光学系の基礎 1/7
原点に帰る ガラスの破片が森林火災を発生させる 夏季によく見られるヘッドラインです しかしながら何故そんな事が起こるのでしょう? 太陽と地球の間は膨大な距離なので 太陽は単なる平行光線を発生するごく小さな点と考えられます ( 図 1a) それらの平行光線はレンズ( 又はガラスの破片 どちらも同様な特性をもっています ) を通過して レンズの背面でと呼ばれる点で光線は収束します しかし太陽とは異なり点光源が 平行光線とは仮定できない位レンズに非常に近い場合 ( 図 1b) は どうでしょうか? 位置で点光源の像を見ると 不明瞭でぼやけた点が見えます そこで疑問が起こります 合わせ とは何んだ? 合わせとは 面からレンズまでの距離を前後させて 光線の収束点が面に重なるようにする事です ( 図 1c) このように単なる点光源の場合は非常に簡単です しかしながら 実際のネジやプリント基盤や鉄板の像の場合はどうでしょうか? 点光源から画像へ 点光源はろうそくやランプ又は反射光等です 反射物体の表面は無限の点光源のアンサンブルです 図 1d の矢印に注目します 矢印の先端と始点の 点を考えます レンズを経過するこれらの 点の光線を辿ると 矢印は上下が逆転します 残りの全ての各点に付いても同様です 単一レンズから複合レンズへ 光学計測の状況ではレンズと画像を表現できる画像センサー ( 例えば CCD) が使用されます 図 1d のように作成された画像が種々の計測 ( 例えば寸法測定 位置測定 表面品質 ) の基本です この画像は単一レンズでは作成されません 複数のレンズを合成した複合レンズが使用されます 複合レンズの画質は単一レンズのそれよりも格段に高品質です 複合レンズは理想的な単一レンズとして考えられます 正しいレンズの選択方法は? レンズの最も基本的な機能は 実物 ( 被写体 ) の寸法と映像の寸法の比率を表す倍率です 倍率 = 画像の寸法被写体の寸法 例えば 長さ 5cmのネジが5mmの画像になっている場合は 倍率は 0.1 となります 長さが 0.5mm のネジの画像が 5mm であれば倍率は 10 になります 図 1d で示されるように倍率は作動距離にも依存します 被写体への距離が長くなると画像は小さくなります 従って倍率パラメーターは作動距離が同じである場合にだけつじつまが合います 実用的でない? そこでレンズをもっと明快に表すパラメーターが必要です それは距離です 距離 画像の寸法被写体の寸法 + 画像の寸法 /7
距離 太陽 距離はほぼ無限大 画像 被写体 面 作動距離 背面距離 図 1: 点光源から画像へスナップ写真と光学計測で共通する事項は? 少しだけれどあります それはスナップ写真も鋼板の光学計測も同じ光学の原理に則っています 画像センサーを 35mmフィルムだと仮定します 35mmフィルムの寸法は 高さが 4mm で幅は 36mm です 500m 先の 1000mのビーチの写真を撮影する場合には 下記の距離が必要となります 500,000mm 36mm = 18mm 1,000,000mm + 36mm 画像センサーを光学計測に一般的に使用される 4.8mm x 6.4mm の CCD(1/ インチ CCD) に置き換 えると距離は下記のようになり飛躍的に小さくなります 3/7
500,000mm 6. 4mm = 3.mm 1,000,000mm + 6. 4mm ビーチにいる身長 m の人物を 35mm フィルムでフィルムの高さ方向いっぱいに撮影するには 500,000mm 4mm = 599mm,000mm + 4mm の距離のレンズが必要ですが そのようなレンズは一般的に有りません この場合は 好むと好まざるとに関わらず その人物に接近しなければなりません 10mまで近づけば距離が 10mmの一般的なレンズで 35mmフィルムいっぱいに撮影できます 自然愛好家 は クローズアップ写真撮影を好みます 例えば 10mm の昆虫を 30cm の距離から 35mm フィルムに撮影するとすれば 必要な距離は以下のようになります 300 mm 4mm 10 mm + 4mm = 1mm 拡張リングと拡張チューブの神話幾つかの技術的な事項が過大に扱われています 特にレンズとカメラの間に挿入されてレンズの背面距離 ( 図 1d) を広げる拡張リングと拡張チューブがそうです しかしながらこれの利点は何んでしょうか? 点光源にレンズが近くなるとレンズ背面の光線が集束する距離は長くなります それによって背面距離は長くなり画像が鮮明になります ( 図 1bと図 1d) 一般的にはレンズの筒の内で単一レンズを移動させるヘリカル ( 螺旋構造 ) を使用して背面距離の調整が行えるようになっています この単一レンズ移動は明らかに機械的な制限があります この制限が最大背面距離を決定しています これが MOD(Minimum Object Distance= 最小物体距離 ) になります より被写体に接近して撮影が必要な場合は 拡張リングを挿入することで MOD を短くできます 拡張リングを挿入すると被写界深度が低下する等の奇想天外な神話が付きまといますが 非常に簡単に効果が得られます それらの神話は全てナンセンスです 図 :CCD の寸法 4/7
