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品川清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

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東京健安研セ年報 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst.P.H., 57, 333-337, 2006 N,N - ビス (2,4- ジスルホベンジル ) トリジン (SBT) 試薬による遊泳用プール水中の二酸化塩素, 亜塩素酸イオン及び残留塩素の定量 有賀孝成 *, 川本厚子 *, 青山照江 *, 押田裕子 *, 永山敏廣 * Photometric Determination of Chlorine Dioxide, Chlorite Ion and Residual Chlorine in Swimming Pool Waters with the Reagent N,N -bis(2,4-di-sulfobenzyl)tolidine (SBT) Takanari ARIGA*, Atsuko KAWAMOTO*, Terue AOYAMA*, Hiroko OSHIDA* and Toshihiro NAGAYAMA* Keywords: 二酸化塩素 chlorine dioxide, 亜塩素酸イオン chlorite ion, 残留塩素 residual chlorine, トリハロメタン trihalomethane,dpd 吸光光度法 DPD photometric method,n,n -ビス (2,4-ジスルホベンジル) トリジン (SBT) N,N -bis(2,4-di-sulfobenzyl)tolidine(sbt), 遊泳用プール swimming pool, プール水 pool water, 水質調査 water quality investigation 緒言遊泳用のプール水は遊泳者に由来する有機物等を循環ろ過装置で除去しながら長期間使用している. また, プール水に起因する疾病の発生を未然に防止するために, 消毒剤として次亜塩素酸ナトリウム等の塩素剤を投入している. しかし, 塩素剤は有機物と反応してトリハロメタンを生成し, 屋内プールではプール水から揮散したトリハロメタンが室内に滞留している. 著者らの調査ではプール水中の総トリハロメタン濃度が厚生労働省の暫定目標値 200 µg/lを超えるものはなかった. しかし, トリハロメタンの一種であるクロロホルムは4.0~108.8 µg/lの範囲で検出され, 室内空気中のクロロホルム濃度は47.3~281.9 µg/m 3 を示した. そして, 水道水からは0.2~10.2 µg/lの範囲で検出された 1). 一方, クロロホルムについて環境省は空気と水から同時に摂取すると, どちらか一方だけからの摂取よりも癌の発症例が増えることを報告している 2). このため, 遊泳者らに対する室内空気からの吸入暴露と飲料水からの経口暴露との複合摂取による健康影響が危惧されている. 二酸化塩素は塩素剤に比較して酸化力が強いことやトリハロメタンを生成しないこと等から塩素剤に代わる消毒剤として期待されている 3-6). 現在のところ, プール水の消毒を二酸化塩素のみで行っている例はないが, 塩素剤と二酸化塩素を併用する施設が見られるようになった. このような施設では残留塩素に加えて二酸化塩素及びその副生成物である亜塩素酸イオンについても日常的な濃度管理を行う必要がある. そして, そのための測定方法としてN,N'-ジエチル-p-フェニレンジアミン (DPD) 吸光光度法が提示されている 7,8). 最近, 残留塩素を測定するための新しい発色試薬として N,N -ビス (2,4-ジスルホベンジル) トリジン (SBT) 試薬が開発された 9). これを用いた水中の残留塩素測定法が報告されているが,SBT 試薬を用いた二酸化塩素や亜塩素酸イオンの測定に関する報告は見られない. そこで今回,SBT 試薬を用いてプール水中の二酸化塩素, 亜塩素酸イオン及び残留塩素の分別定量法を検討したのでその結果を報告する. 実験方法 1. 