うことにしました トレーニング内容はACL 損傷予防トレーニングと重ならないことと なるべく最小限の量に留めることが前提にありました 足靭帯損傷予防には 1 次予防と 2 次予防とがあり 1 次予防では初めての受傷 ( 初発 ) をどう防ぐのか 2 次予防では繰り返す受傷 ( 再発 ) をどう防ぐの

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Ⅰ はじめに 柔道整復師が取り扱う骨折や脱臼などの外傷の治療の基本原則は非観血的療法である その中で通常は 観血的療法の適応となる外傷でも非観血的療法を行なう場合がある 今回は 観血的療法を選択すること が多い中手指節関節 以下 MCP関節 脱臼を伴った示指基節骨骨折に対し非観血的療法を行った症例を

138 理学療法科学第 24 巻 2 号 I. はじめに膝前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament;ACL) 損傷では, 多くの場合再建術が必要となり, その後スポーツ復帰までに半年から1 年近くを要することがある そのため, 近年その予防の重要性が唱えられるようになってき

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医科学コラム No. 4 (2014 年 11 月 ) 肉離れ 肉離れはスポーツ障害の中でも関節捻挫に次いで多い傷害であるといわれています 肉離れとは強い瞬発的な筋の収縮や持久的な筋の収縮を繰り返すことによって 筋または筋膜に腫れや出血が起こり 場合によっては筋繊維の一部が部分断裂を起こした状態です

Ⅰはじめに が膝関節を強く内旋したときに 近位脛骨の前外側部に剥離骨折が常在すること 年 P S またこの部位に真珠のような光沢を持つ線維束が付着していることを報告したそれ以来 この線維束は m m m m と様々な名称でよばれてきた しかしながら この線維束が恒常的な構造であるかどうかについて長い

最高 9 個 ( 選択による ) 最高 1 個 最低 4 個 最低 4 個 最低 4 個 価値 0.30 基礎価値 0.20 価値 0.1~ ジャンプ / リープ - 基本価値 0.2~ 最低 8 秒 最低 2 回の身体の回転 連係動作 ( 群 ) には バランス - 最低 1 つの基礎技術要素 異

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10 ゆん 尹 そんじょ 成祚 日本鋼管病院リハビリテーション科 理学療法士 膝前十字靭帯損傷予防のトレーニング以外にも 問題となっているケガは多 い 今回は 足関節捻挫の予防トレーニングについての取り組みについて紹 介していただいた 今回は足関節外側靭帯損傷予防トレーニングについてお話させていた 切れたことが辞めた要因だと思いますが きっかけとなったのはやはり捻挫でした だきます 私は予防チームスタッフ の一員であり 日本鋼管病院リハビリテーション科所属 理学療法士のゆん尹といいます 大見とともに活動しており 膝外傷予防トレーニングに携わる一方で足関節外側靭帯損傷 ( 以下足靭帯損傷あるいは捻挫 ) 予防トレーニングを作成し 実施しています 私自身は小学生から大学までサッカーをやっていました 中学 2 年生でジャンプの着地時に人の足の上に乗り 初めて捻挫を経験して以来 その後何度も繰り返し 大学 1 年生で外側側副靭帯の縫合術を経験し 競技復帰しました しかし不安定感が取れきれず 3 年生の半ばで部活を辞めました 今思うと気持ちが途 捻挫は医療用語で足関節靭帯損傷といい スポーツ傷害の中でも発生頻度が高く しかも再発が多い疾患の 1 つです それにもかかわらず 日本では捻挫 = 大したことはない 病院に行くまでもない 早期復帰可能 など軽視されています 捻挫は繰り返すほど靭帯は緩み 不安定性が出現し さらに繰り返しやすくなります 損傷者が多いにもかかわらず日本のスポーツ現場では たかが捻挫 というレッテルを貼られ 軽視されやすいがためにその再損傷者もさらに多いのではと思います これは私が理学療法士として病院に勤務し 機能低下したまま復帰せざる 1 1 2 20 5 20 5 1 1 10 5 2 15 3 2 2 1 BOX 5 2 2 1 10 2 10 を得ない選手 過去そうであった選手を診るうちに 捻挫は軽視されている とさらに感じるようになりました 確認になりますが 捻挫は靭帯損傷であり Ⅲ 度損傷の完全断裂も 捻挫 であることを前置きします 足靭帯損傷を繰り返すと関節不安定性が残存することがあり 内 外果の剥離骨折 距腿関節前方部の骨棘 離断性骨軟骨炎など 将来的には変形性関節症へと進行していく症例もあり 繰り返さないように初回損傷後の治療が大切といえます 足靭帯損傷予防とは 損傷直後の急性期の処置 (RICE) がすでに再発予防の第一歩であるといえます 我々はACL 損傷予防トレーニングを開始し ACL 損傷者の数は約半減し 現状はある程度よい成績を維持しています チームの学生トレーナーに依頼し 年間を通して傷害発生を調査していますが そのリストを見ると足靭帯損傷の数が圧倒的に多く リストの中で半分以上足靭帯損傷が占めていました そこでどうにかならないものか 足靭帯損傷者をどうしたら減らせるかと考え始めたのがきっかけです しかし チームはすでにACL 損傷予防トレーニングを実施しているため これ以上トレーニングに時間を割く余裕はチームにありませんでした ならば 足靭帯損傷を繰り返す 高リスク群 を集めて まずは個別に実施してもら 42 Training Journal August 2013

