高砂報第170号                    平成18年4月26日

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日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

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第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

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53巻6号/TNB06‐10(委員会報告)

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< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

糖尿病がどんな病気なのか 病気を予防するためにどんな生活が望ましいかについて解説します また 検診が受けられるお近くの医療機関を検索できます 健康診断の結果などをご用意ください 検査結果をご入力いただくことで 指摘された異常をチェックしたり 理解を深めたりすることができます 病気と診断され これから

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激増する日本人糖尿病 ( 万人 ) 2,500 糖尿病の可能性が否定できない人 (HbA1c 6.0~6.4) 糖尿病が強く疑われる人 (HbA1c 6.5% 以上 ) 2,210 万人 2,000 1,500 1,000 1,620 万人 1,370 万人 万人 880 万人 +

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF315F817582C782B182C582E0826C C B4C985E82C98AD682B782E98DEC8BC EF92868AD495F18D902E B8CDD8AB B83685D>

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山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

1 ししつ脂質 いじょうしょう へ 高脂血症から 脂質脂質異常症 医療法人将優会クリニックうしたに 理事長 院長牛谷義秀 脂質異常症とは 血液中に含まれる LDL( 悪玉 ) コレステロールと中性脂肪中性脂肪のどちらか一方 あるいは両方が過剰の状態 または HDL( 善玉 ) コレステロールが少ない

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

,995,972 6,992,875 1,158 4,383,372 4,380,511 2,612,600 2,612, ,433,188 3,330, ,880,573 2,779, , ,

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

高砂報第176号                    平成18年10月11日

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(検8)05資料4 門脇構成員 随時血糖値の判定基準について

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血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

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平成 27 年 10 月 6 日第 2 回健康増進 予防サービス プラットフォーム資料 協会けんぽ広島支部の取り組み ~ ヘルスケア通信簿について ~ 平成 27 年 10 月全国健康保険協会広島支部 協会けんぽ 支部長向井一誠

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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高砂報第 170 号 第 95 回 葛飾高砂会 報告 平成 18 年 4 月 26 日 葛飾高砂会 加藤内科クリニック糖尿病勉強会真砂慶一郎 大越松司担当加藤院長 加藤管理栄養士校正 平成 18 年 4 月 26 日 ( 水 ) 午前 11 時から午後 1 時 30 分まで クリニック B1 集会室にて食事会を兼ねて開かれました はじめに加藤光敏院長 ----- 当院では 家庭医実習 として医学生を受け入れ 5 回目として慈恵医大 5 年生の塚原準二さんに 糖尿病の検査について と題して お話をしていただくことになりました 大学の講義そのままの難しい話でなく分かりやすくと依頼してあります 1. 糖尿病の検査について慈恵医大 5 年塚原準二さん ( : 加藤院長 加藤管理栄養士のコメント ) 糖尿病には 1 型 --- インスリンをつくる膵臓の β 細胞が自己免疫 本来なら起こるはずのない自分の体の構成成分を異物 ( 抗原 ) として認識する によって破壊され インスリンが全く分泌されないか ほとんど分泌されない状態 2 型 --- インスリン感受性低下とインスリン分泌低下に分類されます 1 型ではインスリンの絶対的な不足 2 型ではインスリンの相対的な不足が起こり 高血糖 尿糖が出現します 症状として口渇 多飲 多尿 体重減少が見られ その結果 急性合併症や慢性合併症が起こります 1 型は比較的子供の時の発病が多く インスリン注射を必ず行う必要があります 2 型は インスリン感受性低下 ( インスリンが効きにくい ) という状態とインスリン分泌低下の両方が関係しています 第 1 章血糖値 尿糖値 インスリンに関する検査 1-1 尿糖検査 ---- 低コストで簡単に実施できるので スクリーニング ( ふるいわけ ) 検査として広く行われています 高血糖時には大量のブドウ糖が尿細管に流れ込み再吸収が間に合わなくなり 尿糖が多く排出され尿糖陽性となります 普通の量の尿糖では 再吸収によって全て回収され 尿に糖が含まれません 逆に多くの量が流れると再吸収が間に合わなくなります 1-2 尿糖検査の問題点 ---- 尿糖が陽性になる血糖の値は 170~180mg/dl ほど - 1 -

