基礎マクロ経済学 (05 年前期 ) 3. 国民所得 担当 : 小塚匡文
3. 国民所得 3. 決定要因 <フロー循環 > 教科書 66 頁の図 3-より 貨幣の流れを見てみよう これを踏まえ 基本的な古典派モデルで考察 < 生産要素 > 生産に必要なもの ( 原材料以外で ) 資本 ( 設備 ) と労働者 これらの生産性は分配にも影響する
< 生産関数 > 生産要素の数量と産出量 ( 財 サービスの供給量 ) の関係を表したもの 産出量を生産要素 ( 労働投入量と資本ストック ) の関数で表したもの y=f(k,l) where y: 産出量 K: 資本ストック L: 労働投入 多くのケースで 規模に関して収獲一定 (CRS) の仮定を置く 各要素量を n 倍にすれば産出量も n 倍になる
3. 国民所得と生産要素生産要素の分配 新古典派所得分配論 価格の調整によって需要と供給が一致する ( 古典派 ) という考え方をもとに 各生産要素の限界生産力 ( 要素価格 ) によって要素需要が決まる という考え方 < 要素価格 > 資本と労働の各要素に払う額 = 要素価格 資本の要素価格 = 資本の所有者が入手 労働の要素価格 = 労働者の稼ぐ賃金
要素価格は 要素の需給で決まる < 競争的企業の意思決定 > 競争的企業 = 価格は所与として行動する企業 生産要素や投入物の価格を所与とする 技術を一定として 設備や労働者の数を調整 利潤を最大化するように調整する < 要素量の調整は?> 生産要素の生産に対する効果は 逓減する どういうこと?
Y=F(X,X) とする (Y: 産出 X,X: 生産要素 技術は一定 ) X を一定 ( ) として X を調整する 3 F X ( X+, X ) F( X, X ) = 要素 の限界生産力 4 生産関数の形状を次スライドの図のように仮定すると 要素 の限界生産力は徐々に小さくなることがわかる
Y( 産出 ) 生産関数 X( 生産要素 )
5(ⅰ) 要素 を 単位増やして得られる追加収入が要素 追加分への支払いより多い もっと要素 を増やす = 生産を増やす (ⅱ) 要素 を 単位増やして得られる追加収入が要素 追加分への支払いより少ない 要素 を減らす = 生産を減らす
(ⅰ)(ⅱ) より 要素 を 単位増やして得られる追加収入 ( 要素 の限界生産力 ) が 単位の要素 への支払いと等しくなるところで 生産要素の数が決まる! 利潤 = 収入 - 費用 = 価格 生産量 - 要素への支払いが成立ここで変化分 (Δ) を考えると Δ 利潤 =Δ 収入 -Δ 費用 = 価格 限界生産物 - 要素 単位への支払 =0 限界生産物 =( 要素 単位への支払 ) 価格
ここで 要素への支払いについて 労働への支払い = 賃金 資本への支払い = 資本のレンタル費用 であることから 労働の限界生産力と賃金 資本の限界生産力から資本のレンタル費用との関係がわかる < 経済学上の利潤 > 経済学上の利潤 = 産出量 -(MPK K)-(MPL L) MPK: 資本の限界生産力限界生産力 MPL: 労働の限界生産力
これより 産出量 = 経済学上の利潤 +(MPK K)+(MPL L) が成立 では経済学上の利潤は? 規模に関して収穫一定の生産関数であれば 0 になる すなわち F(K,L)=(MPK K)+(MPL L) が成立する ( オイラーの定理より )
< オイラーの定理について > 関数 F( ) は k 次同次関数であり 次の恒等式が成立する F ( ) k tx, tx = t F( x x ), ここで両辺を t で微分すると ( tx, tx ) F t F = tx = F ( tx, tx ) ( tx ) F( tx, tx ) ( tx ) ( tx, tx ) F( tx, tx ) tx x t + + tx k ( x, x ) ここで t= k=( 次同次 ) とすると 次の式が成り立つ ( x, x ) F( x, x ) F tx tx x = t kt F ( x x ) x+ x = F, tx
現実で考えられる利潤は会計上の利潤 経済学上の利潤 +(MPK K) 資本に支払う分は資本の所有者に払われる 資本の所有者は企業であることがほとんどであるから 経済学上 と 会計上 の利潤概念の違いに 注意!
