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2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

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小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

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Ⅰ はじめに

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4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

[ 原著論文 ] メタボリックシンドローム該当者の年齢別要因比較 5 年間の健康診断結果より A cross primary factors comparative study of metabolic syndrome among the age. from health checkup resu

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

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保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

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Ⅳ 第 2 次計画の目標 : 第 2 次計画で新たに設定した項目 府民主体 府民と行政と団体 行政と団体 1 内 容 新 規 栄養バランス等に配慮した食生活を送っている府民の割合 2 朝食欠食率 第 1 次計画策定時 35 現状値 第 2 次計画目標 第 2 次基本計画目標 24% 15% 60%

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

私の食生活アセスメント

< 目次 > 1. 調査実施 1) 調査目的 2) 調査対象 3) 調査方法 4) 調査時期 2. 調査結果 ( 概略 ) 1) 調査実施数 2) 調査実施機関 3) 対象者の特性 4) 食習慣の実態 5) 考察 6) 参考文献 3. 資料 1) 調査データ ( 抜粋 ) 2)BDHQ( 簡易型自記

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

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(5) 食事指導食事指導は 高血圧の改善 耐糖能障害の改善 代謝異常の改善について 各自の栄養状況 意欲などに応じて目標をたて これを達成できるよう支援する形で行った 開始時点で 食事分析を行い 3ヶ月ごとに 2 回進捗状況を確認する面接を行った 1 年後に終了時点の食事分析を行った 各項目の値の増

女子高校生の生活習慣や健康に対する意識調査と発育状況 10 年前との比較検討 cm 160 a) 身長当校 全国平均 cm +1.5cm kg 54 b) 体重 当校 全国平均 kg -1.3kg 51

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

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ウ食事で摂る食材の種類別頻度野菜 きのこ 海藻 牛乳 乳製品 果物を摂る回数が大きく異なる 例えば 野菜を一週間に 14 回以上 (1 日に2 回以上 ) 摂る人の割合が 20 代で 32% 30 代で 31% 40 代で 38% であるのに対して 65 歳以上 75 歳未満では 60% 75 歳以

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log-transformed, and energy was adjusted using the method of residuals. With regard to the agreement between the estimates of the 2 estimators, the ra

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

結果の概要 1 栄養 食生活に関する状況 (1) 野菜の摂取状況 20 歳以上における 1 日の野菜摂取量の平均値は 288.1g 性別にみると男性 297.1g 女性 281.1g 年齢階級別にみると 男女ともに 40 歳代で最も少ない 図 1 野菜摂取量の平均値 (20 歳以上 性 年齢階級別

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3 睡眠時間について 平日の就寝時刻は学年が進むほど午後 1 時以降が多くなっていた ( 図 5) 中学生で は寝る時刻が遅くなり 睡眠時間が 7 時間未満の生徒が.7 であった ( 図 7) 図 5 平日の就寝時刻 ( 平成 1 年度 ) 図 中学生の就寝時刻の推移 図 7 1 日の睡眠時間 親子

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活実態と関連を図りながら重点的に指導していきたい また, 栄養教諭による給食献立の栄養バランスや食事によるエネルギー量を基盤として, グループごとに話合い活動を取り入れるなどの指導の工夫を行いたい また, 授業の導入にアイスブレイクや, カード式発想法を取り入れることにより, 生徒が本気で語ることが

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わりについての教育, 例えば,1 食料の生産 加工 流通, 安全な食品の選択と選択能力の獲得,2 生活環境や生活行動, 個人の健康意識, 心理的状態と食の状況などを考慮した上での個人や集団に合った食生活管理, などについて教育する 2 食育国民一人一人が, 生涯を通じた健全な食生活の実現, 食文化の

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Ⅵ ライフステージごとの取り組み 1 妊娠期 2 乳幼児期 (0~5 歳 ) 3 学童期 (6~12 歳 ) 4 思春期 (13~19 歳 ) 5 成年期 (20~39 歳 ) 6 壮年期 (40~64 歳 ) 7 高年期 (65 歳以上 ) ライフステージごとの取り組み ( 図 )