なので 空腹時に検査した場合には 血糖値がかなり高い患者さん以外は陰性となるので 糖尿病患者であっても検査に引っかからない場合があります 近年は境界型糖尿病患者において 食後高血糖管理の重要性が問われています つまり食後の尿糖検査をすることにより 早い時期に糖尿病と診断することができます 問題点として 血糖値が正常であっても 尿細管の再吸収能力が低下していれば 尿糖は陽性となってしまいます これを腎性糖尿といいます 1-3 空腹時血糖だけでは 糖尿病予備軍や軽症糖尿病は見つからない ---- 食後 2 時間の血糖値と空腹時血糖値を 16 年間のグラフで見ると 空腹時血糖値は糖尿病になる 1 年前までは正常なのに対し 食後血糖値は 糖尿病になる 7 年から 10 年くらい前から上昇を始めていることが分かります したがって 食後の血糖値を測ることにより 糖尿病の早期発見につながります 2 血糖検査 ---- 診断基準として どの程度の血糖値をもって糖尿病とするかという基準があります 血糖値は瞬間風速のようなもので その時点の数値しか示しません 糖尿病とは慢性の高血糖状態なので 1 回の検査では不十分です したがって 血糖値以外に複数の検査をすることにより 糖尿病型から最終的に糖尿病と診断されます 糖尿病というのは 血糖が高いだけという基準がありますが いろいろな検査をした上で総合的に見て 最終的に糖尿病と診断しています 数値だけが一人歩きしてはいけません 社会的に見て どのような治療をしていくか すなわち周りの状況を見ていかないと良い治療はできません メディカルスタッフとして看護師 栄養士 薬剤師などがチームとして治療に当たることが大事です 先日 眼科の先生の紹介で来院された患者さんですが 血糖値は少し高い位だが眼の状態は糖尿病合併症が進んでいる という紹介状を持参されました この方は過去に血糖値が高い時期があって その時点で糖尿病治療を始めていれば 今のような合併症が起こらずにすんだと思います 2-1 血糖の種類 ---- 種類として 随時血糖と空腹時血糖の 2 種類があります 随時血糖とは 食事に関係なく測定した血糖値で その瞬間のインスリン分泌と相関関係にあります 空腹時血糖とは 食事から 10 時間以上あけて測定した血糖値で 24 時間の平均血糖と相関関係にあり 長い期間 血糖値に影響を受けた指標として用いられています 2-2 インスリンの分泌 ---- 一定量の基礎分泌と食事の後の血糖値に応じた追加分泌があります 空腹時血糖と随時血糖は この追加分泌と基礎分泌を併せて評価しています したがって 食後の分泌 つまり追加分泌の低下だけを評価することはできません 2-3 インスリン追加分泌能の評価 ---- 経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) は 75g のブドウ糖を飲み 負荷後の血糖値をチェックするものです そして 隠れた糖代謝異常を見つけることが出来ます 負荷 2 時間後の血糖の正常域は 140mg/dl 未満 糖尿病域は 200mg/dl 以上です 4-4 血糖のコントロール指標 ---- 血糖値は瞬間風速と同じであり 慢性高血糖の評価には 長期間の血糖値の影響を受ける指標を用いる必要があります そのため 〇 HbA 1c ( グリコヘモグロビン ) 〇糖化アルブミン ( グリコアルブミン ) 〇 1,5AG などの測定をします - 2 -