うことにしました トレーニング内容はACL 損傷予防トレーニングと重ならないことと なるべく最小限の量に留めることが前提にありました 足靭帯損傷予防には 1 次予防と 2 次予防とがあり 1 次予防では初めての受傷 ( 初発 ) をどう防ぐのか 2 次予防では繰り返す受傷 ( 再発 ) をどう防ぐのかということになります 海外では 1 次予防と 2 次予防が包括されている報告と 2 次予防を対象にした報告があります トレーニングの内容は 1 次予防と 2 次予防の明確な境界はないのが現状ですが バランストレーニングを主体としたものが主流となっており これに筋力トレーニング 着地などの動作トレーニングを取り入れた複合要素が含まれているトレーニングメニューが多くあります Verhagenらは 受傷歴のある選手 ( 2 次予防 ) に対し 予防トレーニングの効果が高かったと報告しています 我々も先行研究を手本にし 高リスク群 すなわち 2 次予防のみを対象に 複合要素が含まれる足靭帯損傷予防トレーニングを作成することにしました 1 下腿前傾角度拡大を目的としたストレッチング 2 種目 2 外反筋筋力強化を目的にした筋力トレーニング 1 種目 3 神経 - 筋機能の向上を目的にバランストレーニング 2 種目 4 受傷時のカッティング動作などを意識したジャンプ着地と バランスを組み合わせた動作トレーニング 2 種目を取り入れて指導しています ( 表 1 ) 年 3 回現場で講義と実技指導を行 図 1 下腿前傾ストレッチングい 上記 1~4を週 4 回以上実施しています 連載第 7 回で述べているように 下腿前傾角度が不足するとスポーツ動作において踏み込みが浅くなってしまい 後方重心になりやすくなります 下腿前傾角度が十分な場合 下腿前傾することで距骨が内 外果に対し後方にもぐり込むことで 内 外反の運動は制限され 結果足関節をロックし安定した状態となります この下腿前傾角度が不足すると足関節は底 背屈中間位に近づき 内 外反の可動域が拡大し 足靭帯損傷するリスクが増します 臨床では足靭帯損傷を繰り返す選手は 前方引き出しテストや内反ストレステストで緩みがあるのに対し アキレス腱は非常に硬く 下腿前傾角度が不足している選手をよくみます ストレッチングは 2 種類あり 下腿前傾ストレッチと下腿三頭筋ストレッチに分けています 1) 下腿前傾ストレッチ ( 図 1 ) 両母指で距骨を後方に押し込みながら行う 2) 下腿三頭筋ストレッチ ( 図 2 ) ポイントは 伸ばす足のつま先はまっすぐ向くように 踵を床から浮かないようにさせ 膝をしっかり伸ばして行う これを各々 20 秒程度連続で伸張し 5 回以上繰り返す 筋力強化を目的としたトレーニングは 腓骨筋 ( 外反筋 ) の筋力強化を目的に実施しています 1999 年にHartsell HDらは 足関節の機能的不安定性がある者に対し 求心性の外反筋力を測定したところ 筋力低下が認められたと報告しています 一方で外反筋の筋力低下を認めないとする文献もありますが 臨床では健側と患側を比べると 腓骨筋の筋力低下を認める選手が多くいます 腓骨筋は内反 ( 足靭帯損傷方向 ) に抗して働く筋であり 筋反応時間も含め腓骨筋の筋力は予防の観点からも重要と考えています 代償運動がでないようにすることがポイントで 図 3 のように運動方向が一定になるようにこのポジションで実施する 負荷量は個々に合わせるが 20 ~ 30 回程度は連続で行える負荷に設定し それを 3 ~ 5 セ Training Journal August 2013 43

