甲状腺癌転移に対する¹³¹I治療頻回(4回以上)施行例の臨床的検討

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33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

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外来在宅化学療法の実際

がん登録実務について

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

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密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

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2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

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付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを


付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

目次 甲状腺とは 3 甲状腺ホルモンとは 4 甲状腺ホルモン量の調節 6 甲状腺がんとは 8 甲状腺がんの種類 9 甲状腺とは 甲状腺は のどぼとけのすぐ下にある重さ 10 ~ 20g 程度の小さな臓器で 甲状腺ホルモン というホルモンをつくっています ちょうど 蝶が羽を広げたような形をしていますが

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

2 4 診断推論講座 各論 腹痛 1 腹痛の主な原因 表 1 症例 70 2 numeric rating scale NRS mmHg X 2 重篤な血管性疾患 表

を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

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第71巻5・6号(12月号)/投稿規定・目次・表2・奥付・背

IARC/IACRにおける多重がんの判定規則改訂版のお知らせ

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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研究の実績と今後の目標 日本医科大学内分泌外科杉谷巌 1993 年より 20 年間在籍した癌研究会附属病院 ( 現 : がん研有明病院 ) におい て経験させていただいた症例を中心に 主に甲状腺癌についての臨床研究を行 ってまいりました 1. 甲状腺乳頭癌 ~ 彼我の治療方針の相違を乗り越えるための

< 高知県立幡多けんみん病院 年院内がん登録 ( 詳細 )> 性 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 ~9 9~ 総計件数比率 口腔 咽頭食道胃結腸直腸肝臓胆嚢 胆管膵臓喉頭肺骨 軟部皮膚乳房子宮頸部子宮体部卵巣前立腺膀胱腎 他の尿路 女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男女男

院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録


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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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院内がん登録集計報告

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造影剤を用いる MRI 検査を受けられる方へ 造影剤は画像検査で診断を容易にするために使用される検査用の薬剤です 今回の検査では ガドリニウム造影剤というガドリニウムという物質を含む薬剤が使用されます 造影剤は血管内に注射され 全身の血管や臓器に分布します 造影剤の使用によって病気の性質や血管や臓器

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その他の腫瘍 Ⅰ. ランゲルハンス細胞組織球症 (LCH) ランゲルハンス細胞組織球症 (LCH) は 以前はヒスチオサイトーシス Xと呼ばれ レットラー シーベ病 ハンド シューラー クリスチャン病 好酸球性肉芽腫と 3 型に分類されていました それらがいずれもランゲルハンス細胞による疾患と分かり

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

1 BNCT の内容 特長 Q1-1 BNCT とは? A1-1 原子炉や加速器から発生する中性子と反応しやすいホウ素薬剤をがん細胞に取り込ませ 中性子とホウ素薬剤との反応を利用して 正常細胞にあまり損傷を与えず がん細胞を選択的に破壊する治療法です この治療法は がん細胞と正常細胞が混在している悪

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

ポプスカイン0.75% 注シリンジ 75mg /10 院 Popscaine 75mg /10 院 / 筒 丸石 薬価 円 / 筒 効 硬膜外麻酔 用 ( 注 )1 回 150mg ( 本剤として20 院 ) までを硬膜外腔に投与 禁 大量出血やショック状態, 注射部位またはその周辺に

日本職業・災害医学会会誌第58巻第2号

表. 対象患者 (n=88) の臨床病理学的因子 Characteristic n (%) Age (y) <5 6 (.) 5 7 (67.) Gender Female 79 (77.7) Male 9 (.) T factor T,T 7 (55.) T,T 8 (.6) N factor N

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腫瘍センターの稼働実績 ( 平成 29 年 9 月 ) 最終版 H28 年 9 月 H29 年 9 月 H29 年度累 H28 年 9 月 H29 年 9 月 H29 年度累 H28 年 9 月 H98 年 9 月 H29 年度累

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

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Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

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2018 年 3 月 15 日 株式会社千早ティー スリー 代表取締役谷口仁志 平成 30 年度診療報酬改定における重症度 医療 看護必要度関連の変更について 拝啓時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます さて 平成 30 年度診療報酬改定における施設基準等が 3 月 5 日に公開され 重症度

表 PET 検査を実施する有床施設の病床数分布 病床数 表 PET 装置の種類と設置台数 割 5 床以上 床 8. PET CT 装置 床 6.5 PET 専用装置 床.5 9 床 ポジトロン CT 組みわせ型 SPECT 装置

