のため, 各アウトカムのエビデンスの確実性は, 発作の消失, 死亡, 手術合併症,QOL の改善が 低, 記憶障害, 精神症状が 非常に低 であり, 全体的なエビデンスの確実性は, D( 非常に低 ) だった. 手術療法は, 対照群の盲検化が困難であるため, 一般的にエビデンスの確実性は低くなる.

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CQ9-2 詳細版 CQ9-2: 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うべきか 推奨 : 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うことを提案する (GRADE 2D, 推奨の強さ 弱い推奨 / エビデンスの確実性 非常に低 ) 付帯事項 : GRADE では, エビデンスの確実性が 非常に低 である場合, 原則として 強い推奨 とすることはできない. 側頭葉切除術は期待される効果が大きく, 重篤な有害事象の頻度も低いことから, パネル会議ではほぼ全員が 強い推奨 とする意見であったが,GRADE システムによる制約のため 弱い推奨 とした. 1. 背景, この問題の優先度 薬剤抵抗性てんかんでは, 新たに薬剤を追加しても効果は限定的である. 側頭葉切除術は, 侵襲的ではあるが, 発作の消失が期待できる治療である. 2. 解説エビデンスの要約薬剤抵抗性てんかんを対象として側頭葉切除術の有効性を検討したランダム化比較試験 (randomized controlled trial; RCT) は,2 件 ( 計 118 人 ) 1, 2) あった. 発作の消失に関して, 相対リスク 20.57 (95% 信頼区間 4.24~99.85),NNT (Number needed to treat の略で,1 人のアウトカムを達成するために何人が治療を受ける必要があるかという指標 ) 4 と, 側頭葉切除術群が有意に優れていた.2 件の RCT とも, 抗てんかん薬の減薬には言及されていなかった. 死亡は両群で差はなかった. 手術合併症は, 相対リスク 12.33 (95% 信頼区間 1.67 to 90.89) と側頭葉切除術群で多かった. 死亡, 記憶障害, 精神症状は両群で有意差はなかった. 生活の質 (quality of life; QOL) の改善は, 側頭葉切除術群で優れていた. 3. パネル会議 3-1. アウトカム全般に関するエビデンスの質はどうか? 介入のマスキングが不可能であっため, 集まった研究のバイアスのリスクは全体的に高く, 死亡に関しては not serious としたが, それ以外のアウトカムについては 1 段階グレードダウンし serious とした. 結果の非一貫性と非直接性には問題なく not serious とした. 不精確さはいずれの検討においても信頼区間が臨床判断閾値をまたぐものが多く,1 段階もしくは 2 段階グレードダウンした. 出版バイアスは研究数が少なく判断できなかった. こ

のため, 各アウトカムのエビデンスの確実性は, 発作の消失, 死亡, 手術合併症,QOL の改善が 低, 記憶障害, 精神症状が 非常に低 であり, 全体的なエビデンスの確実性は, D( 非常に低 ) だった. 手術療法は, 対照群の盲検化が困難であるため, 一般的にエビデンスの確実性は低くなる. 3-2. 利益と害のバランスはどうか? 側頭葉切除術により発作の消失が期待できる.RCT では示されていないが, それに伴い抗てんかん薬が減薬できる可能性がある. 重篤な有害事象の頻度は低く, 側頭葉切除術によって得られる害は利益と比較すると小さいと考えられる. 3-3. 患者の価値観や好みはどうか? 侵襲的である手術療法に抵抗がある患者はいるかもしれないが, 発作の消失というそれ を上回る効果が期待できるため, おそらく価値に重要な不確実性や多様性はない. 3-4. 正味の利益とコストや資源のバランスはどうか? 顕微鏡使用によるてんかん手術 ( 側頭葉切除術を含む ) の保険点数は 131630 点 (2018 年 1 月 11 日現在 ) である. 手術は全身麻酔であり, また脳神経外科医が必要である. しかし, 抗てんかん薬の減薬, 発作減少に伴う入院の減少, より積極的な社会活動が可能になることなどを通じ, 長期的には節約につながると予想される. このため, コストに関しては無視できる程度と考えられる. 3-5. 推奨のグレーディングパネル会議での話し合いでは, 側頭葉切除術は発作消失を期待できる治療法であり, 総合的には手術に関するコストは無視できる程度とされた. 有害事象のリスクを考慮しても, 行うことが支持される. パネル会議では推奨度を 強い推奨 とする意見が強かった. しかし,GRADE ではエビデンスの確実性が 非常に低 である場合, 原則として 強い推奨 とすることはできない. そのため, 最終的に 弱い推奨 とした. 4. 関連する他の診療ガイドラインの記載本邦では, 日本てんかん学会から 2008 年に てんかん外科の適応に関するガイドライン 3),2010 年に 内側側頭葉てんかんの診断と手術適応に関するガイドライン 4) が公表されている. てんかん外科の適応に関するガイドライン では, 内側側頭葉てんかんと限局した器質病変による症例, あるいは一側半球の広範な病変による症例では, 手術成績が優れているので, 早期から外科治療を視野に入れて診療し, 手術のタイミングを逃さないこと とし,

