今度は 5 月の気温の新 記録のニュースが流れてきました 新記録 が出るのはありうることなので特別な取り 扱いにはなりませ

EW-NA75取扱説明書

56 語学教育研究所紀要 Vol.10 上記項目を前年度と比較すると, 数値はほとんど変わらない データの分析及び考察は別稿にゆずることにし, ここでは前年度と大きく異なる点は自由記載が多くなったことであることを指摘したい 回収回答者の半数近くが自由記載に積極的だった 昨年度は教師に対する感謝の言葉

夫婦間でスケジューラーを利用した男性は 家事 育児に取り組む意識 家事 育児を分担する意識 などに対し 利用前から変化が起こることがわかりました 夫婦間でスケジューラーを利用すると 夫婦間のコミュニケーション が改善され 幸福度も向上する 夫婦間でスケジューラーを利用している男女は 非利用と比較して

11総法不審第120号


自主演習履修の手引き 自主演習とは 履修手引きには 個々の演習の内容は, 学生自らがその目標, 計画を設定する. とあります. 学生自身が学習内容を決める科目です. 自主演習の履修手順 1. 演習内容の企画 どのような演習を行いたいのか企画してください. 演習のテーマを決定してください. 必要に応じ

結婚しない理由は 結婚したいが相手がいない 経済的に十分な生活ができるか不安なため 未婚のに結婚しない理由について聞いたところ 結婚したいが相手がいない (39.7%) で最も高く 経済的に十分な生活ができるか不安なため (2.4%) 自分ひとりの時間が取れなくなるため (22.%) うまく付き合え

jphc_outcome_d_014.indd

Transcription:

脳性麻痺罹患者の体幹と上肢負担軽減 ~ 姿勢改善へのアプローチ~ 担当教官 : 辻村先生実習学生 : 西尾友宏 藤本寛太 竹村有由 中尻智史 動機脳性麻痺という障害をもちながらも VDT 作業に携わる男性と出会い 障害者の VDT 作業というものがどのようなものかを初めて知った そして 彼には仕事に伴ういくつかの障害が起こってきていることに気付き その予防 軽減に少しでも助けになればと考えた 目的今回対象とした二次障害が起こっていると考えられる男性の作業姿勢を改善し 二次障害を予防 軽減するための対策を実施する その効果を検討し その結果から障害をもつ方が快適に VDT 作業を行なうにはどうすれば良いかを考える 二次障害とは成人障害者に見られる既存の障害の増悪または新たに発現した障害のことで しばしば動作能力の低下を伴う 二次障害発症の原因としては 既存の障害や加齢の影響のみならず その障害者のおかれている生活 労働の環境及び条件の影響 すなわち 一人一人の本来の機能障害や能力障害に即した適切な労働 生活条件が整備されていないという社会的要因の存在が推測されている 方法 1 調査対象者の決定アイ コラボレーションで就労されている障害をもつ方の中で 脳性麻痺の男性一人を対象とした 2 聞き取り調査対象者に対して 筋骨格系部位別自覚症状調べの聞き取りを行なった 3 作業環境の評価作業場所を訪れ作業環境や作業姿勢などを観察し 問題を抽出した 作業をするときに本人が苦痛に感じることについても聞き取りを行なった 4 改善策の検討実際に観察した様子を参考に 抽出した問題についての改善策を検討した 作業環境の改善に必要と思われる道具を 製作もしくは購入した 5 改善策の試行改善策を実施し 被験者の主観的評価により各々の最適な改善位置を定めた 6 改善策の評価の準備介入前後の自覚症状がどう変わったかについての調査票を作った また介入前後の姿勢 症状を比較するため デジカメ ビデオカメラによる介入前後の撮影を行なった 7 改善策の評価作成した調査票をもとに自覚症状の改善の評価を行なった またデジカメ ビデオカメラの画像から姿勢分析を行なった 8 改善前後の筋電図測定筋電図測定について了解の得られた被験者について筋電図の測定をしたが ケーブル断線により測定できていなかった

