スライド 1

Similar documents
第 6 回の目的 確定年金現価の算式について理解する 終身年金現価の算式について理解する 簡単な例で掛金の計算をしてみる 極限方程式を理解する 年金数理第 6 回 2

Microsoft PowerPoint - 年金数理第7回.ppt

年金数理 問題 4.( ) ( ) および ( z ) の 3 生命に対して以下の条件で給付する年金の現価は次のいずれか (3 点 ) ( ) が生存中は ( ) ( z ) のうち少なくとも一方の生存を条件として ( ) に年金額 を支払い 同時に ( ) ( z ) のうち生存している者に (

<4D F736F F D208EC096B18AEE8F80874A82528D862E646F63>

平成 25 年度年金数理 2 3 年金年額 年 回期初払い を支給する 65 歳支給開始 20 年保証終身年金の 45 歳時の給付現価を算定する ただし 65 歳までの据置期間中に受給権者が死亡した場合には 死亡の翌期初から遺族に本人と同額の年金を 20 年間支給する 基数表は次のとおりであり 期初

年金数理 問題 3. 予定利率を としたとき 初年度の年金額が 年度の年金額が ( である期初払い 年確定年金の年金現価は次のいずれか (3 点 (A ( (B ( (C 問題 4. 利力 δ と死力 µ が次のように与えられたとき に最も近いものは次のいずれか なお.78とする (3 点 ( 0

柔軟で弾力的な給付設計について

年金数理(問題)

年金数理 ( 問題 ) 2018 年度年金数理 1 この年金数理の問題において特に説明がない限り 次のとおりとする 被保険者 とは 在職中の者をいう 年金受給権者 とは 年金受給中の者および受給待期中の者をいう 加入年齢方式 とは 特定年齢方式 のことをいう 責任準備金 とは 給付現価から標準保険料

目次 1. はじめに (1) 解約返戻金の設定について 2. 伝統的商品 ( 養老 終身等 ) の解約返戻金 (1) 解約返戻金算定の基本的な考え方 (2) 保険料 (3) 保険料積立金 (4) 解約返戻金 3. 最近の個人保険商品の解約返戻金 (1) 低 ( 無 ) 解約返戻金型商品 (2) 市場

年金数理(問題)

日本再興戦略 改訂 2015 平成 27 年 6 月 30 日に閣議決定された 日本再興戦略 改訂 2015 においては 企業が確定給付企業年金を実施しやすい環境を整備するため 確定給付企業年金の制度改善について検討することとされている - 日本再興戦略 改訂 2015( 平成 27 年 6 月 3

確定給付企業年金 DBパッケージプランのご提案

(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

新旧対照表(第2分冊:保険会社関係)1-14-14

平成 9 年度年金数理 ( 歳の給与が 0 60 B 0, 000 で表される最終給与比例制の年金制度において 制度 加入時からベースアップを毎年.0% 見込んだ場合と見込まなかった場合で標準保険料率を比較す ることを考える このとき ベースアップを見込んだ標準保険料率 ベースアップを見込まない 標

第1回 オリエンテーション

財政再計算に向けて.indd

柔軟で弾力的な給付設計について

西日本電気工事企業年金基金_No3_2017_9_FIX.indd

平成 7 年度年金数理 (3)owbig モデルの年金制度において 定常人口を仮定するものとする 次の~4について正しいものの組み合わせとして最も適切なものを選択肢の中からつ選びなさい 開放基金方式において 未積立債務の償却を永久償却 ( 未積立債務の予定利息相当分のみを償却 ) とした場合には 標

リスク分担型DB ─シリーズ③_「掛金拠出の弾力化」とリスク分担型企業年金

確定給付企業年金 DBパッケージプランのご提案

PowerPoint プレゼンテーション

年金数理 2 問題 3. 第 年度の 回目の年金額が 年あたり 第 t 年度 s ( s m) 回目の年金額が 年あたり s (t + n m ) である年 m 回払の期初払 n 年確定年金現価率を表す式として適切なものは次のいずれか (3 点 ) (A) m ( v m) ( n a (m) n

年金制度のしくみ 3 階私的年金みらい企業年金基金 2 階 1 階 公的年金 厚生年金 国民年金 共済年金 自営業者など会社員の配偶者会社員公務員など 国民年金の加入者区分 第 1 号被保険者 第 33 号被保険者 第 2 号被保険者 3 階建ての年金制度 日本の公的年金制度は 国民年金 から全ての

