ロア・ユナイテッド法律事務所

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今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

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( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

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Microsoft Word - 雇用継続制度

一元化後における退職共済年金および老齢厚生年金の在職支給停止 65 歳未満の場合の年金の支給停止計算方法 ( 低在老 ) 試算表 1 年金と賃金の合算額が 28 万を超えた場合に 年金額の支給停止 ( これを 低在老 といいます ) が行われます 年金と賃金の合算額 (c) が 28 万以下の場合は

問題の背景 高齢者を取り巻く状況の変化 少子高齢化の急速な進展 2015 年までの労働力人口の減少 厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げ 少なくとも 年金開始年齢までは働くことのできる 社会 制度づくり ( 企業への負担 ) 会社にとっての問題点 そしてベストな対策対策が必要に!! 2

再任用と年金加入の関係をまとめると次のようになる ( 都道府県によって勤務形態は異なる ) 再任用の勤務形態フルタイム勤務 3/4 1/2 週の勤務時間 38 時間 45 分 29 時間 19 時間 15 分 共済年金 厚生年金 (2016 年 9 月 30 日まで ) 加入する年金 (2015 年

政策課題分析シリーズ16(付注)

年金・社会保険セミナー

平成 28 年 9 月度実施実技試験 損保顧客資産相談業務 139

目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

年金・社会保険セミナー

ⅰ. キーワードや法令を知る 01 処遇検討の背景 少子高齢化が急速に進展する中 労働力人口の減少に対応し 経済と社会を発展させるため 高年齢者をはじめ働くことができる全ての人が社会を支える全員参加型社会の実現が求められております また 現在の年金制度に基づき平成 25 年度から特別支給の老齢厚生年

平成25年4月から9月までの年金額は

2016年 弾丸メールセミナー № 33 雇用保険法 高年齢再就職給付金

退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

図 1 60 歳 61 歳 62 歳 63 歳 64 歳 65 歳 生年月日 60 歳到達年度 特別支給の 男性 S24.4.2~S 平成 21~24 年度 女性 S29.4.2~S 平成 26~29 年度 男性 S28.4.2~S 女性 S33.4.2~S35.

8-1 雇用保険 雇用保険の適用基準 1 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること 31 日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き この要件に該当することとなります このため 例えば 次の場合には 雇用契約期間が31 日未満であっても 原則として 31 日以上の雇用が見込まれるもの

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2016年 弾丸メールセミナー № 36回 雇用保険法 育児休業給付金

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

月号 Vol.68( 通巻 713 号 ) 発行所一般財団法人年金住宅福祉協会 東京都港区西新橋 TEL FAX

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- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

150130【物価2.7%版】プレス案(年金+0.9%)

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定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

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特例法による年金記録修正における想定問

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①公表資料本文【ワード軽量化版】11月8日手直し版【1025部長レク⑤後】平成30年61本文(元データあり・数値1004版)

市報2016年3月号-10

そのときになって困らないために リタイア前後の手続き編 厚生年金や国民年金の受給手続きは 年金事務所や市区町村役場の年金窓口で行います 共済年金加入期間のある人の手続きは 加入した共済組合です 加入していた年金制度 第 1 号被保険者期間だけの人国民年金だけ第 1 号被保険者期間だけの人 第 3 号

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

要件① 雇用者給与等・・・・ (ざっくり) 平成24年度の給与総額と比べて、平成25年以降毎年、一定割合以上給与総額が増えていること。 <雇用者給与等支給額とは> <一定割合とは>

他の所得による制限と雇用保険受給による年金の停止 公務員として再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額停止となり 特別 ( 本来 ) 支給の老齢厚生年金の一部または全部に制限がかかることがあります なお 民間に再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額支給されますが

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

みずほインサイト 政策 2013 年 2 月 20 日 希望者全員を 65 歳まで雇用義務化高齢者が活躍できる職場の創設と人材育成が課題 政策調査部上席主任研究員堀江奈保子 年 4 月 1 日に高年齢者雇用安

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

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52 (2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業 無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職再就職老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 3 年金決定請求 ( 一部又は全額支給停止 ) 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありま

事業活動の縮小に伴い雇用調整を行った事業主の方への給付金

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2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

