派遣法改正に向けた動きが本格化 失業率が 5% を上回るなど厳しい雇用情勢が続く中 政府は労働者派遣事業の規制強化に乗り出している 2009 年 12 月 28 日 労働政策審議会は労働者派遣法 ( 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 ) 改正原案を取り纏め

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年度報告(報道発表資料)

① 年度報告(報道発表資料) かがみ

① 年度報告(確報) かがみ

登録用 ③2603 年度報告(確報)P3~18(差替・見え消し版)

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業務統計を活用した新規指標2006

2 正社員 契約社員 アルバイトの場合 ( 直接雇用の場合 ) 賃金の支払い仕事上の指揮命令 直接雇用の場合 労働者と労働契約を結ぶのは ( 雇用主は ) 労働者派遣とは 自己の雇用する労働者を その雇用関係の下に 他人の指揮命令を受けて その他人のために労働に従事させることをいいます 直接雇用の場

製造業の雇用削減が本格化し 失業率は5.4% に上昇 雇用情勢の悪化が足元で鮮明になっている 急激な減産局面に突入した昨年 11 月あたりから 派遣切り と言われるような非正規労働者を中心とした解雇に注目が集まったが 実際には今年 2 月まで雇用者数はほぼ横ばいで推移しており (2008 年平均は前

特定派遣事業所 販売 デモンストレーター 添乗 その他の OAインスト情報処理 編集 印 広告デザイその他の 営業 販売ラクター システム開刷 DTPオン 技術 クリ 関連職 発 ペレーター エイティブ職 機械設計 放送機器等操作 放送番組放送番組等における等演出大道具 小道具 アナウンサー 建築物

労働者派遣制度の概要 1

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1 なぜ 同一労働同一賃金 が導入されるのか? 総務省統計局労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 30 年 (2018 年 )7~9 月期平均 ( 速報 ) によると 非正規労働者数は 2,118 万人 ( 前年同期比 68 万人増加 ) 正規労働者数は 3,500 万人となっています 役員を除く雇用

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計


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6 紹介予定派遣 ( 注 4) (1) 紹介予定派遣により労働者派遣された労働者数 44,891 人 ( 対前年度比 36.1% 増 ) (2) 紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者数 27,362 人 ( 対前年度比 38.3% 増 ) ( 注 1) 派遣労働者数 は ここでは一

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シルバー派遣事業のご利用を検討されているお客様へ Ⅰ 労働者派遣事業と請負の違いについて 労働者派遣と請負の違いについて 労働者派遣 労働者派遣契約 請負 請負契約 センター派遣先センター発注者 雇用契約指揮命令センターの指揮命令なし 派遣労働者 構成員 シルバー会員 雇用主は派遣会社 派遣先が派遣

Microsoft PowerPoint - 2の(別紙2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保【佐賀局版】

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

改正労働者派遣法 平成24年10月1日施行

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平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

労働者派遣とは て その他人のために労働に従事させることをいいます 正社員 契約社員 アルバイトの場合 ( 直接雇用の場合 ) 賃金の支払い仕事上の指揮命令 派遣の場合派遣契約 A 社派遣先 A 社約労働者派遣とは 自己の雇用する労働者を その雇用関係の下に 他人の指揮命令を受け 働契勤務労労働者

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日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

(2) 特定労働者派遣事業 24,084 円 ( 平均 )( 対前年度比 1.0% 増 ) ( 注 1) 派遣労働者数 は ここでは一般労働者派遣事業における常用雇用労働者数及び登録者数並びに特定労働者派遣事業における派遣労働者数の合計とした 登録者 には 過去 1 年間に雇用されたことのない者は含

2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

2 改正後の労働者派遣法に基づく集計結果 ( 27 年 9 月 30 日 ~ 28 年 3 月 31 日 ) (1) 派遣労働者数 ( ア + イ + ウ + エ )( 注 2) 約 130 万人 1 ア無期雇用派遣労働者 イ有期雇用派遣労働者 125,792 人 948,260 人 2 ( 旧 )

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Microsoft PowerPoint

PowerPoint プレゼンテーション

法律 ) 及び派遣元指針 ( 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針 ) 派 遣先指針 ( 派遣先事業主が講ずべき措置に関する指針 ) が定められ 派遣元と派遣先がそれぞれ講ずるべき措置等を示しています 派遣労働は 労働者の契約形態によって 常用型 と 登録型 の二つに分けられます 登録型派遣労働者

