鳩山政権の経済政策の効果

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タイトル

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

Microsoft PowerPoint - (参考資料1)介護保険サービスに関する消費税の取扱い等について

平成19年度税制改正.xls

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

平成19年度分から

別紙2

経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

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税・社会保障等を通じた受益と負担について

( 注 ) 年金 医療等に係る経費については 補充費途として指定されている経費等に限る 以下同じ (2) 地方交付税交付金等地方交付税交付金及び地方特例交付金の合計額については 経済 財政再生計画 との整合性に留意しつつ 要求する (3) 義務的経費以下の ( イ ) ないし ( ホ ) 及び (

2018年度税制改正大綱ポイント整理

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

報告事項     平成14年度市町村の決算概要について

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握の問題 執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する 複数税率の導入について 財源の問題 対象範囲の限定 中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する 施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として 簡素な給付措置を実施する つまり 低所得者対策として 給付付き税額

Microsoft Word - N_ 子供手当て.doc

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

平成28年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

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政策課題分析シリーズ16(付注)

歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

平成 23 年度に向けた子ども手当の主な課題 論点 1 子ども手当の上積み等 子ども手当の上積み ( 水準はいくらにするか 上積みの対象年齢はどうするか ) 上積みのために必要な財源の確保 論点 2 財源構成 ( 特に地方負担分の取扱い ) 児童手当制度時に負担してきた地方負担分等の取扱い 扶養控除

平成20年2月

Microsoft PowerPoint - 問題提起1_日本総研.pptx

概算要求基準等の推移

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消費税増税等の家計への影響試算(2018年10月版)

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第2回税制調査会 総2-2

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PowerPoint プレゼンテーション

資料9

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平成 29 年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について ( 平成 28 年 8 月 2 日閣議了解 ) の骨子 平成 29 年度予算は 基本方針 2016 を踏まえ 引き続き 基本方針 2015 で示された 経済 財政再生計画 の枠組みの下 手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組む 歳出

150130【物価2.7%版】プレス案(年金+0.9%)

個人市民税 控除・税率等の変遷【市民税課】

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

本資料は 様々な世帯類型ごとに公的サービスによる受益と一定の負担の関係について その傾向を概括的に見るために 試行的に簡易に計算した結果である 例えば 下記の通り 負担 に含まれていない税等もある こうしたことから ここでの計算結果から得られる ネット受益 ( 受益 - 負担 ) の数値については

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

特集 年度 箕輪町の予算 活力あふれる 元気なまちづくりをめざす 夢を持った積極予算 平成 平成 年度の箕輪町当初予算が 町議会3月定例会で審議され成立しました 平成 年度箕輪町一般会計予算総額は 億7000万円となり 前年度に比べ1億円 増となりました これは子ども手当事

平成 31 年度社会保障関係予算のポイント 頁 新 ( 平成 31 年 1 月 18 日閣議決定 ) 旧 ( 平成 年 12 月 21 日閣議決定 ) 1 平成 31 年度社会保障関係費の姿 平成 31 年度社会保障関係費の姿 ( 注 ) 年度 31 年度増 減 329, ,914 +1

図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

消費税増税等の家計への影響試算(2017年10月版)<訂正版>

市場と経済A

一般会計 特別会計を含めた国全体の財政規模 (1) 国全体の財政規模の様々な見方国の会計には 一般会計と特別会計がありますが これらの会計は相互に完全に独立しているわけではなく 一般会計から特別会計へ財源が繰り入れられているなど その歳出と歳入の多くが重複して計上されています また 各特別会計それぞ

Taro-★【2月Ver】01~05. ⑲計

Microsoft Word - ke1106.doc

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

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2017 年度税制改正大綱のポイント ~ 積立 NISA の導入 配偶者控除見直し ~ 大和総研金融調査部研究員是枝俊悟

平成28年度子どものための教育・保育給付災害臨時特例補助金交付要綱

【No

平成 24 年度国民健康保険税税率改定案 1 医療保険分 ( 基礎課税額 ) 現行 改定 増減 伸率 所得割額 4.30 % 4.63 % % 資産割額 % 9.80 % % 税率等 均等割額 17,100 円 18,000 円 900 円 5.3%