何故 C マウントレンズ? 昔の映画は撮像菅カメラを使用して撮影されていました 実際の撮像領域はもっと小さかったのですが この撮像菅の外径が 1/インチ /3 インチ 1 インチだったので 今日の CCD の寸法もそれに準じています 図 に寸法を示します この撮像菅に取り付けるレンズマウントが C マウント (C はシネマ Cinema から由来 ) と呼ばれていました これは 1 インチ径のネジで簡単で小型で堅牢な構造で交換可能なレンズです CS マウントは同じ寸法で フランジ距離と呼ばれる部分が短くなります ( 図 3 参照 ) C/CS マウントネジ 1 インチ径 3 ピッチ / インチ (UN-A) フランジ距離 : 図 3:C/CS マウント C/CS リング 外径が異なる撮像菅を反映して種々のフォーマットのレンズが作られました これが 1/3 インチ CCD には 1/3 インチフォーマットのレンズが必要である と言う誤った考えを誘導しました 画像サークル白い壁にレンズを向けて撮影すると どのような画像になるでしょうか? 明るい円形のスポットになります 専門家はこれを 画像サークル と呼びます 1/3 インチフォーマットのレンズの場合は 1/3 インチ CCD の直径よりもほんの少し大きな画像サークルになります 従って 1/3 インチフォーマットのレンズの画像サークルは 1/3 インチ CCD を完全に覆います 1/インチの CCD を使用した場合はどうなるでしょうか? 画像サークルは全体を覆わないで 四隅が暗いままです この結果をまとめると レンズフォーマットは CCD フォーマットに等しいか大きい物でなけらばならない事になります 残念ながらレンズは完璧ではなく 主に周辺部に弱点がある傾向です 従って大きいフォーマットのレンズを使用することを推薦します 第 の可能な対策は非常に簡単です 光線がレンズの外周部分を通らないように防止します これはアイリス ( 絞り ) です 5/7
図 4: 鮮明とは? アイリス 不鮮明 不鮮明を改善 視野の深さアイリスはレンズの弱点を改善して さらに鮮明度にも影響します 鮮明 とは実際には何なのでしょうか? 図 4a では 個の点光源が A と B のつの画像を作り出しています 背面距離 ( 図 1d 参照 ) が画像 A を正確に CCD に結像するように設定されています 即ち この像は 鮮明 です 点 B はレンズの近くにあるので 画像 B は A の後ろに結像します 従って B 点の像は CCD 面では即ち不鮮明になります 上記の 鮮明 に関する結論から 3 次元物体の合わせは不可能と言う事になります 物体の一部分だけがが合い 物体のその他の部分は不鮮明のままです しかしながら実際には何故そのような... 事が起こらないのでしょうか? 現実には我々の眼は小さなぼやけ点を不鮮明とは認識できないのです... この目の許容範囲を 被写界深度 と呼んでいます 35mmフィルムでは 1/30mm 以下のぼやけ点は... 鮮明 として定義されています CCD の場合は 1 ピクセルの寸法がぼやけ点として定義されています 現代の CCD のピクセル寸法は5x5ミクロンです 実際には被写界深度を正確に計算する必要は有りませんが 拡張リングや拡張チューブを使用する場合は 時として重要な事項となります 被写界深度は下記の式で求められます 被写界深度 = 作動距離 作動距離 距離 ) 1± 1ピクセル寸法 アイリス 距離 DFK31F03 カメラで ボルトの製造工程の品質検査を行う事を想定します ボルトの径は 10mmで作動距離は だとします DFK31F03 カメラは 1/3 インチ CCD を使用しています これらの値より下記の計算で 必要な距離が求められます 3.6mm 10mm + 3.6mm = 6.5mm ボルト全体の撮影には一般的な距離 5mm の C マウントレンズを使用します 1 ピクセル寸法を 5 ミクロンでアイリスを 1.4 とすると下記の計算で被写界深度の範囲が計算できます 被写界深度の近距離 = 5mm) 1+ 1. 5mm = 99.9mm 被写界深度の遠距離 = 5mm) 1 1. 5mm = 100.08mm 6/7
鮮明な画像を得る為にアイリスを 4 に絞ると 被写界深度は以下のようになります 被写界深度の近距離 = 5mm) 1+ 5mm = 99.76mm 被写界深度の遠距離 = 5mm) 1 5mm = 100.4mm F ストップ係数を 3 増加したのにも関わらず 被写界深度は大きく改善されませんでした これは 距離値の影響が大きいからです そこで距離 1mm のレンズに換えて計算してみます 被写界深度の近距離 = 1mm) 1+ 1mm = 98.79mm 被写界深度の遠距離 = 1mm) 1 1mm = 101.3mm しかしながら残念な事に このレンズではボルトが撮像領域の約半分の大きさになります アイリスをもっと絞った場合は それを補正する為に もっと明るい照明にするかカメラの露光時間を延ばさなければなりません 7/7