当院ではHbA 1c を常時測っていますが その値が良くなった人には 時々グリコアルブミンを測っています 4-5 HbA 1c ( グリコヘモグロビン ) という記号の意味は次のようになります 〇 Hb( ヘモグロビン ) 赤血球に含まれ 酸素を運搬するタンパク質 ( 赤い色素 ) 〇 HbA( ヘモグロビン A) 成人のヘモグロビンの内 90% を占めるタイプ〇 HbA 1 ( ヘモグロビンA 1 )HbAに糖が非酸素的に結合したもの〇 HbA 1c ( ヘモグロビンA 1c )HbA 1 の内 糖がブドウ糖であるもの 昔はHbA 1 で測っていたこともありますが 現在はHbA 1c で測っています どちらかといえば歴史的変遷を経ています 現在 HbA 1 で測っても保健の適用範囲外となり HbA 1c だけが認められています 血液に糖が多く含まれるほど 血液中に糖が付着したヘモグロビンの割合が増えていきます 一度結合したヘモグロビンとブドウ糖は 赤血球が壊れるまで離れることはありません したがって HbA 1c は測定時ではなく 両者が結合した1~2ヶ月前の血糖の平均値を反映しているので 治療の指標として多く用いられています 正常値は 4.3~5.8% とされています HbA 1c では ブドウ糖がヘモグロビンとがっちり結合しているため ヘモグロビンが壊れるまでは二度と離れません 糖尿病患者さんは 5.8% 未満にすることはなかなか難しいことです 健康診断でHbA1cが 5.4% ぐらいでも すでに糖尿病予備軍の方が混じってきます まして 6.5% 以上の場合は完全に糖尿病です しかし 6.5% 未満であると合併症の方も進みにくくなるので それを目標にしましょう 現在 糖尿病の二次予防である 合併症を進めない という厚生労働省の指針では HbA 1c の目標値は 5.8% 以下です 4-6 糖化アルブミン----ブドウ糖がヘモグロビンの代わりにアルブミンに結合したもので 2~3 週間前の血糖の平均値を示す値として用いられています 4-7 1,5AG----グルコース ( ブドウ糖 ) に類似した化合物で 食物から摂取され腎臓で完全に濾過された後 尿細管でほとんどが再吸収される物質です 化学構造がブドウ糖と似ているために 尿細管にブドウ糖が存在すると 1,5AG の血中濃度は直ちに減少します 2~3 日前の血糖の平均値として用いられています 間食をすると尿糖が増え そのため 1,5AG の血中濃度は減っていきます 3 診断基準 -- 3-1 糖尿病型の診断基準〇空腹時血糖値 126mg/dl 以上〇随時血糖値 200mg/dl 以上〇経口ブドウ糖負荷 2 時間値 200mg/dl 以上 ----これらの内 いずれか一つを満たすと糖尿病型と診断しています 3-2 糖尿病の診断基準〇先の検査で糖尿病型と診断され 別の日に行った検査で再び糖尿病型と確認できれば 糖尿病と診断します 〇また 糖尿病型の基準を満たし 次の内 いずれかの条件を一つ満たせば糖尿病と診断します 1HbA 1c が 6.5% 以上 2 糖尿病の典型的な症状がある場合 ( 多尿 口渇 多飲 体重減少 ) 3 確実な糖尿病網膜症が認められた場合 4 インスリンの検査 ---- 糖尿病はインスリンがかかわりますので インスリンの検査は糖尿病の診断に役立ちます 糖尿病はインスリンの欠乏 ( 分泌能の低下 ) または感受性の低下 ( 抵抗性の上昇 ) によって 慢性の高血糖を来たした病気です 4-1 インスリン分泌能の検査 ---- 日本人は欧米人に比べて分泌能が弱いため 欧米人に比べ糖尿病になりやすいといわれています この検査は 1 型と2-3 -