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調査の概要 本調査は 788 組合を対象に平成 24 年度の特定健診の 問診回答 (22 項目 ) の状況について前年度の比較から調査したものです 対象データの概要 ( 全体 ) 年度 被保険区分 加入者 ( 人 ) 健診対象者数 ( 人 ) 健診受診者数 ( 人 ) 健診受診率 (%) 評価対象者

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2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

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実践内容 (1) 視点 1 教育活動全体で推進できるよう 指導体制を整備し 食に関する指導の充実 を図る 1 食育全体計画の整備既存の食育全体計画を見直し 教科 学級活動における食に関する指導の時間を確保するとともに 栄養教諭とのティーム ティーティング ( 以下 TT) についても明記した また

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さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

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そこで 脳のエネルギー源として重要な糖質の摂取と集中力の関係を明らかにすることを目的に実験を行ったので 報告する なお 本研究は昭和女子大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した 1. 方法 (1) 被験者被験者は 都内のS 女子大に在籍する女子大生 35 人とした 健康で身体的な異常が認められず B

10 方法 平成 23 年度 4 月に某大学硬式野球部の1 年生 8 名を対象に調査を実施した 調査は写真法を用い て, 連続しない2 日間の食事写真および食事内容 をメールにて送付してもらった 写真に撮るもの は水以外の口にしたものすべてとし, 大きさの目 安として対象者の握りこぶしを一緒に写すよ

栄養管理報告書 ( 保育所 幼稚園等 ) 保健所長 殿 年 月分 施設名所在地管理者名電話番号 Ⅰ 施設種類 Ⅱ 食事区分別 1 日平均食数及び食材料費 Ⅲ 給食従事者数 1 幼稚園 2 保育所 ( 認可 ) 3 認定こども園 4 その他 ( 認証保育所等 ) 食数及び食材料費 施設側 ( 人 )

2 11. 脂肪 蓄 必 12. 競技 引退 食事 気 使 13. 日 練習内容 食事内容 量 気 使 14. 競技 目標 達成 多少身体 無理 食事 仕方 15. 摂取 16. 以外 摂取 17. 自身 一日 摂取 量 把握 18. 一般男性 ( 性. 一日 必要 摂取 把握 19. 既往歴 図

Powered by TCPDF ( Title 組織のスラック探索に関する包括的モデルの構築と実証研究 Sub Title On the comprehensive model of organizational slack search Author 三橋, 平 (M

山陽学園短期大学紀要第 40 巻 (2009) 少ない そこで 本研究では 料理レベル でとらえる食事バランスガイド 19) を活用し 栄養士養成 課程における学生の食事バランスの実態と在籍中の食事バランスの変化を観察し 献立作成に対する意 識との関連について明らかにすることを目的とした 研究方法

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岩手医科大学医学部及び附属病院における人を対象とする医学系研究に係るモニタリング及び監査の実施に関する標準業務手順書 岩手医科大学医学部及び附属病院における 人を対象とする医学系研究に係る モニタリング及び監査の実施に関する標準業務手順書 岩手医科大学 第 1.0 版平成 29 年 10 月 1 日

小林真琴 小林良清 おり 3) 保健衛生指標のみならず食生活にも特徴があることがうかがえる 国民健康 栄養調査は全国を対象に実施している調査で国民全体の状況把握が目的のため 各都道府県別の状況を把握できる調査設計にはなっていない そのため 平成 24 年国民健康 栄養調査結果の概要において都道府県別

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第 3 部食生活の状況 1 食塩食塩摂取量については 成人男性では平均 11.6g 成人女性では平均 10.1gとなっており 全国と比較すると大きな差は見られない状況にあります 図 15 食塩摂取量 ( 成人 1 日当たり ) g 男性

