1: はじめに この章で 改めて 色の表示 を学びます 色の表示は 色彩検定の 3 級 2 級と 継続的に取り上げられてきたテーマの 1 つです ではこれまでに学んできたことを含めて 色 の捉え方をを確認しておきましょう 色の分類 有彩色 無彩色 色相 明度 彩度の三属性を持つ 純色 明清色 暗清色 中間色に分類される明度のみを持つ色相色み 色相環 ( 色相を連続的な円環で示す ) 三属性 明度 彩度 明るさ 鮮やかさ 色立体 三属性を立体 ( 三次元 ) で表す 色の属性 三属性を 規則的 に空間に配置するためのルールを定める顕色系 色票 で表示が可能表色系知覚的に等しく感じられる間隔で表示混色系 主に 数値 で表示物理的な混色量で表示 色の分類 整理 記号化などの基準を示すガイドラインを 色彩体系 という 色の表示 表色系に基づく記号や数値で示す言葉 ( 色名 ) で示す現物で示す 3 級 PCCS 2 級 マンセル表色系 XYZ 表色系 均等色空間 1 級 オストワルト表色系 NCS 基本色名 系統色名 3 級 固有色名 慣用色名 2 級 JIS 物体色の色名 基本色彩語 1 級 ISCC-NBS JIS の光源色色見本 1 級では まず XYZ 表色系 を学びます それに先立って 表色系 について簡単に振り返っておきましょう 1
(1) 表色系とは 色を表す方法の 1 つです 色を表す とは 他の人と共通して理解できる形で色の名称や性質を示すということです 色を表す方法は 以下の 3 つに大別されます 1) 表色系何らかの秩序に基づいて色を配列し それらを記号や数値で表す 2) 言葉身近な事象や事物の名前を用いて表す 3) 現物色票や色見本などで表す (2) 表色系 は 2 つに大別されます 1) 顕色系見えている色を 知覚的に等しく感じられる間隔で表す色を見る側からの分類 2) 混色系作ろうとしている色を 原色の種類とその混合量で表す色を構成する側からの分類 (3) これから学ぶ XYZ 表色系は この 混色系 の代表格です XYZ 表色系は 色を精緻に 正確に表すことができる表色系です 物体色でも光源色でも すべての色を細かな差まで区別して数値で表すことができます そのため いわゆる色彩の実務 ( 生産現場や管理部門 ) での色の測定や 計算 記述などに広く用いられ 今日の色彩科学や技術の基盤となっています 2
2: CIE XYZ 表色系 [ テキスト p42-46] では XYZ 表色系を3つのステップを通して理解していきましょう Step 1 : XYZ 表色系のしくみ Step 2 : XYZ 表色系の色表示 Step 3 : XYZ 表色系での色の求め方 1: XYZ 表色系のしくみ 3 章の 光と色 で学んだ グラスマンの法則 の第 1 法則 色の三色性 の考え方と共通します 色の三色性 は頭に入っているでしょうか? 色の三色性加法混色の三原色 ([R][G][B]) の量を適切に調節して混色すれば すべての色を作り出すことができる 色の三色性 は 等色実験によって導き出されました 下図のような装置を用いて 色光の三原色 [R][G][B] を加法混色し 任意の光 ( 試料光 )[C] と等しく見える色を作り出します 等色の状態を作り出せる 3 つの色光 [R][G][B] の混合量の組み合わせは1つだけで この混合量によって 試料光 [C] の成り立ちを表すことができます *1 級テキスト P38 を参考に作図 色光は 等色させることができれば何でもよいのですが グラスマンは加法混色の原理を 法則 として示そう としましたので 何らかの 基準 を決めることが必要でした そこで その基準となる光を すべての色を作り出せ かつ 他の 2 色から作ることができない 色光の三原色 [R][G][B] と定めました XYZ 表色系は この加法混色の原理に基づいて色を表します グラスマンの法則と同様に 3 つの色ですべ ての色を表示することから XYZ 表色系は 三色表色系 の 1 つと言われています 3
