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様式 1 資料調査及び更新可能性 1 次判定 (1/4) 林小班名 林班 小班 調査年月 年 月 1. 施業要件の確認 森林調査簿記載内容 検討 機能類型 山地災害防止 ( 土砂 ) 山地災害防止 ( 気象 ) 自然維持 森林空間利用 快適環境形成 水源涵養 施業方法 育成単層林 育成複層林 天然生

(11) 主要機器 計測及びデータ作成に使用した機器は下表のとおりである 表 Ⅱ-5-(11)-1 主要機器一覧 作業工程 名称 数量 計測 撮影用固定翼機レーザ測距装置 GPS/IMU 装置 セスナ社製 208 型 LeicaGeosystems 社 ALS70 LeicaGeosystems 社

地区名 所在地 表 4.1 天然力を活用した森林施業の事例調査地の概要 調査地番号 植栽木 林齢 整備面積 (ha) 所管 宮崎宮崎県宮崎市 J1 スギ 40 年生 2.2 宮崎森林管理署 長崎長崎県大村市 J2 スギ 53 年生 14.9 長崎森林管理署 佐賀佐賀県武雄市 J3 ヒノキ 53 年生

再造林 育林の低コスト化に関する指針 育林の低コスト化に関する指針平成 27 年 3 月高知県林業振興 環境部 1 指針の目的平成 24 年 9 月に策定した 皆伐と更新の指針 では 伐採時期を迎えた人工林を皆伐した後 再造林の適地と判断される伐採跡地では 森林資源の持続的な利用を図るうえでも再造林

資料 6 2. 貴重な森林生態系の価値を損なわない適正な利用の推進 1 適正利用の推進について < 検討課題 > 観光客の適正利用の推進および一極集中への対応について ( 対象となる団地 : 全て ( 特に金作原 )) < 主な意見 > 伝統的な自然資源の利用が失われてはいけない どのような利用があ

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(4) 横断面形調査要領では メッシュの中心点と 中心点を通る等高線が内接円に交わる 2 点を結んだ 2 直線の山麓側の角度 ( メッシュの中心点を通る等高線がない場合は 中心点に最も近接している等高線から類推する角度 ) を計測し 10 度括約で求める とされている 横断面形の概念図を図 4.4

2 渓畔林の歴史 現状 課題 県内の森林にある渓流の中下流には 相模湖 津久井湖 宮ケ瀬湖 丹沢湖などのダム湖が位置しており 渓流沿いにある渓畔林を保全し その機能を十分に保つことは良好な水源環境の保全 再生の観点からも必要である しかし 県内の渓畔林は過去に関東大震災などの自然攪乱に度々あい 大き

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1-1 林地台帳の記載事項 1 林地台帳には 法改正案に規定されているものに加え 市町村の行政事務の円滑化や の施業集約化の効率化に資する情報を記載 ( 省令 通知で規定 ) 追加的な情報としては 経営計画の認定状況 保安林等法指定状況等を想定 ( これらはすでに市町村や 都道府県が有している情報

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となっており このサイクルによって被害が拡大します このため 被害を防ぐためには 1 カミキリやセンチュウの侵入 増殖防止を目的とする 予防 2 被害を受けたアカマツの 駆除 の 2 つの対策が必要になります 4 空中散布中止までの取り組み国有林では 昭和 62 年度に半過山で最初の被害が発生し そ

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資料 3 奄美大島 徳之島におけるスギ人工林の広葉樹林復元の検討 目次 1. 調査の目的... 2 2. 調査の内容... 2 (1) スギ人工林箇所の概況把握調査... 2 1 森林調査簿によるスギ人工林の把握... 2 2 航空写真を活用したスギ人工林の把握... 4 3 現地調査によるスギ人工林の概況把握... 7 (2) スギ人工林の各種ポテンシャルの把握... 10 1 生物多様性に係るポテンシャル... 10 2 水土保全機能に係るポテンシャル... 16 3 木材生産機能に係るポテンシャル... 17 (3) 学識者及び地元有識者のスギ人工林の取扱いに関する意見の整理... 17 (4) スギ人工林の取扱についての検討... 17 (5) スギ間伐材の利用に関する検討... 22 平成 27 年 12 月 22 日 ( 一社 ) 日本森林技術協会 1