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強制加入被保険者(法7) ケース1

12 ページ, 図表 ,930 円 保険料納付済月数 + 全額免除月数 1/2+4 分の 3 免除月数 5/8+ 半額免除月数 3/4+4 分の 1 免除月数 7/8 ( 出所 ) 厚生労働省 老齢年金ガイド平成 2730 年度版 より筆者作成 40 年 ( 加入可能年数

平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

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Microsoft Word - (差替)170620_【総務部_厚生課_櫻井望恵】論文原稿

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(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

被用者年金一元化法

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無期契約職員就業規則


労働法令のポイント に賞与が分割して支払われた場合は 分割した分をまとめて 1 回としてカウントし また 臨時的に当該年に限り 4 回以上支払われたことが明らかな賞与については 支払い回数にカウントしない ( 賞与 として取り扱われ に該当しない ) ものとされている 本来 賞与 として取り扱われる

「高年齢者雇用安定法《のポイント

第14章 国民年金 

企業年金のポータビリティ制度 ホ ータヒ リティ制度を活用しない場合 定年後 : 企業年金なし A 社 :9 年 B 社 :9 年 C 社 :9 年 定年 ホ ータヒ リティ制度を活用する場合 ホ ータヒ リティ制度活用 ホ ータヒ リティ制度活用 定年後 :27 年分を通算した企業年金を受給 A

時効特例給付制度の概要 制度の概要 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律 ( 平成 19 年 7 月 6 日施行 ) に基づき 年金記録の訂正がなされた上で年金が裁定された場合には 5 年で時効消滅する部分について 時効特例給付として給付を行うこととされた 法施行前

第 Ⅰ 部本調査研究の背景と目的 第 1 節雇用確保措置の義務化と定着 1. 雇用確保措置の義務化 1990 年代後半になると 少子高齢化などを背景として 希望者全員が その意欲 能力に応じて65 歳まで働くことができる制度を普及することが 政策目標として掲げられた 高年齢者雇用安定法もこの動きを受

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第 50 号 2016 年 10 月 4 日 企業年金業務室 短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大及び厚生年金の標準報酬月額の下限拡大に伴う厚生年金基金への影響について 平成 28 年 9 月 30 日付で厚生労働省年金局から発出された通知 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能

筑紫野市学童保育連絡協議会学童クラブ指導員就業規則

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 15,250 円 ( 平成 26 年度 ) 付加保険料月額 400

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 16,490 円 ( 平成 29 年度 ) 付加保険料月額 400

別紙 1 健康保険料 介護保険料 厚生年金保険料 子ども 子育て拠出金 1. 複数資金間での負担配分について (1) 複数の外部資金間での負担配分当該外部資金管理者間の調整により任意に負担割合等を決定する (2) 外部資金と経常費間での負担配分 A. 外部資金による常勤の雇用者に経常費による手当支給

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とは 60 歳以上 65 歳未満で 給料が60 歳以前の75% 未満に下がり 失業手当や再就職手当を受け取らずに働いている人に支給される給付金です (60 歳時点において 雇用保険に加入していた期間が5 年に満たない場合 雇用保険に加入していた期間が5 年となった日から ) とは 年金支給開始年齢以

3. 継続雇用制度の対象者基準の経過措置 Q3-1: Q3-2: Q3-3: Q3-4: Q3-5: Q3-6: Q3-7: すべての事業主が経過措置により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることができますか 改正高年齢者雇用安定法が施行された時点で労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

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問 28 高年齢雇用継続給付との調整難度 A 70 問 29 特例老齢年金難度 B 72 問 30 経過的加算難度 B 74 問 31 老齢厚生年金の支給の繰下げ難度 B 76 問 32 老齢厚生年金の支給の繰上げ難度 B 80 問 歳以後の在職老齢年金難度 A 84 問 34 障害厚生

強制加入被保険者(法7) ケース1

支給開始日以前に カ月の標準報酬月額がある場合 06 年 月 日まで 06 年 4 月 日以降 休んだ日の標準報酬月額 0 日 / 支給開始日以前の継続した カ月間の各月の標準報酬月額の平均額 0 日 / ( 例 ) 支給開始日以前の継続した カ月間に 標準報酬月額が 6 万円の月が カ月 0 万円