派遣社員の業務 < 業務の区分 > 現在従事している主な業務 について 下記の通り オフィス系 営業 販売 サービス系 IT 技術 通信系 クリエイティブ系 製造 軽作業系 その他 の 6 つのカテゴリーに分類して集計しています オフィス系 ОA 事務 英文事務 PC オペレーター データ入力 通訳

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調査結果のポイント 従業員採用状況について 平成 28 年度 (H28.4 ~ H29.3) は 計画どおり もしくは計画より多く採用した と回答した企業が69% 採用計画について 29 年度 (H29.4 ~ H30.3) は 28 年度実績と比較し 増やす と回答した企業と 減らす と回答した企

2 常用代替防止 ⑴ 報告書における意見報告書は, 常用代替防止という考え方には問題点があるとして,1 常用代替防止は, 派遣先の常用労働者を保護する考え方であり, 派遣労働者の保護や雇用の安定と必ずしも両立しない面がある,2 制度創設時, 常用代替を防止する趣旨は正規雇用労働者の雇用を基本とする日

することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

職場環境 回答者数 654 人員構成タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % % 質問 1_ 採用 回答 /654 中途採用 % 新卒採用 % タ

日本の主な雇用形態の紹介 正規雇用 雇用者と使用者との雇用契約によって成り立つ雇用形態 フルタイムで従業し期間を定めないで働く 雇用形態の関係図 非正規雇用 期間を定めた短期間の雇用形態のこと 以下に個別に見ていく 1パートタイマー 1 週間の所定労働時間が同一の事業所に

の業務について派遣先が九の 1 に抵触することとなる最初の日 六派遣先への通知 1 派遣元事業主は 労働者派遣をするときは 当該労働者派遣に係る派遣労働者が九の 1の ( 二 ) の厚生労働省令で定める者であるか否かの別についても派遣先に通知しなければならないものとすること ( 第三十五条第一項関係

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< 前提 > ここでいう キャリア形成とは 1 派遣労働者の職業能力の向上に伴って職務が高度化し 2 処遇が向上することとするまた キャリア管理とは 派遣会社が派遣労働者のキャリア形成を支援する取組みや制度のことを指す 2

社団法人日本生産技能労務協会

共通事項 1 キャリアアップ 管理者情報 ( 氏名 ): 役職 ( 配置日 ): 年月日 2 キャリアアップ管理者 の業務内容 ( 事業所情報欄 ) 3 事業主名 印 4 事業所住所 ( - ) 5 電話番号 ( ) - 6 担当者 7 奨励金対象労働者数 ( 全労働者数 ) 9 企業規模 ( 該当

派遣受入期間の制限について 業務によって 派遣先が同一の業務に派遣を受け入れる期間に制限を設けている 業務 物の製造 軽作業 一般事務など いわゆる 26 業務 など ( ) 派遣受入期間の制限 原則 1 年間 ( 過半数労働組合等の意見を聴いた上で 3 年間まで延長できる ) なし その他派遣受入

労働法制の動向

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図表 29 非正規労働者の転職状況 前職が非正規労働者であった者のうち 現在約 4 分の 1 が正規の雇用者となっている 非正規労働者の転職希望理由としては 収入が少ない 一時的についた仕事だから が多くなっている 前職が非正規で過去 5 年以内に転職した者の現職の雇用形態別割合 (07 年 現職役

派遣先の皆さまへ 派遣社員を受け入れるときの主なポイント 労働者派遣の流れ 労働者 派遣元事業主 派遣先 派遣登録 ( 登録型派遣の場合 ) 適切な事業運営 派遣依頼 抵触日通知 1 期間制限チェック事業所単位 個人単位の期間制限を理解している労働契約申込みみなし制度を理解している 2 派遣契約の締

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厚生労働省発表

Microsoft Word 建議と要綱の対応表

23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

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Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

が発生した場合 どのように対応していますか 本書を読んで対応策を検討してください また 第 2 部では 平成 26 年 4 月に改正され 27 年 4 月に施行されたパートタイム労働法に対応するための実務について述べています パート専用就業規則例を掲載し ポイント解説をしています さらに 第 3 部

採用者数の記載にあたっては 機械的に採用日の属する年度とするのではなく 一括 採用を行っている場合等において 次年度新規採用者を一定期間前倒しして雇い入れた 場合は 次年度の採用者数に含めることとしてください 5 新卒者等以外 (35 歳未満 ) の採用実績及び定着状況採用者数は認定申請日の直近の3

