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当院での人工股関節全置換術における術前後の機能評価と術後転倒に関する調査藤田ゆかり 片岡亮人 鈴木淳 村瀬智之 住田尚史 竹内ゆみ 鬼澤理紗 山本優理 藁科秀紀 北村伸二名古屋整形外科人工関節クリニック 人工股関節全置換術患者の術前機能とT 字杖歩行自立日数の相関性について鈴木淳 片岡亮人 住田尚史 村瀬智之 藤田ゆかり 竹内ゆみ 鬼澤理紗 山本優理 藁科秀紀 北村伸二名古屋整形外科人工関節クリニック はじめに 近年 人工股関節全置換術( 以下 THA) の手術においては 低侵襲手術の導入やクリニカルパスなどにより入院期間が短縮されている 術後の重要な合併症の一つとして 転倒を原因とした脱臼や骨折などがあげられるが 術後患者の転倒の頻度や術前からのリスクファクターについての調査はあまりされていない 今回 当院にて初回 THA を施行した術後患者の転倒と 術前後の機能評価に関する調査を行ったので報告する 対象 方法 平成 23 年 11 月 ~ 平成 26 年 8 月の間に当院にて初回 THA を施行し外来通院中の 51 名 62 股 ( 男性 3 名 女性 48 名 年齢 65.3±8.8 歳 ) を対象とした 対象には術前後の機能評価および外来通院中の聞き取り調査を行った 結果 聞き取り調査より 術後に転倒を経験した患者は 8 名であった 転倒の時期は 術後 2 日 ( 入院中 ) が 1 名 1 ヶ月前後が 2 名 3 ヶ月以上 1 年以内が 5 名であった 術後 3 ヶ月以内に転倒した 3 名を転倒群 それ以外の 48 名を非転倒群とした 入院中の転倒の 1 名は 転倒による大腿骨骨折で再手術となった 他の 7 名は 転倒後の病院受診なく明らかな傷害にはつながらなかった 平均年齢は転倒群 72.0±2.7 歳 非転倒群 64.9±7.9 歳であった 術前後の機能評価では 術前の術側股関節屈曲筋力において転倒群が 0.59±0.07Nm/kg 非転倒群が 0.79±0.24Nm/kg と 2 群間で有意差があった (P<0.05) 伸展 外転筋力 術後の術前に対する筋力回復 HHS JOA ROM については 2 群間で有意差はなかった 考察 転倒群では非転倒群と比較し 術前の屈曲筋力において有意に低値を示した また傾向として 1 年齢が高く 2 術前の HHS JOA スコアが高い傾向が見られた 今回の結果をふまえ 更なる調査をしたいと考える 目的 近年 人工股関節全置換術( 以下 THA) は機能改善 さらには歩行能力改善やQOL 向上に有用であると言われ また術後機能の改善に伴い 歩行能力は改善する しかし 術前機能が術後の動作獲得に影響があると言われる文献は少ない そこで本研究は THA 患者において 術前の股関節機能と術後 T 字杖歩行能力の総完成について検証した 方法 対象は 2013 年 7 月から 2014 年 8 月に当院でTHA を施行され そのうち本研究に同意を得た50 名 ( 全員女性 平均年齢 65.15 歳 診断は全員片側変形性股関節症 ) 術前に股関節可動域 筋力 JOAを評価した 関節可動域は股関節屈曲 伸展 外転 内転を測定した 筋力は徒手筋力計 (HHD) を用いて股関節外転 伸展の等尺性筋力を3 回計測し 最高値を大腿長 体重で補正した値とした さらに術後のT 字杖歩行自立までの日数を調査した T 字杖自立日の定義として 終日歩行器は使用せず T 字杖で独歩可能であると理学療法士が判断した日とした 股関節筋力値と術前 JOA 下位 score について T 字杖歩行自立日との相関性を pearson の相関係数を用い検討した 結果 T 字杖歩行獲得の平均日数 5.16 日であった またT 字杖歩行自立日と相関性がみられたのは 股関節外転筋力 (r=0.53) 伸展筋力(r=0.44) JOAの pain(r=0.41) であった また股関節可動域 ( 屈曲 伸展 外転 内転 ) JOAのその他 score に関しては有意な相関は認められなかった 考察 T 字杖歩行が早期に自立となるためには 術前の股関節筋力低下や疼痛が影響していることがわかった そのため これまで言われてきた術後の機能改善だけでなく 術前機能に関しても考慮することが必要で 術前から疼痛の軽減や機能低下を改善 予防する必要性があると考えられる また今後は筋力だけでなく 術前の膝関節筋力やバランス能力など術側下肢の支持性に関する項目を検証すべきであると考える

