指導医からの質問 ICU でのカテーテル感染はどれくらいある? カテーテル感染の診断方法は? カテーテル感染を疑ったら カテーテルを抜去しなければいけない? カテーテル感染を疑って交換をする際 ガイドワイヤーで交換してもいいのでは? ICU でカテーテル感染は存在するのか?

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それでは具体的なカテーテル感染予防対策について説明します CVC 挿入時の感染対策 (1)CVC 挿入経路まずはどこからカテーテルを挿入すべきか です 感染率を考慮した場合 鎖骨下穿刺法が推奨されています 内頚静脈穿刺や大腿静脈穿刺に比べて カテーテル感染の発生頻度が低いことが証明されています ただ

164 SDD & SOD SDD E100 mg 80 mg B500 mg 2 E 2 B 48 /59 81 SDD SOD 10 /63 16 RCT RCT 1992 Gastinne 15 ICU 445 SDD E100 mg 80 mg B 10

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Ⅶ. カテーテル関連血流感染対策血管カテーテルに関連して発生する血流感染であるカテーテル関連血流感染は 重要な医療関連感染の一つである 他の感染巣からの 2 次的な血流感染は除外される 表 1 カテーテル関連血流感染における微生物の侵入経路侵入経路侵入機序カテーテル挿入部の汚染挿入時の微生物の押し込

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Transcription:

中心静脈カテーテル 関連血流感染症 Central Line Associated Bloodstream Infection (CLABSI) ICU に CLABSI は存在するか? 慈恵 ICU 勉強会 2013 年 10 月 22 日 上野恵子

指導医からの質問 ICU でのカテーテル感染はどれくらいある? カテーテル感染の診断方法は? カテーテル感染を疑ったら カテーテルを抜去しなければいけない? カテーテル感染を疑って交換をする際 ガイドワイヤーで交換してもいいのでは? ICU でカテーテル感染は存在するのか?

本日の内容 はじめに :CLABSI の定義 疫学 発生率など CLABSI の予防 :Keystone ICU Project 挿入部位 消毒薬 CLABSI の対処 : ガイドワイヤーでの交換 ICU に CLABSI は存在するか?

カテーテル感染症 u 正式には カテーテル関連血流感染症 Catheter-related bloodstream infection(crbsi) 末梢静脈ライン 動脈カテーテルも含む 本日は 中心静脈カテーテル関連血流感染症 (Central line associated bloodstream infection: CLABSI) についてお話します

発生機序

定義 CDC/NHSN (Centers for Disease Control and Prevention/ National Healthcare Safety Network) による 定義が一般的に用いられる BSI- BLOODSTREAM INFECTION LCBI-Laboratory-confirmed bloodstream infection CDC/NHSN surveillance definition of health care-associated infection and criteria for specific types of infections in the acute care settings. Am J Infect Control 2008;36:309-32.

基準 1 1 回もしくは複数回の血液培養から病原体が確認されるさらに血液から培養された微生物は他の部位の感染に関係がない 基準 2 以下の症状や徴候が少なくとも 1 つある : 発熱 (>38 ) 悪寒戦慄 低血圧さらに徴候や症状そして陽性の臨床検査結果が他の部位の感染に関係がないさらに以下の少なくとも 1 つにあてはまる : 一般の皮膚汚染菌 ( 類ジフテリア バシラス属 Propionibacterium 属 CNS ビリダンス群溶連菌 ミクロコッカス属 ) が別々の機会に採取された 2 回以上の血液培養検体から培養される

微生物学的診断 1) カテーテル先端の培養 ( 定量 or 半定量 ) の検出菌 = 末梢静脈血からの検出菌 2) カテーテル採血培養が末梢静脈血培養よりも 2 時間以上早く陽性になる (Differen-al -me to posi-vity) 3) カテーテル採血培養 : 末梢静脈血培養 5:1 4) カテーテル挿入部中心静脈血の定量培養 ( 一般細菌 : 100CFU/ml, 真菌 : 25CFU/ml)

診断方法はどれがよいか? A Randomized and Prospective Study of 3 Procedures for the Diagnosis of Catheter-Related Bloodstream Infection without Catheter Withdrawal Bouza E, Alvarado N, Alcala L, et al. Clin Infect Dis 2007;44:820-826 Design: 単施設前向き研究 Methods: 2002 年 9 月 ~2005 年 9 月にスペインの ICU にて 48 時間以上 CV が挿入されており 敗血症が疑われている 204 症例が対象 ( ただし好中球減少症や血液疾患を有する患者を除く ) CLABSI を診断するために 3 つの培養方法を比較