図 2 下腿三頭筋ストレッチング図 3 外反筋チューブトレーニング 図 4 閉眼片脚立位 ( レベル 1 ) 図 5 閉眼スプリットスクワット ( レベル 2 ) ット実施する 前距腓靭帯には低閾値で反応する速いタイプⅡと 高閾値で反応が遅いタイプⅢの固有受容器が存在します 固有受容器は関節角度や 靭帯の伸び具合などを中枢に伝達する役割があります それらの多くは靭帯の付着部に存在し 靭帯損傷に伴い固有受容機能は低下すると考えられています Conradsenらは重症度に関係なく 急性足靭帯損傷後の 3 ~ 12 週にかけ 関節位置覚と筋反応時間について調査しました 足関節位置覚は 非損傷側と比較して 6 週ま では徐々に回復しましたが そこを頂点に12 週後でも位置覚は低下したままでした またKarlssonらは足靭帯損傷後 24 週以上を対象に 筋反応時間を測定しましたが 損傷側で有意に反応時間が低下しており 半年以上経過していても筋反応時間は低下したままという結果でした 臨床上では足靭帯損傷後 痛みなく競技復帰が可能でも バランス系のトレーニングを健側と患側で比べると 多くの選手でその差が認められます よって足靭帯損傷後のトレーニング とくにバランストレーニングは少なくとも半年以上は継続して実施すべきと考 えられます 我々のバランストレーニングは 2 種目あり 連載第 6 回でも紹介したが バランスディスクやBOSUを使用に分けています また選手のレベルに応じて レベル 1 とレベル 2 を選択に分けています 1) バランスディスク上閉眼エクササイズ レベル 1 - 閉眼片脚立位 ( 図 4 ) ディスクの中心に乗り 膝は伸展位で 開始する前にまず開眼で静止させ 安定したら閉眼する ポイン 44 Training Journal August 2013

トは重心を安定させるため おへそをその場に留めておけるように安定させること 視覚にとらわれずに踵から足趾にかけ 足裏全体に意識する 無理な場合は まず開眼で立っていられることを目標に実施するとよい 左右閉眼 10 ~ 20 秒をまず目標に実施し 3 ~ 5 セット行う レベル 2 -スプリットスクワット ( 図 5 ) 2 人一組で実施する パートナーは前方に立ち 両手もしくは片手で補助する 実施者は指先でパートナーにつかまり 膝伸展位でまず閉眼し静止させてから スプリット姿勢 ( 反対側のつま先はディスク上の後方につける ) でスクワットを開始する パートナーのポイントは 手にあまりもたれないように ギリギリのところで頑張らせるようにする 実施者はレベルに合わせて補助なしで実施すること ディスクから落ちて回数を途中で止めないように実施することである 回数は 15 回を 3 セット実施する 図 6 カーフレイズ歩行 2) カーフレイズ歩行 ( 図 6 ) 踵上げのまま歩行する 両手は万歳姿勢で 踵が落ちてこないように保持させる ポイントは正面につま先を向かせる 踵を上げた状態だと内反しやすく 荷重は小趾寄りにかけてしまうので注意が必要で 母趾側に重心をかけるようにさせて 保持するとよい ハーフコート 1 往復を 2 セット指導しているが レベルに合わせて実施する BOXサイドジャンプとドロップ着地 ( レベル 1 2 ) の 2 種目を指導しています ドロップ着地は ジャンプ着地動作にバランス要素を取り 図 7 BOXサイドジャンプ入れ複合させています 実際の受傷場面の着地動作を設定した上で より悪条件であるディスクを置いてトレーニングを実施しています 1)BOXサイドジャンプ 30 ~ 40cmの台を用意する 図 7 のように左右交互に両サイドジャンプする ポイントは 着地時のつま先は常に正面を向くようにさせ 母趾球に荷重し内反を防ぐ またなるべく遠くへ跳ぶようにさせ スピードは速めに指導しているが 体幹が側方に倒れたり つま先が外開きに ならないように注意する これを 5 往復 2 セット実施する 2) ドロップ着地まず30 ~ 40cmの台を用意し ディスクかBOSUを着地場所に置く ( 図 8 ) レベル 1 台の上で膝伸展位の片脚立位になり 反対脚で着地する レベル 2 台の上で膝伸展位の片脚立位になり 同側脚で着地する Training Journal August 2013 45