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

Taro-中期計画(別紙)

「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)

第5回基礎問題小委員会 礎5-4

女性が働きやすい制度等への見直しについて

スライド 1

所得控除 雑損控除 医療費控除 社会保険料控除等 旧生命保険料控除 旧個人年金保険料控除 ( 実質損失額 - 総所得金額等の合計額 10%) 又は ( 災害関連支出の金額 -5 万円 ) のうち いずれか多い方の金額医療費の実質負担額 -(10 万円と総所得金額等の 5% のいずれか低い金額 ) 限

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

(0830時点)PR版

資料 1-1 資料 1-1 平成 29 年度財政融資資金運用報告について 平成 30 年度財政融資資金運用報告について 平成令和元年 30 年 7 月 26 日財務省理財局財務省理財局

H28秋_24地方税財源

国民健康保険料の減額・減免等

H23修正版

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

< 目次 > 四大臣合意 (H ) 2 民主党マニフェスト (2009 衆議院選挙 2010 参議院選挙 ) 3 の概要 ( 現行制度の仕組み ) 4 平成 22 年度予算 5 平成 23 年度概算要求 6 の実質手取り額の試算 7 ( 児童手当 + 扶養控除 と の比較 ) に関する


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2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

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Ⅱ. 赤字の解消計画 Ⅱ (1) 赤字解消のための基本方針 Ⅱ (2) 赤字解消のための具体的取組 保険料減免制度について 府の統一基準に一致させることで急激な保険料増加となる世帯が生じることから 段階的に低所得者減免制度を解消していく 保険料の減免制度については 平成 30 年度からは災害 収入減

2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

陳情議決結果一覧 ( 平成 19 年 5 月 ~ 平成 23 年 4 月 ) 番号受理年月日件名付託委員会 議決年月日 結 果 陳情 第 1 号 H 非核日本宣言 を求める意見書の提出要請について 総財委 H 採 択 陳情第 2 号 H 原爆症認定制度の抜本的改

平成18年度地方税制改正(案)について

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7,5 7,376 7, 6,556 6,5 6,187 6,57 5,834 5,941 6, 5,59 5,5 5, 5,378 4,964 4,5 4,85 4, 3,5 3,

平成26年版 特別会計ガイドブック

Microsoft PowerPoint - 08macro6.ppt

9 地方歳入中に占める地方税収入の割合の推移 ( その 1) 区 都道府県 分 昭和 2 年度昭和 5 年度昭和 10 年度昭和 15 年度 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 地方税

拉致被害者等への今後の支援のあり方

第6回税制調査会 総6-3

Web用-広報4月号-Vol.169.indd

1 社会保障制度 改革 の全体像 国の社会保障の責任を放棄 家族相互 国民の助け合い に変質 ト ポイン 1 社会保障は長年の労働者 国民のたたかいでかちとっ てきたもの 労働者 国民間の貧困をなくし 生活を 守る制度 憲法25条はすべての国民に生存権を保障 し その責任を国に課している 2 安倍内

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

Transcription:

鳩山政権の経済政策の効果 2009 年 9 月 15 日株式会社富士通総研 9 月 16 日の首相指名選挙を受け鳩山政権が発足するが 鳩山政権が 民主党が衆院選時にマニフェストで掲げた政策を計画どおりに実施した場合 GDPにどのような影響を与えるかについて試算を行った 1. 試算の考え方 試算のステップ試算は以下のステップで行う 1. 民主党のマニフェストに記載された政策 ( 歳出 ) を 家計の所得を増加させる政策 企業の所得を増加させる政策 政府支出 ( 政府消費 ) を増加させる政策に分類 2. 財源 ( 歳入 ) を 家計の所得を減少させる政策 企業の所得を減少させる政策 政府支出 ( 政府消費 公共投資 ) を減少させる政策に分類 3. 各分類でネットの増減額を算出し それぞれの経済効果を 乗数効果を加味して計算 歳出 ( 政策実施 ) の前提民主党が実施する政策とその所要額について以下のような想定を置く 1. マニフェストの工程表 にスケジュールが明示された8つの政策(1 子ども手当 出産支援 2 公立高校の実質無償化 3 年金制度の改革 4 医療 介護の再生 5 農業の戸別所得補償 6 暫定税率の廃止 7 高速道路の無料化 8 雇用対策 ) については すべて計画通りに実施すると想定する 2. 1~8 以外の政策のうち 生活保護の母子加算の復活は 初年度 (2010 年度 ) から実施すると想定する 民主党内で 早急な実施を求める声が強いと考えられるためである 他の政策は 2012 年度に50% 2013 年度 ( 最終年度 ) に100% 実施すると想定する すなわち 民主党の主要政策 (1~8) 以外の政策については 母子加算の復活を除き 財源の問題もあり 優先順位が低くなると考えられるため 1 2 年目はゼロ 3 年目で半分 4 年目でようやく達成できるという遅いスケジュールを想定する 3. 各政策は それが 家計の所得増加 をもたらすものか 企業の所得増加 をもたらすものか 政府消費の増加 をもたらすものかの3 種類に分類する もとより すべての政策が 全額 3 種類のいずれかに該当すると想定することは現実的ではないが ここでは試算の便宜上 1

そのような想定を置いた 各政策がいずれに該当すると考えるかについては図表 1に示してある 4. 高速道路の無料化について民主党が マニフェストの工程表 で掲げる所要額 1.3 兆円は 高速道路の債務の元利払いについて国庫が負担する分であり 無料化によって家計所得が増加する分とは異なる 高速道路の料金収入は年間 2.4 兆円程度であり 無料になれば これを原資として 家計の所得が増加することになる ただし実際には 無料化で渋滞が深刻になる一部区間は無料化を行わない可能性が高いため この点を加味し 高速道路の無料化に伴い家計の所得が増える原資となる分は2 兆円程度と想定する (2010 年度のみ9,000 億円 ) 図表 1 民主党の政策とその所要額 工程表上の分類 所要額 政策各論での該当項目 所要額 小計 効果 1 子ども手当 出産支援 55,000 出産の経済的負担軽減 2,000 55,000 家計の所得増加 子ども手当創設 53,000 家計の所得増加 2 公立高校の実質無償化 5, 000 公立高校の実質無償化 9,000 9, 000 家計の所得増加 3 年金制度の改革 2,000 年金記録被害者への一括補償 2,000 2,000 家計の所得増加 4 医療 介護の再生 16,000 質の高い医療サービスの提供 9,000 20,000 政府消費の増加 新型インフルエンザ対策 3,000 政府消費の増加 介護労働者の賃金引上げ 8,000 家計の所得増加 5 農業の戸別所得補償 10, 000 戸別所得補償制度 14,000 14, 000 家計の所得増加 6 暫定税率の廃止 25,000 暫定税率の廃止 25,000 25,000 家計の所得増加 7 高速道路の無料化 13,000 高速道路の無料化 13,000 13,000 家計の所得増加 8 雇用対策 8,000 職業訓練制度の創設 5,000 8,000 家計の所得増加 雇用保険の全ての労働者への適用 3,000 政府消費の増加 9 上記以外 36, 000 母子加算復活 500 23, 690 家計の所得増加 教育環境の整備 600 政府消費の増加 年金保険料の流用禁止 2,000 政府消費の増加 年金受給者の税負担軽減 2,400 家計の所得増加 後期高齢者医療制度の廃止 8,500 政府消費の増加 障がい者福祉制度の見直し 400 政府消費の増加 食の安全 安心確保 3,500 政府消費の増加 NPO 支援 100 政府消費の増加 中小企業向け減税 2,500 企業の所得増加 最低賃金の引き上げ 2,200 家計の所得増加 消費者の安全確保 400 政府消費の増加 災害 犯罪の危機管理体制強化 500 政府消費の増加 取調べの可視化 90 政府消費の増加 合計 170, 000 169,690 169, 690 ( 注 ) 1. 民主党のマニフェストに記載されている マニフェストの工程表 の所要額のうち 2 公立高校の実質 無償化 4 医療 介護の再生 5 農業の戸別所得補償については マニフェスト政策各論 に記載され ている個別政策の所要額より それぞれ4,000 億円ずつ少なくなっているが マニフェストの工程表 の方が想定している政策の範囲が狭いことによるものと思われる その代わり マニフェストの工程表 では 1~8 以外の金額 (=9) が1.2 兆円増額されている 2. 上の表の合計 17 兆円は マニフェストの工程表 の合計 16.8 兆円 (2013 年度 ) と一致しないが これは 上記政策項目のうち3が2010~11 年度のみの所要額のためである 2