28 例が CLABSI と診断 ( カテ先培養にて確定 ) 皮膚 ハブからの培養 定量的血液培養 DTP コスト 簡易性 汎用性を考慮すると スクリーニングとして皮膚 ハブからの培養と末梢血培養を用いる 確定診断には定量的血液培養か

血液培養は 1 つのルーメンからだけ採取すればいい? How Many Lumens Should Be Cultured in the Conservative Diagnosis of Catheter-Related Bloodstream Infections? Guembe M, Rodoriguez-Creixums M, Sanchez-Carrillo C, et al Clin Infect Dis 2010 15;50:1575-9 Design: 後ろ向き観察研究 Methods: 2003 年 1 月 ~2009 年 5 月に CLABSI と診断された 320 例のうち ダブル トリプルルーメンカテーテルが挿入されており すべてのルーメンから血液培養を採取した 171 症例を検討

すべてのルーメンから血液培養を採取しないと CLABSI を見逃す割合は ダブルルーメンで 27.2% (100-72.8) トリプルルーメンで 37.3% (100-62.7) CLABSI 発生率

血液培養は 1 つのルーメンからだけ採取すればいい? Which lumen is the source of catheter-related bloodstream infection in patients with multi-lumen central venous catheters? Krause R, Valentin T, Salzer H, et al Infection 2013:41;49 52 Design: 前向き研究 Methods: 幹細胞移植を受け ダブル トリプルルーメンカテーテルが挿入された 44 名の患者を 10 か月間追跡 そのうち 12 名が CLABSI を発症 (CLABSI の診断は臨床症状 +DTP)

Lumen A からは中心静脈栄養 輸血が投与されていた Lumen B からは輸液 抗生物質が投与されていた リスクのあるルーメンから血液培養を採取してもよいかも 理想的には診断を疑ったら すべてのルーメンから血液培養を採取するのがよいか

発生率 u Incidence density = カテーテル留置日数当たりのCLABSI 発生数 ( 通常 1,000カテーテル日数あたり ) 調査期間中の CLABSI 発生数挿入された中心静脈カテーテルの総留置日数 X1000 1 カテーテル当たりの留置日数と CLABSI が関連するため

本邦での発生率 2009 年 7 月 ~2010 年 9 月 国公立大学附属病院感染対策協議会データより抜粋 (http://kansen.med.nagoya-u.ac.jp/general/general.html)

本邦 米国での発生率 日本環境感染症学会 JHAIS(Japanese Healthcare Associated Infections Surveillance) 委員会 医療器具関連感染サーベイランス http://www.kankyokansen.org/modules/iinkai

慈恵 ICU における CLABSI 発生率 CLABSI 件数 CV 挿入患者数 CLABSI 発生率 (1,000 device days) 2010 年 2 835 N/A 2011 年 1 771 0.38 2012 年 2 699 0.88 感染制御部美島師長さんより提供

慈恵 ICU における CLABSI 内訳 2010 年 挿入部位挿入ライン 内頚 CV 内頚 CV 2011 年内頚 CV 2012 年 内頚 CV 大腿ショルドン 挿入日数 ( 日 ) 挿入場所 29 OR 26 ICU 12 ICU 12 ICU 12 ICU * 検出菌疾患 MRSA MRSA Candida sp. MRSA MSSA 肺動脈閉鎖症 AML MRSA 肺炎 RA PCP 疑い AML 肺炎 * 血液培養とカテ先培養からの検出菌を指す ただし 2011 年の 1 例は カテ先培養陰性

死亡率 The United States' progress toward eliminating catheter-related bloodstream infections: Incidence, mortality, and hospital length of stay from 1996 to 2008. 2013 Am J Infect Control 41:118-121.

経済的損失 CLABSI1 件あたり $45.814( 約 450 万円 ) のコスト!

経済的損失 1 年間 (2009 年度 ) で CLABSI に要した費用を試算 $1.8billion ( 約 1.8 兆円 )!! Health Care-Associated Infections: A Meta-analysis of Costs and Financial Impact on the US Health Care System 2013 JAMA Intern Med doi: 10.1001/jamainternmed.2013.9763.