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資料 3 全国精神保健福祉センター長会による自殺予防総合対策センターの業務のあり方に関するアンケート調査の結果全国精神保健福祉センター長会会長田邊等 全国精神保健福祉センター長会は 自殺予防総合対策センターの業務の在り方に関する検討チームにて 参考資料として使用されることを目的として 研修 講演 講

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第 4 章 地域における食育の推進 1 栄養バランスに優れた 日本型食生活 の実践 ごはんを中心に 魚 肉 牛乳 乳製品 野菜 海藻 豆類 果物 茶など多様な副食などを組み合わせて食べる 日本型食生活 は 健康的で栄養バランスにも優れている 農林水産省では 日本型食生活 の実践等を促進するため 消費

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

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表 5-1 機器 設備 説明変数のカテゴリースコア, 偏相関係数, 判別的中率 属性 カテゴリー カテゴリースコア レンジ 偏相関係数 性別 女性 男性 ~20 歳台 歳台 年齢 40 歳台

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五訂増補日本食品標準成分表(本表) 肉類

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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 5 月 1 日現在 研究種目 : 基盤研究 (C) 研究期間 : 平成 19 年度 ~ 平成 20 年度課題番号 :19500693 研究課題名 ( 和文 ) 家庭連携型食育モデルの効果の科学的評価 研究課題名 ( 英文 )CLUSTER RANDOMIZED CONTROLLED FOR A NEW DIETARY EDUCATION PROGRAM WITH HOME PRACTICE 研究代表者渡辺満利子 (WATANABE MARIKO) 昭和女子大学 生活機構研究科 教授研究者番号 : 20175128 研究成果の概要 : 本研究は食育モデルの科学的評価を目的として 青尐年のための食物摂取頻度調査票の妥当性と再現性を検討し FFQW82 青尐年版 を確定した 青尐年の食育における重要課題を分析し 適正エネルギー 栄養素摂取 三食適正摂取 特に朝食摂取にフォーカスした 新食育法 を策定した 新食育法の効果をクラスター無作為化比較試験 (RCT) に基づく家庭連携型食育モデルの効果の科学的評価を行い 青尐年のための効果的食育モデルの構築に寄与する意義ある成果が得られた 交付額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 平成 19 年度 2,000,000 円 600,000 円 2,600,000 円 平成 20 年度 1,500,000 円 450,000 円 1,950,000 円 総計 3,500,000 円 1,050,000 円 4,550 000 円 研究分野 : 総合領域科研費の分科 細目 : 生活科学 食生活学キーワード :1 食育 2 評価 3 クラスター無作為化比較試験 4FFQW82 5 女子中学生 1. 研究開始当初の背景近年 青尐年の食に関する問題点は 高コレステロール血症者等の生活習慣病の若年化 ( 日本学校保健会,2002) 肥満および痩せ傾向の増大 ( 文部科学省,2003) 中学生の脂肪エネルギー比は上限値 30% に接近し 朝食欠食 ( 週 2~3 回の欠食 ) は約 20%( 厚生労働省,2003) などの不健全な食生活による人間力の減退と混乱が深刻化している 今や食育は国民的課題であり 食育基本法が制定された 基本的な施策として 学校 家庭 地域における効果的食育法の確立が必要である 著者らは科学研究費補助金基盤研究 (C)H17-18 年度代表渡辺満利子 ) により 特に食行動 食習慣で問題の大きいと考えられた女子中高生に焦点をあて実態調査を行い 食育の上での重要課題を検討してきた その結果 家庭連携型食育が必要不可欠であ り 大きな意義があると考えられた 食育推進には 科学的根拠に基づいて適切に評価された食育法に則って食教育を推進していくことが重要である そのための評価方法として無作為化比較試験 (RCT) による評価は信頼性が高いとされている 欧米では 学校での食育効果を RCT に基づく James ら (2004) の肥満予防のための食育効果を 肥満予防対策のための糖分飲料水摂取の減尐効果という観点で検討した RCT 研究 Sallis ら (2003) の食行動と運動の効果に関する報告 Kanashiro ら (2000) の思春期女子を対象にした貧血予防のための食事介入での鉄摂取増加について検討した地域での食育の評価研究などが報告されている 一方 わが国では 食育法の評価を RCT 研究により検討したものは殆どなく 欧米諸国に遅れをとっている 本研究で提案する 学校における生徒対 1

