発表の流れ カイラル秩序をもつ磁性体 LiCuVO4 本研究の目的 一次元モデル 三次元モデル スピン フロップ転移の発現機構 三方向印加磁場に対するスピンの振る舞い
LiCuVO4 の豊かな物性 1 スピンフラストレート鎖 Cu 2+ CuO2 chin J 1 =-1.6meV( 強磁性 ) J 2 =3.8meV( 反強磁性 ) LiCuVO4 結晶構造 [1] カイラル秩序 90 低磁場 (<7.5T) で横滑りらせん構造を基底状態とする [2] Y. Nito, et l. J.Phys. Soc.Jpn.76, 023708 (2007).
LiCuVO4 の豊かな物性 2 マルチフェロイクス 磁性秩序が強誘電性を引き起こす現象 カイラル秩序スピン流電気分極 [3] スピン 軌道相互作用 [4] 電気分極測定から Fig.1 電気分極の磁場依存性 (H//c 軸 ) スピン状態を予測可能! F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
LiCuVO4 の豊かな物性 3 スピン フロップ転移 [5] H// 軸 : スピン回転軸 c 軸 軸 H//b 軸 : スピン回転軸 c 軸 b 軸 コーンライク? H//c 軸 : 転移は起こらない. 基底状態? N. Büttgen, et l. Phys. Rev. B 76, 014440 (2007). Fig.2 磁化率の磁場依存性
本研究の目的 マルチフェロイクスやカイラル秩序の起源を明らかにし, カイラル秩序スピンの磁場応答を理論的に提示しよう!
一次元モデル 最近接相互作用次近接相互作用ゼーマンエネルギー 磁場なしのときピッチ角 ±83.4 が基底状態 スパイラル面やカイラリティは選択されない b J 1 =-18.5 K J 2 =44K -1.47 1.47 Fig.3 エネルギーのピッチ角依存性 カイラル秩序はスピンフラストレーション由来
一次元モデル 磁化率の温度依存性 Good!! Bd 28K TN:2.4K [1] Y. Nito, et l. J.Phys. Soc.Jpn.76, 023708 (2007). Fig.4 磁化率の温度依存性 ( 左 : 数値計算結果右 : 実験結果 ) マルチフェロイクスの発現に本質的な低温側 2.4Kのピークは再現できない. 三次元性を考慮する必要がある!
三次元モデル 最近接相互作用 最近接異方的相互作用 次近接相互作用 鎖間相互作用 ゼーマンエネルギー i,j b J 1 =-18.5 K J 2 =44K J 3 =-4.3K i,j+1 古典スピンとしてエネルギーを最小とするスピン配列を求める! i+1,j i+1,j+1 [6]
スピン フロップ転移の発現機構 H=2.96T q=83.9 鎖間相互作用と c 軸方向異方性 b 面スパイラルを安定化させる ゼーマンエネルギー 磁場方向を向かせる Fig.5 2 つのモデルに対するエネルギーの磁場依存性 (H// 軸 ) 磁場増加しゼーマンエネルギーが異方性を上回るとフロップ転移が起こる!
磁場 H// 軸に対するスピン状態 磁場なしのとき スパイラルb 面. ピッチ角 83.6. 実験結果 83.6±0.6 [6] と一致. H<2.96Tのとき スパイラル b 面. わずかな角度だけ 軸方向を向く. H=2.96Tのとき b 面からbc 面にフロップ転移. コーンライク磁気構造となる. H>2.96Tのとき スパイラル bc 面. ピッチ角一定. 磁場増加につれコーン角線形減少. 全体的に 軸方向を向く. Fig.6 スピン磁気応答 (H// 軸 )
磁場 H//b 軸に対するスピン状態 磁場 H// 軸と同様な振る舞いで定量的な違いのみ H// 軸 H//b 軸 計算値 [T] 2.96 2.36 実験値 [T] 3.1 2.5 Tble1 転移磁場の計算値と実験値 転移磁場の計算結果は実験値とほぼ一致! Fig.7 スピン磁気応答 (H//b 軸 )
磁場 H//c 軸に対するスピン状態 フロップ転移なし コーンの外側から中心に向かって巻くようなモデル 磁場増加につれc 軸方向を向く [4] : 電気分極変化 b Fig.8 スピン磁気応答 (H//c 軸 ) ピッチ角とコーン角の減少で説明可能 Fig.1 電気分極の磁場依存性 (H//c 軸 ) F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
まとめ カイラル秩序の起源はスピンフラストレーション マルチフェロイクスの起源はカイラル秩序と結晶構造の三次元的な異方性 スピン フロップの転移磁場とピッチ角の計算結果は実験値と一致した 三方向磁場印加に対するスピン磁気構造を提示した