では この 三色表色系 で色を表すしくみについて見ていきます *1 級テキスト P39 を参考に作図 加法混色の三原色となる 色刺激 ( 色の感覚を引き起こす光 ) は [R][G][B] です これは 原刺激 と呼ばれます そして ある 色刺激 ( 試料色 [C]) に等色させるために必要な原刺激 [R][G][B] を混合する量 つまり 混色量 はそれぞれR G B で表され これは 三刺激値 と呼ばれます [R][G][B] それぞれの混色量 R G B の色刺激全体を 1(100%) で捉えたときの比率で表す際に用い られるのが 色度座標 で それぞれr g bで表されます 比率ですので r+g+b=1 となります この加法混色のしくみが ほぼそのまま XYZ 表色系に適用されます ただし 用いる記号は異なります グラスマンの法則 XYZ 表色系 原刺激 ( 色光 色刺激 ) [R] [G] [B] [X] [Y] [Z] 三刺激値 ( 混合量 ) R G B X Y Z 色度座標 ( 混合量の比率 ) r g b x y z XYZ 表色系における X は赤み (R) Y は緑み (G) Z は青み (B) にそれぞれ対応しているのですが R G B ではなく X Y Z という記号が用いられていることには理由があります 加法混色の三原色である [R][G][B] の量を適切に調整すれば すべての色を作り出せることをこれまで学ん できましたが 実際には 足し合わせる だけでは作れない色が存在します その代表例が鮮やかな青緑です 鮮やかさや明るさにもよりますが 青緑 という色は ほぼ均等な量の [G] と [B] の混色によって作られます 光を重ねるということは 色を 明るく します つまり [G] と [B] を混色すると [G] と [B] の単色光よりも明るくなる つまり鮮やかさが低下します よって [G][B] を混色しただけでは 単色光と同等の鮮やかさを持つ青緑という色を作ることができません ですが実際には 鮮やかな青緑 と色は存在しますので [R] [G] [B] を原刺激とした色を重ね合わせるのでは物理的に作れない色があることが分かります 4
これは 色空間の中において [R] [G] [B] を頂点とした領域の外にはみ出してしまう色が実際に存在する ということを意味します はみ出しているということは この青緑の場合 [R] の混合量が 0 以下 つまりマイナスにな っていることを示します さらに 色度座標の視点から見てみると次のようなことが分かります [R] [G] [B] の混合量 R G B の座標 r g b は r+g+b=1 という関係にあります この [R] [G] [B] で表せる最も鮮やかな青緑は 座標で示すと (r g b)=(0 0.5 0.5) です ですが これは実際には最も鮮やかな青緑ではありません この [R] [G] [B] で作り出せる範囲をはみ出している色というのは b や g の値 ( 混合量 ) がもっと大きいはずで そうなると r の値がマイナスにならない限り r+g+b=1 にはなりません このように [R] [G] [B] を原刺激としている以上は マイナスの値 を持たなければ作り出せない色が存在してしまいます ですが実際には 色を混合して作り出す際に 0 以下の量を用いるということはありません よって マイナスの値を用いないで すべての色を作りだす原刺激が必要になりました そこで [X] [Y] [Z] を便宜的に原刺激として定めるに至ったのです *1 級テキスト P42 43 を参考に作図 ただし あくまでも [X] [Y] [Z] は [R] [G] [B] の原刺激では作り出せない領域の色を マイナスの値 ( 混合量 ) を用いずに表示するために作られた仮想の色刺激です この [X] [Y] [Z] のそれぞれは 単色光としては物理的に存在しません あくまでも 実在する 3 原色は [R] [G] [B] です このように [X] [Y] [Z] は物理的には存在しない虚構の色のため 虚色 と呼ばれます 5
2: XYZ 表色系の色の表し方 では XYZ 表色系の色の表し方を具体的に見ていきましょう 1. 色度座標と xy 色度図 XYZ 表色系は 原刺激 [R] [G] [B] の色光を用いた等色実験によって得られた それぞれの混合量 R G B に数値的な変換を施して構築された表色系です XYZ 表色系の原刺激 [X] [Y] [Z] に対応する三刺激値 X Y Z は [R] [G] [B] の三刺激値 R G B に対応して R X G Y B Z に変換されるというしくみになっています ( もう少し正確にいうと X は 赤み Y は 緑み と 明るさ Z は 青み を表します 明るさ については 後ほど説明します ) R G B にも共通して言えることですが 三刺激値の X Y Z は 混合する 量 であるため その値を見ただけでは それがどのような色なのか 直感的に判断することが難しいです そこで 全体を 1 としたときの X Y Z の比率 ( 混合量の比 : 混合比 ) で色を表すことにしています この比率を示す数値は 