象の食育カリキュラムを家庭での保護者にも同時に実施し その効果を科学的に評価するという 家庭連携型食育 効果に関する RCT 研究は国内外において その重要性にもかかわらず未だなされていない 食育問題への対処のためには 現状を科学的 操作的に評価することにより問題点を明らかにし 効果的食育法を確立すること不可欠である 申請者らが基盤研究により行ってきた 女子中学生とその母親を対象に家庭での食生活 食習慣の実態調査を行い食育の上での重要課題を検討し その特徴として中高生の食育へのアプローチには 食行動に加えて ダイエット意識や自己の体型認識などの年代や特性に応じた取り組みが必要であることが示唆された そして家庭の影響も尐なくなく 食の自立期として重要な中学生 高校生のための健康的な食行動への変容は 学校食育を具体的に家庭での実践を促す家庭連携型食育が必要不可欠と考えられた そこで 新食育プログラムは家庭連携型新食育法のカリキュラムを構築し RCT に基づく新食育プログラム効果の評価が肝要と考え 本申請での研究を発展させたいと考える 2. 研究の目的 (1) 女子中学生の食事評価のための食物摂取頻度調査票 (FFQW82) の妥当性と再現性の検討 (2) 都市部女子中学生を対象として クラスター無作為化比較試験に基づく食事改善のための新食育効果の評価 3. 研究の方法 (1) 方法 :FFQW82( 図 1 参照 ) の妥当性の検討は 1 週間の秤量調査を gold standard とし, 秤量調査期間を含む第 2 回の頻度調査結果から算定した推定摂取量との相関により検討した. 一方 再現性の検討は FFQW82 の第 1 回および第 2 回の調査結果から算定した推定摂取量間の相関により検討した. 調査開始時 (2007 年 4 月 ) に FFQW82 に基づく過去 1 ヶ月間の頻度調査を実施し, その直後から 7 日間の秤量調査を行い さらに調査開始後 1 ヶ月後に第 2 回の頻度調査を実施した. 解析対象は女子中学生 63 名 ( 12~13 歳 ) である.FFQW82 は一日合計および朝食, 昼食, 夕食での推定摂取量一日合計を,12 食品グループ, エネルギーおよび 9 栄養素について検討した. なお, データはすべて対数変換したうえでピアソン積率相関係数を求めた. (2) クラスター無作為化比較試験の研究の流れを図 2 に示す 概要は以下のとおりである 1 研究デザイン : 新食育法 ( 介入 ) と従来法に基づく教育 ( 非介入 ) という 2 種類の食 育法の評価を クラスター無作為化比較試験に基づいて行う介入研究である 2 評価指標 : 主要評価指標は 研究開始 6 ヶ月後のエネルギー摂取量 副次的指標は栄養素摂取量 BMI 肥満度 3 研究仮説 :FFQW82 の回答結果に対応した新食育は 従来型教育に比べて 6 カ月後のエネルギー摂取量が食事摂取基準の推定エネルギー必要量との差の絶対値が 150kcal 以内になるとした 4 研究対象 : 研究対象は 都内の某女子中高一貫教育校の女子中学生 1 年生 6 クラス 同 2 年生 6 クラス 合計 12 クラスである ( 介入群 6 クラス n=237 非介入群 6 クラス n=238 合計 n=475 年齢 12-13 歳 ) 5 目標対象数および設定根拠 : 対象者は 本研究の仮説を両側有意水準 5% 検出力 80% 1 クラス 37 名としてクラスター割付は介入群 6 クラス 非介入群 6 クラスと設定した 設定根拠は 対象のエネルギー平均摂取量が 1850Kcal から 150kcal 上昇し 標準偏差値は 400kcal クラス内相関は 0.02 程度とした 6 解析対象 : 割付を行った介入群 6 クラス (n=237) 非介入群 6 クラス (n=238) 合計 12 クラス (n=475) のうち 解析対象は 6 ヵ月後の調査結果の得られた介入群 6 クラス (n=228) 非介入群 6 クラス (n=234) 合計 12 クラス (n=459) である ITT に基づく評価を行った 7 実施期間 :2007 年 9 月に介入開始前調査を行い 介入期間を 6 ヵ月とし 10 月から 2008 年 3 月まで実施 介入終了時に介入後調査を行った 8 調査内容および調査方法調査内容は 1FFQW82 青尐年版調査票に基づく 82 項目の食物摂取頻度調査 243 項目の食生活調査票に基づくアンケート調査である 調査方法は 各調査票の記入方法を説明し 自記式で回答を受け その場で調査票を回収した 未記入部分に関しては対象者に聞き取りを行い補完した 3 身長 体重測定値調査は養護教諭が測定し測定値を受けた これらの 1~3 に関する調査は 食育介入開始前調査を 2007 年 9 月に実施し その後 6 ヵ月間の食育終了後の 2008 年 3 月に同様の調査を実施した 9 カリキュラム新食育法におけるカリキュラムは これまでの事前調査 ( 渡辺ら 2007) に基づき学習目標を掲げ 女子中学生の食事改善のための学校での学習内容と教材 及び家庭学習法の 4 項目について 具体的に企画した 新食育法は家庭連携型食育方式とし 保護者会で食育の目的 具体的方法を説明し 同意を得た生徒および保護者を対象として食育を実施した 食育の要点は以下の通りである 1. 自分のからだ 食事の科学的見方 2