1. 調査の目的奄美大島 徳之島の国有林では かつてスギの植林が行われ 森林簿上スギ人工林となっている場所がみられる しかし これらのスギ人工林は スギが一斉林として成林している場所もあれば 広葉樹林の樹冠に覆われ 被圧されながら生育している場所もある その中で スギを凌駕し広葉樹が優占する林では 広葉樹が優占する階層構造が形成され 広葉樹の稚樹が更新し 動植物の生息地としての生物多様性の高い森林が多くみられる 本調査は 現地調査や有識者へのヒアリングを行い スギ人工林の実態とそれらのスギ人工林の持つポテンシャル ( 生物多様性や水土保全 木材生産機能等の森林機能に係るポテンシャル ) を評価し タイプ分けを行い タイプ毎の今後のスギ人工林の取扱いについての方向性を検討することを目的とする そのため本調査では 今後の復元手法としてのタイプ毎の施業等の案を示すとともに 施業における成果や課題を抽出するための具体的な実証計画案 ( 候補地 施業内容 順応的な管理のためのモニタリング計画の案 ) を策定するものである 2. 調査の内容 (1) スギ人工林箇所の概況把握調査 1 森林調査簿によるスギ人工林の把握 金作原 神屋 三京 八津野 図 -1 森林調査簿によるスギ人工林箇所 森林調査簿上 スギ人工林は 森林生態系保護地域に指定されている奄美大島の金作原 神 屋 八津野 徳之島の三京にもみられる 徳之島は 森林簿上では国有林にスギがないことに 2

なっているが 徳之島中部三京林道周辺の森林にはスギが混交する広葉樹がみられる 下記に 概要把握の対象候補地として 森林簿上で特にスギ人工林とされている 5 箇所を図 と表において示す 204 ち 211 と 220 た 221 へ 1 244 に 図 2 奄美群島の森林の樹種構成 表 1 人工林林況の概要把握の対象候補地 (5 箇所 ) 林班名 広葉樹 _ 材積マツ _ 材積スギ _ 材積総計 _ 材積広葉樹 _ 割合マツ _ 割合スギ _ 割合緯度 経度 標高 地名 調査年度 204ちB 2.2 12.7 14.9 14.5 0.0 85.5 28.32816401 129.457221 273.859253 金作原 H24 211と 10.2 10.2 0.0 0.0 100.0 28.29582101 129.380091 271.455933 神屋 H24 220た 2.2 7.7 9.9 22.7 0.0 77.3 28.22215296 129.341658 82.317993 八津野 57C H23 221へ1B 0.8 23.0 23.8 3.2 0.0 96.8 28.20932698 129.34252 106.110352 八津野 H24 244にa 3.4 4.4 2.5 10.4 33.0 42.5 24.5 27.777895 128.960846 200.435989 三京本線手前 H24 3

2 航空写真を活用したスギ人工林の把握森林生態系保護地域に指定されている奄美大島の金作原 神屋 八津野 徳之島の三京を対象に 近年撮影された航空写真を用い スギ人工林により樹冠が閉鎖されている森林を判読して 樹冠の閉鎖がみられるスギ人工林位置図 ( 図 -3-1~4 参照 : 作業中 ) を作成し 該当する林小班を表 - ( 作業中 ) に示す 図 -3-1 奄美大島の金作原の航空写真 (2012 年国土地理院撮影 :C10-5) 図 -3-2 奄美大島の神屋の航空写真 (2014 年国土地理院撮影 :C2-23) 4

図 -3-3 奄美大島の八津野の航空写真 (2012 年国土地理院撮影 :C6-2 C7-3) 5

図 -3-4 徳之島の三京の航空写真 (2008 年国土地理院撮影 :C4-16) なお 平成 27 年 11 月に撮影が行なわれた航空レーザー計測データ ( 資料 -4 参照 ) につい ては データが出揃った後 平成 28 年度業務にて活用を行い 詳細現地調査結果との検証と地 形因子の活用のための分析を行う予定である 6

