高齢者雇用(法改正対応)事例編 東京経営者協会 実務シリーズ

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2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

自動的に反映させないのは133 社 ( 支払原資を社内で準備している189 社の70.4%) で そのうち算定基礎は賃金改定とは連動しないのが123 社 (133 社の92.5%) となっている 製造業では 改定結果を算定基礎に自動的に反映させるのは26 社 ( 支払原資を社内で準備している103

均衡待遇・正社員化推進奨励金 支給申請の手引き

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JILPT 高齢者の雇用 採用に関する調査結果 (2008) の概要 高齢者の雇用 採用に関する調査 (2008 年 8-9 月実施 ) 高年齢者雇用関連の法制度が整備される中で 企業の高齢者の雇用や採用に関する最近の取組等を把握 全国の常用雇用 50 人以上の民営企業 社を対象 有効回

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今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

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図 1 年金の支給開始年齢の引上げスケジュール めることになっているため 再 任 用 制 度を 用すること 定年退職者を臨時職員や非常勤嘱託など 再 雇 用 再 任 用 制 度が導 入される以 前 の動きを受けて 地方 自 治 体においても再 で雇用する際に使われていた言葉 設けていないところもあり

問題の背景 高齢者を取り巻く状況の変化 少子高齢化の急速な進展 2015 年までの労働力人口の減少 厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げ 少なくとも 年金開始年齢までは働くことのできる 社会 制度づくり ( 企業への負担 ) 会社にとっての問題点 そしてベストな対策対策が必要に!! 2

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総合職一般職勤務場所総合職業務職 ( 新 ) 一般職勤務場所Ⅰ. 労働組合との交渉経過 民営化後の平成 21 年 4 月 頑張ったものが報われるメリハリのある人事 給与制度 とするための改正案を関係労働組合に提案 その後 郵政民営化法の見直しや成果主義重視に対する労組内の慎重論により交渉は長期間にわ

第1章事例の紹介 建設業事例番号 35 株式会社土屋ホームトピア 建設業 取込み内容 評価 処遇 評価 処遇制度 業務 組織 人間 業務 組織 人間関係管理 人材育成 人材育成に関する取組 その他 その他 事業所の基礎データ 常用労働者の 平成 24(2012) 年度 平成 23(2011) 年度

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日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

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( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

厚生労働省発表

(b) 子加算は, 扶養家族でかつ23 歳未満の子がある者に支給する ただし, 扶養家族の子に障害のある場合は, 子の年齢にかかわらず支給し, 別途加算を行う ( イ ) 基準外賃金上司に命ぜられて, 所定勤務時間外の勤務, 休日の勤務, 休日振替による勤務または深夜の勤務をした者に支給する ( ウ

無期転換ルール をご存知ですか無期転換の条件嘱託職員定時職員の紹介正規職員 4 現在 労働組合との間で 嘱託職員への登用制度の話し合いを開始 5 処遇 労働条件 契約期間 無期労働契約 労働時間フルタイムフルタイム 異動 出向ありなしあり 月給 賃金形態 月給 無期労働契約への転換後も処遇に変化なし

力的にきつい面がある (3) 常駐警備 は 建物等で出入者の監視 身分確認を行う 出入管理 異常を発見する 巡回 防災センターや管理センターにおける 監視 また イベント警備等を行う業務である 業務形態は 顧客との契約によって異なり 日勤のみで夜勤がない現場もある 現在 ALSOK 単体では この

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職場環境 回答者数 654 人員構成タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % % 質問 1_ 採用 回答 /654 中途採用 % 新卒採用 % タ

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佐藤委員提出資料

基本情報 () 非常勤職員の総数 調査対象に該当する非常勤職員の総数は 期間業務職員が 30,429 人 (54%) 期間業務職員以外の非常勤職員が 25,590 人 (46%) 合計で 56,09 人 ( うち女性 42,456 人 76%) だった (2) 非常勤職員が所属する機関 非常勤職員が

2. 継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大上記の選別基準が廃止されることにより 企業が雇用する従業員が増加すると推察され 雇用事業主だけでの雇用確保は限界があると考えられるため 継続雇用の雇用確保先がグループ企業にまで拡大された 3. 厚生労働大臣による高年齢者雇用確保措置に関する勧告に従