目 次 1 平成 30 年度の年金額について 問 1 今年度は年金額の改定はないのですか 1 問 2 年金が下がっているのですが なぜですか 1 問 3 マクロ経済スライドとは どういうものですか 3 問 4 マクロ経済スライドによる年金額調整とは どういうものですか また 平成 30 年度の年金額

強制加入被保険者(法7) ケース1

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます

( その 1) 月収額の計算のしかた 給与所得者の場合 1. 年間総収入の計算あなたが仕事を始めた時期 対 象 の 収 入 金 額 1 現在の勤務先に前年 1 月 1 日以前から引 前年中の年間総収入金額 き続き勤務している方 ( 源泉徴収票の支払金額の欄 ) 2 現在の勤務先に前年 1 月 2 日

退職後の健康保険の任意継続ってなに?

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ロア ユナイテッド法律事務所 人事 労務レポート 第 4 回 (2012 年 10 月号 ) はじめに今月は前半 前回の続編として在職老齢年金 ( 後半 ) について少しご紹介させて頂いた後 上記 在職老齢年金 の関連項目として 日々実務上 ご質問の多い 雇用保険と年金の併給調整 について 後半はご紹介させて頂ければと思います また とうとう 改正高年齢者雇用安定法 が成立しました!! 雇用と年金支給開始年齢の確実な接続 を狙って提出された改正案に端を発し 高年齢者が少なくとも年金受給開始年齢までは意欲と能力に応じて働き続ける環境の整備を目的とし 平成 25 年 4 月 1 日から施行となります 当該法改正についても最後にご紹介させて頂きますので併せてご一読のうえ 今後の参考にして頂ければと思います 1.65 歳以上の 在職老齢年金 について先月号で少しご紹介させて頂きましたが 同じ 在職老齢年金 といっても 65 歳を境に支給停止の要件等が異なってきます その理由として 65 歳以後は 原則年金生活が標準となると考えられるため 年金の支給停止のルールが少し緩やかになる というわけです 65 歳以上の方の場合 国民年金から老齢基礎年金が支給されますが この 老齢基礎年金 については全額支給されます そして 総報酬月額相当 ( 1) と老齢厚生年金の支給額との合計が 46 万円を超える場合については その合計額と 46 万円との差分の半額が 年金の支給停止額となります 計算事例を一つご紹介させて頂きます ( 1) 総報酬月額とは 前号でご紹介のとおり その方の標準報酬月額とその月以前の 1 年間の標準賞与額の合計額を 12 で割ったものです 老齢厚生年金の額 240 万円 ( 加給年金額及び支給繰下げによる加算額はないものとする ) 総報酬月額相当額 32 万円である場合の 65 歳以上の在職者に対する在職老齢年金の金額 < 算定方法 > Step1.( 厚生年金の ) 基本月額 老齢厚生年金の額 (240 万円 ) 12=20 万円 Step2. 総報酬月額相当額と基本月額の合計額 32 万円 +20 万円 =52 万円 Step3. 総報酬月額相当額と基本月額の合計額が 46 万円を超えているため 総報酬月額相当額と基本月額の合計額から 46 万円を控除した額の 2 分の 1 が支給停止