図 7 BOX サイドジャンプ ポイントは 第一に着地を失敗し ないことである これはかなり難易 度が高く ディスクから足を滑らす と足靭帯損傷する恐れがあるため 集中して実施する 第二に設定は膝 伸展位としているが 難易度を下げ る場合は 開始 着地ともに膝屈曲 位で実施する さらに難しい場合は BOSU 上に両脚着地でもよく 初め て開始する場合は必ずレベル 1 から 開始し 膝屈曲位または両脚着地か ら開始する さらに補助をつけて実 施すると安心である これを左右 10 回ずつ 着地は 3 秒静止することを 目標に実施するとよい 次に実施した効果についてです が 大学女子バスケットボール選手 で トレーニング実施前 1 年間で 2 回以上足靭帯損傷歴のある 10 名を対 象として この 10 名がトレーニング 2 10 1 1 10.88 21 7 3.28 1000AE 10.88 3.28 P<0.01 実施後 1 年間で足靭帯損傷件数が減少するか否かを検討しました 結果は トレーニング実施前が足靭帯損傷件数 21 件 トレーニング実施後で足靭帯損傷件数 7 件でした 1,000athlete exposure( 以下 AE 連載第 8 回参照 ) 当たりの足靭帯損傷発生率は 実施前が10.88に対し 実施後が3.28で 有意に発生率は減少しました ( 表 2 ) 我々の足靭帯損傷予防トレーニングもVerhagenらの報告と同様に 2 次予防に対して効果がみられました ACL 損傷予防は股関節 膝関節を屈曲させ 足関節は背屈させて行うメニューがほとんどですが 足靭帯損傷予防は足関節を中間位 ~ 底屈位に着目し バランストレーニングを中心にしてメニューを考案しています その結果 足関節が内反しやすい中間位 ~ 底屈位の神経 - 筋機能の改善につながり 同時にストレッチングや筋力強化を取り入れたことが予防効果の要因と考えられます 一方で トレーニングを実施しても7 件という損傷者がいました これをもっと詳しくみると 実施者 10 名中 3 名が足靭帯損傷しており A 選手が 5 件 B 選手が 1 件 C 選手 1 件でした 5 件損傷したA 選手は大学 4 年生で 初発は中学校のときで 大学 2 年次に腫れを強く伴う足靭帯損傷以降 年間 3 ~ 5 回足靭帯損傷を繰り返しました 4 年次で急に足靭帯損傷を繰り返したわけではなく 徐々にその頻度が増えたことが特徴です チームの監督をはじめとするスタッフからも 捻挫する数は減ったけど 繰り返す選手は繰り返している と現場からも指摘を受けているのが現状です 我々はこのような 足靭帯損傷予 46 Training Journal August 2013