目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

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東京都渋谷区恵比寿南 山手線恵比寿駅徒歩 4 分 3 清掃業務 ( 日常清掃実施 定期清掃の立合い等 ) 雇用 雇用期間の定めあり ( 1 年契約 1 年更新 ) 4 館内見回り期間 契約更新の可能性あり な資格 *50 歳 60 歳代の方が活躍しています 等 ) 時間額 ( a +

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留意事項 ( 1) 賃金アップの方法 欄には 賃金の算定方法を下記から選択し記載してください 賃金アップが 毎月決まって支払われる賃金 の場合は 1 賃金アップが 毎月決まって支払われる賃金 + 臨時に支払われる賃金 の場合は 2 賃金アップの方法 欄において 1の 毎月決まって支払われる賃金 を選

処遇体系処遇体系の再構築再構築 は世代分断世代分断の賃金削減施策 処遇体系の再構築 施策は これまでに 雇用選択 を受けた 既選択世代 と 50 歳以下の 未選択世代 を意図的に分断し それぞれに厳しい賃下げを押し付け る不合理なものです 既選択世代に是正措置是正措置なし まず 重大なことは これま

ニュースリリース 中小企業の雇用 賃金に関する調査結果 ( 全国中小企業動向調査 2013 年 月期特別調査 ) 年 4 月 8 日株式会社日本政策金融公庫総合研究所 3 割の企業で正社員は増加 3 社に 1 社で給与水準は上昇 従業員数 2013 年 12 月において

2 役員の報酬等の支給状況平成 29 年度年間報酬等の総額就任 退任の状況役名報酬 ( 給与 ) 賞与その他 ( 内容 ) 就任退任千円千円千円千円 法人の長 理事 ( 寒地土木研究所長 ) 理事 監事 監事 ( 非常勤 ) 16,840 11,580 3,407 1,853 ( 役員特別調整手当

調査等 何らかの形でその者が雇用期間の更新を希望する旨を確認することに代えることができる ( 雇用期間の末日 ) 第 6 条第 4 条及び第 5 条の雇用期間の末日は 再雇用された者が満 65 歳に達する日以後における最初の3 月 31 日以前でなければならない 2 削除 3 削除 ( 人事異動通知

要件① 雇用者給与等・・・・ (ざっくり) 平成24年度の給与総額と比べて、平成25年以降毎年、一定割合以上給与総額が増えていること。 <雇用者給与等支給額とは> <一定割合とは>

題名

調査結果の概要 1 平均年齢及び平均勤続年数 ( 表 1) 集計表第 1 表 調査産業計の男女計の平均年齢は 40.3 歳 平均勤続年数は 17.1 年 製造業ではそ れぞれ 39.7 歳 17.0 年となっている 産業区分 年 表 1 平均年齢及び平均勤続年数 ( 歳 年 ) 男女計男女平均勤続平

農業法人等における雇用に関する調査結果

平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

今後 この政府のガイドライン案をもとに 法改正の立案作業を進め 本ガイドライン案については 関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて 最終的に確定する また 本ガイドライン案は 同一の企業 団体における 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正することを目的としているため

事業活動の縮小に伴い雇用調整を行った事業主の方への給付金

渋谷区広尾 JR 山手線 恵比寿 徒歩 7 分 年齢 67 歳仕事 2 点検業務 ( 施設 設備の見回り 点検 ) * 資格 経験 ( 入社時 入社後研修充実してます ) 時間額 ( a + b ) 1,200 円 ~1,200 円 締切日月末 支払い日翌月 25 日 形態 ( )

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第 2 章職階および等級 ( 職 階 ) 第 7 条 職階は 職務遂行に要求される能力の範囲と程度に基づき 一般職 監督職 管理職およ ( 等級 ) 第 8 条等級は 各々の職階における職務遂行能力の成熟度の差に応じ 次の9 等級に区分するものとする 2. 前項の職階および等級の職能資格基準は 別表

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短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

