尿路結石が 突然増悪する強烈な側腹部痛で来院すると思い込んでいたのが一番の誤診の原因だったと思う 症状を説明できるような水腎が無いと一時点で思考停止してしまったのも良くなかった 夜間に腹痛が増悪し 来院時には軽減 ~ほぼ消失していることらから 繰り返し増悪するエピソードを説明できるような診断を付けな

Similar documents
背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

ブラッシュアップ急性腹症 第2版


2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

BMP7MS08_693.pdf

前立腺の変化を知る

第 7 章 腎 泌尿器領域 (a) : すべての専門医が到達すべき知識 技術 (b) : すべての専門医が, さらに高度の専門性を獲得するために到達すべき知識 技術 (c) : 該当する領域において, 専門医が到達すべき知識 技術 (d) : 該当する領域において, 専門医がさらに高度の専門性を獲得

減量・コース投与期間短縮の基準

共済だより.indd

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - CDDP+VNR患者用パンフレット doc

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

indd

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

一般内科

8/28(月) 救急ランチョンセミナー 教科書の虫垂炎

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

Microsoft Word 高尿酸血症痛風の治療ガイドライン第3版主な変更点_最終

<4D F736F F F696E74202D20368C8E313693FA9C4190A390E690B C8B90CE205B8CDD8AB B83685D>

< A815B B83578D E9197BF5F906697C38B40945C F92F18B9F91CC90A72E786C73>

Microsoft PowerPoint - 北摂(VCUG).ppt

<4D F736F F F696E74202D20318C8E313593FA8D4C90A390E690B C8B90CE29205B8CDD8AB B83685D>

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ


10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

<955C8E862E657073>


はじめに 連携パス とは 地域のと大阪市立総合医療センターの医師が あなたの治療経過を共有できる 治療計画表 のことです 連携パス を活用し と総合医療センターの医師が協力して あなたの治療を行います 病状が落ち着いているときの投薬や日常の診療はが行い 専門的な治療や定期的な検査は総合医療センターが

スライド 1

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

ROCKY NOTE 肺炎球菌 / レジオネラ尿中抗原の感度と特異度 ( ) (140724) 研修医が経験したレジオネラ肺炎症例は 1 群ではなかったとのこと 確かに 臨床的 に問題に


症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

乳がん術後連携パス

Microsoft Word - 届出基準

エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

泌尿器科救急

当院における結石性腎盂腎炎 について

ふくじゅおもて面1

健康た?よりNo109_健康た?より

スライド 1

したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

Microsoft Word - sa_niflec_ doc

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

スライド 1

Microsoft PowerPoint - komatsu 2

「             」  説明および同意書

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

2009年8月17日

p 13

スライド 1

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

幻覚が特徴的であるが 統合失調症と異なる点として 年齢 幻覚がある程度理解可能 幻覚に対して淡々としている等の点が挙げられる 幻視について 自ら話さないこともある ときにパーキンソン様の症状を認めるが tremor がはっきりせず 手首 肘などの固縮が目立つこともある 抑うつ症状を 3~4 割くらい

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

スライド 1

頭頚部がん1部[ ].indd

消化性潰瘍(扉ページ)

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

本文/開催および演題募集のお知らせ

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

U 開腹手術 があります で行う腎部分切除術の際には 側腹部を約 腎部分切除術 でも切除する方法はほぼ同様ですが 腹部に があります これら 開腹手術 ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を受けられる方へ 腎腫瘍の治療法 腎腫瘍に対する手術療法には 腎臓全体を摘出するU 腎摘除術 Uと腫瘍とその周囲の腎

ROCKY NOTE 髄膜炎診断における jolt accentuation の検査特性 ( ) (140812) 参考文献 3 4 を読んで追記 以前 jolt accentuatio

デベルザ錠20mg 適正使用のお願い

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

心房細動1章[ ].indd

はじめに 前立腺癌に対する永久留置法による小線源療法は一口で言うと 弱い放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み 前立腺内部から癌の治療を行うものです ただし すべての前立腺癌に適応できるものではありません この説明書は小線源療法についての概説です よくお読みになった上で ご不明の点があれば担当医

虎ノ門医学セミナー

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

Transcription:

尿路結石症 (030421) 尿管結石の失敗例 四十代の女性 初診前日の朝 えぐられるような左側腹部 ~ 下腹部の疼痛を認めた 痛みは増悪軽減を認めるものの持続痛であった 嘔気なし 生理周期の 3 日目だが いつもの生理痛とは明らかに異なると感じたという 37 度程度の微熱も認めた 持っていた NSAIDsを服用した後に痛みは軽減 食欲は良好で食事で増悪は認めなかった 翌朝 診療所受診 受診時には痛みはほぼ消失 病歴聴取に支障があるような痛みは無し 左側腹部から下腹部にかけて軽度の圧痛を認めるが その他の所見ははっきりせず CVA 叩打痛なし Percussion tenderness 陰性 Heel drop test 陰性 エコーではエコーフリースペースなし 腎は両方に小さな結石は認める 左腎はやや腎盂の拡張を認めるかもしれないが 症状と結び付けられるほどはっきりとした所見なし ( 下図 ) ドプラでの血流は明らかな異常を認めず WBC が 8000 台でいつもより高値だが 採血では明らかな異常なし 周期的な痛みで尿路でないなら胃腸炎のような消化管の病変か? と疑ったが 下痢や嘔吐も無く 症状も軽いため経過観察とした その夜 就寝していると疼痛が再燃したが しばらくして自然に痛みは軽減 翌朝に再来した時には 軽度であるが左側腹部の持続的な疼痛を認めた 発熱は 36.9 この時点で CVA 叩打痛を確認した 尿潜血 (2+) であったが それ以外の異常所見を認めなかった WBC7000 台 CRP は 0.7 と軽度の上昇のみ ( 発症 2 日目の腎のエコー : 左 : 右腎 右 : 左腎 ) 数日間 増悪軽減を繰り返す持続的な左側腹部痛 CVA 叩打痛 微熱 尿潜血 WBC/CRP 軽度上昇 エコーでは有意な水腎を認めないということで 尿路感染症を考えて 3 日目から抗菌薬と NSAIDsを使用して経過を見ることとした 尿路感染だったら後々重篤化するかもしれないし より重傷な疾患の方にターゲットを絞りたいという心理も働いていたと思う 痛みは一旦軽減したものの その夜に再び左側腹部痛が増悪して 救急車にて夜間救急病院を受診 最終的に尿路結石の診断に至った

尿路結石が 突然増悪する強烈な側腹部痛で来院すると思い込んでいたのが一番の誤診の原因だったと思う 症状を説明できるような水腎が無いと一時点で思考停止してしまったのも良くなかった 夜間に腹痛が増悪し 来院時には軽減 ~ほぼ消失していることらから 繰り返し増悪するエピソードを説明できるような診断を付けなければならなかった 来院時の症状が軽度で 夜間の痛みの強さを軽視してしまったのも良くなかった レトロで見るとエコーの微妙な左右差も意味があったわけだが この程度で結石は無いだろうと思い込んだのは甘かった エコーは何回でも繰り返し施行すればよかったと思う 夜間の増悪を繰り返して 4 日目に最大の痛みが出現したわけだが 結石の移動で今回のような病歴をとることだってあり得ると肝に銘じておこうと思う 最も痛い時に 都合よく受診してくれるとは限らない 微熱や血液所見 CVA 叩打痛で UTI に引っ張られたのもまずかった そもそも腎盂腎炎とは病歴が違う 何か違うな と思った時にはやっぱり診断が違っているわけで 次の一手に踏み切るのが吉だ ちなみに 救急受診して数日後に確認させていただいたエコーは以下の通り 尿管結石の患者のエコー所見としては典型的だ 急性発症した強烈な左側腹部痛で あぶら汗と嘔気を認めつつ このエコー所見なら診断に難渋することは無かったと思うが 臨床はそれほど甘くないというわけだ ( 発症 7 日目の腎のエコー : 左腎 ) ということで 反省の意味を込めて尿路結石のお勉強 本邦では 11 人に 1 人が罹患すると言われている 2) 尿路結石は存在する部位に応じて上部尿路結石 ( 腎結石 尿管結石 ) および下部尿路結石 ( 膀胱結石 尿道結石 ) に分類される 1) 本邦ならびに欧米では上部尿路結石 ( 腎結石および尿管結石 ) が大部分を占める 下部尿