当院の股関節疾患歩容評価法を用いた歩容の検討 - 第 2 報 - 近藤秀哉 1) 中宿伸哉 1) 三田村信吾 1) 宮ノ脇翔 1) 坪井真幸 2) THA のアプローチの違いにおける術後筋力回復の比較について Supine Anterolateral approach と Posterolateral approach の違い 鬼澤理紗 片岡亮人 住田尚史 鈴木淳 村瀬智之 藤田ゆかり 竹内ゆみ 山本優理 藁科秀紀 北村伸二名古屋整形外科 人工関節クリニック はじめに 本研究の目的は当院の歩容評価法と機能面の関係を検討すること 対象 当院で片側罹患症例に対し人工股関節全置換術を施行し術後 1 ヵ月に歩容および機能評価を行い得た 33 例 ( 男性 13 例, 女性 20 例 平均年齢 63 歳 ) 方法 評価方法はシャツをズボンに入れ ズボンは上前腸骨棘の高さで水平に穿き 履物は靴という条件で正面 側面から歩行動画を撮影した 評価項目は 1. 踵接地 2. 両肩峰を結んだ線を水平に保つ 3. 体幹が側方動揺しない 4. 骨盤を水平に保つ 5. 股関節内転 0-5 6. 股関節伸展 0 以上 7. 骨盤が後方回旋しない 8. 骨盤が前傾しない 9. 体幹が前後動揺しない 10. 骨盤が前方回旋しない 11. 骨盤が後傾しない 12. バランス良い上肢の振りの全 12 項目 12 点満点とし 8 点以上を良好群 7 点以下を不良群とした 1 は initial contact 2 ~5 は mid stance(ms) 6~9 は MS~terminal stance 10.11 は pre swing~initial swing 12 は全歩行周期を通し評価した 検討項目は各股関節可動域 BIODEX にて計測した等速性股関節屈曲 伸展筋力 等尺性股関節外転筋力とした 統計処理として歩容評価は Fisher の直接確立計算法を 検討項目は対応のない t 検定を用い有意水準 5% 未満とした 結果 良好群 22 例 不良 11 例 両群間に有意差を認めたのは 2. 両肩峰を結んだ線を水平に保つ ( 良好群 0.64, 不良群 0.18 P<0.05) 3. 体幹が側方動揺しない ( 良好群 0.64, 不良群 0.18 P<0.05) 4. 骨盤を水平に保つ ( 良好群 0.95, 不良群 0.09 P<0.01) 5. 股関節内転 0-5 ( 良好群 0.82, 不良群 0 P<0.01) 6. 股関節伸展 0 以上 ( 良好群 0.73, 不良群 0.27 P<0.05) 12. バランス良い上肢の振り ( 良好群 0.73, 不良群 0.18 P<0.05) の 6 項目 等速性股関節屈曲筋力 ( 良好群 85.7%, 不良群 66.7% P<0.01) だった 考察 歩行は十分な可動域や筋力 適切な筋出力のタイミングなどが必要となるが 可動域や筋力に有意差を認めなかったため 筋出力のタイミング異常などによると推察した 目的 当院では 人工股関節全置換術 ( 以下 THA) を Supine Anterolateral approach ( 以下 SALA) または Posterolateral approach( 以下 PLA) で行っている 本研究の目的は SALA と PLA における THA 術後 12 週までの筋力回復率を調査することである 方法 対象は 当院で THA を施行した 73 例 SALA 群 ( 女性 31 例 男性 2 例 66.8±8.57 歳 ) と PLA 群 ( 女性 36 例 男性 4 例 63.6±8.75 歳 ) とした 術前 術後 1 2 3 4 8 12 週にハンドヘルドダイナモメーター ( アニマ社 ) を使用し 股関節外転 屈曲 伸展の筋力測定を行った 外転筋力は背臥位で股関節外転 0 屈曲筋力および伸展筋力は側臥位で股関節屈曲 10 にて測定し 3 回の測定値の最大値を採用した 