適切なタイミングでの内側側頭葉てんかんへの手術療法を推奨している. 内側側頭葉てんかんの診断と手術適応に関するガイドライン でも, 患者の選択はてんかん外科の治療適応ガイドラインに準ずるものとする とし, それを踏襲している. 海外では,2003 年に米国神経学会, 米国てんかん学会, 米国脳神経外科学会の小委員会から診療指針 5) が公表されている. そこでは 薬物抵抗性てんかんでは, てんかん手術の専門施設に紹介することを考慮すべき とし, 患者が側頭葉前内側切除術の基準を満たし, 手術のリスクと利益を受け入れる場合, 薬物療法の継続ではなく, 手術が勧められるべきである としている. 5. 治療のモニタリングと評価周術期の治療のモニタリング, 評価は脳神経外科医が行うのが一般的である. その時期を過ぎた後は必ずしも脳神経外科医が行う必要はないが, 患者に対するフォロー, 支援は必要である. 6. 今後の研究の可能性記憶温存, 低侵襲の術式の開発について研究の余地がある. また,2 件の RCT の観察期間はそれぞれ 1 年間 1),2 年間 2) であり, より長期間での手術成績, 有害事象についてのデータも関心が集まるところである. 7. 本 CQ で対象とした RCT 論文 Wiebe 2001 1), Engel 2012 2) 資料一覧後出資料 CQ9-2-01 フローダイアグラムと文献検索式資料 CQ9-2-02 アブストラクトテーブル資料 CQ9-2-03 Risk of bias テーブル資料 CQ9-2-04 Risk of bias サマリー資料 CQ9-2-05 Risk of bias グラフ資料 CQ9-2-06 Forest plot 資料 CQ9-2-07 Summary of findings (SoF) テーブル資料 CQ9-2-08 エビデンスプロファイル資料 CQ9-2-09 Evidence-to-Decision テーブル 参考文献 1. Wiebe S, Blume WT, Girvin JP, et al. A randomized, controlled trial of surgery for temporal-lobe epilepsy. N Engl J Med. 2001 ; 345(5) : 311-318.

2. Engel J Jr, McDermott MP, Wiebe, et al. Early surgical therapy for drug-resistant temporal lobe epilepsy: a randomized trial. JAMA. 2012 ; 307(9) : 922-930. 3. 三原忠紘, 藤原建樹, 池田昭夫, 他 ( 日本てんかん学会ガイドライン作成委員会 ). てんかん外科の適応に関するガイドライン. てんかん研. 2008 ; 26(1) : 114-118. 4. 渡辺英寿, 藤原建樹, 池田昭夫, 他 ( 日本てんかん学会ガイドライン作成委員会 ). 内側側頭葉てんかんの診断と手術適応に関するガイドライン. てんかん研. 2010 ; 27(3) : 412-416. 5. Engel J Jr, Wiebe S, French J, et al. Practice parameter: temporal lobe and localized neocortical resections for epilepsy: report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology, in association with the American Epilepsy Society and the American Association of Neurological Surgeons. Neurology. 2003 ; 60(4) : 538-547.

資料 CQ9-2-01: フローダイアグラムと文献検索式 文献検索 PICO P: 薬剤抵抗性てんかん患者に I: 側頭葉切除術を行うと C: 薬物療法のみを行った場合に比べて O: 発作は消失 軽減するか抗てんかん薬は減薬 中止できるか手術関連死は増えるか手術合併症 ( 内科 / 神経内科的 ) は増えるか記憶 (IQ, 記憶 ) は低下するか QOL ( 精神症状を含む ) は改善するか 検索式 PubMed 検索 :2016 年 9 月 28 日 #1 Search (("drug resistant epilepsy"[mesh] OR ((epilepsy OR seizures OR convulsions) AND (intractable OR refractory OR resistant)) #2 Search ("anterior temporal lobectomy" OR (temporal lobe AND surgery[sh])) #3 Search (randomized controlled trial[pt] OR meta-analysis[pt] OR randomized OR blind OR observation* OR cohort OR "follow-up" OR cross OR case OR series OR prospective OR retrospective OR placebo OR trial) #4 (#1 AND #2 AND #3) Cochrane CENTRAL:2016 年 9 月 28 日 (epilepsy OR seizures) AND "temporal lobe" AND surgery 1

CQ9-2-01 文献検索フローダイアグラム (PRISMA 2009 改変 ) 同定 データベース検索で同定された研究 Medline(PubMed) 1398 件 Cochrane CENTRAL 84 件 スクリ ニング 検索で同定された研究 n=1482 重複研究を除外した研究 n=1467 重複研究 n=15 タイトル アブストラクトスクリーニ ングで除外基準に該当した研究 n=1447 適格性 組み入れ フルテキストで適格性を評価した研究 n=20 メタアナリシスに組み入れた研究 n=2 発作の消失抗てんかん薬の減薬 終了死亡手術合併症記憶障害精神症状 QOL の改善 除外基準に該当した研究 n=18 RCT のプロトコルである 1 件研究デザインが異なる 11 件データ不十分 5 件内容が重複している 1 件 2 件 0 件 2 件 2 件 1 件 1 件 2 件 2

