事例テーマ授業改善の視点 中学校技術 家庭科 ( 家庭分野 ) 第 1 学年 わたしたちの生活と住まい 生活の中にある課題を見付け 身に付けた知識及び技能( 技術 ) を活用して自ら課題を解決するための指導の工夫改善 ~ 追究する視点を明確にした実践的 体験的な学習活動を充実し 家庭実践への見通しをもたせる指導の工夫改善 ~ 1 安全 快適 の視点から実践的態度を育成するための指導計画の工夫改善 2 学び合いを通して高まった見方や考え方を実践につなぐための指導方法の工夫改善 1 学習状況の把握と結果の分析 (1) 学習状況の把握の方法 評価規準 生活や技術への関心 意欲 態度 生活を工夫し創造する力 自分や家族の住空間に 幼児や高齢者など 自分 関心をもち 家族の誰もが と立場のちがう家族のこ 安全で快適に生活できる とを考えた安全 快適な住 住まい方を工夫し実践し まい方を考え 具体的に工 ようとしている 夫している 生活の技能家族の誰もが安全 快適な生活ができるように 室内環境の整え方にかかわる基礎的な技能を身に付けている 生活や技術についての知識 理解住まいの働きが分かり 家庭内の事故の防ぎ方や災害への備え 室内環境の整え方について理解している 把握の方法 次の視点から事前アンケートを実施し 生徒の実態を把握した ( 複数回答可 ) < 関心 意欲 態度 > この題材の学習でどんなことができるようになりたいか 結果: 図 1 < 工夫 創造 > 自分の家について問題だと感じることはあるか 結果 : 図 2 3 < 技能 > 住まいにかかわる仕事や作業をしたことがあるか 結果: 図 4 < 知識 理解 > 家族仲間が住みやすい家にするためにどうするとよいか 結果: 図 5 (2) 学習状況の結果と分析 結果 よい住まい (33%) 家族の快適 (37%) の仕方 (9%) 身近な施設 (6%) その他 (15%) 高齢者 (43%) 自分や家族 (36%) 乳幼児 (3%) ペット (3%) 特になし (15%) 図 1 住まいの学習への願い 図 2 住まいに問題を感じる立場
18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 階段や段差 廊下 物の置き方 タンス ベランダ 台所 床 ストーブ 明るさ 寒さ その他 特になし 図 3 自分の家について問題と感じる内容 ( 単位 : 人数 ) 掃除 整理整頓 (61%) 物の移動 (8%) 修理 (8%) 換気 (2%) ものを作る (2%) 特になし (11%) その他 (8%) 掃除 整理整頓 (26%) リフォーム (21%) 広くする (15%) 分からない (15%) その他 (23%) 図 4 住まいにかかわる仕事の経験 図 5 住みやすい家にするための方法 分析 < 生活や技術への関心 意欲 態度 > 多くの生徒が 今の住まい方よりも快適にすることができる工夫や知識を学びたいと考えている また 一人で暮らしているわけではないので 自分 だけでなく 家族 にとって快適な住まいになるよう考えていきたいと願う生徒も多くいる < 生活を工夫し創造する力 > 約半数の生徒が階段や段差を自分の家の問題点だととらえている 3 世帯で同居している生徒が多い ( 全体の67%) ため 高齢者の立場から問題点をとらえており 安全 をよい住まい方 快適な住まい方を工夫する視点の一つと考えている < 生活の技能 > 生徒が経験したことがある 住まいにかかわる仕事 の6 割が 掃除や整理整頓である しかし 快適な住まいにするための仕事 ( 明るさ 温度 湿度 空気の調節など ) に関する記述は少ない 小学校で学習した掃除の仕方や整理整頓のポイントを生かし 家庭実践していると考えられる このことから 室内環境の整え方に関わる仕事をするための技能を身に付けることが家庭実践につながると考えられる < 生活や技術への知識 理解 > 家族の快適な住まいづくりに必要なこととして 4 人に1 人が 掃除 整理整頓 としている 分からない と答えたり リフォームする 家を広くする といった実現が容易ではないことを指摘したりする生徒が少なくない このことから 安全で快適な住まい方に関して 何のために 何を どのように すると自分の力で家族がよりよい住まい方ができるのかを理解する必要があると考えられる
