412 章皮膚の良性腫瘍 し扁平な小結節 ( 図.10). 複数個生じることが多い. 中心さいか臍窩を有し, ときに中央から皮脂を排出する. 2. 脂腺腺腫 seceous denom 中高年の顔面, 頭皮に好発する黄色調の結節および腫瘤. 病 理組織学的に脂腺分化を示す良性腫瘍である. 図.10 脂腺増殖症 (seceous hyperplsi) 3. 脂腺腫 ( 脂腺上皮腫 ) seceom(seceous epitheliom) 顔面や頭皮に生じるドーム状あるいは有茎性の結節 ( 図.11). 黄色調を呈することもある. 病理組織学的に, 基底細胞様の腫瘍細胞の増殖を認める. 未分化な細胞がみられるなか, 一部で脂腺細胞や導管への分化を認める. 図.11 脂腺腫 (seceom) D. 汗腺系腫瘍 swet glnd tumors 1. エクリン汗囊腫 eccrine hidrocystom 顔面に単発, ときに多発する, 直径 2 3 mm の常色 青色調の半透明小結節 ( 図.12). 多発する症例では夏季に増加, 冬季に減少する傾向がある. エクリン汗腺の真皮内導管が拡張, 囊腫化したものと考えられる ( 図.13). 断頭分泌はみられない. 針で穿刺すると汗の貯留が確認される. 図.12 エクリン汗囊腫 (eccrine hidrocystom) 2. 汗管腫 syringom 図.13 エクリン汗囊腫の病理組織像 症状エクリン汗腺の真皮内導管が限局性に増殖した結果, 直径 1 3 mm 大の正常皮膚色の扁平隆起性および小丘疹が多発す がんけん る. 眼瞼部に好発し, 体幹に播種状に認められることや融合傾 向を示すこともある ( 図.14). 女性に多く, 汗の分泌量が増加する思春期に目立つ. 自覚症状はないが, 自然消退することもほとんどない. 病理所見真皮上 中層に, 大小の管腔構造と索状構造がみられる. 管
D. 汗腺系腫瘍 413 c d e 図.14 汗管腫 (syringom) 2 5 mm c d e 腔の一端に, 短い尾のような上皮索をつける特徴的な像 オタマジャクシ様 (tdpole-like) またはコンマ状 (comm til) を呈する. 管腔は 2 層の壁細胞からなり, 周囲に結合組織の増殖をみる ( 図.15). 壁細胞の胞体が明るくみえるものを澄明細胞汗管腫 (cler cell syringom) といい, 糖尿病を合併することがある. 鑑別診断ぞくりゅうろうそう臨床的に顔面播種性粟粒性狼瘡, 稗粒腫, 血管線維腫, エクリン汗囊腫などとの鑑別を要する. 汗腺由来の腺腫の分類 図.15 汗管腫の病理組織像
414 章皮膚の良性腫瘍 治療自覚症状がなく悪性化もないため通常治療は必要としない. 整容的に問題がある場合は, 炭酸ガスレーザー療法や凍結療法, ケミカルピーリングなどが行われる. 3. エクリン汗孔腫 eccrine porom 図.16 エクリン汗孔腫 (eccrine porom) 定義 症状エクリン汗腺の表皮内導管由来の良性腫瘍である. 広基性または有茎性の小結節で, 暗赤色で易出血性を示すのが特徴であるが, とくに足底や手掌に好発する ( 図.16). 臨床的に, 化膿性肉芽腫, 母斑細胞母斑や無色素性悪性黒色腫と鑑別を要する場合がある. 病理所見連続性に表皮から真皮内へ腫瘍細胞 (poroid cell) の増殖巣を認め, その中では好酸性の細胞が小管腔を形成する クチクラ細胞 (cuticulr cell), 図.17. 腫瘍細胞は多量のグリコーゲンを含む. 一部の領域で Bowen 病 (22 章 p.451) に類似した多核細胞や軽度の核異型を伴うことがある. 治療まれに悪性化 エクリン汗孔癌 (eccrine porocrcinom, 22 章 p.458 参照 ) するため外科的に切除する. 図.17 エクリン汗孔腫の病理組織像 Bowen 4. らせん腺腫 spirdenom 類義語 : エクリンらせん腺腫 (eccrine spirdenom) 主にエクリン汗腺の真皮内導管および腺細胞への分化を示す良性腫瘍である. 顔面, 頸部, 体幹, 上肢に単発する直径 1 2 cm の境界明瞭な硬い皮内および皮下結節. 表面は正常皮膚色または青色で, 自発痛や圧痛を伴うことが特徴である ( 図.18). 病理組織学的には, 大型明調細胞と小型暗調細胞が柵状および塊状に増殖し, 管腔構造を形成する. 図.18 らせん腺腫 (spirdenom) 5. 乳頭状エクリン腺腫 ppillry eccrine denom 四肢に好発し, 直径 1 3 cm 大の小結節が単発する. 病理組織学的に, 種々の大きさの囊腫構造と, 上皮細胞の内腔への乳頭状増殖を認める. 断頭分泌はみられない. エクリン汗管に