試薬 1) リン酸緩衝液リン酸一水素ナトリウム24 g, リン酸二水素カリウム46 g 及び1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸 gを水で溶解し, 全量を1 Lとした. 本液のpHは6.3 付近であった. 2) SBT 試薬 ( 株 ) 同仁化学研究所製, 残留塩素測定キット用 SBT 色素液を使用した. 3) ヨウ化カリウム溶液ヨウ化カリウム10 gを水 100 ml に溶解した. 4) グリシン溶液グリシン10 gを水 100 mlに溶解した. 5) 炭酸水素ナトリウム溶液炭酸水素ナトリウム5.5 gを水 100 mlに溶解した. 6) 標準溶液二酸化塩素標準溶液及び残留塩素標準溶液 10,11) の調製は既報に従った. 亜塩素酸イオン標準溶液は亜塩素酸イオン標準溶液 ( 和光純薬工業 ( 株 ) 製, イオンクロマトグラフ用 ) を水で希釈して調製した. 7) 酢酸緩衝液酢酸ナトリウム16.4 g 及び1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸 8 gを水約 90 mlに溶解し, 酢酸を加 * 東京都健康安全研究センター多摩支所理化学研究科 190-0023 東京都立川市柴崎町 3-16-25 * Tama Branch Institute, Tokyo Metropolitan Institute of Public Health 3-16-25, Shibasaki-cho, Tachikawa, Tokyo 190-0023 Japan

334 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. P. H., 57, 2006 えてpHを4.0~5.6に調整した後, 水で100 mlとした. 特にメーカー名, 品質を記載していない試薬はいずれも和光純薬工業 ( 株 ) 製, 試薬特級品を用いた. 2. 器具及び装置 1) 分光吸光光度計 ( 株 ) 島津製作所製,UV-2450 型. 2) 積算流量計 ( 株 ) シナガワ製,W-NK-0.5A 型. 3) ケラミフィルター外径 15 mm 長さ20 mm, ガラス製円筒ガス噴霧管. 3. 定量操作 1) 曝気試料の調製試料の一定量を100 ml 容メスシリンダーに採り,25 の水浴上でケラミフィルターを用いて窒素ガスを流量 300 ml/minで10 分間通気した. 2) 試験溶液の調製 (1) 二酸化塩素試料及び曝気試料のそれぞれ20 mlにグリシン溶液 0.1 ml 及びリン酸緩衝液 1 mlを加えて混和したものを試験溶液 A 及び試験溶液 A とした. (2) 残留塩素試料 20 mlにリン酸緩衝液 1 mlを加えて混和したものを試験溶液 Dとした. 別に, 試料 20 mlにリン酸緩衝液 1 ml 及びヨウ化カリウム溶液 0.2 mlを加えて混和後,2 分間静置したものを試験溶液 Bとした. (3) 亜塩素酸イオン曝気試料 20 mlにリン酸緩衝液 1 ml 及びヨウ化カリウム溶液 0.2 mlを加えて混和後,5 分間静置したものを試験溶液 B とした. 別に, 曝気試料 10 ml にヨウ化カリウム溶液 0.2 ml 及び硫酸 (1+99)1 mlを加えて混和し,5 分間静置した. 次に, 炭酸水素ナトリウム溶液 1 mlを加えた後, 水で20 mlとし, リン酸緩衝液 1 mlを加えて混和したものを試験溶液 C' とした. 3) 測定試験溶液にSBT 試薬 0.2 mlを加えて混和したものを検液とした. 検液の一部を光路長 50 mmの吸収セルに採り, 分光光度計で水を対象にして波長 675 nmにおけるを測定した. なお, の測定はSBT 試薬を添加してから30 秒後に行った. 4) 検量線二酸化塩素は0~2.0 mg/l, 亜塩素酸イオン及び残留塩素は0~ mg/lの標準溶液を用いて, それぞれ, 試験溶液 A,C 及びBを調製すると同様に操作した後, を測定して作成した. 5) 濃度の計算試験溶液 A,B,D,A,B 及びC を測定したときのをそれぞれ,a,b,d,a,b 及びc とし, 次式により計算して得られた値をそれぞれの検量線に照らして濃度を求めた. 二酸化塩素 ;a-a 亜塩素酸イオン ;c -b /2 残留塩素 ;b-a 遊離塩素 ;d-a 結合塩素 ;b-d なお, 試験溶液 Aは二酸化塩素が呈色し, 試験溶液 A では妨害物質が呈色する. 