確定給付企業年金制度のご案内 ━ 大阪府電設工業企業年金基金のご案内 ━

1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

資料2 将来予測資料(全編)報告書版

Taro-HP用④港湾jtd.jtd

日本基準基礎講座 退職給付

給付の支給時期 脱退一時金 加入者資格を喪失したとき ( 退職 65 歳到達等 ) 65 歳未満の年齢到達で資格喪失させることも可能 遺族一時金 1 加入中に死亡したとき 2 給付の繰下期間中に死亡したとき 3 年金受給中に死亡したとき 年金 < 退職による資格喪失の場合 > 1 50 歳未満で資格

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

企業年金の財政運営に関する用語・事例解説集

財政再計算に向けて.indd

公開草案なお 重要性が乏しい場合には当該注記を省略できる 現行 適用時期等 平成 XX 年改正の本適用指針 ( 以下 平成 XX 年改正適用指針 という ) は 公表日以後適用する 適用時期等 結論の背景経緯 平成 24 年 1 月 31 日付で 厚生労働省通知 厚生年金基金

前 回 の 復 習

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

退職給付債務の概念 貸借対照表 負債 3 億円 借入金 資産 10 億円 純資産 7 億円 土地 工場 機械 有価証券 現金 貸借対照表 : 財務会計における財務諸表のひとつ 財務会計 : 企業外部の利害関係者 ( 株主 債権者 税務当局など ) に対して財務情報提供することを目的とする会計 - 比

平成 25 年度決算に基づく社員率 個人保険および個人年金保険の 金 (=1+2 この額がマイナスとなる場合はゼロとします ) 各年度の責任準備金に以下の利差益率を乗じた額の合計を基準とした額 ( 例示 ) 平成 11 年度契約 ( 予定利率 2.15 %) の利差益率の推移 平

< A F82528B C A1895E >

第3 法非適用企業の状況

付加退職金の概要 退職金の額は あらかじめ額の確定している 基本退職金 と 実際の運用収入等に応じて支給される 付加退職金 の合計額として算定 付加退職金は 運用収入等の状況に応じて基本退職金に上乗せされるものであり 金利の変動に弾力的に対応することを目的として 平成 3 年度に導入 基本退職金 付

退職給付債務の概念 貸借対照表 負債 3 億円 借入金 資産 10 億円 純資産 7 億円 土地 工場 機械 有価証券 現金 貸借対照表 : 財務会計における財務諸表のひとつ 財務会計 : 企業外部の利害関係者 ( 株主 債権者 税務当局など ) に対して財務情報提供することを目的とする会計 - 比

第6期決算公告

Microsoft Word - 訂正短信提出2303.docx

企業年金の財政運営に関する用語・事例解説集

解答速報ご利用にあたっての注意事項 解答速報のご利用につきましては 以下の内容をご確認 ご了承のうえご利用ください 解答速報はハピスマ大学独自の見解に基づき サービスとして情報を提供するものであり 公益社団法人日本アクチュアリー会による本試験の結果 ( 合格基準点 合否など ) について保証するもの

PowerPoint プレゼンテーション

柔軟で弾力的な給付設計について

計算書類等

( 注 ) ( 注 ) リスク分担型企業年金では 標準掛金額に相当する額 特別掛金額に相当する額及びリスク対応掛金額に相当する額を合算した額が掛金として規約に定められるため 本実務対応報告では 規約に定められる掛金の内訳として 標準掛金相当額 特別掛金相当額 及び リスク対応掛金相当額 という用語を

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

<31335F89F08E5593C197E F CC8C8F82B182EA82C582B781408C4B8CB4816A2E786C73>

企業年金のポータビリティ制度 ホ ータヒ リティ制度を活用しない場合 定年後 : 企業年金なし A 社 :9 年 B 社 :9 年 C 社 :9 年 定年 ホ ータヒ リティ制度を活用する場合 ホ ータヒ リティ制度活用 ホ ータヒ リティ制度活用 定年後 :27 年分を通算した企業年金を受給 A

平成 27 年度決算に基づく社員率 個人保険および個人年金保険の [ 販売名称 :W ステージ等 ] 金 (=1+2 この額がマイナスとなる場合はゼロとします ) 平成 27 年度決算に基づく単年度分について 金 (=1+2 この額がマイナスとなる場合はゼロとします ) 平成 27 年度決算に基づく