本日の内容 はじめに :CLABSI の定義 疫学 発生率など CLABSI の予防 :Keystone ICU Project 挿入部位 消毒薬 CLABSI の対処 : ガイドワイヤーでの交換 ICU に CLABSI は存在するか?

米国での CLABSI ガイドライン u Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-related Infections (2011 年 ) 集中治療医学会 (SCCM) が主導し 米国感染症学会 (ISDA) 米国疾病対策センター (CDC) の医療感染対策実施諮問委員会 (HICPAC) など 14 の団体と共に作成 Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-related Infections. Clin Infect Dis 2011;52(9):e162-193

米国での CLABSI ガイドライン 重点分野 1) カテーテルの挿入 維持管理を行う医療従事者の教育 訓練 2) 中心静脈カテーテル挿入時のマキシマル バリアプリコーションの使用 3) 皮膚消毒のための >0.5% クロルヘキシジンアルコール製剤の使用 4) 感染予防策としての中心静脈カテーテルのルーチン交換の回避 Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-related Infections. Clin Infect Dis 2011;52(9):e162-193

米国での CLABSI ガイドライン 重点分野 5) 上記 1)~4) 項目の徹底にもかかわらず感染率が低下しない場合の抗菌物質 / 抗菌薬含浸の短期中心静脈カテーテル クロルヘキシジン含浸のスポンジドレッシングの使用 6) バンドル戦略による業務改善 7) 医療の質の保証と業務改善のベンチマークとして バンドルの全構成要素の遵守率の記録 報告 ( サーベイランス ) Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-related Infections. Clin Infect Dis 2011;52(9):e162-193.

本邦での CLABSI 予防ガイドライン u 国立大学医学部付属病院感染対策協議会病院感染対策ガイドライン ( 第 3 版 ) 平成 15 年初版 平成 24 年第 3 版発行 u 医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き ( 案 )ver. 5.0 平成 18 年初版発行

予防と言えば Keystone ICU Project MHA(Michigan Health & Hospital Association) が主体となり 2003 年 10 月に開始された ICU での医療の安全と質を向上させる取り組み

Keystone ICU Project: 先行研究 Eliminating catheter-related bloodstream infections in intensive care unit Berenholtz S, Pronovost P, Lipsett P, et al Crit Care Med 2004; 32:2014-2020 Design: 単施設前向きコホート研究 Methods: 米国の SICU で 1998 年 1 月 ~2002 年 12 月に 5 つの介入を段階的に実施介入群 ;22,785 患者日数 19,905 カテーテル日数コントロール群 ;21,964 患者日数 17,383 カテーテル日数 Primary outcome: 3 か月ごとの CLABSI 発生率

1 医師に感染予防実施策を教育 (1999 年 3 月 ~) 2 CV カートの作成 (1999 年 6 月 ~) 3 日々の回診時にカテーテル抜去を検討 (2001 年 6 月 ~) 4 5 挿入時看護師がチェックリストを記入 (2001 年 11 月 ~) チェックリストに従わない場合 緊急時を除き看護師の権限で手技を中断 (2001 年 12 月 ~

Checklist

CLABSI 発生率 (/1,000 catheter days) 1998 年 1 月 ~3 月 2002 年 10 月 ~12 月 介入群 11.3 0 コントロール群 5.7 1.6 研究期間終了後 9 か月間も CLABSI 発生率は 0 だった 結果に基づいて概算すると 年間 43 件の CLABSI 8 名の死亡を予防 $1,945,922 の費用を削減できる!

Keystone ICU Project An Intervention to Decrease Catheter-Related Bloodstream Infections in the ICU Pronovost P, Needham D, Berenholtz S, et al N Engl J Med 2006;355:2725-32 Design: 多施設コホート研究 Methods: 米国ミシガン州にある 108 の ICU( 全体の 85%) が参加 2004 年 3 月より 5 つの介入を実施し 18 か月間追跡計 1,981 ICU 月数 375,757 カテーテル日数 Primary outcome: 3 か月ごとの CLABSI 発生率

5 つの介入 1 挿入手技前の手洗い励行 2 中心静脈カテーテル挿入中におけるマキシマム バリアプレコーションの励行 3 挿入部のクロルヘキシジンでの消毒 4 大腿静脈挿入の回避 5 不必要なカテーテルの抜去 ライン挿入時にチェックリストを用いて手技を確認 実施されなかった場合は 緊急時を除き看護師の権限により手技を中断できる