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

条件画面報告対象期間報告年月日 (6 月 1 日現在 ) 得意先 NO 部門出勤区分ファンクションキーヘルプ (F1) プレビュー (F8) 印刷 (F9) 終了 (F12) 年度報告する期間の開始年月日と終了年月日を指定します システム日付の年とシステム固定で持つ決算年月日の日付により 初期値をセ

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

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( 様式第 1 号 ( 共通 )) 共通事項 1 キャリアアップ管理者 情報 ( 氏名 ): 役職 ( 配置日 ): 年月日 2 キャリアアップ管理者 の業務内容 ( 事業所情報欄 ) 3 事業主名 印 4 事業所住所 ( - ) 5 電話番号 ( ) - 6 担当者 7 企業全体で常時雇用する労働

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<本調査研究の要旨>

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

11月は『職業能力開発促進月間

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て 労働者派遣契約書に休業手当等の支払いに要する費用を確保するための費用負担等に関する事項を記載していないもの (1 派遣元事業所 ) ウ派遣料金額の明示派遣労働者に対して 書面の交付 ファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信の方法により労働者派遣に関する料金の額を明示していないもの (5

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一公職の候補者となる労働者の雇用の継続の確保のための立候補休暇に関する法律案目次第一章総則 ( 第一条 第二条 ) 第二章立候補休暇 ( 第三条 第六条 ) 第三章雑則 ( 第七条 第九条 ) 附則第一章総則 ( 目的 ) 第一条この法律は 立候補休暇の制度を設けることにより 公職の候補者となる労働

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みずほインサイト 政策 2013 年 2 月 20 日 希望者全員を 65 歳まで雇用義務化高齢者が活躍できる職場の創設と人材育成が課題 政策調査部上席主任研究員堀江奈保子 年 4 月 1 日に高年齢者雇用安

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

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派遣受入期間の制限について 業務によって 派遣先が同一の業務に派遣を受け入れる期間に制限を設けている 業務 物の製造 軽作業 一般事務など 派遣受入期間の制限 原則 1 年間 ( 過半数労働組合等の意見を聴いた上で 3 年間まで延長できる ) 26 業務など ( ) なし その他派遣受入期間の制限が

業務の一つである 事務用機器操作 などと称して 労働者を派遣していた こうした 偽 装 を当局に指摘され 業界団体のツートップが責任を取ったかたちだ 3 月 19 日に派遣法改正案が閣議決定される寸前に 今まで黙認されてきた 偽装 が白日 の下にさらされた 業界大手を狙い撃ちしたような厚労省の手法に

本調査へのコメント ( 独立行政法人労働政策研究 研修機構労働政策研究所副所長荻野登氏 ) 無期転換ルールに基づく申し込み権が本格的に発生するまで一年を切るなか 連合調査によるとまだ半数の有期雇用労働者がこのルールを知らないままでいる まず この周知が残された期間での最大の課題になるのではないか 当

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2018年度の雇用動向に関する道内企業の意識調査

目次. 独立行政法人労働政策研究 研修機構による調査 速報値 ページ : 企業調査 ページ : 労働者調査 ページ. 総務省行政評価局による調査 ページ

等により明示するように努めるものとする ( 就業規則の作成の手続 ) 第 7 条事業主は 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し 又は変更しようとするときは 当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする ( 短時間労働者の待遇の原

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Transcription:

2010 年 1 月 19 日発行 労働者派遣法改正の問題点 ~ 雇用が一層不安定となる可能性も ~ 要旨 雇用の安定を主眼とした労働者派遣法改正の動きが本格化してきた 改正案は常用雇用を除く 登録型派遣 ( 専門 26 業務を除く ) 及び製造業務への派遣を禁止する内容となっている 今回の改正案は 1 禁止対象となった業種で働く派遣労働者の扱いが不透明である 2 教育訓練不足や待遇改善などの問題は残されたままである 3 非正社員のうち派遣のみを規制強化の対象とすることでかえって雇用が不安定となる可能性がある 4そもそも派遣法改正の契機となった 派遣切り 問題の解決となっていないなど 問題が少なくない 派遣業の労働需給機能は政府が新成長戦略に掲げる 女性や高齢者等の就業率上昇 を達成するためにも有効と考えられ 規制強化ではなく 教育訓練の充実や待遇改善といった方向で派遣業の見直しが進むことが望まれる 調査本部経済調査部大和香織 (03-3591-1284) kaori.yamato@mizuho-ri.co.jp