上乗部分Q1. 基金制度のどの給付区分が分配金の対象となるのか A1 基金の給付区分は 国の厚生年金の一部を代行している 代行部分 と 基金独自の 上乗部分 から構成されています 代行部分は 解散により国に返還され 解散後は国から年金が支給されますので 分配金の対象となるのは基金独自の上乗部分となり

スライド 1

年金制度のポイント

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

第4期電子公告(東京)

平成28年度政府税制改正大綱 確定給付企業年金の弾力的な運営等に係る税制上の所要の措置 所得税 法人税 等 1 大綱の概要 確定給付企業年金について ①事業主が将来の財政悪化を想定して計画的に拠出する掛金 ②事業主が拠出する掛金で給付増減調整により運用リスクを事業主と加入者で分担する企業年金に係るも

ファイナンシャル プランニングと倫理 関 連法規 Copyright (c) Akira Sugiyama all rights reserved 2

国民健康保険税率等の諮問 について 国立市健康福祉部健康増進課国民健康保険係 国立市富士見台 : ( 代表 ) 内線

平成○年○月期 第○四半期財務・業績の概況(連結)

第1 章成24 年度経営活動について004 大同生命保険株式会社平第 1 章 平成 24 年度経営活動について 1 契約業績の状況 新契約高 3.5 兆円 個人保険 個人年金保険 +Jタイプ 3.9 兆円平成 24 年度の個人保険 個人年金保険の新契約高は3 兆 5,560 億円 ( 前年度比 10

<4D F736F F D2082ED82A982E882E282B782A289F090E A815B83592E646F6378>

中小企業の退職金制度への ご提案について

Taro-中期計画(別紙)

Ⅰ. 厚生年金基金の取扱について 1. 残余財産の分配について (1) 分配の有無 Q1: 代行部分返納後に残余財産があれば 基金の上乗せ部分に係る 分配金 として 加入者 受給待期者 受給者に分配することになりますが 現時点および最終時点で残余財産はいくらになりますか? A1: 仮に平成 27 年

リスク分担型企業年金の導入事例

自動的に反映させないのは133 社 ( 支払原資を社内で準備している189 社の70.4%) で そのうち算定基礎は賃金改定とは連動しないのが123 社 (133 社の92.5%) となっている 製造業では 改定結果を算定基礎に自動的に反映させるのは26 社 ( 支払原資を社内で準備している103

年 発 第     号

公的年金(2)

第21期(2019年3月期) 決算公告

基金解散時の最低積立基準額の算定 最低保全給付 ( 控除前 ) 規約に定める最低保全給付の区分ごとに基準日における加入員 受給者等の区分に応じ計算する 各給付区分において 受給者又は受給待期脱退者でかつ加入員である者については 規約に定める残余財産の分配方法に準じて最低保全給付を計上する 将来期間に

リリース

< F2D95CA8E ED8EB CC8E5A92E895FB8EAE2E6A7464>

2017 年度第 1 四半期業績の概要 年 8 月 9 日 日本生命保険相互会社

『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

独立行政法人鉄道建設 運輸施設整備支援機構の特例業務勘定における利益剰余金につき 国庫納付が可能な資金の額を把握し 将来においても 余裕資金が生じていないか適時に検討することとするとともに これらの資金が国庫に納付されることとなるように適切な制度を整備するよう国土交通大臣に対して意見を表示したものに

事業主の皆様へ JJK は平成 29 年 7 月 1 日に厚生年金基金制度から確定給付企業年金制度 ( 企業年金基金 ) に移行して新たな スタートを切りました 代行部分 ( 国の厚生年金 ( 報酬 比例部分 ) に相当 ) を国へ返上し 純粋に企業の福利厚 生 退職給付として活用できる企業年金制度

Microsoft Word - 6 八十歳までの保証がついた終身年金

Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度

有価証券報告書の訂正報告書 ( 第 120 期 ) 自平成 25 年 4 月 1 日 至平成 26 年 3 月 31 日 大阪市大正区船町一丁目 1 番 66 号 株式会社中山製鋼所 (E01229)

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

確定拠出年金向け説明資料 スミセイのスーパー積立年金 (10 年 ) 確定拠出年金保険 ( 単位保険別利率設定型 /10 年 ) 商品提供会社 : 住友生命保険相互会社 運営管理機関 : 労働金庫連合会 本商品は元本確保型の商品です 1. 基本的性格 払込保険料は 毎月 1 日に新たに設定される保険