以上の想定を反映させた 年度ごとの実施スケジュールを示したものが図表 2である なお 図表 2では 高速道路の無料化については マニフェストの工程表 の1.3 兆円ではなく 上記の想定に基づく2 兆円 (2011 年度以降 ) を記載してある これを 家計の所得増加 企業の所得増加 政府消費の増加 に分類し 年度別に集計したものが図表 3である 図表 2 民主党の政策の実施スケジュール ( 想定 ) 政策 1 子ども手当創設 出産の経済的負担軽減 27,500 55,000 55,000 55,000 2 公立高校の実質無償化 5,000 5,000 5,000 5,000 3 年金記録被害者への一括補償 2,000 2,000 4 質の高い医療サービスの提供 2,700 5,400 7,200 7,200 新型インフルエンザ対策 900 1,800 2,400 2,400 介護労働者の賃金引上げ 2,400 4,800 6,400 6,400 5 戸別所得補償制度 500 6,000 10,000 10,000 6 暫定税率の廃止 25,000 25,000 25,000 25,000 7 高速道路の無料化 9,000 20,000 20,000 20,000 8 職業訓練制度の創設 1,875 5,000 5,000 5,000 雇用保険の全ての労働者への適用 1,125 3,000 3,000 3,000 9 母子加算 500 500 500 500 その他 ( 母子加算以外 ) 17,595 35,190 図表 3 政策実施の効果 家計所得増 73,775 123,300 133,200 139,500 企業所得増 0 0 2,500 2,500 政府消費増 4,725 10,200 22,645 32,690 合計 78,500 133,500 158,345 174,690 歳入 ( 財源 ) の前提民主党が財源として示しているのは 1 公共事業の削減 ( 最終年度で1.3 兆円 ) 2 人件費等の削減 ( 最終年度で1.1 兆円 ) 3 庁費等 委託費 施設費の削減 ( 最終年度で年間 6.1 兆円 ) 4その他 ( 最終年度で年間 0.6 兆円 ) 5 埋蔵金 の活用等( 最終年度で年間 5 兆円 ) 6 租税特別措置等の見直し ( 最終年度で年間 2.7 兆円 ) である 財源捻出スケジュールは以下のように想定する 1. まず 上記では考慮されていない 2009 年度補正予算を減額して2010 年度に充当される財源は3 兆円と想定する 補正予算の未執行額については8.3 兆円とも報道されており これらのうちどの程度が執行停止できるかについては 今後の精査を待たなければならないが ここで 3