色度座標 と呼ばれます 色度座標は 色を構成する原刺激の混合量全体を 1 としたときの それぞれの原刺激の混合量の割合 ( 混色比 ) を示します 混色比は x y z で表されます 小文字が使用されているのは三刺激値を示す大文字の X Y Z と区別をするためです x y z には以下の関係が成り立ちます x+y+z =1 x=x+y+z y=x+y+z z=x+y+z x y z そして 人間の眼で捉えることができる可視範囲の色について多くの等色実験を行い 得られた色度座標を 平面上にプロットしたのが xy 色度図 です xy 色度図は x の値を横軸に y の値を縦軸にとった平面上に 数多くの色の 色度座標 を集めた図と言えます 6
図の [C 1 ] は [X] を x1 [Y] を y1 [Z] を z1 の比率で混合した結果できた色光です 左の図では立体の空間に色度図を置いていますが 色度図自体は平面で表されます x y z の 3 つの座標で表そうとすると 三次元の空間で色を表さざるを得ません ですが x+y+z=1 の関係が成り立っていますので x と y の値が分かれば z の値も分かります また x と y の値から その色の傾向を大まかに捉えることができます x の値が大きいほど 赤みの成分が多く 小さいときは赤以外 ( 緑 青 ) の成分が多い y の値が大きいほど 緑みの成分が多く 小さいときは緑以外 ( 赤 青 ) の成分が多い x と y のどちらの値も小さいほど 青みの成分が多い 7
2.XYZ 表色系における色相 XYZ 表色系における色相の様子は xy 色度図を見るとよく分かります ( 以下の図は 色度図内の色を塗っていませんので テキスト 45 ページの図 8 も参照してください ) *1 級テキスト P45 を参考に作図 色度図は アイロンの底のような形をしています 色相に関連する特徴は次のとおりです 曲線部分に スペクトルの色である単色光の色度 ( 混合比の割合 ) が 波長の順に並んでいる曲線部分は スペクトル軌跡 と呼ばれます ( スペクトルについては 先のグラスマンの法則で復習をしましたね ) この軌跡の右端が 可視波長の中での長波長側の端 軌跡の左端が短波長側の端となります 右端と左端を結んだ直線部分には 長波長 ( 赤 ) と短波長 ( 青 ) の混合光の色度が並んでいる直線部分は 純紫軌跡 と呼ばれます スペクトルには存在しませんが 人間が知覚することのできる 紫 の系統の色を示すものです 長波長から短波長の両端を繋いで色相環を作ることと考え方は共通しています 各色相の最も鮮やかな色の座標をプロットしたのが スペクトル軌跡 と 純紫軌跡 です この線の外にはみ出す色はありません 線外にあるとすれば それは原刺激 [X] [Y] [Z] のような虚色 つまり存在しない色です 8
3.XYZ 表色系における彩度と明度 1. 彩度 彩度の考え方 スペクトル軌跡 と 純紫軌跡 の線上に近づくほど彩度が高く スペクトル軌跡 と 純紫軌跡 の線から離れ 中心に近づくほど彩度が低くなります この色度図から見て取れるように 色度座標の x y z の値のいずれかか またはこの中の 2 つの比率が 0 に近いほど線上に近づき 彩度の高い色となります *1 級テキスト P45 を参考に作図 780nm 付近の鮮やかな赤 x= 約 0.72 y= 約 0.28 z=0.0 570nm 付近の鮮やかな黄 x= 約 0.44 y= 約 0.56 z=0.0 380nm 付近の鮮やかな青紫 x= 約 0.17 y=0.0 z= 約 0.83 このことは 色度図のほぼ中央にある 白 を示す部分の座標を見ると分かりやすいと思います 加法混色の原理に照らしてみると 原刺激を同量ずつ混色すれば白になります 混合量の比率である x y z がほぼ同じ値となるのは 1 3=0.3333 です 色度図の中心付近である x= 約 0.33 y= 約 0.33 の領域は 白色点 とよばれます 白は無彩色ですから この白色点に近づくほど彩度が低くくなる ということは想像できますね これらが理解できれば もし色度図がフルカラーで表示されていなくても 座標値から色のイメージを想像し やすくなると思います 9