資料 CQ9-2-02: アブストラクトテーブル 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) 著者名 タイトル Wiebe 2001 Wiebe S, Blume WT, Girvin JP, Eliasziw M; Effectiveness and Efficiency of Surgery for Temporal Lobe Epilepsy Study Group. A randomized, controlled trial of surgery for temporal-lobe epilepsy. 書誌情報 citation N Engl J Med. 2001 ; 345(5) : 311-318. PMID 11484687 研究デザイン study design randomized trial 国 カナダ 人数介入群 :40 対照群 :40 計 80 年齢介入群 35.5±9.4, 対照群 34.4±9.9 患者 Patients (Participants, Problems) 組み入れ基準 inclusion criteria 少なくとも 16 歳以上で, 側頭葉に強い症候を示す発作を 1 年以上有するもの. 発作は, 抗てんかん薬を 2 剤以上 ( うち 1 剤はフェニトイン, カルバマゼピン, バルプロ酸のいずれか ) 使っても, 前年の間に平均すると毎月生じていなくてはならない. 除外基準 exclusion criteria 緊急手術が必要な脳病変を有する患者, 進行性の中枢神経疾患, アクティブな精神病, 偽発作,IQ 70 以下, てんかん手術の既往, 頭皮上脳波で局所性の側頭葉外の棘波または徐波,MRI で側頭葉外に明らかに発作を生じうる障害がある場合, MRI で側頭葉に両側に等しくてんかん源性の障害がある場合 組み入れ期間 1996 年 7 月 ~2000 年 8 月 その他 手術群のうち 4 名は手術を受けていない 介入 1 intervention1 前側頭葉切除 + 薬物療法 介入 2 intervention2 介入 / 比較 Interventions /Comparisons (Exposure/Contol s/comparators) 介入 3 intervention3 介入 4 intervention4 比較 comparison 薬物療法 観察期間 1 年間 outcome1 発作の消失 outcome2 抗てんかん薬の減薬 中止 アウトカム Outcomes outcome3 outcome4 死亡 手術合併症 outcome5 記憶障害 (Rey Auditory Verbal Learning Test 想起 (0-15 点 ) の低下 ) outcome6 精神症状 ( うつを含む ) outcome7 QOL の改善 (Inventory-89 score の改善 ) 結論 Conclusion この試験では, どのような原因による側頭葉てんかんであっても, 手術療法が有効で安全であることが示された. この結果は, 側頭葉てんかんでは, 抗てんかん薬での治療を漫然と引き伸ばすことは無益で, 手術療法を検討するべきであるという見解を支持する. ただしこの試験は, 側頭葉てんかんの早期手術が薬物療法に優れるかなど, 手術をどのタイミングで行うべきかの疑問に答えるものではない.

資料 CQ9-2-02: アブストラクトテーブル 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) 著者名 タイトル Engel 2012 Engel J Jr, McDermott MP, Wiebe S, Langfitt JT, Stern JM, Dewar S, Sperling MR, Gardiner I, Erba G, Fried I, Jacobs M, Vinters HV, Mintzer S, Kieburtz K; Early Randomized Surgical Epilepsy Trial (ERSET) Study Group. Early surgical therapy for drug-resistant temporal lobe epilepsy: a randomized trial. 書誌情報 citation JAMA. 2012 ; 307(9) : 922-930. PMID 22396514 研究デザイン study design randomized trial 国 米国 人数介入群 15, 対照群 23 年齢介入群 37.5, 対照群 30.9 患者 Patients (Participants, Problems) 組み入れ基準 inclusion criteria 内側側頭葉てんかんで,2 種類以上の適切な抗てんかん薬を試しても機能障害をきたす発作が少なくとも 2 年間以上ある, 12 歳以上の男女. 加えて, 通常の術前評価プロトコルに基づく前内側側頭葉切除術の候補として考えられなければならない. 除外基準 exclusion criteria 局所の運動 ( 自動症, ジストニア姿勢を除く ), 両側の大きな運動または失語で始まったもの.5 歳以上で大脳に大きな損傷を負うような既往のある場合, 進行性の神経疾患, 非てんかん性精神発作, 記憶障害以外の局所的神経脱落徴候, 二次性全般化発作が 3 年以上にわたって年に 4 回以上ある, 少なくとも一回以上のてんかん発作重積を有する患者 ( 熱性けいれんを除く ). 迷走神経刺激装置が植え込みされている場合は, 装置の電源がオフにできない, 装置のため診断テストができない, アウトカム測定に影響を当てる合併症があるとき. 組み入れ期間 その他 介入 1 intervention1 記載なし ERSET 試験. 詳細な研究プロトコルは,Engel 2010 で報告されている. 薬物療法群の 7 名が手術を受け, 前内側側頭葉切除術 + 薬物療法の 1 名が手術を受けなかった. 当初 200 名のサンプルサイズを予定していたが, 症例が集まらず, データ安全性監視委員会の勧告により,38 名をランダム化した後, 早期打ち切りとなった. 前内側側頭葉切除術 + 薬物療法 介入 2 intervention2 介入 / 比較 Interventions /Comparisons (Exposure/Contol s/comparators) 介入 3 intervention3 介入 4 intervention4 比較 comparison 薬物療法 観察期間 2 年間 outcome1 発作の消失 outcome2 抗てんかん薬の減薬 中止 アウトカム Outcomes outcome3 outcome4 死亡 手術合併症 outcome5 記憶障害 (Rey Auditory Verbal Learning Test 想起 (0-15 点 ) の低下 ) outcome6 精神症状 ( うつを含む ) outcome7 QOL の改善 (Inventory-89 score の改善 ) 結論 Conclusion 新規発症の難治性内側側頭葉てんかん患者では, 切除術と抗てんかん薬の併用療法は抗てんかん薬単独と比較し,2 年間のフォローアップの間に発作がおこる可能性は低くなる. 試験の早期終了を考慮して, 結果は慎重に解釈されるべきである

