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3 特別支援学級における学習指導案 特別支援学級においても 学習指導案は授業の設計図としての働きに変わりはありません しかし 特別支援学級では 児童生徒の実態から指導の内容や計画を考えることに大きな意味があります 通常の学級の学習指導案では 例えば 単元について は学習指導要領に沿った指導計画に基づ

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必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

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2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

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目次 第 1 章自立活動の基本的な考え方 1 自立活動の位置付け 1 2 自立活動の目標 1 3 自立活動の内容とその取扱い 2 4 障がいのとらえ方と自立活動の指導 3 5 知的障がいのある児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の自立活動の考え方 4 第 2 章実態把握から評価の仕方まで 1 児童

3 昨年度の校内研究の成果を基に本校では 平成 24 年度の校内研究で 授業における 手立て と 評価 のつながりを意識した授業づくりについて 指導評価シート を基に検討した 平成 24 年度北海道鷹栖養護学校研究紀要 また 平成 25 年度から 2 カ年計画で 般化 を目的とした指導方法について研

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2 平成 27 年度に終了した研究課題について 研究成果報告書サマリー集や研究成果 ( 別紙 1 参照 ) の内容は 例えば下記のような場面で用いられ 貴機関や学校等での課題の改善に活用できましたか? 活用の場面研修会やセミナー所管する学校 教職員への情報提供関係機関 ( 医療 保健 福祉 教育 労

はじめに 我が国においては 障害者の権利に関する条約 を踏まえ 誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い 人々の多様な在り方を相互に認め合える 共生社会 を目指し 障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みである インクルーシブ教育システム の理念のもと 特別支援教育を推進していく必要があります

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平成 30 年度なごや小学校努力点推進計画 1 研究主題なかまとともに感性輝くなごやっ子 (1 年次 ) 2 研究主題について本校では 昨年度までの努力点研究において 道徳や特別活動の時間を中心に 子ども一人一人の成長と互いの認め合いをめざすことで 子ども自らが なごや小でよかった と感じられるよう

説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 関連する利害関係者の特定 プロセスの計画 実施 3. ISO 14001:2015への移行 EMS 適用範囲 リーダーシップ パフォーマンス その他 (

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2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明 計 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収

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学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

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平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

学校評価保護者アンケート集計結果 2 学校は 防災や防犯についての体制作りや情報収集を適切に行っている 十分 おおむね十分 やや十分 不十分 分からない 不明

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3 題材の目標 (1) (2) 4 題材の評価規準 ( 指導要録の四つの観点 ( 生活や技術への関心 意欲 態度 ) から題材の学習を通して目指す生徒の姿を示します ) 文章の語尾は 評価規準の作成, 評価方法の工夫改善のための参考資料 ( 中学校技術 家庭 ) 平成 23 年 11 月 ( 国立教

研究紀要目次 研究紀要発行に寄せて 1 研究構想図 2 授業改善システム (PDCA) 3 研究授業実施一覧 4 小学部研究授業のまとめ 5 中学部研究授業のまとめ 6 高等部研究授業のまとめ 7 主体性を育む 振り返り とは 8 成果と課題 9 < 巻末資料 > 舞鶴支援学校 つけたい力 ( めざ

17 石川県 事業計画書

実践内容 (1) 視点 1 教育活動全体で推進できるよう 指導体制を整備し 食に関する指導の充実 を図る 1 食育全体計画の整備既存の食育全体計画を見直し 教科 学級活動における食に関する指導の時間を確保するとともに 栄養教諭とのティーム ティーティング ( 以下 TT) についても明記した また

持続可能な教育の質の向上をめざして ~ 教員の多忙化解消プラン に基づく取組について ~ 平成 30 年 3 月 愛知県教育委員会

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①H28公表資料p.1~2

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5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

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スライド 1

今年度は 創立 125 周年 です 平成 29 年度 12 月号杉並区立杉並第三小学校 杉並区高円寺南 TEL FAX 杉三小の子

第○学年 ○○科指導計画

福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

実践 報告書テンプレート

文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

第 2 部 東京都発達障害教育推進計画の 具体的な展開 第 1 章小 中学校における取組 第 2 章高等学校における取組 第 3 章教員の専門性向上 第 4 章総合支援体制の充実 13

刊行に寄せて 青森県教育委員会では 小 中 高等学校 1 2 年間を見通した 縦の連携 を基軸とした学校教育を推進し 児童生徒の学力向上について取り組むべき方策を検討することを目的に 学力向上庁内戦略会議 を設置し 算数 数学 理科 英語の 3 教科について 児童生徒の学力向上に関する専門的な事項に