試験溶液 Bは遊離塩素と結合塩素 を合わせた残留塩素と二酸化塩素が呈色する. また, 試験溶液 B は残留塩素が呈色し, 試験溶液 C では残留塩素と亜塩素酸イオンが呈色する. そして, 試験溶液 Dでは二酸化塩素と遊離塩素が呈色する. 4.DPD 吸光光度法による測定既報 10) に従った. 結果及び考察 1.SBT 試薬の呈色とpHの影響残留塩素 0.5 mg/lの標準溶液 20 mlにph4.0~5.6の酢酸緩衝液又はph5.8~7.4のリン酸緩衝液 mlを加えて混和した. これにSBT 試薬 0.2 mlを加えて混和し 直ちにを測定した結果を図 1に示した. 酢酸緩衝液を用いたときのはpH4.0では1.17, ph5.6では5とphによる差は比較的小さかった. しかし, リン酸緩衝液を用いたときのはpHが高くなるに従って低下し,pH5.8では1であったが,pH7.4では0.55となった. このように,SBT 試薬の呈色によるは酢酸緩衝液を用いた酸性領域で高く, 中性に向かうに従って急激に低くなることが分かった. また,pH5.6の酢酸緩衝液と ph5.8のリン酸緩衝液によるには連続性が見られる. このことから, は緩衝液の組成よりもpHに大きく依存していると考えられた. 4 5 6 7 ph 値図 1.SBT 試薬による呈色と ph の影響 酢酸緩衝液リン酸緩衝液 2. 呈色後の安定性残留塩素 0.5 mg/lの標準溶液 20 mlにph5.0~5.6の酢酸緩衝液 ml 又はpH5.9~6.5のリン酸緩衝液 1 mlを添加して試験溶液 Dを調製した. これにSBT 試薬 0.2 mlを加えて混和し, を経時的に測定した結果を図 2に示した. SBT 試薬を添加した直後のはリン酸緩衝液よりも酢酸緩衝液を用いた方が高かった. また, 酢酸緩衝液を用いたときのは呈色後も比較的安定であった. 最も変化の大きいpH5.6の場合でも30 秒後に1.18であったものが5 分後に7,10 分後に0.95となる程度であった. これに対して, リン酸緩衝液を用いたときのは呈色後, 急激に低下した. 最も変化の少ないpH5.9においても30 秒後に

東京健安研セ年報 57, 2006 335 1.5 3.0 0.5 2.0 0 5 10 発色後の放置時間 ( 分 ) 0 5 10 発色後の放置時間 ( 分 ) 図 2.SBT 試薬による呈色の安定性 酢酸緩衝液 ph5.0 ph5.2 ph5.4 ph5.6 リン酸緩衝液 ph5.9 ph6.1 ph6.3 ph6.5 図 3. 二酸化塩素の測定における遊離塩素の影響 酢酸緩衝液 ph5.0 ph5.2 ph5.4 ph5.6 リン酸緩衝液 ph5.9 ph6.1 ph6.3 ph6.5 0.99であったものが5 分後では0.62となり,10 分後では0.34 にまで低下した. このように,SBT 試薬による呈色後のは酢酸緩衝液を用いたときには比較的安定しているが, リン酸緩衝液では急激に低下することが分かった. 3. 二酸化塩素の測定と遊離塩素の影響遊離塩素 mg/lの標準溶液 20 mlにグリシン溶液 0.1 mlを添加した後,ph5.0~5.6の酢酸緩衝液 ml 又はpH 5.9~6.5のリン酸緩衝液 1 mlを加えて混和し, 試験溶液 A を調製した. 次に,SBT 試薬 0.2 mlを添加して経時的にを測定した結果を図 3に示した. リン酸緩衝液を用いたとき,SBT 試薬を添加した直後のは06~12と低い値であった. また, その後も比較的安定して推移し,5 分後でも26~71の範囲であった. これに対して, 酢酸緩衝液ではSBT 試薬を添加した直後から0.22~0.56と高い値を示した. またその後, 時間と共に急激に高くなり,5 分後では1.56~2.48となった. このことは酢酸緩衝液においてグリシン溶液の添加量が不足していることも考えられた. そこで,pH5.2の酢酸緩衝液についてグリシン溶液の添加量を0.1~2.0 mlまで変化させて測定した. その結果,SBT 試薬を添加した直後から呈色し, はその後も急激に高くなる等, グリシン溶液の添加量による違いは見られなかった. これらのことから, 酢酸緩衝液を使用すると二酸化塩素の測定において遊離塩素の妨害を受けることが分かった. 一方, リン酸緩衝液ではpH5.9ではわずかながら遊離塩素の影響を受けたがpH6.1 以上では影響されないことが分かった. 