体重比 (Nm/kg) を算出し 回復率 ( 術後体重比 / 術前体重比 100) を求め t 検定にて両群間を比較した 結果 THA 後の股関節外転筋力は両群とも術後 1 週で 100% 程度に回復し 股関節屈曲筋力は 術後 2 週で 100% 以上に回復した 術後 12 週における股関節屈曲筋力の回復率は PLA 群と比較し SALA 群において有意に高かったが (SALA 群 : 163% PLA 群 : 140% p=0.018) 外転筋力および伸展筋力の回復率に有意差は認められなかった 考察 SALA では中殿筋と大腿筋膜張筋の筋間からアプローチし 筋の切離がなく低侵襲であるため PLA と比較し筋力回復率が高い可能性が示唆された また 術後 12 週までの股関節外転筋力および伸展筋力の回復には両群間で有意な差はなかった さらに THA 後の股関節外転筋力は両群とも術後 1 週で 100% 程度に回復し 股関節屈曲筋力は 術後 2 週で 100% 以上に回復するという先行研究を支持する結果となった

一期的同側 THA TKA を施行し 脱臼リスクに注意して介入した一例加古誠人 1) 長谷川幸治 2) 酒井忠博 3) 濱田恭 2) 高木優衣 1) 中島裕貴 1) 兒玉奈菜恵 1) 1) 名古屋大学医学部附属病院リハビリ部門 2) 名古屋大学大学院下肢関節再建学 3) 名古屋大学大学院運動 形態外科学 整形外科学 変形性股関節症における JHEQ 動作項目と股関節屈曲可動性及び腰椎機能との関係について中宿伸哉 1) 近藤秀哉 1) 三田村信吾 1) 宮ノ脇翔 1) 矢野沙耶香 1) 坪井真幸 2) はじめに THA 術後の脱臼は合併症の一つであり 初回で 1-5% 生じると言われている 臨床場面において 下肢アライメントの不良を有する患者に対して脱臼の管理に難渋する症例を経験する 今回一期的に同側 THA TKA を施行し 術後の脱臼リスクに着目して理学療法を行った 1 例を経験したので以下に報告する 症例 57 歳女性であり 両変形性股関節症および両変形性膝関節症と診断されていた X 線所見にて股関節症は両側共に末期 膝関節症は両側共に K-L 分類 grade4 FTA は右 137 度 左 172 度と高度外反膝であった 術式は 後側方アプローチにて THA を行い 続いて拘束型 TKA を施行した 本報告は当院倫理審査委員会で承認され 同意を得た 術前評価 ROM( 右 / 左 ) は 股関節屈曲 40 度 /35 度 膝関節屈曲 95 度 /95 度 伸展 5 度 /-5 度であった 右膝関節の疼痛は VAS78mm であった 10m 歩行は 12.35 秒であった 歩行は 両 T 字杖を使用し右立脚期に膝関節の高度外反 体幹右側屈した歩容を呈し 歩行可能な距離は 500m 程度であった 経過 術後翌日より理学療法開始 POD3 に腓骨神経麻痺により右足関節背屈筋力が MMT2 となった POD7 に左補高靴を着用し 10kgPWB での歩行器歩行 CKC トレーニングを開始した POD21 に全荷重での両 T 字杖歩行可能となり POD27 に退院となった 退院時評価 ROM は股関節屈曲 60 度 /40 度 膝関節屈曲 85 度 /95 度 伸展 0 度 / 5 度であった 右膝関節の疼痛は VAS23mm と改善がみられた 10m 歩行は 14.07 秒であった 歩行は両 T 字杖 左補高靴を使用し 歩行距離は術前と同程度まで獲得できた 右足関節背屈筋力は退院時 MMT4 まで改善した 考察 THA 患者において同側膝関節に外反変形を有する場合 荷重位で股関節屈曲内転内旋位の脱臼肢位となるため患部の管理に難渋するが 本症例は TKA を同時に行い下肢アライメントが改善したことに加え 早期より CKC トレーニングを行い下肢の協調的な動作習得を図ったことにより 比較的早期の歩行獲得に繋がったと考えた はじめに 今回 人工股関節置換術(THA) を控えた症例に対し JHEQ の動作項目および股関節屈曲可動性と腰椎機能について検討したので報告する 対象及び方法 対象は 平成 26 年 7 月から平成 26 年 9 月までに当院を受診し THA 施行予定となった 12 例 ( 男性 