資料 CQ9-2-03: Risk of bias テーブル Outcome 発作の消失 risk of bias 判定 serious (-1) risk of bias 評価 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) ランダム割付順番の生成 random sequence generation 割り付けの隠蔽化 allocation concealment 研究参加者と治療提供者 participants and personnel ブラインド blinding アウトカム評価者 outcome assessors 不完全なアウトカムデータ incomplete outcome data 選択されたアウトカムの報告 selective outcome reporting その他のバイアス Other sources of bias 研究内での risk of bias Risk of bias within a study 1 Engel 2012 Low risk Low risk High risk Low risk High risk Low risk Low risk Unclear risk 2 Wiebe 2001 Low risk Low risk High risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Unclear risk 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) risk of bias コメント 1 Engel 2012 コンピューターが生成した乱数 割り付けは隠蔽化されている 盲検化はされていない 盲検化されている 発作のログの記入漏れが数名にみられた. 脱落者の存在, 介入群で手術を受けなかった患者や対照群で手術をうけた患者の存在. 試験の早期打ち切り. 研究プロトコルが利用でき, 研究において予め決められたアウトカムのうちレビューに関連する全てのものが予め決められて報告されている. この研究は他の bias がない 2 Wiebe 2001 割り付け順番の生成法は施設外で割り付けされ, 中記載されていないが, ラン身を見ることのできない封盲検化はされていないダム化割り付けされたと記筒が用いられた載されている 盲検化した上で外部のてんかん専門家が評価 手術群の 4 名が手術を受けなかった 論文のMethodsにあるアウトカムはすべて結果で報告されている. プロトコーこの研究は他のbiasがなルがないため, 予め設定いされていた他のアウトカムがあるかは不明.

資料 CQ9-2-03: Risk of bias テーブル Outcome 死亡 risk of bias 判定 not serious (0) risk of bias 評価 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) ランダム割付順番の生成 random sequence generation 割り付けの隠蔽化 allocation concealment 研究参加者と治療提供者 participants and personnel ブラインド blinding アウトカム評価者 outcome assessors 不完全なアウトカムデータ incomplete outcome data 選択されたアウトカムの報告 selective outcome reporting その他のバイアス Other sources of bias 研究内での risk of bias Risk of bias within a study 1 Engel 2012 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk Low risk Low risk Unclear risk 2 Wiebe 2001 Low risk Low risk Low risk Low risk High risk Unclear risk Low risk Unclear risk 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) risk of bias コメント 1 Engel 2012 2 Wiebe 2001 コンピューターが生成した乱数 割り付け順番の生成法は記載されていないが, ランダム化割り付けされたと記載されている 割り付けは隠蔽化されている 施設外で割り付けされ, 中身を見ることのできない封筒が用いられた 盲検化はされていないが, 盲検化されていなくても影響を受けない. 盲検化はされていないが, 盲検化されていなくても影響を受けない. 盲検化はされていないが, 盲検化されていなくても影響を受けない. 盲検化はされていないが, 盲検化されていなくても影響を受けない. 脱落者の存在, 介入群で手術を受けなかった患者や対照群で手術をうけた患者の存在. 試験の早期打ち切り. 手術群の 4 名が手術を受けなかった 研究プロトコルが利用でき, 研究において予め決められたアウトカムのうちレビューに関連する全てのものが予め決められて報告されている. この研究は他の bias がない 論文のMethodsにあるアウトカムはすべて結果で報告されている. プロトコーこの研究は他のbiasがなルがないため, 予め設定いされていた他のアウトカムがあるかは不明.

資料 CQ9-2-03: Risk of bias テーブル Outcome 手術合併症 risk of bias 判定 serious (-1) risk of bias 評価 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) ランダム割付順番の生成 random sequence generation 割り付けの隠蔽化 allocation concealment 研究参加者と治療提供者 participants and personnel ブラインド blinding アウトカム評価者 outcome assessors 不完全なアウトカムデータ incomplete outcome data 選択されたアウトカムの報告 selective outcome reporting その他のバイアス Other sources of bias 研究内での risk of bias Risk of bias within a study 1 Engel 2012 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Low risk Unclear risk 2 Wiebe 2001 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Unclear risk 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) risk of bias コメント 1 Engel 2012 コンピューターが生成した乱数 割り付けは隠蔽化されている 盲検化はされていない 記載されていない 脱落者の存在, 介入群で手術を受けなかった患者や対照群で手術をうけた患者の存在. 試験の早期打ち切り. 研究プロトコルが利用でき, 研究において予め決められたアウトカムのうちレビューに関連する全てのものが予め決められて報告されている. この研究は他の bias がない 2 Wiebe 2001 割り付け順番の生成法は施設外で割り付けされ, 中記載されていないが, ラン身を見ることのできない封盲検化はされていないダム化割り付けされたと記筒が用いられた載されている 記載されていない 手術群の 4 名が手術を受けなかった 論文のMethodsにあるアウトカムはすべて結果で報告されている. プロトコーこの研究は他のbiasがなルがないため, 予め設定いされていた他のアウトカムがあるかは不明.