ごあいさつ 理事長 中川 勝之 全国地質調査業厚生年金基金は 地質調査業等で働く皆様の老後生活の安定と福祉 の向上を図ることを目的として昭和46年8月1日に設立され 今年で42年目を迎えます 紆余 曲折を経ながらも 加入事業所数410社 加入員数11,000人 年金資産680億円程を有する 基金とな

目次 1 グループ概況 2 国内生命保険事業 3 業績見通し 参考 グループ各社の概況 1

< C668DDA C8E5A814091B989768C768E5A8F DD8ED891CE8FC6955C2E786477>

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

DC 型制度では将来の給付は運用実績により決まります 運用のリスクを 将来の給付の変動という形で従業員がすべて負うことになります DC 型の制度の設計では 一定の運用利率を想定することがあります このような場合に 運用収益の変動を嫌って変動リスクの小さい資産だけに投資すると 想定された運用利率を得ら

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

2019年年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

2018 年 8 月 10 日 各 位 上場会社名 エムスリー株式会社 ( コード番号 :2413 東証第一部 ) ( ) 本社所在地 東京都港区赤坂一丁目 11 番 44 号 赤坂インターシティ 代表者 代表取締役 谷村格 問合せ先 取締役 辻高宏

スライド 1

質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

47 大木町 実質赤字比率及び連結実質赤字比率の状況と推移 22.96% 実質赤字比率は 地方公共団体の一般会計等を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率で 福祉 教育等を 行う地方公共団体の一般会計等の赤字の程度を指標化し 財政運営の悪化の度合いを示す指標ともいえます 連結実質赤字比率は

Transcription:

東京工業大学大学院経営工学専攻 2010/6/18 年金数理第 9 回 財政検証 講師 : 渡部善平 (( 株 )IIC パートナーズ ) 2010/6/18 年金数理第 9 回 1

財政検証の意義 2010/6/18 年金数理第 9 回 2

財政検証の目的 企業年金制度の掛金 : 一定の計算基礎率に基づいて算定されている 予定脱退率予定死亡率予定昇給率予定新規加入年齢 員数 実際の推移が予定通りであれば 基本的に将来とも掛金を変更することなく運営が可能 そうでない場合には掛金を変更する必要がある どの程度 どの方向で予定と実際が乖離しているか検証 1 し ( 必要に応じて ) 掛金を変える 2 1 : 財政検証 2 : 財政計算 2010/6/18 年金数理第 9 回 3

責任準備金とは ( 再掲 ) 責任準備金 : 将来発生すると見込まれる給付を賄うためにその時点で留保しておくべき金額 責任準備金 = 給付現価 - 掛金収入現価 給付現価 = 掛金収入現価 + 年金資産 から理論的には責任準備金 = 年金資産が成立しているはず 2010/6/18 年金数理第 9 回 4

財政検証の基本的な仕組み 1 財政検証は積立金と責任準備金を対比することでなされる 責任準備金 = 将来の給付支出の現価 - 将来の掛金収入の現価 積立金 ( 年金資産 )= 過去の掛金収入の元利合計 ( 終価 )- 過去の給付支出の元利合計 責任準備金 = 年金資産と同値の算式は 過去の給付支出の元利合計 + 将来の給付支出の現価 = 過去の掛金収入の元利合計 ( 終価 )+ 将来の掛金収入の現価 将来と過去を総合した収支相等 2010/6/18 年金数理第 9 回 5

年金資産 = 掛金元利合計 - 給付元利合計の意味 掛金 ( 年始に発生 ) 財政検証の基本的な仕組み 2 給付 ( 年始に発生 ) 前年末年金資産 (1+ 予定利率 ) + 掛金 - 給付 年末年金資産 前年末掛金元利合計 (1+ 予定利率 ) + 掛金 年末掛金元利合計 前年末給付元利合計 (1+ 予定利率 ) + 給付 年末給付元利合計 年末掛金元利合計 - 給付元利合計 2007 0 0 0.00 0.00 0 0.00 2008 60 40 21.00 63.00 42.00 21.00 2009 60 35 48.30 129.15 80.85 48.30 2010 60 42 69.62 198.61 128.99 69.62 2011 60 70 62.60 271.54 208.94 62.60 2012 60 50 76.23 348.11 271.89 76.23 2013 60 80 59.04 428.52 369.48 59.04 2014 60 45 77.74 512.95 435.21 77.74 2015 60 42 100.53 601.59 501.07 100.53 2016 60 90 74.05 694.67 620.62 74.05 2017 60 38 100.85 792.41 691.55 100.85 F n ( n t 1 ( F 予定利率 5% ( C t B C t )(1 i) B n t 1 )(1 i)) n t 1 (1 i) n t 1 (1 i) n t 1 n 1 n n 2010/6/18 年金数理第 9 回 6 C t n t 1 B t