事例 Kさん 30 歳男性 草津市在住 障害名 アテトーゼ型脳性麻痺 日常生活について仕事中は車椅子使用 食事 排泄 入浴は介助の必要なし 家の中では四つん這いで移動 外出時の移動は電動車椅子を使用 リハビリについて週に一回 マッサージに行っている 就労状況 20 歳から就労を開始 主な作業はノートパソコンによる VDT 作業 ( 主にホームページ作成 経理の仕事 ) 就労時間は 10 時から 17 時 ( 月 ~ 金 ) で 休憩は昼に一時間 パソコン作業中は 左手でトラックボールを操作し キーボード操作は左右どちらかの片手で操作 二次障害の状況 27 歳ごろから パソコン作業中に肩の痛みがある 作業中に左前腕が疲れる トラックボールが動いて使いにくい 腰痛がある 筋緊張が亢進し 姿勢が健常者と異なる 考えた改善策自覚症状聞き取りにより得られた結果 ( 下の表に示す ) から問題点とその改善策を考えた 姿勢が悪いために腰痛 足台 ( 最大高 16cm 最低高 9cm) を置くことで姿勢を改善 ( 正常な腰椎前弯を保つ ) する 改善策を行った結果生じた問題点 足台を置くと余計に使いにくい 脳性麻痺の人は尖足の体勢でいるほうが楽である そのため 足台は置かないことにした トラックボールを使う時に固定が不十分なためトラックボールが動いて使いにくい トラックボールの下にゴムの滑り止めをつける 左前腕の筋に負担がかかる 腕の下に腕置きを置き 手首の背屈をなくす 机が高いため肩 腕が上がってしまい肩こり 机の高さを低くする (72.5cm 69.3cm) 改善策を行った結果生じた問題点 1 肩の位置は下がったが 右手でキーボード操作を行うときに身体を前方に乗り出さなくてはならなくなった さらに 腕が体幹から離れると操作性が悪いため 体幹に腕を近づけていなくてはならない そうしたときに机が低いと右手首が屈曲してしまうようになった 2 右腕を置く場所がなくなり 右腕を空中に保持し続けなくてはならなくなり 右腕の負担が増えた 問題点を改善するための新しい改善点 机の位置は低いままでパソコン本体の高さを高くするために パソコンの下に厚さ約 3cmの台を設置した こうすることで パソコン本体の高さは以前のままにでき 右腕を置く場所も確保できるので 手の使いやすさも以前の状態に戻すことができる さらに机の上にあるトラックボールの位置は低いので トラックボールを扱う左手の負担を取り除くことができる