資料 CQ9-2-03: Risk of bias テーブル Outcome 記憶障害 risk of bias 判定 serious (-1) risk of bias 評価 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) ランダム割付順番の生成 random sequence generation 割り付けの隠蔽化 allocation concealment 研究参加者と治療提供者 participants and personnel ブラインド blinding アウトカム評価者 outcome assessors 不完全なアウトカムデータ incomplete outcome data 選択されたアウトカムの報告 selective outcome reporting その他のバイアス Other sources of bias 研究内での risk of bias Risk of bias within a study 2 Engel 2012 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Low risk Unclear risk 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) risk of bias コメント 1 Engel 2012 コンピューターが生成した乱数 割り付けは隠蔽化されている 盲検化はされていない 記載されていない 研究プロトコルが利用でランダム割り付け時点でき, 研究において予め決割り付けられた介入の多くめられたアウトカムのうちが脱落した場合の 治療レビューに関連する全て内容通りの分析. 試験ののものが予め決められて早期打ち切り. 報告されている. この研究は他の bias がない

資料 CQ9-2-03: Risk of bias テーブル Outcome 精神症状 risk of bias 判定 serious (-1) risk of bias 評価 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) ランダム割付順番の生成 random sequence generation 割り付けの隠蔽化 allocation concealment 研究参加者と治療提供者 participants and personnel ブラインド blinding アウトカム評価者 outcome assessors 不完全なアウトカムデータ incomplete outcome data 選択されたアウトカムの報告 selective outcome reporting その他のバイアス Other sources of bias 研究内での risk of bias Risk of bias within a study 1 Wiebe 2001 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Unclear risk 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) risk of bias コメント 1 Wiebe 2001 割り付け順番の生成法は施設外で割り付けされ, 中記載されていないが, ラン身を見ることのできない封盲検化はされていないダム化割り付けされたと記筒が用いられた載されている 記載されていない 手術群の 4 名が手術を受けなかった. 試験の早期打ち切り. 論文のMethodsにあるアウトカムはすべて結果で報告されている. プロトコーこの研究は他のbiasがなルがないため, 予め設定いされていた他のアウトカムがあるかは不明.

資料 CQ9-2-03: Risk of bias テーブル Outcome QOL の改善 risk of bias 判定 serious (-1) risk of bias 評価 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) ランダム割付順番の生成 random sequence generation 割り付けの隠蔽化 allocation concealment 研究参加者と治療提供者 participants and personnel ブラインド blinding アウトカム評価者 outcome assessors 不完全なアウトカムデータ incomplete outcome data 選択されたアウトカムの報告 selective outcome reporting その他のバイアス Other sources of bias 研究内での risk of bias Risk of bias within a study 1 Engel 2012 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Low risk Low risk Unclear risk 2 Wiebe 2001 Low risk Low risk High risk Unclear risk High risk Unclear risk Low risk Unclear risk 番号 著者名発表年 (Forest plot 表示 ) risk of bias コメント 1 Engel 2012 2 Wiebe 2001 コンピューターが生成した乱数 割り付けは隠蔽化されている 盲検化はされていない 割り付け順番の生成法は施設外で割り付けされ, 中記載されていないが, ラン身を見ることのできない封盲検化はされていないダム化割り付けされたと記筒が用いられた載されている 記載されていない 記載されていない 脱落者の存在, 介入群で手術を受けなかった患者や対照群で手術をうけた患者の存在. 手術群の 4 名が手術を受けなかった 研究プロトコルが利用でき, 研究において予め決められたアウトカムのうちレビューに関連する全てのものが予め決められて報告されている. この研究は他の bias がない 論文のMethodsにあるアウトカムはすべて結果で報告されている. プロトコーこの研究は他のbiasがなルがないため, 予め設定いされていた他のアウトカムがあるかは不明.

資料 CQ9-2-04,05 Risk of bias サマリー, Risk of bias グラフ 発作の消失 Random sequence generation (selection bias): ランダム割り付け順番の生成 ( 選択バイアス ) Allocation concealment (selection bias): 割り付けの隠蔽化 ( 選択バイアス ) Blinding of participants and personnel (performance bias): 研究参加者と治療提供者のマスキング ( 施行バイアス ) Blinding of outcome assessment (detection bias): アウトカム評価者のマスキング ( 検出バイアス ) Incomplete outcome data (attrition bias): 不完全なアウトカムデータ ( 症例減少バイアス ) Selective reporting (reporting bias): 選択されたアウトカムの報告 ( 報告バイアス ) Other bias: その他のバイアス

資料 CQ9-2-04,05 Risk of bias サマリー, Risk of bias グラフ 死亡

資料 CQ9-2-04,05 Risk of bias サマリー, Risk of bias グラフ 手術合併症

資料 CQ9-2-04,05 Risk of bias サマリー, Risk of bias グラフ 記憶障害

資料 CQ9-2-04,05 Risk of bias サマリー, Risk of bias グラフ 精神症状

資料 CQ9-2-04,05 Risk of bias サマリー, Risk of bias グラフ QOL の改善

資料 CQ9-2-06: Forest plot アウトカム 9-2-1: 発作の消失 アウトカム 9-2-2: 抗てんかん薬の減量 中止 一次研究なし アウトカム 9-2-3: 死亡 アウトカム 9-2-4: 手術合併症

アウトカム 9-2-5: 記憶障害 アウトカム 9-2-6: 精神症状 アウトカム 9-2-7:QOL (QOLIE-89 (89-item Quality of Life in Epilepsy Inventory) の改 善 ) 著者に不足データについて問い合わせたが, 解析に必要なデータが得られなかったため, Wiebe 2001 は組み込まなかった.