2. 朝食 各食事のエネルギー適正摂取 3. 朝食 弁当の事前準備と摂取法 4. 食事改善のための食品と基本調理 5. 適正体重維持 生活習慣病予防法介入方法は 介入期間 6 ヵ月間に毎月 2 回 計 12 回の講義および実習も含む食育を実施し 計 12 回 (50 分 /1 回 ) の食育をシラバスに基づき介入を実施した 従来法は 保健および家庭科の授業時での一般的な講義 ( これは介入群も共通 ) のみを実施した 新食育法実施にあたり 平成 19 年 9 月初旬に介入群 非介入群の全対象に対し 栄養アセスメントのための介入前食事調査 (FFQW82 青尐年版 ) 等を実施し この分析結果はフィードバックシートとして 結果報告書をもって全対象に報告するよう図った 平成 19 年 9 月中旬に介入群全員を対象に新食育法に基づく介入を開始し その後 6 ヵ月間の介入期間に計 12 回 (50 分 /1 回 ) の食育を行い 平成 20 年 2 月下旬に介入を終了し 介入後調査を行い新食育法の介入効果の評価が行えるよう図った 10 クラスター割付法 :1 年生 6 クラスを無作為に介入群 非介入群に割付け 2 年生 6 クラスを同様に割り付けた 11 解析方法 : 介入効果の分析方法は 12 クラ ス全体で各変数のデータ分布を確かめ 必要な場合には 下記のように対数変換等をしてそのデータの分布を確認した 必要な変換をしたのち 12 クラス単位で 介入前と介入後の差の平均値と標準偏差値を算出する 12 生データおよび対数変換データについて クラス単位での介入前後の平均値の介入群および (n=6) と非介入群 (n=6) の差の平均の検定を下記のとおり行った a. 要約統計量 : 両群クラス単位での栄養素の変化 ( 生データ及び対数変換値 ) b.2 群の平均値の差の検定 : 各クラスの平均値をデータとして t 検定 (MODEL0) c. 線形混合モデルによる介入効果の検定 (MODEL1) d. ベースライン調整を線形混合モデルにより検討 (MODEL2) (3) 対象の個人情報保護 人権保護本大学倫理委員会の承認を受けて 倫理委員会規定 を遵守した 保護者と生徒を対象に 調査の目的や内容を説明し 調査に参加しなくても不利益が生じないことなどを伝えた インフォームドコンセントは 調査の前に保護者に調査依頼説明文を送付し 同意書に確認の書名という形式で行った ( 同承認番号 07-09 2007) 図 1 FFQW82 の一部 3