2. 明度色度座標と xy 色度図では 色相と彩度は分かるにしても 明度までは分かりません 白色点 といっても 白 を示すのでなく 無彩色 であることを示しているにすぎないのです よって たとえばマンセル値 N=4.0 も N=7.0 も 色度図の上では同じ位置で示されることになります そこで 明度を表す概念が必要になってきます これが [Y] の持つもう一つの役割です たとえば 以下の C 1 C 2 という色の X Y Z ( 原刺激の混合量 ) と x y z ( 混合比 ) を見てみましょう X ( 混合量 ) Y ( 混合量 ) Z ( 混合量 ) 明るい灰色 (C 1 ) 90 90 90 暗い灰色 (C 2 ) 20 20 20 x ( 混合比 ) y ( 混合比 ) z ( 混合比 ) 0.33 0.33 0.33 混合比はいずれも x y z とも 0.33 で 色度図上ではほぼ中心の白色点付近にプロットされます 色度図の上で示されるのはあくまでも混合の比率です よって C 1 も C 2 も同じ値となります ですが 実際に混色されている光の量は C 1 と C 2 では大きく異なります このときの C 1 の Y の値は 90 で C 2 の Y の値は 20 です 光の量が多いほど 色は明るくなります 混合比が同じであれば Y の値が高い C 1 の方が C 2 よりも明るい色であることが分かります 有彩色でも見てみましょう X ( 混合量 ) Y ( 混合量 ) Z ( 混合量 ) 明るい青緑 (C 3 ) 10 40 50 暗い青緑 (C 4 ) 1 4 5 x ( 混合比 ) y ( 混合比 ) z ( 混合比 ) 0.1 0.4 0.5 混合比は同じなので 色相 彩度も等しくなりますが Y の混合量は C 3 の方が大きいです よって C 3 の方が C 4 よりも明るいということが分かります このように XYZ 表色系では Y の混合量の値によって明るさを示すことができます そのため XYZ 表色系では Yxy で色を表示することが多いです Yxy : (Y は 視感反射率 ( 明るさ ) を表し x と y は混合比 ( 色度座標 ) を表します ) 10
つまり Y は 緑みの原刺激 [G] の量とともに 同じ混合比を持つ色における明るさも表す値なのです 視感反射率とは 物体に当たった光の全体量に対して どれくらいの量が反射して視覚で感じることができるか という割合を意味します 透過性のある物体はさておき 光は物体に対して反射または吸収のいずれかとりますので 反射する率が高い=Y の値が大きい ほど明るい ということになります ( 反射する率が高い白は明るく ほぼ吸収する黒は暗い ということをイメージすると分かりやすいですね ) 以上が XYZ 表色系の色の表し方です なお マンセル表色系やこの後に学ぶ NCS という表色系の各色票は XYZ 表色系における Y x y の値が 細かく求められており 色の表示に互換性があります 11
3: XYZ 表色系での色の求め方 ( 測り方 ) では最後に 色の性質を決める三刺激値 X Y Z をどのように求めるのか ( 測るのか ) という点を学びます ここでも 3 級の 光と色 の学習からずっと登場している 色を見るための 3 つの要素 が関係します たとえばこのリンゴの色の三刺激値を求めるとします 光源 は観察対象であるリンゴを照明する光です 分光分布によって色の性質が分かります 物体 は観察対象であるリンゴそのものです 分光反射率 ( または分光透過率 ) によって色の性質が分かります 分光反射率 ( 透過率 ) は その物体がどの波長をどれだけ反射 ( 透過 ) するかまたは反射 ( 透過 ) しないかを示すものです 5 章 色彩の実務 の 測色 の項目で学ぶ 測色計 という機器で測ることができます 視覚 は観察対象であるリンゴを見る人間の眼の感度です 測色計で色を測定する際は その機器の感度を指します 三刺激値 X Y Z は この 3 つの要素の性質や値が分かれば求められます 一般的に三刺激値を求める対象となるのは 物体 ですので 他の 2 つの要素の基準を定めておくことが必要 です 1. 光源 の基準色の観察 測定には 標準イルミナント D 65 を使用するのが一般的です 標準イルミナント D 65 は 平均的な自然昼光 ( 紫外域も含む各波長の光を平均的に含んだ光源です (3 章 光と色 の 測色の照明 で学びましたね ) 測色については 5 章 色彩の実務 で詳細を取り上げますので この段階では 標準イルミナント D 65 が 光源の基準であることを把握しておけば充分です 12
