経営管理スキルアップシート 輸送効率計算ワークブック
1 輸送効率指標の算出にあたって 輸送の効率化とは 同じ量の業務に対し所要時間の短縮や費用の低減を行うこと あるいは 車両1台当たりの輸送量の向上などを図ることで運賃収入の増加やコスト削減を実現する方策 を指します トラック運送事業では ドライバーや車両などの経営資源を有効に活用することが重要です ので その判断材料として輸送指標を算出することが望まれます 最近ではデジタル式運行記録計 デジタコ 等の ICT 機器の導入が進んでおり 自動的に 記録 指標化できるようになっていますが 指標の意味 計算方法を知っておくことは重要で す ここでは 以下の基礎的な輸送効率指標の計算方法を解説します 次ページ以降では 実際に数字を書き込みなら計算するための方法を示します -1-
2. 車両の運行に関する分析 (1) 実働率 ( 事業所あたり ) 実働率とは 保有する車両の運行可能な総日数に対する実際に稼働した総日数の割合を指します 保有する車両がどのように有効活用されているかを判断することで 遊び車を減らすための検討データとします 1 営業所の 1 カ月分の運転日報を整理し 稼働状況が 実働 となっている車両を 1 カ月分カウント ます 2 月間の延べ実在車両数を集計します 計算例 5 台保有の営業所の 1 カ月 ( 30 日 ) の 実在車両数の場合 5 台 30 日 = 150 ( 台数 )( 車が存在した日数 ) 3 月間の延べ実働車両数をカウントしま す 整理 ( 乗務等の記録 ) 運転日報 印は稼働日 A B C D E 車両合計 1 日木 5 2 日金 5 例 3 日土 - 4 4 日日 - 4 30 日金 5 当月合計 25 24 25 28 27 129 4 実働率を計算します ( 計算例 ) 129 150 = 86.0 ( 車が働いた延べ台数 ) ( 車が存在した延べ台数 ) 実際に算出してみましょう 実在車両数 保有台数 台 日数 = 日 延べ実在車両数 実働率 延べ実働車両数 延べ実在車両数 = 実働率 メモ欄 - 2 -
(2) 実働率 (1 車両あたり ) 以下では 特定の1 台 ( ここではA 車両 ( 最大積載量種の輸送効率指標を計算していきます 10 トン ) とします ) に着目して 各 1A 車両の 1 カ月分の運転日報を整理します 稼働状況が 実働 となっている車両を 1 カ月分カウント 2A 車両の延べ実在車両数を集計します 計算例 1 台 30 日 = 30 ( 台数 ) ( 車が存在した日数 ) 3A 車両の月間の延べ実働をカウントし ます < 注意 > 1 日 とは始業時刻から 24 時間です 4 実働率を計算します 計算例 25 30 = 83.3 ( 車が働いた延べ台数 ) ( 車が存在した延べ台数 ) 整理 ( 乗務等の記録 ) 運転日報 印は稼働日 A B C D E 車両合計 1 日木 5 2 日金 5 例 3 日土 - 4 4 日日 - 4 30 日金 5 当月合計 25 24 25 28 27 129 実際に算出してみましょう 実在車両数 保有台数 1 台 日数 = 日 延べ実在車両数 実働率 延べ実働車両数 延べ実在車両数 = 実働率 メモ欄 - 3 -
(3) 実車率 (1 車両あたり ) 実車率とは 車両の走行キロ数の内 実際に貨物を積んで走行したキロ数の割合をいいます 収入のない走行実態を把握することで 配車効率や運行ルートを検討するためのデータとします 1A 車両の 1 カ月 ( 30 日 ) 分の運転日報を整理します 総走行キロ数 1 運行目 実車キロ数 積載 ( 輸送 ) トン数 2 運行目 2A 車両の稼働日の総走行キロ数 ( 月間 ) を計算します ( 月末の帰庫時メーター数 )-( 月初の出庫時メーター数 ) 3A 車両の実車キロ数 ( 月間 ) を計算します A 