3 現地調査によるスギ人工林の概況把握前述 12の調査結果を基に 主なスギ人工林の現地における概況把握調査を行った 調査地点は図 -4-1~2 に示す 現地概況把握調査結果 ( スギの密度の概況 優占樹種 階層構造 スギの生育状況 ) を表 -2-1~2に示す 航空写真にて比較的にスギ人工林が確認できるエリア 図 -4-1 奄美大島の国有林における概況調査地点 ( 現地調査地点 ) 7

表 -2-1 奄美大島の国有林におけるスギ生育地の概況把握調査結果 ( 現地調査結果 ) NO 場所林班小班 標高 m スギ生育状況 スギ平均胸高直径 cm スギ平均樹高 m スギ密度本 /100 m2 スギ立枯れ本 /100 m2 高木層優占種 1 金作原 203 ぬ 305 単木 25.0 14.0 1 0 広葉樹 3 金作原 203 は 318 混交 15.0 16.0 3 1 広葉樹 4 金作原 203 へ 1 295 成林 12.0 16.0 11 2 スギ 5 金作原 204 ぬ 333 混交 23.0 19.0 3 1 広葉樹 8 金作原 204 ち 360 混交 24.0 14.0 11 2 スギ 11 金作原 203 は 2 271 混交 12.0 14.0 5 2 広葉樹 31 神屋 211 と 255 成林 19.0 14.0 10 3 スギ 32 神屋 210 ぬ 252 成林 17.0 17.0 11 2 スギ 33 神屋 210 は 294 成林 19.0 17.0 11 2 スギ 13 八津野 218 れ 25 成林 21.0 18.0 13 1 スギ 14 八津野 218 か 42 成林 15.0 17.0 11 2 スギ 15 八津野 218 へ 1 136 成林 18.0 16.0 13 1 スギ 16 八津野 220 た 59 混交 22.0 15.0 6 3 広葉樹 17 八津野 222 い 6 87 成林 29.0 18.0 9 1 スギ 18 八津野 222 い 6 88 成林 25.0 17.0 8 2 スギ 19 八津野 221 い 2 95 混交 22.0 18.0 3 3 広葉樹 20 八津野 221 へ 104 成林 25.0 15.0 7 1 スギ 22 八津野 221 ほ 110 混交 19.0 17.0 4 2 広葉樹 ( 注 1) スギ生育状況は スギが単木で生育している状態を 単木 スギ林に広葉樹が進入し広葉樹林が優占している状態を 混交 完全にスギ林が優占していて一斉林として生育している状態を 成林 とした 奄美大島の金作原では 2つの林班の5つの小班にてスギの生育が確認され その内 2つの小班ではスギの一斉林が成林しており その林分のスギ生立密度は 1,100 本 /ha 平均直径は 12.0~24.0cm 平均樹高は 14.0~16.0mであった また スギが混交 成林している林分では スギの立ち枯れ木が 100~200 本 /ha 確認され スギ生立木が徐々に進入広葉樹に被圧され枯死していく過程がみられた 神屋では 2つの林班の3つの小班にてスギの生育が確認され その3つの小班ともスギの一斉林が成林していて その林分のスギ生立密度は 1,000~1,100 本 /ha 平均直径は 17.0~ 19.0cm 平均樹高は 14.0~17.0mであった ただし スギが一斉林として成林している林分でも スギの立ち枯れ木が 200~300 本 /ha 確認され スギ生立木が徐々に被圧枯死していた 八津野では 4つの林班の8つの小班にてスギの生育が確認され その内 5つの小班にてスギの一斉林が成林していて その林分のスギ生立密度は 700~1,300 本 /ha 平均直径は 15.0 ~29.0cm 平均樹高は 15.0~18.0mであった ただし スギが一斉林として成林している林分でも スギの立ち枯れ木が 100~200 本 /ha 確認され スギ生立木が徐々に被圧枯死していた 今後は 最新の航空写真 ( 平成 27 年 11 月林野庁撮影 ) を用いて 小班の中における生育分布範囲を特定し 概括的な生立本数を把握する予定である 8