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

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2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

基礎知識 1. 甲状腺について 甲状腺は いわゆる のどぼとけ ( 甲状軟骨 ) のすぐ下の気管の前にあり 気管を取り囲むように位置しています ( 図 1) 重さ 10~20g 程度の小さな臓器です 羽を広げたチョウのような形で 右葉 ( うよう ) および左葉 ( さよう ) 中央の峡部 ( きょ

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甲状腺分化癌転移に対する 131 I 治療 全身シンチグラフィ 神戸市立医療センター中央市民病院 糖尿病内分泌内科 石原隆

肺転移 ( 乳頭癌 ) 131 I 治療 1 回目肺転移 3 回目 5 回目 10 回目 11 回目 14 回目完治

甲状腺悪性腫瘍の比率と予後 発生比率 生命に関する予後 乳頭癌 85-95% >95%/10 年 濾胞癌 5-7% 65-80%/10 年 未分化癌 1% 0%/1 年 悪性リンパ腫 1-3% 60-80%/5 年 ( 森徹著 : 甲状腺疾患の手引き )

甲状腺分化癌の転移部位 縦隔複数臓器骨 10.6 % 7.3 % 22.8 % 6.7 % 23.3 % リンパ節 28.4 % 36.6 % 乳頭癌 30.9 % 肺 6.7 % 濾胞癌 26.7 % 乳頭癌中 4.6% に脳転移あり

131 I 治療の対象隣接臓器への浸潤局所再発遠隔転移 131 I ablationの目的肉眼的病変がなくても 全摘後の残存甲状腺 (thyroid bed) の破壊 微小あるいは不顕性転移の死滅

131 I の特徴 半減期約 8 日間 割合 飛距離 細胞障害 b 線 90% 1mm 以下 強い g 線 10% 長い 体外へ なし ( 検出可能 )

131 I 治療 ablation の条件 1. 甲状腺全摘 2.TSH 高値 ( 刺激 ) 3. ヨード制限食 4. 施設

全摘か半切か方針の決定 1. 内科系が決める病院では全摘の頻度が高い 甲状腺半切で転移の診断が遅れ 131 I 治療に難渋する例を多く紹介されるため 2. 外科系病院では半切の頻度が高かったが 最近全摘例が増加する傾向にある 隈病院では 2005 年全摘 70% 半切 28%

甲状腺乳頭癌肺転移 131 I X-ray CT 半切例で 胸部 X-P では異常を認められなかったため 全肺野に微小転移をきたした症例

131 I 治療 ablation の条件 1. 甲状腺全摘 2.TSH 高値 ( 刺激 ) 3. ヨード制限食 4. 施設

131 I- 全身シンチグラフィー (TBS) における TSH 刺激方法 1. 休薬法内服中の L-T4( チラーヂン ) を T3( チロナミン ) に変更 T3 を中止後 3 週後に 131 I-TBS を行う 2.TSH( タイロゲン ) 注射法 L-T4 を内服したままで 131 I-TBS を行う ヨード制限はいずれも必要

検査時の血中 TSH 濃度 Phase 1 & 2 study Meier CA, et al. JCEM 78:188, 1994

1. 全身シンチグラフィ ( 検査 ) 3-10 mci ( 休薬法 TSH 法 ) 2.Ablation 30 mci ( 外来可 休薬法 TSH 法 ) 50 mci ( 休薬法 ) 50 mci (TSH 法 ) 治療室 3. 治療に隔離 100 mci ( 休薬法 )

TSH 注射法の問題点 1. ヨード制限は重要 外来で行うか 入院させるか 2. 注射が 10 万円 X 2 本 = 20 万円 3 割負担で余分に 6 万円負担増 3.DPC 入院させた場合には注射代が高くて 赤字になる

131 I 治療 ablation の条件 1. 甲状腺全摘 2.TSH 高値 ( 刺激 ) 3. ヨード制限食 4. 施設

日本人のヨード摂取量 3000 mg/ 日 尿中排泄量 ヨード制限なし 1068 mg/gcr 中等度のヨード制限 185 mg/gcr 厳格なヨード制限 <100 mg/gcr ( 友田ホと臨床 53:1074, 2005) 131 I 3700 MBq ( 100mCi ) ヨード量 ( 主に KI ) 18.4 mg 放射性ヨード量 0.80 mg