第三章:保育士の就業・就職行動と意識

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高齢者雇用 ( 法改正対応 ) 事例編 東京経営者協会実務シリーズ No 2013-B-05 事事例大和ハウス工業株式会社 高齢者雇用の取り組み 65 歳定年制 1. 企業の概要 会社名 創立 大和ハウス工業株式会社 1955 年 4 月 5 日 従業員数 13,623 名 (2013 年 4 月 1 日現在 ) 主要な事業内容 戸建住宅 分譲マンション 賃貸住宅等の企画 設計 施行 販売等 宅地 工業団と野企画 設計 施行 販売 再開発事業 環境エネルギー事業 農業事業 その他 資本金 1,616 億 9,920 万円 (2013 年 8 月 19 日現在 ) 売上高 1 兆 2,388 億円 ( 2012 年度末 ) 2.65 歳定年制導入の背景 定年を迎えた者を対象とした制度は 2012 年度まで 希望者を 1 年更新で 65 歳まで再雇用する嘱託再雇用であった しかし 1 再雇用制度における賃金水準が定年到達時賃金の 4 割から 5 割弱にダウンすることから モチベーションアップにつながらないこと 2 年金支給開始年齢との連続性を保つために 65 歳までの定年延長は不可避となる方向にあること 3 2013 年 4 月から改正高年齢者雇用安定法が施行されること 4 退職給付債務の圧縮への取り組み などを背景に 2013 年 4 月から 65 歳定年制を導入することとした 2011 年度から 12 年度の前半にかけ 定年制の在り方について協議を重ねてきた中で 定年年齢を1 歳ずつ引き上げていく段階的な定年延長制度も議論されたが 最終的にはトップの判断もあり 一気に 65 歳定年制を導入することとした なお 60 歳定年においては満 60 歳を迎えた年度末を定年としていたことから 65 歳定年制においても満 65 歳を迎えた年度末を定年とする 今回の定年延長に当たっては 60 歳以前の年収の見直しや 新規採用の抑制を行うことなく これまで培ってきた能力や実績 業績に応じて処遇し 65 歳まで現役で活躍できる仕組みを志向した 3.65 歳定年制の具体的内容 以下では 65 歳定年制の内容について 60 歳以前社員の等級制 給与体系 嘱託再雇用制度の仕組みも含めて紹介する 1

( 1) 60 歳以前の給与 評価制度就業規則上の従業員は職員 嘱託 契約社員の 3 つに区分される 職員はいわゆる期間の定めのない身分の社員 特殊な技能を持っている嘱託は原則として1 年の雇用契約 契約社員は特定業務で半年あるいは 1 年契約 このうち 定年が適用されるのは職員である 職員は 職能資格制度上 G 職 ( 総合職 全国社員 ) L 職 ( 総合職 地域社員 ) S 職 ( 事務職 地域社員 ) の 3 つの職位からなり さらにG Lは9つ Sは4つのランクで運用している 区分 図表 1 職能資格制度 ( 60 歳以前に適用 ) G 職 L 職 S 職 ( 総合職 全国社員 ) ( 総合職 地域社員 ) ( 事務職 地域社員 ) 部長クラス 1 級 2 級 1 級 2 級 課長クラス 3 級 4 級 3 級 4 級 主任クラス 5 級 6 級 5 級 6 級 一般職クラス 7~ 9 級 7~ 9 級 1~ 4 級 給与体系は 管理職クラスは 職能給 + 資格給 + 役割給 で 評価により毎年洗い替えされる その他 販売促進手当 完工手当 通勤手当等 を支給 一般職については 役割給のかわりに時間外勤務手当がつく 職能給は初任額と上限額が設定され 上限までは上昇するが それ以降は昇格しない限り上がらない仕組みとなっている 年齢による賃金カーブの抑制は行っておらず 60 歳までは賃金カーブが上昇する 支配人クラス 支店長クラスは年俸制をいれている 人事考課は春の定期昇給 夏季賞与 年末賞与の年 3 回実施している 評価方式は 管理職クラスは目標管理制度を導入しており 絶対評価 一般職クラスは査定額による相対評価としていたが 2013 年下期から一般職クラスも絶対評価に移行した 過去 2 年間の人事考課 計 6 回の評価が昇格に反映され 夏 冬の評価で退職金ポイントの加算額を決定する 査定結果は本人に開示している ( 2) 65 歳定年制における 61 歳以降の給与制度 61 歳を迎える年度からは 従来の嘱託基準の給与を職能給としてそのまま適用する 嘱託再雇用者の職能給は 前述の 60 歳以前のものとは異なり 60 歳時における職位 資格区分 ( 図表 1) と査定により決定する 2