派遣法改正に向けた動きが本格化 失業率が 5% を上回るなど厳しい雇用情勢が続く中 政府は労働者派遣事業の規制強化に乗り出している 2009 年 12 月 28 日 労働政策審議会は労働者派遣法 ( 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 ) 改正原案を取り纏めた 今回の改正は 雇用の安定を主眼としており 常用雇用以外の派遣を原則として禁止する内容となっている 労働者派遣事業は 特定労働者派遣事業 と 一般労働者派遣事業 に分かれているが 前者は常用雇用のみであるため今回の改正では禁止対象とならない 後者の一般労働者派遣事業のうち 登録型派遣 ( 注 1) など常用雇用ではない派遣形態について 原則的に禁止する方針だ 具体的には 1 専門 26 業務 ( 注 2) を除く登録型派遣 2 製造業務への派遣を 常用雇用以外は禁止する ( 図表 1) など 民主党がマニフェストに掲げた項目がほぼそのまま反映されている 労働者側 ( 組合 ) の代表組織である連合は改正案に概ね賛同する一方 使用者側からは反対の声が根強い 改正案にも使用者代表委員から 生産拠点の海外移転や中小企業の受注機会減少を招きかねず 極めて甚大な影響があり ものづくり基盤の喪失のみならず労働者の雇用機会の縮減に繋がることからも反対であるとの意見があった と付記された しかしこうした使用者側の危惧に対する具体的な方策は特に示されておらず ほぼ民主党の主張通りの改正案が 1 月 18 日に開会した通常国会に提出される予定である 今回の改正案は 使用者側の利便性が損なわれる以外にも 次の点で問題が少なくないと考えられる 第一に 禁止対象となった登録型派遣等で働いている労働者を禁止後にどういう形で吸収するか不透明である 第二に 派遣を含めた非正社員雇用について従来から指摘されていた 教育訓練不足と待遇の改善などに関する問題は残されたままとなっている 第三に 非正社員のうち派遣のみを規制強化の対象とすることで かえって雇用が不安定となる可能性がある 第四に そもそも派遣法改正を後押しするきっかけとなったいわゆる 派遣切り 問題の解決策とはなっていない 本稿では これらの問題点を整理した上で 政府が掲げる新成長戦略にとってもマイナスとなる可能性があることを指摘する ( 注 1) 登録型派遣 とは派遣労働者 ( 以下 労働者 ) が派遣元事業主に常用雇用されていない派遣形態であり 派遣先事業主と労働者の間で労働者派遣契約が結ばれている間のみ 派遣元事業主と労働者の雇用契約関係が発生する 労働者が派遣元事業主に常用雇用されている場合は 常用型派遣 と呼ばれる なお 常用雇用に関する法律上の規定はないものの 一般に雇用主 ( 派遣労働者の場合は派遣元事業主 ) と期間の定めのない雇用契約を結ぶ労働者を指す ( 注 2) 専門 26 業務とは ソフトウェア開発 機械設計 放送機器等操作 放送番組等演出 事務用機器等操作 通訳 翻訳 速記 秘書 ファイリング 調査 財務処理 取引文書作成 デモンストレーション 添乗 建築物清掃 建築設備運転 点検 整備 博覧会場等の案内等 研究開発 事業の実施体制の企画 立案 書籍等の製作 編集 広告デザイン インテリアコーディネーター アナウンサー OA インストラクター テレマーケティングの営業 セールスエンジニアの営業 放送番組等に係わる大道具 小道具 1