食品常用量 ヨード含有量 (mg) 白米 160g 29 伊藤病院ヨード制限食 123 昆布 5cm 角 (5g) 8340 わかめ 1 人前 (5g) 502 味付け海苔 1 人前 (1g) 75 ヨード卵 1 個 (50g) 500 とろろ昆布 5g 9000 昆布だし汁 1g 2000 ( 伊藤公一ホと臨床 55:587, 2007)

ヨード制限食 ( 4 頁の説明書 ) 1) 昆布 わかめ のり ひじきなどの海草類 かんてん 佃煮 昆布だしの吸い物 ( うどん そば ) ヨード卵 飲料水 ( アサヒ十六茶 ) 甲状腺のくすり ルゴール液および咳止めなど 2) ヨード造影剤を使う検査 (CT 腎臓 胆のう 気管支鏡 血管造影など ) 10 日前より自宅で 4 日前より入院して行うことで 前日入院に比べ治療成績が著しく改善した

食用赤色 3 号 薬品などに赤色をつける物質 239 品目に使用 ( 平成 14 年 ) C20H6 I4 Na2O5 H20 2Na H2O

赤色 3 号 (mg) ヨード量 (mg) ユベラニコチネート 82 46 ユベラ錠 ユベラNソフトCは可 アタラックス錠 25 276 184 アタラックス錠 10, アタラックス-Pは可 メタルカプターゼ 100 1660 940 MSコンチン 30mg 480 271 10, 60mgは可コーラック 100 57 ビタメジンC 25mg 510 288 ビタメジンC 50mg 670 379 わかめ 1 人前 (5g) 502

アタラックス 25mg 10mg

131 I 治療 ablation の条件 1. 甲状腺全摘 2.TSH 高値 ( 刺激 ) 3. ヨード制限食 4. 施設

今後の全国的課題 1. 131 I 治療のできる施設数 平成 14 19 22 年 治療可能施設数 66 64 62 稼働ベッド数 188 158 145 投与件数 1262 2157 2639 25 年核医学会ホームページ 131 I 治療受け入れ可能施設数 51 施設

2. 131 I 治療病床の活用率 14 19 22 年 活用率 36.5 65.3 87.7 % 治療可能な施設数が変化なく 治療可能症例数が限界にきており 平均 6ヶ月待ち 専門病院では治療基準を厳しくても1 年以上 診療報酬上の適正な評価を求める必要あり

131 I 治療前後のトラブル 1. 内服直後嘔吐したため 治療室が汚染した 2. 腫瘤が神経接触症例ではTSHが高値になり腫瘤がごく僅か大きくなったために下半身麻痺に陥った 3. 頚部の巨大腫瘤が 131 I 被曝のため著明に腫大して 気管を圧迫 緊急気管切開術を施行 4. 脳転移例で 131 I 内服直前と内服翌日に脳出血をきたした 血腫除去術を施行

T1W1 脊椎 MRI T2W1 Th4 椎体 ~ 左肋骨に腫瘤あり 骨外進展や脊柱管内への進展 硬膜の圧排を認める

当院での 131 I 治療適応除外基準 1. 治療室で自立した生活ができない患者 2. 神経圧迫症状のある患者 3. 気管周囲に巨大転移を認める患者 4. 脳転移の認められる患者 5. 両側反回神経麻痺のある患者

甲状腺癌 131 I 治療における SPECT/CT fusion 画像の有用性 131 I 全身シンチグラフィ (TBS) 所要時間 1) Planar Wholebody 12cm/ 分で頭からつま先まで15 分程度 Static( 頚部のみ ) 6 分 2) SPECT/CT 6 度ずつ60 view (180 度対向の2つのディテクターで収集するので実際は 30 step) 1step 47 秒撮像 Total SPECT 撮像時間は30 x 47 秒 = 23 分 30 秒 +CT 撮影時間約 5 分合計約 30 分

1 Planar 画像 Planar 画像では多発遠隔転移は認めたものの詳細な場所は不明であった

1 SPECT/CT 画像 頭蓋骨 左上腕骨 肋骨 肩甲骨 胸腰椎などの骨転移の詳細な情報を得ることができた

2 Planar 画像 SPECT/CT 画像 1 塊 Planar 画像では縦隔の集積が強く 他の集積部位が見えにくい SPECT 画像では左後頭骨 右頚部 鎖骨上窩への転移が同定できた

3 Planar 画像 SPECT/CT 画像 3 ヶ所集積が見られるが SPECT 画像では鼻 ( 赤 ) と甲状舌管への非特異的集積 ( 青 ) と甲状腺床 ( 黄 ) と診断できた 甲状舌管への集積は 6/69 例で認められた

4 Planar 画像 SPECT/CT 画像 Planar 画像で片側性であり頚部への転移を疑ったが SPECT 画像では歯根部への集積であり歯周炎と診断した

SPECT/CT 画像の併用にて 場所情報が深まり 転移部位の同定が可能 他の部位の集積が強いために不明瞭であった転移部位の明瞭化 転移か良性疾患への集積かの鑑別が可能等の診断情報の向上が認められた