航空写真にて比較的にスギ人工林が確認できるエリア 図 -4-2 徳之島の国有林における概況調査地点 ( 現地調査地点 ) 表 -2-2 徳之島の国有林におけるスギ生育地の概況把握調査結果 ( 現地調査結果 ) NO 場所林班小班 標高 m スギ生育状況 スギ平均胸高直径 cm スギ平均樹高 m スギ密度本 /100 m2 スギ立枯れ本 /100 m2 高木層優占種 43 三京 244 い 143 単木 15.0 9.0 1 1 広葉樹 44 三京 244 い 159 成林 16.0 11.0 7 2 スギ 47 三京 244 に 179 混交 19.0 15.0 5 5 広葉樹 48 三京 244 ほ 201 単木 13.0 14.0 2 2 広葉樹 49 三京 244 へ 199 単木 26.0 16.0 2 1 広葉樹 50 三京 244 へ 198 成林 23.0 11.0 6 2 スギ 52 三京 244 に 1 218 混交 18.0 15.0 3 3 広葉樹 53 三京 244 に 1 218 混交 18.0 16.0 3 3 広葉樹 54 三京 244 に 1 228 混交 20.0 16.0 4 2 広葉樹 58 三京 244 に 1 211 混交 13.0 14.0 7 2 スギ 67 三京 241 の 263 単木 33.0 13.0 1 0 広葉樹 ( 注 ) スギ生育状況は スギが単木で生育している状態を 単木 スギ林に広葉樹が進入し広葉樹林が優占している状態を 混交 完全にスギ林が優占していて一斉林として生育している状態を 成林 とした 徳之島の三京では 1つの林班の6つの小班にてスギの生育が確認され その内 3つの小班にてスギの一斉林が成林していて その林分のスギ生立密度は 600~700 本 /ha 平均直径は 13.0~23.0cm 平均樹高は 11.0~14.0mであった ただし スギが一斉林として成林している林分でも スギの立ち枯れ木が 200 本 /ha 確認され スギ生立木が徐々に被圧枯死していた 今後は 最新の航空写真 ( 撮影時期は未定 ) を用いて 小班の中における生育分布範囲を特定し 概括的な生立本数を把握する予定である 9

(2) スギ人工林の各種ポテンシャルの把握 1 生物多様性に係るポテンシャル ⅰ 復元効果の指標種の検討広葉樹復元の効果を検証するためには 施業前後の在来生物群集の比較をする必要がある そのために 広葉樹林に生息地を依存する種のうち 森林環境に対する感受性が高く 変化を検出しやすい種をモニタリングの指標種として選定する必要がある 以下の図には 森林環境に敏感な種の一例を示す 業務においては 文献や有識者へのヒアリングにより指標種の候補の絞り込みを行う ヤンバルホオヒゲコウモリヒャンフェリエベニボシカミキリトクノシマエビネ アマミイシカワガエルアマミノクロウサギアマミトゲネズミフウラン 図 -5 復元効果の指標種となりうる種の一例 平成 23 年度奄美群島の国有林の自然環境に関する調査及び第 3 回奄美群島森林生態系保護地域設定委員会の支援に関する業務 の中で野外調査 文献調査 聞き取り調査から 113 種の指標植物と指標動物について情報マップを作成している 本年度は 有識者の意見を反映して この 113 種から 10~20 種をリストアップし 聞き取り情報から情報マップを更新し 復元ポテンシャル評価作成に資する資料とする ⅱ 生物多様性に係る復元ポテンシャルの評価とイメージ施業を実施するにあたっては 各林分の広葉樹林復元の生物多様性に係るポテンシャル 水土保全機能に係るポテンシャル ( 後述 2 参照 ) を評価し ポテンシャルが高いエリアから実施することで 早期の成功事例の提示 外来種の侵入の回避が達成できると考えられる 本年度は 現地概況把握調査結果から 後述 (4)12で示す3タイプ別に 奄美大島の金作原 神屋 八津野 徳之島の三京の各地域を対象に 地域毎に標準的なタイプを1~3 箇所選定し 詳細現地調査地を抽出して 各候補地においての下層植生 ( スギ以外 ) の被度や材積 指標動植物の生育 生息状況 水土保全機能に係る概況 ( 後述 2 参照 ) を把握し 復元ポテンシャルについての評価 考察を実施する また スギ人工林だけでなく 広葉樹林についても 10