結果 自覚症状部位別の症状 自覚症状 ( 右 ) 自覚症状 ( 左 ) 介入前 介入直後 介入 10 日後 介入前 介入直後 介入 10 日後 肩 ( こる だるい ) よくある 変化なし 少し改善 よくある 変化なし 少し改善 肩 ( いたい ) ある 変化なし 少し改善 ある 変化なし 少し改善 首 ( こる だるい ) よくある 少し悪化 変化なし よくある 少し悪化 変化なし 首 ( いたい ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 背 ( こる だるい ) ある 変化なし 少し改善 ある 変化なし 少し改善 背 ( いたい ) ある 変化なし 少し改善 ある 変化なし 少し改善 前腕 ( だるい ) ある 少し悪化 変化なし ある 少し改善 変化なし 前腕 ( いたい ) なし 変化なし 変化なし なし 変化なし 変化なし 前腕 ( しびれる ) なし 変化なし 変化なし なし 変化なし 変化なし 手 指 ( だるい ) なし 変化なし 変化なし なし 変化なし 変化なし 手 指 ( いたい ) なし 変化なし 変化なし なし 変化なし 変化なし 手 指 ( しびれる ) なし 変化なし 変化なし なし 変化なし 変化なし 手 指 ( ふるえる ) なし 変化なし 変化なし なし 変化なし 変化なし 手 指 ( ひえる ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 腰 ( だるい ) よくある 変化なし 変化なし よくある 変化なし 変化なし 腰 ( いたい ) よくある 変化なし 変化なし よくある 変化なし 変化なし 下肢 ( だるい ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 下肢 ( いたい ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 下肢 ( しびれる ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 下肢 ( ひえる ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 頭 ( 頭痛 ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 目 ( つかれる ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 目 ( 見えにくい ) ある 変化なし 変化なし ある 変化なし 変化なし 自覚症状の変化について 介入直後ではまだ新しい作業環境に慣れていないため あまり改善は見ら れなかった しかし 介入 10 日後の自覚症状はいくつか改善が見られた 左右の肩のこり 痛みが 介入前に比べて少し改善した 机の位置を下げることで肩 腕の位置が下がり 肩の負担が減り 肩のこり 痛みが改善した 左右の背のこり 痛みが 介入前に比べて少し改善した 机の位置を下げることで肩 腕の位置が下がり 姿勢が改善され 背のこり 痛みが改善した 介入直後では首のこりがみられたが 介入 10 日後では症状は以前と変わらなくなった 介入直後の首のこりは新しい作業環境に慣れていないため起こったものであり 時間がたち慣れ るにつれて自覚症状は以前と変わらなくなった またこの症状は介入 10 日後でも改善しなかっ たので 姿勢改善は首のこりの改善に効果がなかったと言える 介入直後では左前腕のだるさはすこし改善が 右前腕のだるさはすこし悪化がみられたが 介入 10 日後では症状は以前と変わらなくなった 左前腕のだるさが介入直後にすこし改善したのは 下に置いた腕置きによってだるくないと感じ たためである しかし使い続けることで前腕のだるさは改善しなかったので 腕置きは作業改善 に効果がなかったと言える 一方 右前腕のだるさが介入直後にすこし悪化したのは 新しい作 業環境に慣れていないため起こったものであり 時間がたち慣れるにつれて自覚症状は以前と変 わらなくなった ( パソコンの高さは以前のままなので当然である )

改善案の満足度改善案満足度トラックボールの滑り止めとても満足左手の下にひいた腕置きどちらでもない机を高さを下げるとても満足パソコンの下の台とても満足トラックボールの使いやすさとても満足右手でのキーボードの打ちやすさ少し満足左手でのキーボードの打ちやすさ少し満足左手の下にひいた腕置き以外の改善案は満足してもらえ 使いやすくなったという評価を得られた (20 日後もう一度お話を伺うと 腕置きも 割と良い という評価が得られた ) 滑り止めによりトラックボールの使いやすさは満足してもらえる結果となった 机の高さを下げたことによって生じた問題を改善するためにパソコン本体の下に台を置いたが それによって左右でのキーボードの打ちやすさは共に満足してもらえる結果となった 姿勢デジカメの画像を参考に 介入前と介入後での身体のいろいろな部位の位置や角度を測り 姿勢の改善を評価した 脊柱が矢状面から何度傾いているか ( 背面像 ) 介入前 右に 13 介入後 右に 3 肩の高さ ( 車イスの側面の支柱の長さを1として ) 介入前 車イスの側面の支柱から 2.3 倍介入後 車イスの側面の支柱から 1.9 倍机の位置を下げることで肩の位置が下がり姿勢が改善され 脊柱の傾きがなくなった 左腕の肘の角度介入前 43 介入後 137 自然な上腕と前腕の角度は約 100 度で少し腕を伸ばした位置なので介入前 自然な状態より-57 介入後 自然な状態より+37 机の位置を下げることで肩 腕の位置が下がり姿勢が改善され 自然な上腕と前腕の角度に近づいた 左手首の角度 ( トラックボール使用時 ) 介入前 屈曲 35 介入後 背屈 40 トラックボール作業での自然な角手首の角度は背屈 20 なので介入前 自然な状態より屈曲 55 介入後 自然な状態より背屈 20 机の位置を下げ 腕置きを置いたことで 姿勢改善とともに自然な手首の角度に近づいた 右手首の角度 ( キーボード操作時 ) 介入前に比べて介入後では 右肩が上がりすぎることがなくなり 姿勢が改善した 肩の位置が下がり 姿勢が改善した 考察今回の事例で対象とした K さんは VDT 作業に関連して様々な健康障害を抱えていた その健康障害について改善策をいろいろ考えてみたが 机を下げる トラックボールの下に滑り止めをつける といった単純で簡単にできる改善策によって 肩や背のこりが改善できた 自覚症状調査や姿勢改善の程度をみても効果があったのは明らかである また 最初はあまり効果のなかった腕置きも日が経つにつれ使いやすくなったので 作業改善には時間が必要であり その評価も時間をかけてじっくりすることが真の作業改善には必要だと思われる