路の膀胱結石は前立腺疾患や神経因性膀胱など残尿が多い場合に認められる 2) 結石成分による分類では シュウ酸カルシウムあるいはリン酸カルシウムのようなカルシウムを含むカルシウム含有結石が尿路結石の 90% 以上を占め 感染結石であるリン酸マグネシウムアンモニウム結石 尿酸結石 シスチン結石と続く 2) 上部尿路結石 近年増加傾向で 成人病との関連も指摘されており 生活習慣病の一つととらえる報告もある その他 飲水が制限される環境 職業などは発症の要因となる また 副甲状腺疾患 尿酸代謝異常に伴う場合 薬剤性のものなどがある 1) 結石成分の多くはシュウ酸カルシウム結石であるが その他尿酸結石 特殊なものでは遺伝性のシスチン結石などがある 1) 通常 腎結石は無症状であるが 大きくなり尿管へは下降できずに腎孟にとどまるような結石では 体動に伴う血尿 背部の鈍痛 背中が張るといった訴えの原因となりうる 1) 尿管結石においては腎結石が尿管内へ落下して急激な尿管閉塞をきたすことにより 数 mm 程度の小さな結石でも腰背部から側腹部に激痛 ( 疝痛 ) を引き起こす 結石が下降して膀胱へ近づくに従い 頻尿や尿意切迫といった膀胱炎症状を引き起こす 1) 結石の移動に伴う疼痛は夜間から早朝にかけて起きやすく 夜間救急外来を受診する状況が多くなる 3) 疝痛の範囲は 患側で片側性に腰背部 (costo-vertebral-angle:cva) から側腹部に起こる 結石が膀胱近くの下部尿管にまで下降してきた場合には下腹部痛が起き 膀胱尿管移行部に至ると膀胱刺激症状 ( 頻尿 残尿感 ) も出現し 男性では陰嚢への放散痛を訴えることもある 3) 疝痛発作以外には 自律神経症状として悪心 嘔吐 発汗も見られることが多々ある 3) 尿潜血を伴う腹痛を認める場合 尿路結石と簡単に診断することには注意を要する なぜならば 慢性腎炎等により血尿を認める患者に急性虫垂炎や卵巣茎捻転あるいは腹部大動脈瘤などが発症した時も 同様の症状となるからである 2) 腎部の疼痛 血尿の 2 つがそろえば かなり高い確率で尿管結石の診断が得られる しかし 急性腎孟腎炎 腎梗塞 腎腫瘍の自然破裂などでも両症状が同時にみられる場合がある 4) 超音波検査ではおもに腎結石をみることができる また 腎孟 尿管結石における尿路閉塞を反映した水腎症を確認しうる ただし 結石が微小で疝痛発作の軽快しているときには 一時的に尿の流れが改善して水腎症が指摘できないこともある 発症直後にも水腎症が指摘