財政検証の基本的な仕組み 3 理想的に掛金が算定されている場合に成立している図 将来の 給付現価 将来で見れば責任準備金 過去で見れば年金資産 将来の 掛金現価 過去の掛金元利合計 過去の給付元利合計 給付 掛金 2010/6/18 年金数理第 9 回 7

財政検証の基本的な仕組み 4 1 年間予定と実績の乖離なく推移した場合 将来の 将来の 将来の 将来の 1 年分 掛金現価 掛金現価 給付現価 給付現価 B 1 年分 A 過去の掛金元利合計 過去の掛金元利合計 過去の給付元利合計 過去の給付元利合計 給付 給付 掛金 掛金 2010/6/18 年金数理第 9 回 8

前年度末 当年度末 掛金元利合計 700 前年掛金元利合計 + 年間掛金 + 掛金元利合計に関する利息 700+60+(700+60)*0.05=700+60+38=798 給付元利合計 400 前年給付元利合計 + 年間給付 + 給付元利合計に関する利息 400+40+(400+40)*0.05=400+40+22=462 年金資産額 300 当年掛金元利合計 - 当年給付元利合計 = 798-462=336 前年年金資産 + 年間掛金 - 年間給付 + 年金資産に関する利息 =300+60-40+(300+60-40)*0.05=300+60-40+16=336 給付現価 600 前年給付現価 - 年間給付 + 給付現価に関する利息の増加 =600-40+(600-40)*0.05= 600-40+28=588 掛金収入現価 300 前年掛金収入現価 - 年間掛金 + 掛金収入現価に関する利息の増加 =300-60+(300-60)*0.05=300-60+12=252 責任準備金 300 当年給付現価 - 当年掛金収入現価 =588-252=336 前年責任準備金 - 年間給付 + 年間掛金 + 給付現価に関する利息の増加 - 掛金収入現価に関する利息の増加 =300-40+60+28-12=336 1 年間の掛金 ( 年始払い ):60 1 年間の給付 ( 年始払い ):40 予定利率 :5% 2010/6/18 年金数理第 9 回 9

前年度末 当年度末 年間給付 40 利息の増 28 年間掛金 60 利息の減 12 現価 600 現価 300 現価 588=600-40+28 現価 252=300-60+12 年金資産 300 責任準備金 300 年金資産 336 =300+60-40+38-22 責任準備金 336 =300-40+60+28-12 元利合計 700 元利合計 798=700+60+38 元利合計 400 元利合計 462=400+40+22 年間給付 40 年間利息 22 年間掛金 60 年間利息 38 給付掛金給付掛金 2010/6/18 年金数理第 9 回 10

財政検証の基本的な仕組み 5 1 年間予定と実績の乖離なく推移した場合 A : 1 年経過によって A 1 年金資産を減少させる要素 給付元利計の増加 A 2 責任準備金を減少させる要素 給付現価の減少 B : 1 年経過によって B 1 年金資産を増加させる要素 収入元利計の増加 B 2 責任準備金を増加させる要素 収入現価の減少 B 1 -A 1 B 2 -A 2 : 年金資産の変動 : 責任準備金の変動 常に給付元利合計 + 給付現価 = 収入元利合計 + 収入現価 すなわち年金資産 = 責任準備金が成立しているため 年金資産の変動と責任準備金の変動は等しい 2010/6/18 年金数理第 9 回 11