以上のことから, 緩衝液はpH6.3のリン酸緩衝液を用いることとした. しかし, リン酸緩衝液を用いたときのは呈色後, 急激に低下する. このため, 精度の良い測定値を得るためにはSBT 試薬を添加してからの測定までの時間をなるべく早く, かつ, 一定にする必要があると考えられた. そこで, の測定はSBT 試薬を添加してか ら30 秒後に行うこととした. また,DPD 吸光光度法では, 二酸化塩素と残留塩素が呈色する試験溶液 Bの調製は試料にリン酸緩衝液とDPD 試薬の混液を加えて混和した後にヨウ化カリウム溶液を加えて混和し,2 分間静置してを測定する 12,13). しかし, 前述したようにリン酸緩衝液を用いたときのはSBT 試薬を添加後, 速やかに測定する必要がある. そこで, 試験溶液 Bの調製は試料にリン酸緩衝液及びヨウ化カリウム溶液を加えて混和し,2 分間静置した後にSBT 試薬を添加した. そして, 直ちにを測定することとした. なお, 亜塩素酸イオンを測定するための試験溶液 B においても同様に操作することとした. 4.SBT 試薬の添加量残留塩素 mg/lの標準溶液 20 mlにリン酸緩衝液 1 ml を加えて混和した後,SBT 試薬の5~ mlを添加してを測定した結果を図 4に示した. SBT 試薬の添加量が5 及び0.1 mlのときのは明らかに低い値であったが,0.2 ml~ mlではほとんど同じであった. このことからSBT 試薬は試験溶液 20 mlに対して0.2 mlを添加することとした. 2.0 0.2 0.6 SBT 試薬の添加量 (ml) 図 4. 残留塩素の測定における SBT 試薬添加量の影響

336 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. P. H., 57, 2006 亜塩素酸イオン (mg/l) 0.6 0.2 0 1 2 3 4 5 放置時間 * ( 分 ) 図 5. 亜塩素酸イオンの測定に及ぼす遊離塩素の影響遊離塩素 0 mg/l 0.2 mg/l 0.5 mg/l mg/l * 硫酸 (1+99) 添加後, ヨウ化カリウム溶液添加までの時間 5. 亜塩素酸イオンの測定と遊離塩素の影響亜塩素酸イオン0.5 mg/l 及び遊離塩素 0~ mg/lを含む混合標準溶液を用いて亜塩素酸イオンを測定し, 結果を図 5 に示した. このとき, 試験溶液 C の調製は硫酸 (1+99) を加えて混和してから1~5 分間放置した後にヨウ化カリウム溶液を添加した. 遊離塩素が0.5 及び mg/lのときの亜塩素酸イオンの測定値は硫酸 (1+99) を添加してからの放置時間が1 分間ではそれぞれ1 及び0.32 mg/lとなった. そして,3 分間では 0.30 及び0.15 mg/lとなり,5 分間の放置ではそれぞれ0.23 及び0.12 mg/lにまで低下した. このように, 亜塩素酸イオン の測定値は硫酸 (1+99) を添加してからヨウ化カリウム溶液を添加するまでの放置時間が長いほど低くなった. また, 遊離塩素の濃度が高いほどその影響を強く受けた. そこで, 試料にヨウ化カリウム溶液を添加し, 次に硫酸 (1+99) を添加して測定した結果, 遊離塩素の影響は受けなかった. これらの結果から, 遊離塩素による妨害が試料に硫酸 (1 +99) を添加してからヨウ化カリウム溶液を添加するまでの放置時間に関係していることが明らかとなった. そして, ヨウ化カリウム溶液を先に添加し, その後に硫酸 (1+99) を添加すれば遊離塩素の影響を受けないことが分かった. なお, 亜塩素酸イオンの測定には曝気試料を用いているが, 二酸化塩素が検出されない試料では曝気処理を行う必要はない. 曝気処理は二酸化塩素を除去することで二酸化塩素による亜塩素酸イオンの測定誤差を排除するためのものである. また, 曝気試料から調製した試験溶液 A は二酸化塩素の測定において妨害となる物質で, 曝気によっても揮散しないものについて, その影響を除去するものである. 後述するプール水 (n=40) を測定したときの試験溶液 A のは二酸化塩素として0~21 mg/l( 平均値 065 mg/l) に相当する値であった. 6. プール水への適用遊泳用プール,37 施設のプール水 (n=40) を用いて本法 (SBT 吸光光度法 ) 及びDPD 吸光光度法により二酸化塩素, 亜塩素酸イオン及び残留塩素を測定し, 結果を図 6に示した. SBT 吸光光度法 (mg/l) 0.6 0.2 二酸化塩素 y = 0.923 x + 01 R 2 = 0.956 0 0.2 0.6 亜塩素酸イオン y = 02 x - 15 R 2 = 0.955 SBT 吸光光度法 (mg/l) 遊離塩素 y = 0.969 x + 10 R 2 = 0.979 DPD 吸光光度法 (mg/l) 残留塩素 y = 50 x + 29 R 2 = 0.962 0 DPD 吸光光度法 (mg/l) 図 6.SBT 吸光光度法及び DPD 吸光光度法による測定値の比較