問題点 治療により改善するが完治しない例で 何回治療を行うかは決まっていない 131 I 治療を 4 回以上施行した 60 例の臨床的検討 ( 転移の発見が遅く 広範囲または大きな転移病巣例が多い ) 経過観察群 数回の 131 I 治療で完治していないが ある程度の改善を認め 131 I 治療を中断し経過観察を試みた症例

背景 6 例治癒群 10% 男性 15 例 女性 45 例 11 例その他群 18% 治療回数 7.5±3.7 回 乳頭癌 40 例 濾胞癌 18 例 不明 2 例 11 例死亡群 18% 33% 悪化群 60 例 改善群 49% 16 例経過観察群 ( 治療中断 ) 27% 総観察期間 14.0±8.0 年 16 例治療中群 27%

発症年齢 10~78(39.9±19.1) 歳 60 歳 50 P=0.011 P=0.018 P=0.009 P=0.027 47.7 48.5 40 30 20 20.3 30.9 平均 62.5 歳で死亡 10 0 治癒群経過観察群治療中群死亡群

組織型 15 16 人 14 12 10 10 8 5 5 5 6 6 4 2 1 1 0 治癒群経過観察群治療中群死亡群 乳頭癌 濾胞癌

転移部位 100% 80% 0 1 1 1 0 2 3 0 1 1 60% 2 6 6 40% 5 1 20% 8 6 3 0% 0 治癒群 経過観察群 治療中群 死亡群 肺骨骨あり多臓器骨なし多臓器その他

131 I 治療中断理由 (16 例 ) 高齢のため酸素投与不要 6% 6% 挙児希望 13% 回数 25% 集積減 50% 集積著減 回数 挙児希望 8 例 4 例 2 例 酸素投与不要 高齢のため 1 例 1 例

経過観察群の検討 9.5±4.7 回治療 ( 平成 16 年時点 ) 5.2±2.8 年経過 転移部位回数最終治療時 Tg 中断後 Tg 中断時年齢中断後年数総観察年数中断理由 1 頸 LN 4 低下 69 6 16 高齢 2 骨 4 0 不変 53 7 22 集積著減 3 多臓器 5 61 不変 34 3 22 挙児希望 4 肺 5 23 不変 50 5 26 集積著減 5 肺 6 427 低下 51 6 13 集積著減 6 肺 7 261 低下 34 2 10 7 回終了 7 骨 7 9.6 低下 52 5 24 7 回終了 8 肺 8 1370 不明 29 15 23 挙児希望 9 多臓器 9 12 不変 45 7 12 肺集積消失 10 多臓器 9 0 不変 39 8 18 9 回終了 11 肺 10 42 不変 56 4 26 10 回終了 12 多臓器 11 180 不変 39 4 15 集積著減 13 肺 11 109 不変 55 5 20 集積著減 14 肺 13 21 不変 45 3 14 集積著減 15 多臓器 16 19 不変 42 6 26 集積著減 16 肺 21 1000 不変 40 7 37 酸素不要

平成 26 年 1 月での検討 中断平均 15 年後 例 1. 集積著減 Tg 不変または低下 7 増加 治療再開 1 2. 回数 Tg 不変または低下 3 増加 治療再開 1 3. 挙児希望再開子供なし 4 年後 改善 1 子供 2 人 24 年後 悪化 1 4. 高齢 酸素不要 1

集積著減例はほどほどの回数で中断して経過観察しても良いと思われる 集積が残っていても Tg 低下例では経過観察も可能かもしれない 妊娠のために中断することは可能と思われる 10 回以上は発癌のリスクが上昇するかもしれない

Survival Survival 転移例の生存率曲線 Generation Histology 1.8 <40 1.8 Papillary.6 40-60.6 P=0.002.4.2 >60.4.2 Follicular 0 0 0 25 50 75 100 125 150 175 200 Months 0 25 50 75 100 125 150 175 200 Months (Kaplan-Meier)