60 歳時の資格ランク 図表 2 6 1 歳以降に適用する職能給テーブル Ⅰ ランク ( ) 評価ランク ( 更新時直近 1 年の査定 ) Ⅱ ランク Ⅲ ランク Ⅳ ランク ( B ~ C 相当 ) (C C1 C1 未満 ) (C C2 C2 未満 ) G 1 2/L 1 2 〇〇万円以上 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 G 3 4/L 3 4 〇〇万円以上 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 G 5 6/L 5 6 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 G 7 9/L 7 9 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 ( 3) 賞与 賞与は 従来基準では年間 2 カ月で固定していたが 65 歳定年制における新 基準では 60 歳以前と同様 事業所 ( 営業所 ) と個人 の業績査定を反映する業 績連動型とし 個々人の成果を反映する仕組みを取り入れた 支給額は 基準 内賃金 出勤率 支給率 により決定する このうち支給率は 本人が所属する 事業所の業績評価と個人査定に基づくが 61~ 65 歳の支給率については 60 歳 までの支給率の 3 分の 2 程度に設定している ( 4) 年収 参考 1 事業所の業績評価 : 一人当たり利益 受注 売上げ 利益の対前年同期比 売上比率の四半期評価 2 営業所の業績評価 : 一人当たり利益 3 個人の業績 : 管理職 = 目標管理 一般職 = 設定された評価項目による評価 嘱託再雇用制度においては 60 歳時と比較した 61 歳以降の年収の減額率は 部長クラスで 60%(60 歳時年収の 40% ) 課長クラスは 50%( 同 50% ) であっ 図表 3 年収カーブのイメージ 3

たが 上記のように賞与を業績反映型に見直すことにより 65 歳定年制では それぞれマイナス 40%( 同 60% ) マイナス 30%( 同 70%) に抑制した ( 5) 役職定年制 60 歳到達年度末での役職定年制を新たに導入 これにより 61 歳以降は 従来の嘱託再雇用制度と同様 ライン長に登用することはないが 60 歳到達時の職能資格等級に応じた役職名称 ( 専任部長 専任次長 専任課長 等 ) を使用する ただし 61 歳以降もライン長の職務に就く場合は 理事 ( 執行役員に準じた身分 ) に登用する ( 6) 61 歳以降の配置先決定方法配置先決定までの流れは 以下のとおりである 1 該当年度の 7 月末までに進路希望を本人が調書記入 2 作成した調書を上司へ提出 38 月中旬 該当者との上司面談実施 4 面接結果を踏まえて 事業所の要望を 8 月末までに人事に提出 59 月 ~11 月にかけ人事部が異動先の調整実施 6 12 月末までに配属決定を本人に通知する 配属先は 原則として家族や住居のあるところを優先する 職種 部門については 本社 本部系ではなく 現業 ( あるいはそれに近い部署 ) とする なお 2013 年度に 62 歳から 65 歳を迎える年齢層で 既に定年退職して嘱託再雇用した者については 65 歳定年制を導入した 2013 年 4 月 1 日付で 希望すれば職員に再登用した 図表 4 新旧制度の概要 嘱託再雇用制度 ( 2012 年 3 月まで ) 65 歳定年制 ( 2013 年 4 月から ) 定 年満 60 歳を迎えた年度末 65 歳を迎えた年度末 雇 用 区 分嘱託再雇用 職員 ( 正社員 ) 雇 用 期 間上限 65 歳までの 1 年契約 定年まで正社員として継続勤務 役 職 原則としてポストから外れ ( 定年引上げ後は 60 歳での役職定年制を導入 ) 60 歳時の職能資格級に応じて 専任部長 専任次長 専任課長 等とし 専門的処遇とする ( ライン長の職務に就く場合は 理事に登用 ) フルタイム勤務が前提 労 働 時 間 一部短時間勤務を認める 時間外勤務の対象外 短時間勤務は原則認めない 時間外勤務の対象 月 例 賃 金 60 歳到達時の職能資格級に応じて職能給テーブルを決定 評価により毎年水準を洗い替え 職能給 + 資格給 + 役割給 ( 管理職のみ ) から 61 歳以降は職能給一本 年間 2 ヵ月固定 ( 査定無 ) 60 歳以前の月数の 3 分の 2 程度をベ 賞 与 ースに 事業所 ( 営業所 ) 個人業績により配分 退 職 金 満 60 歳を迎えた年度末で確定したポイントに基づいて支給 61 歳以降は退職ポイントの累積は行わない 4