同様の調査を各地位 1 箇所づつ実施し 効果の評価の際のコントロールデータとする なお 詳細現地調査は 平成 28 年 1 月 ~2 月に実施する予定である 以下の 11~14 ページには 当協会がこれまでに実施した調査結果を基に 下層植生の材積 直径樹高プロットなどから復元ポテンシャルおよび復元までにかかる時間の評価を実施するイメージを示す 例として挙げた地域は スギの林分が比較的多く存在する奄美大島の金作原 神屋 八津野 徳之島の三京で すべて森林生態系保護地域に指定されているエリアである 11

金作原 : 調査地樹種別材積割合 直径 樹高プロット 景観 樹種別材積量と材積割合凡例は 9.2m 3 /20 20m プロットの場合 図 6-1 奄美大島 金作原地域の調査プロットの材積割合 204 ち (44 年 ) 25 20 樹高 (m) 15 10 5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 胸高直径 (cm;10cm 以上 ) 特徴 :44 年生のスギ林プロット スギの生育は悪い 広葉樹は高木層にも達しており 広葉樹 林に置き換わりつつある林分 復元ポテンシャルは高く 復元時間も早いと考えられるため 抜き切りにより 早期に照葉樹林への復元が期待できる 12

神屋 : 調査地樹種別材積割合 直径 樹高プロット 景観 樹種別材積量と材積割合凡例は 9.2m 3 /20 20m プロットの場合 図 6-2 奄美大島 神屋地域の調査プロットの材積割合 211 と (34 年 ) 25 20 樹高 (m) 15 10 5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 胸高直径 (cm;10cm 以上 ) 特徴 :34 年生のスギ林プロット スギの生育は悪い 毎木調査の対象は胸高直径 10 cm以上としたため グラフには広葉樹がプロットされていないが 10 cm以下の広葉樹が林床に生育していることが写真から分かる 光環境を改善することで これらの広葉樹の生育が促進されると考えられる 復元ポテンシャルは高いが 低木層の生育まで時間を要する 13

八津野 : 調査地樹種別材積割合 直径 樹高プロット 景観 樹種別材積量と材積割合凡例は 9.2m 3 /20 20m プロットの場合 図 6-3 奄美大島 八津野地域の調査プロットの材積割合 220 た (57 年 ) 25 20 樹高 (m) 15 10 5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 胸高直径 (cm;10cm 以上 ) 221 へ 1B(46 年 ) 25 20 樹高 (m) 15 10 5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 胸高直径 (cm;10cm 以上 ) 特徴 :57 年生 46 年生のスギ林プロット スギの生育は悪い 両者とも高木層はスギが占める が 亜高木 ~ 低木層には広葉樹が繁茂し鬱蒼としている 復元ポテンシャルは高い 復元時間 は亜高木層が高木層に達する時間を要する 14

徳之島中部 ( 三京地区 ): 調査地樹種別材積割合 直径 樹高プロット 景観 樹種別材積量と材積割合 ( 凡例は 9.2m 3 /20 20m プロットの場合 ) 図 6-4 徳之島 三京地域の調査プロットの材積割合 244 に a(47 年 ) 25 20 樹高 (m) 15 10 5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 胸高直径 (cm;10cm 以上 ) 特徴 :47 年生のスギ林プロット スギの生育は悪い 森林簿上は スギ林としての記載はないが 実際に調査をすると写真のようなスギがまばらに混じった林相となっている スギとマツは高木層を形成しているが 広葉樹も胸高直径が 40 cm以上の大きな個体も生育している 高木層を除去することで 亜高木の生育が促進されることも考えられる 復元ポテンシャルは高く 復元時間も短いと考えられる 15

2 水土保全機能に係るポテンシャル水土保全機能に係るポテンシャルは 保安林種 機能類型 下流における水資源利用 ( ダムの有無 ) 希少魚類 ( リュウキュウアユの生育有無 ) を要因として検討した 地域毎の水土保全機能ポテンシャルを表 - ( 作業中 ) に示す 住用川流域 ( リュウキュウアユ生息河川上流域 ) 川内ダムの上流域 新住用ダムの上流域 金作原 川内ダム 八津野 神屋 新住用ダム 川内川流域 ( リュウキュウアユ生息河川上流域 ) 徳之島ダム 役勝川流域 ( リュウキュウアユ生息河川上流域 ) 三京 徳之島ダムの上流域 図 -7 保安林種とダム上流域 リュウキュウアユの生息河川の上流域の状況 金作原 神屋 八津野 三京 図 -8 機能類型の状況 16