3. 国民所得と生産要素生産要素の分配 新古典派所得分配論 価格の調整によって需要と供給が一致する ( 古典派 ) という考え方をもとに 各生産要素の限界生産力 ( 要素価格 ) によって要素需要が決まる という考え方 < 要素価格 > 資本と労働の各要素に払う額 = 要素価格 資本の要素価格 = 資本の所有者が入手 労働の要素価格 = 労働者の稼ぐ賃金
要素価格は 要素の需給で決まる < 競争的企業の意思決定 > 競争的企業 = 価格は所与として行動する企業 生産要素や投入物の価格を所与とする 技術を一定として 設備や労働者の数を調整 利潤を最大化するように調整する < 要素量の調整は?> 生産要素の生産に対する効果は 逓減する どういうこと?
Y=F(X,X) とする (Y: 産出 X,X: 生産要素 技術は一定 ) X を一定 ( ) として X を調整する X 3 F ( X+, X ) F( X, X ) = 要素 の限界生産力 4 生産関数の形状から 要素 の限界生産力は徐々に小さくなる ( 逓減 ) ここで 次の 通りのパターンを考える
5-(ⅰ) 要素 を 単位増やして得られる追加収入が要素 追加分への支払いより多い もっと要素 を増やす = 生産を増やす 5-(ⅱ) 要素 を 単位増やして得られる追加収入が要素 追加分への支払いより少ない 要素 を減らす = 生産を減らす
(ⅰ)(ⅱ) より 要素 を 単位増やして得られる追加収入 ( 要素 の限界生産力 ) が 単位の要素 への支払いと等しくなるところで 生産要素の数が決まる! 利潤 = 収入 - 費用 = 価格 生産量 - 要素への支払いが成立ここで変化分 (Δ) を考えると Δ 利潤 =Δ 収入 -Δ 費用 = 価格 限界生産物 - 要素 単位への支払 =0 限界生産物 =( 要素 単位への支払 ) 価格
ここで 要素への支払いについて 労働への支払い = 賃金 資本への支払い = 資本のレンタル費用 であることから 労働の限界生産力と賃金 資本の限界生産力から資本のレンタル費用との関係がわかる < 経済学上の利潤 > 経済学上の利潤 = 産出量 -(MPK K)-(MPL L) それぞれの要素価格 MPK: 資本の限界生産力限界生産力 MPL: 労働の限界生産力
これより 産出量 = 経済学上の利潤 +(MPK K)+(MPL L) が成立 では経済学上の利潤は? 規模に関して収穫一定の生産関数であれば 0 になる すなわち F(K,L)=(MPK K)+(MPL L) が成立するから ( オイラーの定理より )
< オイラーの定理について > 関数 F( ) は k 次同次関数であり 次の恒等式が成立する F ( ) k tx, tx = t F( x x ), ここで両辺を t で微分すると ( tx, tx ) F t F = tx = F ( tx, tx ) ( tx ) F( tx, tx ) ( tx ) ( tx, tx ) F( tx, tx ) tx x t + + tx k ( x, x ) ここで t= k=( 次同次 ) とすると 次の式が成り立つ ( x, x ) F( x, x ) F tx tx x = t kt F ( x x ) x+ x = F, tx
現実で考えられる利潤は会計上の利潤 経済学上の利潤 +(MPK K) 資本に支払う分は資本の所有者に払われる 資本の所有者は企業であることがほとんどであるから 経済学上 と 会計上 の利潤概念の違いに 注意!