東京健安研セ年報 57, 2006 337 なお, 現在のところ二酸化塩素を使用している施設は限られていることから, 塩素剤だけを使用しているプール水に二酸化塩素及び亜塩素酸イオンの標準溶液の適当量を添加して測定した. 本法による測定値はDPD 吸光光度法の測定値とよく一致した. 相関係数は最も低い亜塩素酸イオンでも0.955であり, その他は0.956~0.979といずれも高い相関を示した. また, 近似線の傾きを見ると, 本法による測定値はDPD 吸光光度法による測定値に対して二酸化塩素が0.923とやや低く, 残留塩素が5とやや高い値であった. また, 遊離塩素及び亜塩素酸イオンではそれぞれ0.969 及び0であり, いずれも良く一致する結果が得られた. まとめ残留塩素の発色試薬として市販されているSBT 試薬を用いて, プール水中の二酸化塩素, 亜塩素酸イオン及び残留塩素の分別定量法を検討し, 次の結果を得た. 1) SBT 試薬の呈色に酢酸緩衝液を使用したときのはリン酸緩衝液の場合に比較してやや高く, 呈色後も比較的安定していた. 一方, 酢酸緩衝液を使用すると二酸化塩素の測定において遊離塩素の妨害を受けたが, リン酸緩衝液ではその影響を受けなかった. そこで, 緩衝液にはpH6.3 のリン酸緩衝液を用いることとした. 2) リン酸緩衝液を使用したときのは呈色後急激に低下する. このため, 残留塩素の測定はリン酸緩衝液及びヨウ化カリウム溶液を添加して2 分間静置した後にSBT 試薬を添加し, 直ちに測定する必要があった. 3) 亜塩素酸イオンの測定において, 試料に硫酸 (1+99) を添加した後にヨウ化カリウム溶液を加えると遊離塩素の妨害を受けたが, 先にヨウ化カリウム溶液を添加し, 次に硫酸 (1+99) を加えれば遊離塩素の影響を受けないことが分かった. 4) プール水を用いて二酸化塩素, 亜塩素酸イオン及び残 留塩素を測定した結果, 本法による測定値はDPD 吸光光度法による測定値とよく一致した. 本法はプール水中の二酸化塩素, 亜塩素酸イオン及び残留塩素を分別定量することができた. しかし,DPD 吸光光度法に比較すると呈色後の退色が極めて早いことに留意する必要があった. 文献 1) 有賀孝成, 川本厚子, 押田裕子他 : 東京健安研セ年報, 54,283-289,2003. 2) 環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課 : 複数媒体汚染化学物質調査報告書, 平成 15 年 7 月. 3) 金子光美 : 水の消毒, 初版,123-146,1997,( 財 ) 日本環境整備教育センター, 東京. 4) 井上裕彦, 伊藤保, 堤行彦他 : 水道協会雑誌,74(9), 10-21,2005. 5) 神谷俊行, 河相好孝, 山内登起子他 : 水道協会雑誌, 74(6),3-14,2005. 6) 相沢貴子 : 水環境学会誌,21,571-576,1998. 7) 遊泳用プールの衛生基準について : 厚生省生活衛生局長通知, 第 45 号, 平成 4 年 4 月. 8) 遊泳用プールの衛生基準について : 厚生省生活衛生局企画課長通知, 第 46 号, 平成 4 年 4 月. 9) R. Sakamoto, D. Horiguchi, T. Ikegami, et al.: Anal. Sci., 19. 1445-1447, 2003. 10) 川本厚子, 有賀孝成, 押田裕子他 : 東京研安研セ年報, 55,253-257,2004. 11) 有賀孝成, 川本厚子, 押田裕子他 : 東京研安研セ年報, 56,271-276,2005. 12) 日本水道協会 : 上水試験方法 2001 年版,2001, 日本水道協会. 13) APHA, AWWA, WEF: Standard Methods for the Examina tion of Water and Wastewater, 20th Ed., 1998.