図 -9 参考 奄美大島におけるリュウキュウアユの生息河川 ( 出典 ) 豪雨災害による河川生物への影響 - リュウキュウアユでの例 - 2010 年奄美豪雨災害 の総合的調査研究 報告書 ( 鹿児島大学水産学部四宮明彦 ) 3 木材生産機能に係るポテンシャル 世界遺産のコア ( 生態系保護地域のコア ) とバッファ ( 生態系保護地域のバッファ ) では 重複はあるものの期待されるポテンシャルが異なる また 現在発揮されているポテンシャルは 重複はあるもののスギ人工林の現状 (a: 一斉林として成林 b: 広葉樹と混交 c: 広葉樹が優占 ) により異なってくる そこで 個々のスギ人工林の場所において期待されるポテンシャルと 個々のスギ人工林が発揮しているポテンシャルとを整理し その整合性がかけ離れているスギ人工林については 何らかの施業により期待される森林へと誘導する手法を検討しなければならない (3) 学識者及び地元有識者のスギ人工林の取扱いに関する意見の整理今後 前述 2-(1)-3の最新の航空写真による判読調査結果が終わる平成 28 年 1 月中を目途に 保全管理委員及び科学委員の主な学識者及び主な地元有識者を対象にヒアリング調査を行い スギ人工林の今後の取扱いについての意見を整理する (4) スギ人工林の取扱についての検討奄美大島 徳之島におけるスギ人工林の照葉樹林復元のための実証試験の提案 1 スギ人工林の現状として発揮されているポテンシャル別の施業の提案 ⅰ 生物多様性のポテンシャルの高い場所 無施業若しくは単木の抜き切り 17

ⅱ 水土保全機能のポテンシャルの高い場所 無施業若しくは単木の抜き切り 又は間伐施業 ( 定性間伐 ) ⅲ 木材生産機能のポテンシャルの高い場所 間伐施業 ( 定性間伐若しくは定量間伐 : アクセス次第により無施業も有りうる ) ここで言う無施業とは 現況より 進入してきた広葉樹にスギが被圧又は凌駕されていて 放置していてもやがては広葉樹林へと変化する森林を対象とする 実際にはこのようなスギ 人工林も多くみられる ( 以下の 2 も同様 ) 2 生物多様性のポテンシャルが発揮されていないが 将来生物多様性のポテンシャルの発揮が期待されるスギ人工林における施業の提案 ⅰ 現在 水土保全機能のポテンシャルが高く発揮されている場所 無施業若しくは単木の抜き切り ⅲ 現在 木材生産機能のポテンシャルが高く発揮されている場所 間伐施業 ( 定性間伐 : アクセス次第により無施業も有りうる ) 3 上記 12タイプ毎の実証試験計画 ( 場所 手法 モニタリング ) の提案 現在 奄美大島の八津野国有林の生態系保護地区のバッファの3 箇所にて実証試験を計画 ( 候補地として選定 ) 3 箇所は a: 一斉林として成林 b: 広葉樹と混交 c: 広葉樹が優占 の3 種の現状を示している 実証候補地は バッファであるが 仮にコアとして期待されるポテンシャルは 生物多様性 > 水土保全機能 > 木材生産機能 と考える そこで 前述 12の施業案を上述 abcの3 箇所にてそれぞれ実施し 実施後のモニタリング管理を行いながら 期待されるポテンシャルの森林に誘導可能かどうか 施業の成果 施業の課題についての検証を行っていく a 箇所 定性間伐とコントロール ( 無施業 ) の2 種の施業試験 b 箇所 抜き切りとコントロール ( 無施業 ) の2 種の施業試験 c 箇所 抜き切りと無施業の2 種の施業試験 モニタリング項目は 毎木調査 植生調査 動物調査 ( 自動撮影カメラによる ) 空中湿度の自動測定 土壌水分の自動測定 気温 地温の自動測定等を検討中である 委員会には 上記 a b c 箇所の施業イメージをポンチ絵にて提示する予定である 4 試行的な復元エリアの選定今後は 今までの調査結果より 奄美大島 徳之島の森林生態系保護地域のバッファーゾーンのスギ人工林 ( 金作原 神屋 八津野 三京 ) を対象に その地域に生息 生育する指標種及びその広葉樹林復元後に想定されるポテンシャル等に着目して 試行的な復元エリアをゾーニングし選定する また 選定にあたっては アクセスや施業 管理のしやすさ 周辺環境に与える影響等に配慮し スギ人工林の間伐によって広葉樹林化を図る実証試験の候補地を提案する 18