資料 CQ9-2-07 Summary of findings (SoF) table: 薬剤抵抗性てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うべきか? 患者 : 薬剤抵抗性てんかん介入 : 側頭葉切除術 + 薬物療法比較 : 薬物療法 アウトカム 期待される絶対効果 * (95% 信頼区間 ) 相対効果 : リスク比 RR (95% 信頼区間 ) 薬物療法のリスク 側頭葉切除術 + 薬物療法のリスク 患者数 ( 研究数 ) エビデンスの質 (GRADE) コメント 発作の消失 16 (1,000 人中 ) 327 (1000 人中 ) (67~1,000) RR 20.57 (4.24~99.85) 118 (2 RCTs) 低 a,b 抗てんかん薬の減薬 中止 0 (1,000 人中 ) 0 (1,000 人中 ) (0 ~0) 推定不能 (0 RCTs) - 報告なし 死亡 16 (1,000 人中 ) 5 (1,000 人中 ) (0~126) RR 0.33 (0.01~7.95) 118 (2 RCTs) 低 c 手術合併症 0 (1,000 人中 ) 0 (1,000 人中 ) (0~0) RR 12.33 (1.67~90.89) 118 (2 RCTs) 低 a,b 記憶障害 0 (1,000 人中 ) 0 (1,000 人中 ) (0~0) RR 12.00 (0.71~202.18) 26 (1 RCT) 非常に低 a,c 精神症状 225 (1,000 人中 ) 200 (1,000 人中 ) (86~466) RR 0.89 (0.38~2.07) 80 (1 RCT) 非常に低 a,b QOL の改善 :QOLIE-89 (89- item Quality of Life in Epilepsy Inventory) mental health score の変化 (QOLIE-89 の範囲 : 0~100) QOL の改善 (QOLIE-89 の変化 ) の平均 0 側頭葉切除 + 薬物療法群における QOL の改善 (QOLIE-89 の変化 ) の平均は薬物療法群より 8.6 高い (0.14~17.06 高い ) - 38 (1 RCT) 低 a,d * 介入群のリスク ( およびその 95% 信頼区間 ) は, コントロール群におけるリスクと介入による効果 ( およびその 95% 信頼区間 ) にもとづいて推定した. GRADE ワーキンググループによるエビデンスの質のグレード高 : 効果推定値の確信性が高く, 真の効果は効果推定値の近くにある. 中 : 効果推定値の確信性が中程度である. 効果推定値は真の効果に近いと思われるが, 今後の研究によって効果推定値が変わる可能性がある. 低 : 効果推定値の確信性には限界がある. 効果推定値は真の効果に近いが, 今後の研究によって効果推定値が変わる可能性が非常に高い. 非常に低 : 効果推定値の確信性は非常に低い. 真の効果は効果推定値と異なる可能性が高い. a. マスキングがされておらず, アウトカムに影響が及ぶため b. 効果推定値の信頼区間が相当な利益と相当な害の双方の臨床決断閾値をまたがないが, 最小情報量 (OIS) 基準を満たしていないため c. 効果推定値の信頼区間が相当な利益と相当な害の双方の臨床決断閾値をまたぐため d. 効果推定値の信頼区間が相当な利益の臨床決断閾値をまたぐが, 相当な害の臨床決断閾値はまたがないため

資料 CQ9-2-08 エビデンスプロファイル of studies 発作の消失 Study design Risk of bias Quality assessment of patients Effect Inconsistency Indirectness Imprecision Other considerations 側頭葉切除術 + 薬物療法 薬物療法 Relative (95% CI) Absolute (95% CI) Quality Importance 2 randomized trials serious a not serious not serious serious b none 26/55 (47.3%) 1/63 (1.6%) RR 20.57 (4.24 to 99.85) 311 more per 1,000 (from 51 more to 1,000 more) LOW CRITICAL 抗てんかん薬の減薬 中止 0 randomized trials 0/0 0/0 not estimable - CRITICAL 死亡 2 randomized trials not serious not serious not serious very serious c none 0/55 (0.0%) 1/63 (1.6%) RR 0.33 (0.01 to 7.95) 11 fewer per 1,000 (from 16 fewer to 110 more) LOW CRITICAL 手術合併症 2 randomized trials serious a not serious not serious serious b none 9/55 (16.4%) 0/63 (0.0%) RR 12.33 (1.67 to 90.89) 0 fewer per 1,000 (from 0 fewer to 0 fewer) LOW CRITICAL 記憶障害 1 randomized trials serious a not serious not serious very serious c none 4/11 (36.4%) 0/15 (0.0%) RR 12.00 (0.71 to 202.18) 0 fewer per 1,000 (from 0 fewer to 0 fewer) VERY LOW CRITICAL 精神症状 1 randomized trials serious a not serious not serious very serious b none 8/40 (20.0%) 9/40 (22.5%) RR 0.89 (0.38 to 2.07) 25 fewer per 1,000 (from 140 fewer to 241 more) VERY LOW CRITICAL QOL の改善 1 randomized trials serious a not serious not serious serious d none 15 23 - MD 8.6 higher (0.14 higher to 17.06 higher) LOW CRITICAL CI: Confidence interval; RR: Risk ratio; MD: Mean difference a. マスキングがされておらず, アウトカムに影響が及ぶため b. 効果推定値の信頼区間が相当な利益と相当な害の双方の臨床決断閾値をまたがないが, 最小情報量 (OIS) 基準を満たしていないため c. 効果推定値の信頼区間が相当な利益と相当な害の双方の臨床決断閾値をまたぐため d. 効果推定値の信頼区間が相当な利益の臨床決断閾値をまたぐが, 相当な害の臨床決断閾値はまたがないため