2 分析に基づく授業改善 (1) 授業改善の方針 < 生徒の実態 > 家族みんなが快適に生活することができる住まい方を学習したいと願っている 身の周りの掃除や整理整頓以外のことについては家族に任せていることが多い 住まい( 住居そのもの ) を変えることは自分の力では難しく 自分の力で住まい方を工夫することができた経験が少ない < 授業改善の方針 > 自分の力で住まい方を工夫することによって家族の誰もが安全で快適な生活を送ることができることを実感し 多様な視点から住まい方を工夫し家庭で実践できる力を育てるため 1 安全 快適 を題材を貫くキーワードとして設定し 毎時間 追究する視点を明確にした実践的 体験的な学習活動を位置付け 何のために 何を どのように するとよいか 実感を伴って理解できるようにする 2 追究する視点を明確にしたワークシートや板書の仕方を工夫し 実践的 体験的な学習活動を振り返り考察する場において 学び合いを通して高まった見方や考え方を一般化するとともに 自分の家庭の状況に応じた実践方法を考える場を位置付け 家庭での実践につなぐことができるようにする (2) 改善の具体的方途と実践 1 安全 快適 の視点から実践的態度を育成するための指導計画の工夫改善 従来の題材指導計画 ( 簡易版 ) 1 住まいの働きと役割 2 家族と住まい 3 住まい方を工夫しよう 4 室内の空気調節と防音 5 住まいの安全 6 地震対策 7 清潔な住まい 8 住まいの清掃と手入れ 9 快適な住まい方の提案 10 実践交流会 改善後の題材指導計画 ( 簡易版 ) 1 住まいの働きと役割第 2 時で 家族の 安全 快 2 住まいの安全適 な住まい方 3 安全な住まい方について考え 4 地震などに備えた住まい方題材を貫く課題を設定する 5 安全で快適な空気調節 6 夜の音の出し方の工夫 ( 本時 ) 1 時間で扱っていた 室内の空気調節と防音 を 2 時間扱いとする 各時間の実践的 体験的な活動を充実させることによって 安全で快適な住まい方に関する見方や考え方を高める 住まいの清掃及び整理整頓にかかわる学習内容は小学校においてのみ学習することとなったため 改善後の題材指導計画には位置付けないこととする 2 学び合いを通して高まった見方や考え方を家庭での実践につなぐための指導方法の工夫改善ア追求する視点を明確にした実践的 体験的学習活動の工夫生徒は 何のために 何を どのように するとよいか 実践的 体験的な活動を通して実感を伴って理解し 家庭での実践に対する見通しをもつことによって 自分の力で自信をもって家庭実践できると考えた そこで 次のように追究する視点を明確にした実践的 体験的学習活動を位置付けた ま
た 実践的 体験的活動を行う際には 音の大きさ の変化を 小さくなったような感じ 大きくなったような感じ といった体感的なものだけで判断するのではなく 騒音計 を活用して音の大きさを数値で示すことによって 客観的にも判断できるようにした ( 詳細は 別添資料 412 参照 ) 何のために 家族の迷惑にならないようにするため 何を どのようにするとよいか 夜の音の出し方追究する視点 1 音源 ( 音の出し方 ) 2 吸音の効果 3 音源の場所や向き 実践的 体験的な学習活動 < 音源そのものの音の出し方を試すコーナーを設定 > トイレの引き戸の開け閉め 階段の上り下りを強さや速さを変えて行うことで どのように音が聞こえるか試してみる < 吸音の効果について試すコーナーを設定 > CD ラジカセを机の上に置いて聞いたり CD