車両 ( 最大 10 トン ) 1 日木 2 日金 総走行キロ実車キロ数輸送トン輸送トンキロ能力トンキロ a b c b c a 10 トン 160 200 1 60 9 540 例 2 50 5 250 1 100 8 800 - - - - 1,600 2,000 当月合計 4,000 2,720 250 19,750 40,000 総走行キロ数 ( 月間 ) 実車キロ数 ( 月間 ) 4 実車率を計算します 計算例 2,720 キロ 4,000 キロ = 68.0 ( 実車キロ数 ) ( 総走行キロ数 ) 実際に算出してみましょう 実車率 = 実車キロ数総走行キロ数実車率 km km - 4 -
(4) 積載率 (1 車両あたり ) 積載率とは 保有する車両の最大積載量に占める実際の積載量の割合をいいます 車腹満杯に効率よく積めているかどうかを検討するためのデータとします 基本的な考え方は積載率 = 積載トン数 最大積載能力となります しかし輸送のプロセス全体でみれば 100 積載した車でも 納品を終えた帰り車は 帰り荷がなければ 0 トン 積載率は 0 です また運行途中で積み卸しを行っている場合などでは 積載率は運行時点により変化します そのため 輸送全体の積載率をみるための指標として平均積載率を用いることがあります 以下では 平均積載率の求め方について説明します 1A 車両の運転日報から 実車のごとに 実車キロ数 輸送トン数を整理します A 車両 ( 最大 10 トン ) 1 日木 総走行キロ実車キロ数輸送トン輸送トンキロ能力トンキロ a b c b c a 10 トン 1 60 9 540 160 1,600 2 50 5 250 1 100 8 800 2 日金 200 2,000 - - - - 2 運行目 月間合計 当月合計 4,000 2,720 250 19,750 40,000 1 運行目の実車キロ数 1 運行目の輸送トン 例 2A 車両の輸送トンキロを ( 実車キロ 輸送トン数 ) 計算します 計算例 1 日 ( 木 ) の輸送トンキロ 1 回目の運行 : 60km 9 トン = 540 トンキロ 2 回目の運行 : 50km 5 トン = 250 トンキロ ( b 実車キロ数 ) ( c 輸送トン数 ) 合計 540 トンキロ + 250 トンキロ = 790 トンキロ 月間の輸送トンキロの合計 (Σ( b c)) 19,750 トンキロ 3A 車両の月間の能力トンキロ ( 最大積載トン数 総走行キロ数 ) を計算します 計算例 10 トン 4,000km = 40,000 トンキロ (A 車両の最大積載トン ) ( 月間総走行キロ数 ) 4A 車両の平均積載率を計算します 計算例 19,750 トンキロ 40,000 トンキロ = 49.4 実際に算出してみましょう ( 輸送トンキロ ) ( 能力トンキロ ) 能力トンキロとは a 総走行キロ A 車両の最大積載量 平均積載率 輸送トンキロ 能力トンキロ 平均積載率 トンキロ トンキロ = - 5 -
(5) 運行効率 (1 車両あたり ) 運送効率指標は どれか 1 つだけが高くても全体の効率が良いとは限りません このため 実働率 実車率 積載率の各指標を乗じた指標 (= 運行効率 ) によって車両の効率性を総合的に判断します A 車両の実働率と平均積載率を乗じて 運行効率を求めます 計算例 83.3 49.4 = 41.2 ( 実働率 ) ( 平均積載率 ) 一般に 運行効率は 40 以上が望ましいとされています ( 運行効率 40 の目安 ) 年間の実働率を 75 ( 年間稼働日数でいえば 274 日 ) とし 往路 復路とも実車率 75 積載率 70 で運行した場合 運行効率は 40 弱となります 75 75 70 = 39.4 ( 実働率 ) ( 実車率 ) ( 積載率 ) 応用 平均積載率 運行効率は以下の式のように展開されます < 平均積載率 > 平均積載率 = 輸送トンキロ 能力トンキロ =( 実車キロ数 輸送トン数 ) ( 総走行キロ数 最大積載能力トン数 ) = 実車率 積載率 < 運行効率 > 運行効率 = 実働率 平均積載率 = 実働率 実車率 積載率 ただし積載率 を利用できるのは積み卸しが1 回の場合のみ 実際に算出してみましょう 運行効率 実働率 平均積載率 = 運行効率 又は 実働率 実車率積載率 = 運行効率 - 6 -