5 実証試験を行う抜き切り 間伐等の森林施業の手法の検討さらに今後は 前述 4で提案した実証試験の候補地の中から 抜き切り 間伐試験を実施するに当り 必要とされる各種法的手続き ( 保安林の指定施業要件に定められた伐採制限や保安林内作業許可等 ) などの手続き内容を整理した上で 関係機関及び学識者等と協議を行いながら 実証試験の規模や手法 期間等を整理して実証試験計画 ( 案 ) を策定する また 指標種 ( 希少種 ) の保護 保全の観点から 林内の乾燥化や気象災害へリスクについての整理を行う なお 奄美大島の八津野地域は 比較的隣接したアクセスのよいバッファゾーンエリアに 前述 3で示したa b cのタイプ区分されたスギ人工林がみられる そこで この3 箇所 ( 以下のⅰ~ⅲ) を対象に具体的な実証試験計画 ( 案 ) を策定し 現地検討会にて検討を行う 具体的な実証試験計画 ( 案 ) は現在策定中 具体的な実証試験計画( 案 ) における要検討事項 平成 28 年度以降は 以下のa b cの3 箇所にてそれぞれの施業を実施し 実施後のモニタリング管理を行いながら 期待されるポテンシャルの森林に誘導可能かどうか 施業の成果 施業の課題についての検証を行っていく a 箇所 定性間伐とコントロール ( 無施業 ) の2 種の施業試験 b 箇所 抜き切りと無施業の2 種の施業試験 c 箇所 抜き切りと無施業の2 種の施業試験 計画に組み込むモニタリング項目は検討中であるが 毎木調査 植生調査 動物調査 ( 自動撮影カメラによる ) 空中湿度の自動測定 土壌水分の自動測定 気温 地温の自動測定等を検討中である 19

ⅰ 八津野 :(220 た ) c 箇所 図視察箇所 1 の樹種別区分 特徴 : 森林簿上では 69 年生のスギ林 スギの生育は悪い 高木層はスギが占めるが 亜高木 ~ 低木層には広葉樹が繁茂している 照葉樹林への復元ポテンシャルは高いと思われる 20

ⅱ 八津野 :(220 ね 3) b 箇所 図視察箇所 2 の樹種別区分 特徴 : 森林簿上では 53 年生のスギ林 沢沿いでは胸高直径 20~30cm のスギが生育しており 高木層はスギが占める 低木層は広葉樹が生育しているが 高木層に達するまで時間を要する斜面側はスギの生育は悪く 広葉樹は高木層に達しており 広葉樹林に置き換わりつつある林分 スギの生育は悪い 照葉樹林への復元ポテンシャルは高いと思われる 21

ⅲ 八津野 :(221 に 1) a 箇所 図視察箇所 3 の樹種別区分 特徴 : 森林簿上では 49 年生のスギ林 高木層はスギが占めるが 亜高木 ~ 低木層の広葉樹はわ ずかに生育している 下層植生はシダが繁茂しており 埋土種子からの発芽を妨げる要因とな る (5) スギ間伐材の利用に関する検討 仮に施業によりスギの間伐材が生産される場合は その有効的な利用について何らかの答えを出す必要性がある そのため 平成 28 年 3 月をめどに 奄美大島 徳之島におけるスギ材の活用の現状と課題 今後の活用の可能性について言及を行う予定である 22