3 例 女性 9 例 平均年齢 57.5±6.1 歳 ) である 術前評価から JHEQ 動作項目 股関節屈曲可動域 X 線による前屈時腰椎後弯角を抽出した 股関節屈曲角度から 90 以上を屈曲良好群 ( 男性 3 名 女性 4 名 60.4±3.7 歳 ) 90 未満を屈曲不良群 ( 女性 5 名 平均年齢 55.4±8.1 歳 ) とし JHEQ の動作項目合計点を比較検討した なお 腰椎後弯角は 各腰椎椎体上縁に接線を引き 各椎体間のなす角度を計測し 前弯を+ 後弯を とした 統計には対応のない t 検定を用い 有意水準を 5% 未満とした 結果 両群間に有意差は認められなかった また 屈曲不良群の中で JHEQ 動作項目の合計点数が最大を呈した例 ( 最大値例 :8 点 ) と最小を呈した例 ( 最小値例 :1 点 ) における各椎体間の角度は それぞれ L1/2 が 7.3 0.4 L2/3 が 2.1 0.4 L3/4 が 8.3 2.2 L4/5 が 3.6 3 L5/S1 が 3.4 8.4 であった 考察 JHEQ の動作項目は その各項目がほとんど屈曲可動性を反映していることが考えられるが 両群間に有意差を認めなかったことから 屈曲制限が影響しているとは言い難い その理由として 骨盤の十分な後傾と腰椎の後弯が関与していると考えられる 今回は症例数が少ないため統計学的検討は出来ないが 屈曲不良群の中で JHEQ 動作項目の最大値例と最小値例における前屈時腰椎後弯角を比較したところ すべての椎間において最小例の角度が低下していた 今後症例数を増やし詳細に検討したい

偏心性寛骨臼回転骨切り術後早期の運動機能および疼痛の経過鈴木謙太郎 1) 加古誠人 1) 柴田篤志 1) 服部紗都子 1) 高木優衣 1) 中島裕貴 1) 兒玉奈菜恵 1) 竹上靖彦 2) 長谷川幸治 3) 1) 名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部 2) 名古屋大学医学部整形外科 3) 名古屋大学下肢関節再建学 目的 臼蓋形成不全に対して施行される偏心性寛骨臼回転骨切り術 (ERAO) では 術後の関節生存率についてその良好な長期成績が示されている一方 術前 術後の運動機能や疼痛に関する詳細な報告はない そこで本研究は ERAO 後早期の下肢運動機能 疼痛の経過を明らかにすることを目的とした 方法 当院にて 2013 年 6 月 ~2014 年 1 月に ERAO を施行され 理学療法を実施した 11 例のうち 男性 1 例 術後 4 週での筋力測定が出来なかった 2 例を除外し女性 8 例 ( 平均年齢 42.3 歳 術後平均在院日数 29.5 日 ) を対象とした 術側膝伸展筋力 術側股関節可動域 疼痛の視覚的評価スケール VAS を術前 術後 2 週 術後 4 週にて評価した 膝伸展筋力は HHD を使用し膝屈曲 60 の肢位で測定した値を体重で除した値を算出 可動域はゴニオメータを使用し股関節屈曲 伸展 外転 内転 外旋 内旋角度を測定 VAS は 1 日のうちの最大値を使用した 各時期の評価結果の比較には一元配置分散分析を用い 有意差がみられた場合には多重比較検定を行った 有意水準は 5% 未満とした 結果 術前 術後 2 週 術後 4 週にて術側膝伸展筋力の平均値は 38.9 9.7 17.2kgf/kg であり 術後 4 週において 術前より有意に低かった 術後 4 週における術側股関節可動域は全方向にて術前より低い傾向を示した 術後 4 週における術側膝伸展筋力および股関節可動域は ともに術後 2 週より高い傾向を示した 術前 術後 2 週 術後 4 週にて VAS の平均値は 31.0 56.6 29.6mm であり 術後 4 週において 術後 2 週より有意に低かった 考察 術後 4 週すなわち退院前には疼痛は緩和したが 残存した また 術側膝伸展筋力 股関節可動域で評価された運動機能の低下が残存した これらより 入院中の理学療法のみでは 術後 4 週という早期にて筋力 可動域の回復が不十分であるため 退院後も機能改善に向けた運動と機能評価の継続が必要であることが示唆された 大腿神経および閉鎖神経障害を呈した一症例宮ノ脇翔 