財政検証の基本的な仕組み 6 1 年間予定と実績の推移に乖離があった場合 A : 1 年経過によって A 1 年金資産を減少させる要素 給付元利計の増加 A 2 責任準備金を減少させる要素 給付現価の減少 B : 1 年経過によって B 1 年金資産を増加させる要素 収入元利計の増加 B 2 責任準備金を増加させる要素 収入現価の減少 B 1 -A 1 B 2 -A 2 : 年金資産の変動 : 責任準備金の変動 給付元利合計 + 給付現価 収入元利合計 + 収入現価 すなわち年金資産 責任準備金 の場合は 年金資産の変動と責任準備金の変動は等しくなくなる 2010/6/18 年金数理第 9 回 12

財政検証の基本的な仕組み 7 B 1 -A 1 B 2 -A 2 : 年金資産の変動 : 責任準備金の変動 年金資産の変動 > 責任準備金の変動差額 : 1 年間に生じた剰余金年金資産の変動 < 責任準備金の変動差額 : 1 年間に生じた不足金 必要掛金を減少させる要素 必要掛金を増加させる要素 2010/6/18 年金数理第 9 回 13

財政検証の基本的な仕組み 8 B 1 -A 1 B 2 -A 2 : 年金資産の変動 : 責任準備金の変動 (B 1 -A 1 )- (B 2 -A 2 ) : 剰余金 ( 不足金 ) 財政検証では 予定と実績の乖離によって生じた剰余金 不足金の分析およびその結果である年金資産と責任準備金の差を測定し 年金財政の健全性を評価する 2010/6/18 年金数理第 9 回 14

財政検証における要因分析 2010/6/18 年金数理第 9 回 15

要因分析の対象 B 1 -A 1 B 2 -A 2 : 年金資産の変動 : 責任準備金の変動 (B 1 -A 1 )- (B 2 -A 2 ) : 剰余金 ( 不足金 ) (B 1 -A 1 )- (B 2 -A 2 ) の予定 実績間の乖離の分析 (B 1 -A 1 ) 年金資産変動 の予定 実績間の乖離の分析 + (B 2 -A 2 ) 責任準備金の変動 の予定 実績間の乖離の分析 2010/6/18 年金数理第 9 回 16

利差損益 (B 1 -A 1 ) 年金資産変動 において予定利率と実際の運用収益の差によって発生する損益 予定利率と実際の運用収益が同じ ( かつほかも予定通りならば ) ならば (B 1 -A 1 ) も (B 2 -A 2 ) も予定通り 剰余 不足なし 予定利率と実際の運用収益が異なる ( かつほかも予定通りならば ) ならば (B 1 -A 1 ) は予定と異なり (B 2 -A 2 ) は予定通り 剰余 不足あり 日本年金数理人会 2010/6/18 年金数理第 9 回 17

予定よりも運用収益が少なかった場合は 不足金発生 予定通り推移 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 60 40 336 給付現価 600 28 40 588 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 336 年金資産額 - 責任準備金 0 0 利差損益 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 15 60 775 2% 給付元利合計 400 9 40 449 年金資産額 300 6 60 40 326 給付現価 600 28 40 588 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 336 年金資産額 - 責任準備金 0-10 2010/6/18 年金数理第 9 回 18

死差損益 (B 1 -A 1 ) 年金資産変動 (B 2 -A 2 ) 責任準備金変動 において予定死亡率と実際の死亡の差によって発生する損益 たとえば 年金受給者の死亡が予定よりも多かった場合 当該年度における年金資産の変動はそれほど予定と相違しない一方 責任準備金については 予定に比して減少する この場合は剰余金の発生要因になる 2010/6/18 年金数理第 9 回 19

予定よりも年金受給者の死亡が多かった場合は 将来の給付見込みが減り剰余金発生 予定通り推移 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 60 40 336 給付現価 600 28 40 588 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 336 年金資産額 - 責任準備金 0 0 死差損益 年始残高 利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 35 457 年金資産額 300 16 60 35 341 給付現価 600 28 40 570 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 318 年金資産額 - 責任準備金 0 23 2010/6/18 年金数理第 9 回 20

脱退差損益 1 (B 1 -A 1 ) 年金資産変動 (B 2 -A 2 ) 責任準備金変動 において予定脱退率と実際の脱退の差によって発生する損益 たとえば 高齢 高勤続の脱退が予定よりも多かった場合 給付サイドの要因によって過不足の原因となる 年金資産の減少は予定よりも大きい 責任準備金の減少は予定よりもさらに大きい この場合は剰余金の発生要因になる ただこれは減少のタイミングが早まっただけ 給付額が大きくなる前に退職してしまった 2010/6/18 年金数理第 9 回 21