(52 万円 46 万円 ) 2 分の 1=3 万円 ( 厚生年金の基本月額の支給停止額 ) よって最終的に支給される 老齢厚生年金の月額 ( 基本月額 ) は 20 万円 -3 万円 =17 万円となります < 留意事項 > なお 65 歳以降の在職老齢年金の仕組みは 当該制度が創設された平成 14 年 4 月 1 日前に 既に 65 歳に達している者 ( 昭和 12 年 4 月 1 日以前生まれの者 ) で 老齢厚生年金の受給権を有している方については適用されません 2. 在職老齢年金 のまとめ先程 1. にて 46 万円 という金額を記載しましたが この金額は 現役男子被保険者の平均的賃金 をもとに算出されるため 一定額ではなく 不景気等の影響によっては年度単位で金額が変動します つまり場合によっては お給料に変更がなくても 翌年度になると支給される年金の金額が違う といった事態も十分に起こり得るわけです 昔働いて保険料を納めたのだから その全額をもらう権利がある! と主張される声を耳にしますが 前回も述べましたように 老齢厚生年金は 高齢になって働けなくなり 収入を失う というリスクに対応するためのものです制度であり 社会全体の助け合い ( 相互扶助 ) を基本とした仕組みである という考え方からこのような 在職老齢年金による調整がなされているのです 3. 雇用保険と年金の併給調整について先月号及び上記に 在職老齢年金 についてご紹介して参りましたが 続いては 在職老齢年金 とは切り離せない制度であり また大変ご質問 ご確認の多い 雇用保険の 高年齢雇用継続給付 と年金の支給調整 について ご紹介して参りたいと思います 定年退職後の再雇用が決定し お給料が下がるケースが多いかと思いますが そうするとよく 給料がずいぶんと下がった場合 雇用保険から何か給付がもらえるらしい ( 上記 ) 給付をもらうと年金が止まってしまう だから雇用保険に入りたくない とのご相談を受けることが実際に多くございます 確かに 高年齢雇用継続給付を受給する場合は 高年齢雇用継続給付の 4 割相当の年金が支給停止されます 雇用保険における 高年齢雇用継続給付 とは 雇用保険制度の給付の一つであり 60 歳到達時に比して 賃金が 75% 未満に低下した状態で働き続ける 60 歳以上 65 歳未満で 一定の要件を満たす方に支給される給付であり 65 歳までの雇用の継続を援助 促進することを目的としたものです

< 支給が停止される場合の例 > 60 歳に到達したときに賃金が 40 万円だったが 15 万円に低下したケース 例えば 賃金が 40 万円から 15 万円へ下がった場合 ( 再雇用時の賃金が 現役時の賃金より 75% 未満に低下した場合 ) 高年齢雇用継続給付金は下がった後の賃金の 15% が支給されるので 高年齢雇用継続給付金は 15 万 ( 賃金 ) 15%=22,500 円となります このとき 年金は 22,500 円 40%=9,000 円が支給停止となります よって 手取り年金が 10 万円だとすると 手取りの収入は 賃金 150,000 円 + 高年齢雇用継続給付 22,500 円 + 年金 (100,000 円 -9,000 円 )=263,500 円となるわけです せっかく少なくなった給料をカバーしてくれるものなのに 年金が支給停止になってしまうなんてひどい! とお考えになるのは一見すると ごもっとも! と思えそうですが ただ雇用保険も年金も 皆さんが納めた税や保険料を財源として 収入が下がったときに行う社会保障給付なので この両方を何の調整も行わずに給付すると いくら生活を支えるための現金給付とはいえ 重複してしまうことになります ちなみに 高年齢雇用継続給付は 高齢期でも働きやすい様に下がった給料をカバーするものですので その目的に照らして在職老齢年金よりは 支給停止の割合が少し緩やかになっています ( 2) ( 2) 在職老齢年金は 基準を超えた賃金の半分 (5 割 ) の年金が支給停止となるのに対し 高年齢雇用継続給付を受給する場合は その 4 割の年金が支給停止となります では下記に 在職老齢年金と高年齢雇用継続給付に関する Q&A を少しご紹介させて頂きます ~Q&A~ Q. 定年退職したため 新しい仕事を探すことになるが この場合 失業給付と年金は 両方受給できるのか? < 回答 > 65 歳未満の方で 老齢厚生年金 ( 以下単に 年金 といいます ) を受けながら会社に勤めていた方が会社を退職した後 失業のため ハローワークで休職の申し込みをすると その翌月から失業給付 ( 正しくは 基本手当 といいます 以下 基本手当 とします ) を受け終わるまでの間 年金の支払いが止まります もう少し詳しく申し上げますと 以下のような流れとなります