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

北九州市学力向上ステップアップ事業第Ⅱ期推進指定校 実施計画

子葉と本葉に注目すると植物の成長の変化を見ることができるという見方や, 植物は 葉 茎 根 からできていて, それらからできているものが植物であるという見方ができるようにしていく また, 学んだことを生かして科学的なものの見方を育てるために, 生活の中で口にしている野菜も取り上げて観察する活動を取り

平成25~27年度間

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自立活動とは

Transcription:

4.6 個別の教育支援計画, 個別の指導計画のシステム作りと授業改善への ICF の活用 静岡県立御殿場特別支援学校教諭山元薫 1.ICF を活用するに至った背景 静岡県立御殿場特別支援学校 ( 以下, 本校 ) は2 市 2 町を学区とする知肢併設の学校です 2000 年 4 月に県立移管されて以降, 児童生徒数は増加を続け,2006 年には当時の2 倍の人数に増え, 現在全校児童生徒数 188 名, 教員数 101 名の規模の学校となりました 特殊教育から特別支援教育への転換が図られる中, 教師が急激に増加 多様化する児童生徒のニーズを的確にとらえ, 教育実践する力が必要と考えました そのためには, 児童生徒一人一人の今を生きる姿を多面的にとらえ, 将来の生きたい姿に向けて必要な教育を実践し, 学校完結型の授業から生活でできる力を育む授業実践ができるよう新しい個別の教育支援計画, 個別の指導計画のシステムを作り, 授業改善していくことが急務となりました そのための有効な手段として, 児童生徒の障害の状態を多面的 総合的にとらえることができる ICF の考え方を取り入れ, 児童生徒の生活機能の向上, 参加 の拡大をめざした教育実践を行うことを本校の学校経営の中に盛り込みました 2.ICF 活用の実際 本校では, 子どもの実態把握から個別の教育支援計画の作成, 個別の指導計画作成, 授業づくり, 評価に至るまで,ICF を活用しています (1) 個別の教育支援計画及び個別の指導計画作成への活用実際の活用手順は以下の通りです 1 家庭訪問 ( 個別面談 ) にて生活地図 ( 図 1 1) の作成 生活地図 を用いて, 保護者と本人, 担任で, 現在の生活環境全般, 将来像について共通理解します その中から, 中心課題 ( 人が生きることの全体を示す 生活機能 を高めるために, 今改善 克服したい学習上, 生活上の課題 ) を導き出します 2 生活地図を基に個別の教育支援計画 ( 図 12) の作成生活地図で導き出された3 年後の願う姿を支援目標として, 中心課題については今年度の重点目標としてそれぞれ個別の教育支援計画 1に記載します 他機関との関係や取り巻く環境については個別の教育支援計画 2に記載します 3 支援シート( 図 13) (ICF 構成要素間の相互作用図を図式化したもの ) を用いたケース会議における, 中心課題の妥当性と指導方法について検討及び共通理解中心課題について 支援シート を用いて, 本人の気持ち, 中心課題にかかわる病気や変調, 障害の程度, できる こと, している こと, 有効な手立て, 適した環境設定の方法等を検討します その検討の結果, 中心課題に関する指導場面, 指導目標, 手立てについて導き出します - 91 -

④個別の指導計画 図1④ の作成 支援シートから導き出された指導場面や指導方法 支援方法 手立て等を個別の指導計画1に 明記します 図1 御殿場特別支援学校における個別の教育支援計画及び 4 個別の指導計画作成のプロセス 図中の番号は 前頁2 1 活用の手順の番号と同じ 2 授業づくりへの活用 支援シートを活用して授業づくりに関する検討を行い 単元 題材 目標 単元構想 授業構想 支援方法 他教科領域との関連 家庭との連携方法等を導き出します 実際の活用手順は 以下 の通りです ①個々の実態と学習集団の実態を把握します 個々の実態は 個別に作成した中心課題に関す る支援シートやこれまでの学習の様子 成果 課題 意欲 適した環境設定等 を授業に かかわる教員が持ち寄り情報を共有します ②個々の中心課題や教科及び教科領域のねらいをおさえつつ 本単元 題材 で達成したい目 標に向けて単元 題材 構想 指導計画 指導する際の手立てや留意点等について 授業づ くり用支援シート ( 図2) を活用して 検討します ③授業づくり用支援シートの情報を整理して 学習指導案 もしくは 単元カード及び授業カ ード等 を作成し 個々の目標や手立て 学習環境の在り方 生活場面への広げ方 TT の 役割分担等の授業づくりのポイント ( 図3) を明確にし 提示します ④支援シートから導き出された支援シートを用いての授業評価 分析を行います 92