予定よりも加入者の脱退が多かった場合は 将来の給付見込みが減り剰余金発生 予定通り推移 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 60 40 336 給付現価 600 28 40 588 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 336 年金資産額 - 責任準備金 0 0 脱退差損益 1 年始残高 利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 58 796 5% 給付元利合計 400 22 45 467 年金資産額 300 16 58 45 329 給付現価 600 28 40 559 5% 掛金収入現価 300 12 60 244 責任準備金 300 16 60 40 314 年金資産額 - 責任準備金 0 14 2010/6/18 年金数理第 9 回 22

脱退差損益 2 (B 1 -A 1 ) 年金資産変動 (B 2 -A 2 ) 責任準備金変動 において予定脱退率と実際の脱退の差によって発生する損益 たとえば 脱退が予定よりも少なかった場合 給付サイド掛金サイドの両要因によって過不足の原因となる 将来の給付は 予定勤続が伸びた分増加する 年金資産の減少は予定よりも小さい ただこれは減少のタイミングが遅くなっただけ 責任準備金は予定よりに比して増加する 給付も減少するが 将来の給付の発生度合いの増加の影響が大きい この場合は不足金の発生要因になる 2010/6/18 年金数理第 9 回 23

予定よりも加入者の脱退が少なかった場合は 将来の給付見込みが増え不足金発生 予定通り推移 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 60 40 336 給付現価 600 28 40 588 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 336 年金資産額 - 責任準備金 0 0 脱退差損益 2 年始残高 利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 62 800 5% 給付元利合計 400 22 35 457 年金資産額 300 16 62 35 343 給付現価 600 28 40 617 5% 掛金収入現価 300 12 62 257 責任準備金 300 16 62 40 360 年金資産額 - 責任準備金 0-17 2010/6/18 年金数理第 9 回 24

昇給差損益 (B 1 -A 1 ) 年金資産変動 (B 2 -A 2 ) 責任準備金変動 において予定昇給率と実際の昇給の差によって発生する損益 年金資産の変動はきわめて限定的である一方 責任準備金への影響が大きい 給付 実際 予定 年数 一般には 実際昇給が予定より大きいと 責任準備金が予定よりも増大し 不足金の要因となる 2010/6/18 年金数理第 9 回 25

予定よりも昇給が大きかった場合は 将来の給付見込みが増え不足金発生 予定通り推移 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 60 40 336 給付現価 600 28 40 588 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 336 年金資産額 - 責任準備金 0 0 昇給差損益 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 60 40 336 給付現価 600 28 40 606 5% 掛金収入現価 300 12 60 260 責任準備金 300 16 60 40 346 年金資産額 - 責任準備金 0-10 2010/6/18 年金数理第 9 回 26

新規加入者差損益 (B 1 -A 1 ) 年金資産変動 (B 2 -A 2 ) 責任準備金変動 において予定新規加入と実際の新規加入の差によって発生する損益 年金資産の変動はきわめて限定的である一方 責任準備金への影響が大きい たとえば加入年齢方式を採用している場合 予定より高齢の新規加入が発生した場合 掛金収入現価の増加よりも給付現価の増加が大きいため 責任準備金が予定以上に増大する 不足金の要因 2010/6/18 年金数理第 9 回 27

予定よりも高齢の新規加入があった場合は 将来の給付見込みが掛金収入見込みより増え不足金発生 予定通り推移 年始残高利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 60 798 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 60 40 336 給付現価 600 28 40 588 5% 掛金収入現価 300 12 60 252 責任準備金 300 16 60 40 336 年金資産額 - 責任準備金 0 0 新規加入者差損益 年始残高 利息 掛金 ( 年始 ) 給付 ( 年始 ) 年末残高 掛金元利合計 700 38 58 796 5% 給付元利合計 400 22 40 462 年金資産額 300 16 58 40 334 給付現価 600 28 40 600 5% 掛金収入現価 300 12 60 255 責任準備金 300 16 60 40 345 年金資産額 - 責任準備金 0-11 2010/6/18 年金数理第 9 回 28

質問 ( 講義の内容およびアクチュアリーの件でもOK) はつぎのメールアドレスおよび電話へ株式会社 IICパートナーズ渡部善平 z.watanabe@iicp.co.jp 電話 : 03-5501-3795( 直通 ) 2010/6/4 年金数理第 9 回 29