エビデンスの確実性 CERTAINTY OF THE EVIDENCE 望ましくない効果 UNDESIRABLE EFFECTS 望ましい効果 DESIRABLE EFFECTS 問題 PROBLEM 資料 CQ9-2-09:Evidence-to-Dicision テーブル推奨判断基準の評価テーブル CQ9-2: 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うべきか? 集団 : 薬剤抵抗性側頭葉てんかん患者 介入 : 側頭葉切除術 ( 薬物療法に加えて ) 基準 CRITERIA その問題は優先順位が高いですか? Is the problem a priority? より重篤な問題や緊急性のある問題は, より優先順位が高くなる 判定 JUDGEMENTS いいえ おそらくいいえ おそらくはい はい ------------------ 一概には言えない わからない リサーチエビデンス RESEARCH EVIDENCE 薬剤抵抗性てんかんでは, 新たに薬剤を追加しても効果は限定的である. 側頭葉切除術は, 発 作の消失が期待できる治療である. 追加事項 ADDITIONAL CONSIDERATIONS 予想される望ましい効果はどれくらいですか? How substantial are the desirable anticipated effects? 予想される望ましくない効果はどれくらいですか? How substantial are the undesirable anticipated effects? 全体的なエビデンスの確実性はどれですか? What is the overall certainty of the evidence of effects? ささいな 小さい 中程度 大きい ------------------ 一概には言えない わからない 大きい 中程度 小さい ささいな ------------------ 一概には言えない わからない 非常に低 低 中 高 ------------------ 研究がない 関心のある主要アウトカムの相対的な重要性や価値 (The relative importance or values of the main outcomes of interest): Outcome Relative importance Certainty of the evidence (GRADE) 発作の消失 抗てんかん薬減薬 中止 死亡 手術合併症 記憶障害 精神症状 QOL の改善 Summary of findings: Outcome 発作の消失 抗てんかん薬減薬 中止 死亡 手術合併症 CRITICAL CRITICAL CRITICAL CRITICAL CRITICAL CRITICAL CRITICAL 側頭葉切除術なし側頭葉切除術あり Difference (95% CI) 1.6% 32.7% (6.7 to 100.0) 1.6% 0.5% (0.0 to 12.6) 0.0% 0.0% (0.0 to 0.0) LOW LOW LOW VERY LOW VERY LOW LOW 31.1% more (5.1 more to 156.9 more) 1.1% fewer (1.6 fewer to 11 more) 0.0% fewer (0 fewer to 0 fewer) Relative effect (RR) (95% CI) RR 20.57 (4.24 to 99.85) RR 0.33 (0.01 to 7.95) RR 12.33 (1.67 to 90.89) 症例による. 記 憶障害につい ては, ある程度 事前に予測可 能である. 1 本の RCT (Wiebe 2001) では一過性無 症候性視野欠 損が 40 人中 22 人におこった 手術療法は, 対 照群の盲検化 が困難であるた め, 一般的にエ ビデンスの確実 性は低くなる. 1

受け入れ ACCEPTABILITY コストとリソース COST AND RESOURCE 効果のバランス BALANCE OF EFFECTS 価値 VALUES CQ9-2: 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うべきか? 集団 : 薬剤抵抗性側頭葉てんかん患者 介入 : 側頭葉切除術 ( 薬物療法に加えて ) 基準 CRITERIA 判定 JUDGEMENTS リサーチエビデンス RESEARCH EVIDENCE 追加事項 ADDITIONAL CONSIDERATIONS 主要なアウトカムにどれだけの人が価値を置くか, 大きな不確実性や多様性がありますか? Is there important uncertainty about or variability in how much people value the main outcomes? 重要な不確実性や多様性がある たぶん重要な不確実性や多様性がある たぶん重要な不確実性や多様性がない 重要な不確実性や多様性がない 記憶障害 精神症状 QOL の改善 0.0% 0.0% (0.0 to 0.0) 22.5% 20.0% (8.6 to 46.6) The mean QOL の改善 was 0 0.0% fewer (0 fewer to 0 fewer) 2.5% fewer (14 fewer to 24.1 more) - MD 8.6 higher (0.14 higher to 17.06 higher) RR 12.00 (0.71 to 202.18) RR 0.89 (0.38 to 2.07) 要約 : 側頭葉切除術による発作消失は, 相対リスク 20.57 (95% 信頼区間 4.24~99.85), NNT 4 だった. 抗てんかん薬の減薬をアウトカムにした研究はなかった. 手術による死亡の有意な増加 はなかった. 手術に関連した合併症は相対リスク 12.33 (95% 信頼区間 1.67~90.89) 程度増加 - 望ましい効果と望ましくない効果のバランスは介入と対照のどちらで優れますか? Does the balance between desirable and undesirable effects favor the intervention or the comparison? 対照のほうが優れる たぶん対照のほうが優れる 介入と対照のどちらも優れていない たぶん介入のほうが優れる 介入のほうが優れる 一概には言えない わからない し, その内訳は脳梗塞や感染などであった. それとは別に,Wiebe らの報告では, 一過性の視野障害が手術群の約半数にみられた. 記憶障害は, 薬物療法に側頭葉切除術を追加した場合増加する傾向があったが, 統計学的に有意ではなかった. 精神症状は, 主としてうつであり, 側頭葉切除術の有無で有意差はなかった. 生活の質 (QOL) は, 側頭葉切除術を追加したほうが優れていた. 必要とされるリソースやコストはどれくらい大きいですか? How large are the resource requirements (cost)? 大きなコスト 中程度のコスト 無視できる程度 中程度の節約 大きな節約 一概には言えない わからない 顕微鏡使用によるてんかん手術 ( 側頭葉切除術を含む ) の保険点数は 131630 点 (2018 年 1 月 11 日現在 ) である. 全身麻酔での手術, 脳神経外科医が必要である. ただし, 発作消失に伴う抗てんかん薬の減薬, 発作減少に伴う入院の減少, より積極的な社会活 動が可能になることなどを通じ, 長期的には節約につながると予想される. その選択肢は主要なステークホルダーに受け入れられますか? Is the option acceptable to key stakeholders? いいえ たぶんいいえ たぶんはい はい ------------------ 一概には言えない わからない 手術可能な施設へのアクセスが必要であるが, 可能である. 2