Maximal Barrier Precaution マスク キャップ 滅菌ガウン 滅菌手袋 大きな滅菌ドレープ

CLABSI 発生率中央値介入前 2.7 介入 3 か月後 0(zero) 介入後 18 か月間 0 のまま継続

CLABSI 罹患比率 ; 介入当初 0.62 最終 3 か月間 0.34

CUSP (Comprehensive Unit-based Safety Program) 2008 年より米国政府の AHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality; 医療品質研究調査機構 ) が推進する医療従事者のチームワークが患者に安全な医療を提供しようとする取り組み http;//www.ahrq.gov/ cusptoolkit/

ミシガン州での CLABSI 発生率 Keystone ICU Project 開始

Dr. Peter Pronovost Professor, Departments of Anesthesiology/Critical Care Medicine and Surgery, The Johns Hopkins University School of Medicine Time magazines 100 most influential people in 2008 `Dr.Checklist`

予防が大切!

カテーテル挿入時 大腿静脈を避ける Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-related Infections (2011 年 ) 成人患者では中心静脈アクセスに大腿静脈の使用を避ける ( カテゴリー IA) 国立大学医学部付属病院感染対策協議会病院感染対策ガイドライン ( 第 3 版 ) カテーテル挿入部位は鎖骨下静脈を第一選択とする (AII)

大腿静脈にカテーテルを挿入したらだめか? The risk of catheter-related bloodstream infection with femoral venous catheters as compared to subclavian and internal jugular venous catheters: A systematic review of the literature and metaanalysis Marik P, Flemmer M, Harrison W Crit Care Med 2012;40:2479-2485 Design: システマティクレビュー Data: 2 つの RCT( カテーテル数 1006 本 ) 8 のコホート研究 ( カテーテル数 16,370 本 ) 内頚 鎖骨下静脈と比較し大腿静脈に留置した場合の CLABSI リスクを検討

大腿静脈 vs 鎖骨下静脈 CLABSI 発生率に有意差なし 大腿静脈 vs 内頚静脈 内頚静脈の方が CLABSI 発生率が低い ただし statistical outlier である 2 つの文献を除くと CLABSI 発生率に有意差はない (RR 1.35, CI 0.84-2.19, p=0.2)

Sta-s-cal outlier( 統計的外れ値 : 他の値から大きく外れたもの ) Lorente (2005) 2000 年 5 月 ~2003 年 4 月実施 Central venous catheter-related infection in a prospective and observational study of 2,595 catheters. Crit Care 2005;9:R631-5 Nagashima(2006)2004 年 10 月 ~2005 年 9 月実施 To reduce catheter-related bloodstream infections: is the subclavian route better than the jugular route for central venous catheterization? J Infect Chemother. 2006;126:363-5 上記 2 件のコホート研究では大腿静脈 内頚 静脈の CLABSI 発生数が 他の文献と比べ高い 比較的古い年代のものだから?

大腿静脈にカテーテルを挿入したらだめか? Central venous access sites for the prevention of venous thrombosis, stenosis and infection Ge X, Cavallazzi R, Li C, et al Cochrane Database Syst Rev 2012;3:CD004084 短期カテーテルでは感染 血栓のリスクから考えると 鎖骨下静脈挿入が大腿静脈挿入より好ましい 短期透析カテーテルでは 大腿静脈挿入と内頚静脈挿入では感染リスクは同等

他にも大腿静脈にカテーテルを挿入しても CLABSI 発生率に差はないと述べている文献 Deshpande (2005) The incidence of infectious complications of central venous catheters at the subclavian, internal jugular, and femoral sites in an intensive care unit population. Crit Care Med 2005;33:13-20 Gowardman(2008) Influence of insertion site on central venous catheter colonization and bloodstream infection rates. Intensive Care Med 2008;34:1038-45

中心静脈カテーテル挿入時の消毒薬 JSEPTIC( 日本集中治療教育研究会 ) 簡単アンケート第 12 弾カテーテル関連血流感染 (CRBSI) 2012 年 2 月実施より

ガイドラインで推奨されている消毒薬 Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheterrelated Infections (2011 年 ) 中心静脈カテーテル挿入前とドレッシング交換時に >0.5% クロルヘキシジンアルコール製剤で皮膚を前処置する ( カテゴリー IA) 国立大学医学部付属病院感染対策協議会病院感染対策 ガイドライン ( 第 3 版 ) カテーテル挿入部の消毒は 0.5% クロルヘキシジンアルコールまたは 10% ポピドンヨードを用いる (AI)