D. 汗腺系腫瘍 415 分化する良性腫瘍と考えられているが, 管状アポクリン腺腫 (p.416 参照 ) との異同について議論が続いている. 6. 結節性汗腺腫 nodulr hidrdenom 顔面, 頭部に好発する単発性の皮内結節. 腫瘍細胞は, 暗調で細長い核をもつ紡錘形細胞と, 円形の核をもつ澄明細胞とが種々の割合で存在する. 後者が目立つものを澄明細胞汗腺腫 (cler cell hidrdenom) と呼ぶ. エクリンないしアポクリン系の分化を示す良性腫瘍と考えられている. ときに悪性化することがあり, 悪性結節性汗腺腫 (mlignnt nodulr hidrdenom) と呼ばれる. 7. 皮膚混合腫瘍 mixed tumor of the skin 同義語 : 軟骨様汗管腫 (chondroid syringom) 青壮年の顔面 ( 上口唇, 鼻, 頭部 ) に好発する, 比較的硬い皮内結節ないし皮下結節 ( 図.19). 下部は可動性を有することが多い.1 2 層の壁細胞で囲まれた管状構造をとる上皮性組織と, 粘液様および軟骨様の間葉系組織とが混在してみられることが特徴である. 断頭分泌や毛包系, 脂肪細胞への分化がみられることもある. エクリンおよびアポクリン汗器官由来の良性腫瘍とみなされる. まれに癌化する. 図.19 皮膚混合腫瘍 (mixed tumor of the skin) 8. アポクリン汗囊腫 pocrine hidrocystom アポクリン汗器官系腫瘍. 中年以降の眼囲, 顔面, 耳, 頭皮部に単発するドーム状に隆起する透明ないし青色調で直径数 mm 2 cm の小結節 ( 図.20). 真皮内に巨大な囊腫構造を認め, アポクリン分泌を示す 1 層の円柱状細胞とその外側に位置する筋上皮細胞から構成される. 通常自覚症状はない. 患者が希望すれば外科的切除を行う. 図.20 アポクリン汗囊腫 (pocrine hidrocystom) 9. 円柱腫 cylindrom 日本人にはほとんどみられない. 思春期の頭部などに,1 10 cm 大で半球状ないしは軽度有茎性, 正常皮膚色 褐色の腫瘤が通常多発する ( 図.). 頭部全体を侵し, ターバンを巻いているような外観を呈することがある ターバン腫瘍 (turn tumor). まれに単発例も認める. 多発型は常染色体優性遺伝を示し, 多発性家族性毛包上皮腫 (p.409 参照 ) と同 図. 円柱腫 (cylindrom)
416 章皮膚の良性腫瘍 Brooke-S ブルークスピーグラー piegler 症候群 (Brooke-Spiegler syndrome) 図.22 乳頭状汗管囊胞腺腫 (syringocystdenom ppilliferum) 様にCYLD 遺伝子の異常が同定されている. 汗腺系への分化を示す腫瘍細胞の集塊が, 巣状にジグソーパズルのように配置する. まれに悪性化し, 悪性円柱腫と呼ばれる. 10. 乳頭状汗腺腫 hidrdenom ppilliferum 女性の外陰部に好発するドーム状の小結節で, びらんや出血を伴いやすい. 肉芽組織に類似する. 病理組織学的にはアポクリン分泌像を示す腺上皮細胞の密な乳頭状増殖をみる. アポクリン汗腺腫瘍の代表例. 11. 乳頭状汗管囊胞腺腫 syringocystdenom ppilliferum ゆうじょう小児の頭部や顔面に好発する疣状結節で, 表面は紅色で, ときにびらんを伴う ( 図.22). アポクリン汗器官性過誤腫で, 脂腺母斑に続発することが多い. 病理組織学的には内腔側に高円柱状細胞, 外側に立方体状細胞の 2 層の管状構造を示し, 間質には著明な形質細胞浸潤を伴う ( 図.23). 図.23 乳頭状汗管囊胞腺腫の病理組織像 12. 管状アポクリン腺腫 tuulr pocrine denom 多くは頭部に好発し, 脂腺母斑から生じることもある. 直径 1 2 cm の正常皮膚色 褐色の結節. 病理組織学的には, 乳頭状エクリン腺腫 (p.414 参照 ) と同様に多数の小囊腫と乳頭状の上皮増殖がみられるが, 断頭分泌の像を伴う. 13. 乳頭部腺腫 denom of the nipple 同義語 :erosive denomtosis of the nipple 図.24 乳頭部腺腫 (denom of the nipple) 乳頭に生じる良性の腫瘍 ( 図.24). びらんや滲出液を伴う場合が多く, 乳房 P パジェット get 病や乳管癌との鑑別を要する. 病理組織学的には密な乳頭状増殖を伴う管腔構造がみられ, 断頭分泌が観察される. 乳頭部の乳管由来の良性腫瘍である. 治療は外科的切除であり, 取り残しがあると再発する.