実現可能性 FEASIBILITY CQ9-2: 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うべきか? 集団 : 薬剤抵抗性側頭葉てんかん患者 介入 : 側頭葉切除術 ( 薬物療法に加えて ) 基準 CRITERIA その選択肢をとることは現実的に可能ですか? Is the option feasible to implement? 判定 JUDGEMENTS いいえ たぶんいいえ たぶんはい はい ------------------ 一概には言えない わからない リサーチエビデンス RESEARCH EVIDENCE 専門施設であれば可能である. 手術可能施設については, 下記のウェブサイトを参考のこと. 1. 日本脳神経外科学会 http://jns.umin.ac.jp/ 2. 日本てんかん外科学会 http://plaza.umin.ac.jp/~jess/ 3. 日本てんかん学会 http://square.umin.ac.jp/jes/ 追加事項 ADDITIONAL CONSIDERATIONS 3

推奨の結論テーブル CQ9-2: 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うべきか? 推奨のタイプ Type of recommendation 介入をしないことを強く推奨する Strong recommendation against the intervention 条件付きで介入をしないことを推奨する Conditional recommendation against the intervention 条件付きで介入も対照も推奨する Conditional recommendation for either the intervention or the comparison 条件付きで介入をすることを推奨する Conditional recommendation for the intervention 介入をすることを強く推奨する Strong recommendation for the intervention 判定欄 推奨文草案 Recommendation 理由 Justification 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うことを提案する (GRADE2D, 推奨の強さ 弱い推奨 / エビデンスの確実性 非常に低 ) 疑問 (CQ): 薬剤抵抗性てんかんに側頭葉切除術を行うべきか? 患者 (P): 薬剤抵抗性てんかん介入 (I): 側頭葉切除術 ( 薬物療法に加えて ) 対照 (C): 薬物療法のみ継続アウトカム (O): 発作消失, 死亡, 手術合併症エビデンスの要約 : システマティックレビューの結果,2 件 (118 人 ) の RCT が見つかった. 側頭葉切除術による発作消失は, 相対リスク 20.57 (95% 信頼区間 4.24~99.85), NNT 4 だった. 抗てんかん薬の減薬をアウトカムにした研究はなかった. 手術による死亡の有意な増加はなかった. 手術に関連した合併症は相対リスク 12.33 (95% 信頼区間 1.67~90.89) 程度増加し, その内訳は脳梗塞や感染などであった. それとは別に,Wiebe らの報告では, 一過性の視野障害が手術群の約半数にみられた. 記憶障害は, 薬物療法に側頭葉切除術を追加した場合増加する傾向があったが, 統計学的に有意ではなかった. 精神症状は, 主としてうつであり, 側頭葉切除術の有無で有意差はなかった. 生活の質 (QOL) は, 側頭葉切除術を追加したほうが優れていた. エビデンスの確実性 : 介入のマスキングが不可能であっため, 集まった研究のバイアスのリスクは全体的に高く, 死亡に関しては not serious としたが, それ以外のアウトカムについては 1 段階グレードダウンし serious とした. 結果の非一貫性と非直接性には問題なく not serious とした. 不精確さはいずれの検討においても信頼区間が臨床判断閾値をまたぐものが多く,1 段階もしくは 2 段階グレードダウンした. 出版バイアスは研究数が少なく判断できなかった. このため, 各アウトカムのエビデンスの確実性は, 発作の消失, 死亡, 手術合併症,QOL の改善が 低, 記憶障害, 精神症状が 非常に低 であり, 全体的なエビデンスの確実性は, D( 非常に低 ) だった. 利益と害, 負担, コストの判定 : 手術のため侵襲は大きい. しかし, 薬剤抵抗性てんかん患者で発作が消失するメリットは大きく, 治療効果も大きい. 推奨 : 薬剤抵抗性側頭葉てんかんにおいて側頭葉切除術を薬物療法に加えて行うことを提案する ( 推奨の強さ 弱い推奨 / エビデンスの確実性 非常に低 ) 付加的な考慮事項 : GRADE では, エビデンスの確実性が 非常に低 である場合, 原則として 強い推奨 とすることはできない. 側頭葉切除術は期待される効果が大きく, 重篤な有害事象の頻度も低いことから, パネル会議ではほぼ全員が 強い推奨 とする意見であったが,GRADE システムによる制約のため 弱い推奨 とした. サブグループの検討事項術式を比較した RCT はみつからなかった. Subgroup considerations 患者集団や介入の内容によって推奨文が変わる場合には, どのように条件を設定するか検討する 実施上の考慮事項 Implementation considerations 実際に実施する場合に問題となる実行可能性, 忍容性などに問題が生じる 原因によって最適な術式を選ぶ必要がある. 手術後のフォロー, 支援が必要である. モニタリングと評価 Monitoring and evaluation 実施する際に必要なモニタリングは何か. 事前に, もしくは公開後に効果についての評価が必要か 研究の可能性 Research possibilities 判断に必要な不明確な点で, 将来の研究が必要なものは何か 記憶温存, 低侵襲の術式の開発について研究の余地がある. また,2 件の RCT の観察期間はそれぞれ 1 年間,2 年 間であり, より長い観察期間での手術成績, 有害事象についてのデータも関心が集まるところである. 4