0.5% クロルヘキシジンアルコールは有効 Prospective Randomized Trial of 3 Antiseptic Solutions for Prevention of Catheter Colonization in an Intensive Care Unit for Adult Patients Valles J, Fernandez I, Alcaraz D, et al Infect Control Hosp Epidemiol 2008;29:847-53 Design: 単施設 RCT Methods: スペインの ICU で 2005 年 1 月 ~2006 年 6 月に挿入された血管内カテーテル ( 中心静脈カテーテル 動脈圧ライン ) が対象 0.5% クロルヘキシジンアルコール 2% クロルヘキシジン水溶液 10% ポピドンヨードの 3 種消毒薬を比較 Primary outcome: 抜去時のカテーテルコロニゼーション率

0.5% クロルヘキシジンアルコール 2% クロルヘキシジン水溶液 10% ポピドンヨード 10% ポピドンヨードよりもクロルヘキシジン製剤の方が有効 0.5% クロルヘキシジンアルコールと 2% クロルヘキシジン水溶液との間に差はなし

日本発の臨床研究 JSEPTIC-CRBSI: 血管内カテーテルコロニゼーションに対するクロルヘキシジンの有効性の検討 JSEPTIC 臨床研究委員会 Design: パイロット オープンラベル多施設無作為割り付け試験 Methods: 国内 19 の ICU で血管内カテーテル ( 中心静脈カテーテル 動脈圧ライン ) を挿入する患者において 0.5% クロルヘキシジンアルコール 1% クロルヘキシジンアルコール 10% ポピドンヨードの 3 種消毒薬を比較 Main outcome: 抜去時のカテーテルコロニゼーション率

321 症例 (2012 年 12 月 ~2013 年 7 月 ) の中間結果 JSEPTIC-CTG 多施設研究第四弾 JSEPTIC-CRBSI: 血管内カテーテルコロニゼーションに対するクロルヘキシジンの有効性の検討中間解析報告より

クロルヘキシジン含有ドレッシング Randomized Controlled Trial of Chlorhexidine Dressing and Highly Adhesive Dressing for Preventing Catheter-related Infections in Critically Ill Adults Timsit JF, Mimoz O, Mourviller B, et al. Am J Resp Ctir Care Med; 2012:186; 1272-1278 Design: 多施設 RCT Methods: フランス 12 の ICU において 2010 年 5 月 ~2011 年 7 月に実施 クロロヘキシジンドレッシング 通常のドレッシング 2 種類を比較計 1,879 患者数 134,339 カテーテル日数 Primary outcome: カテーテルコロニゼーション率 カテーテル感染率

クロルヘキシジン含有ドレッシング スリーエムヘルスケアホームページより

ちなみに接触性皮膚炎の発生率は CHG ドレッシングは 1.1% 他のドレッシングでは 0.29%

Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-related Infections (2011 年 ) CHG 含浸スポンジドレッシングは 基本的な予防策の徹底にも関わらず CLABSI の割合が低下しない場合において 生後 2 か月を超える患者での一時的短期カテーテルに使用する ( カテゴリー IB) CHG ドレッシングを使用する以前に 他の感染対策の改善や徹底が必要!

本日の内容 はじめに :CLABSI の定義 疫学 発生率など CLABSI の予防 :Keystone Study Project 挿入部位 消毒薬 CLABSI の対処 : ガイドワイヤーでの交換 ICU に CLABSI は存在するか?

CLABSI を疑ったら ガイドワイヤーを 用いてカテーテルを交換してもよいか? そもそも ICU での CLABSI 発生率が低いし CLABSI も疑っているけど 他部位の感染も否定できない場合にはいいのでは? でも CLABSI を疑っているなら 感染を継続させうるからだめでしょ

Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheterrelated Infections (2011 年 ) ガイドワイヤー交換は 感染が疑われる非トンネル型カテーテルを交換するために行わない ( カテゴリー IB) 国立大学医学部付属病院感染対策協議会病院感染対策 ガイドライン ( 第 3 版 ) 中心静脈カテーテルの入れ替えを行う場合 刺入部に感染がない限り ガイドワイヤーを用いて入れ替える方が良い (BII)