1) 近藤秀哉 1) 三田村信吾 1) 森戸剛史 1) 中宿伸哉 1) はじめに 今回 左鼠径部痛を主体に大腿前面および内側と広範囲に疼痛を訴えた症例に対し 大腿神経および閉鎖神経障害が疑われた症例を経験した 双方の機能解剖に留意した運動療法を行い 疼痛の改善が得られたため その経過と疼痛の解釈に若干の考察を加え 報告する なお 症例には本発表における目的と意義について十分に説明し 同意を得た 症例紹介 症例は 80 歳代の女性である 昨年 6 月下旬 しゃがみ込みに伴い左鼠径部への疼痛を感じ 徐々に疼痛増悪したため 7 月下旬に当院受診 左股関節周囲炎と診断され 運動療法開始となった 患者背景として 4 月から毎日 2-3 時間畑に出て草取りをし 蹲踞姿勢を多くとっていた 理学療法評価 股関節屈曲時に鼠径部および大腿前面 伸展時に大腿前面 開排時に大腿内側および殿部への再現を認めた 圧痛は腸腰筋 恥骨筋 長内転筋 外閉鎖筋 仙腸関節に認め 仙腸関節ストレステストは陽性で殿部痛を認めるも 鼠径部への再現はなく 仙腸関節ブロックの効果もなかった FNST 陽性 感覚鈍麻を大腿前面 5/10 内側 4/10 と認めたがしびれはなかった 股関節屈曲 内転および膝伸展筋力はそれぞれ MMT3 レベルで左右差を認めた 治療内容 鼠径部管および閉鎖管での筋内圧を下げる目的で腸腰筋 恥骨筋 外閉鎖筋のリラクセーションを行った後 各神経の滑走訓練を行った 経過 運動療法 9 回目に鼠径部 大腿部 殿部痛は消失した 筋力に左右差はなくなり 感覚は大腿前面 10/10, 大腿内側 9/10 に改善した 考察 本症例は外傷既往がなく 画像所見等から脊椎疾患は否定的であった 股関節周囲に明らかな炎症性疼痛がなく 動作による疼痛再現 日常での度重なるしゃがみ姿勢の強要による股関節前方部での持続的な圧迫等により筋スパズムが生じ 各神経が絞扼され 鼠径部および大腿部痛を呈していたと思われ 各部での筋内圧が下がったことで症状改善に至ったと考えた

femoroacetabular impingement(fai) に対する運動療法 三田村信吾 1) 近藤秀哉 1) 宮ノ脇翔 1) 松本裕司 1) 細居雅敏 1) 中宿伸哉 1) 坪井真幸 2) はじめに 今回 自動車乗降時痛を訴える症例を 2 例経験した 主訴は共通するが 疼痛再現動作及び理学所見 画像所見は異なっていた 得られた所見よりそれぞれ異なった運動療法を展開したため若干の文献的考察を加え報告する 理学所見及び運動療法 症例 1 は 30 歳代後半 男性 現場監督である 主訴は荷物を持った状態での自動車乗降時痛 和式トイレ時痛である 疼痛再現は股関節 90 屈曲内旋で得られた 同肢位で大腿骨を頚部軸方向に牽引すると疼痛は軽減した 股関節 ROM( 患側 / 健側 ) は骨盤を固定した状態で屈曲 80 /90 外転 20 /20 屈曲外旋 50 /50 屈曲内旋 5 /25 であった 腰椎後彎柔軟性 (PLF) テストは陽性であり Anterior impingement sign (AIS) Patrick test は陽性であった レントゲン (X 線 ) 像では ischial spine sign(iss) herniation pit(hp) を認め CT で acetabular retroversion(ar) を認め 股関節外科医により pincer type FAI と診断された 治療は大腿骨頭の牽引操作と腰椎椎間関節の後彎可動域改善 大腿骨頚部軸での股関節屈曲を自動介助にて行った 症例 2 は 30 歳代後半 女性 主婦である 主訴は自動車降車時痛である 疼痛再現は股関節軽度屈曲外旋で得られた 股関節 ROM( 患側 / 健側 ) は骨盤を固定した状態で屈曲 90 /90 外転 35 /45 屈曲外旋 50 /70 屈曲内旋 25 /25 であった PLF テストは陰性で AIS Patrick test は陽性であった X 線像では bump 形成 cross over sign(cos) ISS hp を認め 股関節外科医により combined type FAI と診断された 治療は長内転筋ストレッチングと大腿骨頚部軸での股関節屈曲を自動介助にて行った