できないことがある 尿管内の結石そのものについては 上部尿管内の結石であれば腎孟から尿管の走行を追い 下部尿管内の結石であれば膀胱から尿管の走行を追い観察できることがある 1) KUB では想定される尿路の走行に沿って結石陰影を探す ただし 尿酸結石やシスチン結石では単純撮影検査で陰性のため超音波検査もしくは CT 検査による確認が必要である 1) KUB で尿管結石と誤りやすいものとして静脈石がある 骨盤内の石灰化陰影として描出される 一般にきれいな円形であり中央が淡い 4) 尿路結石は 90% 以上がカルシウム含有結石であるため レントゲンに写ることが多い しかし 尿酸結石やシスチン結石はレントゲン透過性であるため KUB で診断できないことがある 超音波検査では疼痛と同時に水腎症を認めた場合 尿路結石症の可能性が高い 超音波検査で水腎症を認めながら KUB で結石陰影を認めない場合 腎から膀胱までの腹部単純 CT で確認することが望ましい 2) 疼痛がある場合の造影剤を用いた検査 ( 造影 CT や IVP) は 尿溢流の危険性があるため禁忌とされている 4) 尿路結石は 5 年再発率が約 40% と非常に高く 尿路結石症の既往があるかを聴取することは診察上きわめて重要である 4) 激痛を伴う尿管結石では鑑別診断として重要な疾患に解離性大動脈瘤 急性膵炎 急性腹症などがあげられる 尿管結石では通常 疝痛発作であり 症状に波があること 超音波検査で水腎症を認めること 腎臓に一致した叩打痛を認めることなどが手がかりとなる 鑑別診断に苦慮する場合にも CT 検査が有用となりえる 1) 疝痛発作を呈し 尿路結石と鑑別を要する疾患として 消化器疾患 ( 胃十二指腸潰瘍 胆石症 胆嚢 胆管炎 虫垂炎 結腸憩室炎 膵炎 ) 婦人科疾患( 卵巣出血 卵巣腫瘍茎捻転 子宮外妊娠 ) がある 4) 急性腎孟腎炎を合併した尿管結石 : 発熱 悪寒などの症状 尿検査での膿尿 細菌尿 採血検査での白血球増多 CRP 高値などから診断する 受診時 すでに敗血症となっている場合も少なくない 診断 治療が遅れると ショックや DIC ( disseminated intravascular coagulation: 播種性血管内凝固 ) に陥り 生命の危険をもたらす場合がある 4) 尿路結石症ガイドラインによれば 6mm を超える尿路結石症では積極的治療の対象となる その方法として 1 体外衝撃波治療 (ESWL) 2 内視鏡手術 3 腹腔鏡あるいは開腹による切石術があるが 切石術が選択されることはほとんどない 2) 非ステロイド抗炎症薬 (NSAIDs) を使用する 1) NSAIDs 投与が不適切な症例では非麻薬系の鎮痛薬を使用する 1) 軽度の痛みでは鎮痙薬にて効果が得られることがある 1) 指圧により改善が得られるとの報告もある 1)

自然排石が期待できる症例では 2L 以上の排尿量を維持するよう指導する 1) 糖質を含む清涼飲料水では尿中カルシウム排泄が増加するので控えるようにする また 塩分摂取によるナトリウム摂取もカルシウム排泄増加と結びつくので控えさせる 2) 痛みの間欠期には運動を促す 1) 排石促進薬および結石溶解促進薬を投与する 1) 前立腺肥大症などに使用されるα 1 遮断薬には下部尿管結石の排石効果があると報告されるが わが国での保険適用はない 1) 尿酸結石に対しては尿アルカリ化薬を併用し結石溶解を促進する 1) 溶解療法が効果を示すのは 尿酸結石とシスチン結石の 2 つである 3) 尿酸結石を含めた尿路結石症を発症した痛風 高尿酸血症患者に対して 薬剤を使用して高尿酸血症を改善し 尿中尿酸排泄を抑制しようとする際 ほとんどの泌尿器科医は尿酸産生阻害薬 ( アロプリノール製剤 ) を投与することになる 併せて尿のアルカリ化のために酸性尿改善薬 ( クエン酸製剤 : ウラリット ) を処方する 3) 砕石術または石切術 ( 結石摘出術 ) など : 自然排石のない または期待できない症例で適応が検討される 1) 尿管結石では 腎孟尿管移行部から腸骨までの上部尿管 (U1) 骨盤骨と重なる部位の中部尿管 (U2) そして骨盤内の下部尿管(U3) で方針が変わる U1 結石は ESWL が主体となり U2 および U3 では経尿道的尿管結石砕石術 (TUL) が選択される 一方 6mm 以下の尿管結石では自然排石が期待できる この大きさの結石の場合 欧米では尿管を弛緩させ排石を促す薬物療法が medical expulsive treatment として推奨されている 具体的には 前立腺肥大症における排尿改善薬であるα 1 プロッカーのタムスロシン ( ハルナール TM ) や高血圧症治療薬のカルシウムチャンネルブロッカーであるニフェジピン ( アダラート TM ) でその有効性が確認されているが 本邦では尿路結石症に対する保険収載がなく使用できない 2) 本邦ではウラジロガシエキス ( ウロカルン TM ) やロワチン TM あるいは抗コリン薬のブスコパン TM などが用いられているが 排石効果に関して不明な点が多い 2) 原因にかかわらず尿の濃縮を回避することが最大の予防法であり 日頃から 2L 以上の排尿量を維持するよう指導する 1) 特に発汗が多くなる夏場や空気の乾燥する冬場に結石が形成されやすくなるため 再発を繰り返す症例では季節ことに排尿記録をつけるよう指導する 夜間就寝後には水分補給が減少して結石が形成されやすくなるため 就寝前に排尿 飲水の習慣をつける また 夕食から就寝までの時間を十分にあける これは遅い夕食を摂る習慣のある患者では 就寝後の脱水に加えて消化吸収も重なるため 結石形成がより促進されるためである 1) 飲酒機会のある患者においては飲酒後一時的に尿量が増えても アルコール代謝に伴って後に脱水をきたすため 飲酒後のアルコール以外の水分補給を指導する 1)