結論障害者の二次障害の予防には 正しい知識があれば簡単にできることがある そのため 障害者やそのまわりでかかわる人が正しい知識を持ち実行に移すことが 二次障害発生の予防には効果がある ただし 障害者の方が持っている障害は個人個人で異なるため これをすればいいいというものはなく 個々に考える必要がある つまり 本人と周りの人がコミュニケーションをとり 二次障害の予防を共に考えていくことが大切だと思われる また 本人や周りの人だけでなく社会としても対策を講じるべきである 具体的には 行政の介入 労働衛生の知識の普及などがあげられる 今回の実習で二次障害の予防に関わった僕たちが 実習発表会を通して二次障害について知らない人たちに対して情報を発信することで 二次障害の知識の普及に貢献できればいいと思う そして 二次障害について考える機会となってくれればいいと思う この実習を通して言いたかったこと最初にKさんの作業の様子を見させていただいた時はなんの問題もなく作業を行うことができているように見えましたが 彼と真剣に向き合って 話し 考えてみることでやっと問題がわかりました それはささいな問題で 本人さえも気づいていない問題でした その問題に対して僕たちの行った改善策は簡単なものですが 予想以上の改善が見られました 簡単な改善策でも 実際にそれに注目し実行することはとても難しいことです そして 実行するためには障害者の就労状況を知る必要があります 障害者の作業所では 労働安全衛生などが整っておらず その知識を得る場もなく そのための費用も十分ではないことに 実習を通じて気付きました 世界にはこのような障害者の作業所がたくさんあり その多くで二次障害の予防などの労働安全衛生についての知識の教育などが十分になされていないという現状があると思います 今回 僕たちが障害者の就労状況を発表することは この現状を他の人たちに知ってもらい 障害者の就労状況について考えてもらう小さいながらも確かな第一歩だと思います その結果 多くの人が現状を知ることになり 社会全体の障害者に対する関わり方も変わるのではないか 行政も障害者に対する経済的社会的支援を行なえるのではないかと思いました 質疑応答 Q: 対象者とよい関係を築くためにはコミュニケーションが大切だと思いますが どのように行いましたか? 苦労した点はありますか? A: 片山さんは脳性麻痺により発語が明瞭ではありませんが ゆっくりと会話すれば十分にコミュニケーションをとることができたので全く問題なくフレンドリーな良い関係を築くことができました Q: たとえば予想していた結果とは逆の結果が出た場合には介入を中止する考えはあったか? あるとすれば具体的にどのようなときか? またそういったことは事前にグループの中で話し合っていたか? A: まず筋電図では片山さんに負担がかかるようならやめようと考えていました 片山さんは僕たちが提案する内容について これはいいかも とか これはしんどいと思います という風に率直に感想を述べてくれたので介入の中止 継続の判断はしやすかったように思います また 最初に介入に関して不満な点があればいつでもやめてくれていいです という旨は伝えてありました Q: 介入における材料費はいくらかかったか? またその製作にどのくらいかかったか? A: 介入した点は 足台 滑り止め 机下げ パソコン下の台 値段は全部で 5,000 円 足台を除くと 2,000 円 製作したのは足台のみでほぼ一日で完成 ただ 最も効果があったのは費用のかからなかった机下げでした 参考文献 頭痛大学ホームページ (http://homepage2.nifty.com/uoh) ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン (http://plaza8.mbn.or.jp/~jes/fpd/note_pc_guide/np_ergogl.html)