T.1 Validity and reproducibility of FFQ by nutrients Nutrients Validity 1) Reproducibility 2) Energy adjusted Energy (kcal) - 0.62 Protein (g) 0.53 0.62 Fat (g) 0.42 0.46 Carbohydrate (g) 0.28 0.69 Iron (mg) 0.31 0.63 Calcium (mg) 0.49 0.76 Magnesium (mg) 0.42 0.70 Potassium (g) 0.53 0.73 Dietary fiber (g) 0.45 0.74 Salt (g) 0.38 0.58 図 2 介入研究の流れ 4. 研究成果妥当性に関しては 1 日当たり総エネルギー摂取量のピアソン積率相関係数は 0.31 であり 主要栄養素ではエネルギー調整ピアソン積率相関係数は 0.53( たんぱく質 ) 0.42( 脂質 ) 0.28( 炭水化物 ) であった 微量栄養素では 0.53( カリウム ) から 0.31( 鉄 ) の範囲内にあった 各食事別エネルギー摂取量に関しては 朝食のエネルギー摂取量のピアソン積率相関係数は 0.59 であり FFQW82 と秤量調査から求めた実際の値との相違は小さかった ( 差は 34kcal 差の割合 10%) 昼食 夕食 一日量の相関は それぞれ 0.40( 差は 75kcal 15%) 0.32( 差は 65kcal 10%) であった 再現性は 1 ヶ月後に回答の得られた 60 名を対象にした検討の結果 1 日当たり総エネルギー摂取量のピアソン積率相関係数は 0.62 であり 主要栄養素ではエネルギー調整ピアソン積率相関係数は 0.62( たんぱく質 ) 0.46( 脂質 ) 0.69( 炭水化物 ) であった 微量栄養素では 0.76( カルシウム ) から 0.63( 鉄 ) の範囲内にあった (T.1) 1) Pearson correlation of estimated energy from the second FFQ and actual energy from dietary record 2) Pearson correlation of estimated energy from the second FFQ and estimated energy from the first FFQ 本研究では FFQW82( 食物摂取頻度調査票 FFQW65 の再考版 ) の女子中学生を対象とした妥当性と再現性の検討し 女子中学生の食事評価に有用となるエネルギー及び栄養素摂取量について 食事別に指導前後での効果の大きさなどの相対的評価に利用可能と考える 食育において信頼性が高く 簡便な FFQW82 調査票による個人や集団の食事摂取状況の把握と その問題点を的確に捉えた科学的根拠に基づく 発達段階に応じた的確な栄養教育における具体的な動機付けは重要な課題であり FFQW82 の利用は栄養教育の効果的な推進に資すると期待される クラスター無作為化比較試験では エネルギー及び栄養素摂取量は全体的に低下傾向を示すクラスが多かった しかし 介入群は非介入群に比べその低下傾向は朝食及び夕食 1 日エネルギー摂取量において小さかった ( 朝食 p<0.10 夕食 p<0.05) 栄養素摂取量に関しても カルシウム マグネシウム 食物繊維などで 介入群は非介入群に比べて摂取量の低下が小さい傾向がみられた 一方 昼食は両群間で有意差は認められなかった 以上の結果から 4