2. 視覚 の基準 視覚 は以下 2 点の影響を大きく受けます (1) 誰が見るか 3 章の 色覚特性 で見たとおり 眼の感度は人によって異なります (2) どのように見るか以下のような状況の変化によって見え方は異なります 遠くから見る/ 近くから見る 大面積で見る / 小面積で見る といった対象物と視覚との関係 背景の色などの対象物以外のものと視覚との関係 この点も光源と同様に 5 章 色彩の実務 の 測色 の項目で学びますが XYZ 表色系を作り出した CIE では 視覚 について以下の基準を設けています 1.CIE 標準観測者 ( 誰が見るか / 眼の感度 ) CIE 標準観測者 という資格を持つ人物がいる というものではありません CIE 標準観測者とは 一般的な人の色の見え方の標準的な感度を示す 関数 で 等色関数 とも呼ばれます いわば人間の色覚に関する特性を標準化した関数で x(λ) y(λ) z(λ) のように表されます x(λ): 長波長の光に対する感度 y(λ): 中波長の光に対する感度 z(λ): 短波長の光に対する感度 2. 視角 ( どのように見るか / 観察の仕方 ) 視角 とは 瞳孔の上端と下端のそれぞれから物体までを結ぶ 2 本の線が成す角度のことです 視角の大きさによって以下 2 つの基準があります 2 度視野 ( 視角が小さいとき ) 50cm 離れた処から直径約 1.7cm の物体を見る視野角です 10 度視野 ( 視角が大きいとき ) 50cm 離れた処から直径約 8.8cm の物体を見る視野角です 正確に言うと 視角の小さい 2 度視野で XYZ 表色系 の三刺激値 X Y Z を求めるときに用いられるのが CIE 標準観測者 です これに対して 視角の大きい 10 度視野では CIE 補助標準観測者 が用いられ このとき求められた三刺激値 X Y Z から得られる表色系は X 10 Y 10 Z 10 表色系 と呼ばれます 13
このような視覚の条件を揃えて初めて 三刺激値を求めることができるのです ちなみに XYZ 表色系は 物体 光源のいずれの色も表示できます テキスト 46 ページを見てみましょう ここでは代表的な色再現方法である テレビモニタ 網点印刷 の色域が xy 色度図上に示されています テレビモニタは色光の重ね合わせで色再現をしますので 三原色は R G B です その R G B の色度座標を頂点とした三角形の内側が再現可能な色の領域となります これに対して網点印刷は 色料 塗料という物体の重ね合わせで色再現をしますので三原色は C M Yです C M Y の色度座標と それぞれ 2 色を混ぜ合わせたときの色度座標の計 6 色を頂点とした六角形の内側が再現可能な色の領域となります この2つを比較すると 網点印刷よりもテレビモニタの方が 色の再現域が広いことが分かります 14
3: 均等色空間と L * a * b * 色空間 [ テキスト p47-49] 1: はじめに [ テキスト p47] XYZ 表色系は 物体色と光源色のいずれにおいても 原色つまり原刺激の混合量や混合比で正確に色を 表すことができる万能の表色系にように見えますが 少なくとも 2 つの弱点があります 弱点 1 表示値を見ただけでは どのような色であるか直感的に分かりにくい すでに感じているかもしれませんが Y x y の値を見ただけでは どのような色であるかをイメージすることが 難しいです たとえばテキスト 46 ページの図 11 に示されたマンセル表色系の表示値と比較すると その差は歴 然としています 鮮やかな赤 を表すと マンセル表色系 5R 4/4 XYZ 表色系 Yc(%)=11.70 x=0.5734 y=0.3057 このとき XYZ 表色系の表示値から少なくとも以下を読み解かなければ 鮮やかな赤 であることが分かりません (1) Y の最大値は 100(%) であることを考えると この色はあまり明度が高くない (2) z =0.13 程度であることから 混合比としてはx が最も大きいので赤みの強い色である (3) 無彩色を示す 白色点 では x y z の値がいずれも 0.33 程度である x がおよそ 0.57 z がおよそ 0.13 であるので この色は白色点からは離れた位置にある よって鮮やかさが強い色である よほど XYZ 表色系の扱いに慣れた人でなければ 直感的に色を特定するのはかなり難しいでしょう 弱点 2 2 つの任意の色の差が 人の知覚する差で表されていない 色度図では 緑系の色の領域がとても広くなっています この緑系の色の領域内にある A 1 と A 2 と 他の領域にある B 1 と B 2 は 色度図上での距離は同じです つまり表色値としての差は同じです ですが A 1 と A 2 の 2 点は同じ緑系の色域に収まっているのに対し B 1 と B 2 の 2 点は色相まで異なります (B 1 の紫と B 2 の青は同じ色相であるとは知覚できません ) このように XYZ 表色系は知覚的な色の差や色の違いを表すことには向いていない表色系なのです 15