図表 1 労働者派遣法改正案の主な内容 登録型派遣の原則禁止 製造業務派遣の原則禁止日雇派遣の原則禁止均衡待遇の確保直接雇用の促進 1 専門 26 業務 産前産後 育児 介護休業取得者の代替要員 3 高齢者派遣 4 紹介予定派遣は可 また常用雇用を除く 常用雇用を除く 2 カ月以内の派遣を禁止 同一業務に就く派遣先企業労働者との均衡 禁止業務への派遣など違法派遣の場合 違法状態発生時点で直接労働契約を申し込んだとみなす ( 資料 ) 厚生労働省労働政策審議会資料 (09 年 12 月 28 日 ) よりみずほ総研作成 禁止後の労働者の処遇は事業主任せに 今回の規制強化によって影響を受ける雇用者数は 2008 年度の派遣労働者数を元にすると 1 専門 26 業務を除く登録型派遣の禁止によって約 24 万人 2 製造業 務への派遣禁止によって約 20 万人であり 合わせて派遣労働者全体の 22% に相当する ( 図表 2) 改正法施行から禁止まで 3 年程度の移行期間が設けられる予定であり その間に 禁止によって派遣就業が出来なくなる者の支援として 職業安定所などにおける職業紹介事業を充実させることを掲げているものの 具体案は示されていない 派遣が禁止となったことで業務を縮小する企業は少ないとみられることから 最終的には雇用者をどういった形で吸収するかの判断は 派遣先 派遣元事業者に委ねられることになりそうだ 図表 2 労働者派遣法改正による影響 ( 単位 : 人 ) 一般労働者派遣事業 特定労働者派遣事業 教育訓練拡充等へ向けた 常用 常用以外 常用 派遣実績数 842,236 870,806 308,993 製造現場 278,761 204,432 74,896 製造以外専門 26 業務 417,336 430,711 禁止対象 150,522 26 業務以外 146,139 235,663 83,575 ( 注 ) 常用 は常用型派遣 常用以外 は日雇派遣を含む登録型派遣 ( 資料 ) 厚生労働省 平成 20 年度労働者派遣事業報告書 よりみずほ総研作成 また 従来から派遣社員を含む非正社員について指摘されていた 教育訓練の不 取り組みは途上 足によって人的資本蓄積が正社員に比べて不十分であることや 待遇面での正社員 との格差といった問題は残されている 2004 年の派遣法改正で対象が拡大されたときには 就業形態を多様化する前提として 仕事に応じた公正な処遇 や 人材育成 / 能力開発 が必要であると認識されていた しかし これらの対応が遅れたまま雇用形態だけが多様化したことが 正社員と非正社員の格差を拡大させた要因の一つとなっている 現状 派遣労働者の教育訓練は派遣元に対して義務付けられているのみである 日本企業における訓練は仕事をしながら (OJT) 行われることが多いため 派遣先での訓練機会が確保されていないことは派遣労働者の人的資本蓄積にとってマイナスになっていると考えられる 待遇については今回の改正案で 派遣先企業内で同種業務に従事する者 ( 正社員 ) との均衡処遇を考慮する規定を設ける旨が示されたものの 実効性には疑問が残る 派遣から請負への切り替えによって雇用が一層不安定となる可能性あり さらに 非正社員のうち派遣労働者のみの規制を強化することは 労働者の待遇を悪化させる可能性がある 労働政策研究 研修機構が実施した 多様化する就業形態の下での人事戦略と労働者の意識に関する調査 (2006 年 7 月 ) によれば 使用 者が派遣労働者を活用する主な理由は 人件費の削減 のためであるが 派遣労 2