図 2 授業づくり用支援シート活用例 ( 中学部 1 年数学科 買い物学習 ) 図 3 支援シートから導き出された授業づくりのポイントと授業展開 - 93 -

3. 活用後の成果と今後の展望 これらの取組を通した得られた成果と課題, 今後の展望は以下の通りです (1) 成果 1 教師の意識の変化児童生徒の できない 行動だけに注目するのではなく, 児童生徒の全体像を捉えかつ多面的に分析し, より良い支援方法を導き出し指導すべきであるといった意識改革を図ることができました また, 支援シートを活用した中心課題に関するケース会議を行うことで, 教師間で情報を共有し中心課題を意識して指導全般にあたるようになりました 2 個別の教育支援計画策定及び個別の指導計画作成のプロセスの完成このプロセスは, 教師が児童生徒たちを現在を生きる生活者として見るために有効なツールでした 学校生活や授業等での断片的な児童生徒の理解ではなく, 児童生徒の生きる像を ICF 関連図より相関的に理解し, 現在及び将来の参加に向けて, 個々の中心課題を踏まえつつ, 個別の指導計画の作成と授業実践, 評価が可能になりました 3 ICF の考え方を活かした授業づくり ICF の考え方を活かした授業づくりを行うことで, 以下のような授業改善の成果が見られるようになりました 1) 授業のつくり方の変化個々の中心課題をふまえつつ, 各教科, 教科領域を合わせた指導のねらいを達成するためには, 授業はどうあるべきか, 児童生徒の実態, 環境, 気持ち等を相関的にとらえ, 授業が構築されるようになりました この取組により, 教師, 児童生徒, 教材の授業を構成する3 つの要素について十分な吟味がされるようになりました 2) 授業の変化 < 活動を充実させた授業への転換 > 主体的な活動を多く盛り込んだ授業展開がされるようになり, 児童生徒の体験を通した指導を積み上げることで, できる 力の発揮できる場面を増やすことができました <つなぐ かかわる授業構想 > まずは, 一人一人が できる 状況を発展させ, 次に仲間とのかかわりの中で発揮できる力に, そして, 他の場面や集団でも発揮できる力に育て, 主体的に 参加 できるようにつなぎ, さらに生活につなげる指導構想が練られるようになりました < 手立てが多面的に考えられた授業 > 日常生活の様子や障害の状態等から, 環境を含めて目標を達成するために有効な支援方法を導き出した授業を行うことができるようになりました <TTが有機的に機能する授業 > 検討作業を行うことで, 授業に関する情報が共有され, 児童生徒の授業のねらいを共通理解できるようになりました また, 環境因子の一つとして指導者はどうあるべきか, 意識して授業に参加することができるようになりました - 94 -

(2) 課題と今後の展望 1 児童生徒の実態把握に関する精度をあげるため,ICF-CY チェックリストの項目を導入したり, 他のアセスメントを併用したりすることで, より児童生徒の実態に即した授業をつくることができるようにしたい 2 生活年齢に応じた 参加 に向けての課題とキャリア教育の視点とを照らし合わせ, 児童生徒の現在及び将来の 参加 を促進する題材や単元を選定し, 年間指導計画を作成させていきたい 発達の変化の著しい小学部低学年では, 現在本校の支援シートの書式では, 書きづらさが指摘されています 児童生徒の発達の変化のスピードに適応した評価の時期, 書式を検討し, より使いやすい書式に改良したい 引用文献 1) 伊藤尚志 (2007).ICF を保護者と共有するために- ICF 関連図を活用した支援シートについての保護者の説明事例から,ICF 及び ICF-CY の活用試みから実践へー特別支援教育を中心にー, 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所,158-163, ジアース教育新社. 2) 伊藤尚志 (2007).ICF を活用した学校生活づくりと社会生活への移行の取り組み,ICF 及び ICF-CY の活用試みから実践へ- 特別支援教育を中心に-, 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所,80-87, ジアース教育新社. 3) 文部科学省 (2009). 特別支援学校学習指導要領解説自立活動編 ( 幼稚部 小学部 中学部 高等部 ). 4) 世界保健機関 (WHO)(2002).ICF 国際生活機能分類 - 国際障害分類改定版 -, 中央法規. - 95 -