~ 基本手当 と 老齢厚生年金 の支給調整の流れ~ 1. 求職申込から受給期間満了まで失業のため 管轄のハローワークで求職申込をされますと 申込み後は 基本手当の所定給付日数または受給期間を満了されるまで 年金が支給停止されます なお 求職申込日の待期期間や給付制限期間も 基本手当の支給を受けた日 とみなされ 年金が支給停止されます 2. 基本手当の受給の打ち切り等求職申込後 基本手当の受給が打ち切られた場合でも 基本手当の受給期間満了までは 後述する事後清算は行われません 受給期間満了後に 年金の支給が再開と事後清算が行われます また 受給期間満了までの間に 1 日も基本手当の支給がなかった月があれば 労働市場センター ( 3) からの給付情報の提供がないことを確認のうえ 3 か月後に 1 か月分ずつ年金が支払われることになります 3. 受給期間満了時の事後清算労働市場センター ( 3) の情報提供を待ち 年金の支給が再開しますが 再開するまでには 3 ヶ月程度の時間がかかるようです なお 受給期間中に実際に基本手当を受けた日数から 年金支給を停止すべき月数を換算し 実際に支給停止された月数との差がある場合は 一部支給停止を解除するという事後清算が行われます ( 3) 雇用保険の被保険者等に関する記録の作成等の業務を行う厚生労働省職業安定局の機関名です < 停止される理由 > 回答だけ読んで頂くと いまいち 納得がいかない と思われる方もいらっしゃるかたもしれませんが この調整の根底にある考え方としては 雇用保険と年金はそもそも別々の保険制度であり まだ働こうとする方を対象として支給される 失業給付 と 現役を引退し 原則収入がない方を対象とする 年金 とが同時に給付されることで生じる 矛盾 です とはいえ 実際 在職老齢年金で支給制限が掛かるとはいえ 再雇用先でのお給料 + 年金の金額と 失業給付の給付額のみとでは 手取りが減り 全く以っておかしな制度だ! と ご立腹の意見も多々あるかと思います しかし仮に 失業給付と年金の両方を同じ期間に受け取ることを認めてしまうとどうでしょう 例えば失業給付と年金を合わせ 再就職したときの給料と同じ位の金額なら 誰も本気で就職しようと思わなくなるかもしれませんし 働いても働かなくても同じ制度を構築してしまうと まだまだ働ける方の多い 65 歳までの高齢者雇用活性化に強く歯止めを掛ける非常に重大な要因となり兼ねません 今後 ますます少子高齢化が進む中 ベテランの方々がこれまで培ってこられた知識 経験を活かす仕組みを構築すべきであり まだまだ働ける方が多い 65 歳までの方が 働かない方が収入は増える という仕組みは 決して望ましいとはいえないでしょう

4. 高年齢者雇用安定法の改正について ( 平成 25 年 4 月 1 日施行 ) 1. 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止現在では同法第 9 条第 2 項に基づき 労使協定により 60 歳定年後の希望者の再雇用制度の適用対象者を選別できますが 改正法の施行される平成 25 年 4 月 1 日以降は 希望者全員を再雇用せねばならなくなります ( 改正法第 9 条 ) 但し 当該改正事項については経過措置が設けられております 詳細は下段 経過措置について をご参照ください 2. 継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大継続雇用制度には 事業主が 特殊関係事業主 ( 当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主 ) との間で 当該事業主の雇用する高年齢者であってその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結する場合が含まれることになりました ( 改正法 9 条 2 項 ) これは 従前より 改正高年齢者雇用安定法 Q&A ( 以下 Q&A ともいう) にて 条文を離れて 解釈で認められてきた一定の子会社に関する取り扱いを明文化したものです 具体的には 同一グループ内の子会社への転籍先での再雇用確保等の適法性について 派遣会社の場合を含め 会社との間に密接な関係があること ( 緊密性 ) と子会社において継続雇用を行うことが担保されていること ( 明確性 ) の要件を満たしていると認められる場合は 改正高年齢者雇用安定法第 9 条が求める継続雇用制度に含まれるものである と解釈できる ( 参照 : 厚労省 改正高年齢者雇用安定法 Q&A ) というものです

厚労省 HP 高年齢者雇用安定法改正概要 より抜粋 3. 義務違反の企業に対する公表規定の導入今後全ての企業で確実に措置が実施されるよう 指導の徹底を図るべく 厚生労働大臣は 事業主に対し高年齢者雇用確保措置に関する勧告をした場合において その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは その旨を公表することができるものとされました ( 改正法 10 条 3 項 ) 4. 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の策定厚生労働大臣は 第一項の事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用 ( 心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む ) に関する指針 ( 次項において 指針 という ) を定めるものとすると規定されました ( 改正法第 9 条 3 項 ) 当該改正項目は 上記 1. の制度が実施されるとはいえ やはり勤務態度や健康状態が著しく悪い場合などは継続雇用の対象外にできることを明確にすべきだ との意見が取り入れられ 実現したものです なお 例外に出来る対象者に関する指針は 施行前までに決められることになっています ( 改正法附則第 2 項 ) 5. 経過措置について (1) 具体的内容改正法は 平成 25 年 4 月 1 日から施行されます ただし 希望者全員の再雇用を目指した規制強化策については経営側への影響が大きいため 現行法第 9 条第 2 項に基づく