ラジカセの下に座布団などの布を敷いて聞いたりして聞こえ方にちがいがあるか 試してみる < 場所や向きの違いによる音の大きさを試すコーナーを設定 > CD ラジカセをいろいろな場所に置いたり スピーカーの向きを変えたりして 自分や家族の部屋ではどのように音が聞こえるか試してみる イ学び合いを通して高まった見方や考え方を一般化し家庭での実践につなぐことができるようにするための板書とワークシートの工夫生徒自らが自分の力で家庭において 何を どのように すると家族に迷惑をかけないような音の出し方を工夫することができるか見通しがもてるように 追究する視点をワークシートや板書に効果的に示し 学び合いを通して高まった見方や考え方を一般化するとともに 自分の家庭の状況に応じた実践方法を考える場を位置付け 家庭での実践に生かすことができるようにした ( ワークシートについては 別添資料 3 参照 ) 写真 1 板書の工夫
題材前のアンケートで 住みやすい家にする工夫 は 分からない と答えていたA 男は 授業を次のように振り返ることができた 僕は 家で夜遅くCDを聞いているけれど 家族の迷惑にならないようにするには小さい音にして聞くのがいいと思っていた 今日の授業で 座布団を敷くと 音が吸収されてそんなに響かなくなることが分かった このことなら家でできそうだ 明日から夜遅くにCDを聞いたりするときには 座布団を敷いて試してみたい 追究する視点をワークシートや板書に位置付け 高まった見方や考え方を一般化することによって 生徒は家庭実践への見通しをもつことができたと考えられる 3 授業改善後の成果 題材の終了後に 題材の実施前と同様のアンケートを実施したところ 次のような結果であった 掃除 整理整頓 (26%) リフォーム (21%) 広くする (15%) 分からない (15%) その他 (23%) 地震 災害への備え (14%) 幼児 高齢者の安全 (49%) 音の出し方の工夫 (33%) 明るさの工夫 (4%) < 地震に備える > 例 家具の配置や固定 逃げ道 < 幼児 高齢者の安全 > 例 すべり止め スロープ手すり 角カバーなど < 音の出し方の工夫 > 例 下に布を敷くなど 図 6 生徒の実態の変化 1 住みやすい家にするための方法 掃除 整理整頓 (61%) 物の移動 (8%) 修理 (8%) 換気 (2%) ものを作る (2%) 特になし (11%) その他 (8%) 音の出し方の工夫 (35%) 安全の工夫 (27.5%) 地震 災害への備え (10%) まだしていない (27.5%) < 音の出し方の工夫 > 例 コンポの位置を変えた < 地震に備える > 例 家具の配置を変えた < 幼児 高齢者の安全 > 例 マットにすべり止めをつけた スロープをつくった 図 7 生徒の実態の変化 2 住まいにかかわる仕事の経験 図 6 から 生徒は学習を通して安全で快適な住まい方に関する理解を深め 多様な視点から住まい方を工夫することができることへの認識を高めることができたことが分かる 特に 工夫することを具体的に記述できている生徒が多く 家庭実践への見通しをもつことができたことが分かる さらに 半数の生徒は 幼児や高齢者の安全に配慮することの大切さを指摘しており 家族の安全 を貫くテーマに設定して題材を構成したことの成果だと考えられる 図 7 から 生徒の4 人に3 人は学習を生かして 安全で快適な住まい方の工夫を家庭で実践できたことが分かる 地震に備えて家具の配置を変えたり 祖母がけがをしないように玄関マットにすべり止めをつけたりすることを通して 家族の誰もが安全で快適に住まうことができるように 住まいを変えることは難しいが 住まい方を自分の力で変えることができる ことを実感することができたと考えられる 一方で 家庭で実践できていない生徒がいる 一人一人の実態に即して家庭での実践の具体的な見通しをもつことができるようなきめ細かな指導と見届けの仕方を工夫する必要がある