*1 級テキスト P47 を参考に作図 なぜこのようなことが起きるのでしょうか それは この色度図の土台となっている XYZ 表色系が 顕色系 でなく 混色系 に属するからです 顕色系 の場合私たちが見ている ( 知覚している ) 色の特性に基づいて 色を分類したり配列したりするので 表示値や色立体上に表示される位置の差 が 知覚している色の差に一致します 混色系 の場合色の成分たる原色 ( 色刺激 原刺激 ) の種類と その混合量で色を表すため そもそも見た目のうえでの色の差と数値の差を一致させるという観点で作られていません XYZ 表色系の xy 色度図は 色の混合比の値である色度座標を数多く集めて 面 にして表しています あくまでも 混合比 という数値の集合体を示しているだけですので 図上の色どうしの距離の差と 私たちの 知覚する色の差は 必ずしも一致しません そのため 先ほどの A 1 と A 2 や B 1 と B 2 のようなことが起きるのです また 色度図を平面上で見ている限り 色相と彩度は分かっていても 明度を一見することはできません その点からも 人間の 知覚 のために作られた表色系ではないことが明らかです そのために 2 つの弱点 が露わになってしまいます そこで考えられたのが XYZ 表色系のしくみを用いながら 知覚的な色の差も表せる 均等色空間 です 16
2: 均等色空間とは [ テキスト p47-48] 均等色空間では 色の差が知覚的に同じと感じられれば どの色でもほぼ一定の距離で示されるように また 明るさの差も知覚的な差に対応するように XYZ 表色系の色表示を変換して表せます では その具体的なしくみを見ていきましょう 1. マックアダム楕円 均等色空間の考え方の土台を築いたのはマックアダムです マックアダムは まず初めに以下の事実を明らかにしました xy 色度図の上での距離と 人間が知覚する色の距離感は一致しない マックアダムは 等色実験によって xy 色度図上で 色の違い= 色の差 が区別できない色の領域を特定しました xy 色度図は XYZ 表色系における原刺激 [X] [Y] [Z] の混合比である色度座標の集合体です その成り立ちを遡ってみると以下のように捉えられます xy 色度図は 可視範囲にある多数の色の色度座標の集合体である 色度座標は XYZ 表色系の三刺激値の混色比である XYZ 表色系はグラスマンの第 1 法則である 色の三色性 に基づいて作られている グラスマンの法則は 数多くの等色実験によって導き出された [R] [G] [B] の色光の加法混色の法則である XYZ 表色系の生みの親である等色実験によって XYZ 表色系の弱みを明らかにするということは ある意味 で理にかなっていると思われます マックアダムの実験結果を xy 色度図の上に落とし込んだのが マックアダム楕円 です ( マックアダム偏差長円 とも呼ばれます) マックアダム楕円の中心つまり十字の交点と それを軸とする楕円の内側にある色は ほぼ等しく見えます 色度図上の各所に示された楕円たちを見比べてみると 大きさがまったく均一ではありません 十字の直線の両端が xy 色度座標の値の差 (x y の値の差 ) を示すのですが y の値が大きい領域では楕円が非常に大きく y の値が小さい領域で小さくなっています 17
*1 級テキスト P47 を参考に作図 先ほどの色 A 1 と A 2 と B 1 と B 2 の例を当てはめてみると y の値が大きい領域にある A 付近の楕円は大きく この楕円の中に納まっている A 1 と A 2 はほぼ同じような色 ( 緑 ) と知覚されます これに対して B 付近の楕円は小さく B 1 と B 2 が異なる色と感じられるのは明らかです つまり xy 色度図上の領域によっては 同じ色の差に見える 2 点の間の距離が大きく異なって示されている ということになります y の値が大きい領域では同じように知覚される色の範囲が広く y の値が小さい領域では 同じように知覚される色の範囲が非常に狭いのです こうして xy 色度図は色の差の表示が均等ではなく 人が知覚したとおりにはその差を把握できないということが明らかになりました また 明るさの要素である Y についても 知覚的に均等ではないと分かっています XYZ 表色系における色刺激の混合比を平面図で示す xy 色度図が このような構造を持っていますから