参考文献 [1]Yutk Nito, Kenji Sto, Yukio Ysui, Yusuke Kobyshi, Yoshiki Kobyshi nd Mstoshi Sto, J.Phys. Soc.Jpn.76, 023708 (2007). [2]T.Hikihr, L.Kecke, T.Momoi, nd A.Furuski, Phys. Rev B 78,144404 (2008). [3] Hosho Ktsur, Noto Ngos, nd Alexnder V. Bltsky, Phys. Rev. Lett. 95, 057205 (2005). [4]F. Schrettle, S. Krohns, P. Lunkenheimer, J. Hemberger, N. Büttgen, H.- A. Krug von Nidd, A. V. Prokofiev, nd A. Loidl, Phys. Rev. B 77, 144101 (2008). [5] N. Buttgen, H.-A. Krug von Nidd, L. E. Svistov, L. A. Prozorov, A. Prokofiev, nd W. Assmus, Phys. Rev. B 76, 014440 (2007). [6]M. Enderle, C. Mukherjee, B. F k, R.K. Kremer, J.-M.Broto, H. Rosner, S.-L. Drechsler, J. Richter, J. Mlek, A. Prokofiev, W. Assmus, S. Pujol, J.-L. Rggzzoni, H. Rkoto, M. Rheinst dter, nd H.M. Rønnow, Europhys. Lett. 70, 237 (2005). [7] M. Mourigl, M. Enderle, R. K. Kremer, J. M. Lw nd B. Fåk. Phys. Rev. B 84, 100409(R) (2011).
スピンフラストレーションの起源 Cu-O-Cu 結合 95 最近接は小さな強磁性的 O Cu Cu Cu-O-O-Cu 結合 次近接は大きな反強磁性的 O O Cu Cu
LiCuVO 4 の磁場相図 [2] VC:Vector chirl N:Nemtic IN:Incommensurte nemtic T:Tritic Q:qurtic F:Ferromgnetic SDW:spin-density-wve Fig.9 1 次元フラストレートハイゼンベルグモデルの磁場相図 T.Hikihr, et l. Phys. Rev B 78,144404 (2008).
LiCuVO 4 の磁場相図 低温低磁場 (<7.5T) でスパイラルスピン構造 低温低磁場 (~7.5T) で VC SDW 2 の相転移が起こる [2]? -0.42 0 Fig.9 1 次元フラストレートハイゼンベルグモデルの磁場相図 T.Hikihr, et l. Phys. Rev B 78,144404 (2008).
LiCuVO 4 のカイラル秩序 The VC order prmeter の長距離秩序 [2] Z2 対称性の自発的破れ Fig.10 ジクザグ鎖のベクトルカイラル秩序と環スピン流の描像 T.Hikihr, et l. Phys. Rev B 78,144404 (2008).
LiCuVO 4 のカイラル秩序 The VC order prmeter の長距離秩序 [2] 横スピン相関相関 が格子と不整合で 縦スピンよりも強い Fig.11 相関関数 ( ベクトルカイラル秩序 ) Fig.12 相関関数 (SDW 秩序 ) T.Hikihr, et l. Phys. Rev B 78,144404 (2008).
スピンホール効果 = = 電流 スピン流 電場 スピン流 時間反転で符号を変えない 電場に対するスピン流の線形応答
マルチフェロイクスのスピン流機構 二重交換相互作用 超交換相互作用 Hosho Ktsur, et l. Phys. Rev. Lett. 95, 057205 (2005)
スピン フロップ転移とは ある臨界磁場でスタッガード磁化方向が磁場に垂直な方向に変化する相転移 角度依存の自由エネルギーの最小化で状態が決定する H H < Hf H > Hf
磁化率の測定結果 [4] 磁場 H// 軸と b 軸でフロップ転移 磁場 H//c 軸でフロップ転移は起こらない Fig.13 磁化率の磁場依存性 N. Büttgen, et l. Phys. Rev. B 76, 014440 (2007).