4. 関連施策 ( 1) 特別休暇制度 61 歳を迎える年度の 4 月に 60 歳定年の際に気持ちの切りかえをしてもらう という趣旨で 1 か月間の特別休暇を付与しており 65 歳定年制導入後もこの休 暇制度は運用する ( 2) 永年勤続者表彰 従来の 20 年と 30 年の勤続表彰に加え 40 年勤続表彰を行うこととした ( 3) ライフプランセミナー 定年退職予定者を対象に行ってきたライフデザインセミナーを引き続き 60 歳 時点で実施する 内容は 1 泊 2 日で キャリア開発 定年後の生活 年金 健 康管理について外部講師による講演で構成している ( 4) 企業年金 第 1 年金 第 2 年金が 2011 年 3 月入社以前の職員を対象とするものである 第 1 年金は 10 年保証の終身 確定給付 第 2 年金は 10 年保証の確定給付 2014 年 4 月から第 1 年金を DC 化する予定 第 3 年金と DC は 2011 年 4 月入社の新入社員から対象としている 65 歳定年制においても 60 歳以降で退職した場合に受給できる点に変更はない ただし 65 歳定年を導入することで企業年金の支給開始年齢が引き上げられ いわゆる給付減額とみなされることから 企業年金規約の改定が必要となり 加 入者全員の同意を得た 図表 5 企業年金の仕組み 区分内容 第 1 年金 10 年保障つき終身 確定給付型年金 (2011 年 3 月入社以前の職員が対 2014 年 4 月から D C 化を予定 第 2 年金同上 ( 但し 加入期間 15 年以上の条件あり ) 第 3 年金 20 年保証 その後は半額を終身 確定給付型年金 ( 2011 年 4 月入社以後の職員から適用 ) D C 確定拠出型年金 ( 2011 年 4 月入社以後の職員から適用 ) 5.65 歳定年制に伴う課題 ( 1) 賃金カーブ年齢によって一律に賃金を下げるということは難しいと考えており 今回の定年延長にあたっても賃金抑制は行っていない 賃金を抑制するとなると 40 歳代から 50 歳にかけて賃金カーブを寝かせる方策をとることになり 定年は延長したものの 生涯年収から見ると 払い方を変えただけで メリットが感じられない そのため 賃金カーブは抑制しないこととし 61 歳以降の能力を引き出 5

していく考え方をとった ( 2) 人件費コストの吸収定年延長に伴い増加する人件費は 売り上げの増大で対応する 61~65 歳の社員の貢献度はかなり大きく その層への投資である 社員に十分活躍してもらうことで 人件費コストは売り上げで回収できる ( 3) 定期採用グループで毎年 1,000 名強採用している 65 歳定年制を導入しても将来の人材を抑制するという考えはない 総額人件費の枠内で人員の調整をするという発想であれば採用の抑制もありうるが 人件費がふえればそれを吸収すればいいという発想をとっていることから パイを増やしていく 若い人材 優秀な人材の採用を定年延長という理由で抑制するのは 会社側 若者双方にとってマイナスである ( 4) 若年層の登用 60 歳に到達した年度末に役職定年となるので 若年層の登用が遅れるということはない 大和ハウス単体のモデルでは 入社 12~13 年後 35 歳 実質的には 40 歳前後で管理職に登用する その登用年齢が遅れるということは基本的にはない 高齢者雇用 ( 改正法対応 ) 事例編発行済み目次 〇本シリーズは 改正高年齢者雇用安定法 が施行 (2013 年 4 月 1 日 ) された後に聴取した事例をまとめたものです No. 社名タイトル 2013-B-01 都築電気株式会社高齢法改正に伴う継続雇用制度 2013-B-02 株式会社 I H I 選択定年制による高齢者活用 2013-B-03 日本精工株式会社高齢者雇用の取り組み 2013-B-04 富士重工業株式会社高年齢者再雇用制度 2013-B-05 大和ハウス工業株式会社高齢者雇用の取り組み 65 歳定年制 高齢者雇用 ( 法改正対応 ) 事例編 に関するお問い合わせ先 労働 研修部 ( 石川 ) 100-0004 東京都千代田区大手町 1-3-2 経団連会館 19 階 TEL: 03-3213-4700( 代 ) FAX: 03-3213-4711 6