そもそも XYZ 表色系を用いて任意の色の座標値を比較して 知覚の上での色の違いを特定することには無理があります そこで 知覚的に色の ( 色相 明度 彩度 ) の差が同じであれば どの領域の色でもほぼ同じ距離で示せるようにするために XYZ 表色系を変換して別の方法で表す必要に迫られました それが 均等色空間 (UCS:Uniform Color Space) です ( 均等色空間には L * a * b * ( エルスターエースタービースター ) 色空間や L * u * v * ( エルスターユースターブイスター ) 色空間などがあります 1 級では産業界で多く用いられている L * a * b * 色空間について学びます ) 18
3: L * a * b * 色空間とは [ テキスト p48-49] L * a * b * 色空間は 特に産業界で幅広く用いられている均等色空間です 球体の三次元空間で表されます 見た目のうえで ( 知覚的に ) 均等になるように色が配置されているため 知覚的に捉えられる物体の色の差 色の違いを捉えるのに適した表示方法です 物体色の色表示のみで用いることができます L * a * b * 色空間で表記される表色系を L * a * b * 表色系 と言います XYZ 表色系から L * a * b * 表色系への色表 示の変換式は JIS に規定されています JIS は マンセル表色系の H V/C の値と XYZ 表色系の Y x y の値 との対応表も示していますので 結果としてマンセル表色系と L * a * b * 表色系も互換性があるといえます では先ほど触れた XYZ 表色系の弱点 を L * a * b * 色空間がどのように解決するか見ていきましょう XYZ 表色系の弱点 1 表示値を見ただけでは どのような色であるか直感的に分かりにくい L * a * b * 色空間は 次の図のように 球体の三次元空間で表されます ( テキスト 48 ページの図 14 も併せて参照しましょう ) この空間の中で 見た目のうえで ( 知覚的に ) 均等になるように色が配置されています 縦軸が明るさ 横軸が色相と彩度を示します *1 級テキスト P49 を参考に作図 19
1. 明るさを示す縦軸 :L * L * は 明度指数 と呼ばれ XYZ 表色系の三刺激値の Y にあたります 空間上では縦軸となり 明度を表します ( この形は これまで見た色立体などと共通しますね ) L * は最も暗い黒を 0 最も明るい白を 100 として 0 から 100 の数値で表されます マンセル表色系で明度を示す Value の値が 最も明るい白で 10 ですから マンセル表色系の明度を 10 倍した数値が L * a * b * 色空間の明度指数とほぼ同一になると考えられます ここからもマンセル表色系との互換性や対応の良さが伺えます 2. 色相と彩度を示す横軸 :a * と b * a * と b * は クロマチック指数 と呼ばれます 空間上では直角に交差する横軸となり 色相と彩度を表します a * と b * の記号が色相を示し a * と b * の数値が彩度を示します テキスト 48 ページの図 16 を見てみましょう a * と b * で色相と彩度を表すしくみは 色空間を水平に切った断面図で見ると分かりやすいです 水平ということは L * の値が等しいことを示します つまり図 16 で示された色空間の断面図は 同じ明るさの色と感じられる色が並ぶ 等明度面 と同じ概念です a * と b * による色相と彩度の捉え方 a * は赤 - 緑方向に色相を示します +a * は赤 -a * は赤の補色にあたる緑です b * は黄 - 青方向に色相を示します +b * は黄 -b * は黄の補色にあたる青です a * と b * の両方の値が 0 となる円の中心は 無彩色を表します この中心から円の外周に向かうにつれて 彩度が高くなります a * と b * も 円の中心である 0 を中心に +60 から -60 の値をとります 色相と彩度の捉え方を もう少し具体的に見てみましょう a * の値が +60 のときこのとき b * の軸は 0 以外の値をとれません よって 黄みも青みもない 最も鮮やかな赤と知覚される色は a * = +60 で表せます これと同様に a * = -60 は鮮やかな緑 b * = +60 は鮮やかな黄 b * = -60 は鮮やかな青となります a * の値が +30 のとき b * の軸が 0 黄みも青みもない彩度が中程度の赤となります b * の軸が 30 赤みと黄みが同じくらい感じられる 彩度が中程度の橙となります b * の軸が -50 赤みより青みが強く感じられる 彩度の高い青紫となります 20