3.3 コブ ダグラス生産関数 国民所得 資本所得 労働所得が長期的にはほぼ同率で成長していることを発見 数学的にこれを満たす条件として 資本所得 =MPK K=αY 労働所得 =MPL L=(-α)Y ただし 0 α このような性質を満たす生産関数は Y = 発見者の名からコブ = ダグラス型生産関数 とよぶ α α F( K, L) = AK L
A は技術進歩をあらわす ( 一定とする ) Y = F α α ( K, L) = AK L の各限界生産力を計算すると MPK MPL = = α AK α α L = α Y K ( ) ( ) Y α AK α L α = α L 労働 資本の各平均生産力から 各要素所の満たすべき条件は満たされているか確認すること
3.4 財 サービス サービス需要需要の決定要因 < 消費 > 消費 (C) は 可処分所得 ( 所得 Y か租税 T を引いたもの ) の関数である C=C(Y-T) =MPC (Y-T) これを消費関数とよぶ 可処分所得にかかる係数 (MPC) を限界消費性向とよぶ もしこれが 0.3 ならば 可処分所得が 単位増えたとき 消費が 0.3 単位増える
< 投資 > 投資 (I) は 企業の消費とみなすことができる 投資財の需要量は 利子率に依存する ある投資計画から利潤を得るためには 投資収益が投資費用 ( 借入資金の支払い ) を上回る必要がある 利子率が上昇すると投資費用が増え 投資需要が減少 住宅投資でも同じ また 自己資金で投資をする場合も 利子率が高ければ 預金等で増やすほうがより多く稼げるため 投資を控える傾向にある
< 政府購入 > 政府の財 サービスの購入を行う= 政府購入 他には 社会保障支出など家計への移転も 家計への移転 = 負の租税 可処分所得を増やす 租税 - 移転支払 =T= 政府購入 (G) 均衡予算 実際にはGとTは一致しない G>T: 財政赤字 G<T: 財政黒字 しばらく政府購入と租税を外生とする 両者とも一定とする
3.5 財 サービス サービス需給需給を均衡均衡させるもの 3.4 節の内容をまとめると Y = C+ I+ G, C= C(Y - T), I= I(r) ここで Y = F(K,L) G = G,T= T ( ともに一定 ) および = Y ( 生産要素の量 産出量は一定 ) これらの式より Y = C(Y - T) + I(r) + G この中でr( 利子率 ) のみが未決定 利子率はどのようにして決まるのか?
< 金融市場の均衡 > Y - C - G= I の左辺は ( 国民 ) 貯蓄 右辺は投資 左辺の貯蓄 (S) はさらに次のように書きなおせる S = ( Y - T - C) + ( T G) 右辺第 項は民間貯蓄 第 項は公的貯蓄 図 3- より貯蓄は投資と一致しなくてはならない よって Y - C(Y - T) - G=S=I ( r)
貯蓄 投資と利子率の関係 実質利子率 貯蓄 S 均衡利子率 望ましい投資 I(r) S 投資 貯蓄 この場合 財は貸付資金 価格は利子率 貯蓄は投資家に貸すか 預金を経て貸出に使われる 貯蓄と投資の交点で利子率は決まる 30
< 財政政策の影響 > 実質利子率 新たな均衡利子率 S S 望ましい投資 I(r) 投資 貯蓄 政府購入が増えると 財 サービス需要が増加 生産要素 総生産量 可処分所得 消費は変わらない 投資が減少しないと帳尻が合わない その結果 均衡利子率は上昇する 3
< 投資需要の変化 > 実質利子率 S 新たな均衡利子率 I I 望ましい投資が I から I にシフトすると 貯蓄水準は固定されているので 投資量は変わらない その代わり均衡利子率は上昇する 投資 貯蓄 3
練習問題 消費および貯蓄も利子率に依存する場合はどうなるか? なお貯蓄関数は S=S( r) とする ただし 利子率が上昇すると貯蓄への報酬と借入のコストが増えるので 消費は減少し 貯蓄は増えるものとする
< 財政政策の変化 ( 政府購入の増加 )> 実質利子率 新たな均衡利子率 S S I 投資 貯蓄 政府支出が増えると国民貯蓄が減るので S から S にシフトする ( 同じ利子率でも貯蓄が減るから ) 投資関数は変化しないので 貯蓄が不足する 均衡利子率が上昇し それによって不足した貯蓄に見合った投資量が実現 投資量は減少 34
< 投資需要の変化 > 新たな均衡利子率 実質利子率 S I I 投資 貯蓄 投資需要が増えると 同じ利子率でもより多くの投資をするので 望ましい投資がIからIにシフト 貯蓄関数は変わらないので 同じ利子率では増えた投資需要に対応できない 均衡利子率が上昇し 貯蓄は増加し 投資量はそれに見合う量に調整される 結果として投資量は増える 35