防トレーニングを実施しても足靭帯損傷を繰り返す選手を 超高リスク群 と呼んでいます まずは 超高リスク群になる前に予防が必要 ということが前提にあります 我々は 何回あるいは何十回と足靭帯損傷を繰り返しているにもかかわらず 機能回復が十分でないままにスポーツ復帰を果たし 超高リスク群 になることが大きな問題として捉えています これはチーム事情や時期によっては 休んではいられないタイミングもありますが 基本的には機能回復を認めてから復帰という形が一番理想としています 超高リスク群 になる前に あるいは関節の緩みが出てしまう前に 適切に対処することが大切です この足靭帯損傷予防トレーニングもあくまで 1 つの参考として 有効活用していただければ幸いです おさらいになりますが 足靭帯損傷予防トレーニングを実施することで 2 つのことが明らかになりました 1 つ目は 筋力や神経筋機能の低下が認められる選手にこのトレーニングは有効であり 足靭帯損傷発生率を減少させることができると考えられます 2 つ目は 年間複数回を複数年繰り返している 超高リスク群 は 靭帯がすでに機能しておらず関節がかなり緩く このトレーニング効果が十分に発揮されない可能性があります これは自身の印象ではありますが 超高リスク群 の特徴は 1 アキレス腱やふくらはぎが硬くストレッチを十分にやっていても硬さが変わらない 2 関節は緩い ( 内反しやすい ) 3 剥離骨折や骨棘ができるほど足靭帯損傷を繰り返してい る 4アライメントが悪い 5バランス能力が低い などが挙げられます これらの問題点が 1 つだけでなく 1 人の選手が複数要素を含んで問題を抱えている印象があります それらに対し どのようにすれば問題を解決できるのかを現在検討中で 超高リスク群 の具体的な評価 ( 検査 ) を実施しています それらをデータ化し 超高リスク群 のより正確な特徴を捉える必要があると考えています またトレーニング以外にもテーピングやシューズの問題 インソールの検討も必要です このほかにも 足靭帯損傷予防トレーニング効果をデータ化したのは 1 年間のみであり さらに長期的に実施することで この予防トレーニングを信頼性のあるものとしていく必要があります また対象者も10 名と少ないのも今後の課題ですが トレーニング実施者を増やし 日本国内における足靭帯損傷者の減少に貢献したいと考えています [ 参考文献 ] 1) 栗山節郎 足関節捻挫の病態と整形外科的治療 理学療法 25 巻 1 号 2008. 2) 斉藤明義 足関節捻挫 Ⅱ~Ⅲ 度損傷 ( 初期管理の重要性 とくに固定肢位について ) 月刊スポーツメディスン No.143 ブックハウス エイチディ 2012. 3)Bahr R, Lian O, Bahr IA. A twofold reduction in the incidence of acute ankle sprains in volleyball after the introduction of an injury prevention program: a prospective cohort study. Scand J Med Sci sports. 7:172-7, 1997. 4)Verhagen EA, van der Beek A, Twisk J, Bouter L, Bahr R, van Mechelen W. The effect of a propriocepdive balance board training program for the prevention of ankle sprains: a prospective controlled trial. Am J Sports Med. S32:1385-93, 2004. 5)McHugh MP, Tyler TF, Mirabella MR, Mullaney MJ, Nicholas SJ. The effectiveness of a balance training intervention in reducing the incidence of noncontact ankle sprains in high school football players. Am J Sports Med. 35:1289-94, 2007. 6)Hartsell HD, Spaulding SJ. Eccentric/ concentricrations at selected velocities for the invertor and evertor muscles of the chronically unstable ankle. Br J sports Med. 33:255-8, 1999. 7)Konradsen L, Olesen S, Hansen HM. Ankle sensorimotor control and eversion strength after acute ankle inversion injuries. Am J Sports Med. 26:72-7. 1998. 8)Karlsson J, Andreasson GO. The effect of external ankle support in chronic lateral ankle joint instability. An electromyographic study. Am J Sports Med. 20:257-61. 1992. 9) 足関節捻挫予防プログラムの科学的基礎. 第 2 章足関節内反捻挫の病態と予後, 第 4 章足関節捻挫の予防プログラム. NAP. 2010. メモ尹成祚連絡先 yunsongjo@yahoo.co.jp Training Journal August 2013 47