ここに L * の値を特定できれば 三属性で色を捉えることは容易です たとえば a * の軸が +30 b * の軸が -50 L * の軸が 50 であれば 中明度の青紫であると分かります このように L * a * b * 色空間の色の表示では どのような色であるか大まかに予測できるしくみになっています 色相 彩度 明度 a * ( 赤 - 緑 ) の値が + か - か /b * ( 黄 - 青 ) の値が + か - か a * b * のそれぞれの値が 0 に近いか /60 に近いか L * の値が 0 に近いか /60 に近いか まとめると L * a * b * 色空間 とは以下のような表色系です L * ( 明度 ) a * ( 赤 - 緑方向の色相と彩度 ) b * ( 黄 - 青方向の色相と彩度 ) を知覚的に表す色空間 これで XYZ 表色系の弱点を 1 つ解決することができました ではもう 1 つの弱点についても 解決策を見ていきましょう XYZ 表色系の弱点 2 2 つの任意の色の差が 人の知覚する差で表されていない L * a * b * 色空間を先ほどよりさらに単純化した次の図を見てみましょう この空間上にある任意の色 F 1 と F 2 を例に 色の差の捉え方を確認していきます F 1 : L * =60 a * =30 b * =-45 F 2 : L * =80 a * =50 b * =-15 *1 級テキスト P49 を参考に作図 21
この図から 以下のようなことが読み取れます 縦軸 :L * について L * が 100 に近づく = 空間の上に位置する ほど明るい F 1 の L * は 60 F 2 の L * は 80 なので F 1 より F 2 は明度が高く その差は明度指数で 20 横軸 :a * と b * について a * は + の方向で値が高いほど赤みが強く - の方向で値が高いほど緑みが強い b * は + の方向で値が高いほど黄みが強く - の方向で値が高いほど青みが強い F 1 は a * が+( 赤 ) の方向で b * が-( 青 ) の方向で a * より b * の値が高い a * と b * の値の差はクロマチック指数で 15 よって F 1 は やや青みの強い赤紫 である F 2 は a * が+( 赤 ) の方向で b * が-( 青 ) の方向で b * より a * の値が高い a * と b * の値の差はクロマチック指数で 35 よって F 2 は F 1 よりも青みがクロマチック指数で言うと 20 強い紫 である この2つの色のそれぞれの属性における差は 以下のように求められます ちなみに ( デルタ ) は色差を表示する記号です L * :[60]-[80]=[20] L * =20(L * の差 ) ( L * : デルタエルスター ) a * :[30]-[50]=[20] a * =20(a * の差 ) ( a * : デルタエースター ) b * :[45]-[15]=[30] b * =35(b * の差 ) ( b * : デルタビースター ) そして この F 1 と F 2 の 色全体 の色の差 つまり色空間における 2 色の間の距離は E * ab( デルタイースタ ーエービー ) で表されます E * ab= ( L * 2 + a * 2 + b * 2 ) 1/2 (L 1* - L 2 * ) (a 1* - a 2* ) (b 1* - b 2* ) 色の差については 5 章 色彩の実務 の 測色 で学びますが 工業製品の色彩管理 ( 塗料 家電 テキスタイルなど ) などの場面で特に重要視されています 製品の仕様として定められている色が 実際にできた物で適切に再現されているかを確認する際に 色の差を正確に捉えることが必要です どの程度の差まで許容できるかという範囲は 対象物の性質や色を管理する人たちの意向や仕様 規則などにより異なりますが 最も厳密な工業用塗料の調色において 0.4 から 0.8 とされています 色の差 E * ab の算出式もあまり難解な構造にはなっていませんが 何よりも色空間上の 2 点の距離を見れば その色の差が大きいか小さいかを直感的に判断できますので L * a * b * 色空間が知覚的な色の差を把握するの に優れたものであることが分かります こうして XYZ 表色系の 2 つめの弱点も克服することができました 22