3 運転時間に関する分析 効率を検討する場合は 時間 についても着目しましょう 留置時間問題の解決では 荷主に現状の所用時間を数字で示すことで理解を得られやすくなります ①運転日報の裏面の乗務記録では 労働時間を 運転時間 と 運転以外の業務 に分けて記 載するようになっています 労働時間 運転 運転以外の業務 例 積込み取卸し 荷待ち など 運転以外の 業務に携 わった時間 ②運転以外の業務に携わった時間の情報を一定期間 集約します 複数の荷主の納品を行って いる場合には 荷主別 発着別に整理します A 1日 木 2日 金 3日 土 4日 日 30日 金 当月平均 単位 分 Y 工業 発地 着地 45 100 60 150 60 60 100 50 150 Y工業の着地での X 商店 発地 着地 20 50 30 例 留置時間が長い 25 55 60 55 120 124 ③留置時間の長い荷主に対しては なぜ留置が発生するのか その要因を突き止め 改善対策 を検討しましょう また どうしても留置が発生する場合は別料金を収受しましょう 以前 は運輸省通達 原価計算書の添付を省略できる範囲について 平成 11 年 3 月 26 日付 で 次の時間を超える部分についての車両留置料 上限 下限 が示されていました 3 車まで 発地又は 着地ごとに 50分 3 超 6 車まで 60分 6 超 12 車まで 90分 12 超 4 を増す 車種ごとに 20分 貨物の積込み 取卸しの時間を含む -7-
4. 輸送効率指標の活用 特定の荷主に着目して その荷主の輸送が効率的なのか 改善の伸びしろがあるかどうかな どを判断する場合には 当該荷主で利用している車両すべてについて指標を計算し 車両に よる水準のばらつきも把握した上で 対策を検討しましょう 車両ごとに運行効率を比較して 水準の低い車は 何が効率化を阻害しているのか その要 因を突き止めましょう 例 : 車の稼働日数が少ない 新規荷主開拓 実車での輸送距離が短い 帰り荷確保 1 日 2 回運行の検討 車腹に積んでいる貨物量が少ない 適正な車種の選定 積合せ輸送の検討 近年では小ロット輸送のニーズが高まっていることから 積合せ輸送 ( 共同輸送 ) が注目さ れています 積合せは個建て運賃となるため 1 運行あたりの積載率アップだけでなく 複 数運行による回転率向上に注力することも売上拡大のカギになります たとえば 積載率 50 のトラックがあったとします 50 の積載率を 75 に引き上げれ ば積合せの運賃収入は 1.5 倍になります 一方 50 の積載率のままでも荷主の組み合わせ により 2 回転 3 回転の運行ができれば 2 倍 3 倍の運賃収入が見込めます 積合せは荷主のコスト変動費化のニーズに合致するだけでなく トラック運送事業者の側か らみても 荷主の組み合わせ次第で収益拡大をはかれる有望なマーケットです 留置時間問題では まず留置時間を短くするための改善提案をすることが重要です 荷主の取引先 ( 納品先 ) に問題がある場合もありますので どうしても改善が難しい場合は 一定時間以上の留置 ( 貨物の積込み 取卸しの時間を含みます ) は車両留置料を収受するよう努めます - 8 -
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