誘電率の測定結果 誘電率のピークはその磁場での転移を表す [3] Fig.14 誘電率の磁場依存性 F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
磁場 H// 軸のとき 7.3T -7.3T 誘電率の測定結果 -2.3T 2.3T H1=2.3T で強誘電 - 常誘電相転移のピークをもつスピンの回転軸 //c 軸が H1 でどこかにフロップした H1 を越えると強誘電性が抑えられる -2.3T 2.3T -2.3T 2.3T O 2- Cu 2+ -8.1T 8.1T H 測定 F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
誘電率の測定結果 -2.3T 磁場 H// 軸のとき 7.3T H1=2.3Tで強誘電 - 常誘電相転移のピークをもつ -7.3T H1 で強誘電性が発現し H2 で消滅スピン回転軸は c 軸 b 軸に転移磁場 H//c 軸のときと比べ H2 が高くなる 2.3T 測定 O 2- -2.3T 2.3T Cu 2+ -8.1T -2.3T 2.3T 8.1T H F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
誘電率の測定結果 H O 2- -7.3T Cu 2+ 7.3T -2.3T 2.3T 測定 -2.3T 2.3T -2.3T 2.3T 磁場 H//b 軸のとき -8.1T H1=2.3Tで強誘電 - 常誘電相転移のピークをもつスピンの回転軸 //c 軸がH1でどこかにフロップした H1を越えると強誘電性が抑えられる 8.1T F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
誘電率の測定結果 -7.3T 7.3T -2.3T 2.3T H O 2- Cu 2+ -2.3T 2.3T -2.3T 2.3T 測定 磁場 H//c 軸のとき 8.1T -8.1T H1でなくH2=7.3Tで強誘電相転移のピークをもつ H2まで強誘電性が存在し スピン回転軸はc 軸安定 F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
電気分極の測定結果 H O 2- Cu 2+ 3.5T [3] 測定 -7.5T 7.5T スパイラルの回転軸は c 測定 O 2- Cu 2+ -7.0T ±2.5T 7.0T H Fig.15 誘電率の磁場依存性 F. Schrettle, et l. Phys. Rev. B 77, 144101 (2008).
強誘電相転移 ( マルチフェロイクスの発現 ) 比熱 磁化率 静電容量が T N =2.4K で同時に転移 [1] 0.37 [6] [1] 0.28 Y. Nito, et l. J.Phys. Soc.Jpn.76, 023708 (2007). Fig. 16 LiCuVO4 物性値の温度依存性 ( 左から比熱, 磁化率, 静電容量 )
g 因子と相互作用の異方性 [7] Fig. 17 g 因子と最近接異方的相互作用とキュリーワイス温度 H.-. Krung von Nidd, L.E.Svistov,Phys. Rev. B 65, 134445 (2002).
スピンのとりかた c θ φ b 等角度回転を仮定 φ3 = 2φ2- φ1 c c c φ3 b φ2 φ1 コーンライク磁気構造コーン角 q を定義 q b q b c q c
磁場 H// 軸 磁場なしのとき相互作用の異方性がスパイラル面をb 面で安定させるピッチ角 83.6 実験結果 83.6±0.6 [4] と一致 H<2.96Tのときピッチ角はわずかに減少した不整合ベクトルQは磁場によらず一定 わずかに 軸方向を向く b b H// Fig.18 ピッチ角の磁場依存性 (H// 軸 )
磁場 H// 軸 H=2.96T のときゼーマンエネルギー > 異方的相互作用 b 面から bc 面にフロップ転移 b c b H>2.96T のときスパイラルが bc 面にあるときエネルギー最小磁場増加によってスピンは磁場方向を向く 2.96T q=83.9 H// H// Fig.19 コーン角の磁場依存性 (H// 軸 )
磁場 H//b 軸 b エネルギー (K) 横滑りらせん構造 b 面 2.36T c b c 面コーンライク磁気構造 磁場 (T) Fig.20 2 つのモデルに対するエネルギーの磁場依存性 (H//b 軸 )
磁場 H//b 軸 磁場なしのとき相互作用の異方性がスパイラル面を b 面で安定させるピッチ角 83.6 実験結果 83.6±0.6 [4] と一致 Hb<2.36T のときピッチ角はわずかに減少した 不整合ベクトル Q は磁場によらず一定 わずかに b 軸方向を向く b b H//b Fig.21 ピッチ角の磁場依存性 (H//b 軸 )
磁場 H//b 軸 Hb=2.36T のときゼーマンエネルギー > 異方的相互作用 b 面から c 面にフロップ転移 b c b Hb>2.36T のときスパイラルが c 面にあるときエネルギー最小磁場増加によってスピンは磁場方向を向く 2.96T q=85.6 H//b H//b Fig.22 コーン角の磁場依存性 (H// 軸 )
磁場 H//c 軸 エネルギー (K) c コーンライク磁気構造 (q 一定 ) q b c b q を変数 磁場 (T) Fig.23 2 つのモデルに対するエネルギーの磁場依存性 (H//c 軸 )
磁場 H//c 軸 Fig.24 q 変数モデルのピッチ角磁場依存性 (H//c 軸 ) Fig.25 q 変数モデルのコーン角磁場依存性 (H//c 軸 ) コーンの外側から原点に向かって巻いたようなモデル磁場をかけるにつれて c 軸方向を向く b