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4 図は第 3 図の上半分相当である 有限平面波の端又は平面波でない波例えば球面波 傾いた平面波などが境界に入射すると モード変換波が発生すると言える 境界に傾いて入るとモード変換波が発生する フォーカス探触子フォーカス探触子で送信音圧を高めようとする場合 実測すると思った様に音圧が上がらない事が多い これはフォーカスするほどメインビームの波面方向の音圧傾斜は強くなる 音圧傾斜が強ければ より拡散する その為 フォ 第 5 図フォーカスのシミュレーション ーカスで音圧を高めるのは意外と大変である フォーカス径は大体波長程度と言われる 第 5 図は変位 FDTD シミュレーション結果で フォーカス点での音圧は 送信直後の音圧の精々 2.5 第 6 図フォーカス効果 倍なのである 探傷器で観測されるエコー波形の振幅変化はもっと激しい これは受信時の合成開口によるもので 第 6 図左の様にフォーカス点に小さな欠陥が有る場合 振動子面で欠陥からの音波の位相がぴったりする 図中央の様に一方半波長程度ずれると 振動子面に入り波の位相が合わず 開口合成の結果殆ど信号が得られない また平面振動より球面振動子の方が欠陥検出能の良い理由も同様に図右 (c) でわかる 一方で焦点以外は感度が無い 即ち有効ビーム幅が狭い欠点でもある ゼロ輻射角と BED 半世紀前に超音波関連会社に入社し パルス波の超音波ビームのゼロ輻射角をハイドロホンなどの音圧測定センサーで測定しようとしたが 音圧がゼロに観測される点は存在しなかった 一般にゼロ輻射角と計算される部分では確かに音圧は弱くなっているが ゼロに成らない また 第一ゼロ輻射角と第二ゼロ輻射角の間は従来理論によるとメインビームと位相が逆であるが 実際に測定すると位相が逆の場合は無い また逆相であれば 大きな受信センサーでもゼロ になる位置があるはずだが無い この理論はエビ デンスの無い仮定のもとの理論で正しいかどうか怪しかった 他方 送信と受信を同じ探触子で行う 一探触子法ではゼロ輻射角は観測される これは受信時の振動子面での合成開口の結果であると分かった スピーカのゼロ輻射角は計測されたと言う話は無く 気にもせずに設計される が 受信に使うマイクロホンは常にゼロ指向角が存在し ゼロ指向角の設計が重要な要素でもある 波長に比べ振動子幅が大きいと 受信時には第 7 図の様に振動子幅内に波長の整数倍が入射する角度が存在する 実際は振動子内部での音圧分布が受信信号になるので多少異なるが 概略この角度 θn が感度ゼロとなる 図から第一受信感度ゼロ角は θ1= sin 1 λ 式 (1) D となる BED の考えに基づき考えると 一般に言われるゼロ輻射角らしき部分が明確になる 弱くなるが位相反転しない事も判る 第 8 図にバースト波の場合を模式化する 図で1のメインビームの端が2BED の様に外側に広がり ビーム他端からの逆位相の BED3が4 で重なると振幅が低くなる 6より5 の方が 第 7 図受信指向特性 それらが発生するメインビーム端からの距離が

近く 結果音圧の絶対値は大きく 差し引き逆相にはならない 一波目の外への BED63 は 7 で重なって 6 を弱める 図の θ の角度を計算すると 一般に が間違った理論上のゼロ輻射角と勘違いしたものと思われる 送信にはゼロ輻射角は存在しないのは確実だ 第一ゼロ輻射角又は指向角は一般に以下の式で与えられる 受信時の式 (1) の受信感度ゼロ角と同じとなる Φ = sin 1 λ 式 (2) D 試しにサイン 1 波音圧でシミュレーションすると第 10 図となる 通常広帯域探触子をスパ 第 8 図 BED 模式でのゼロ輻射角 言われる第一輻射角相当となる が 内側 BED より外側 BED の方が近い分強度が大きいので 音圧が反転する事はない 初動から一波目までは BED 同士が重ならないので 短いパルス波や先端が非常に高い減衰振動では重なり合いは殆ど起きず 2 波以上のバースト又は連続波の場合に観測される 第 9 第 10 図一波の場合のシミュレーション 第 11 図半波の場合のシミュレーション 第 9 図輻射角 図に 4MHz 8 mm角振動子の鋼材内はバースト波変位 FTDT 法によるシミュレーションを示す 画像から感度が下がった部分が観測されるが 感度がゼロの部分は無い 最初の半波は何影響も受けずに単位広がっているだけで 1 波目もその後端が少し影響しているように見える 広帯域探触子が狭帯域探触子よりビーム幅が広く観測される一つの理由でもある この最初の角度がゼロ輻射角相当で これを旧来の実験学者 イク励振で発生する半波の場合は第 11 図となる 波が中央に来た時と左端に来た時を重ねた 近距離音場限界は図の大体中央の位置である 音圧波形は右にある小さな縦線での音圧である 何れもゼロ輻射角もどきは全く観測されないし 計算上の指向角は 10 度であるが ビームはこれより広がっている また 送信直後は一波又は半波の波が伝搬するにしたがい 波数が増える これは主に位相逆の内側 BED が ビーム中心で集まるからである このシミュレーションでは画面右端で 0.75~1.5 波になっている セロ輻射角は存在しないので 式 (2) は 第一輻射強度低下角度 とでも呼ばないとまずい 送 受信を考えると 第一ゼロ受信感度角 式 (2) と式 (1) は同じなので 第一ゼロ感度角 とでも名付けるべきである 第二ゼロ感度角なども存在し 以下の式となる nλ 1 θ n = sin 2D