家庭連携型新食育法の効果がその大きさはちいさいものの 特に朝食 夕食で出てきた可能性が考えられた EBN に基づき食育プログラムの効果をクラスター無作為化比較試験に基づき検討することは 教育現場などでのクラスごとに実施する食育による食生活改善のための評価には有用な方法であると考える 5. 主な発表論文等 雑誌論文 ( 計 5 件 ) 1 塩原明世 渡辺満利子. メタボリックシンドロームの栄養教育のための年齢 BMI 別リスク要因の解析. 昭和女子大学大学院生活機構研究科紀要, 19, 25-38, 2009. 有 2 嵐雅子 渡辺満利子. ベジタリアンダイエットに関する研究 - 某病院職員の食物摂取状況と臨床データとの関連性. 昭和女子大学大学院生活機構研究科紀要,19,39-50, 2009. 有 3 横塚昌子 渡辺満利子 他 9 名 : 地方都市と大都市における女子生徒の食育課題検出のための研究. 昭和女子大学生活科学紀要 学苑 818, 1-8, 2008. 有 4 橋本夕紀恵 渡辺満利子 他 8 名 : 地方都市中学生における食育課題の男子 女子間の比較検討. 昭和女子大学生活科学紀要, 学苑 818, 9-16, 2008. 有 5 渡辺満利子 横塚昌子 他 9 名 : 都市部女子中高生の食育課題の検討 - 食意識 食行動 食環境 食事調査分析結果 -. 昭和女子大学生活科学紀要 学苑 806, 1-8, 2007. 有 学会発表 ( 計 8 件 ) 1 渡辺満利子 : 青尐年の食生活改善のための食育効果の評価 - 都市部女子中学生を対象としたクラスター無作為化比較試験. 2009,01,23, 金沢 2Mariko Watanabe:Validity and Reproducibility of Semi-Quantitative Food Frequency Questionnaire with 82 food lists (FFQW82): for Assessing Habitual Diet in Adults. 15th International Congress of Dietetics, 2008,09,09,Yokohama Japan 3 Mariko Watanabe:Validity and Reproducibility of Semi-Quantitative Food Frequency Questionnaire with 82 food lists (FFQW82): for Assessing Habitual Diet in Adults.15th International Congress of Dietetics,2008,09,09, Yokohama Japan 4 渡辺満利子 : 都市部女子中学生における無作為化比較試験に基づく食育効果の評価. 2008,09,07, 鎌倉 5 渡辺満利子 : 家庭における親子間の食事摂取に関する検討. 2008,09,07, 鎌倉 6 渡辺満利子 : 女子中学生の習慣的食事摂取量の評価 食物摂取頻度調査票 ( FFQW82 ) の妥当性と再現性. 2008,09,05, 東京 7 渡辺満利子 : 女子学生の食生活の現状評価と効果的栄養教育への取り組み. 2008,05,20, 静岡 8 Mariko Watanabe : "Relationships between Dietary Intakes and Eating Behavior in Japanese Urban Adolescents.10th Asian Congress of Nutrition, Singapole, 2007,08,04, 図書 ( 計 1 件 ) 渡辺満利子 保坂隆 大野誠 勝村俊仁 柳沢厚生 : 健康増進アドバイザー入門 - 正しい生活習慣のための理論とコーチング. 担当部分 : 第 2 章栄養と食生活, 43~ 97 頁, ピュアスピリッツ, 2007 6. 研究組織 (1) 研究代表者渡辺満利子 (WATANABE MARIKO) 昭和女子大学 生活機構研究科 教授研究者番号 :20175128 (2) 連携協力者山岡和枝 (YAMAOKA KAZUE) 国立保健医療科学院 技術評価部 室長研究者番号 :50091038 丹後俊郎 (TANGO TOSHIRO) 国立保健医療科学院 技術評価部 部長研究者番号 :70124477 横塚昌子 (YOKOTSUKA MASAKO) 昭和女子大学短期大学部 食物科学科准教授研究者番号 : 10153264 5