ガイドワイヤーで交換してはだめ Risk factors and prognosis of catheter-related bloodstream infection in critically ill patients: A multicenter study Garnacho-Montero J, Aldabó-Pallás T, Palomar-Martínez M,et al Intensive Care Med 2008;34:2185-93 Design: 多施設前向き観察研究 Methods: スペインの ICU にて 2004 年 10 月 ~2005 年 6 月に CV が挿入された 1,366 名が対象 CLABSI の危険因子について調査

ガイドワイヤーでのカテーテル交換は危険因子 ( ガイドワイヤーでの交換は 感染徴候がなくカテーテルが機能しない場合に施行 )

ガイドワイヤーで交換してもよい Central venous catheter replacement in the ICU: New site versus guidewire exchange Castelli GP, Pognani C, Stuani A, et al Minerva Anestesiol. 2007 May;73(5):267-73 Design: 単施設前向き観察研究 Methods: イタリアの ICU で 3 年間 898 症例が対象刺入部に感染徴候 前回のカテ先培養陽性 再穿刺 (103 例 ) カテ機能しない 感染源不明 ガイドワイヤー交換 (88 例 ) Primary outcome: 再穿刺とガイドワイヤー交換のカテーテル感染率

再穿刺で感染したものは 7 例 (4.81/1,000 catheter days) ガイドワイヤー交換でカテーテル感染したものは 2 例のみ (1.75/1,000 catheter days )

本日の内容 はじめに :CLABSI の定義 疫学 発生率など CLABSI の予防 :Keystone ICU Project s 挿入部位 消毒薬 CLABSI の対処 : ガイドワイヤーでの交換 ICU に CLABSI は存在するか?

ICU の CLABSI は撲滅できる 1/3 A multicenter, phased, cluster-randomized controlled trial to reduce central line-associated bloodstream infections in intensive care units Marsteller J, Sexton B, Hsu YJ, et al. Crit Care Med 2012;40:2933-2939 Design: 多施設クラスター RCT Methods: 米国 12 州より 45 の ICU が参加 介入群は 2007 年 3 月から コントロール群は 2007 年 10 月から CUSP と 5 つの介入を開始 Primary outcome: 3 か月ごとの CLABSI 発生率

介入群 ( 早期介入 ) は介入 3 か月後 CLABSI 発生率が 80% 減少 コントロール群 ( 後期介入 ) は介入後 12 か月後 CLABSI 発生率が 69% 減少 いずれの群も介入後は低い発生率を維持

ICU の CLABSI は撲滅できる 2/3 Zero risk for central line-associated bloodstream infection: Are we there yet? McLaws ML, Burrell A Crit Care Med 2012;40:388-393 Design: 前向きコホート研究 Methods: オーストラリアの ICU にて 2007 年 7 月 ~2008 年 12 月の 18 か月間にバンドルを実施 Patient bundle; 2%CHG 消毒 ドレープ使用 位置確認 Clinician bundle; 2 分間手洗い マキシマムバリアプレコーション Primary outcome: 感染率ゼロに近い CV 挿入期間 CLABSI 発生率

0.99 infection free days=1/100 の確率で感染あり 前半 12 か月間 ; 感染ゼロに近い CV 挿入期間 =7 日間 CLABSI 発生率 =1.8/1,000 line days 後半 6 か月間 : 感染ゼロに近い CV 挿入期間 =9 日間 CLABSI 発生率 =0.9/1,000 line days

ICU の CLABSI は撲滅できる 3/3 Impact of a National Multimodal Intervention to Prevent Catheter-Related Bloodstream Infection in the ICU: The Spanish Experience Palomar M, Alvarez-Lerma F, Riera A, et al Crit Care Med 2013;41:2364-2372 Design: 前向きコホート研究 Methods: スペインの 192 の ICU( 全体の 68%) において 2009 年 1 月 ~2010 年 6 月にバンドル (Bacteremia Zero project) を介入 641,244 患者日数 501,296 カテーテル日数 Primary outcome: 3 か月ごとの CLABSI 発生率

ICU の CLABSI は撲滅できるか? できるはず! どの国もバンドルを中心とした予防策で CLABSI 発生率を減少させている 我が ICU でも限りなくゼロに近い CLABSI 発生率 ゼロになる日も近い! ICU だけでなく 病棟においても CLABSI 撲滅を目指したい

本日のメッセージ 今までの慣習やガイドラインが常に正しいとは限らない 毎回ルーチンで行っている行動が CLABSI の予防に非常に重要 ICU から CLABSI をなくすことは不可能ではない!