働以外の非正社員 ( パート アルバイト 契約社員 請負等 ) も正社員に比べて人件費は安い そのため派遣についてのみ規制が強化された場合 企業は派遣以外の非正社員を活用することで対応すると予想される 実際 大手派遣会社の一部では改正に対応するため 早くも製造業派遣から請負契約へと変更する動きが進んでいるという しかし 請負の方が派遣に比べて雇用が安定しているわけでもなければ 所得が高いともいえず こうした動きは労働者にとって必ずしも歓迎できるものではない 少し古い調査になるが 厚生労働省が 2005 年に実施した 労働力需給制度についてのアンケート調査 によれば 請負労働者の平均契約期間は 6.3 カ月である ( 注 3) 一方 派遣労働者は 23.2 カ月と請負に比べて格段に長い ( 図表 3) また平均年収についても 請負の 259.8 万円より派遣の方が 291.7 万円と高い 派遣のうち禁止が予定されている登録型は 242 万円と請負に比べて低いが 請負のうち現場作業員だけに限定すると 246 万円と大差ない ( 図表 4) 派遣から請負に切り替えられた場合に個々人の契約期間や年収といった雇用条件が大きく変更されることはないだろうが 新規募集の際には雇用形態による労働条件の違い ( 契約期間 ) が反映されるとみられる この調査結果を勘案すると 法改正によって派遣から請負への切り替えが進めば 雇用期間が短期化するなど雇用がより不安定となる可能性がある 図表 3 請負 派遣労働者の契約期間図表 4 請負 派遣労働者の平均年収 30 25 23.2 20 15 10 5 0 派遣派遣の内訳 18.3 登録型26.6 常用6.3 請負4.9 管理者( カ月 ) 請負の内訳 7.1 5.9 現一般場リーダー400 350 300 292 250 200 150 100 50 0 派遣派遣の内訳 242 337 常用登録型260 請負請負の内訳 ( 万円 / 年 ) 270 246 一般381 管現理者場リーダー( 注 ) 請負は雇用期間の定めのある者 ( 請負全体の53.3%) についての平均値 ( 資料 ) 厚生労働省 労働力需給制度についてのアンケート調査 ( 資料 ) 厚生労働省 労働力需給制度についてのアンケート調査 製造業では派遣のみならずすべての雇用形態で雇用削減が進んだ 次に派遣法改正を促すきっかけとなった 派遣切り 問題について振り返ってみよう 2008 年 9 月のリーマンショック以降 年末に掛けて製造業を中心に 契約途中にも関わらず派遣労働者の契約を打ち切る 派遣切り 問題に注目が集まった 厚生労働省の調査 ( 非正規労働者の雇止め等の状況について ) によると リーマンショック後の 2008 年 10 月から 2010 年 3 月までに雇止め等となった ( 予定含む ) 製造業派遣労働者は 14 万人程度に上る 但しリーマンショック後に雇用削減の対象となったのは 派遣労働者だけではなかった 労働力調査の製造業雇用者数でみると 2008 年 7~9 月期と比べて 2009 年 7 ~9 月期の正社員は 13 万人 パート アルバイトが 16 万人 その他 ( 契約社員や請負など ) は 32 万人と いずれも大幅に減少した ( 図表 5) 非正社員合計の削減幅は 48 万人と 主に非正社員を対象に雇用調整が進められていたのは確かだ 3

が 必ずしも派遣労働者に集中していたわけではない なお労働力調査では製造派遣の数は把握できない ( 派遣労働者はすべて人材サービス派遣業の雇用者として集計されるため ) ものの 厚生労働省の調査とあわせると製造業に従事する非正社員 60 万人超が削減されたとみられる 図表 5 製造業雇用の変化 ( 前年同期差 万人 ) 40 20 0 正社員 20 40 60 80 役員除く雇用者 ( 前年比 ) 08 09 パート等 その他 ( 資料 ) 総務省 労働力調査 非正社員の雇用不安解消策はセーフティネットの拡充 ではなぜ非正社員のなかでも派遣労働のあり方が特に問題視されたのだろうか それは 職を失うと同時に住居を失うなど 生活が立ち行かなくなる人が急増したからである 非正社員の内訳で最も多いパート労働者は 家計の主たる稼得者が別な者で ある場合が多いため 雇用不安が生活不安に直結するという問題は起こりにくかったとみられる こうした問題は派遣という働き方そのものではなく 正社員 ( 常用雇用 ) 以外の者に対するセーフティネットが不足していたことに起因する したがって 派遣切り 問題の解決策は 常用雇用以外の派遣労働を禁止することではなく 雇用セーフティネットを整備することであるはずだ この点については 麻生政権下の経済対策によって雇用保険被保険者の対象が拡大された (1 年以上の雇用見込み 6 カ月以上の雇用見込み ) ほか 雇用保険対象外の者に対しては 緊急的に教育訓練費などの名目で失業中の生活保障が整備された 現政権下でも雇用保険についてはさらに対象拡大等が検討されており 一層の充実が期待される 女性 高齢者等の就業率上昇 のためには労働需給マッチング策が必要 以上見てきたように 非正社員のなかで派遣だけを規制強化することは 契約期間の短い請負労働者への切り替えが進むなど 労働者側にとって不利益となるケースも出てくると予想される また労働者派遣の規制を強化することは 政府が目指す中長 期的な成長戦略にとってもプラスとならないとみられる 2020 年までの中長期的成長ビジョンを示した 新成長戦略 (2009 年 12 月 30 日発表 ) では 少子高齢化が進む中で成長力を維持するために 女性や高齢者 障がい者等の就業率上昇を目指すと宣言している そうであるならば 今まで以上にきめ細かい労働需給のマッチング策が必要となってくる 労働者派遣業には そうしたマッチングの役割を担うことが一層期待されよう 今回の派遣法改正案は 雇用安定という本来の目的に資するとは考えにくい 派遣対象の規制強化ではなく 教育訓練の充実や待遇の改善といった方向で労働者派遣事業の見直しが進むことが望まれる 以上 4

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