は低めに見積もった これを活用することによって 5 埋蔵金 の活用等によって捻出を想定している財源 ( 最終年度で年間 5 兆円 ) は 初年度から満額捻出できると想定する つまり 毎年 5 兆円捻出できると想定する 2. 6 租税特別措置等の見直しによって捻出する財源 ( 最終年度で年間 2.7 兆円 ) のうち 配偶者控除 扶養控除の廃止 ( 年間 1.4 兆円 ) は 子ども手当創設の1 年後の2011 年度から実施すると想定する 児童手当の廃止 ( 子ども手当創設時に廃止 ) により捻出できる財源 ( 年間 1 兆円 ) はマニフェストで明示されていないが この分は6の金額の中に入ると想定する したがって 6であと確保しなければならない財源は0.3 兆円 (2.7-1.4-1.0) となる 3. この0.3 兆円と 1 公共事業 2 人件費 3 庁費等 委託費 施設費 4その他の削減は 毎年段階的に実施されるものと想定する 最終年度で確保する額のうち 各年でその何 % を実施するかの実施率は 各年の歳出所要額から 埋蔵金等 配偶者控除 扶養控除の廃止 児童手当の廃止から捻出できる財源を引いた残りの額を これら財源で捻出するものと想定して計算する 実施率は 2010 年度 12% 2011 年度 56% 2012 年度 82% 2013 年度 100% となる 歳出所要額が毎年増えていくため 実施率は段階的に上昇していくことになる 以上の想定に基づく年度別の財源捻出額と 各財源の効果 ( 家計の所得減少 企業の所得減少 政府消費の減少 公共投資の減少 のいずれに分類されるか ) を示したものが図表 4であり さらに効果を年度別に集計したものが図表 5である 図表 4 民主党の財源捻出策とスケジュール ( 想定 ) 財源捻出策 効果 1 公共事業 公共投資の減少 1,590 7,261 10,697 13,000 2 人件費 政府消費の減少 1,346 6,144 9,051 11,000 3 庁費等 委託費 施設費 政府消費の減少 7,463 34,069 50,192 61,000 4 その他 政府消費の減少 734 3,351 4,937 6,000 5 埋蔵金等 - 50,000 50,000 50,000 50,000 6 租税特別措置等 控除廃止 家計の所得減少 0 14,000 14,000 14,000 児童手当廃止 家計の所得減少 10,000 10,000 10,000 10,000 租税特別措置 企業の所得減少 367 1,676 2,468 3,000 合計 71,500 126,500 151,345 168,000 図表 5 財源捻出の効果 家計所得減 10,000 24,000 24,000 24,000 企業所得減 367 1,676 2,468 3,000 政府消費減 9,643 43,664 64,180 78,000 公共投資減 1,590 7,261 10,697 13,000 合計 21,500 76,500 101,345 118,000 4

2. 試算結果 以上述べてきた想定に基づいて GDPへの影響を試算する 図表 3と図表 5から 民主党の政実施に伴う 家計 企業 政府 ( 政府消費 公共投資 ) のネットの増減額が計算できる ( 図表 6) 家計の所得は 子ども手当の実施 暫定税率の廃止 高速道路料金の無料化などの実施により 年々増えていく一方 財源捻出のため 政府消費 公共投資の減少額が次第に増えていくことがわかる これら増減が 実質 GDP 成長率にどのような影響を与えるかについて乗数分析を行った ( 乗数は内閣府 短期日本経済マクロ計量モデル に基づく数値を利用 ) 家計の所得を増加させる政策については 実質的に減税と同様の効果を持つものと考えた 併せて 2009 年度の補正予算を3 兆円減額した場合の効果についても試算を行い その結果を示したものが図表 7である 民主党の政策実施の効果は 2010 年度は子ども手当の実施 暫定税率の廃止 高速道路料金の無料化などの効果によりプラスになるものの 2011~12 年度は 政府支出削減 ( 公共事業 人件費の削減 施設費等の削減 ) のマイナス効果が上回り 実質 GDP 成長率にマイナスの影響を与えるとの結果が得られた 2013 年度に再びプラスに転ずるのは この年にマニフェストの実行が完了することによる影響が大きい ただし プラス幅 マイナス幅とも限定的であり 民主党の政策がマクロ経済を大きく撹乱するとまではいえないことがわかった なお 2009 年度補正予算の減額は 2009 年度の実質 GDP 成長率にマイナスの影響を与えることになる 図表 6 ネットの増減額 家計所得 63,775 99,300 109,200 115,500 企業所得 -367-1,676 32-500 政府消費 -4,818-33,364-41,535-45,310 公共投資 -1,590-7,261-10,697-13,000 図表 7 実質 G DP 成長率への影響 ( 単位 :% ポイント ) 2009 年度 2010 2011 2012 2013 2009 年度補正予算減額の効果 -0.31 0.02 0.06 - - 民主党の政策実施の効果 0.48-0.17-0.02 0.15 合計 -0.31 0.50-0.11-0.02 0.15 本件に関するお問い合わせ先 株式会社富士通総研経済研究所上席主任研究員米山秀隆電話 :03-5401-8392( 直通 ) E-mail:yoneyama.hide@jp.fuji tsu.com 報道関係者お問い合わせ先 株式会社富士通総研管理部 ( 広報担当 ) 電話 :03-5401-8391( 直通 ) 5