型糖尿病の診断に役立ちます インスリンが絶対的に欠乏する 1 型糖尿病では インスリン分泌能は大きく低下し 相対的に欠乏する 2 型糖尿病では インスリン分泌能は上昇から低下までさまざまな様相を示します 4-2 インスリン分泌の仕組み ---- 免疫学的に測定された血中インスリン値を IRI といいます しかし インスリンは消費されるため IRI は分泌量と一致しません 分泌量から消費量を引いた値が C- ペプチドとして測定されます C- ペプチドはインスリンと同じ数だけ生成され 消費はされません インスリンの分泌能を反映するのは C- ペプチド値 (CPR) で この値がインスリンの分泌量を測る値です 当院では C- ペプチド値を時に測ってインスリン分泌能がどの程度残っているかの大切な指標にしています インスリン注射を日常打っている人は インスリン値が正しく測定出来ないとされています 4-3 インスリン抵抗性の検査 (HOMA-R)---- 必要の無いのにインスリンは分泌されないので 血中のインスリン値 (IRI) の上昇はインスリンの抵抗性を意味します 空腹時の血糖値と血中のインスリン値からインスリン抵抗性がどのくらいか分かります 血中のインスリン値が多くて血糖値が高いということは インスリンが多く分泌されても それが効いていないことを示しています その度合いは インスリン抵抗性に比例していると考えられます グルコースクランプ法という法則があります これはインスリン抵抗性がある人では 高インスリン血症になっても少量のブドウ糖によって血糖値を保てることを利用しています したがって インスリンを持続的に注入して高い値を保った後 血糖値を維持するのに必要なブドウ糖の量を測ることでインスリン抵抗性の強さが分かります 第 2 章 1 型 2 型糖尿病と検査 1. 1 型糖尿病 ---- 原因として遺伝因子と環境因子があります それにより自己免疫応答に異常が生じ インスリンの分泌が完全に無くなってしまいます その結果 インスリン依存状態になります 遺伝と関係はありますが 親が 1 型だから子供も 1 型という遺伝ではなく ウイルスが入ってきたときに反応しやすいという遺伝因子を持っています ですから 1 型糖尿病は遺伝しないと理解しておいて結構です 2 型糖尿病の方が遺伝因子と環境因子に影響されます 2. 遺伝因子 ---- 特定の HLA 型 膵臓をターゲットとする免疫応答が起こされやすいといわれています しかし 一卵性双生児においては 1 型糖尿病になる確率は 40% です 同じ HLA 型でも必ず発症するわけではなく 環境因子としてウイルス感染などが原因で発症するものと考えられています HLA とは 例えば人がウイルスや細菌などに感染した場合 それを異物として排除する免疫力が働きます その際に 自分の体の外にあるウイルスや細菌などを 自分の細胞ではなく他の物質であると判断するための指標が HLA という物質です それは人間のどの細胞にも存在しています どの細胞も同じ HLA 型なので その細胞は自分の細胞であると判断します その他の HLA 型に対しては 自分の細胞でないと判断して攻撃します そういうものを判断する指標が HLA なのです 3. 環境因子 ---- ウイルス感染の関与が考えられています 1 型糖尿病は風邪の季節 ( 冬季 ) に発症する人が多いことが知られています また ウイルス感染流行後に 1 型糖尿病の発症が増えるということも医学的に知られていて そのことからウイルス感染が引き金になり 自己抗体が作り出されると考えら - 4 -

れます 4. 2 型糖尿病 ---- 簡単にいいますと インスリンがあっても作用しない状態をいいます それは遺伝的素因 ( 多因子遺伝 家族内発症 ) や環境要因 ( 肥満 運動不足 ) が原因しています 2 型糖尿病の遺伝のなぞは これだけ遺伝学が進んでいても いまだ解明されていません 2 型糖尿病は生活習慣に起因するところが大きいと考えられます 5. 肥満 ---- 肥満度を BMI で表します ----BMI= 体重 (Kg) 身長 (m) 身長 (m) BMI が 25 以上を肥満といいます BMI が 22 では疾病合併率が最も少なくなりますので 体重コントロールによって この数値を目標数値とするよう努力をすることが大事です 6. 肥満の分類 ---- 脂肪の付き方によって 皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満があります 皮下脂肪型肥満は洋梨型の下半身肥満で ウエスト周囲径が 男性 85cm 未満 女性 90cm 未満です 内臓脂肪型肥満はリンゴ型の上半身肥満で ウエスト周囲径が 男性 85cm 以上 女性 90cm 以上です 内臓脂肪型は皮下脂肪型に比べて 高脂血症 耐糖能異常 そして更に高血圧に直結しやすく注意する必要があります 第 3 章合併症の検査 1. 糖尿病急性期合併症には糖尿病性ケトアシドーシスがあります これはインスリンが欠乏することで 細胞がブドウ糖を取り込めなくなり 脂肪を分解してエネルギーを確保しようとします そのときの燃えかすがケトン体です ケトン体は酸性なので ケトン体が増えると血液が酸性になり 体の機能を低下させます 一般的症状として口渇の他 腹痛 嘔吐 そして更に意識障害 昏睡状態といった危機的な障害が起こります 早めにケトン体の検査を受け 予防に努めることが大事です 2. 糖尿病慢性合併症 ---- 高血糖の持続により血管性合併症がおこると考えられています 三大合併症 ( 糖尿病網膜症 糖尿病腎症 糖尿病神経障害 ) と動脈硬化症があります 3. 糖尿病網膜症 ---- 視力低下等の自覚症状が出現する頃には 重症化していて治療が大変難しくなります そのため早期発見 早期治療が重要であり 眼底検査などを行っています 4. 糖尿病腎症 ---- 糖尿病により腎機能が低下し腎不全になり 透析を導入することになります 検査として尿タンパクのチェックがあります 最初は微量アルブミン尿が検出され 更に重症になると持続性蛋白尿が検出されます それと同時に血清クレアチニンの上昇によって糸球体濾過値も低下します また 血圧も上昇しますので 血圧の定期的な検査を勧めます 腎症予防で大事なことは 血圧をしっかり管理することです 最高血圧を早めの時期から 129mmHg 以下に維持することです それから塩分とたんぱく質をとりすぎないことです 5. 糖尿病神経障害 1 多発性神経障害 ---- 手先や足首から先に障害が現れます これは膝蓋腱 ( ひざ ) アキレス腱反射 温痛覚 触覚などの検査を行います 2 単一神経障害 : 一つの神経に障害が起こり 電気的な伝導速度を用いて検査を行います 3 自律神経障害 ---- 心臓や肺などの自律神経に障害が起こります これは心電図 R-R 間隔変動で検査を行います 6. 動脈硬化 ---- 糖尿病に肥満 高脂血症 高血圧が加わると動脈硬化が発症し 更に進展しやすくなります - 5 -