下部尿路結石 ( 膀胱結石 尿道結石 ) 上部尿路結石が落下して生じる場合と 膀胱内で結石が形成される場合がある 背景に尿 の停滞や排泄障害が存在することがある 多くの場合 感染を伴った感染結石である 1) 血尿 排尿時痛 排尿障害 尿線の途絶 1) 上記症状や反復する膀胱炎で疑い KUB 超波検査 膀胱尿道鏡検査で診断する 1) オピオイドの効果についての疑問について論文を検索して 抄読会を行った 読んだのはオピオイドと NSAIDs を比較したメタ解析 PECO P:acute renal colic E:opioid C:NSAID O:patient rated pain, time to pain relief, need for rescue analgesia, rate of recurrence of pain, and adverse events. 急性腎疝痛に対して オピオイドを使用すると NSAIDs を使用した場合と比較して 痛み 痛み の軽減までの時間 レスキューでの鎮痛剤の使用 痛みの再発 有害事象などが改善するかどう かを検討した研究であることが分かる 妥当か 抄録の REVIEW METHODS に Randomised controlled trials とあり RCT のメタ解析であること が分かる 結果

痛みは NSAIDs 群で 4.60 mmより多く減少した [-4.60 (-7.50 to -1.70)] 痛みの完全寛解を認めな かったのはオピオイド群で 147 人 /281 人 NSAIDs 群で 186 人 /393 人であり NSAIDs 群で少ない 傾向であった [0.87 (0.74 to 1.03)] 嘔気などの副作用はオピオイド群で多かった 20 trials totalling 1613 participants were identified. Both NSAIDs and opioids led to clinically important reductions in patient reported pain scores. Pooled analysis of six trials showed a greater reduction in pain scores for patients treated with NSAIDs than with opioids. Patients treated with NSAIDs were significantly less likely to require rescue analgesia (relative risk 0.75, 95% confidence interval 0.61 to 0.93). Most trials showed a higher incidence of adverse events in patients treated with opioids. Compared with patients treated with opioids, those treated with NSAIDs had significantly less vomiting (0.35, 0.23 to 0.53). Pethidine was associated with a higher rate of vomiting. ( 参考文献 5 より引用 )

( 参考文献 5 より引用 ) 使用できる状況なら NSAIDs が基本であるが 状況に応じて選択枝は多い方がいい 同じ病気でも 患者の訴えは異なる ただ コモンな病気はやはりコモンであり 足元をすくわれ ないようにしたいと思う 参考文献 1. 釣巻ゆずり, 久米春喜. 尿路結石. 診断と治療 99(2): 355-359, 2011. 2. 諸角誠人. 尿路結石症. 綜合臨牀 59(12): 2471-2472, 2010. 3. 荒川孝. 尿路結石症. 治療 91( 増刊 ): 1074-1079, 2009. 4. 児玉浩一, 野田透. 症例 9 尿管結石の疑い. レジデントノート 11(9): 1317-1322, 2009. 5. Holdgate A, Pollock T. Systematic review of the relative efficacy of non-steroidal anti-inflammatory drugs and opioids in the treatment of acute renal colic. BMJ. 2004 Jun 12;328(7453):1401. Epub 2004 Jun 3. Review. Erratum in: BMJ. 2004 Oct 30;329(7473):1019. PubMed PMID: 15178585; PubMed Central PMCID: PMC421776.