再雇用基準を設けた労使協定がある場合は 平成 28 年 3 月 31 日までは 同協定の選別対象を 61 歳までの希望者を再雇用すればよく その年齢を段階的に引き上げ 65 歳までの雇用確保を求めるのは平成 37 年 4 月 1 日以降になる経過措置が設けられています (( 改正法附則第 3 項 ) 下図ご参照ください 厚労省 HP 高年齢者雇用安定法改正概要 より抜粋 (2) 当該経過措置が設けられる背景現行の年金制度に基づき公的年金の支給開始年齢が 65 歳まで引き上げられることを踏まえると 雇用と年金が確実に接続するよう 65 歳までは 希望者全員が働くことができるようにするための措置が求められています しかし 希望者全員の 65 歳までの雇用を確保するためには 法定定年年齢を公的年金支給開始年齢と合わせて引き上げることも一考ですが 現在 60 歳定年制は広く定着し機能しており 法律による定年年齢の引上げは企業の労務管理上 極めて大きな影響を及ぼし また 60 歳以降は働き方や暮らし方に対する労働者のニーズが多様であることなどを踏まえると 直ちに法定定年年齢を 65 歳に引き上げることは困難と考えられ 現実に 当該問題を定年年齢の引上げで解決することはかなり厳しいといえます しかし現行制度のままでは 65 歳までの希望者全員の雇用を確保する規定が何もない状態のまま 厚生年金の支給開始年齢の引上げが翌年平成 25 年 4 月 1 日より開始されてしまうこととなり 無年金 無収入 となる者が生じる可能性は極めて高く 非常に重大な社会的問題が生じることは明らかです そこで 老齢厚生年金 ( 報酬比例部分 ) の

支給開始年齢の段階的引き上げを勘案し 雇用と年金の確実な接続を図るべく 当該経過措置を設けたというわけです ( 老齢厚生年金 ( 報酬比例部分 ) の受給開始年齢の引き上げは 男女で違いますが ( 女性は 男性に比べて 引き上げが 5 年遅い ) 高年齢者雇用安定法の経過措置は 性別に関係なく同一です ) しかしこうした高年齢者雇用の促進が若年者雇用に及ぼす影響や 現行制度による継続雇用者に加え 当該改正による対象者基準の順次廃止により新たに生じる継続雇用者に関する人件費負担の増大が 企業に対して及ぼす影響の大きさ等を考えますと 本格的な導入を前に まだまだ検討すべき課題が山積みとなっています ( 参照 : 厚生労働委員会調査室佐藤哲夫 雇用と年金支給開始年齢の確実な接続のために 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案 ) 5. まとめ以前の 人事労務レポート でもお伝え致しておりましたとおり 今年は労働法に関する重要な改正が目白押しでしたが 今回のテーマに関係するところで申し上げますと 高年齢者雇用安定法改正法案が遂に可決されましたね 今後ますます 高年齢雇用とその労務管理 就職支援へのご対応が求められるかと思われますが 今回お伝えした高年齢者を取り巻く主要法律 各保険制度の概要 支給要件等を少しでもお含み置き頂くだけでも 今後の実務に非常に有効かと存じます 労働法のみならず 社会保険分野等の新たな改正 情報も今後どんどんお伝えしていければと思いますので 引き続き お目通し頂けますと幸甚に存じます 最後までお読み頂き 誠に有難うございました ロアでは人事制度に関する業務全般を受け賜っております 貴社が成長し続けるためには 変化に対応した人事制度 が必要です 労働法務で実績の高いロアでは不利益変更を含めたリーガル面の対応まで万全です 導入から実際の運用 諸規程との連動まで 研修を含めてトータルでサポート致します 内部だけではなかなか解決出来ない問題についても 解決に導きます 人事制度に関するご相談は 下記社労士直通電話へ! 社労士直通電話 TEL 03(3592)1813 ( 鳥井または桑 )