7. 高脂血症 ---- 中性脂肪 ( トリグリセリド ) コレステロールを検査します 高脂血症の診断基準は次のとおりです 総コレステロール 220mg/dl 以上 LDL コレステロール ( 悪玉コレステロール ) 140mg/dl 以上 中性脂肪 ( トリグリセリド ) 150mg/dl 以上です 2. 食事会加藤則子管理栄養士 糖尿病療養指導士 (1) はじめに今日は JR 東京総合病院と株式 NER( 会社日本レストランエンタプライズ ) が共同で開発した すこやか弁当 を用意しました 見てお分かりのようにご飯は五穀豊穣米 ( 有機米に雑穀 ) を使用し おかずは金目鯛照焼や鶏照焼に根菜煮物類など 薄味にしてカロリーが 448kcal に抑えています 比較のためにティッシュペーパーを置きましたが 30 種類程度の摂取品目がコンパクトに収められています 栄養価はエネルギー 448kcal, たんぱく質 23.7g, 脂質 8.2g, 炭水化物 65.6g, ナトリウム 1.02g( 食塩相当量 2.60g) で塩分を抑えてあります (2) 食事 ----それでは皆さんとご一緒に頂きましょう 実際に東京駅のお弁当屋さんに行くと これに比べて非常にカロリーの高いものが多くありますが このようなお弁当が増えることを期待します 葛飾高砂会で以前に講演して頂いた河合勝幸氏が 奇跡の地中海料理があった という本を出版され記念講演会が開かれました 私どもにお話頂いた当時 HbA 1c が 7.4% でしたが 超持効型インスリン ( ランタス ) を使い 現在の HbA 1c は 4.9% だそうです おいしいもの こだわりの食材を食べ 適度の運動をして糖尿病と上手に付き合った結果です 当会でも 河合氏のグラノーラやライ麦パンを継続して注文されている方がいます (3) 参加者のコメント ( 一部を掲載 )---- 今日のお弁当を見て旬の味を感じました 自分の食事でカロリーとたんぱく質の多いことに気づきました NHKの ご近所の底力 という番組にも 則子先生と出演させて頂いて これからは自分でも勉強したい気持ちでいっぱいです 現在は体重 63Kg,HgA 1c 5.5% と安定し 今後も昔のことを忘れずにやりたいと思います 最初の子を出産した時に糖尿病を発症して 10 年になります 第 2 子をと思っていましたが1 型のため なかなか思いどおりにいきませんでした それでもチャンスがあり 第 2 子を授かることが出来ましたことで 両先生に感謝しております 今はこの病気のおかげで いろんな人とのつながりができて良かったと思っております 10 年間子供を産むことが夢でしたが 今 ここに夢がかないましたことに幸せを感じています 夢を持つ人は素晴らしい人です というお言葉を忘れず 新たな人生を築いて行きたいと思います ( 不許転載 患者指導使用可加藤内科クリニック ) - 6 -