指向角は感度が -20dB 又は -6dB の角度を言い -20dB 指向角はほぼ 第一ゼロ感度角 に近く -6dB 指向角は半分程度となる 連続波でない限り 正負の送信または受信音圧波形は異なる 前式は正負音圧が同じ ( 積分 ) 量と仮定した場合で 実際の探触子は可なり異なる指向角を示す 円形振動子や他の形状の振動子の場合 受ける音圧の振動子面での積分値がセロとなる角度が実際の指向角と一致するので 受信波形が知られている場合は計算で求めた -20dB 指向角と実測値は大よそ一致する なお 前にも述べたが 送信が干渉して弱くなっている 第一輻射強度低下角度 に反射体があっても 反射波が周囲より弱いとは限らない 干渉している波の運動の方向が異なるので 平面反射体だと違う方向に波は反射する 即ち弱い反射とならない ある意味音の FDTD シミュレーションの結果は理解の仕方と間違えると とんでもない結果をもたらす アレイなどの振動子素子間隙間一般のアレイ探触子素子間は隙間がある 同様隙間がある場合はどうなるのであろうか? 隙間のある状況を模擬した光弾性可視化の結果を第 12 図に示す ガラス試験片に N ノッチを加工しそこを空気とし 図の上に探触子を配置する 図上は音が入射した瞬間 中段は少し伝搬した第 12 図隙間可視化状態で BED が発生している事が判る 図下段では左右の隙間が両側からの BED で埋まり これ以降は元々隙間があった中央からは殆ど BED が発生しない 通常の端部からの BED より弱い BED が存在するだけである 第 13 図の様に BED が衝突し 音圧傾斜が弱くなって BED の発生がほぼ止まったと考えられる 両方の BED が衝突し始めるのは隙間の半分程度伝搬してからである 5MHz のアレイ探触子では隙間は 0.1 mm前後なので 振動子を出て事実上直ぐに 平面波的 ( 位相制御した場合は球面波的 ) になると考えられる なお 位相制御して斜角とする場合は 波面の時間ずれが小さい場合は上記同様であるが 時間ずれが大きいと ビーム間の隙間が埋まらない状況となる あとがき今回裏面反射 フォーカス 輻射角 アレイなどを BED の模式化で説明した 色々な現象が BED で説明できる事が判った 次回は第 1 0 図の様な 伝搬にともなう音波波形の変化などの話をする 今回知った事 (1) 平面波の端又は平面波でない波が境界に入射すると モード変換波が発生すると言える (2) 一般の垂直探触子の裏面反射では端のある平面波なので 主に周囲でモード変換した横波が発生する (3) フォーカス探触子のフォーカス効果は 送信より受信時の開口合成によるところが多い (4) ゼロ輻射角は存在しない (5) ゼロ輻射角相当で音圧強度は下がる (6) 受信感度がゼロとなる セロ感度角 は従来のゼロ輻射角相当で存在する (7) FDTD シミュレーションの結果は理解の仕方と間違えると とんでもない結果をもたらす (8) アレイ振動子素子間ギャップは同時励振すると直ぐに BED 埋められ 実質平面波的となる < 参考文献 > 超音波技術入門 発信から受信まで (2015/04 初版 2 刷 日刊工業新聞社 )Analysis of transient acoustic radiation field from pulse-driven finite(2015 International Congress on Ultrasonics, 2015 ICU Metz)

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